説明

アデノウィルスおよびAAVの精製

【課題】治療的適用において使用するために大規模な量の活性な(感染性の)アデノウィルスおよびAAVの精製方法を提供する。
【解決手段】アデノウイルス感染細胞を細胞溶解し、クロマトグラフィ材料との接触から生ずる、ウィルスに対する、特にウィルスの表面成分に対する何らかの損傷が最小にされるかまたは排除されるような様式で、そのようなウィルスを適当なクロマトグラフィ材料と接触させるための改良された方法。その結果は、治療的適用、例えば遺伝子導入/治療処置において使用するために適当な活性な(感染性の)ウィルスの商業的水準の量を迅速に且つ有効に精製することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は1995年8月30日に出願された米国法定特許出願シリアル第60/002,967号(このテキストを参照することにより本明細書に組み入れる)の部分継続出願である。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、特に治療的適用における使用のための、活性な(感染性の)アデノウィルスおよびAAVの大規模な量の精製に関する。特に、本発明は適当なクロマトグラフ材料との接触から生ずる、ウィルスに対する、特にその表面成分に対する何らかの損傷を最小にするかあるいは排除するような様式で、そのようなウィルスを適当なクロマトグラフ材料と接触させるための改良された方法を提供する。その結果は、治療的適用、例えば遺伝子導入/治療処置において使用するために適当な活性な(感染性の)ウィルスの商業的水準量を迅速に且つ効率的に精製するその能力である。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
病気の分子治療は治療上の利益を与えるために関連者の細胞への核酸の投与をしばしば包含する。最も普通には、ウィルスの自然のままの感染性の利点を取り入れそして細胞への異種核酸を移送する(遺伝子導入)それらの能力を取り入れる組み換え体ウィルスが技術的に検討される。そのような組み換え体ウィルスベクターの普及した使用は、そのようなウィルスのデザインおよび生産のための戦略により左右される。
【0004】
遺伝子治療のためにウィルスベクターを使用する大抵の試みは、主に細胞ゲノム中に組み込むレトロウィルスベクターの能力の故に、レトロウィルスベクターに依存していた。しかしながら、分裂する細胞のみに対するそれらの向性、細胞ゲノム中への組み込みの際の挿入突然変異誘発の可能性、時間経過にわたっての導入遺伝子の減少した発現、血清補体による急速な不活性化そして複製−応答能ある(replication−competent)レトロウィルスの生成の可能性を包含する、レトロウィルスベクターの欠点が次第に明らかになって来ている(Jolly,DによるCancer Gene Therapy 1:51−64(1994):Hodgson,C.P.によるBio Technology 13:222−225(1995))。
【0005】
アデノウィルスは古典的遺伝学および分子生物学における研究により十分に特徴づけられた、約36kbのゲノムを有する核DNAウィルスである(1990年ニューヨークのRaven Press発行、Fields,B.N.等監修のVirology第2版におけるHorwitz,M.S.による“Adenoviridae and Their Replication”)。アデノウィルスをベースとするベクターは、とりわけ、分裂性細胞および非分裂性細胞の両方に対する向性、最小の病原性、ベクター株の製造のために高い力価に複製する能力および大きな挿入物を運ぶためのその能力を包含する、細胞への治療的導入遺伝子の送り込みのための幾つかの特有な利点を提供する(Berkner,K.L.によるCurr.Top.Micro.Immunol.158:39−66(1992);Jolly,DによるCancer Gene Therapy 1:51−64(1994))。
【0006】
アデノ随伴ウィルス(AAV)は感染細胞のゲノム中に組み込むことが出来る一本鎖非病原性DNAウィルスである。ウィルス活性周期のこの特徴は、遺伝子治療のための関連者(interest)に遺伝子を送り込むための(組み換え体アデノ随伴ベクター(rAAV)を生成する)遺伝子治療媒体(vehicle)としてAAVの使用に注意を集中させた。細胞ゲノム中に治療遺伝子を挿入するAAVの能力は関連者(interest)の遺伝子の持続した発現を容易にしそして遺伝子治療ベクターの繰り返しての投与の必要性を減少させる。
【0007】
アデノウィルスおよびアデノ随伴ウィルス(AAV)の精製のための現在の方法は、治療的用途のためのウィルス株の大規模な生産を容易に可能にすることが出来ない、密度勾配遠心分離の使用を包含する。AAVベクターの普及した使用をさらに制限するのは、AAVベクター株の増殖のために必要とされる汚染性アデノウィルスを除去する一方で、高い力価のAAVを生ずる何らかの適当な精製方法が一般に欠如していることである。
【0008】
イオン交換、親和クロマトグラフィおよびゲル濾過は、たんぱく質精製において広く使用されているカラムクロマトグラフィ手段である。しかしながら、最近まで、これらの方法はアデノウィルスの精製には適用不能であった。そのような技術は、ウィルスに対して損傷を生じ、それにより標的細胞に結合し且つ感染させるそれらの能力を減少させた。1995年8月30日に出願された法定米国特許出願シリアル第60/002,967号は本明細書において一層十分に記載されるようなクロマトグラフィ分画化(chromatographic fractionation)技術を使用する感染性アデノウィルスを精製するためのパラメーターを記載している。最近の研究は組み換え体アデノウィルスの精製においてカラムクロマトグラフィが使用されることが出来ることを示した(Huyghe等によるHuman Gene Therapy 6:1403−1416(1995))。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
平均直径がアデノウィルスの直径(直径=繊維を除いて約80nmそして繊維分子を有して約140nm)とおおよそ同じである細孔を中に有するビーズからなる、いわゆる“マクロ細孔”樹脂のような他のシステムを用いるカラムクロマトグラフィは、感染性のアデノウィルスの回収を生じなかった。これについての最も確実と思われる理由は、そのような樹脂中をアデノウィルスが通過すると、ウィルスがビーズ中の細孔と緊密に接触することによりウィルスの表面から繊維を切り落とすからである。とりわけ、アデノウィルスの繊維分子は標的細胞に結合しかつ感染するそのウィルスの能力に包含されるされるべきと信じられる。したがって、そのような先行技術のカラム法による繊維分子(ならびに他の表面分子)の損傷または損失は不活性(非感染性)ウィルスの回収を結果として生ずることになる。
【0010】
当業界において周知であるように、AAVの増殖はアデノウィルスのようなヘルパーウィルスの使用を必要とする。ヘルパーウィルスについての要件はAAVの精製を複雑にする。AAV精製に対する現在の方法は、凍結−解凍の繰り返しのサイクルを用いて、AAV感染細胞を溶解(lysing)し、次に細胞汚染物質の存在しないそしてAAV増殖のために必要とされる(アデノウィルスのような)ヘルパーウィルスが実質的に存在しない感染性AAVを得るために密度勾配遠心分離を使用して細胞溶解産物(cell lysate)を分画化することを包含する(Flotte等によるGene Therapy 2:29−37(1995);Chiorini等によるHuman Gene Therapy 6:1531−1541(1995);Fisher等によるJ.Virol.70:520−532(1996))。標準の精製技術は、活性な(感染性の)ウィルスの非常に低い収率(0.3〜5%)を一般に生ずる。さらに、ヘルパーウィルスの必要性の故に、ヘルパー(例えばアデノウィルス)の全く存在しないAAVを得ることは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の概要)
本発明は、特に治療用途のための、感染性アデノウィルスおよびAAVの商業的に有用な量の精製のための方法に向けられている。
【0012】
本発明は、感染性ウィルスを精製する先行技術の方法に伴う問題を避けそして宿主への治療導入遺伝子の遺伝子導入において有用である感染性アデノウィルスの大規模な分離を提供するクロマトグラフィ分画化技術に依存している。したがって、本発明は、ウィルス、特に感染性のために必要とされると信じられるその表面成分が、下記のような接触により損傷されないような様式でそしてそのような条件下に、治療的に有用なウィルスを、クロマトグラフィ分画化技術において使用されるのに適当な材料と接触させるための改良された方法を提供する。
【0013】
特に、アデノウィルス精製に関して、本発明はこれらの改良された方法論において包含される幾つかのデザイン考慮を含む。これらのデザイン考慮はそれらが同様な目的、即ち精製において使用される種々のクロマトグラフィ材料との接触によるウィルスに対する損傷を最小にするかまたは排除すること、を達成する点において関連している。特にそれらの方法は生物学的分子の分配において包含されるそのような材料中の開口または細孔の作用を避けるように意図される。
【0014】
本発明の一つの面において、“回分式(batch)”タイプの技術が使用されることが出来る。この面において、ウィルスは、“流通(flow−through)”処置に付されるよりもむしろ適当なクロマトグラフィ材料と混合される。この方法を用いて、ウィルス粒子はビーズ中の細孔に入りそして損傷を受ける傾向が少なくなる。
【0015】
本発明の第2の面は、支持体材料の細孔の寸法が、クロマトグラフィ分画化中(例えばカラムまたは膜において)ウィルスが細孔に入ることが出来ないほどに小さいクロマトグラフィ材料を用いることを包含する。そのようなクロマトグラフィ材料の細孔寸法における減少は、例えば支持体マトリックスの増大させた架橋により達成させることが出来る。細孔寸法における減少は、ウィルスが損傷される可能性があるビーズ中の開口にウィルスが入るのを防止する。
【0016】
別法として、マトリックス材料中の細孔にウィルスが近づくのを防止する構造体、例えば、“触手(tentacles)”を含有するクロマトグラフィ材料が使用される。また、これはウィルス粒子に対する損傷を防止するかまたは最小にするのに役に立つ。
【0017】
本発明の第3の面において、クロマトグラフィ材料のマトリックスは寸法において非常に大きい開口または細孔、即ちアデノウィルス粒子の直径よりかなり大きい直径を有する細孔を含有するクロマトグラフィ材料が用いられる。かくして、ウィルスは損傷されることなしにそのようなクロマトグラフィ材料中の細孔を通過して分配されることが出来る。
【0018】
これらのデザイン考慮に基づいて、本発明の精製方法は生物学的物質を分画化するのに有用であると知られている広い種々の市販のクロマトグラフィ材料の使用を可能にする。そのような材料の有用な支持体マトリックスは、とりわけ、セルロースのような重合体物質またはシリカゲルタイプの樹脂または膜あるいは架橋多糖類(例えばアガロース)または他の樹脂を包含する。また、クロマトグラフィ材料は生物学的分子を分離するのに有用である、マトリックス材料に結合された種々の官能基または活性基をさらに含むことが出来る。
【0019】
そのようなものとして、本発明の方法はまた、ウィルスが種々の非共有メカニズムを介して相互作用しそして後でそこから実質的に除去されることが出来る、支持体材料に結合された親和性基の使用を利用する。本発明において提供される好ましい方法はクロマトグラフィ分画化技術において有用なイオン交換(特に陰イオン交換)タイプの相互作用を利用する。他の特定の親和性基は、とりわけ、支持体マトリックスに結合されたヘパリンおよびウィルス−特異性抗体の使用を包含することが出来る。本技術を介してのウィルス精製において親和性基の選択における考慮の中で、ウィルスが選ばれた親和性基と相互作用する結合力および感染性に包含されるウィルス表面分子を損傷することなしのその除去の容易さである。
【0020】
活性(感染性)ウィルスの高い収率で比較的に高い分子量のウィルス種(例えば、アデノウィルスおよびAAV)の商業的規模の生産はこれらの方法を用いて達成される。
【0021】
(発明の詳細な記載)
本発明は、特に遺伝子治療を包含する、遺伝子導入のような、治療適用において使用するための活性な(感染性の)アデノウィルスおよびアデノ随伴ウィルス(AAV)の精製のための大きな規模に適合することが出来るクロマトグラフィ分画化方法に向けられている。本発明のクロマトグラフィ方法は、ウィルス精製の密度勾配超遠心分離の現在の、大規模にすることが出来ない(non−scaleable)方法に代わって使用されそして工業的規模で活性な(感染性の)ウィルスの生産を可能にすることが意図される。該2種のウィルスの精製のためのデザイン戦略は相互に関連している。上に記載したように、AAVの増殖は、最も普通にはアデノウィルスによって提供されるヘルパーウィルス成分の存在を必要とする。AAVの精製はアデノウィルスの汚染の故に問題があった。
【0022】
本発明のクロマトグラフィ分画化技術は、もっぱら遠心分離に基づく先行技術のウィルス精製方法以上の幾つかの利点を提供し;本方法は迅速であり;実験計画は効率がよく、単一操作でミリグラム量のウィルスの分離を可能にし;ウィルスの完全性が危うくされず;そして高収量の感染性ウィルスが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(アデノウィルスの精製)
上に記載したように、たんぱく質または他のウィルスの精製において日常的に使用されているような慣用のクロマトグラフィ方法および材料をアデノウィルスの精製に適合させようとする先行技術の試みは成功しなかった。そのような方法を適用するにあたって、損傷からアデノウィルスを保護するためにそして特に感染性のために必要なそのマクロ分子成分に対して保護するために十分な注意が払われなかったと信じられる。理論に関して制限されることなしに、“繊維”として知られているたんぱく質種を最も特定的に含む、特有のアデノウィルスたんぱく質は、感染中に標的細胞へのアデノウィルスの結合において包含される。そのようなたんぱく質の多くのコピーが各々のアデノウィルス上に見い出されることが出来るけれども、ウィルス感染性は大抵の細胞タイプに対して相対的に低くそしてしたがって、例えば繊維分子または他のウィルスマクロ分子の小さい部分でさえ、それに対しての損傷は、首尾のよい感染の確立を実質的に防ぐ可能性がある。それ故に、高い感染性を維持することは、遺伝子治療のためのような治療的用途のために意図されるアデノウィルスベクターの商業的規模の生産に関してかなり重要なことである。
【0024】
したがって、アデノウィルス粒子の脆い性質を適当に考慮に入れるために広い種々のクロマトグラフィ方法が提供される。現在開示されるように、マトリックスまたは支持体材料、およびそれに通常カップリング結合される活性(結合性)基を包含する広い種々の慣用のクロマトグラフィ材料は本発明の実施において有用である。
【0025】
本明細書に記載される方法は、アデノウィルスの成分に対しての損傷なしに水性媒体中の高い濃度で精製されたアデノウィルス粒子の取り出しを可能にする。同様に、本方法はミリグラム量のウィルスの製造に適している。
【0026】
アデノウィルスはウィルス感染細胞、例えば293細胞から単離される。細胞は収量を最適化するために高い感染の多重度(MOI)で感染されることが出来る。感染された細胞からウィルスを回収するために適当な任意の方法が利用されることが出来る。感染された細胞からのウィルスの回収のための好ましい技術は凍結−解凍およびミクロ流動化器(microfluidiser)の使用を包含する。しかしながら、大規模に出来る方法でウィルスを精製するために、繰り返しての凍結−解凍を行うことなしにウィルス感染細胞を溶解する(lyse)方法を使用することそして遠心分離なしで細胞溶解産物(cell lysate)から細胞破片を除去することが好ましい。活性ウィルスの放出のためのウィルス感染された293細胞の溶解(lysis)のための最適の条件は、加圧セル、例えばMicrofluidiser加圧セル(マサチューセッツ州ニュートンのMicrofluidics製)を用いて達成されることが出来る。例えば高分離能接線流動システム(High Resolution Tangential Flow System)を含む、Minitanシステム(マサチューセッツ州ベッドフォードのMillipore製)を用いての溶解産物の限外濾過は、クロマトグラフィ分画化技術の前にウィルス分画をさらに濃縮するために用いられることが出来る。
【0027】
そのようにして得られたアデノウィルス含有溶解産物は、次に本発明のクロマトグラフィ分画化技術に付されることが出来る。アデノウィルス精製に関して本発明はこれらの改良された方法論に含まれる幾つかのデザイン考慮を包含する。これらのデザイン考慮は、それらが同様な目的、即ち精製において使用される種種のクロマトグラフィ材料との接触によるウィルスに対する損傷を最小にするかまたは排除することを達成する点で関連している。特に、その方法は生物学的分子の分配に包含されるそのような材料における開口または細孔の作用を不要にすることが意図される。
【0028】
本発明の一面において、“回分式”タイプの技術が使用されることが出来る。この面において、ウィルスは“流通(flow−through)”方式に付されるよりもむしろ適当なクロマトグラフィ材料と混合される。この方法を用いて、ウィルス粒子は、それらが損傷される可能性があるビーズ中の細孔に入る見込みが少ない。
【0029】
本発明の第2の面は、クロマトグラフィ分画化中(例えばカラムまたは膜において)ウィルスが細孔に入ることが出来ないように、支持体材料の細孔寸法がウィルス粒子の寸法より小さいクロマトグラフィ材料を用いることを包含する。そのようなクロマトグラフィ材料の細孔寸法における減少は、例えば支持体マトリックスの増大させた架橋により達成させることが出来る。細孔の寸法におけるその減少は、ウィルスが損傷される可能性があるビーズ中の開口にウィルスが入ることを防止する。
【0030】
別法として、マトリックス材料中の細孔にウィルスが近づくのを防止する構造物、例えば“触手(tentacles)”を含有するクロマトグラフィ材料が使用されることが出来る。また、これはウィルス粒子に対する損傷を防止するかまたは最小にするのに役に立つ。
【0031】
本発明の第3の面において、材料のマトリックスが寸法において非常に大きい開口または細孔、即ちアデノウィルス粒子の直径よりかなり大きい直径を有する細孔を含有するクロマトグラフィ材料が使用されることが出来る。したがって、ウィルスは損傷されることなしに、そのようなクロマトグラフィ材料中の細孔を通過して分配されることが出来る。
【0032】
これらのデザイン考慮に基づいて、本発明の精製方法は生物学的物質を分画化するのに有用であると知られている広い種々の市販のクロマトグラフィ材料の使用を可能にする。そのような材料の有用な支持体マトリックスは、とりわけセルロースのような重合体物質あるいはシリカゲルタイプの樹脂または膜あるいは架橋された多糖類(例えばアガロース)または他の樹脂を包含することが出来る。また、クロマトグラフィ材料は生物学的分子を分離するのに有用である、マトリックスに結合された種々の官能基または活性基をさらに含むことが出来る。
【0033】
そのようなものとして、本発明の方法はまた、ウィルスが種々の非共有メカニズムを介して相互作用しそして後でそこから除去されることが出来る、支持体マトリックスに結合された親和性基の使用を利用する。本発明において提供される好ましい方法は、クロマトグラフィ分画化技術において有用なイオン交換(特に、陰イオン交換)タイプの相互作用を利用する。他の特定の親和性基は、とりわけ支持体マトリックスに結合されたヘパリンおよびウィルス−特異性抗体の使用を包含することが出来る。本技術を介してのウィルス精製おいての親和性基の選択における考慮の中で、ウィルスが選ばれた親和性基と相互作用する結合力そして感染性に包含されるウィルス表面分子を損傷することなしのその除去の容易さである。
【0034】
次のタイプのクロマトグラフィ材料は上に論じられた回分方式タイプのクロマトグラフィ方法のために適している。
【0035】
本開示の教示はまた、回分式形においてだけならば、他の市販のクロマトグラフィ材料の使用を可能にする。本発明の好ましい態様ではないけれども、そのようなクロマトグラフィ材料と接触することによりアデノウィルスが損傷される可能性があるといったん分かれば、精製方法はウィルスに対する損傷を最小にするように再計画されることが出来る。多くの重合体材料がすべての接触しているアデノウィルスを損傷する可能性がある細孔を含有する程度まで、そのような損傷は、例えばカラム圧力を最小にし、それによりマトリックスの細孔中にアデノウィルスが入るのを制限することにより制限されることが出来る。その最も簡単な例において、精製工程は単に回分形式で行われる。本発明のこの面に従って有用な重合体材料はPharmaciaの製品ヘパリン セファロース ハイ パーフォマンス;カリフォルニア州リッチモンド、BioRadのMacro−Prepセラミックヒドロキシアパタイト;およびAmiconからのセルファイン(cellufine)サルフェートを包含する。
【0036】
クロマトグラフィ材料は、そのすべての細孔空間とのアデノウィルスの相互作用が最小となるように十分なマトリックス架橋を有し、またアデノウィルスに対する親和性を有する(例えばイオン交換基またはヘパリンを包含する)多くの結合基が存在する重合体からなる。本発明の実施において有用な代表的ヘパリン化重合体はHeparin Superflow Plus(Sterogene製)、6%架橋化ヘパリンアガロースのような約6%またはそれ以上の架橋を有するものを包含する。そのようなアガロースマトリックスは、HeparinAgaros(Sigma Chemical Company製)のような4%架橋化生成物の排除限界よりずーっと低いと予想される約六百万ダルトンの排除限界を有する。1つの実験において、感染性形でのアデノウィルスの回収は4%生成物よりもむしろ6%生成物が用いられた場合に実質的に改良された。本発明の実施において有用であるヘパリン基を含有する追加の重合体は(Pharmacia製の)Heparin SepharoseCL6Bを包含する。
【0037】
いったん注意深くコントロールされた架橋の利点が理解されたならば、当業者は、アデノウィルスが、それとの接触により損傷されないように任意数の認識されたマトリックス材料および結合用基から構成される任意の数の重合体材料と置き換えることが出来ることは明らかである。
【0038】
提供された第2のデザイン考慮に関して代表的なクロマトグラフィ材料はアデノウィルスと有効に相互作用するがしかし、ウィルスそして特にその繊維たんぱく質を損傷する可能性がある(約0.1ミクロンのような)そのすべての細孔スペースへのウィルスの接近を最小にするデザインを有する官能基を含有する。
【0039】
同様に、種々の長さの重合化鎖が結合されておりそしてさらに官能基が結合されていてもよい芯領域を含有するいわゆる触手化重合体(tentacled polymer)がある:例えばロードアイランド州ウェークフィールドのE.Merckから市販のFractogel Tentacle Ion Exchange Media。これらのクロマトグラフィ材料はDEAE、第四級アミノエチル、第四級アンモニウム、DMAE、TMAE、等あるいは例えばSOまたはカルボキシルのようなイオン交換性基で終わっている、アクリルアミド誘導体の重合化鎖がグラフトされている、オリゴエチレングリコール、グリシジルメタクリレートおよびペンタエリスロールジメタクリレート(penta−erythrold−imethacrylate)から共重合された不溶性マトリックスを有するものとして記載されている。同様な“触手化(tentacled)”材料を使用することは本発明の実施内である。
【0040】
第3のデザインに関して好ましいクロマトグラフィ材料は少なくとも約0.1μm(アデノウィルスの寸法)、しかし好ましくは少なくとも約1μmの細孔を有するマトリックスを含む。
【0041】
そのような材料は標的プロトマーに対して高い基質特異性により、非特異性たんぱく質の無視できる結合、および最も大きな既知の球状ウィルスの精製のために十分である細孔寸法(〜1.2μm)により特徴づけられるセルロース膜またはシリカ膜カートリッジであることが出来る。低い結合性のセルロースまたはシリカ膜フィルターのスタックからなる、カートリッジデザインは高い流速に適しており、一方ではカートリッジの大きな細孔寸法はカラム中に詰められたビーズゲル樹脂を伴った拡散を排除する。
【0042】
例えば、ACTI−MOD(マサチューセッツ州NatickのAmerican International製)カートリッジは、微細孔シリカ/PVCのシートからなる。これらのシリカシートは多数の均一な細孔と共に大きな表面積を有する(図1パネルA参照)。細孔は、異なる活性側鎖、例えばDEAEまたはヘパリン構造単位が結合されていてもよいシリカと列をなしている。クロマトグラフィ中、ACTI−MODの高度に多孔質のシリカ/PVCシート中を通過する(または同様に有効なMemSep(マサチューセッツ州ベッドフォードのMillipore製)カートリッジ中の開口を通過する)ウィルスの運動は、活性化シリカ表面とのウィルス粒子(virions)の直接接触を可能にする(図1パネルB)。そのような接触は適当な分離を可能にする一方で、同時に従来のビーズ化ゲルタイプの樹脂を用いて起こる、カプセル化されたウィルス粒子それ自体の寸法とおおよそ同じであるか又はそれよりやや小さい樹脂のビーズ中の細孔とのウィルス粒子の有害な相互作用を避けることを可能にする。そのような有害な相互作用は、例えば繊維たんぱく質を包含するウィルス粒子表面成分に対して損傷して、それにより首尾よく標的細胞を感染するウィルス粒子の能力を減少させることを包含するであろう。
【0043】
本発明の実施において有用である追加の重合体製品はウィルス粒子を損傷しないのに十分に大きい細孔を含有する重合体製品でありそして、とりわけ、CycloSepモジュール(マサチューセッツ州NatickのAmerican International Chemical Inc.製)のようなスパイラル プレパレーチブ クロマトグラフィ モジュールを包含する。該CycloSepTMスパイラル精製カラムは、種々のスペース化形態に有効である一体的リブデザインと共に、微細孔プラスチックシート(MPS)からなるマトリックスを有する。そのマトリックスはらせん状に巻かれていてそしてシリカで被覆されている。得られた親水性表面はヘパリンのような種々の親和性リガンドまたはDEAEおよびカルボキシメチルのようなイオン交換クロマトグラフィにおいて使用される親和性リガンドを用いて誘導化されることが出来る。
【0044】
陰イオン交換クロマトグラフィはDEAE(ジエチルアミノエチル)、QAE(第四級アミノエチル)およびQ(第四級アンモニウム)を包含するが、しかしそれらに限定されない、陰イオン交換技術についての当業界で知られている種々の官能性部分を用いて行われることが出来る。これらの官能性部分は本明細書に記載されたセルロースおよびシリカ樹脂を包含する、本発明において有用な任意の適当な樹脂に結合されることが出来る。例えば、DEAEは、DEAE−MemSep(マサチューセッツ州ベッドフォードのMillipore製)のようなカラムにおけるセルロース樹脂、SartbindTM膜吸収剤(ニュージャージー州、エッジウッドのSartorius製)およびACTI−MOD(マサチューセッツ州NatickのAmerican International Chemical製)のようなシリカ樹脂を包含する種々の樹脂に結合されることが出来る。
【0045】
SP MemSep(マサチューセッツ州ベッドフォードのMillipore製)、CM MemSep(マサチューセッツ州ベッドフォードのMillipore製)、FractogelSO(ニュージャージー州ギブスタゥンのEM Separation Technology製)、Macroprep S(ニューヨーク州メルビルのBioRad製)のようなカラムならびにヘパリンをベースとする樹脂の使用を包含するがしかしそれらに限定されない陽イオン交換クロマトグラフィがまた、アデノウィルスの精製のために使用されることが出来る。Heparin ACTI−MODカートリッジ(マサチューセッツ州NatickのAmerican International Chemical製)およびPOROSPerfusionクロマトグラフィ媒体(ベーリンガー マンハイム製)は本発明のこの態様の追加の例を表す。
【0046】
アデノウィルスを精製するために使用されることが出来る他の親和性リガンドは、本明細書において提供されるような適当な樹脂に結合された抗アデノウィルス抗体ならびに当業者に既知の他のものを包含する。
【0047】
好ましくはアデノウィルスの精製は以下の工程を包含する:Tween−80のような洗浄剤の存在下に、アデノウィルスで感染された293細胞の加圧溶解(pressure lysis)および溶解産物(lysate)中のウィルスの回収;3μmガラス繊維フィルターおよび0.8μm酢酸セルロースフィルター中を通過させることによる溶解産物の清澄化;アデノウィルスが流通(flow−through)分画において回収されるACTI−MODシリカカートリッジを用いるヘパリンクロマトグラフィ;およびMemSepカートリッジを用いるDEAE−イオン交換クロマトグラフィ。結合されたアデノウィルスは適当な緩衝液中500〜700mMのNaClを用いてDEAE−樹脂からの溶離され;次に、DEAE溶離液のゲル濾過(サイズエクスクルージョン)クロマトグラフィに付し、そこでアデノウィルスはカラム溶離液の空隙容量(void volume)で回収される。
【0048】
精製するために、例えばSuperdex(ニュージャージー州PiscatawayのPharmacia製)のような樹脂を用いるゲル濾過クロマトグラフィはすべての汚染処理から離れた活性アデノウィルスを回収するために用いられることが出来る。そのような樹脂は、樹脂のビーズから完全に排出されそしてカラムの空隙容量で溶離するアデノウィルスを生ずる非常に小さな細孔寸法(排除限界二百万ダルトン)を有する。その分配は、たんぱく質脱塩カラムに対して同様な様式で機能を果たす。
【0049】
アデノウィルス精製は例えばウェスターンブロット分析(Western blotting analysis)またはSDS−PAGE分析を用いてウィルスたんぱく質についてアッセイすることにより調べられることが出来る。アデノウィルスDNAの確認(同定)は、例えばスロットブロット(slot blot)分析、サゥザンブロット(Southern blotting)分析またはウィルスDNAの制限酵素分析を用いて、ウィルス回収の指標として用いられることが出来る。精製はアッセイされたサンプル中のウィルスたんぱく質または核酸の優勢性により証拠づけされる。
【0050】
アデノウィルス粒子の確認(同定)はまた、例えば精製分画の260nmでの分光測光法的吸光度を用いてあるいは例えば電子顕微鏡によるウィルス粒子の観察を用いて、ウィルス精製をアッセイするために用いられることが出来る。
【0051】
感染性アデノウィルスの回収は、適当な宿主細胞系(例えば293細胞)をクロマトグラフィに付されたサンプルで感染させることにより調べられることが出来る。感染性のアデノウィルスはプラークアッセイにより確認(同定)され且つ力価測定されることが出来る。別法として、感染された細胞は、豊富なアデノウィルスヘキソンたんぱく質に対して染色されることが出来る。そのような染色は感染後7日に細胞をアセトン−メタノールで固定しそして多クローン性FITC−標識化抗−ヘキソン抗体(カリフォルニァ州TemeculaのChemicon製)で染色することにより行われることが出来る。精製された分画の活性度は、クロマトグラフィをかけるまえとそしてそれをかけた後とでの感染性を比較することにより調べられることが出来る。
【0052】
本発明の方法において他のカラムの使用はアデノウィルスの精製に向けられた本発明の範囲内である。
【0053】
上に論じられたように、AAVの増殖は、AAV製剤と共に精製されてそしてAAV製剤を汚染する可能性がある、ヘルパーアデノウィルスを必要とするのでAAV精製は、AAVの精製において(例えばクロマトグラフィ材料の細孔との接触により)アデノウィルスを損傷するクロマトグラフィ材料の利点を取り入れる。したがって、AAVの精製はアデノウィルス精製にとって好ましくないクロマトグラフィ材料を使用する。例えばそのような材料は細孔の大きさがアデノウィルスのおおよその大きさである、上に論じられたいわゆる“マクロ細孔”樹脂を包含する。一般に、精製中アデノウィルスを損傷してそれを不活性に導く細孔寸法を有するマトリックスを選ぶことが有利である。
【0054】
本発明はまた、カラムクロマトグラフィを用いて、細胞溶解産物中のアデノウィルスおよび細胞たんぱく質からAAVの分離のための方法に関する。密度勾配超遠心分離の現在の大規模に出来ない方法以上のカラムクロマトグラフィの利点は多量のAAVが生成されることが出来ることである。AAVの精製のためにカラムクロマトグラフィを用いる他の利点は、それがAAVの生成においてヘルパーウィルスとして慣用的に用いられる汚染性アデノウィルスを有効に除去することである。
【0055】
(AAVの精製)
AAV−感染細胞の初期の溶解は、感染性ウィルス粒子を放出するために、細胞を物理的に処理するよりもむしろ化学的にまたは酵素的に処理する方法を介して行われることが出来る。そのような方法は、宿主細胞、非カプセル化または不完全なアデノウィルスDNAを酵素的に分解させるために(ベンゾナーゼ(benzonase):DNAse(デオキシリボヌクレアーゼの略)のような)ヌクレアーゼの使用を包含する。トリプシンのようなたんぱく質分解酵素は宿主細胞、アデノウィルスまたは遊離のAAVたんぱく質を酵素的に分解するために使用されることが出来る。当業界に知られている洗浄剤、界面活性剤及び他の化学剤はまた、単独で又は酵素処理と組み合わせて使用されることが出来る。
【0056】
AAV−感染細胞は、強化ポンプ送り込みシステムが短時間断続される一定圧力の加圧様式を造るために促進吸引ストロークおよび長期スロー圧力ストロークを使用するミクロ流動化器(Microfluidiser)加圧セルのような加圧セルに適用することによりさらに溶解されることが出来る。この圧力は、次にAAVの最大活性を穏やかに維持しながらAAV活性細胞を溶解するために使用される。そのような加圧技術の使用の追加の利点は、そのような方法が微粒子担体上での細胞の増殖を包含する、細胞培養の条件の規模を上昇させるために適用されることが出来ることである。別法として、フレンチ(French)加圧セル(イリノイ州DeerfieldのBaxter製)、Manton Goulin均質化器(ホモジェナイザー)(イリノイ州DeerfieldのBaxter製)またはDynomillが使用されることが出来る。得られた溶解産物は次にガラス繊維フィルターまたは酢酸セルロースフィルターに通過させて濾過することにより清澄化されることが出来る。代わりのものは、MillexDurapore(マサチューセッツ州ベッドフォードのMillipore製)フィルターおよびGelman Science Tuffrynフィルター(ミシガン州アンアーバーのGelman Science製)を包含する。使用されることが出来るフィルターの寸法は、0.8μmおよび0.45μmを含む。もし真空濾過が使用されないならば、ガラスウールがまた、溶解産物を清澄化するために使用されることが出来る。
【0057】
AAVの大規模な精製のための、感染細胞溶解産物を分画化するための適当なカラムクロマトグラフィ方法は、Sterogene−S(Sulfated Hi Flow)(カリフォルニァ州カールズバッドのSterogene製)、Spherilose−S(ネブラスカ州リンカーンのIsco製)、Cellufineサルフェート(マサチューセッツ州ビバリーのAmicon製)のようなサルフェート化樹脂の使用を包含する。そのようなサルフェート化樹脂は、約400〜500mM、好ましくは約475mMのNaClを含有する溶離緩衝液を用いてAAVから汚染性アデノウィルスを除去することが出来る。
【0058】
AAV精製において使用されるDEAE含有樹脂はPuresyn DEAE(ペンシルベニア州マルバーンのPuresyn製)、EM Merck Tentacle DEAE(ニュージャージー州ホワィトハウスステーションのMerk製)、Sterogen Superflow Plus DEAE(カリフォルニア州カールズバッドのSterogene製)、マクロ細孔DEAE樹脂(ニューヨーク州メルビルのBiorad製)、DEAE ACTI−MOD(マサチューセッツ州NatickのAmerican International製)、DEAE MemSep(マサチューセッツ州ベッドフォードのMillipore製)を包含するがしかしそれらに限定されなく、それらのすべては汚染性アデノウィルスを除去することが出来る。
【0059】
Em Merck Tentacle DEAEは長さで約15〜50単位のアクリルアミド誘導体の重合化鎖がグラフトされているオリゴエチレングリコール、グリシジルメタクリレートおよびペンタエリトロイドから共重合されたマトリックスからなるイオン交換媒体である。Sterogene Superflow Plus DEAEは、DEAE反応性基が結合されている6%架橋アガロースからなる。マクロ細孔DEAE樹脂は、DEAE反応性基が親水性支持体に結合されている、80〜100nmの細孔寸法を有する剛性親水性支持体である。DEAE Acti−Modカートリッジは、微細孔シリカ/PVCのシートからなる。これらのシリカシートは大きな均一な細孔と共に大きな表面積を有する。細孔は、DEAEのような活性な側鎖が結合されることが出来るシリカと列をなしている。このタイプのマクロ細孔構造物は、幅で約12,000Å、即ち1.2μmの細孔を有している。DEAE MemSep樹脂において、DEAE基は重合体マトリックスセルロースに共有的に結合されている。そのような樹脂からのAAVの回収のための適当な溶離緩衝液はpH7.5の燐酸塩緩衝液中に200mMのNaClを含む。
【0060】
AAVの精製はまたBiorad(ニューヨーク州メルビル)販売のセラミックヒドロキシアパタイト樹脂を包含するヒドロキシアパタイト樹脂を使用する。そのようなヒドロキシアパタイト樹脂からのAAVの回収は100〜135mMの燐酸塩緩衝液(pH6.4、10〜400mMの燐酸塩勾配)を用いての溶離を使用する。そのカラムは、30mMの燐酸塩でまず洗浄されそして約135mMの燐酸塩でAAVは溶離する)を用いての溶離を使用する。
【0061】
本発明の特定の面において、セルロースまたはシリカ膜樹脂上でのクロマトグラフィはAAVの有効な大規模の精製のためにマクロ細孔樹脂の使用と組み合わせて使用される。マクロ細孔樹脂の例はBioRadマクロ細孔シリーズ(ニューヨーク州メルビル)またはDEAE−Thruput(6%架橋アガロース)(カリフォルニア州カールズバッドのSterogene製)を包含する。シリカまたはセルロース膜樹脂は、DEAE−MemSepTM1010HP(Millipore製)、ACTI−MODカートリッジまたはCycloSepTM(American Chemical International製)らせん精製カラムを包含する。マクロ細孔樹脂に関しての以前の研究は、ビーズでの80nM細孔寸法が140nmの直径を有するアデノウィルスを排除するかまたは損傷するので、アデノウィルスの精製のためにこれらが非常に有用であるとは示さなかった。しかしながら、この寸法制限は、これらの樹脂がウィルス粒子の異なる寸法に基づいてAAV製剤から汚染性アデノウィルスを除くことが出来るので、AAV精製のためには有利である。樹脂の細孔寸法の識別に基づいてアデノウィルスからAAVを分離するために、マクロ細孔樹脂の能力についてマクロ細孔樹脂を選択することは当業者の技術の十分な範囲内にある。
【0062】
本発明の特定の態様において、洗浄剤の存在下にAAV感染細胞の加圧溶解は細胞溶解産物を生成し、これは濾過により清澄化される。次にその溶解産物は、細胞たんぱく質および汚染性アデノウィルスからAAVを分離するために一連のカラムに適用される。好ましい一連のカラム分離はセラミックヒドロキシアパタイト、DEAEイオン交換、Cellufineサルフェートおよび亜鉛キレートクロマトグラフィの使用を包含する。AAVは、次のとおりのカラムから回収されることが出来る:(pH6.4の100〜135mMの燐酸塩で)ヒドロキシアパタイト;(pH7.5の燐酸塩緩衝液中の200mMの塩で)DEAEイオン交換;(pH7.5の燐酸塩緩衝化食塩水中の425mMの塩で)Cellufineサルフェート;そして亜鉛キレートカラム(pH7.5のHepes緩衝液)からの流通(flow−through)において。
【0063】
AAVの精製のための特に好ましい態様は、以下の工程を包含する:
Tween−80およびトリプシンの存在下に、アデノウィルスでまた感染されているAAV感染293細胞の加圧溶解および溶解産物中のウィルスの回収;0.45μmまたは0.8μmの酢酸セルロースフィルターを通過させての濾過を介して溶解産物の清澄化;セラミックヒドロキシアパタイトクロマトグラフィ、そこで、結合されたAAVはpH6.4の100〜135mMの燐酸塩中の樹脂から溶離される;MemSepカートリッジを用いるCHA溶離液のDEAEイオン交換クロマトグラフィ、そこで、結合されたAAVは200mMの塩(pH7.5の燐酸塩緩衝液)中の樹脂から溶離される;DEAE溶離液のCellufineサルフェートクロマトグラフィ、そこで、結合されたAAVは425mMの塩(燐酸塩緩衝化食塩水、pH7.5)中の樹脂から溶離される;そして場合により亜鉛キレートクロマトグラフィ、そこでAAVは流通(flow−through)分画(Hepes緩衝液、pH7.5)において回収される。
【0064】
AAVはまた、低分子量汚染物質からAAVを分離しそしてAAVが空隙容量(void volume)で回収される、Superdex200樹脂(ニューヨーク州PiscatawayのPharmacia製)を用いてアデノウィルスから分離されることが出来る。
【0065】
ここに記載された方法は、遠心分離ペレット化を行うことなしに、水性媒体中で高い濃度で精製されたAAV粒子の回収を可能にする。同様に、その方法は密度勾配遠心分離の使用なしでのミリグラム量のウィルスの生成に適している。
【0066】
他のカラムの使用はAAVの大規模な精製においてカラムクロマトグラフィを使用することに向けられている本発明の範囲内である。
【0067】
精製の実験計画の完全性を査定するために、当業者はAAVウィルスが回収されるかどうかそして細胞たんぱく質および(アデノウィルスのような)汚染性ヘルパーウィルスが除去されたかどうかを調べるために任意の数の査定を使用することが出来る。AAV回収および精製は種々のクロマトグラフィ工程からの回収された分画におけるAAV DNAおよびAAVたんぱく質の水準または感染性ウィルスの力価からの水準を調べることにより監視されることが出来る。
【0068】
AAV DNAの水準はAAV−特異性プローブを用いて固定化DNAを検出するスロットブロット(slot blot)装置を用いて調べられることが出来る。ウィルス粒子の数は、既知の粒子数のサンプルから生成された標準曲線の使用により調べられることが出来る。組み換え体AAVがβ−ガラクトシダーゼのような標識遺伝子を含有する場合、回収されたウィルスの量は標識遺伝子生成物(例えば、X−gal)についての適当な査定によりあるいは遺伝子のDNAコピーを検出するアッセイ(例えばPCR(ポリメラーゼ鎖反応の略))により調べられることが出来る。
【0069】
別法として、ウィルスの存在は回収された分画に含有されるAAVたんぱく質の水準から調べられることが出来る。ウィルスたんぱく質はウェスターンブロット(Western blotting)、免疫沈降反応、クーマシー染色SDS−PAGEゲルあるいは当業者に知られているたんぱく質特徴づけおよび定量化のための任意の他の方法によりアッセイされることが出来る。SDS−PAGEゲルがクーマシーで染色される場合、他の非―AAVたんぱく質の存在が、AAV分画の濃度の指標として調べられることが出来る。
【0070】
単離されたウィルス分画の純度は、分画中のたんぱく質のSDS−PAGE分析、次にクーマシー染色そして濃度計を使っての濃度測定により調べされる。AAVウィルスのたんぱく質に関して、VP3は、通常、ウィルスたんぱく質の約80%を表し、一方ではVP1とVP2とは一緒にして合計ウィルスたんぱく質の約20%を表す。純度はアッセイされたサンプル中の異種のたんぱく質の不存在により査定される。
【0071】
本発明の精製方法は天然に存在するウィルスまたは組み換え体ウィルスに適用されることが出来る。
【0072】
本発明の実施は、当業界の範囲にある分子生物学、たんぱく質分析および微生物学の慣用の技術を使用する。そのような技術は、例えばニューヨークのJohn Wiley & Sons(1995年)発行Ausbel等の監修のCurrent Protocols in Molecular Biology(この内容を参照することにより本明細書に組み入れる)に十分に説明されている。
【0073】
本発明は以下の実施例に関して例示される。
【実施例】
【0074】
(実施例1:293細胞からのアデノウィルスの抽出)
(A.細胞からのアデノウィルスの抽出)
ヒトの胎児細胞系(293)がアデノウィルスを増殖するために用いられた。細胞単層が広範な細胞変性効果(CPE)を示すまでウィルス感染細胞をインキュベートした。通常の感染時間は48〜60時間であった。燐酸塩緩衝化食塩水(PBS)中に細胞を収穫しそして1000xgでの遠心分離により収集した。さらに使用するために細胞ペレットを−80℃で凍結させるかまたは0.1%Tween−80、10%グリセロール、2mMのMgClおよび50μmのZnClを含有するPBS中に再懸濁させた。再懸濁の後に1000psiでミクロ流動化器(Microfluidiser)(マサチューセッツ州ニュートンのMicrofluidics製のModel HC5000)を用いて細胞を溶解しそして室温で1時間ベンゾナーゼ(benzonase)(2500単位benzonase/10細胞)を用いて溶解産物をインキュベートした。細胞破片を除くために、溶解産物は、それを(真空でなしに)ガラスウール中に通過させることによりあるいは3.0μmガラス繊維フィルター(カリフォルニア州Sierra Court−DublinのMircoFiltration Systems製#C300A090C)中を通過させる真空濾過により清澄化された。次にこれは0.8μm酢酸セルロースフィルター(カリフォルニア州SierraCourt−DublinのMicroFiltration Systems製#CD80A090C)を用いて濾過された。清澄化の後に、溶解産物は直接にクロマトグラフィにかけられるか、あるいはクロマトグラフィにかける前に、Minitan限外濾過システム(マサチューセッツ州ベッドフォードのMillipore製#XX42MT060)を用いて追加の濾過工程に付された。
【0075】
(B.限外濾過)
(上記のとおりにして造られた)アデノウィルスで感染された293細胞からの溶解産物は以下の緩衝液(燐酸塩緩衝化食塩水(PBS)、0.05%Tween−80、10%グリセロール、50μMのZnCl)中で300ml/分から400ml/分までの変化させる流速でMinitan限外濾過システム(マサチューセッツ州ベッドフォードのMillipore製#XX42MT060)中に通過された。限外濾過の後に感染性単位の回収を測定するために、再調整物(retentate)はウィルス力価アッセイを用いてアデノウィルス感染性について検定し、一方では、再調整物(retentate)中のたんぱく質の回収がBCAアッセイ(イリノイ州ロックフォードのPierce Chemical Co.の#23220)を用いて測定された。
【0076】
(結果)
表1はアデノウィルス感染された細胞についての溶解の方法としてミクロ流動化器(microfluidiser)加圧溶解および凍結−解凍の両方を用いての活性アデノウィルスの回収間の比較を提供する。ミクロ流動化器(microfluidiser)および洗浄剤含有緩衝液を用いて、凍結−解凍による溶解と比較して加圧溶解で活性ウィルスの96%回収があった。したがって、ミクロ流動化器は多量の細胞を一回で処理させることを可能にする利点を有する、別の有効な溶解法を提供する。また、ミクロ流動化基が微粒子担体に結合された細胞を有効に溶解することが出来るので、微粒子担体上で細胞を増殖することを包含する細胞培養条件の規模を上昇させるための方法が可能である。細胞の溶解は、宿主細胞、カプセル化されていないかまたは不完全なアデノウィルスの核酸を分解するヌクレアーゼであるBenzonaseの存在下に起こった。
【0077】
細胞の溶解の後に、得られた溶解産物は、ガラスウール中を通過させる濾過により、あるいは3.0μmガラス繊維フィルター(カリフォルニア州Sierra Court−DublinのMicroFiltration Systems製#300A090C)中に通過させての真空濾過を用いることにより清澄化されて、細胞破片を除去した。次に、0.8μm酢酸セルロースフィルター(MicroFiltration Systems製)を用いての追加の濾過工程が行われた。典型的には84%の活性アデノウィルスが最終の清澄化溶解産物において回収される一方で、ほんの43%だけの合計細胞溶解産物たんぱく質が回収された。
【0078】
次に、カラムクロマトグラフィにかける前に、清澄化された細胞溶解産物をさらに精製するために限外濾過が用いられた。アデノウィルスの分子寸法は150x10ダルトンであり、一方では大半の宿主細胞汚染性たんぱく質の分子寸法はより低いと予想される。MilliporeからのMinitan限外濾過システム(300kDaの分子量カット膜)が使用された。表2は感染性アデノウィルス単位の最大回収が、膜中を通過する流速が200ml/分でありそして緩衝液がグリセロール及びトリプシンを含有したときに達成されたことを示す。これらの条件下、100%のアデノウィルス活性度が達成された一方で、55%の宿主細胞たんぱく質が除去された。(微粒子担体上で増殖されそして)アデノウィルスで感染された293細胞の攪拌培養がこれらの研究で用いられた。それ故に、有効な細胞溶解および微粒子担体上で増殖された293細胞からの活性アデノウィルスの放出はMicrofluidiserR加圧セルを用いて可能である。
【0079】
【表1】

【0080】
【表2】

【0081】
(実施例2:アデノウィルスのクロマトグラフィ精製)
カラム樹脂がPharmaciaのFPLCを用いてそれらの分離特性について試験された。
【0082】
(方法)
(1.DEAEクロマトグラフィ)
(A.アデノウィルス)
10%グリセロール、0.05%Tween−80及び50μMのZnClを含有する燐酸塩緩衝化食塩水(PBS)(1.5mMのKHPO、150mMのNaCl、5mMのNaHPO(pH7.5))を用いてDEAE MemSep1010HP(Millipore製)カラム(5ml)を平衡化させた。例1において造られたとおりのアデノウィルスで感染された293細胞からの清澄化された溶解産物は、(PBS、10%グリセロール、0.05%Tween−80、2mMのMgCl、50μMのZnCl中の)予め平衡化されたカラムに5ml/分の流速で適用された。そのカラムを、10mMのNaHPO、100mMのNaClおよび100mMのKClで洗浄しそして10mMのNaHPO(pH7.5)、10%グリセロール、0.05%のTween−80および50μMのZnCl中のKClとNaClとの線形勾配(100mM〜1M)を5ml/分の流速で樹脂に適用した。結合されたたんぱく質を樹脂から溶離しそして5mlの分画で集めた。各々の分画を(下に記載されたとおりにして)(a)アデノウィルスDNAおよび(b)アデノウィルスたんぱく質、について監視した。アデノウィルスのDNAおよびたんぱく質の両方について陽性であった分画を、ウィルス力価アッセイを用いて活性についてさらにアッセイした。
【0083】
(B.AAV)
アデノ随伴ウィルスAAVで感染された293細胞からの細胞溶解産物はまた、上記のとおりにしてDEAE MemSepクロマトグラフィを用いてクロマトグラフィにかけられた。しかしながら、細胞を溶解しそしてカラムを平衡化するために用いられた緩衝液は50mMのNaClおよび1%のNP−40を含有する10mMの燐酸ナトリウム(pH7.5)であった。結合されたたんぱく質はアデノウィルス精製のために上に記載されたとおりの塩勾配を用いて樹脂から溶離された。樹脂から集められた分画は、スロットブロットアッセイ(slot blot assay)を用いてAAV DNAについてアッセイされそしてAAVの3種のキャプシドたんぱく質、VP1、VP2およびVP3に対しての抗体(マサチューセッツ州ベルモントのAmerican Research Productsのカタログ03―65158)を用いて免疫ブロットによりAAVたんぱく質についてアッセイされた。
【0084】
(2.ゲル濾過クロマトグラフィ)
(A.アデノウィルス)
次に、PBS、10%グリセロール、2mMのMgCl、50μMのZnClおよび0.05%のTween−80を用いて平衡化されたSuperdex200HR26/60カラム(Phamacia製)を用いてゲル濾過クロマトグラフィが行われた。アデノウィルスのたんぱく質およびDNAの両方の存在を示した、DEAE樹脂から溶離された分画は貯留され(pooled)そしてかき混ぜセル(Amicon製)を用いて、15mlの容量に濃縮された。1ml/分の流速でサンプルをSuperdex樹脂に適用しそして溶離中に1.5ml分画を集めた。下に記載されたとおりにして分画をアデノウィルスのDNAおよびたんぱく質についてアッセイした。
【0085】
(B.AAV)
(下に記載された)塩化セシウム法により精製されたアデノウィルスは最終塩化セシウムは最終塩化セシウム密度勾配遠心分離の後に、Superdex樹脂に直接適用された。これは、通常透析により除去された、サンプル中の塩化セシウムの濃度を減少させるためであった。
【0086】
幾つかの実験において、DEAEカラム上でクロマトグラフィにかける前に、Superdex200HR26/60を用いてAAVの全細胞溶解産物のゲル濾過クロマトグラフィが行われた。
【0087】
本発明のこの面に従って有用な追加の重合体材料は、Sulfate Spherilose(ISCO製)のような、架橋されたセルロース重合体を包含する。
【0088】
(結果)
図2はアデノウィルスを含有する293細胞溶解産物のクロマトグラフィの後に、DEAE MemSep樹脂からのアデノウィルスの典型的な溶離プロフィルを示す。すべてのアデノウィルスは該DEAE樹脂に結合しそして(傾斜線により表される)樹脂に適用された塩勾配を用いて溶離された。溶離プロフィル上に示されるように、アデノウィルスは500〜700mMのNaCl間で樹脂から溶離した。このピークは初期全細胞溶解産物中の10%未満の合計たんぱく質を含有した一方で、典型的には60〜100%のアデノウィルス活性が回収された。この溶離された分画の追加の精製は、Superdex200樹脂を用いてゲル濾過クロマトグラフィにより達成された。最も高い力価を有した、DEAEカラムからの分画が貯留され、Amiconかき混ぜセルを用いて濃縮されそしてSuperdex樹脂に適用された。アデノウィルスは、樹脂の空隙容量(void volume)で溶離した(図3)。この分画において約50〜70%のアデノウィルス活性が回収された。カラムから溶離されたすべての分画についてのたんぱく質評価(BCA)(Pierce Chemical Co.)は、ゲル濾過工程が約70%の汚染性たんぱく質を除去したことを示した。図4は先行技術の塩化セシウム法により精製されたアデノウィルスと比較された、DEAEおよびゲル濾過カラムクロマトグラフィの組み合わせにより精製されたアデノウィルスのSDS−PAGE分析を示す。カラムクロマトグラフィにより精製されたアデノウィルスにおいて存在するいくらかの追加のたんぱく質バンドがあった。アデノウィルスの追加の精製を達成させるために、他の樹脂が、これらの汚染性たんぱく質を除去するそれらの能力について評価された。
【0089】
(実施例3:疎水性クロマトグラフィ)
(方法)
4種のことなるタイプの疎水性樹脂が、例2のアデノウィルス製剤からの汚染物質を除くそれらの能力について試験された:BioRadのMacroprepカラム(ブチルおよびメチル)およびTosohaus650M(65μm)(フェニルおよびエーテル)。2MのNaClを含有する10mMの燐酸塩緩衝液(pH7.5)中の各々の疎水性樹脂にアデノウィルスを適用した。0.15mMのKHPO、15mMのNaCl、0.5mMのNaHPO(pH7.5)を用いて、結合されたたんぱく質を樹脂から溶離した。
【0090】
(結果)
流通(flow−through)および溶離された分画のSDS−PAGE分析は、これらの樹脂を用いて、他の細胞成分からのアデノウィルスの分離が殆どなかったことを示した。
【0091】
(実施例4:陽イオン交換樹脂)
(方法)
CMおよびSP MemSepカートリッジ(マサチューセッツ州ベッドフォードのMillipore製)、FractogelSO(EM Science製の触手イオン交換樹脂)およびBioRadのMacroprep Sは、25mMのNaCl、2mMのMgCl、10%グリセロールおよび0.05%のTween−80を含有する10mMの燐酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)中で、別々に平衡化された。0.25%のTween−80を含有する同じ緩衝液中の樹脂の各々にアデノウィルスで感染された293細胞からの細胞溶解産物を適用した。それらのカラムを10mMのNaHPO、100mMのNaCl及び100mMのKClで洗浄しそして10mMのNaHPO(pH7.5)、10%グリセロール、0.05%のTween−80及び50μMのZnCl中のKClとNaClの線形勾配(100mM〜1M)を用いて、結合されたたんぱく質を該樹脂から溶離した。Macroprep Sクロマトグラフィの結果を表5に示す。
【0092】
(実施例5:Cellufineサルフェート樹脂)
(方法)
Cellufineサルフェート樹脂(マサチューセッツ州ビバリ−のAmicon製)を用いてのすべての実験のために、アデノウィルスで感染された293細胞からの細胞溶解産物は、また10%グリセロール(w/v)、0.05%のTween−80、2mMのMgClおよび50μMのZnClを含有する25mMのNaClおよび10mMの燐酸ナトリウム(pH7.5)の溶液中の該樹脂に適用された。10mMのNaHPO(pH7.5)、10%のグリセロール、0.05%のTween−80および50μMのZnCl中のNaClとKClの線形塩勾配(100mM〜1M)を用いて、結合されたたんぱく質を樹脂から溶離した。流通(flow−through)および溶離された分画の両方はアデノウィルスDNAについてアッセイされそして下に記載されたとおりにして抗アデノウィルス抗体を用いて免疫ブロットされた。
【0093】
(結果)
たいていは有意義な精製を提供して来た樹脂、Cellufineサルフェートは、しかしながら、殆どのアデノウィルスが、活性形で存在する精製された生成物には導かなかった。Cellufineサルフェートは、繰り返しグルコース下位単位の第6炭素でエステル化されたスルホネート基を有するセルロースマトリックスからなる(P.F.O’Neil等によるBiotechnology 11(1993)pp173〜178)。この樹脂へのたんぱく質の結合はその多糖類部分を介して生ずると考えられる。アデノウィルスは表面糖たんぱく質を有しない、膜で包まれていないウィルスなので、それはこの樹脂に結合する筈がなく、一方では殆どの細胞の糖たんぱく質は汚染物質として存在するであろうと考えられた。
【0094】
表3はCellufineサルフェート上でのクロマトグラフィにかけた後のアデノウィルスの活性の回収についての結果を示す。アデノウィルスのたんぱく質およびDNAは予期されたように、流通(flow−through)容量で回収されたがしかしこの分画において約10%未満のアデノウィルス活性が回収された。Cellufineサルフェート上のクロマトグラフィにかけている間のウィルスの不活性化は、約80nmの平均直径を有する、樹脂のビーズの細孔を包含する有害な相互作用/分配の結果であった可能性がある。
【0095】
(実施例6:ヘパリン樹脂)
(方法)
以下のヘパリン樹脂の各々がアデノウィルスを精製するそれらの能力について評価された:Heparin SepharoseCL6B(Pharmacia製)、Heparin Agarose(4%架橋、Sigma製)、HiTrapHeparin(Pharmacia製)、Heparin Superflow Plus(6%架橋、Sterogene製)、Heparin ACTI−MODカートリッジ(American International Chemical Inc.製)。
【0096】
ヘパリン樹脂を用いてのすべての実験のためにアデノウィルスで感染された293細胞からの細胞溶解産物は、また10%グリセロール(w/v)、0.05%Tween−80、2mMのMgClおよび50μMのZnClを含有する、25mMのNaClおよび10mMの燐酸ナトリウム(pH7.5)の溶液中の樹脂に適用された。結合されたたんぱく質は、10mMのNaHPO(pH7.5)、10%グリセロール、0.05%のTween−80および50μMのZnCl中のNaClとKClの線形塩勾配(100mM〜1M)を用いて樹脂から溶離された。流通(flow−through)および溶離された分画の両方は、アデノウィルスのDNAについてアッセイされそして下に記載されたとおりにして抗アデノウィルス抗体を用いて免疫ブロットされた。
【0097】
(結果)
Cellufineサルフェートの落胆する性能についての原因をさらに理解するためにヘパリン化重合体(樹脂)の性能がまた調べられた。Cellufineサルフェートと同様に、ヘパリンはスルホン化多糖類でありそして共通している或る結合特性を有すると予想される。しかしながら、Cellufineサルフェートとは異なって、それは種々の細孔寸法の種々の異なるビーズ化された樹脂に架橋された1種またはそれ以上の形で市販されている。表3は種々のヘパリン−結合樹脂のスクリーニングの結果を示す。試験された樹脂のすべてはウィルスサンプルを汚染した細胞たんぱく質(BCAにより測定されたものとして)の>40%を結合したが、しかし活性ウィルスの100%回収を提供した唯一の樹脂は6%架橋されたアガロースであるSterogeneヘパリンアガロースである。一般的に言えば、約6百万ダルトンの排除限界を有する6%アガロースマトリックスは、例えば4%架橋および約2千万ダルトンの排除限界を有するアガロースゲルよりも小さな細孔を有するであろう。その平均細孔寸法の故に、該6%架橋アガロースはクロマトグラフィ中にアデノウィルスを完全に排除した可能性がある。結果として、活性アデノウィルスは流通(flow−through)分画において回収された。
【0098】
【表3】

【0099】
アデノウィルスで感染された293細胞からの溶解産物は、上に記載されたとおりのヘパリンACTI−MODデスクを用いてクロマトグラフィにかけられた。アデノウィルスは流通(flow−through)分画において回収されそしてDEAEイオン交換およびゲル濾過クロマトグラフィの組み合わせを用いてさらに精製された。GFカラムからのアデノウィルス分画のSDS−PAGE分析は、(カラムクロマトグラフィにより精製された)アデノウィルスの純度が、CsCl遠心分離により精製された対照アデノウィルスと同程度に純粋であったことを示した(図5)。図6は図5において分析された分画の濃度計による濃度測定分析を示す。
【0100】
(実施例7:BioRadセラミックヒドロキシアパタイト(80μm細孔寸法))
25mMのNaCl、1mMのMgClおよび10%のグリセロールを含有する10mMの燐酸ナトリウム(pH7.5)を用いてBioRadヒドロキシアパタイトカラムを平衡化した。アデノウィルスまたはAAVを同じ緩衝液中の樹脂に適用した。すべてpH7.5で、燐酸ナトリウムの10mMから300mMに増加させている線形塩勾配を用いて、結合されたたんぱく質を樹脂から溶離した。
【0101】
(実施例8:分配用(partitioning)重合体)
一連の分配用重合体(樹脂)が活性なアデノウィルスを精製するその能力についてスクリーニングされた(表4)。試験された重合体の大半は有意義な精製を提供したが、しかしほんの僅かのものだけが活性形で精製されたアデノウィルスの回収に導いたことが見い出された。一般に、MilliporeからのMemSepカートリッジまたはACTI−MODカートリッジ(American Chemical International)のような、膜−ベースカートリッジ重合体(樹脂)は活性なウィルスの良好な回収を与えた。これらの製品の優れた性能はこれらのカートリッジにおける膜マトリックスの開いているマクロ細孔構造に起因している可能性があると信じられる(これらの好ましい例において、DEAE基は、MemSepの場合において重合体マトリックスセルロースに共有的に結合されており、あるいはACTI−MODの場合においてシリケートに共有結合されている)。(幅において約12,000Å、即ち、1.2μmの開口(細孔)を有する)このタイプのマクロ細孔構造は、(繊維を含む)約140nmの直径を有するアデノウィルス粒子の迅速な通過を可能にする。
【0102】
表5はアデノウィルス精製のための種々のクロマトグラフィ方法の概要表である。
【0103】
【表4】

【0104】
【表5】

【0105】
(実施例9:アデノ随伴ウィルス(AAV)の精製)
遺伝子治療におけるベクターとしてAAVを用いて伴う主な問題の一つは、十分な量のウィルスの生成である。現在、AAVは、一般に活性なウィルスの非常に低い収率(0.3〜5%)を生ずる、密度勾配超遠心分離技術により精製されている。しかしながら密度勾配超遠心分離は、293細胞においてAAVを増殖するのにヘルパーウィルスとして使用されるアデノウィルスから、AAVを分離するのに非常に有効である。本発明はAAVの収率を増大させるために、感染細胞からのAAVの抽出のための改良された方法をカラムクロマトグラフィ工程と組み合わせることを提供する。
【0106】
感染された293細胞からのAAVの改良された抽出は洗浄剤(Tween−80)の存在下の細胞の加圧溶解により達成された。例1において上に提供されたとおりの溶解産物の清澄化の後に、AAVはゲル濾過クロマトグラフィにより他の細胞のたんぱく質から分離された。図7aはAAV感染された293細胞溶解産物をクロマトグラフィにかけた後の、Superdex200樹脂(Pharmacia製)からの溶離プロフィルを示す。空隙容量ピークは、この分画のスロットブロット(slot blot)分析および免疫ブロットにより検出されたものとして、大部分のAAVを含有する。
【0107】
このピークの追加の精製は、DEAE−MemSepカートリッジを用いてイオン交換クロマトグラフィにより達成された。DEAEカラムはアデノウィルスからAAVを分離するのに非常に有効であった。使用された条件(25mMのNaCl、10%のグリセロールおよび0.05%のTween−80を含有する10mMの燐酸ナトリウム(pH7.5))下、AAVおよびアデノウィルスの両方は、DEAE−樹脂に結合した。線形塩(KClおよびNaCl)勾配が樹脂に適用されたとき、AAVは200mMの塩で溶離し(図7、パネルB)、一方ではアデノウィルスは樹脂にかなりしっかりと結合したままの状態であってそして後に500〜700mMのNaClでの勾配で溶離された(図7、パネルB)。それ故に、AAVおよびアデノウィルスはDEAEイオン交換クロマトグラフィを用いてお互いから有効に分離されることが出来る。AAVを含有する2つのDEAE分画のSDS−PAGE分析は図8において示される。DEAE分画#7におけるAAVの活性度は6.5 x 10i.u./ml又は3.8 x 10i.u.の合計であった。DEAE貯留分画におけるAAVの活性度は1.38 x 10i.u./mlまたは2.76 x 10i.u.の合計であった。総合して、これらの分画はDEAE樹脂に適用されたAAV感染性単位のおおよそ100の回収を提供する。
【0108】
(実施例10:293細胞からのAAVの抽出)
ヒトの胎児細胞系(293)はまた、AAVを増殖するために用いられた。ウィルス感染された細胞は、細胞単層が広範な細胞変性効果(CPE)を示すまでインキュベートされた。細胞を収穫しそして1000 x gでの遠心分離により集めた。細胞ペレットはさらに使用するために−80℃で凍結されるかあるいは10mMのNaPi、10mMのNaCl、10%のグリセロール、2mMのMgCl(pH6.4)中に再懸濁された。
【0109】
再懸濁の後に、細胞を室温で1時間benzonaseで処理し、次に1%Tween−80の存在下にトリプシン処理を行った。次に、1000psiでMicrofluidizer(マサチューセッツ州ニュートンのMicrofludics製)を用いて細胞を溶解した。得られた溶解産物は、クロマトグラフィにかける前に、3.0μmガラスフィルター中を通しての真空濾過により清澄化されて細胞破片を除き、次に0.8μmの酢酸セルロースフィルター(Microfiltration Systems製)を用いて濾過工程を行うかあるいは0.45μmのMillexHV(Millipore製)フィルターユニット中を通過させて濾過された。
【0110】
(実施例11:AAVのクロマトグラフィ精製)
PharmaciaのFPLCを用いて、有効なAAV精製特性について種々のクロマトグラフィ樹脂が試験された。以下のシリーズのクロマトグラフィ工程は特に有用であることが分かった。
【0111】
a)BioRadセラミックヒドロキシアパタイト(80μm細孔寸法)
(アデノウィルスの存在下に)AAVで感染された293細胞からの細胞溶解産物(例10)は、10mMのNaClおよび10%のグリセロールを含有する10mMのNaHPO(pH6.4)で予め平衡化されたBioRadヒドロキシアパタイトカラム上でクロマトグラフィにかけられた。AAVを同じ緩衝液中の該樹脂に適用した。pH6.4で10mMから400mMまでの増大させている燐酸ナトリウムの勾配を用いて樹脂から結合たんぱく質を溶離した。樹脂から集められた分画はスロットブロット(slot blot)アッセイを用いてAAV DNAについてアッセイされそしてAAVの3種のキャプシドたんぱく質のVP1、VP2およびVP3に対する抗体(マサチューセッツ州ベルモントのAmerican Research Productsからのカタログ03−65158)を用いて免疫ブロットによりAAVたんぱく質についてアッセイされた。樹脂から溶離された分画はまた、抗アデノウィルス抗体を用いて免疫ブロットによりアデノウィルス汚染性たんぱく質について分析された。
【0112】
図9Aは、AAVおよびアデノウィルスを含有する293細胞溶解産物をクロマトグラフィにかけた後の、セラミックヒドロキシアパタイト(CHA)の典型的な溶離プロフィルを示す。AAVおよびアデノウィルスのすべてはCHA樹脂に結合しそして燐酸塩勾配を樹脂に適用したときに溶離された。AAVは溶離プロフィルについて示されるように、125mMの燐酸塩で樹脂から溶離した。このピークは、初期全細胞溶解産物中の20%未満の合計たんぱく質を含有する一方で、典型的に80%のAAV活性が回収された。溶離されたAAVピークはまた、免疫ブロットによりおよび力価分析により測定されたとき、若干の汚染性アデノウィルスたんぱく質を含有した(表5)。
【0113】
b)DEAEクロマトグラフィ(陰イオン交換)
アデノウィルスからAAVを分離するために、DEAE−MemSepカラムを用いるイオン交換クロマトグラフィが使用された。DEAE−MemSep1010HP(Millipore製)カラム(5ml)は、50mMのNaCl、10%のグリセロールを含有する10mMの燐酸塩緩衝液(pH7.5)で平衡化された。(上記)ヒドロキシアパタイトカラムから溶離されたAAV含有分画は貯留されそしてDEAE樹脂の平衡化のために用いられたと同じ緩衝液中に透析された。10mMのNaHPO(pH7.5)および10%のグリセロール中のKClおよびNaClの線形塩勾配(50mM〜2M)が5ml/分の流速で樹脂に適用された。結合されたたんぱく質は、樹脂から溶離されそして2.5ml分画に集められた。AAVは200mMの塩で溶離した一方で、アデノウィルスは500〜700mM塩で溶離した。各分画は、a)AAVたんぱく質(クーマシーブルー染色および免疫ブロット);b)AAV DNA;c)汚染性アデノウィルスたんぱく質およびd)感染性、について監視された。
【0114】
使用された条件(50mMのNaCl、10%のグリセロールおよび0.05%のTween−80を含有する10mMの燐酸ナトリウム(pH7.5))下に、AAVおよびアデノウィルスの両方は、DEAE−樹脂に結合した。線形塩勾配が樹脂に適用されたとき、AAVは200mM塩で溶離した(図9B)一方で、アデノウィルスは樹脂にいっそうしっかりと結合した状態のままでありそして後に、500〜700mMのNaClでの塩勾配で溶離された(図9B)。それ故に、AAVとアデノウィルスとは陰イオン交換(DEAE)クロマトグラフィを用いて有効に分離されることが出来る。DEAE−MemSepからのAAVの活性の回収は75%であった(表5)。DEAE樹脂からの貯留されたAAV含有分画のSDS−PAGE分析(図10、レーン3)は、いぜんとして若干の汚染性たんぱく質の存在があったことを示したので、この分画はCellufineサルフェート樹脂を用いてさらに精製された。レーン1〜4は、等しいパーセンテージの各々の分画(0.5%)を表しそして精製を通じてのAAVたんぱく質の回収を示す。レーン5は最終AAV含有分画の大きなパーセンテージを表しそしてAAVたんぱく質のVP1、VP2およびVP3の一層強い着色を提供する。AAVのDNAおよびたんぱく質の両方について陽性であった分画を貯留しそしてCellufineサルフェート樹脂を用いてさらにクロマトグラフィにかけた(下記)。
【0115】
c)Cellufineサルフェート樹脂(Amicon製)
10%グリセロールを含有するPBSを用いてCellufineサルフェート樹脂を平衡化した。AAVのたんぱく質およびDNAを含有するDEAE樹脂から溶離された分画を貯留しそして1ml/分の流速で樹脂に適用した。樹脂を250mMのNaClで洗浄しそしてPBS/グリセロール中の0.25〜1MのNaClの線形塩勾配を適用した。この塩勾配を用いて樹脂から溶離された物質および流通(flow−through)分画の両方は、a)AAVたんぱく質(免疫ブロット);b)AAV感染性(力価分析);c)アデノウィルスたんぱく質(免疫ブロット);およびd)アデノウィルス感染性(力価分析)について分析された。使用された緩衝液条件下、AAVは樹脂に結合しそして475mMの塩で溶離された(図9C)。アデノウィルスのたんぱく質およびDNAは流通分画において回収された。
【0116】
表5は幾つかの精製操作からのAAV活性の回収を示す。図10は各カラムからの精製のクーマシーブルー染色SDS−PAGE結果を示す。上に記載された3種のカラム精製処理は48%のAAV収率および>90%純粋の純度を提供した(図11)。図12は、CsCl勾配法を用いて精製されたAAVと本発明のカラム精製処理を用いて精製されたAAVとを比較する、クーマシー染色ゲルである。このゲルは両方の方法を用いて精製されたAAVが比較し得る純度のものであることを示す。また、上記方法により精製されたAAVはRepたんぱく質が存在しないことが示された(図13)。図13は、既知のRep標準と一緒に、カラム精製されたAAVの(抗Rep抗体を用いる)免疫ブロットを示す。AAV活性の約71%がCellufineサルフェート溶離液において回収される一方で、1%未満のアデノウィルス活性が同じ分画で回収される。
【0117】
したがって、Cellufineサルフェートは2つの主要な用途を有し、即ち、a)それはAAV製剤中の汚染性アデノウィルスの水準を減少させる、そしてb)それはAAV含有分画を濃縮する。しかしながらCellufineサルフェートクロマトグラフィにかけた後に、汚染性アデノウィルスの水準が減少される事実にもかかわらず、いぜんとして若干の低水準のアデノウィルス活性(6.73 x 10IU/ml)が残っている。
【0118】
d)亜鉛キレートクロマトグラフィ
汚染性アデノウィルスのすべてを完全に除去するために、亜鉛キレートクロマトグラフィを用いる追加のクロマトグラフィ工程が使用された。金属とのウィルス粒子(virions)の相互作用はウィルスおよびバクテリアファージの研究から推論された。本発明者の実験室からの以前の研究はアデノウィルスが亜鉛金属親和性カラムに吸着することが出来ることを示した。
【0119】
Cellufineサルフェート樹脂から回収された精製AAVの最終の分画は、SDS−PAGEにより、次に抗アデノウィルス抗体を用いる免疫ブロットにより分析された。これは最終AAV含有分画中のアデノウィルスの汚染の水準を調べるためであった。免疫ブロットは、検出出来るアデノウィルスたんぱく質が存在しなかったことを示した一方で、力価分析はアデノウィルス活性が全体活性のほんの1%を表したにすぎなかったけれども、この分画における若干のアデノウィルス活性があったことを示した(表6)。
【0120】
その固定化された亜鉛カラムは、1容量の100mMのEDTAおよび1容量の0.2mMのNaOHで順次カラムを洗浄することにより金属装入のために造られた。そのマトリックスは、氷酢酸で酸性化された水中の100mMのZnClで洗浄することにより亜鉛が装入された。次にそのカラムは、水で洗浄されそして450mMのNaCl、2mMのMgClおよび0.05%のTween−80を含有する50mMのHepes(pH7.5)で平衡化された。Cellufineサルフェート樹脂から溶離されたAAV含有分画を亜鉛キレート樹脂に適用した。装入の後に、450mMのNaCl、2mMのMgCl、10%のグリセロールおよび0.05%のTween−80を含有する50mMのHepes(pH7.5)から、150mMのNaCl、2mMのMgCl、10%のグリセロールおよび0.05%のTween−80を含有する50mMのHepesまでの、10カラム容量線形勾配を用いて、カラムを洗浄した。溶離は、10カラム容量にわたって、150mMのNaCl、50mMのHepes(pH7.5)、2mMのMgCl中の線形(0〜500mM)グリシン勾配を用いて行われた。
【0121】
Cellufineサルフェート樹脂から溶離されたAAV含有分画は450mMのNaCl中の亜鉛キレート樹脂に適用された。流通分画が集められそして結合されたたんぱく質はグリシン勾配を用いて溶離された。流通分画のSDS−PAGE分析は、AAVのすべてが流通で回収されたことを示した一方で、抗アデノウィルス抗体を用いての免疫ブロットは、アデノウィルスが亜鉛キレート樹脂に結合しそしてグリシンの増大させる勾配の存在下に溶離されたことを示した。亜鉛キレートクロマトグラフィを用いる初期の実験は、それがAAVとアデノウィルスの分離のために有用な樹脂であり得ることを示した。
【0122】
その精製方法は30%〜40%の全体的収率と共に70%より大きい純度があったAAVを生成した。
【0123】
【表6−1】


【表6−2】


【表6−3】


【表6−4】

【0124】
(実施例12:ウィルスの密度勾配精製)
標準の組み換え体アデノウィルスまたはAAVウィルスは、3工程遠心分離方法により造られた。感染された細胞は、benzonaseの存在下に凍結−解凍の3サイクルにより溶解された。溶解産物は4℃で3500rpmで15分間、卓上遠心分離機において遠心分離された。ペレットは捨てられそして上澄液は、1.27g/cmのCsClおよび1.4g/cmのCsCl不連続ステップ勾配上に層状に置かれそして1.5時間26,000rpmで遠心分離された。ウィルスバンドを集め、1.34g/mlのCsClと混合しそして60,000rpmで少なくとも2時間遠心分離した。この第1平衡勾配からのウィルスバンドを集め、1.34g/mlのCsClと混合しそして一夜30,000rpmで再遠心分離した。この工程からの最終のウィルスのプールは1%のスクロースを補充した燐酸塩緩衝化食塩水(PBS)に対して広範に透析された。別法として、上に記載されたようなSuperdex樹脂(Pharmacia製)上でのゲル濾過によりCsClを除去した。
【0125】
(実施例13:アガロースゲルを用いてのアデノウィルスDNAの検出)
カラム分画を、先ず15分間0.1%のSDSで処理し、次に室温で1時間プロナーゼ(Sigma製)で消化した。消化が完了した後に、フェノール:CHCl:イソアミルアルコールの1容量で2回抽出し、次に−20℃で20分間氷冷95%エタノールの2容量で沈殿させた。沈殿物を4℃で20分間13,000 x gでペレット化した。サンプルをTE緩衝液(Tris、EDTA)中に再懸濁させた。アデノウィルスDNAの制限酵素消化を行いそして4時間、120Vでまたは一夜35Vで0.8%アガロースゲル上の診断アデノウィルス断片についてその消化物を分析した。
【0126】
(実施例14:AAV DNAの検出のためのカラム分画のスロットブロット分析)
カラム分画を、スロットブロット(slot blot)分析によりAAV DNAについてアッセイした(AAV DNAは、またリポーター遺伝子としてlacZを含有する、マィアミのフロリダ大学のDr.N.Muzycziaにより提供されたベクター構成体中に存在した:図14参照)。サンプルはアデノウィルスを不活性化するために20分間56℃でインキュベートし、次に15分間37℃でDNaseI(デオキシリボヌクレアーゼIの略)で処理して非ウィルス粒子DNAを分解させた。次にDNaseIは10分間68℃での熱処理により不活性化された。サンプルのたんぱく質分解酵素K処理の後に、フェノール/クロロホルムを用いてDNAを抽出しそして3MのNaOAcで沈殿させた。DNAをGene Screen Plus膜に適用しそして予備ハィブリッド形成およびハィブリッド工程形成の後に、P32ランダム標識CMV β−galPvu II 断片を用いて膜をプローブした。サンプル中のAAVの粒子の数は、pTRlacZ DNA標準曲線を用いて計算された。
【0127】
(実施例15:ウィルスたんぱく質検出)
4〜20%勾配または10〜20%勾配(Daiichi製)ゲルのいずれかを用いて一次元のSDS−PAGEを行った。クーマシーブルーを用いてゲル中のたんぱく質を検出した。免疫ブロットのために、PVDF膜(Novex製)はメタノールで再湿潤されそして10%メタノールを含有する10mMのCAPS(pH11)中に浸された。ゲルは10分間この転移(transfer)緩衝液中で平衡化されそして次にNovex Blot Module中で1時間30Vでブロットされた。転移の後に、膜が1時間TBS(150mMのNaClを含有する20mMのTris−HCl(pH7.5))中の1%乾燥ミルクでブロックされた。ブロックの後に、膜は、抗アデノウィルス抗体(Lee Biomolecular製)でプローブされるかまたは2時間0.1%のBSAを含有する、20mMのTris−HCl、150mMのNaCl(pH7.5)および0.05%のTween−80(TBST)中の抗−VP1、VP2、VP3(AAV)抗体でプローブされた。膜は、20分間、ホースラデイシュペルオキシダーゼ(またの名は、わさびだいこんペルオキシダーゼ)標識化抗マウスIgGでインキュベートされそして免疫反応性バンドは、BM Chemiluminescent Western Blotting DetectionSystem(ベーリングマンハイム製)を用いて化学発光により可視化された。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】図1は、Acti−Modカートリッジ樹脂の概要図である。
【図2】図2は、DEAE−MemSep樹脂からのアデノウィルスの溶離プロフィルを示すクロマトグラムである。アデノウィルスについての溶離ピークは標識されている。
【図3】図3は、Superdex200樹脂からのアデノウィルスの溶離プロフィルを示すクロマトグラムである。アデノウィルスについての溶離ピークは標識されている。
【図4】図4は、CsCl勾配精製されたウィルス(レーン(Lane)B)と比較してのDEAEおよびゲル濾過クロマトグラフィにより精製されたアデノウィルス(レーンA)のSDS−PAGE分析である。
【図5】図5は、CsCl勾配精製されたウィルス(レーンA)と比較してのヘパリン、DEAEおよびSuperdexクロマトグラフィにより精製されたアデノウィルス(レーンB)のSDS−PAGE分析を示す。
【図6】図6は、CsCl勾配精製されたウィルスAと比較してのヘパリン、DEAEおよびSuperdexクロマトグラフィにより精製されたアデノウィルスBの濃度計による濃度測定分析を示す。
【図7】図7は、(A)Superdex200樹脂および(B)DEAE−MemSep樹脂からのAAVの溶離プロフィルを示すクロマトグラムである。
【図8】図8は、SuperdexおよびDEAEクロマトグラフィにより精製されたAAVの2つの分画(レーンAおよびB)のSDS−PAGE分析を示す。
【図9】図9AはAAV/アデノウィルス−含有293細胞溶解産物のセラミックヒドロキシアパタイトグロマトグラフィである。AAVおよびアデノウィルスの両方についての溶離ピークは標識されている。 図9BはヒドロキシアパタイトAAV含有溶離液のDEAE−MemSepクロマトグラフィを示す。AAVおよびアデノウィルスの両方についての溶離ピークは標識されている。 図9CはAAV−含有DEAE溶離液のCellufineサルフェートクロマトグラフィを示す。樹脂から溶離されたAAVピークは標識されている。
【図10】図10は、種々のカラム、即ちレーン1:ヒドロキシアパタイト装入;レーン2:ヒドロキシアパタィト溶離液;レーン3:DEAE溶離液;レーン4:Cellufineサルフェート溶離液;そしてレーン5:Cellufineサルフェート溶離液(100μl)、から回収したAAV含有分画のクーマシー染色SDS−PAGE分析を示す。(kDにおける)対照たんぱく質標準は左のカラムにおいて示される。
【図11】図11は、セラミックヒドロキシアパタイト、DEAEおよびCellufineサルフェートクロマトグラフィにより精製されたAAVのSDS−PAGE分析を示す。
【図12】図12は、CsCl勾配精製されたAAV(レーン2〜4)と比較してのセラミックヒドロキシアパタイト、DEAEおよびCellufineサルフェートクロマトグラフィにより精製されたAAV(レーン1)のクーマシー染色たんぱく質ゲルを示す。
【図13】図13は、Rep対照と比較しての、抗Rep抗体を用いる、セラミックヒドロキシアパタイト、DEAEおよびCellufineサルフェートクロマトグラフィにより精製されたAAV(レーンAAV)の免疫ブロットを示す。
【図14】図14は、pTRlacZの概要図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アデノウイルス感染細胞を溶解して活性なアデノウイルスを含む全細胞溶解産物を生成し、
(b)該溶解産物を少なくとも1つのクロマトグラフィーマトリックスに適用し、そして
(c)全細胞溶解物のアデノウイルス活性の60〜100%を有するアデノウイルス粒子の組成物を回収すること
を含むアデノウイルスの精製方法であって、
該クロマトグラフィーマトリックスが、アニオン交換材料、カチオン交換材料、疎水性相互作用材料、ヒドロキシアパタイト材料、ヘパリン材料、及びゲル濾過材料からなる群から選ばれる、上記方法。
【請求項2】
ステップ(b)に先立って、全細胞溶解物をヌクレアーゼとインキュベートすることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(b)に先立って、全細胞溶解物を清澄化することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(b)に先立って、溶解物を清澄化することを更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(b)に先立って、全細胞溶解物を限外濾過に付すことを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(b)に先立って、溶解物を限外濾過に付すことを更に含む、請求項2又は4に記載の方法。
【請求項7】
前記ヌクレアーゼはベンゾナーゼ(Benzonase:商標)である、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(a)は洗浄剤と加圧溶解の組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(a)は洗浄剤溶解を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記洗浄剤はトゥイーン−80(Tween−80)である、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(a)は加圧溶解を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
加圧溶解はミクロ流動化器(microfluidizer)を利用する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
(a)アデノウイルス感染細胞を溶解して活性なアデノウイルスを含む全細胞溶解産物を生成し(但し該溶解には繰り返しの凍結−解凍は含まれないものとする)、
(b)該溶解産物を少なくとも1つのクロマトグラフィーマトリックスに適用し、そして
(c)全細胞溶解物のアデノウイルス活性の60〜100%を有するアデノウイルス粒子の組成物を回収すること
を含むアデノウイルスの精製方法であって、
該クロマトグラフィーマトリックスが、アニオン交換材料、カチオン交換材料、疎水性相互作用材料、ヒドロキシアパタイト材料、ヘパリン材料、及びゲル濾過材料からなる群から選ばれる、上記方法。
【請求項14】
(a)アデノウイルス感染細胞を溶解して活性なアデノウイルスを含む全細胞溶解産物を生成し、
(b)該溶解産物を少なくとも1つのクロマトグラフィーマトリックスに適用し、そして
(c)全細胞溶解物のアデノウイルス活性の60〜100%を有するアデノウイルス粒子の組成物を回収する(但し、少なくとも約1mgの活性アデノウイルス粒子は回収される)こと
を含むアデノウイルスの精製方法であって、
該クロマトグラフィーマトリックスが、アニオン交換材料、カチオン交換材料、疎水性相互作用材料、ヒドロキシアパタイト材料、ヘパリン材料、及びゲル濾過材料からなる群から選ばれる、上記方法。
【請求項15】
ステップ(b)は、まず、溶解物をヘパリンクロマトグラフィーマトリックスに適用し、第2に該ヘパリンクロマトグラフィーマトリックスから回収された溶解物をDEAEクロマトグラフィーマトリックスに適用し、第3に該DEAEクロマトグラフィーマトリックスから回収された溶解物をゲル濾過マトリックスに適用することを含む、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項の方法により得られるアデノウイルス粒子の組成物。
【請求項17】
一連の少なくとも2つのカラム分離を含む方法であって、
各分離が、セラミックヒドロキシアパタイト、イオン交換樹脂、親和性基を含有するマクロ細孔樹脂、硫酸化樹脂、ヘパリン化重合体樹脂、及び亜鉛キレート樹脂からなる群から選ばれるクロマトグラフィーマトリックス材料により行われ、
各分離が、アデノ随伴ウイルス(AAV)とアデノウイルスたんぱく質とを含有する細胞溶解産物組成物を、該クロマトグラフィーマトリックス材料と接触させ、次にAAV含有溶離液を該クロマトグラフィーマトリックス材料から回収することを含み、かつ
AAVが、該アデノウイルスたんぱく質から、該一連のカラム分離により分離されて感染性ウイルスとして最終溶離液中に回収される、
上記方法。
【請求項18】
一連の少なくとも2つのカラム分離を含む方法であって、
各分離が、セラミックヒドロキシアパタイト、イオン交換樹脂、親和性基を含有するマクロ細孔樹脂、硫酸化樹脂、ヘパリン化重合体樹脂、及び亜鉛キレート樹脂からなる群から選ばれるクロマトグラフィーマトリックス材料により行われ、
各分離が、アデノ随伴ウイルス(AAV)とヘルパーウイルスとを含有する細胞溶解産物組成物を、該クロマトグラフィーマトリックス材料と接触させ、次にAAV含有溶離液を該クロマトグラフィーマトリックス材料から回収することを含み、かつ
AAVが、該ヘルパーウイルスから、該一連のカラム分離により分離されて感染性ウイルスとして最終溶離液中に回収される、
上記方法。
【請求項19】
一連の少なくとも2つのカラム分離を含む方法であって、
各分離が、セラミックヒドロキシアパタイト、イオン交換樹脂、親和性基を含有するマクロ細孔樹脂、硫酸化樹脂、ヘパリン化重合体樹脂、及び亜鉛キレート樹脂からなる群から選ばれるクロマトグラフィーマトリックス材料により行われ、
各分離が、アデノ随伴ウイルス(AAV)を含有する細胞溶解産物組成物を、該クロマトグラフィーマトリックス材料と接触させ、次にAAV含有溶離液を該クロマトグラフィーマトリックス材料から回収することを含み、かつ
AAVが、該細胞溶解産物から、該一連のカラム分離により分離されて、感染性ウイルスとして最終溶離液中に回収される、
上記方法。
【請求項20】
請求項17〜19のいずれか1項に記載の方法であって、前記一連のカラム分離が、下記:
1)前記組成物をヒドロキシアパタイト樹脂から構成されるクロマトグラフィーマトリックス材料と接触させ、次にAAV含有溶離液を該樹脂から回収すること、
2)該AAV含有溶離液をイオン交換性基を有するマクロ細孔樹脂から構成されるクロマトグラフィーマトリックス材料に適用させ、次に該AAV含有溶離液を該樹脂から回収すること、及び
3)該AAV含有溶離液を、硫酸化樹脂又はヘパリン化重合体樹脂のいずれかから構成されるクロマトグラフィーマトリックス材料に適用させ、次に該AAV含有溶離液を該樹脂から回収すること、
を含み、
AAVが、該組成物から該一連のカラム分離により分離されて、感染性ウイルスとして最終溶離液中に回収される、
上記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−92951(P2008−92951A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−262817(P2007−262817)
【出願日】平成19年10月9日(2007.10.9)
【分割の表示】特願2006−289363(P2006−289363)の分割
【原出願日】平成8年8月30日(1996.8.30)
【出願人】(506324138)ジエンザイム コーポレイション (3)
【Fターム(参考)】