説明

アップライトピアノのアクション

【課題】 非常に単純かつ安価な構成で、良好なタッチ感と連打性の両立を図ることができるアップライトピアノのアクションを提供する。
【解決手段】 本発明のアップライトピアノのアクション1は、押鍵時に、鍵4によって突き上げられる回動自在のウィッペン6と、ウィッペン6に取り付けられ、ウィッペン6の回動に伴ってハンマー3を突き上げ、回動させ、回動の途中で、レギュレティングボタン17に当接することで回動し、ハンマー3から離脱するジャック7と、ウィッペン6とジャック7の間に設けられ、ジャック7をハンマー3側に付勢するジャックスプリング11と、を備え、ウィッペン6およびジャック7の一方に形成された上下方向に貫通するねじ孔6cにねじ込まれ、ウィッペン6およびジャック7の一方からのジャックスプリング11の突出長さを調整する調整ねじ10をさらに備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍵の押鍵に伴って作動し、ハンマーを回動させ、打弦を行わせるアップライトピアノのアクションに関する。
【背景技術】
【0002】
アップライトピアノのアクションは一般に、回動自在のウィッペンと、ウィッペンに回動自在に取り付けられたジャックと、ウィッペンとジャックの間に設けられたジャックスプリングと、ジャックの上方に配置されたレギュレティングボタン、ウィッペンに設けられたバックチェックなどを備えている。
【0003】
このようなアクションでは、鍵の押鍵に伴い、ウィッペンは、鍵の後端部で突き上げられ、ジャックと一緒に上方に回動し、ハンマーは、回動したジャックによって突き上げられ、回動する。この回動の途中で、ジャックは、レギュレティングボタンに当接し、ジャックスプリングのばね力に抗してウィッペンに対して回動し、ハンマーから外れる。その後、ハンマーは、慣性で回動し、弦を打弦した後、反対方向に回動し、バックチェックに係止される。押鍵が終了し、鍵がある程度、戻されると、ジャックは、ウィッペンと一緒に押鍵時と反対方向に回動し、レギュレティングボタンから離れるとともに、ジャックスプリングのばね力によって、ウィッペンに対して復帰回動し、ハンマーの下側に入り込み、係合する。これにより、ハンマーの再突上げすなわち連打が可能になる
【0004】
以上のように、アップライトピアノにおいて、ジャックスプリングは、押鍵後に、ジャックを復帰回動させることによって、連打性を確保する機能を有する。このため、連打性を向上させるという観点からは、ジャックスプリングのばね力を強くすることが好ましい。しかし、ジャックスプリングのばね力は、押鍵の際の反力として、演奏者の指先に伝わるため、ばね力が強すぎると、鍵の静的荷重が大きくなるとともに、ばねを変形させるような「ばねっぽい」タッチ感になり、タッチ感を損ねてしまう。
【0005】
このため、ジャックスプリングのばね力を増大させることなく、連打性の向上を図るようにした従来のアップライトのアクションとして、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。このアクションは、上述した通常の部品に加えて、レペティション機構を備えている。このレペティション機構は、ハンマーのキャッチャーシャンクに取り付けたフレンジと、フレンジに回動自在に支持されたレペティションレバーと、レペティションレバーを付勢するレバースプリングなどを有している。このアクションでは、押鍵後、鍵がある程度、戻されたときに、ウィッペンおよびジャックが押鍵時と反対方向に回動するのに伴い、レペティションレバーを介して作用するレバースプリングのばね力によって、ハンマーが弦側に回動する。これにより、ハンマーの下側へのジャックの入り込みが容易になり、連打性の向上を図ることができる。
【0006】
しかし、この従来のアクションは、ウィッペンなどの通常の部品に加え、フレンジ、レペティションレバーやスプリングなどを有するレペティション機構を設けなければならず、その構成が非常に複雑であるとともに、そのようなレペティション機構が鍵ごとに必要であるため、製造コストが非常に高いという欠点がある。また、離鍵時に、スプリングのばね力をレペティションレバーを介してハンマーに作用させ、ハンマーを弦側に回動させるので、この回動によってハンマーが再度、打弦を行わないよう、スプリングのばね力やレペティションレバーとハンマーとの位置関係などをきめ細かく調整する必要があり、その調整作業に非常に労力を要するため、製造コストがさらに上昇する。さらに、レペティション機構がハンマーと一体に設けられているため、その分、鍵の静的荷重が増大するとともに、タッチ感やハンマーの動作に悪影響を及ぼしてしまう。
【0007】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、非常に単純かつ安価な構成で、良好なタッチ感と連打性の両立を図ることができるアップライトピアノのアクションを提供することを目的とする。
【0008】
【特許文献1】特開平6−83326号公報
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、請求項1に係る発明は、鍵の押鍵に伴って作動し、ハンマーを回動させることにより打弦を行わせるアップライトピアノのアクションであって、押鍵時に、鍵によって突き上げられ、上方に回動するウィッペンと、ウィッペンの上方の所定位置に設けられたレギュレティングボタンと、ウィッペンに回動自在に取り付けられ、ハンマーに係合し、ウィッペンの回動に伴ってハンマーを突き上げ、回動させるとともに、当該回動の途中で、レギュレティングボタンに当接することによって、ウィッペンに対して回動し、ハンマーから離脱するジャックと、ウィッペンとジャックの間に設けられ、ジャックを、離脱後にハンマーに係合させるために、ハンマー側に付勢するジャックスプリングと、を備え、ウィッペンおよびジャックの一方には、上下方向に貫通するねじ孔が形成されており、ねじ孔に進退自在にねじ込まれ、ジャックスプリングに連結されるとともに、回転操作により、ウィッペンおよびジャックの前記一方からのジャックスプリングの突出長さを調整する調整ねじをさらに備えることを特徴とする。
【0010】
このアップライトピアノのアクションによれば、離鍵状態では、ジャックがハンマーに係合しており、この離鍵状態から鍵が押鍵されると、ウィッペンが鍵によって突き上げられ、ウィッペンと一緒にジャックが上方に回動する。ハンマーは、ジャックにより突き上げられ、回動する。また、この回動の途中で、ジャックが、レギュレティングボタンに当接することによって、ハンマーから離脱する。その後、ハンマーは、慣性で回動し、打弦を行う。さらに、ハンマーから離脱したジャックは、ウィッペンとジャックの間に設けられたジャックスプリングの付勢によって、ウィッペンに対して復帰回動し、ハンマーに係合することで、ハンマーの再突上げが可能な状態になる。
【0011】
また、本発明では、ジャックスプリングに調整ねじが連結されており、この調整ねじは、ウィッペンおよびジャックの一方に形成された上下方向に貫通するねじ孔に、ねじ込まれている。したがって、調整ねじを回し、ねじ孔を形成したウィッペンまたはジャックからのジャックスプリングの突出長さを調整することによって、ジャックスプリングのばね力を無段階に調整することができる。
【0012】
例えば、ジャックスプリングの突出長さを大きくすると、レギュレティングボタンに当接した状態でのジャックスプリングの圧縮量がより大きくなることによって、そのばね力が増大するので、ジャックがハンマー側により速く戻るようになり、連打性を向上させることができる。逆に、ジャックスプリングの突出長さを小さくすると、レギュレティングボタンに当接した状態でのジャックスプリングの圧縮量が小さくなることによって、そのばね力が減少するので、「ばねっぽい」感覚を抑制でき、タッチ感を向上させることができる。以上のように、調整ねじでジャックスプリングの突出長さを調整することによって、ジャックスプリングのばね力を無段階にきめ細かく調整でき、したがって、良好なタッチ感と連打性を両立させることができる。
【0013】
また、本発明のアクションは、基本的に、通常のアクションに調整ねじを付加するだけで構成されるので、複雑なレペティション機構を必要とする従来のアクションと比較して、非常に単純かつ安価に構成することができる。また、ウィッペンまたはジャックにねじ孔を形成し、調整ねじを取り付けるので、調整ねじの取付によるウィッペンまたはジャックの重量の変化量は小さく、それによる鍵の静的荷重やアクションの動作への影響はほとんどない。
【0014】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のアップライトピアノのアクションにおいて、調整ねじがウィッペンに取り付けられていることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、ウィッペン側に、ねじ孔および調整ねじが設けられていて、ジャック側には、加工や部品の付加などの変更がまったく加えられないので、ジャックの所望の動作を、その調整を必要とすることなく、容易に得ることができる。また、ウィッペンから上方に突出した調整ねじで、ジャックスプリングを下側から安定して支持することができる。さらに、アップライトピアノでは一般に、ウィッペンの下側に比較的大きなスペースが存在するので、このスペースを利用して、調整ねじをウィッペンの下側から操作することによって、調整作業を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について説明する。図1は、本発明を適用したアップライトピアノのアクション1、鍵盤2およびハンマー3などを、離鍵状態において示している。なお、図1では、図示の便宜上、断面を示すハッチングは省略されている。鍵盤2は、左右方向(図1の奥行方向)に並んだ多数の鍵4(1つの白鍵のみ図示)によって構成されており、各鍵4は、前後方向(図1の左右方向)の中央において、筬5にバランスピン5aを介して揺動自在に支持されている。
【0017】
アクション1は、鍵盤2の後端部の上方において、筬5の左右の端部にそれぞれ設けられた左右のブラケット(図示せず)に取り付けられ、両ブラケットの間に設けられている。アクション1は、ウィッペン6やジャック7を有しており、これらは、鍵4ごとに設けられている(ともに1つのみ図示)。また、左右のブラケットの間には、センターレール15およびハンマーレール16などが渡されている。
【0018】
ウィッペン6は、例えば合成樹脂によって所定の形状に形成されており、その前部から下方に突出するヒール部6aを有していて、対応する鍵4の上面後端部に設けられたキャプスタンボタン4aに、ヒール部6aを介して載置されている。また、ウィッペン6の前端部には、バックチェックワイヤ8aが立設されており、その先端部にバックチェック8が取り付けられている。さらに、ウィッペン6の後端部には、後述するダンパー21を駆動するためのスプーン9が立設されている。また、ウィッペン6は、スプーン9のすぐ前側の部分において、センターレール15に固定されたウィッペンフレンジ6bに回動自在に支持されている。
【0019】
図2に示すように、ウィッペン6のヒール部6aとバックチェックワイヤ8aとの間には、上下方向に貫通するねじ孔6cが形成されており、このねじ孔6cに調整ねじ10が下方からねじ込まれている。調整ねじ10は、頭部をもたず、先端部を除いて一定の径を有しており、基部の端面にはドライバー操作用の溝10aが形成されている。
【0020】
また、調整ねじ10には、ジャックスプリング11が取り付けられている。ジャックスプリング11は、押鍵後にジャック7を復帰回動させるためのものであり、コイルばねで構成されている。ジャックスプリング11は、その下端部が調整ねじ10の先端部に嵌められ、接着されるとともに、ウィッペン6のねじ孔6cから上方に突出していて、上端部がジャック7の基部7aの下面に当接している。
【0021】
ジャック7は、例えば合成樹脂によってL字状に形成されており、図2に示すように、前後方向に短く延びる基部7aと、基部7aの後端部からほぼ直角に上方に長く延びるハンマー突上げ部7bを有している。ジャック7は、基部7aとハンマー突上げ部7bとの角部において、ウィッペン6のバックチェックワイヤ8aよりも後ろ側の部分に回動自在に取り付けられている。
【0022】
ジャック7の基部7aの上方の所定位置には、レギュレティングボタン17が設けられている。このレギュレティングボタン17は、センターレール15に設けられた複数のレギュレティングブラケット18(1つのみ図示)と、その前端部に取り付けられ、左右方向に延びるレギュレティングレール19を介して、鍵4ごとに設けられている。
【0023】
また、センターレール15には、バットフレンジ20aを介してバット20が回動自在に取り付けられており、ハンマー3は、このバット20に一体に設けられている。ハンマー3は、バット20から上方に延びるハンマーシャンク3aと、その上端部から後方に延びるハンマーヘッド3bを一体に有している。離鍵状態では、ハンマーシャンク3aは、微小な間隔を隔ててハンマーレール16と対向し、ハンマーヘッド3bは、鉛直に張られた後方の弦Sに対向している。
【0024】
また、バット20には、キャッチャー20bが前方に突出するように設けられており、キャッチャー20bは、前述したバックチェック8の後方に位置し、これと対向している。さらに、バット20には、ハンマー3を図1の時計回りに付勢するバットスプリング20cが設けられている。また、離鍵状態では、ジャック7のハンマー突上げ部7bがバット20に下方から係合している。
【0025】
さらに、アクション1の後方には、ダンパー21が鍵4ごとに設けられている(1つのみ図示)。ダンパー21は、ダンパーフレンジ21aを介してセンターレール15に回動自在に取り付けられたダンパーレバー21bと、ダンパーレバー21bの上側にダンパーワイヤ21cを介して取り付けられたダンパーヘッド21dと、ダンパーヘッド21dを弦S側に付勢するダンパーレバースプリング21eなどで構成されている。このダンパー21は、離鍵時に、ダンパーレバースプリング21eの付勢力によって、ダンパヘッド21dが弦Sに当接することにより止音するためのものである。
【0026】
次に、上述したアクション1およびハンマー3などの押鍵の開始から終了までの一連の動作について説明する。演奏者によって押鍵が行われると、鍵4は、図1の時計回りに回動し、ウィッペン6は、鍵4によって突き上げられ、上方(反時計回り)に回動する。このウィッペン6の回動に伴い、ジャック7はウィッペン6と一緒に上方に移動し、ハンマー3は、バット20を介してジャック7のハンマー突上げ部7bで突き上げられることにより、弦Sに向かって反時計回りに回動する。
【0027】
そして、ウィッペン6が所定角度、回動したときに、ジャック7の基部7aがレギュレティングボタン17に当接することにより、ジャック7の上方への移動が規制される。ウィッペン6がさらに回動すると、ジャック7は、レギュレティングボタン17に当接した状態で、ウィッペン6に対して時計回りに回動する。このジャック7の回動に伴い、ウィッペン6との間に配置されたジャックスプリング11が圧縮される。
【0028】
押鍵がさらに進むと、ジャック7は、ジャックスプリング11を圧縮しながら、時計回りにさらに回動する。そして、鍵4が押し切られる直前で、ウィッペン6に対するジャック7の回動ストローク(以下「ジャックストローク」という)SJが所定ストロークSJLO(図3参照)に達したときに、ハンマー突上げ部7bがバット20から前方に外れ、ジャック7がハンマー3から離脱する。これにより、鍵4のタッチ重さからハンマー3の重量分が急激に失われることにより、演奏者にレットオフ感が付与される。このジャック7の離脱後、ハンマー3は、慣性で回動し、弦Sを打弦することによって、演奏音が発生する。そして、ハンマー3は、バットスプリング20cのばね力によって時計回りに復帰回動し、キャッチャー20bがバックチェック8に係止されることで、一時的に停止する。
【0029】
そして、押鍵が終了し、鍵4が離鍵されると、鍵4およびウィッペン6は、押鍵時と反対方向に回動する。これに伴い、ジャック7は、圧縮されたジャックスプリング11のばね力によって、ウィッペン6に対して反時計回りに復帰回動し、ハンマー突上げ部7bがバット20の下側に入り込む。また、ウィッペン6の復帰回動によりバックチェック8がキャッチャー20bから離れることによって、バット20がジャック7のハンマー突上げ部7bに係合し、ハンマー3が離鍵状態に復帰する。以上により、押鍵時から離鍵時までのアクション1の一連の動作が終了する。
【0030】
また、このアクション1では、ウィッペン6に取り付けた調整ねじ10によって、ジャックスプリング11のばね力FJSを調整することができる。具体的には、図2に示すように、調整ねじ10の溝10aにドライバーDを下方から挿入し、例えば、調整ねじ10を回して上方に移動させると、それと一体のジャックスプリング11が上方に移動することによって、ウィッペン6の上面からのジャックスプリング11の突出長さがより大きくなる。これに伴い、ジャックスプリング11の圧縮量が全体としてより大きくなり、図3(a)に示すように、ジャックストロークSJに対するジャックスプリング11のばね力FJSが全体的に増大するので、ジャック7を復帰回動させる際のばね力FJSも増大する。その結果、押鍵後にジャック7がハンマー3側により速く戻るようになり、より良好な連打性を得ることができる。
【0031】
一方、上記とは逆に、調整ねじ10を下方に移動させると、ジャックスプリング11が下方に移動し、ウィッペン6の上面からの突出長さはより小さくなる。それに伴い、ジャックスプリング11の圧縮量が全体としてより小さくなり、図3(c)に示すように、ジャックストロークSJに対するジャックスプリング11のばね力FJSが全体的に減少するので、「ばねっぽい」感覚を抑制でき、タッチ感を向上させることができる。
【0032】
以上のように、調整ねじ10でジャックスプリング11の突出長さを調整することによって、ジャックスプリング11のばね力FJSを無段階にきめ細かく調整でき、したがって、良好なタッチ感と連打性を両立させることができる。
【0033】
また、本実施形態のアクション1は、基本的に、通常のアクションに調整ねじ10を付加するだけで構成されるので、複雑なレペティション機構を必要とする従来のアクションと比較して、非常に単純かつ安価に構成することができる。また、ウィッペン6にねじ孔6cを形成し、調整ねじ10を取り付けるので、調整ねじ10の取付によるウィッペン6の重量の変化量は小さく、それによる鍵4の静的荷重やアクション1の動作への影響はほとんどない。
【0034】
また、ジャック7側には、加工や部品の付加などの変更がまったく加えられないので、ジャック7の所望の動作を、その調整を必要とすることなく、容易に得ることができる。さらに、ウィッペン6から上方に突出した調整ねじ10で、ジャックスプリング11を下側から安定して支持することができる。また、アップライトピアノでは一般に、ウィッペン6の下側に比較的大きなスペースが存在するので、このスペースを利用して、調整ねじ10をドライバーDによってウィッペン6の下側から容易に操作でき、その調整作業を容易に行うことができる。
【0035】
図4は、実施形態に対する変形例を示している。この変形例は、実施形態のアクション1に対し、調整ねじ10およびジャックスプリング11を取り付ける構成のみを変更したものである。
【0036】
具体的には、ウィッペン6の下部にねじ孔6dが形成されるとともに、ウィッペン6の上部には、ねじ孔6dに連なるように、より大きな径のばね受け収容孔6eが形成されている。また、調整ねじ10の先端には、円板状のばね受け31が固定されている。調整ねじ10はねじ孔6dに上方からねじ込まれており、それにより、調整ねじ10の溝10aがねじ孔6dの開放された下面に臨むとともに、ばね受け31がばね受け収容孔6eに収容されるようになっている。また、ジャックスプリング11は、ばね受け31に載った状態で、ばね受け31とジャック7の基部7aとの間に設けられている。
【0037】
以上の構成によれば、調整ねじ10をドライバーDで回し、上下させることによって、ウィッペン6からのジャックスプリング11の突出長さを無段階に調整でき、したがって、前述した第1実施形態による効果を同様に得ることができる。
【0038】
図5は、実施形態に対する別の変形例を示している。この変形例は、実施形態では調整ねじ10がウィッペン6に取り付けられているのに対し、調整ねじ10をジャック7に取り付けたものである。具体的には、ジャック7の基部7aに、上下方向に貫通するねじ孔7cが形成されており、このねじ孔7cに調整ねじ10が上方からねじ込まれている。また、ジャックスプリング11は、その上端部が調整ねじ10の先端部(下端部)に嵌められ、接着されるとともに、下端部がウィッペン6の上面に当接している。
【0039】
この構成によれば、調整ねじ10をドライバーDで上方から回すことによって、ジャック7の下面からのジャックスプリング11の突出長さを無段階に調整でき、したがって、前述した第1実施形態による効果を同様に得ることができる。
【0040】
なお、本発明は、説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、調整ねじ10とジャックスプリング11との連結を、調整ねじ10への嵌め込みおよび接着や、ばね受け31への載置によって行っているが、他の適当な連結手段を用いてもよいことはもちろんである。
【0041】
また、実施形態では、ジャックスプリングとして、線形のばね特性を有するものを用いたが、非線形のばね特性を有するばね、例えば、不等ピッチコイルばねを採用してもよい。それにより、ジャックスプリングの突出長さと非線形特性との組合わせによって、そのばね力をよりきめ細かく設定することができる。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態によるアクションなどを離鍵状態において示す側面図である。
【図2】図1のアクションのジャックなどの部分を示す部分破断拡大側面図である。
【図3】図1のアクションにおける、ジャックスプリングの突出長さ、ジャックストロークおよびジャックスプリングのばね力の関係を示す図である。
【図4】実施形態の変形例によるアクションを示す、図2と同様の部分破断拡大側面図である。
【図5】実施形態の別の変形例によるアクションを示す、図2と同様の部分破断拡大側面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 アクション
3 ハンマー
4 鍵
6 ウィッペン
6c ねじ孔
6d ねじ孔
7 ジャック
7c ねじ孔
10 調整ねじ
11 ジャックスプリング
17 レギュレティングボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍵の押鍵に伴って作動し、ハンマーを回動させることにより打弦を行わせるアップライトピアノのアクションであって、
押鍵時に、前記鍵によって突き上げられ、上方に回動するウィッペンと、
当該ウィッペンの上方の所定位置に設けられたレギュレティングボタンと、
前記ウィッペンに回動自在に取り付けられ、前記ハンマーに係合し、前記ウィッペンの回動に伴って前記ハンマーを突き上げ、回動させるとともに、当該回動の途中で、前記レギュレティングボタンに当接することによって、前記ウィッペンに対して回動し、前記ハンマーから離脱するジャックと、
前記ウィッペンと前記ジャックの間に設けられ、当該ジャックを、前記離脱後に前記ハンマーに再係合させるために、当該ハンマー側に付勢するジャックスプリングと、を備え、
前記ウィッペンおよび前記ジャックの一方には、上下方向に貫通するねじ孔が形成されており、
当該ねじ孔に進退自在にねじ込まれ、前記ジャックスプリングに連結されるとともに、回転操作により、前記ウィッペンおよび前記ジャックの前記一方からの前記ジャックスプリングの突出長さを調整する調整ねじをさらに備えることを特徴とするアップライトピアノのアクション。
【請求項2】
前記調整ねじが前記ウィッペンに取り付けられていることを特徴とする、請求項1に記載のアップライトピアノのアクション。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−102209(P2008−102209A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−282895(P2006−282895)
【出願日】平成18年10月17日(2006.10.17)
【出願人】(000001410)株式会社河合楽器製作所 (563)