説明

アップライトピアノのブライドルワイヤーの取付構造

【課題】ウィッペンに対するブライドルテープの取付けおよび取外しを容易に行うことができ、それにより、アクションのメンテナンスや整調などを効率良く行うことができるアップライトピアノのブライドルワイヤーの取付構造を提供する。
【解決手段】押鍵に伴って回動するウィッペン3に、離鍵時にハンマー9を引き戻すためのブライドルテープ14に連結されたブライドルワイヤー12を取り付けるアップライトピアノのブライドルワイヤーの取付構造であって、ウィッペン3は、前端部にワイヤー取付部31を有し、ブライドルワイヤー12は、ワイヤー取付部31に着脱自在に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アップライトピアノのアクションに設けられ、離鍵時にハンマーを引き戻すためのブライドルテープに連結されたブライドルワイヤーを、ウィッペンに取り付けるブライドルワイヤーの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的なブライドルワイヤーの取付構造を有するアップライトピアノのアクションとして、特許文献1に開示されたものが知られている。図7に示すように、このアクション1は、鍵2の押鍵に伴って回動するウィッペン3と、バットフレンジ7に回動自在に支持された、ハンマー9と一体のバット8などを備えており、これらの部品は、鍵2ごとに設けられている。ウィッペン3の上面の前端部(同図の右端部)には、バックチェックワイヤー11およびブライドルワイヤー12が後ろ側から順に立設し、固定されている。また、バックチェックワイヤー11の上端部には、バックチェック13が固定され、ブライドルワイヤー12の上端部には、ブライドルテープ14が着脱自在に取り付けられている。
【0003】
ブライドルテープ14は、鍵2の押鍵に伴い、ウィッペン3を介して、図7の反時計方向にバット8と一体に回動するハンマー9を、弦Sの打弦後に引き戻すためのものであり、上述したように、ブライドルワイヤー12を介して、ウィッペン3に取り付けられている。このブライドルテープ14は、細長い布などで構成されており、その一端部が、バット8から前方に延びるキャッチャーシャンク15とキャッチャー16の間に接着されている。また、ブライドルテープ14の他端部には、人工皮革などで構成された補強用のテープスキン14aが接着されている。
【0004】
図8は、ブライドルワイヤー12とブライドルテープ14の連結構造および連結手順を示している。同図(a)に示すように、ブライドルワイヤー12の上端部は、逆三角形状に折り曲げられた連結部12aになっており、連結部12aの先端部はさらに内側に折り曲げられている。一方、ブライドルテープ14のテープスキン14aには、連結孔14bが形成されている。そして、同図(b)に示すように、ブライドルテープ14は、テープスキン14aを連結部12aに挿入した後、連結部12aの先端部を連結孔14bに通すことによって、ブライドルワイヤー12に連結されている。
【0005】
また、図7および図9に示すように、各ブライドルワイヤー12の連結部12aは、バックチェック13の下方に、かつ互いに隣接するバックチェックワイヤー11、11の間に配置されている。このため、ブライドルテープ14は、キャッチャー16から、バックチェックワイヤー11、11の間を通って前方に延び、ブライドルワイヤー12に連結されている。
【0006】
以上のようなアクション1を有するアップライトピアノでは、アクション1のメンテナンスや、鍵2およびアクション1が適正に動作するように調整するいわゆる整調などを行う際に、ブライドルテープ14がブライドルワイヤー12から取り外されることがある。これは、ブライドルテープ14が取り付けられたままであると、例えば、ハンマー9を、バット8とともに回動させながら調整したり、バット8およびバットフレンジ7とともにセンターレール6から取り外したりする際に、ハンマー9の移動がブライドルテープ14で規制されることによって、それらの作業の邪魔になるからである。このため、整調などの際には、ブライドルテープ14は、ブライドルワイヤー12から一旦、取り外され、その後再度、取り付けられる。
【0007】
しかし、ブライドルワイヤー12から取り外されると、ブライドルテープ14は、図7の二点鎖線で示すように、キャッチャー16から垂れ下がり、バックチェックワイヤー11よりも奥側(図7の左側)に入り込みやすい。その場合には、ブライドルテープ14を再度、取り付けるために、その先端部をバックチェックワイヤー11よりも前方に引き出す必要があり、そのためには、隣接するバックチェックワイヤー11、11の間の非常に狭い隙間に指など入れなければならない。しかも、図9に示すように、バックチェックワイヤー11、11の間の前方には、ブライドルワイヤー12が存在しているために、それが邪魔になり、ブライドルテープ14を引き出し難い。加えて、テープスキン14a、およびブライドルワイヤー12の連結部12aのサイズがいずれも小さいため、両者14a、12aを連結する作業も非常に行い難い。以上のように、ブライドルテープ14をブライドルワイヤー12から取り外すと、その後の両者14、12の連結作業が非常に煩雑であり、そのため、整調などの作業に手間がかかってしまう。
【0008】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、ウィッペンに対するブライドルテープの取付けおよび取外しを容易に行うことができ、それにより、アクションのメンテナンスや整調などを効率良く行うことができるアップライトピアノのブライドルワイヤーの取付構造を提供することを目的とする。
【0009】
【特許文献1】実公平1−19184号公報
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、押鍵に伴って回動するウィッペンに、離鍵時にハンマーを引き戻すためのブライドルテープに連結されたブライドルワイヤーを取り付けるアップライトピアノのブライドルワイヤーの取付構造であって、ウィッペンは、前端部にワイヤー取付部を有し、ブライドルワイヤーは、ワイヤー取付部に着脱自在に取り付けられていることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、押鍵に伴って回動するウィッペンが、前端部にワイヤー取付部を有しており、このワイヤー取付部に、ブライドルテープを連結したブライドルワイヤーが、着脱自在に取り付けられている。このため、ブライドルテープをブライドルワイヤーに連結したまま、ブライドルワイヤーを、ワイヤー取付部を介して、ウィッペンに着脱できるので、ブライドルテープをブライドルワイヤーに着脱する従来に比べて、ウィッペンに対するブライドルテープの取付けおよび取外しを容易に行うことができる。それにより、アクションのメンテナンスや整調などを効率良く行うことができる。また、ブライドルテープは、ブライドルワイヤーに連結されたままであるので、ブライドルワイヤーがワイヤー取付部から取り外された場合でも、アクションの奥側に入り込み難いという利点も得られる。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のアップライトピアノのブライドルワイヤーの取付構造において、ブライドルワイヤーは、下端部にボルト部を有し、ワイヤー取付部には、上下方向に貫通し、ボルト部が通されるボルト孔が形成されており、ボルト部に螺合し、ワイヤー取付部をその上下から締め付ける上下2つのナットを、備えていることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、ブライドルワイヤーの下端部のボルト部が、ワイヤー取付部のボルト孔に通され、ボルト部に螺合する上下2つのナットにより、ワイヤー取付部がその上下から締め付けられている。これにより、ブライドルワイヤーは、ウィッペンにしっかりと取り付けられる。ブライドルワイヤーを取り外す場合には、下側のナットを回してボルト部から取り外し、ブライドルワイヤーをワイヤー取付部のボルト孔から引き抜くことにより、ブライドルワイヤーを容易に取り外すことができる。また、ブライドルワイヤーを再度、取り付ける場合には、上記と逆の手順で容易に取り付けることができる。
【0014】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載のアップライトピアノのブライドルワイヤーの取付構造において、ブライドルワイヤーが固定され、ワイヤー取付部に着脱自在に取り付けられるワイヤー固定部材を、備えていることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、ブライドルワイヤーが固定されたワイヤー固定部材が、ウィッペンのワイヤー取付部に着脱自在であるので、ブライドルワイヤーをワイヤー取付部に直接、挿入して固定したり、その固定を解除して引き抜いたりする場合に比べて、ウィッペンに対するブライドルワイヤーの着脱作業を容易に行うことができる。
【0016】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載のアップライトピアノのブライドルワイヤーの取付構造において、ワイヤー取付部は、前面に開口するねじ穴を有し、ワイヤー固定部材は、前後方向に貫通するボルト孔を有しており、ボルト孔に通されるとともにねじ穴にねじ込まれ、ワイヤー固定部材をワイヤー取付部に対して締め付けるボルトを、さらに備えていることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、ボルトを、ワイヤー固定部材のボルト孔に通すとともに、ワイヤ取付部のねじ穴にねじ込むことによって、ワイヤー固定部材をワイヤー取付部に対して締め付けるので、ブライドルワイヤーを、ワイヤー固定部材を介して、ウィッペンにしっかりと取り付けることができる。ブライドルワイヤーを取り外す場合には、ボルトを、ねじ込み時と反対方向に回し、ねじ穴から取り外すことにより、ブライドルワイヤーを、ワイヤー固定部材とともにウィッペンから容易に取り外すことができる。また、ブライドルワイヤーを再度、取り付ける場合には、上記と逆の手順で容易に取り付けることができる。
【0018】
請求項5に係る発明は、請求項3に記載のアップライトピアノのブライドルワイヤーの取付構造において、ワイヤー取付部およびワイヤー固定部材の一方は、係合凸部を有し、ワイヤー取付部およびワイヤー固定部材の他方は、係合凸部に着脱自在に係合する係合凹部を有していることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、ワイヤー取付部およびワイヤー固定部材の一方には係合凸部が、他方にはその係合凸部に着脱自在に係合する係合凹部が設けられているので、係合凸部と係合凹部を互いに係合させることにより、ワイヤー固定部材をワイヤー取付部に容易に取り付けることができ、また、係合凸部と係合凹部の係合を解除することにより、ワイヤー固定部材をワイヤー取付部から容易に取り外すことができる。このように、係合凸部と係合凹部の係合およびその解除を行うことにより、ボルトなどを用いることなく、ウィッペンに対するブライドルワイヤーの着脱を容易に行うことができる。
【0020】
請求項6に係る発明は、請求項3に記載のアップライトピアノのブライドルワイヤーの取付構造において、ワイヤー取付部には、バックチェックワイヤーが立設されており、ワイヤー固定部材は、後方に開放し、ワイヤー取付部に嵌合する嵌合部と、バックチェックワイヤーに係合するワイヤー係合部と、を有していることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、ウィッペンのワイヤー取付部に対し、後方に開放する嵌合部を介して、ワイヤー固定部材を前方から嵌合させるだけで、ワイヤー固定部材をワイヤー取付部に容易に取り付けることができる。この場合、ワイヤー固定部材とワイヤー取付部の嵌合に加えて、ワイヤー固定部材のワイヤー係合部が、ウィッペン側のバックチェックワイヤーに係合するので、ワイヤー固定部材をワイヤー取付部によりしっかりと取り付けることができる。また、ワイヤー固定部材を前方に引き抜くだけで、ワイヤー取付部から容易に取り外すことができる。以上のように、ワイヤー取付部に対するワイヤー固定部材の嵌合およびその解除を行うことにより、上記請求項5と同様、ボルトなどを用いることなく、ブライドルワイヤーの着脱を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態によるブライドルワイヤーの取付構造を有するアップライトピアノのアクション1を、離鍵状態において示している。なお、前述した従来と同じ構成部品については、同じ符号を付すものとする。
【0023】
アクション1は、左右方向(図1の表裏方向)に並んだ多数の鍵2で構成された鍵盤21の後端部(図1の左端部)の上方に配置されている。各鍵2は、前後方向(図1の左右方向)の中央において、筬22に立設されたバランスピン23に回動自在に支持されている。鍵2の上面の後端部には、キャプスタンボタン24が突設されており、このキャプスタンボタン24に、アクション1のウィッペン3が載置されている。
【0024】
アクション1は、鍵2の押鍵に伴って回動するウィッペン3と、これに突設されたジャックフレンジ4を介して、ウィッペン3に回動自在に支持されたジャック5と、センターレール6にねじ止めされたバットフレンジ7に回動自在に支持され、ハンマー9と一体のバット8などを備えており、これらの部品が鍵2ごとに設けられている。ウィッペン3は、前後方向に延びており、その前部から下方に突出するヒール部3aを介して、前記キャプスタンボタン24に載置されている。また、ウィッペン3は、その後端部において、センターレール6にねじ止めされたウィッペンフレンジ25の下端部に回動自在に支持されている。さらに、ウィッペン3の前端部(以下「ワイヤー取付部31」という)には、従来と同様、バックチェックワイヤー11が立設されており、加えて、このバックチェックワイヤー11よりも前方に若干間隔を隔てて、ブライドルワイヤー12が着脱自在に取り付けられている。なお、このブライドルワイヤー12自体の構造、およびワイヤー取付部31に対する取付構造については後述する。
【0025】
ジャック5は、側面形状がL字状に形成され、その角部において、ジャックフレンジ4の上端部に回動自在に支持されている。バット8は、所定の厚さを有するブロック状に形成され、バットフレンジ7の上端部に回動自在に支持されている。
【0026】
また、このバット8の上側および前側にはそれぞれ、ハンマー9およびキャッチャー16が取り付けられている。ハンマー9は、バット8から上方に延びるハンマーシャンク9aと、その上端部に取り付けられ、弦Sに対向するハンマーヘッド9bで構成されている。一方、キャッチャー16は、バット8から前方に延びるキャッチャーシャンク15を介して、その前端部に取り付けられている。そして、キャッチャー16のキャッチャーシャンク15との連結部分に、ブライドルテープ14の一端部が接着されている。このブライドルテープ14は、従来と同様、細長い布などで構成されている。また、ブライドルテープ14の他端部は、ブライドルワイヤー12の上端部に取り付けられている。
【0027】
ウィッペン3のワイヤー取付部31は、矩形状の断面を有している。前述したように、このワイヤー取付部31には、所定の径を有するバックチェックワイヤー11が、その下端部を埋設した状態で立設され、上端部にバックチェック13が取り付けられている。図2は、図1の一点鎖線で示す円C内の拡大図であり、ワイヤー取付部31の一部を破断して示している。同図に示すように、ワイヤー取付部31は、上下方向に貫通し、ブライドルワイヤー12を取り付けるためのボルト孔31aを有している。
【0028】
図1および図2に示すように、ブライドルワイヤー12は、前記バックチェックワイヤー11よりも小さい径を有しており、下部の所定位置において若干屈曲している。その屈曲部よりも下側の部分には、長さ方向の全体にわたって雄ねじを形成したボルト部12aが設けられており、ワイヤー取付部31のボルト孔31aに挿通されている。また、ボルト部12aには、上下2つのナット32、32が螺合しており、これらのナット32、32によって、ワイヤー取付部31が上下から締め付けられている。これにより、ブライドルワイヤー12は、ワイヤー取付部31にしっかりと取り付けられている。なお、図示は省略するが、ブライドルワイヤー12の上端部は、例えば、扁平に加工されたり、折り曲げ加工されたりしており、その上端部にブライドルワイヤー12の他端部が接着などによって固定されている。
【0029】
以上のように構成されたアクション1は、鍵2の押鍵および離鍵に伴い、次のように動作する。すなわち、図1の離鍵状態から鍵2が押鍵されると、鍵2にキャプスタンボタン24を介して載置されたウィッペン3が上方に回動し、ウィッペン3とともに上昇するジャック5が、バット8を突き上げて同図の反時計方向に回動させることにより、ハンマー9が弦Sを打弦する。打弦後、ハンマー9は逆方向に復帰回動し、その際、キャッチャー16がバックチェック13に当接することによって、ハンマー9が静止する。その後、鍵2が離鍵されると、ウィッペン3の復帰回動に伴い、バックチェック13がキャッチャー16から離れる。これにより、ハンマー9は、キャッチャー16とブライドルワイヤー12の間に連結されたブライドルテープ14により引き戻され、時計方向に回動することによって、離鍵状態に復帰する。
【0030】
また、アクション1のメンテナンスや整調などを行う際には、ハンマー9の回動などがブライドルテープ14で規制されないようにするために、ブライドルテープ14をブライドルワイヤー12から取り外す従来と異なり、ブライドルテープ14を連結したたままのブライドルワイヤー12をウィッペン3から取り外す。この場合、図1および図2に示す状態から、下側のナット32を所定方向に回し、ブライドルワイヤー12のボルト部12aから取り外した後、ブライドルワイヤー12をワイヤー取付部31のボルト孔31aから引き抜くことにより、ブライドルワイヤー12をウィッペン3から容易に取り外すことができる。また、ブライドルワイヤー12を再度、取り付ける場合には、上記と逆の手順で、ブライドルワイヤー12をウィッペン3に容易に取り付けることができる。なお、上記ボルト孔31aの内面に雌ねじを形成し、その雌ねじにブライドルワイヤー12のボルト部12aを螺合させるようにしてもよい。この場合には、上下2つのナット32、32を省略することができる。
【0031】
以上のように、本実施形態によれば、ブライドルテープ14をブライドルワイヤー12に連結したまま、ブライドルワイヤー12を、ワイヤー取付部31を介して、ウィッペン3に着脱できるので、ブライドルテープ14をブライドルワイヤー12に着脱する従来に比べて、ウィッペン3に対するブライドルテープ14の取付けおよび取外しを容易に行うことができる。それにより、アクション1のメンテナンスや整調などを効率良く行うことができる。また、ブライドルテープ14は、ブライドルワイヤー12に連結されたままであるので、ブライドルワイヤー12がウィッペン3から取り外された場合でも、バックチェックワイヤー11よりも後ろ側に入り込み難い。そのため、従来と異なり、隣接するバックチェックワイヤー11、11の間に指などを入れ、ブライドルテープ14を引き出す必要がなく、整調などをより一層効率良く行うことができる。
【0032】
図3は、本発明の第2実施形態によるブライドルワイヤーの取付構造を示している。本実施形態では、ウィッペン3のワイヤー取付部31の前面に、ブライドルワイヤー12の下端部を固定したワイヤー固定部材33が着脱自在に取り付けられている。同図に示すように、ワイヤー取付部31には、バックチェックワイヤー11のみが、その下端部を埋設した状態で立設されている。また、ワイヤー取付部31には、前面に開口するねじ穴31bが形成されている。一方、ワイヤー固定部材33は、所定サイズのブロック状に形成されている。このワイヤー固定部材33には、ブライドルワイヤー12が、その下端部を後述するボルト孔33aの付近まで埋設した状態で立設されている。また、ワイヤー固定部材33には、前後方向に貫通する上記ボルト孔33aが形成されている。そして、ボルト34が、ワイヤー固定部材33の前方からボルト孔33aに挿入されるとともに、ねじ穴31bにねじ込まれている。これにより、ワイヤー固定部材33は、ボルト34によって、ウィッペン3のワイヤー取付部31に締め付けられている。
【0033】
ブライドルワイヤー12をウィッペン3から取り外す場合には、ボルト34をねじ込み時と反対方向に回し、ねじ穴31bから取り外すことにより、ブライドルワイヤー12を、ワイヤー固定部材33とともにウィッペン3から容易に取り外すことができる。また、ブライドルワイヤー12を再度、取り付ける場合には、上記と逆の手順で容易に取り付けることができる。
【0034】
以上のように、本実施形態によれば、ブライドルワイヤー12が、ワイヤー固定部材33を介して、ウィッペン3に着脱自在であるので、前述した第1実施形態と同様の作用、効果を得ることができる。
【0035】
図4は、本発明の第3実施形態によるブライドルワイヤーの取付構造を、その取付け前後において平面的に示している。本実施形態は、前記第1および第2実施形態と異なり、ナットやボルトを用いることなく、ブライドルワイヤー12がウィッペン3に着脱自在に構成されたものである。同図に示すように、このワイヤー取付部31の左右の側面(同図の上下面)の所定位置にはそれぞれ、外方に向かって広がるテーパ状の係合凹部31c、31cが左右対称に形成されている。一方、ブライドルワイヤー12の下端部が固定されたワイヤー固定部材35は、互いに左右方向に間隔を隔てて、後方に平行に延びる左右一対の側壁35a、35aを有している。これらの側壁35a、35aの間の距離は、ワイヤー取付部31の左右方向の寸法よりも若干短くなっている。また、両側壁35a、35aの内面の後端部(同図の左端部)には、互いに対向し、ワイヤー取付部31の係合凹部31c、31と相補的な形状を有する係合凸部35b、35bが形成されている。
【0036】
このように構成されたワイヤー固定部材35は、ワイヤー取付部31に前方からはめ込むことにより、これに容易に取り付けることができる。この場合、ワイヤー固定部材35の左右の側壁35a、35がワイヤー取付部31を左右から挟持するとともに、両係合凸部35b、35bが両係合凹部31c、31に係合し、これにより、ブライドルワイヤー12は、ワイヤー固定部材35を介して、ウィッペン3にしっかりと取り付けられる。また、ワイヤー固定部材35をワイヤー取付部31から前方に引き抜くことにより、ブライドルワイヤー12をウィッペン3から容易に取り外すことができる。なお、ワイヤー取付部31の係合凹部31cと、ワイヤー固定部材35の係合凸部35bとの凹凸の配置を逆にすることも可能である。
【0037】
以上のように、本実施形態によれば、前述した第1実施形態と同様の作用、効果を得ることができ、加えて、ナットやボルトを用いることなく、ワイヤー固定部材35をワイヤー取付部31に着脱できるので、ブライドルワイヤー12の着脱をより一層容易に行うことができる。
【0038】
図5は、本発明の第4実施形態によるブライドルワイヤーの取付構造を、その取付け前後において斜視的に示している。本実施形態も、第3実施形態と同様、ナットやボルトを用いることなく、ブライドルワイヤー12がウィッペン3に着脱自在に構成されたものである。同図に示すように、このワイヤー取付部31には、ワイヤー固定部材36の後述する係合凸部38と相補的な形状を有する係合凹部31dが設けられている。この係合凹部31dは、ワイヤー取付部31の前面に開口するとともに、上面にスリット状に開口している。一方、ワイヤー固定部材36は、ブロック状に形成され、ブライドルワイヤー12の下端部が固定された固定部材本体37と、この固定部材本体37の背面に突設された係合凸部38とを有している。この係合凸部38は、円形の断面を有し、後端部が傘状に形成された凸部本体38aと、この凸部本体38aの前半部の上側と固定部材本体37の背面の間に設けられた板状の係合片38bとで構成されている。なお、凸部本体38aの後端部は、弾性を有しており、係合凹部31dに対する係合凸部38の係合およびその解除の際に、若干変形するようになっている。
【0039】
このように構成されたワイヤー固定部材36は、係合凸部38を係合凹部31dに前方から挿入し、係合させることにより、ワイヤー取付部31に容易に取り付けることができる。この場合、係合凸部38の凸部本体38aの後端部が、ワイヤー固定部材36の抜け止めとして機能するとともに、係合片38bが回り止めとして機能し、これにより、ブライドルワイヤー12は、ワイヤー固定部材36を介して、ウィッペン3にしっかりと取り付けられる。また、ワイヤー固定部材36をワイヤー取付部31から前方に引き抜くことにより、ブライドルワイヤー12をウィッペン3から容易に取り外すことができる。以上のように、本実施形態によれば、前記第3実施形態と同様の作用、効果を得ることができる。なお、第3実施形態と同様に、係合凹部31dと、係合凸部38との凹凸の配置を逆にすることも可能である。
【0040】
図6は、本発明の第5実施形態によるブライドルワイヤーの取付構造を、その取付け前後において斜視的に示している。本実施形態も、第3および第4実施形態と同様、ナットやボルトを用いることなく、ブライドルワイヤー12がウィッペン3に着脱自在に構成されたものである。同図に示すように、このワイヤー取付部31は、矩形の断面を有しており、第2〜第4実施形態と異なり、ねじ穴31bや係合凹部31c、31dなどは形成されていない。一方、ワイヤー固定部材39は、ブロック状に形成されており、ワイヤー取付部31に嵌合する嵌合部40を有している。この嵌合部40は、後方に開放するとともに矩形の断面を有する凹状に形成されており、その内側の上下左右の寸法がワイヤー取付部31の外形のそれらよりも若干短くなっている。また、嵌合部40の左右の側壁の上部には、前後方向に延びる左右一対のスリット40a、40aが、上壁には、前後方向に延びるスリット40bが形成されており、これらのスリット40a、40bはいずれも、後方に開放している。また、上壁のスリット40bは、バックチェックワイヤー11の径よりも小さい幅を有するとともに、中央にバックチェックワイヤー11に係合するワイヤー係合部40cを有している。
【0041】
このように構成されたワイヤー固定部材39は、嵌合部40をワイヤー取付部31に前方から嵌合させることにより、ワイヤー取付部31に容易に取り付けることができる。この場合、左右のスリット40a、40aがワイヤー取付部31で若干押し広げられ、嵌合部40の上壁および下壁などの復元力によって、ワイヤー固定部材39がワイヤー取付部31にしっかりと取り付けられる。また、上壁のスリット40bのワイヤー係合部40cがバックチェックワイヤ11に係合することにより、ワイヤー固定部材39が抜け止め状態で、ワイヤー取付部31に取り付けられる。以上により、ブライドルワイヤー12は、ワイヤー固定部材39を介して、ウィッペン3にしっかりと取り付けられる。また、ワイヤー固定部材39をワイヤー取付部31から前方に引き抜くことにより、ブライドルワイヤー12をウィッペン3から容易に取り外すこともできる。以上のように、本実施形態によれば、第3実施形態と同様の作用、効果を得ることができる。
【0042】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、ブライドルワイヤー12がウィッペン3に着脱自在に取り付けられる構造であれば、その他の取付構造を採用してもよい。また、ブライドルワイヤー12とブライドルテープ14との連結を、従来と同様の連結構造を採用することも可能である。また、実施形態で示したブライドルワイヤー12、ブライドルテープ14、ワイヤー取付部31およびワイヤー固定部材33、35、36、39の細部の構成などは、あくまで例示であり、本発明の趣旨の範囲内で適宜、変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1実施形態によるブライドルワイヤーの取付構造を有するアップライトピアノのアクションを、離鍵状態において示す側面図である。
【図2】図1のウィッペンに対するブライドルワイヤーの取付構造を拡大して示す側面図である。
【図3】第2実施形態によるブライドルワイヤーの取付構造を拡大して示す側面図である。
【図4】第3実施形態によるブライドルワイヤーの取付構造について、(a)取付け前、(b)取付け後を示す平面図である。
【図5】第4実施形態によるブライドルワイヤーの取付構造について、(a)取付け前、(b)取付け後を示す斜視図である。
【図6】第5実施形態によるブライドルワイヤーの取付構造について、(a)取付け前、(b)取付け後を示す斜視図である。
【図7】従来のウィッペンに対するブライドルワイヤーの取付構造を有するアップライトピアノのアクションを示す側面図である。
【図8】図7のブライドルワイヤーとブライドルテープの連結構造および連結手順を示す図である。
【図9】図7のアクションを前方から見たときのブライドルワイヤーの周囲を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
1 アクション
2 鍵
3 ウィッペン
9 ハンマー
11 バックチェックワイヤー
12 ブライドルワイヤー
12a ボルト部
14 ブライドルテープ
31 ワイヤー取付部
31a ボルト孔
31b ねじ穴
31c 第3実施形態の係合凹部
31d 第4実施形態の係合凹部
32 ナット
33 第2実施形態のワイヤー固定部材
33a ボルト孔
34 ボルト
35 第3実施形態のワイヤー固定部材
35b 第3実施形態の係合凸部
36 第4実施形態のワイヤー固定部材
38 第4実施形態の係合凸部
39 第5実施形態のワイヤー固定部材
40 第5実施形態の嵌合部
40c ワイヤー係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押鍵に伴って回動するウィッペンに、離鍵時にハンマーを引き戻すためのブライドルテープに連結されたブライドルワイヤーを取り付けるアップライトピアノのブライドルワイヤーの取付構造であって、
前記ウィッペンは、前端部にワイヤー取付部を有し、
前記ブライドルワイヤーは、前記ワイヤー取付部に着脱自在に取り付けられていることを特徴とするアップライトピアノのブライドルワイヤーの取付構造。
【請求項2】
前記ブライドルワイヤーは、下端部にボルト部を有し、
前記ワイヤー取付部には、上下方向に貫通し、前記ボルト部が通されるボルト孔が形成されており、
前記ボルト部に螺合し、前記ワイヤー取付部をその上下から締め付ける上下2つのナットを、備えていることを特徴とする請求項1に記載のアップライトピアノのブライドルワイヤーの取付構造。
【請求項3】
前記ブライドルワイヤーが固定され、前記ワイヤー取付部に着脱自在に取り付けられるワイヤー固定部材を、備えていることを特徴とする請求項1に記載のアップライトピアノのブライドルワイヤーの取付構造。
【請求項4】
前記ワイヤー取付部は、前面に開口するねじ穴を有し、
前記ワイヤー固定部材は、前後方向に貫通するボルト孔を有しており、
前記ボルト孔に通されるとともに前記ねじ穴にねじ込まれ、前記ワイヤー固定部材を前記ワイヤー取付部に対して締め付けるボルトを、さらに備えていることを特徴とする請求項3に記載のアップライトピアノのブライドルワイヤーの取付構造。
【請求項5】
前記ワイヤー取付部および前記ワイヤー固定部材の一方は、係合凸部を有し、
前記ワイヤー取付部および前記ワイヤー固定部材の他方は、前記係合凸部に着脱自在に係合する係合凹部を有していることを特徴とする請求項3に記載のアップライトピアノのブライドルワイヤーの取付構造。
【請求項6】
前記ワイヤー取付部には、バックチェックワイヤーが立設されており、
前記ワイヤー固定部材は、
後方に開放し、前記ワイヤー取付部に嵌合する嵌合部と、
前記バックチェックワイヤーに係合するワイヤー係合部と、を有していることを特徴とする請求項3に記載のアップライトピアノのブライドルワイヤーの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−256787(P2008−256787A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−96449(P2007−96449)
【出願日】平成19年4月2日(2007.4.2)
【出願人】(000001410)株式会社河合楽器製作所 (563)