説明

アゾ及び/又はアゾキシスチルベン染料の濃厚水溶液の製造法

【課題】アルカリ金属水酸化物の存在下での4−ニトロトルエン−2−スルホン酸の自己縮合により得られる黄色のアゾ−及び/又はアゾキシスチルベン染料の濃厚水溶液を効率よく製造する。
【解決手段】前記アゾ及び/又はアゾキシスチルベン染料の水難溶性アルカリ金属塩を親油性アンモニウム塩に変換(一次アミン変換)し、次いでアルカノ−ルアンモニウム塩に変換(二次アミン変換)することによって該染料の貯蔵安定性に優れた濃厚水溶液を製造する方法において、該一次アミン変換をトリアルキルアミンを含有するジエチルベンゼンと水との混合系、又はトリアルキルアミンと水との混合系で、又該二次アミン変換をジエチルベンゼン又はトリアルキルアミンとモノ−、ジ−又はトリアルカノ−ルアミンを含有する水との混合系でそれぞれ行うことにより前記染料の濃厚水溶液を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は染料の濃厚水溶液の製造法に関する。更に詳しくは、アルカリ金属水酸化物の存在下で4−ニトロトルエン−2−スルホン酸を自己縮合させることによって得られる黄色のアゾ及び/又はアゾキシスチルベン染料の保存安定性に優れた濃厚水溶液の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルカリ金属水酸化物の存在下で4−ニトロトルエン−2−スルホン酸を縮合することによって得られるアゾ及び/又はアゾキシスチルベン染料は、特に紙の着色に有用で、次の式(1)で表されるような構造式を有するとされている。(細田豊著「理論・製造 染料化学」昭和32年技報堂刊 第191頁)
【0003】
【化1】

【0004】
4−ニトロトルエン−2−スルホン酸をアルカリ金属水酸化物の存在下に自己縮合することによって得られるアゾ及び/又はアゾキシスチルベン染料(以下これらの染料を合わせて単にスチルベン染料ということがある)は黄色の染料で、前記したように特にパルプ、紙用の染料として多用されている。該染料を用いてパルプ、紙等の染色に供する場合は、その取り扱いの便宜から水溶液として扱われるが、運搬の効率を考慮して、市場では其の濃厚水溶液として取り扱われている。しかしながら該スチルベン染料は水に比較的溶解しにくく、該スチルベン染料のアルカリ金属塩の水に対する溶解度は約1g/100ml程度と推定されている。そのため濃厚水溶液を得る為の種々の工夫が提案されている。例えば、スチルベン染料のアルカノ−ルアミンを形成せしめる方法が行われ、殊に水不溶性のアンモニウム塩に変換し次いで水可溶性のアンモニウム塩に変換するという2段階アミン変換法が有効な方法として提案されている。具体的には、例えば、特許文献1では、スチルベン染料のアルカリ金属塩をニトロベンゼン/水の2相系で、先ず12〜40個の炭素原子を有するジ−又はトリアルキルアミンを用いて親油性アンモニウム塩に変換し、次いで2〜4個の炭素原子を有するモノ−、ジ−又はトリアルカノ−ルアミンを用いて水溶性アルカノ−ルアンモニウム塩を形成せしめることによりスチルベン染料の濃厚水溶液を得る方法が提案されている。又、特許文献2においては、スチルベン染料のアルカリ金属塩をメチルイソブチルケトン/水の2相系で、先ず12〜40個の炭素原子を有するトリアルキルアミンを用いて親油性アンモニウム塩に変換し、次いで2〜4個の炭素原子を有するモノ−、ジ−又はトリアルカノ−ルアミンを用いて水溶性アルカノ−ルアンモニウム塩を形成せしめることにより前記スチルベン染料の濃厚水溶液を得る方法が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特公平6−99644号公報(第1−4頁)
【特許文献2】特表2003−501510公報(第8−15頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
4−ニトロトルエン−2−スルホン酸を自己縮合することによって得られるアゾ及び/又はアゾキシスチルベン染料(スチルベン染料)の濃厚水溶液を得る方法として、従来公知の前記方法には種々欠点がある。即ち、特許文献1に記載の方法ではスチルベン染料のアルカリ金属塩が先ず水難溶性のアンモニウム塩へ変換されたあとニトロベンゼンで抽出され、次いで水溶性アルカノ−ルアンモニウム塩への変換が行われ、染料が有機相から水相へ抽出されるのであるが、この方法においては、ニトロベンゼン相と染料の水溶性アルカノ−ルアンモニウムを含む水相との分離に長時間を要するという欠点がある。又、特許文献2に記載の方法でも、水溶性アルカノ−ルアンモニウム塩と媒体として使用するメチルイソブチルケトンとの相分離が充分でなく、そのためメチルイソブチルケトンの一部は水相のアンモニウム塩中に残留するために、たとえば共沸蒸留により除去する必要があるという難点がある。
本発明の課題はスチルベン染料の濃厚水溶液を得るに当たり、従来知られている方法における前記したような欠点がなく、スチルベン染料の濃厚水溶液を効率よく製造する方法を開発することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は前記課題を解決すべく鋭意研究の結果、スチルベン染料の貯蔵安定性に優れた濃厚水溶液を製造するにあたり、難溶性のアルカリ金属塩を水難溶性のアンモニウム塩へ変換し、次いで水溶性アルカノ−ルアンモニウム塩に変換するに当たりジエチルベンゼン/水又は大量の水難溶性のアンモニウム塩を形成するための水難溶性アミンに媒体としての役目をもたせることにより前記課題が解決されることを見出し本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明は
(1)アルカリ金属水酸化物の存在下での4−ニトロトルエン−2−スルホン酸の自己縮合によって得られる黄色のアゾ及び/又はアゾキシスチルベン染料の水難溶性アルカリ金属塩を親油性アンモニウム塩に変換(一次アミン変換)し、次いでアルカノ−ルアンモニウム塩に変換(二次アミン変換)することによって該染料の貯蔵安定性に優れた濃厚水溶液を製造する方法において、該一次アミン変換を少なくとも1種の12〜40個の炭素原子を有するトリアルキルアミン及びジエチルベンゼンと水又は少なくとも1種の12〜40個の炭素原子を含有するトリアルキルアミンと水の2相系で、又該二次アミン変換を2〜4個の炭素原子を有するモノ−、ジ−又はトリアルカノ−ルアミンと水の2相系で行うことを特徴とする前記染料の濃厚水溶液の製造法、
(2)一次アミン変換におけるトリアルキルアミンが12〜25個の炭素原子を有するトリアルキルアミンである(1)記載の製造法、
(3)12〜25個の炭素原子を有するトリアルキルアミンがトリ−n−オクチルアミンである(2)記載の製造法、
(4)一次アミン変換を当モル以上大過剰のトリ−n−オクチルアミンと水の2相系で行う(1)記載の製造法、
(5)2〜4個の炭素原子を有するモノ−、ジ−又はトリアルカノ−ルアミンが2〜4個の炭素原子を有するジ−又はトリアルカノ−ルアミンである(1)乃至(4)のいずれか一項に記載の製造法、
(6)2〜4個の炭素原子を有するジアルカノ−ルアミンがジエタノ−ルアミンである(5)に記載の製造法、
(7)一次アミン変換をトリ−n−オクチルアミンと水の2相系で、又二次アミン変換をジエタノ−ルアミンと水の2相系でそれぞれ行う(1)1乃至(6)のいずれか一項に記載の製造法
(8)一次アミン変換を前記染料の合成反応液をそのまま使用し、かつ酸性条件下で行う(1)乃至(7)のいずれか一項に記載の製造法、
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造法は、スチルベン染料の水溶性アルカノ−ルアンモニウム塩を含む水相とアンモニウム塩への変換時に使用するジエチルベンゼン相との分離性が優れるのでスチルベン染料の水溶性アルカノ−ルアンモニウム塩を含む水(濃厚水溶液)中のジエチルベンゼンを除く為の例えば共沸蒸留等の面倒な工程を必要とせず、スチルベン染料の濃厚水溶液を効率よく製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明を詳細に説明する。
まず、本発明の製造法で対象とするスチルベン染料は前記文献(細田豊著「理論・製造 染料化学」昭和32年技報堂刊 第191頁)に記載の方法により、例えば次のようにして製造することが出来る。すなわち、4−ニトロトルエン−2−スルホン酸をアルカリ金属水酸化物、例えば水酸化カリウム、好ましくは水酸化ナトリウムの水溶液へ加える。アルカリ金属水酸化物の量は広い範囲内において変化させることができるが、粗製の4−ニトロトルエン−2−スルホン酸には硫酸が付着していることがあるので、それらの硫酸を中和しても十分な量であるように、4−ニトロトルエン−2−スルホン酸を基準にして2〜4倍モル過剰に使用するのが好ましい。また水の量は4−ニトロトルエン−2−スルホン酸に対して重量比で通常約5倍である。この縮合反応は例えばpH11〜13で、温度50〜80℃で、5〜8時間かけて行われる。縮合反応の終点は液体クロマトグラフイ−で4−ニトロトルエン−2−スルホン酸の残存量をチェックすることにより確認される。縮合反応が終了したなら、濾別してスチルベン染料のアルカリ金属塩として取得してもよいが、スチルベン染料のアルカリ金属塩を分離することなく反応液をそのまま本発明の製造法を実施するための原料として使用するのが好ましい。
【0011】
(一次アミン変換)
分離されたスチルベン染料のアルカリ金属塩またはスチルベン染料のアルカリ金属塩を含有する反応液に水を加え、更に無機強酸、好ましくは硫酸を加えて十分撹拌して、水性懸濁液または水溶液を得る。この際、液のpHは3〜5、好ましくは4前後に、また水の量はスチルベン染料のアルカリ金属塩に対して重量比で1〜5倍、好ましくは2〜4倍になるようにそれぞれ強酸及び水の添加量を調整する。
次いでこの水性懸濁液または水溶液に12〜40個の炭素原子を有するトリアルキルアミン及びジエチルベンゼンを加える。ジエチルベンゼンの添加量は水性懸濁液または水溶液100重量部に対して通常20〜27重量部、好ましくは22〜25重量部である。又12〜40個の炭素原子を有するトリアルキルアミンの添加量はスチルベン染料上のスルホン酸基を完全にアンモニウム塩に変換するのに必要なモル数の100〜110%モル、好ましくは100〜105%モルである。硫酸を加えることにより、pH3〜5、好ましくは4前後に調整しながら、温度60〜80℃の条件で30分〜2時間撹拌を行ってスチルベン染料を対応する親油性アンモニウム塩へ完全に変えた後、静置しスチルベン染料の親油性アンモニウム塩及び過剰の12〜40個の炭素原子を有するトリアルキルアミンを含むジエチルベンゼン相と無機塩を含有した水相に分離せしめる。下層の水相を除去した後ジエチルベンゼン相を、好ましくは60〜70℃の温水で、1〜2回洗浄することにより無機塩を十分に除去する。此処において使用される12〜40個の炭素原子を有するトリアルキルアミンの具体例としては、トリブチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリイソオクチルアミン等が挙げられるが、トリ−n−オクチルアミンを使用するのが好ましい。尚、前記アミン変換においてはジエチルベンゼンを全く使用することなく12〜40個の炭素原子を有するトリアルキルアミンを大過剰にしようすることによってもジエチルベンゼンを使用した場合と同様にスチルベン染料の親油性アンモニウム塩を含有するアミン相と水相からなる液を得ることが出来る。この場合は12〜40個の炭素原子を有するトリアルキルアミンを、アルカリ金属塩をすべてトリアルキルアミン塩に変換するのに必要なモル数の105%以上、好ましくは120〜200%のトリアルキルアミンを使用する。以下前記同様にスチルベン染料の親油性アンモニウム塩を含有するアミン液を温水、水で洗浄し、アミン液中に含まれる無機塩等を除去する。
【0012】
(二次アミン変換)
上記のようにして得られたスチルベン染料の親油性アンモニウム塩を含有するジエチルベンゼン液又は12〜40個の炭素原子を有するトリアルキルアミン液に2〜4個の炭素原子を有するモノ−、ジ−またはトリアルカノ−ルアミン及び水を加えて、60〜80℃の温度範囲で1〜3時間撹拌、混合する。スチルベン染料の親油性アンモニウム塩は親水性のアルカノ−ルアンモニウム塩に変換され、ジエチルベンゼン相又は12〜40個の炭素原子を有するトリアルキルアミン相から水相に移動する。静置しておくことによりジエチルベンゼン相又は12〜40個の炭素原子を有するトリアルキルアミン相と水相に分離させ、ジエチルベンゼン相又は12〜40個の炭素原子を有するトリアルキルアミン相を除去することにより、スチルベン染料のアルカノ−ルアンモニウム塩を含有する濃厚水溶液が得られる。ここにおいて、使用しうる2〜4個の炭素原子を有するモノ−、ジ−またはトリアルカノ−ルアミンの具体例としては、ジイソプロパノ−ルアミン、トリエタノ−ルアミン、トリイソプロパノ−ルアミン、ジエタノ−ルアミン、n−プロパノ−ルアミン等があげられが、本発明においては、ジエタノ−ルアミン、ジイソプロパノ−ルアミン等のジ−アルカノ−ルアミンを用いるのが好ましく、特にジエタノ−ルアミンを用いるのが好ましい。
アルカノ−ルアミンの量はスチルベン染料のアルキルアンモニウム塩をそのアルカノ−ルアンモニウム塩に変換するのに必要なモル数の110%以上、好ましくは120〜200%のアルカノ−ルアミンを使用する。
二次アミン変換後には、下層を形成するスチルベン染料のアルカノ−ルアンモニウム塩の水相と上層を形成するスチルベン染料の親油性アンモニウム塩のトリアルキルアミン相に分離する。下層の水相を分離したのち上層のトリアルキルアミン液に、必要によりトリアルキルアミンを追加した上で、スチルベン染料のアルカリ金属塩を加えて次の製造を行うことが出来る。
【0013】
水不溶性のジエチルベンゼンを、有機相に使用することにより、親油性のアンモニウム塩の形成中及び親水性のアルカノ−ルアンモニウム塩の形成中に、水相と有機相の間の良好な相分離がすみやかに行われるので、濃厚水溶液中の無機塩の除去が容易であり、相分離、除去、洗浄以外の工程が必要でないので、これらに必要とされる反応容器も通常1個で済み、製造工程が大幅に簡略化される。このような方法で実施される本発明の製造法で得られたスチルベン染料の濃厚水溶液にはスチルベン染料が通常15〜15重量%、好ましい条件下では20重量%含有される。
【0014】
本発明の製造法においては、トリアルキルアミンを含むジエチルベンゼンは精製しないでも、必要により水相に失われたトリアルキルアミンの量を追加した後、再度使用が可能である。本発明の製造法においては、必要により、濾過工程、活性炭処理−濾過工程を加えることにより精製することも可能である。特に濃厚水溶液中に12〜40個の炭素原子を有するトリアルキルアミン、ジエチルベンゼンが残留している懸念があるときには活性炭処理を施し濾過を行うことが好ましい。
【0015】
本発明の製造法で得られるスチルベン染料の濃厚水溶液は種々の基材の着色用に適し、特にサイズ又は無サイズのパルプ紙の染色(着色)に適している。染色する方法としては、それ自体公知のパルプ内添法の他、抄紙後のサイズプレス工程でサイズプレス液に本願発明におけるスチルベン染料を加えて着色する等の方法が採用できる。本発明の製造法で得られる濃厚水溶液を用いて紙を染色(着色)した場合、高い直接性、ビルドアップ性を示すと同時に其の廃液の着色度がすぐれている。尚、本発明の製造法で得られた濃厚水溶液はパルプ、紙の染色(着色)のほか、セルロ−ス繊維、再生セルロ−ス繊維に対しても高い染色適性を示す。
【実施例】
【0016】
以下実施例により本発明を更に詳細に説明する。実施例において、部は重量部を、%は重量%をそれぞれ意味する。
【0017】
実施例1
ガラスフラスコを800部の水でみたし、次に48%水酸化ナトリウム水溶液480部を温度が50℃を越えないようにして加える。次に50℃に加熱し、次いで406部の4−ニトロトルエン−2−スルホン酸を約1時間30分で加える。その間自然昇温させ約1時間で76℃付近まで上昇させた。その混合物を77〜79℃で約4時間撹拌する。その反応混合物のpHは約13である。反応液にはスチルベン染料のナトリウム塩が約10%含有されている。
次に上記で得られた反応液に、約30分を要して85部の濃硫酸を加える。硫酸の添加が終わると反応液のpHは7〜8となる。この反応液を30℃において、さらに30分間撹拌した。次に別に準備してあるガラスフラスコに700部のジエチルベンゼンと700部のトリ−n−オクチルアミンを加えることにより得られた混合物の中に、前記反応液の全量を加え、約70℃で約1時間撹拌した。その間混合物に濃硫酸を加えて、約pH4に調整、維持した。撹拌を止めるとジエチルベンゼン相と水相に直ちに分離した。生成したスチルベン染料のトリ−n−オクチルアンモニウム塩を含む軽いジエチルベンゼン相は上層に、そして下層の無機塩を含む水相は流し出した。次に親油性アンモニウム塩を含むジエチルベンゼン相に70℃の水3000部加え、30分間撹拌洗浄した後、下層の水相を除去した。
次に親油性アンモニウム塩を含むジエチルベンゼンに330部のジエタノ−ルアミンを投入し、70℃で2時間撹拌を行った。スチルベン染料のトリ−n−オクチルアンモニウム塩はジエタノ−ルアンモニウム塩に交換され下層の水相に移動する。スチルベン染料の
ジエタノ−ルアンモニウム塩を含有する水相を分離し、水相に20部の活性炭を加えて撹拌後濾過する。これにより水相中に微量残留しているトリ−n−オクチルアミン及びジエチルベンゼンが除去される。80〜90℃の温度で水分を蒸発させて、濃度を調整し、フィルタ−でろ過して、1640部のスチルベン染料の濃厚水溶液を得た。この濃厚水溶液にはスチルベン染料が約343部含有されていた。
【0018】
実施例2
ジエチルベンゼンを使用しない代わりに、スチルベン染料のすべてのスルホン酸基をアンモニウム塩に換えるのに必要な量の約50%過剰であるトリ−n−オクチルアミン1050部を使用して実施例1におけるのと同じ手順を繰り返した。貯蔵安定性に優れたスチルベン染料の濃厚水溶液1640部を得た。この濃厚水溶液にはスチルベン染料が約343部含有されていた。
【0019】
実施例3
70℃の水2150部にスチルベン染料のナトリウム塩645部(4−ニトロトルエン−2−スルホン酸406部より製造された)を加えて30分撹拌して均一な分散液を得た。次に全スルホン酸基をアミン塩に変換するのに必要とされるモル数の150%に相当する1050部のトリ−n−オクチルアミン1050部を加え以下実施例2と同様な操作を行って貯蔵安定性に優れたスチルベン染料の濃厚水溶液1640部を得た。この濃厚水溶液にはスチルベン染料が約343部含有されていた。
【0020】
応用例
染料ポットの中にパルプ2部(乾燥重量)を投入後、水40部、実施例1で得た濃厚水溶液2.0部を500部に希釈した溶液からその20部をそれぞれ投入し、得られた混合物を室温で15分撹拌し、混合物が均質になるようにした。次に1%サイズ剤(FRサイズ1900 ミサワセラミックケミカル(株)製)2部を加えて10分間撹拌し、続いて3%硫酸アルミニュム2部を加えて15分間攪拌した。この溶液を使用して、JISP−8209(パルプ試験用手すき紙調製法)に記載の方法に準じて抄紙、乾燥を行いペ−パ−シ−トを得た。このようにして得られた紙は、良好な湿潤堅牢度を有する深い黄色に染色されていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属水酸化物の存在下での4−ニトロトルエン−2−スルホン酸の自己縮合によって得られる黄色のアゾ及び/又はアゾキシスチルベン染料の水難溶性アルカリ金属塩を親油性アンモニウム塩に変換(一次アミン変換)し、次いでアルカノ−ルアンモニウム塩に変換(二次アミン変換)することによって該染料の貯蔵安定性に優れた濃厚水溶液を製造する方法において、該一次アミン変換を少なくとも1種の12〜40個の炭素原子を有するトリアルキルアミンを含有するジエチルベンゼンと水との混合系又は少なくとも1種の12〜40個の炭素原子を含有するトリアルキルアミンと水との混合系で、又該二次アミン変換をジエチルベンゼン又は12〜40個の炭素原子を有するトリアルキルアミンと2〜4個の炭素原子を有するモノ−、ジ−又はトリアルカノ−ルアミンを含有する水との混合系でそれぞれ行うことを特徴とする前記濃厚水溶液の製造法
【請求項2】
一次アミン変換におけるトリアルキルアミンが12〜25個の炭素原子を有するトリアルキルアミンである請求項1記載の製造法
【請求項3】
12〜25個の炭素原子を有するトリアルキルアミンがトリ−n−オクチルアミンである請求項2記載の製造法
【請求項4】
一次アミン変換を当モル以上大過剰のトリ−n−オクチルアミンと水との混合系で行う請求項1記載の製造法
【請求項5】
2〜4個の炭素原子を有するモノ−、ジ−又はトリアルカノ−ルアミンが2〜4個の炭素原子を有するジ−又はトリアルカノ−ルアミンである請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の製造法
【請求項6】
2〜4個の炭素原子を有するジアルカノ−ルアミンがジエタノ−ルアミンである請求項5に記載の製造法
【請求項7】
一次アミン変換をトリ−n−オクチルアミンと水との混合系で、又二次アミン変換をトリ−n−オクチルアミンとジエタノ−ルアミンを含有する水との混合系でそれぞれ行う請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の製造法
【請求項8】
一次アミン変換をアルカリ金属水酸化物の存在下での4−ニトロトルエン−2−スルホン酸の自己縮合によって得られる黄色のアゾ−及び/又はアゾキシスチルベン染料の水難溶性アルカリ金属塩を含む合成反応液をそのまま使用し、かつ酸性条件下で行う請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の製造法

【公開番号】特開2007−262105(P2007−262105A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−195944(P2004−195944)
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【出願人】(502242634)株式会社日本化薬東京 (2)