説明

アナログ信号計測回路

【課題】所望の計測範囲の計測分解能を高め、精度の良い計測値を得る。
【解決手段】センサ素子6からの微小電圧を広レンジ用演算増幅部1で増幅し、信号a0とし、入力切替部2に送る。入力切替部2と演算処理部5との間に冷水レンジ用演算増幅部3と温水レンジ用演算増幅部4を設ける。演算処理部5は、入力切替部2へ切替信号dを送り、信号a0を信号a1として取得し、広レンジでの計測値T1を得る。広レンジでの計測値T1が冷水計測レンジにあれば、入力切替部2に切替信号dを送り、信号a0を信号a2として冷水レンジ用演算増幅部3へ送り、冷水レンジ用演算増幅部3で増幅された信号bを取り込んで、冷水レンジでの計測値Tcを得る。広レンジでの計測値T1が温水計測レンジにあれば、温水レンジ用演算増幅部4で増幅された信号cを取り込んで、温水レンジでの計測値Thを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、冷温水などの温度計測に用いて好適なアナログ信号計測回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、建築建物内の熱源や空調設備を制御する制御装置では、各設備の熱交換器などに供給または排出される冷媒温度を検出して制御用または表示用として利用している。これらの設備は、夏季は冷水、冬季は温水を冷媒とするため、温度センサとして、−10〜100℃程度の計測レンジが必要とされる。
【0003】
温度センサとしては、一般に、温度変化に伴い抵抗値が変化するセンサ素子(白金測温抵抗体)が用いられ、センサ素子に電流を流すことで生じる電圧を検出することによって温度計測が行われる。この場合、温度変化により生じるセンサ素子間の電圧は微小であるため、センサ素子からの電圧を装置が識別できる電圧に演算増幅器で増幅する(例えば、特許文献1参照)。ここで、従来においては、通常、演算増幅器のゲインを装置に必要な全計測レンジに合わせて決定している。この場合、出力分解能(V/℃)は計測レンジが広いほど小さくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09−079917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した熱源や空調設備を制御する制御装置では、全計測レンジのうち実際に計測分解能が必要な計測レンジは冷水では5〜25℃程度、温水では40〜60℃程度であるのにも拘わらず、全計測レンジに合わせて演算増幅器のゲインが定められている。このため、実際に計測分解能が必要な計測レンジにおいても出力分解能が小さいままとなり、高精度の計測値を得ることができないという問題があった。
【0006】
なお、この問題を解決するために、(1)出力分解能が小さいままで高精度のA/D変換器を使用する、あるいは(2)冷水計測用と温水計測用とで入力を分けることが考えられるが、(1)の方法では部品コストが高くなってしまうし、(2)の方法では冷温水計測回路の物理的な入力が2つとなってしまうといった欠点がある。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、高精度のA/D変換器を用いることなく、また物理的な入力を2つに分けたりすることなく、所望の計測範囲の計測分解能を高め、精度の良い計測値を得ることが可能なアナログ信号計測回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために本発明は、被測定対象として入力されるアナログ信号をその計測範囲の全範囲に亘って第1の増幅率で増幅する第1の増幅手段と、第1の増幅手段によって増幅されたアナログ信号を第2の増幅率で増幅する第2の増幅手段と、第1の増幅手段によって増幅されたアナログ信号に対応する計測値を広レンジでの計測値として演算する第1の計測値演算手段と、第1の計測値演算手段によって演算された広レンジでの計測値が計測範囲の一部として予め定められている第1の部分計測範囲に含まれている否かを判断する第1の部分計測範囲判断手段と、第1の部分計測範囲判断手段によって第1の部分計測範囲に広レンジの計測値が含まれていると判断された場合、第2の増幅手段によって増幅されたアナログ信号に対応する計測値を第1の狭レンジでの計測値として演算する第2の計測値演算手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、第1の増幅手段によって増幅されたアナログ信号に対応する計測値が広レンジでの計測値として演算され、この演算された広レンジでの計測値が第1の部分計測範囲に含まれているか否かが判断され、第1の部分計測範囲に広レンジの計測値が含まれていると判断されると、第2の増幅手段によって増幅されたアナログ信号に対応する計測値が第1の狭レンジでの計測値として演算される。この場合、第2の増幅手段によって増幅されたアナログ信号は、第1の増幅手段によって増幅されたアナログ信号をさらに第2の増幅率で増幅したものである。このため、第1の狭レンジでの出力分解能が広レンジでの出力分解能よりも大きくなり、第1の狭レンジでの計測値の精度がアップする。
【0010】
また、本発明では、さらに、第1の増幅手段によって増幅されたアナログ信号を第3の増幅率で増幅する第3の増幅手段と、第1の計測値演算手段によって演算された広レンジでの計測値が計測範囲の一部として予め定められている第1の部分計測範囲とは非連続な第2の部分計測範囲に含まれている否かを判断する第2の部分計測範囲判断手段と、第2の部分計測範囲判断手段によって第2の部分計測範囲に広レンジの計測値が含まれていると判断された場合、第3の増幅手段によって増幅されたアナログ信号に対応する計測値を第2の狭レンジでの計測値として演算する第3の計測値演算手段とを設ける。
【0011】
このようにすると、演算された広レンジでの計測値が第1の部分計測範囲ではなく、この第1の部分計測範囲とは非連続な第2の部分計測範囲に含まれていると判断されると、第3の増幅手段によって増幅されたアナログ信号に対応する計測値が第2の狭レンジでの計測値として演算される。この場合、第3の増幅手段によって増幅されたアナログ信号は、第1の増幅手段によって増幅されたアナログ信号をさらに第3の増幅率で増幅したものである。このため、第2の狭レンジでの出力分解能も第1の狭レンジでの出力分解能と同様、広レンジでの出力分解能よりも大きくなり、第2の狭レンジでの計測値の精度がアップする。
【0012】
第1の部分計測範囲と第2の部分計測範囲とを定める場合、例えば、第1の狭レンジを冷水用の計測レンジ、第2の狭レンジを温水用の計測レンジとすることが考えられる。また、第2の増幅手段での増幅を非反転増幅、第3の増幅手段での増幅を反転増幅とすることが考えられる。このようにすると、冷水用の計測レンジと温水用の計測レンジとで同じ電圧幅を使用することが可能となる。
【0013】
また、本発明において、第1の部分計測範囲判断手段によって第1の部分計測範囲に広レンジの計測値が含まれていると判断された場合、第1の増幅手段によって増幅されたアナログ信号の入力先を第1の計測値演算手段から第2の増幅手段へ切り替え、第2の部分計測範囲判断手段によって第2の部分計測範囲に広レンジの計測値が含まれていると判断された場合、第1の増幅手段によって増幅されたアナログ信号の入力先を第1の計測値演算手段から第3の増幅手段へ切り替える入力切替手段を設けるようにしてもよい。
【0014】
また、第1および第2の部分計測範囲判断手段を1つの計測範囲判断手段とし、所定の周期で、広レンジでの計測値が第1の部分計測範囲、第2の部分計測範囲、第1および第2の部分計測範囲の何れにも属さない計測範囲の何れに属しているかを判断させるようにしてもよく、第2の計測値演算手段によって、第1の部分計測範囲に自己が演算した第1の狭レンジでの計測値が含まれているか否かを判断させ、第1の狭レンジでの計測値が第1の部分計測範囲に含まれていないと判断されるまで、第1の狭レンジでの計測値の演算を繰り返させ、第3の計測値演算手段によって、第2の部分計測範囲に自己が演算した第2の狭レンジでの計測値が含まれているか否かを判断させ、第2の狭レンジでの計測値が第2の部分計測範囲に含まれていないと判断されるまで、第2の狭レンジでの計測値の演算を繰り返させるようにしてもよい。
【0015】
また、被測定対象のアナログ信号として冷温水温度を示す信号を入力し、狭レンジでの計測値が演算された場合にはその狭レンジでの計測値を確定された計測値とし、狭レンジでの計測値が演算されない場合には広レンジでの計測値を確定された計測値とするアナログ信号計測回路において、確定された計測値を使用する制御機器の現在の冷暖房の制御モードを記憶させるものとし、確定された計測値と記憶している制御モードとに基づいて制御機器における制御モードの一致性を判断させるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、被測定対象として入力されるアナログ信号をその計測範囲の全範囲に亘って第1の増幅率で増幅する第1の増幅手段と、第1の増幅手段によって増幅されたアナログ信号を第2の増幅率で増幅する第2の増幅手段とを設け、第1の増幅手段によって増幅されたアナログ信号に対応する計測値を広レンジでの計測値として演算する一方、この広レンジでの計測値が第1の部分計測範囲に含まれている否かを判断し、第1の部分計測範囲に広レンジの計測値が含まれていると判断された場合、第2の増幅手段によって増幅されたアナログ信号に対応する計測値を第1の狭レンジでの計測値として演算するようにしたので、第1の狭レンジの出力分解能が広レンジでの出力分解能よりも大きくなり、高精度のA/D変換器を用いることなく、また物理的な入力を2つに分けたりすることなく、所望の計測範囲の計測分解能を高め、精度の良い計測値を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るアナログ信号計測回路の一実施の形態を示す冷温水計測回路の要部の機能ブロック図(実施の形態1)である。
【図2】実施の形態1の冷温水計測回路における演算処理部での特徴的な処理動作を示すフローチャートである。
【図3】実施の形態1の冷温水計測回路における広レンジ用演算増幅部,冷水レンジ用演算増幅部および温水レンジ用演算増幅部の出力波形を示す図である。
【図4】実施の形態2の冷温水計測回路の要部の機能ブロック図である。
【図5】実施の形態2の冷温水計測回路における演算処理部での特徴的な処理動作を示すフローチャートである。
【図6】実施の形態3の冷温水計測回路の要部の機能ブロック図である。
【図7】実施の形態3の冷温水計測回路における演算処理部での特徴的な処理動作を示すフローチャートである。
【図8】実施の形態4の冷温水計測回路における演算処理部での特徴的な処理動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
〔実施の形態1〕
図1はこの発明に係るアナログ信号計測回路の一実施の形態を示す冷温水計測回路の要部の機能ブロック図(実施の形態1)である。
【0019】
この冷温水計測回路100は、広レンジ用演算増幅部1と、入力切替部2と、冷水レンジ用演算増幅部3と、温水レンジ用演算増幅部4と、演算処理部5とを備えている。なお、6は冷温水計測回路100への入力部として設けられたセンサ素子である。
【0020】
この例において、入力切替部2としてはマルチプレクサが用いられ、広レンジ用演算増幅部1,冷水レンジ用演算増幅部3および温水レンジ用演算増幅部4としてはオペアンプが用いられ、センサ素子6としては白金測温抵抗体やサーミスタなどの温度検出素子が用いられている。
【0021】
広レンジ用演算増幅部1は、被測定対象として入力されるセンサ素子6からの微小電圧(アナログ信号)を入力とし、この微小電圧をその計測範囲の全範囲(−10〜100℃)に亘って第1の増幅率A1で非反転増幅する。この増幅された微小電圧は信号a0として出力される。
【0022】
入力切替部2は、演算処理部5からの切替信号dを入力とし、この切替信号dの指示に従って広レンジ用演算増幅部1からの信号a0の出力先を切り替え、第1の出力ポートO1から信号a1として出力し、第2の出力ポートO2から信号a2として出力し、第3の出力ポートO3から信号a3として出力する。
【0023】
冷水レンジ用演算増幅部3は、入力切替部2の第2の出力ポートO2からの信号a2を入力とし、Tcmin(5℃)〜Tcmax(25℃)を温度範囲とする冷水計測レンジに対する信号a2のみを第2の増幅率A2で非反転増幅する。この増幅された信号a2は信号bとして出力される。
【0024】
温水レンジ用演算増幅部4は、入力切替部2の第3の出力ポートO3からの信号a3を入力とし、Thmin(40℃)〜Thmax(60℃)を温度範囲とする温水計測レンジに対する信号a3のみを第3の増幅率A3で反転増幅する。この増幅された信号a3は信号cとして出力される。
【0025】
演算処理部5は、入力切替部2の第1の出力ポートO1からの信号a1、冷水レンジ用演算増幅部3からの信号b、温水レンジ用演算増幅部4からの信号cを入力とし、入力切替部2への切替信号dを生成するとともに、内部で演算し確定した計測値T(後述)を出力する。
【0026】
演算処理部5は、CPU、A/Dコンバータ、メモリなどからなるハードウェアと、これらのハードウェアと協働して演算処理部としての各種機能を実現させるプログラムとによって実現され、本実施の形態特有の機能として切替信号dの生成機能および計測値Tの演算処理機能を備えている。なお、この例において、A/DコンバータはCPUに内蔵されている。
【0027】
以下、図2に示すフローチャートに従って、演算処理部5が有する切替信号dの生成機能および計測値Tの演算処理機能について説明する。
【0028】
演算処理部5は、所定周期毎に、計測処理を行う。この場合、計測周期に入ると(ステップS101のYES)、入力切替部2へ信号a1の選択を指示する切替信号dを出力する(ステップS102)。
【0029】
この時、広レンジ用演算増幅部1は、センサ素子6からの微小電圧(アナログ信号)をその計測範囲の全範囲に亘って第1の増幅率A1で非反転増幅し、信号a0として出力している。
【0030】
図3(a)に広レンジ用演算増幅部1の出力波形を示す。Tminは計測範囲の下限値(−10℃)、Tmaxは計測範囲の上限値(100℃)であり、下限値Tminを示すセンサ素子6からの微小電圧は増幅率A1で非反転増幅されて電圧値Vminの信号a0とされ、上限値Tmaxを示すセンサ素子6からの微小電圧は増幅率A1で非反転増幅されて電圧値Vmaxの信号a0とされる。
【0031】
入力切替部2は、演算処理部5からの切替信号dを受けると、広レンジ用演算増幅部1からの信号a0を取り込み、第1の出力ポートO1から信号a1として出力する。この入力切替部2の第1の出力ポートO1からの信号a1は演算処理部5の第1の入力ポートI1に与えられる。
【0032】
演算処理部5は、この第1の入力ポートI1に与えられる信号a1を取り込み、この取り込んだ信号a1をCPU内蔵のA/D変換器によってデジタル値に変換し、この変換したデジタル値から信号a1に対応する計測値を求め、この求めた計測値を広レンジでの温度計測値T1とする(ステップS103)
【0033】
そして、演算処理部5は、この広レンジでの温度計測値T1が冷水計測レンジ(図3(a)に示すTcmin〜Tcmaxの温度範囲H1(第1の部分計測範囲))に含まれているのか、温水計測レンジ(図3(a)に示すThmin〜Thmaxの温度範囲H2(第2の部分計測範囲))に含まれているのか、それ以外のレンジ(温度範囲H1,H2以外の温度範囲)に含まれているのかを判断する。
【0034】
ここで、広レンジでの温度計測値T1が冷水計測レンジに入っていれば(Tcmin≦T1≦Tcmax)、演算処理部5は、入力切替部2へ信号a2の選択を指示する切替信号dを出力する(ステップS105)。
【0035】
入力切替部2は、演算処理部5からの切替信号dを受けると、広レンジ用演算増幅部1からの信号a0の出力先を切り替え、第2の出力ポートO2から信号a2として出力する。この入力切替部2の第2の出力ポートO2からの信号a2は、冷水レンジ用演算増幅部3において増幅率A2で非反転増幅され、信号bとして演算処理部5の第2の入力ポートI2に与えられる。
【0036】
図3(b)に冷水レンジ用演算増幅部3の出力波形を示す。冷水レンジ用演算増幅部3では、図3(a)に示した温度範囲H1(Tcmin〜Tcmax)の信号a2(a0)に対してのみ増幅率A2での非反転増幅が行われ、冷水計測レンジの下限値Tcminに対応する信号a2は電圧値Vbminの信号bとされ、冷水計測レンジの上限値Tcmaxに対応する信号a2は電圧値Vbmaxの信号bとされる。
【0037】
演算処理部5は、この第2の入力ポートI2に与えられる信号bを取り込み、この取り込んだ信号bをCPU内蔵のA/D変換器によってデジタル値に変換し、この変換したデジタル値から信号bに対応する計測値を求め、この求めた計測値を冷水計測レンジでの温度計測値Tcとする(ステップS106)。この温度計測値Tcは確定された計測値Tとして出力される(ステップS109)。
【0038】
この場合、冷水レンジ用演算増幅部3によって増幅された信号bは、広レンジ用演算増幅部1によって増幅された信号a0をさらに第2の増幅率A2で増幅したものである。このため、冷水計測レンジでの出力分解能が広レンジでの出力分解能よりも大きくなり、冷水計測レンジでの計測値の精度がアップする。
【0039】
一方、演算処理部5は、広レンジでの温度計測値T1が温水計測レンジに入っていれば(Thmin≦T1≦Thmax)、入力切替部2へ信号a3の選択を指示する切替信号dを出力する(ステップS107)。
【0040】
入力切替部2は、演算処理部5からの切替信号dを受けると、広レンジ用演算増幅部1からの信号a0の出力先を切り替え、第3の出力ポートO3から信号a3として出力する。この入力切替部2の第3の出力ポートO3からの信号a3は、温水レンジ用演算増幅部4において増幅率A3で反転増幅され、信号cとして演算処理部5の第3の入力ポートI3に与えられる。
【0041】
図3(c)に温水レンジ用演算増幅部4の出力波形を示す。温水レンジ用演算増幅部4では、図3(a)に示した温度範囲H2(Thmin〜Thmax)の信号a3(a0)に対してのみ増幅率A3での反転増幅が行われ、温水計測レンジの下限値Thminに対応する信号a3は電圧値Vcmaxの信号cとされ、温水計測レンジの上限値Thmaxに対応する信号a3は電圧値Vcminの信号cとされる。
【0042】
なお、温水レンジ用演算増幅部4において、信号a3を増幅率A3で非反転増幅するようにしてもよいが、信号a3を増幅率A3で反転増幅するようにすると、冷水用の計測レンジと温水用の計測レンジとして同じ電圧幅を使用することができるので、都合がよい。
【0043】
演算処理部5は、この第3の入力ポートI3に与えられる信号cを取り込み、この取り込んだ信号cをCPU内蔵のA/D変換器によってデジタル値に変換し、この変換したデジタル値から信号cに対応する計測値を求め、この求めた計測値を温水計測レンジでの温度計測値Thとする(ステップS108)。この温度計測値Thは確定された計測値Tとして出力される(ステップS109)。
【0044】
この場合、温水レンジ用演算増幅部4によって増幅された信号cは、広レンジ用演算増幅部1によって増幅された信号a0をさらに第3の増幅率A3で増幅したものである。このため、温水計測レンジでの出力分解能が広レンジでの出力分解能よりも大きくなり、温水計測レンジでの計測値の精度がアップする。
【0045】
演算処理部5は、広レンジでの温度計測値T1が冷水計測レンジ(Tcmin〜Tcmax)にも温水計測レンジ(Thmin〜Thmax)にも含まれていなければ、すなわち冷水計測レンジおよび温水計測レンジ以外のレンジの温度範囲に含まれていれば(T1<Tcmin、Tcmax<T1<Thmin、Thmax<T1)、広レンジでの温度計測値T1をそのまま確定された計測値Tとして出力する(ステップS109)。
【0046】
以下、同様にして、演算処理部5は、計測周期に入る毎に(ステップS101のYES)、上述したステップS102〜S109の処理動作を繰り返す。
【0047】
このようにして、本実施の形態では、演算処理部5のCPUに内蔵されたA/D変換器を有効に利用し、高精度のA/D変換器を用いることなく、また冷温水計測回路100の物理的な入力を2つに分けたりすることなく、冷水計測レンジおよび温水計測レンジの計測分解能を高め、精度の良い計測値を得ることができるようになる。
【0048】
なお、この実施の形態1において、広レンジ用演算増幅部1が本発明でいう第1の増幅手段に相当し、冷水レンジ用演算増幅部3が第2の増幅手段に相当し、温水レンジ用演算増幅器4が第3の増幅手段に相当し、入力切替部2が入力切替手段に相当する。また、演算処理部5においてステップS102,S103の処理を行う部分が第1の計測値演算手段に相当し、ステップS104の処理を行う部分が第1の部分計測範囲判断手段および第2の部分計測範囲判断手段に相当し、ステップS105,S106の処理を行う部分が第2の計測値演算手段に相当し、ステップS107,S108の処理を行う部分が第3の計測値演算手段に相当する。
【0049】
〔実施の形態2〕
上述した実施の形態1の冷温計測回路100では、演算処理部5が3つの入力ポートI1〜I3を備え、第1の入力ポートI1に信号a1が与えられ、第2の入力ポートI2に信号bが与えられ、第3の入力ポートI3に信号cが与えられるものとした。
【0050】
これに対し、実施の形態2の冷温計測回路101(図4)では、1つの入力ポートI1しか有さない演算処理部5を用い、この演算処理部5の前段に第2の入力切替部2−2を設け、演算処理部5からの第1の入力切替部2−1への切替信号dを分岐して第2の入力切替部2−2へも与えるようにしている。
【0051】
図5にこの冷温計測回路101における図2に対応するフローチャートを示す。この場合、ステップS102において、第2の入力切替部2−2が入力切替部2−1からの信号a1を選択して、演算処理部5の第1の入力ポートI1に与える。また、ステップS105において、第2の入力切替部2−2が冷水レンジ用演算増幅部3からの信号bを選択して、演算処理部5の第1の入力ポートI1に与える。また、ステップS107において、第2の入力切替部2−2が温水レンジ用演算増幅部4からの信号cを選択して、演算処理部5の第1の入力ポートI1に与える。
【0052】
〔実施の形態3〕
図6に図1に示した冷温水計測回路100の演算処理部5に冷房暖房状態(以下、冷暖状態と呼ぶ)の不一致検出機能を設けた例を実施の形態3として示す。この実施の形態3の冷温水計測回路102において、演算処理部5は冷暖状態入力部5−1と冷暖状態不一致検出部5−2と警報出力部5−3とを備えている。冷暖状態入力部5−1には、演算処理部5からの計測値Tを使用する制御機器(図示せず)の現在の冷暖房の制御モードが入力され、記憶される。
【0053】
図7にこの冷温水計測回路102における演算処理部5での冷暖状態不一致検出機能を含む処理動作のフローチャートを示す。このフローチャートにおいて、ステップS101〜S109の処理は図2に示したフローチャートにおける対応するステップS101〜S109の処理と同じであるので、その説明は省略する。
【0054】
演算処理部5は、計測値Tが確定されると(ステップS109)、その計測値Tが冷水計測レンジでの計測値Tcであるのか、温水計測レンジでの計測値Thであるのか、それ以外のレンジでの計測値であるのかを判断する(ステップS110)。
【0055】
ここで、計測値Tが冷水計測レンジでの計測値Tcであれば、冷暖状態入力部5−1に記憶されている冷暖房の制御モードが冷房状態であるか否か、すなわち計測値Tと冷暖房の制御モードが「冷房」で一致しているか否かを判断する(ステップS111)。ここで、「冷房」で一致していなければ(ステップS111のNO)、冷暖不一致であると判断し(ステップS113)、冷暖不一致の警報を出力する(ステップS114)。
【0056】
また、計測値Tが温水計測レンジでの計測値Thであれば、冷暖状態入力部5−1に記憶されている冷暖房の制御モードが暖房状態であるか否か、すなわち計測値Tと冷暖房の制御モードが「暖房」で一致しているか否かを判断する(ステップS112)。ここで、「暖房」で一致していなければ(ステップS112のNO)、冷暖不一致であると判断し(ステップS113)、冷暖不一致の警報を出力する(ステップS114)。
【0057】
このフローチャートにおいて、ステップS111での冷房判断、ステップS112での暖房判断、ステップS113での冷暖不一致の検出は冷暖状態不一致検出部5−2で行われ、冷暖不一致の警報出力は警報出力部5−3で行われる。この実施の形態3では、冷暖状態不一致検出部5−2が本発明でいう制御モード一致性判断手段に相当し、冷暖状態入力部5−1が制御モード記憶手段に相当する。
【0058】
なお、この例では、演算処理部5に冷暖不一致検出機能を設けたが、通信にて外部で実現するようにしてもよい。また、この例では、図1に示した冷温水計測回路100の演算処理部5に冷暖不一致検出機能を設けた例として示したが、図4に示した冷温水計測回路101の演算処理部5にも同様にして冷暖不一致検出機能を設けるようにしてもよい。
【0059】
〔実施の形態4〕
上述した実施の形態1〜3では、所定周期毎に広レンジでの温度計測値T1を求め、この広レンジでの温度計測値T1が冷水計測レンジに含まれているのか、温水計測レンジに含まれているのか、あるいは何れのレンジにも含まれていないのかを判断するようにしたが、必ずしも所定周期毎に広レンジでの温度計測値T1を求めて判断するようにしなくてもよい。
【0060】
例えば、広レンジでの温度計測値T1が冷水計測レンジに含まれていると判断した場合、冷水計測レンジでの計測値Tcがその冷水計測レンジの温度範囲Tcmin〜Tcmaxに含まれていないと判断されるまで、冷水計測レンジでの計測値Tcの演算を繰り返し、広レンジでの温度計測値T1が温水計測レンジに含まれていると判断した場合、温水計測レンジでの計測値Thが温水計測レンジの温度範囲Thmin〜Thmaxに含まれていないと判断されるまで、温水計測レンジでの計測値Thの演算を繰り返すようにしてもよい。
【0061】
このような機能を付加した冷温水計測回路100(図1)を実施の形態4とし、この実施の形態4における演算処理部5での処理動作のフローチャートを図8に示す。
【0062】
この場合、演算処理部5は、計測周期に入ると(ステップS201のYES)、入力切替部2へ信号a1の選択を指示する切替信号dを出力し(ステップS202)、入力切替部2の第1の出力ポートO1からの信号a1を取り込み、広レンジでの温度計測値T1を得る(ステップS203)。そして、この広レンジの温度計測値Tが冷水計測レンジに含まれているのか、温水計測レンジに含まれているのか、その何れのレンジにも含まれていないのかを判断する(ステップS204)。
【0063】
ここで、広レンジでの温度計測値T1が冷水計測レンジに入っていれば(Tcmin≦T1≦Tcmax)、演算処理部5は、入力切替部2へ信号a2の選択を指示する切替信号dを出力し(ステップS205)、冷水レンジ用演算増幅部3からの信号bを取り込み、冷水計測レンジでの温度計測値Tcを求め(ステップS206)、その求めた冷水計測レンジでの温度計測値Tcを計測値Tとして確定する(ステップS207)。
【0064】
そして、その確定した計測値Tが冷水計測レンジの温度範囲に含まれていることを確認しながら(Tcmin≦T≦Tcmax)、信号bからの冷水計測レンジでの温度計測値Tcの演算を繰り返す(ステップS206〜S208)。
【0065】
この冷水計測レンジでの温度計測値Tcの演算の繰り返し中、確定した計測値TがT<TcminあるいはTcmax<Tとなり(ステップS208のNO)、その状態が連続して所定回数確認されると(ステップS209のYES)、演算処理部5は、冷水計測レンジでの温度計測値Tcが冷水計測レンジの温度範囲Tcmin〜Tcmaxを外れたと判断し、ステップS201へ戻る。これにより、所定周期毎の広レンジでの温度計測値T1の演算が再開され、その求めた広レンジでの温度計測値T1に基づく計測レンジの判断が繰り返される。
【0066】
これに対し、広レンジでの温度計測値T1が温水計測レンジに入っていれば(Thmin≦T1≦Thmax)、演算処理部5は、入力切替部2へ信号a3の選択を指示する切替信号dを出力し(ステップS210)、温水レンジ用演算増幅部4からの信号cを取り込み、温水計測レンジでの温度計測値Thを求め(ステップS211)、その求めた温水計測レンジでの温度計測値Thを計測値Tとして確定する(ステップS212)。
【0067】
そして、その確定した計測値Tが温水計測レンジの温度範囲に含まれていることを確認しながら(Thmin≦T≦Thmax)、信号cからの温水計測レンジでの温度計測値Thの演算を繰り返す(ステップS211〜S213)。
【0068】
この温水計測レンジでの温度計測値Thの演算の繰り返し中、確定した計測値TがT<ThminあるいはThmax<Tとなり(ステップS213のNO)、その状態が連続して所定回数確認されると(ステップS214のYES)、温水計測レンジでの温度計測値Thが温水計測レンジの温度範囲Thmin〜Thmaxを外れたと判断し、ステップS201へ戻る。これにより、所定周期毎の広レンジでの温度計測値T1の演算が再開され、その求めた広レンジでの温度計測値T1に基づく計測レンジの判断が繰り返される。
【0069】
この実施の形態4では、ステップS204〜S209の処理を行う部分が本発明でいう第2の計測値演算手段に相当し、ステップS204,S210〜S214の処理を行う部分が第3の計測値演算手段に相当する。
【0070】
また、上述した実施の形態1〜4では、センサ素子6によって温度を検出するものとしたが、すなわち被測定対象を温度としたが、被測定対象は温度に限られるものではなく、センサ6によって湿度を検出するものとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明のアナログ信号計測回路は、冷温水の温度計測などを高精度で行うアナログ信号計測回路として、建築建物内の熱源や空調設備を制御する制御装置などの装置に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0072】
1…広レンジ用演算増幅部、2,2−1,2−2…入力切替部、O1〜O3…出力ポート、3…冷水レンジ用演算増幅部、4…温水レンジ用演算増幅部、5…演算処理部、I1〜I3…入力ポート、5−1…冷暖状態入力部、5−2…冷暖不一致検出部、5−3…警報出力部、6…センサ素子、100,101,102…冷温水計測回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定対象として入力されるアナログ信号をその計測範囲の全範囲に亘って第1の増幅率で増幅する第1の増幅手段と、
前記第1の増幅手段によって増幅された前記アナログ信号を第2の増幅率で増幅する第2の増幅手段と、
前記第1の増幅手段によって増幅された前記アナログ信号に対応する計測値を広レンジでの計測値として演算する第1の計測値演算手段と、
前記第1の計測値演算手段によって演算された広レンジでの計測値が前記計測範囲の一部として予め定められている第1の部分計測範囲に含まれている否かを判断する第1の部分計測範囲判断手段と、
前記第1の部分計測範囲判断手段によって前記第1の部分計測範囲に前記広レンジの計測値が含まれていると判断された場合、前記第2の増幅手段によって増幅された前記アナログ信号に対応する計測値を第1の狭レンジでの計測値として演算する第2の計測値演算手段と
を備えることを特徴とするアナログ信号計測回路。
【請求項2】
請求項1に記載されたアナログ信号計測回路において、
前記第1の増幅手段によって増幅された前記アナログ信号を第3の増幅率で増幅する第3の増幅手段と、
前記第1の計測値演算手段によって演算された広レンジでの計測値が前記計測範囲の一部として予め定められている前記第1の部分計測範囲とは非連続な第2の部分計測範囲に含まれている否かを判断する第2の部分計測範囲判断手段と、
前記第2の部分計測範囲判断手段によって前記第2の部分計測範囲に前記広レンジの計測値が含まれていると判断された場合、前記第3の増幅手段によって増幅されたアナログ信号に対応する計測値を第2の狭レンジでの計測値として演算する第3の計測値演算手段と
を備えることを特徴とするアナログ信号計測回路。
【請求項3】
請求項1に記載されたアナログ信号計測回路において、
前記第1の部分計測範囲判断手段によって前記第1の部分計測範囲に前記広レンジの計測値が含まれていると判断された場合、前記第1の増幅手段によって増幅された前記アナログ信号の入力先を前記第1の計測値演算手段から前記第2の増幅手段へ切り替える入力切替手段
を備えることを特徴とするアナログ信号計測回路。
【請求項4】
請求項2に記載されたアナログ信号計測回路において、
前記第1の部分計測範囲判断手段によって前記第1の部分計測範囲に前記広レンジの計測値が含まれていると判断された場合、前記第1の増幅手段によって増幅された前記アナログ信号の入力先を前記第1の計測値演算手段から前記第2の増幅手段へ切り替え、前記第2の部分計測範囲判断手段によって前記第2の部分計測範囲に前記広レンジの計測値が含まれていると判断された場合、前記第1の増幅手段によって増幅された前記アナログ信号の入力先を前記第1の計測値演算手段から前記第3の増幅手段へ切り替える入力切替手段
を備えることを特徴とするアナログ信号計測回路。
【請求項5】
請求項2に記載されたアナログ信号計測回路において、
前記第1および第2の部分計測範囲判断手段は、1つの計測範囲判断手段として、
所定の周期で、前記広レンジでの計測値が前記第1の部分計測範囲、前記第2の部分計測範囲、前記第1および第2の部分計測範囲の何れにも属さない計測範囲の何れに属しているかを判断する
ことを特徴とするアナログ信号計測回路。
【請求項6】
請求項2に記載されたアナログ信号計測回路において、
前記第2の計測値演算手段は、
自己が演算した第1の狭レンジでの計測値が前記第1の部分計測範囲に含まれているか否かを判断し、第1の狭レンジでの計測値が第1の部分計測範囲に含まれていないと判断されるまで、前記第1の狭レンジでの計測値の演算を繰り返し、
前記第3の計測値演算手段は、
自己が演算した第2の狭レンジでの計測値が前記第2の部分計測範囲に含まれているか否かを判断し、第2の狭レンジでの計測値が第2の部分計測範囲に含まれていないと判断されるまで、前記第2の狭レンジでの計測値の演算を繰り返す
ことを特徴とするアナログ信号計測回路。
【請求項7】
前記被測定対象のアナログ信号として冷温水温度を示す信号を入力し、前記狭レンジでの計測値が演算された場合にはその狭レンジでの計測値を確定された計測値とし、前記狭レンジでの計測値が演算されない場合には前記広レンジでの計測値を確定された計測値とする請求項1〜6の何れか1項に記載されたアナログ信号計測回路において、
前記確定された計測値を使用する制御機器の現在の冷暖房の制御モードを記憶する制御モード記憶手段と、
前記確定された計測値と前記制御モード記憶手段が記憶している制御モードとに基づいて前記制御機器における制御モードの一致性を判断する制御モード一致性判断手段と
を備えることを特徴とするアナログ信号計測回路。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate