説明

アダプタ収納モジュール

【課題】最上段以外のモジュールのアダプタへのコネクタ接続作業を容易に行うことができ、しかも筺体内部にモジュールの回転スペースを確保する必要もないアダプタ収納モジュールを提供する。
【解決手段】第1の発明のアダプタ収納モジュールは、光ファイバ心線の接続部材または分岐部材を収納する接続箇所収納部11と、アダプタ5を収納するアダプタ収納部3と、光ファイバ心線の余長収納部12とを備えたものである。モジュール本体1の一側にアダプタ収納部3を設けるとともに、モジュール本体1の側壁に、アダプタ収納部3が階段状になるようにモジュール本体1をずらして段積みするための段積係合部20を設けた。また、同様の課題を解決する第2の発明ではモジュール本体を互いに反対向きに段積みするための段積係合部20を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバを接続する光接続箱の内部に設置されるアダプタ収納モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
光接続箱は、光ファイバの接続や分岐を行うためのボックスであり、その内部には例えば特許文献1に示されるような、モジュールやトレーと呼ばれる扁平な収納ケースが多段に積層されている。モジュールの内部には光ファイバ心線の接続部材であるスリーブや、光ファイバ心線の分岐部材であるスプリッターを収納する接続箇所収納部があり、またこれらのスリーブやスプリッターに接続された光ファイバ心線の余長を収納する余長収納部が設けられている。さらに、光コードを接続するためのコネクタ、アダプタを各モジュール内に収納した構造も知られている。
【0003】
しかし、アダプタを各モジュール内に収納したアダプタ収納モジュールを段積みすると、最上段以外のモジュールのアダプタにコネクタを接続する際には、それよりも上段のモジュールを取り外したうえで収納ケースを開かねばならず、作業性が悪いという問題があった。
【0004】
またこの問題を回避するために、各モジュールを水平方向に回転可能としておき、目的とするモジュールのみを回転させて引き出し可能とした構造も知られている。しかしこの場合には光接続箱の筺体内部にモジュールの回転スペースを確保する必要があり、筺体サイズが大きくなってしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−20707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、最上段以外のモジュールのアダプタへのコネクタ接続作業を容易に行うことができ、しかも筺体内部にモジュールの回転スペースを確保する必要もないアダプタ収納モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するためになされた第1の発明は、請求項1のように光ファイバ心線の接続部材または分岐部材を収納する接続箇所収納部と、アダプタを収納するアダプタ収納部と、光ファイバ心線の余長収納部とを備えたアダプタ収納モジュールにおいて、モジュール本体の一側にアダプタ収納部を設けるとともに、モジュール本体に、アダプタ収納部が階段状になるようにモジュール本体をずらして段積みする段積係合部を設けたことを特徴とするものである。
【0008】
なお請求項2のように、段積係合部が、アダプタ収納部が垂直方向に重なるようにモジュール本体を段積みすることもできるものであることが好ましい。またその場合には請求項3のように、段積係合部がモジュール本体の側壁の上下に設けられた、2個の突起と3個の突起とからなり、2個の突起に対する3個の突起の係合位置を変えることにより、階段状段積みと垂直状段積みとを選択可能とすることができる。また、請求項4のようにモジュール本体の側壁の下端部にヒンジ部を設けるとともに、側壁の上端部には前記ヒンジ部の上方に垂直段積み用のヒンジ部と、該垂直段積み用ヒンジ部に隣接してアダプタ収納部とは反対側に階段積み用ヒンジ部を設けたものが好ましく、請求項5のように段積係合部を、モジュール本体の左右側壁にそれぞれ設けたものではモジュール本体を左右どちらからでも開くことができる。また第2の発明の請求項6のように、光ファイバ心線の接続部材または分岐部材を収納する接続箇所収納部と、アダプタを収納するアダプタ収納部と、光ファイバ心線の余長収納部とを備えたアダプタ収納モジュールにおいて、モジュール本体の一側にアダプタ収納部を設けるとともに、モジュール本体に、アダプタ収納部が互いに反対向きになるようにモジュール本体を段積みする段積係合部を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
第1の発明の請求項1のアダプタ収納モジュールは、モジュール本体の一側にアダプタ収納部を設けるとともに、モジュール本体にアダプタ収納部が階段状になるようにモジュール本体をずらして段積みする段積係合部を設けたものであるから、最上段以外のモジュールのアダプタ収納部に収納されたアダプタも、上方から視認することができる。このために最上段以外のモジュールのアダプタへのコネクタ接続作業を容易に行うことができ、しかも筺体内部にモジュールの回転スペースを確保する必要もない。
【0010】
請求項2のように、段積係合部をアダプタ収納部が垂直方向に重なるようにモジュール本体を段積みすることもできるものとしておけば、必要に応じてモジュールの階段状取付けと垂直状取付けとを選択して段積みすることができる。また請求項3のように、3個の突起に対する2個の突起の係合位置を変えることにより、階段状段積みと垂直状段積みとを選択可能とすることができる構造としておけば、双方の取付け状態において突起を兼用することができ、段積係合部の構造を簡素化し、しかも階段状段積みと垂直状段積みとの何れの場合にも確実な係合を行わせることができる。また、請求項4のようにモジュール本体の側壁の下端部にヒンジ部を設けるとともに、側壁の上端部には前記ヒンジ部の上方に垂直段積み用のヒンジ部と、該垂直段積み用ヒンジ部に隣接してアダプタ収納部とは反対側に階段積み用ヒンジ部を設けたものとしておけば、必要に応じてモジュールの階段状取付けと垂直状取付けとを選択して段積みすることができる。また、請求項5のように段積係合部を、モジュール本体の左右側壁にそれぞれ設けたものではモジュール本体を左右どちらからでも開くことができる。
【0011】
また、第2の発明の請求項6のアダプタ収納モジュールは、モジュール本体の一側にアダプタ収納部を設けるとともに、モジュール本体に、アダプタ収納部が互いに反対向きになるようにモジュール本体を段積みする段積係合部を設けたものであるから、最上段以外のモジュールのアダプタ収納部に収納されたアダプタも、上方から視認することができる。このために最上段以外のモジュールのアダプタへのコネクタ接続作業を容易に行うことができ、しかも筺体内部にモジュールの回転スペースを確保する必要もない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の発明の実施形態を示す斜視図である。
【図2】分解斜視図である。
【図3】段積係合部の説明図である。
【図4】段積係合部の説明図である。
【図5】垂直状段積み状態を示す斜視図である。
【図6】垂直状段積み状態を示す側面図である。
【図7】階段状段積み状態を示す斜視図である。
【図8】階段状段積み状態を示す側面図である。
【図9】他の実施形態の垂直状段積み状態を示す斜視図である。
【図10】他の実施形態の階段状段積み状態を示す斜視図である。
【図11】第2の発明であるモジュール本体を互いに反対向きに段積みした状態を示す斜視図である。
【図12】縦型ケースに収納した状態を示す斜視図である。
【図13】鎖錠した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施形態を説明する。
図1、図2に示されるように、本発明のアダプタ収納モジュールは浅箱状のモジュール本体1と、その上面を覆うカバー2とを備えている。モジュール本体1の一側には、アダプタ収納部3が設けられている。この実施形態ではアダプタ収納部3は一定ピッチの垂直壁4からなり、アダプタ5を落とし込むようにはめ込んで支持することができる。なお垂直壁4の中央部には縦溝6が形成されており、アダプタ5の突起7を嵌合させることによって、長手方向の力が加えられてもアダプタ5が動かない構造となっている。またアダプタ5の高さと垂直壁4の高さとを揃え、カバー2で押さえたときにアダプタ5が上下方向にがたつかないようにしてある。アダプタ5の両側にはコネクタ8、9が挿入されている。外側のコネクタ8には光コードが接続され、内側のコネクタ9には光ファイバ心線が接続される。
【0014】
モジュール本体1の内部は、仕切りプレート10によって上下に二分されている。仕切りプレート10の上側スペースは接続箇所収納部11となり、下側スペースは余長収納部12となる。下側スペースである余長収納部12は、内側のコネクタ11に接続された光ファイバ心線の余長が収納される。しかし余長が短い場合には単に光ファイバ心線を通過させるだけでもよい。
【0015】
仕切りプレート10の上側スペースである接続箇所収納部11には、光ファイバ心線の余長を巻き付けるための円盤状の突起13及び多数の板状突起14が形成されている。また仕切りプレート10の奥側には下側スペースから上側スペースに光ファイバ心線を通すための貫通孔が適当数形成されており、光ファイバ心線の端部はこれらの貫通孔から上側スペースである接続箇所収納部11に引き出されている。
【0016】
仕切りプレート10の両側端部には、光ファイバ心線の接続部材であるスリーブや、光ファイバ心線の分岐部材であるスプリッターを収納する接続箇所収納体16が設けられている。下側の余長収納部12から貫通孔を経由して上側に引き出された光ファイバ心線に対して、接続箇所収納部16において接続部材または分岐部材を用いて接続や分岐などの作業がおこなわれ、1次配線はモジュール本体1の左右両側の光コード収納溝17から外部に引き出される。
【0017】
このように本発明のアダプタ収納モジュールは、接続箇所収納部11と、アダプタを収納するアダプタ収納部3と、光ファイバ心線の余長収納部12とを備えたものであり、その内部において光ファイバの接続や分岐を行うことは従来と同様である。しかし第1の発明のアダプタ収納モジュールには、アダプタ収納部3が階段状になるように段積みすることができるように、モジュール本体1に特殊な段積係合部20が設けられている。以下にその詳細を説明する。
【0018】
図1、図2に示されるように、モジュール本体1の側壁の上端部には2個の突起21が外向きに突設され、またモジュール本体1の側壁の下端部には3個の突起22が外向きに突設されている。これらはモジュール本体1の左右側壁の前後にそれぞれ設けられているが、全て同一構造である。
【0019】
図3はこの段積係合部20の拡大平面図であり、上端部の2個の突起21、21の間にはヒンジ軸23が一体に形成されている。また下端部の3個の突起22はいずれもこのヒンジ軸23の上側からはめ込むことができるように下向きに湾曲させた形状となっている。このため、モジュール本体1を段積みして下側のモジュール本体1の上端部のヒンジ軸23に上側のモジュール本体1の下端部の突起22を嵌め込めば、段積係合部20の突起21とヒンジ軸23がモジュール本体1の左右側壁の前後にそれぞれ設けられているので、モジュール本体1は左右何れの側にも開くことができ、上段のモジュールを取り外すことなく下段のモジュールの配線作業を行うことができる。
【0020】
図3に示すように、3個の突起22のうち中央の突起Yは幅が広くなっており、両端の突起X、Zの外側から中央の突起Yの外側までの寸法Aは、2個の突起21、21の間のヒンジ軸23の長さBとほぼ等しくなっている。そして同一のモジュール本体1の側壁の上下の突起21、22は、図3のように配置されている。このため複数のモジュール本体1を図5、図6に示すように垂直方向に段積みすると、ヒンジ軸23が中央の突起Yと後側の突起Zとの間に嵌り込む。このようにモジュール本体1を段積みすると、各モジュール本体1のアダプタ収納部3が垂直方向に重なる。
【0021】
また図4に示すように、ヒンジ軸23が中央の突起Yと前側の突起Xとの間に嵌り込むように、上側のモジュール本体1を後方にずらす(上側のモジュール本体1の下端部の3個の突起22を、図3の状態よりも後方にずらす)と、図7、図8に示されるように各モジュール本体1は階段状に段積みされることとなる。この状態においては当然に各モジュール本体1のアダプタ収納部3も階段状になり、最上段以外のモジュールのアダプタ5も上方から視認することができる。このために最上段以外のモジュールのアダプタ5へのコネクタ接続作業を容易に行うことができる。
【0022】
図9、図10は他の実施形態を示す斜視図であり、図9は垂直状段積み状態を示し、図10は階段状段積み状態を示している。この実施形態では段積係合部20を垂直用段積み用と階段状段積み用に分離して設けたものである。具体的にはモジュール本体1の側壁の下端部には半円弧状のヒンジ管41を設けるとともに、側壁の上端部には前記ヒンジ管41の上方に垂直段積み用のヒンジ軸42と、該垂直段積み用ヒンジ軸部に隣接してアダプタ収納部3とは反対側に階段積み用ヒンジ軸42を設けてある。このようなものではヒンジ管42を小型化できるので金型上有利である。
【0023】
次に図11を用いて第2の発明を示しており、上下の位置するアダプタ収納部3が反対側となるように、モジュール本体1を互いに反対向きに段積みしている。図9,10に示した第1の発明のようにモジュール本体1に4ヶ所の段積係合部20を備えた場合には、モジュール本体1の側壁に設けられた段積係合部20のヒンジ管41とヒンジ軸42は左右で対称位置に設け、側壁の下端部の各ヒンジ管41は、下段のモジュール本体1と上段のモジュール本体1とはアダプタ収納部3が反対側となるように段積みされた際に、左右側壁が入れ替わりアダプタ収納部側と反対側とが入れ替わり、垂直段積み用ヒンジ軸もしくは段積み用ヒンジ軸にはめ込むものである。このようなものでは、アダプタ収納部が各々反対側に位置するのでコネクタ接続作業を容易におこなうことができる。なお、上記のものではモジュール本体1を互いに反対向きに垂直状段積みとしたが、互いのアダプタ収納部が突出するようにクランク状段積みとしてもよい。また上記のヒンジ部であるヒンジ軸とヒンジ管は各々変えてもよい。
【0024】
上記したように、第1の発明によればモジュールを階段状に段積みすることができ、また、第2の発明によればモジュールを互いに反対向きに段積みすることができるので、アダプタ5へのコネクタ接続作業を容易に行うことができ、しかも筺体内部にモジュールの回転スペースを確保する必要もない。このために小型のケースの内部にコンパクトに収納可能である。図12は縦型ケース30の内部に2枚のモジュールを収納した状態を示し、図13は縦型ケース30の表面を蓋体31で覆い、錠32で鎖錠した状態を示す。もちろんモジュールは水平に設置してもよいことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0025】
1 モジュール本体
2 カバー
3 アダプタ収納部
4 垂直壁
5 アダプタ
6 縦溝
7 突起
8 コネクタ
9 コネクタ
10 仕切りプレート
11 接続箇所収納部
12 余長収納部
13 円盤状の突起
14 板状突起
16 接続箇所収納体
17 光コード収納溝
20 段積係合部
21 突起
22 突起
23 ヒンジ軸
30 縦型ケース
31 蓋体
32 錠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ心線の接続部材または分岐部材を収納する接続箇所収納部と、アダプタを収納するアダプタ収納部と、光ファイバ心線の余長収納部とを備えたアダプタ収納モジュールにおいて、モジュール本体の一側にアダプタ収納部を設けるとともに、モジュール本体に、アダプタ収納部が階段状になるようにモジュール本体をずらして段積みする段積係合部を設けたことを特徴とするアダプタ収納モジュール。
【請求項2】
段積係合部が、アダプタ収納部が垂直方向に重なるようにモジュール本体を段積みすることもできるものであることを特徴とする請求項1記載のアダプタ収納モジュール。
【請求項3】
段積係合部がモジュール本体の側壁の上下に設けられた、2個の突起と3個の突起とからなり、2個の突起に対する3個の突起の係合位置を変えることにより、階段状段積みと垂直状段積みとを選択可能としたことを特徴とする請求項2記載のアダプタ収納モジュール。
【請求項4】
モジュール本体の側壁の下端部にヒンジ部を設けるとともに、側壁の上端部には前記ヒンジ部の上方に垂直段積み用のヒンジ部と、該垂直段積み用ヒンジ部に隣接してアダプタ収納部とは反対側に階段積み用ヒンジ部を設けたことを特徴とする請求項2記載のアダプタ収納モジュール。
【請求項5】
段積係合部を、モジュール本体の左右側壁にそれぞれ設けたことを特徴とする請求項2記載のアダプタ収納モジュール。
【請求項6】
光ファイバ心線の接続部材または分岐部材を収納する接続箇所収納部と、アダプタを収納するアダプタ収納部と、光ファイバ心線の余長収納部とを備えたアダプタ収納モジュールにおいて、モジュール本体の一側にアダプタ収納部を設けるとともに、モジュール本体に、アダプタ収納部が互いに反対向きになるようにモジュール本体を段積みする段積係合部を設けたことを特徴とするアダプタ収納モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−266726(P2010−266726A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−118481(P2009−118481)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(000227401)日東工業株式会社 (374)
【Fターム(参考)】