説明

アナログ表示装置

【課題】指針の早送り移動の際の待機時間を短縮することの出来るアナログ表示装置を提供する。
【解決手段】回転軸が同一の複数の指針と、指針を各々所定の角度ずつ独立に正転方向又は逆転方向に移動させる駆動手段と、早送り情報に基づき各指針の早送り方向を設定する早送り設定手段と、正転早送りが設定された第1指針が各移動目標位置に到達するまで各正転早送り速度で第1指針の駆動信号を駆動手段に出力する第1駆動制御手段と、逆転早送りが設定された第2指針が各移動目標位置に到達するまで各逆転早送り速度で第2指針の駆動信号を駆動手段に出力する第2駆動制御手段と、を備え、早送り設定手段は、早送り情報として取得した早送り後の指針位置情報で指定された各指針の絶対位置による相対位置関係を満たす指針位置のうち、絶対位置への早送りより短時間で早送り可能な指針位置を移動目標位置に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、独立に駆動される複数の指針を用いて情報を表示するアナログ表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の指針を用いて現在時刻を表示させたり、ストップウォッチ機能において計測された経過時間を表示させたりすることのできるアナログ表示装置、例えば、アナログ電子時計がある。このようなアナログ表示装置では、ユーザによるボタンスイッチの操作などに基づいて表示内容が変更される場合には、指針が早送り移動されて速やかに他の表示に切り替わる。
【0003】
近年、時刻表示機能に加えてストップウォッチ機能といった複数の機能を実行可能なアナログ電子時計では、複数の指針を各々独立に正転方向又は逆転方向に移動させることが可能な構成が採用されている。このようなアナログ電子時計では、表示内容を変更したり、表示データをリセットしたりするといった各指針の移動量が大きい動作を行う場合であっても、時針と分針とが連動して回転駆動されるアナログ電子時計と比較して短時間で全ての指針を目標位置に移動させることが出来る。特許文献1には、アナログ時計装置において、このような独立駆動の指針を用いて実行させることが可能な種々の機能について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−93784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特に携帯用途で用いられる小型サイズのアナログ表示装置、例えば、アナログ電子腕時計では、バッテリや制御処理能力の制約により指針の動作速度に上限がある。従って、このようなアナログ表示装置で複数の機能を切り替えたり、同一機能を繰り返し利用したりする場合に、指針を、例えば、文字盤上に設けられた目盛や標識の位置に合わせて所定の絶対位置に移動させると、指針の配置によっては移動に要する時間が長くなって、速やかに切り替え後の機能を利用したい場合であっても無視できない長さの待機時間が生じてしまうという課題があった。
【0006】
この発明の目的は、早送りによる指針移動の際の待機時間をより短くすることの出来るアナログ表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するため、
一の回転軸に対して各々回動可能な複数の指針と、
当該複数の指針を各々独立して駆動し、正転方向又は逆転方向に各々所定の単位移動角度ずつ移動させる駆動手段と、
前記複数の指針の早送り情報に基づいて、当該複数の指針それぞれの早送り方向を設定する早送り設定手段と、
前記早送り設定手段により正転方向への早送りが設定された第1指針が前記早送り情報に基づいて設定された各々の移動目標位置に到達するまで、各々予め設定された正転早送り速度で前記第1指針を駆動させる駆動信号を前記駆動手段に出力する第1駆動制御手段と、
前記早送り設定手段により逆転方向への早送りが設定された第2指針が前記早送り情報に基づいて設定された各々の移動目標位置に到達するまで、各々予め設定された逆転早送り速度で前記第2指針を駆動させる駆動信号を前記駆動手段に出力する第2駆動制御手段と、
を備え、
前記早送り設定手段は、前記早送り情報として早送り後の前記複数の指針の指針位置情報を取得し、当該指針位置情報において指定された前記複数の指針の絶対位置に基づく当該複数の指針の相対位置関係を満たす指針位置のうち、前記指針位置情報において指定された前記複数の指針の絶対位置へ当該複数の指針を早送りさせる場合と比較して前記早送りの時間が短縮される指針位置を前記移動目標位置として設定する
ことを特徴とするアナログ表示装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明に従うと、アナログ表示装置において、従来よりも指針の移動に係る待機時間を短くすることが出来るという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態のアナログ電子時計を示す正面図である。
【図2】アナログ電子時計の内部構成を示すブロック図である。
【図3】CPUが実行する指針早送り制御処理の制御手順を示すフローチャートである。
【図4】2指針を早送りさせる場合の移動先設定処理の制御手順を示すフローチャートである。
【図5】第1移動方向移動距離算出処理の制御手順を示すフローチャートである。
【図6】2指針を早送りさせる場合の具体例を示す図である。
【図7】変形例のアナログ電子時計を示す正面図である。
【図8】3指針を早送りさせる場合の移動先設定処理の制御手順を示すフローチャートである。
【図9】第2移動方向移動距離算出処理の制御手順を示すフローチャートである。
【図10】3指針を早送りさせる場合の具体例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
図1は、本発明のアナログ表示装置の実施形態であるアナログ電子時計の正面図である。
【0012】
このアナログ電子時計1は、腕時計型の電子時計である。アナログ電子時計1は、ケーシング10と、文字盤7と、文字盤7の上面を塞ぐ図示略の風防ガラスとに覆われた領域に、時針2、分針3、秒針4、機能針5、及び、回転円板6(以降、まとめて指針2〜6とも記す)が設けられている。指針2〜6の回転軸は、何れも文字盤7の中央付近で同一位置となるように設けられている。また、風防ガラスの周縁部には、ベゼル8が設けられ、ケーシング10の側面部には、3個のボタンスイッチB1〜B3、及び、リュウズC1が設けられている。
【0013】
回転円板6は、文字盤7の周縁部に設けられている時刻を表示するための時刻目盛及び世界時計機能において選択される都市を示す都市名標識を覆い隠さないサイズ及び配置となっている。回転円板6の周縁部には、アナログ電子時計1が実行可能な機能を表す文字標識が設けられ、機能針5がこれらの文字標識のうち1つを指し示すことで、アナログ電子時計1が実行中の機能が示される。また、ベゼル8には、ストップウォッチ機能における1/20秒を示す目盛が設けられ、ストップウォッチ機能の実行時に秒針4が指し示すことで1秒未満の経過時間が示される。文字盤7に設けられた時刻目盛、回転円板6に設けられた文字標識、及び、ベゼル8に設けられた目盛は、各々印刷されたものであっても良いし、彫り込まれて形成された凹部、孔部や盛り上げられた凸部であっても良い。
【0014】
本実施形態のアナログ電子時計1の回転円板6には、アラーム機能を表す標識「AL」、世界時計機能を表す標識「WT」、タイマー機能を表す標識「TR」、ストップウォッチ機能を表す標識「ST」、及び、現在時刻表示機能を表す標識「BT」が60度間隔でそれぞれ設けられている。このアナログ電子時計1の初期設定では、現在時刻表示機能を表す標識「BT」が12時の方向を基準として時計回りに45度の位置に配置され、この標識「BT」の初期位置、及び、標識「BT」に対する他の標識「AL」、「WT」、「TR」、「ST」の位置関係を示す初期設定位置データは、後述のROM47に格納されている。通常では、機能針5が標識「BT」を指し示すと共に、時針2、分針3、及び、秒針4が各々文字盤7上の時刻目盛に対し、何れかの位置を指し示すことで、現在時刻が継続的に表示される。
【0015】
図2には、アナログ電子時計1の内部構成を示すブロック図を示す。
【0016】
アナログ電子時計1は、指針2〜6に加えて、これらの指針2〜6をそれぞれ輪列機構32〜36を介して駆動する時針駆動部42、分針駆動部43、秒針駆動部44、機能針駆動部45、及び、回転円板駆動部46(以降、指針駆動部42〜46とも記す)と、ROM(Read Only Memory)47(記憶手段)と、RAM(Random Access Memory)48と、CPU(Central Processing Unit)49(早送り設定手段、第1駆動制御手段、第2駆動制御手段、初期化手段)と、電源部50と、発振回路51と、分周回路52と、計時回路53と、操作部54と、などを備えている。
ここで、指針駆動部42〜46は、駆動手段を構成する。
【0017】
CPU49は、各種演算処理を行い、また、アナログ電子時計1の全体動作を制御統括する。RAM48は、CPU49に作業用のメモリ空間を提供し、一時データを記憶する。ROM47は、CPU49が実行する各種プログラムや、これら各種プログラムにおいて利用される初期設定データを格納する。ROM47に記憶された各種プログラムには、指針2〜6の早送り動作を制御する早送り制御プログラム47aが含まれている。ROM47に格納されたプログラムや初期設定データは、必要に応じてCPU49により読み出され、RAM48上に展開されて実行、利用される。
【0018】
電源部50は、CPU49に対し、動作に必要な電力を供給する。この電源部50は、特には限られないが、例えば、太陽電池と二次電池とを組み合わせたものである。
【0019】
発振回路51は、所定の周波数信号を生成して分周回路52に出力する。分周回路52は、発振回路51から入力された周波数信号を設定された各種の分周比で分周して、CPU49により予め設定された周波数の信号を適宜生成してCPU49に出力する。分周回路52で生成された周波数信号のうち1秒信号は、計時回路53に出力される。計時回路53は、入力された1秒信号をカウントして時刻を計数するカウンタである。また、計時回路53が計数する時刻データは、CPU49からの修正命令に基づいて修正可能となっている。
なお、計時回路53は、1秒単位での計数に限られず、分周回路52から入力される信号の周波数に基づいてより細かい時間間隔で時刻をカウントすることとしても良い。
【0020】
指針駆動部42〜46は、それぞれステッピングモータを備え、CPU49から入力される駆動信号(パルス)に基づき、指針2〜6をそれぞれ独立に駆動することが可能となっている。また、これらの指針駆動部42〜46は、指針2〜6を各々正転方向(時計回り)または逆転方向(反時計回り)に適宜切り替えて移動させることが出来る。秒針駆動部44は、ステッピングモータが180度回転するごとに輪列機構34を介して秒針4を6度ステップで回転移動させ、時針駆動部42、分針駆動部43、機能針駆動部45、及び、回転円板駆動部46は、それぞれ、ステッピングモータが180度回転するごとに輪列機構32、33、35、36を介して時針2、分針3、機能針5、及び、回転円板6を1度ステップで回転移動させる。即ち、秒針4は、単位移動角度が6度に構成され、60ステップの移動により文字盤7上で一周する。また、時針2、分針3、機能針5、及び、回転円板6は、単位移動角度が1度に構成され、360ステップで文字盤7上を一周する。
【0021】
本実施形態のアナログ電子時計1における指針駆動部42〜46は、早送り方向を正転方向とする場合には、指針2〜6を最大64pps(Pulse per second)、即ち、1秒間に64ステップの正転早送り速度で駆動可能であり、また、早送り方向を逆転方向とする場合には、指針2〜6を最大32pps、即ち、1秒間に32ステップの逆転早送り速度で駆動可能である。
【0022】
次に、本実施形態のアナログ電子時計1の指針の早送り動作について説明する。
図3は、CPU49が実行する指針早送り処理の制御手順を示すフローチャートである。
【0023】
この指針早送り処理は、例えば、ユーザによる操作部54への入力操作に基づいて動作機能が変更された場合に開始される。
【0024】
指針早送り処理が開始されると、CPU49は、先ず、各指針2〜6の現在位置及び移動先情報を取得する(ステップS11)。続いて、CPU49は、移動対象となる全ての指針について、移動先情報で指定された移動目標位置の回転移動による変更が可能であるか否かを判別する(ステップS12)。具体的には、本実施形態のアナログ電子時計1では、時刻表示やアラーム時刻表示の機能に移行する際の時針2、分針3、及び、秒針4の移動目標位置は、文字盤7上に設けられた標識の方向に基づいて決定されるので、これらの指針の移動目標位置を移動させることが出来ない。一方、機能針5及び回転円板6の移動目標位置は、機能針5が回転円板6上にある目的の標識を指し示す相対位置関係にある限りにおいて固定の場所に限られず、従って、これらの指針の移動目標位置を回転移動させて変更することが可能である。
【0025】
移動目標位置の回転移動による変更が可能ではないと判別された場合には、CPU49は、移動対象の各指針の現在位置と当該指針の移動目標位置との相対位置関係に基づき、各指針の回転方向と移動ステップ数を算出して設定する(ステップS14)。具体的には、指針の現在位置から移動目標位置への相対ステップ数が正転方向に240ステップ以下である指針に対しては、CPU49は、当該指針を正転方向に相対ステップ数移動させる設定を行う。一方、相対ステップ数が240ステップより大きい指針に対しては、CPU49は、その指針を逆転方向に360から相対ステップ数を減算したステップ数移動させる設定を行う。そして、CPU49の処理は、ステップS15に移行する。
【0026】
移動目標位置の回転移動による変更が可能であると判別された場合には、CPU49は、後述する移動先設定処理を呼び出して実行し(ステップS13)、移動対象の各指針の移動方向及び移動ステップ数を設定する。それから、CPU49の処理は、ステップS15に移行する。
【0027】
ステップS15の処理に移行すると、CPU49は、指針駆動部42〜46のうち、移動対象となる指針に対応するものに対し、予め設定された早送り速度(時間周期)で駆動信号を出力し、当該指針を移動目標位置まで移動させる。全ての移動対象の指針が移動目標位置に到達すると、CPU49は、指針早送り処理を終了する。
【0028】
図4は、本実施形態のアナログ電子時計1において、同一のステップ角度ずつ駆動される(即ち、単位移動角度が1度)2本の指針を早送りさせる場合に、指針早送り処理により呼び出される移動先設定処理のCPU49による制御手順を示すフローチャートである。
【0029】
移動対象となる2本の指針A、Bに対し、CPU49は、先ず、指針Aの現在位置を位置αとして取得し、指針Bの現在位置を位置βとして取得する(ステップS1311)。ここで、位置α、βは、それぞれ、12時方向を「0」として正転方向に1度(1ステップ)毎に「359」まで順番に設定された数値で表される。そして、CPU49は、後述する第1移動方向移動距離算出処理を呼び出して指針A、Bの移動方向及び移動ステップ数を算出する(ステップS1312)。指針A、Bの移動方向及び移動ステップ数が求められて設定されると、CPU49の処理は、指針早送り処理に戻る。
【0030】
図5は、移動先設定処理から呼び出される第1移動方向移動距離算出処理のCPU49による制御手順を示すフローチャートである。
【0031】
第1移動方向移動距離算出処理が呼び出されると、CPU49は、先ず、位置βの値が位置αの値より大きいか否かを判別する(ステップS2301)。位置βの値が位置αの値より大きいと判別された場合には、CPU49は、続いて、位置βと位置αとの値の差(β−α)が180以上であるか否かを判別する(ステップS2302)。差が180以上であると判別された場合には、CPU49は、位置αにある指針Aを逆転方向に移動させ、位置βにある指針Bを正転方向に移動させる設定を行う(ステップS2303)。また、CPU49は、指針Aの位置αからの移動ステップ数を(360+α−β)×32/(64+32)に設定し、指針Bの位置βからの移動ステップ数を(360+α−β)×64/(64+32)に設定する(ステップS2304)。なお、移動ステップ数が整数とならない場合には、正転方向に早送りさせる指針の移動ステップ数における小数点以下を繰り上げ、逆転方向に早送りさせる指針の移動ステップ数における小数点以下を切り捨てるのが好ましい。それから、CPU49は、第1移動方向移動距離算出処理を終了して元の処理に戻る。
【0032】
一方、ステップS2302の判別処理で、差が180未満であると判別された場合には、CPU49は、位置αにある指針Aを正転方向に移動させ、位置βにある指針Bを逆転方向に移動させる設定を行う(ステップS2305)。また、CPU49は、指針Aの位置αからの移動ステップ数を(β−α)×64/(64+32)に設定し、指針Bの位置βからの移動ステップ数を(β−α)×32/(64+32)に設定する(ステップS2306)。そして、CPU49は、第1移動方向移動距離算出処理を終了して元の処理に戻る。
【0033】
ステップS2301の判別処理で、位置βの値が位置αの値以下であると判別された場合には、CPU49は、続いて、位置αの値と位置βの値との差(α−β)が180以上であるか否かを判別する(ステップS2312)。差が180以上であると判別された場合には、CPU49は、指針Aを正転方向に移動させ、指針Bを逆転方向に移動させる設定を行う(ステップS2313)。また、CPU49は、指針Aの位置αからの移動ステップ数を(360+β−α)×64/(64+32)に設定し、指針Bの位置βからの移動ステップ数を(360+β−α)×32/(64+32)に設定する(ステップS2314)。そして、CPU49は、第1移動方向移動距離算出処理を終了して元の処理に戻る。
【0034】
一方、ステップS2312の判別処理で、差が180未満であると判別された場合には、CPU49は、指針Aを逆転方向に移動させ、指針Bを正転方向に移動させる設定を行う(ステップS2315)。また、CPU49は、指針Aの位置αからの移動ステップ数を(α−β)×32/(64+32)に設定し、指針Bの位置βからの移動ステップ数を(α−β)×64/(64+32)に設定する(ステップS2316)。そして、CPU49は、第1移動方向移動距離算出処理を終了して元の処理に戻る。
【0035】
図6は、本実施形態のアナログ電子時計1において2本の指針を早送り移動させる場合の具体例を示す図である。
【0036】
図6(a)に示すように、当初、機能針5が回転円板6の1時30分の方向、即ち、ステップ「45」に位置している標識「BT」を指し示すことで、アナログ電子時計1が現在時刻の表示機能の実行状態であることが示されている。この現在時刻の表示状態からストップウォッチ機能の初期表示状態に移行させるには、先ず、機能針5が回転円板6の標識「ST」を指し示すように機能針5および回転円板6を早送りで移動させる。図6(a)示すように、現在時刻の表示状態に置いて標識「ST」は、11時30分の方向(ステップ「345」)に位置しているので、機能針5及び回転円板6の当初移動目標位置は、このステップ「345」に設定される(ステップS11)。実行中の機能の表示では、機能針5及び回転円板6の相対的な位置関係のみが重要であるので、移動目標位置を変更することが可能である(ステップS12で“YES”)。従って、CPU49の処理がステップS13に移行して移動先設定処理が呼び出される。
【0037】
このとき、機能針5の現在位置のステップ「45」が位置αとして設定され、回転円板6における標識「ST」が位置するステップ「345」が位置βとして設定される(ステップS1311)。そして、ステップS1312の処理で移動方向移動距離算出処理が呼び出されると、ステップS2301の判別処理において、位置βの値が位置αの値より大きいと判別され(“YES”に分岐)、また、この標識「ST」の位置と機能針5の位置とのステップ差は300であって、180より大きいと判別される(ステップS2302で“YES”に分岐)。従って、機能針5を逆転により移動させ、回転円板6を正転により移動させる設定がなされる(ステップS2303)。また、機能針5の移動ステップ数が20ステップであり、回転円板6の移動ステップ数が40ステップであるとそれぞれ算出されて設定される(ステップS2304)。
【0038】
指針早送り処理に戻り、CPU49が機能針駆動部45及び回転円板駆動部46に上記算出された移動方向及び移動ステップ数の駆動信号を出力することで、図6(b)に示すように、最短時間で機能針5が回転円板6の標識「ST」を0時50分の方向(ステップ「25」)で指し示す状態に変更することが出来る(ステップS15)。
【0039】
次に、例えば、時針2及び分針3をストップウォッチ機能における経過時間表示に用いる場合には、機能針5及び回転円板6の上記早送り動作が終了した後に、これらの時針2及び分針3を0時方向に移動させる(ステップS11)。この場合には、移動目標位置が0時方向(ステップ「0」)で固定されているので(ステップS12で“NO”)、従来通りに移動方向と移動ステップ数が求められて(ステップS14)、早送り処理が行われる(ステップS15)。なお、上記の機能針5及び回転円板6の早送り時に、時針2及び分針3を機能針5及び回転円板6と同時且つ独立に早送りさせて0時方向を指し示させることとしても良い。
【0040】
その後、ストップウォッチ機能から現在時刻表示機能に復帰する場合には、再び、機能針5が指し示す方向と、回転円板6における標識「BT」の位置とを一致させる早送りを行う。仮の移動目標位置は、このときの回転円板6における標識「BT」の位置であるステップ「85」に設定されるが(ステップS11)、この移動目標位置は、変更可能である(ステップS12の判別処理で“YES”)。そして、指針移動先設定処理(ステップS13)において、機能針5の位置(ステップ「25」)が位置αとして設定され、また、回転円板6における標識「BT」の位置(ステップ「85」)が位置βとして設定される(ステップS1311)。
【0041】
続いて呼び出される移動方向移動距離算出処理(ステップS1312)において、βはαよりも大きいと判別され(ステップS2301で“YES”)、また、β−α=60は、180よりも小さいと判別される(ステップS2302で“NO”)。従って、機能針5を正転方向に早送りさせ、また、回転円板6を逆転方向に早送りさせる設定がそれぞれなされ(ステップS2305)、また、機能針5の移動ステップ数が40ステップ、回転円板6の移動ステップ数が20ステップにそれぞれ設定される(ステップS2306)。
【0042】
指針早送り処理に戻り、CPU49が機能針5及び回転円板6をそれぞれ上記設定された移動方向に移動ステップ数早送り移動させる(ステップS15)ことで、図6(c)に示すように、機能針5の指示方向及び回転円板6の標識「BT」の位置は、ステップ「65」に当たる2時10分の方向で一致する。
【0043】
ここで、上記の例では、移動対象の2本の指針が何れも同一の早送り速度及び単位移動角度の場合を示したが、例えば、単位移動角度が6度の秒針4と単位移動角度が1度の他の指針とを同時に早送りさせる場合や、例えば、回転円板6の早送り速度が正転方向にも32ppsの場合といった、異なる早送り速度、及び/または、異なる単位移動角度の指針を早送りさせる場合も存在しうる。このような場合においても同様に、移動方向及び移動速度を適宜設定して移動目標位置を変更させることで、最短時間で秒針4と他の指針との相対位置関係を所望のものとすることができる。
【0044】
指針Aの現在位置(角度)をp、単位移動角度をa、正転移動速度(pps)をv1f、逆転移動速度をv1bとする。また、指針Bの現在位置をp、単位移動角度をa、正転移動速度をv2f、逆転移動速度をv2bとする。ここで、単位移動角度a≧aとなるように指針A、Bが設定されている。また、指針Aの現在位置pと指針Bの現在位置pとの差ΔP12=p−pとする。ΔP12<0の場合には、ΔP12に360を加算する。
【0045】
このとき、指針Bの移動ステップ数を求めるため、先ず、図5のステップS2304、S2306、S2314、S2316に示した計算式を拡張して、下記の数式(1)、(2)に基づき指針Bを逆転方向又は正転方向にそれぞれ早送りさせる場合の暫定的な移動ステップ数を算出する。
2b=ceil((ΔP12/a)×(a2b)/(a1f+a2b)) …(1)
2f=ceil(((360−ΔP12)/a)×(a2f)/(a1b+a2f)) …(2)
ここで、関数ceilは、括弧内の数値の小数点以下を切り上げた整数を求めることを示す。
【0046】
次に、次の条件式(3)が満たされるか否かを判別する。
2b/v2b≦m2f/v2f …(3)
条件式(3)が満たされる場合には、m=m2b、v=v2b、指針Bが逆転、m=(ΔP12−m)/a1、=v1f、指針Aが正転に設定される。一方、条件式(3)が満たされない場合には、m=m2f、v=v2f、指針Bが正転、m=(360−ΔP12−m)/a、v=v1b、指針Aが逆転に設定される。
【0047】
続いて、次の条件式(4)が満たされるか否かを判別する。
/v≦(m+a/a)/v …(4)
条件式(4)が満たされる場合には、指針A、Bの移動ステップ数m、mは、上記算出された値となり、条件式(4)が満たされない場合には、移動ステップ数m=m−1、m=m+a/aにそれぞれ変更される。
【0048】
なお、指針位置の差ΔP12が指針Bのステップ当たり単位移動角度aより小さい場合には、指針Bと指針Aの移動方向が同一となるので、修正を行う必要がある。
また、単位移動角度aが単位移動角度aの約数ではない場合には、設定可能な移動目標位置を単位移動角度a、aの最小公倍数ごとに算出する。
【0049】
[変形例]
図7は、上記の実施形態のアナログ電子時計の変形例を示す正面図である。
【0050】
この変形例のアナログ電子時計1aでは、実行中の機能を示す標識が文字盤7a上に設けられ、代わりに、ストップウォッチ機能において経過時間を示す目盛が回転円板6a上に設けられている。また、都市名標識は、ベゼル8aに設けられている。その他の構成は、アナログ電子時計1の構成と同一であり、同一符号を付して説明を省略する。
【0051】
この変形例のアナログ電子時計1aのストップウォッチ機能では、時針2及び分針3により経過時間の分及び秒が表示される。また、これらの時針2及び分針3と、目盛が設けられた回転円板6aとの3つの指針が連動して早送り動作が行われる。
【0052】
図8は、変形例のアナログ電子時計1において、単位移動角度が何れも1度の3指針を早送りさせる場合に、指針早送り処理により呼び出される移動先設定処理のCPU49による制御手順を示すフローチャートである。
【0053】
この移動先設定処理は、本実施形態の指針早送り処理のステップS13で移動先設定処理が呼び出される際に、移動対象となる指針が3本ある場合に実行される処理である。
【0054】
この移動先設定処理が呼び出されると、CPU49は、先ず、3本の指針A、B、Cの各々の間のステップ差(即ち、角度差)を算出する(ステップS1321)。即ち、CPU49は、指針A、B間のステップ差a、指針B、C間のステップ差b、及び、指針C、A間のステップ差cを算出する。ここで、ステップ差a、b、cは、正転方向または逆転方向のステップ差のうち、より短いほうのステップ差の絶対値であり、0以上180以下の値である。
【0055】
次に、CPU49は、ステップ差aが、ステップ差b以上且つステップ差c以上であるか否かを判別する(ステップS1322)。ステップ差aがステップ差b、c以上であると判別された場合には、CPU49は、指針Aの位置を位置α、指針Bの位置を位置β、指針Cの位置を位置γとしてそれぞれ設定する(ステップS1323)。次いで、ステップ差aがステップ差bとステップ差cとの和に等しいか否かを判別する(ステップS1324)。等しいと判別された場合には、CPU49の処理は、ステップS1332に移行する。等しくないと判別された場合には、CPU49の処理は、ステップS1333に移行する。
【0056】
ステップ差aが、ステップ差b又はステップ差cの少なくとも一方より小さいと判別された場合には、続いて、CPU49は、ステップ差cが、ステップ差a以上且つステップ差b以上であるか否かを判別する(ステップS1325)。ステップ差cがステップ差a、b以上であると判別された場合には、CPU49は、指針Aの位置を位置α、指針Cの位置を位置β、指針Bの位置を位置γとしてそれぞれ設定する(ステップS1326)。次いで、ステップ差cがステップ差aとステップ差bとの和に等しいか否かを判別する(ステップS1327)。等しいと判別された場合には、CPU49の処理は、ステップS1332に移行する。等しくないと判別された場合には、CPU49の処理は、ステップS1333に移行する。
【0057】
ステップ差cが、ステップ差a又はステップ差bの少なくとも一方より小さいと判別された場合には、更に、CPU49は、ステップ差bがステップ差a以上且つステップ差c以上であるか否かを判別する(ステップS1328)。ステップ差a、b、cの中で、ステップ差bが最大であると判別された場合には、CPU49は、指針Bの位置を位置α、指針Cの位置を位置β、指針Aの位置を位置γとしてそれぞれ設定する(ステップS1329)。次いで、ステップ差bがステップ差aとステップ差cとの和に等しいか否かを判別する(ステップS1330)。等しいと判別された場合には、CPU49の処理は、ステップS1332に移行する。等しくないと判別された場合には、CPU49の処理は、ステップS1333に移行する。
【0058】
ステップ差bが、ステップ差a又はステップ差cの少なくとも一方より小さいと判別される場合は、本来ではありえないので、CPU49は、エラー出力を行って(ステップS1331)、指針早送り処理に戻る。
【0059】
ステップS1324、S1327、S1330の何れかの判別処理で“YES”に分岐してCPU49の処理がステップS1332に移行すると、CPU49は、図5に示した第1移動方向移動距離算出処理を呼び出して、設定された位置α、βを用いて当該2本の指針の移動方向及び移動距離を算出する。一方、ステップS1324、S1327、S1330の何れかの判別処理で“NO”に分岐してCPU49の処理がステップS1333に移行すると、CPU49は、後述の第2移動方向移動距離算出処理を呼び出して、設定されたα、βを用いて当該2本の指針の移動方向及び移動距離を算出する。
【0060】
ステップS1332、または、ステップS1333の処理で2本の指針の移動方向及び移動距離が算出されると、CPU49は、定められた移動目標位置への位置γからの移動方向及び移動距離を算出する(ステップS1334)。そして、CPU49は、移動先設定処理を終了して指針早送り処理に戻る。
【0061】
図9は、ステップS1333の処理で呼び出される第2移動方向移動距離算出処理のCPU49による制御手順を示すフローチャートである。
【0062】
この第2移動方向移動距離算出処理の制御内容は、第1移動方向移動距離算出処理におけるステップS2302の処理内容がステップS2302aに置き換えられ、また、ステップS2312の処理内容がステップS2312aに置き換えられた点を除き、第1移動方向移動距離算出処理と同一であり、同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
【0063】
ステップS2302aの処理では、CPU49は、ステップS2302の処理とは反対に、2本の指針の位置の差(β−α)が180未満であるか否かを判別し、また、ステップS2312aの処理では、CPU49は、ステップS2312の処理とは反対に、2本の指針の位置の差(α−β)が180未満であるか否かを判別する。これらの判別処理により、以下の処理ステップS2303〜S2306、S2313〜S2316で、2本の指針が位置α、βから合計移動角度が180度以上となる早送り駆動が行われる設定がなされる。
【0064】
即ち、この3指針の早送りの場合の処理では、移動目標位置が位置α、βの間であって、位置γが設定されている角度範囲の側に設定されるので、位置γから移動目標位置への早送り時間は、位置α、βから移動目標位置への早送り時間より必ず短くなる。
【0065】
図10は、この変形例のアナログ電子時計1aでストップウォッチ機能を実行中に経過時間を表す時針2、分針3、及び、回転円板6aの動作の具体例を示す平面図である。
なお、この図10では、動作説明と関係のない他の指針である秒針4及び機能針5を省略している。
【0066】
先ず、図10(a)に示されるように、ストップウォッチ機能が呼び出されると、時針2及び分針3が12時方向(ステップ「0」)に早送り動作される。このときの早送り動作は、移動目標位置が固定されており(ステップS12で“NO”)、従来通りに早送り方向及び移動ステップ数の算出が行われて(ステップS14)、上記算出結果に基づいてCPU49から出力される時針2及び分針3の駆動信号に基づいて時針2及び分針3が早送りされる(ステップS15)。
【0067】
次に、ユーザの操作部54への入力操作に基づいてストップウォッチ機能における経過時間の計測が行われると、時針2及び分針3が時間の経過に伴って移動し、計測の終了やラップタイムの設定に係る操作が行われることで、図10(b)に示すように、当該操作時の経過時間を表示して時針2及び分針3が停止する。図10(b)の例では、時針2がステップ「44」の方向を指し示し、また、分針3がステップ「144」の方向を指し示すことで、7分24秒を表している。
【0068】
続いて、経過時間の表示がリセットされると、時針2、分針3、及び、回転円板6aが早送りされて、回転円板6aにおいて初期位置標識、即ち、0分0秒の標識が設けられた方向と時針2及び分針3とが重ねられる。先ず、回転円板6aにおけるこの初期位置標識の位置(図10(b)の状況でステップ「0」)が仮の移動目標位置に設定される。このとき、移動目標位置を変更可能であり(ステップS12で“YES”)、ステップS13の処理へ進み、図8に示した3指針移動先設定処理が呼び出されて行われる。先ず、時針2(指針A)と分針3(指針B)とのステップ差a=100、分針3(指針B)と回転円板6aの初期位置標識(指針C)とのステップ差b=144、及び、回転円板6aの初期位置標識と時針2とのステップ差c=44が求められる(ステップS1321)。
【0069】
次に、a<bであるので、ステップS1322の判別処理で“NO”に分岐する。また、c<aであるので、ステップS1325の判別処理で“NO”に分岐する。更に、b≧a、且つ、b≧cであるので、ステップS1328の判別処理で“YES”に分岐する。そして、分針3のステップ「144」が位置αとして設定され、回転円板6aの初期位置標識のステップ「0」が位置βとして設定され、また、時針2のステップ「44」が位置γとして設定される(ステップS1329)。更に、ステップ差b=144は、ステップ差a=100とステップ差c=44との和に等しいので、ステップS1330の判別処理で“YES”に分岐する。
【0070】
続いて、第1移動方向移動距離算出処理が呼び出される(ステップS1332)。β<αなので、ステップS2301の判別処理では、“NO”に分岐する。続いて、α−β<180なので、ステップS2312の判別処理では、“NO”に分岐する。従って、分針3が逆転移動に設定され、回転円板6aが正転移動に設定される(ステップS2315)。また、分針3の移動ステップ数が48、回転円板6aの移動ステップ数が96とそれぞれ算出されて設定される(ステップS2316)。即ち、移動目標位置は、ステップ「96」の位置(3時12分の方向)に定められる。
【0071】
それから、γ=44と、移動目標位置のステップ「96」とに基づいて、時針2の移動方向が正転方向であり、また、時針2の移動ステップ数が52であることが求められて設定される(ステップS1330)。
【0072】
これらの時針2、分針3、及び、回転円板6aに対して設定された早送り方向及び早送りステップ数に基づき、CPU49は、時針駆動部42、分針駆動部43、及び、回転円板駆動部46に駆動信号を送り、図10(c)に示すように、時針2、分針3、及び、回転円板6aをステップ「96」の位置に早送り移動させる(ステップS15)。このような早送り処理により、従来、時針2及び分針3を固定された初期位置標識の位置であるステップ「0」に戻すのに要していた3.375秒の時間を1.5秒に短縮することが出来る。
【0073】
時針2、分針3、及び、回転円板6aの初期位置標識がステップ「96」の位置に到達すると、図10(d)に示すように、次の経過時間表示が可能になる。図10(d)の例では、時針2がステップ「102」の位置にあり、また、分針3がステップ「138」の位置にあることで、再度の計測開始から1分7秒であることを示している。
【0074】
ここで、上記変形例の説明では、同一の単位移動角度、且つ、同一の早送り速度の3指針を早送りする場合について説明したが、例えば、6度単位で移動する秒針4を1/20秒の表示に用いる場合にも、同様に、時針2、分針3、及び、秒針4が回転円板6aの初期位置標識と最短時間で重なるように早送りを行うことが可能である。この場合には、例えば、先ず、指針を1周させるのに要する時間が長い2本の指針について移動先の設定を行い、算出された移動目標位置に当該2本の指針より他の1本の指針が早く到達できない場合には、この他の1本と、他の2本の指針のうち何れかとの組み合わせで移動先の設定を行う、という形での移動方向及び移動ステップ数の設定を行うことが出来る。
【0075】
以上のように、本実施形態のアナログ電子時計1は、同一の回転軸の周りを回転する指針2〜6と、これらの指針2〜6を各々独立に駆動し、時針2、分針3、機能針5、及び、回転円板6については、単位移動角度を1度として正転方向又は逆転方向に移動させることが可能であり、秒針4については、単位移動角度を6度として正転方向又は逆転方向に移動させることが可能な指針駆動部42〜46と、アナログ電子時計1が実行する機能が切り替えられた場合や表示内容がリセットされた場合に設定される指針2〜6の移動先情報に基づいて指針2〜6の移動方向を設定し、また、これらの指針2〜6が移動目標位置に到達するまで指針駆動部42〜46に駆動信号を出力するCPU49と、を備え、指針駆動部42〜46は、指針2〜6をそれぞれ正転方向には64ppsで、逆転方向には32ppsで早送り駆動が可能である。そして、例えば、アナログ電子時計1が実行する機能の切り替えによって機能針5と回転円板6とが早送り駆動される場合に、機能針5が回転円板6上の機能切り替え後の機能を示す標識を指し示す相対位置関係となる指針位置の中で、機能針5のみを早送りさせる場合と比較してより短い時間で到達可能な指針位置の中から一の指針位置を算出してこの指針位置に移動目標位置を変更し、機能針5及び回転円板6をこの移動目標位置へ早送り移動させるための移動方向を設定する。従って、機能の切り替え時に指針の移動による次の動作を開始するまでのタイムラグを短縮することが出来る。
【0076】
特に、ストップウォッチ機能における計測時間のラップタイム表示や表示のリセット時に、時間表示に用いる時針2、分針3、及び、計測時間目盛が設けられた回転円板6aに対し、このような指針の早送り動作を行わせることによって、速やかに次の時間の計測及び計測時間の表示を開始させることが出来る。
【0077】
また、複数の指針の相対位置のみが重要な場合には、当該複数の指針の位置を柔軟に変更可能とすることで、よりダイナミックな指針の早送り動作を可能とすることができる。
【0078】
また、特に、最短時間で移動対象となる指針の相対位置関係が当初の移動目標位置と同一となる指針位置に移動目標位置を変更することで、指針の移動量及び指針の移動時間を最適化することができる。
【0079】
また、現在時刻表示のようにアナログ電子時計1における向きを変えないほうが良いものに対しては、移動目標位置の変更を行わず、機能の切り替えといった向きを変えても問題の無い、又は、問題の少ないものに対して、選択的に移動目標位置の変更を行わせて早送り時間を短縮することで、ユーザの利便性を向上させることが出来る。
【0080】
また、適宜、移動目標位置を初期位置に戻せる設定とすることで、例えば、ストップウォッチ機能のリセット時で次の計測までに時間の余裕がある場合に初期位置に戻すことで、ユーザの利便性を向上させることが出来る。
【0081】
また、移動対象となる指針の移動ステップ数をそれぞれ算出して、当該移動ステップ数各指針を早送り移動させることで、指針の早送り処理を簡便に行うことが出来る。
【0082】
また、特に、標識や目盛が設けられた回転円板6を移動目標位置の変更に係る早送り動作の対象とすることで、任意の角度で当該標識や目盛に係る表示を行わせることが出来、各種機能の実行時に表示の柔軟性を向上させることが出来る。
【0083】
また、このような移動目標位置の変更を伴う指針の早送り動作を3本以上の指針に対して行う場合に、正転早送り速度及び/又は逆転早送り速度が指針ごとに異なる場合には、早送り速度の遅い指針同士の組み合わせを優先して移動目標位置の算出に用い、また、同一の早送り速度の場合には、指針の位置が最も遠い組み合わせを用いて移動目標位置の算出を行うことで、移動目標位置の算出に係る演算負荷を軽減して速やかに指針の早送り動作を行わせることが出来る。
【0084】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、上記実施の形態では、アナログ電子時計1、1aの中心に設けられた回転軸の周りを回転する指針のみを備える場合について説明したが、文字盤7、7a上に設けられた小窓内の回転円板や指針についても、同一回転軸に対する複数の指針の早送り動作であれば、本発明を適用可能である。
【0085】
また、上記実施の形態では、早送り時間が最短となるように移動対象となる指針の移動方向及び移動ステップ数を求めたが、正転早送り速度と逆転早送り速度との違いや、単位移動角度の違いに基づくそれらの比(上記実施の形態では、それぞれ、2、6)未満の移動目標位置のずれを厳密に場合分けを行いながら計算すると、むしろCPU49にかかる負荷が増大する場合がある。そこで、このような場合には、厳密な計算を行わずに、早送り時間が最短となる確率の高い移動目標位置を選択する処理を行うこととしたり、予め発生頻度の高いパターンのテーブルをROM47に格納しておき、このテーブルを参照して判断したりすることとしても良い。
例えば、96ppsの正転早送り速度の指針と64ppsの逆転早送り速度の指針とを早送りさせる場合に、これら2本の指針の合計移動ステップ数が5の倍数とは異なると、計算された両指針の早送りステップ数に端数が生じる。このような場合には、96ppsの早送り速度の指針の移動ステップ数に生じた端数を常に切り上げ、64ppsの早送り速度の指針の移動ステップ数に生じた端数を常に切り捨てる簡略計算を行うこととしても良いし、96ppsの早送り速度の指針の移動ステップ数を、その端数が0.4以上(即ち、0.4、0.6、0.8)の場合には切り上げ、64ppsの早送り速度の指針の移動ステップ数を、その端数が0.8の場合には切り上げる設定を予めROM47に格納したり、早送り制御プログラム47aに組み込んだりしておくこととしても良い。
【0086】
また、上記実施の形態では、回転円板型指針と針状の指針との組み合わせの例を示したが、例えば、複数の標識が設けられた回転円板と当該標識のうち一つを露出させる小窓が設けられた回転円板との組み合わせであっても良いし、針状の指針を2本組み合わせて、基準位置を示す指針及び当該基準位置からの相対的な変化を指し示す指針として用いることとしても良い。
【0087】
また、上記実施の形態では、複数の指針位置を一致させるように移動目標位置を算出して早送り動作を行ったが、例えば、機能針5の指し示す位置と回転円板6の標識「BT」とのステップ差を60とする早送り処理や、複数の指針に180度反対向きを指し示させる早送り処理といった、早送り後の相対位置関係のみに基づいて早送りの移動目標位置が設定される早送り処理全般に対して本発明を適用することが出来る。
【0088】
また、上記実施の形態では、回転円板6、6aは、対応する指針2、3、5との相対位置関係に基づく任意の絶対位置を移動目標位置とすることができるが、長時間機能が変更されない場合、所定の時間間隔で、または、ユーザの操作部54への入力操作に基づき、ROM47に格納された初期設定指針位置データに基づく絶対位置に回転円板6、6aの指針位置を初期化させ、この初期化動作に合わせて指針2、3、5の位置も変更させる構成としても良い。
【0089】
また、上記実施の形態では、アナログ電子腕時計を例に挙げて説明したが、本発明のアナログ表示装置は、これに限られない。例えば、複数の指針を用いたアナログ式の歩数計、温度湿度計、電流電圧計など、種々のアナログ表示装置に適用することが出来る。
その他、上記実施の形態で示した具体的な構成や数値などの細部は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0090】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
【0091】
[付記]
<請求項1>
一の回転軸に対して各々回動可能な複数の指針と、
当該複数の指針を各々独立して駆動し、正転方向又は逆転方向に各々所定の単位移動角度ずつ移動させる駆動手段と、
前記複数の指針の早送り情報に基づいて、当該複数の指針それぞれの早送り方向を設定する早送り設定手段と、
前記早送り設定手段により正転方向への早送りが設定された第1指針が前記早送り情報に基づいて設定された各々の移動目標位置に到達するまで、各々予め設定された正転早送り速度で前記第1指針を駆動させる駆動信号を前記駆動手段に出力する第1駆動制御手段と、
前記早送り設定手段により逆転方向への早送りが設定された第2指針が前記早送り情報に基づいて設定された各々の移動目標位置に到達するまで、各々予め設定された逆転早送り速度で前記第2指針を駆動させる駆動信号を前記駆動手段に出力する第2駆動制御手段と、
を備え、
前記早送り設定手段は、前記早送り情報として早送り後の前記複数の指針の指針位置情報を取得し、当該指針位置情報において指定された前記複数の指針の絶対位置に基づく当該複数の指針の相対位置関係を満たす指針位置のうち、前記指針位置情報において指定された前記複数の指針の絶対位置へ当該複数の指針を早送りさせる場合と比較して前記早送りの時間が短縮される指針位置を前記移動目標位置として設定する
ことを特徴とするアナログ表示装置。
<請求項2>
前記早送り設定手段は、前記早送り情報として取得された早送り後の前記複数の指針の相対位置関係を満たす指針位置のうち、前記複数の指針が各々の現在位置から早送りにより最短時間で到達する指針位置を算出して、当該指針位置を前記移動目標位置として設定する
ことを特徴とする請求項1記載のアナログ表示装置。
<請求項3>
前記早送り設定手段は、
前記早送り情報として取得された早送り後の前記複数の指針の指針位置情報に含まれる前記絶対位置への早送りが必要であるか否かを示す移動先情報を取得し、
当該移動先情報により前記絶対位置への早送りが必要ではないことが示された場合には、早送り後の前記複数の指針の相対位置関係に基づいて前記移動目標位置を設定する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のアナログ表示装置。
<請求項4>
前記複数の指針の初期設定指針位置を記憶する記憶手段と、
一の前記指針を当該記憶手段により記憶された前記初期設定指針位置に移動させると共に、当該一の指針を除く前記複数の指針を前記一の指針の前記初期設定指針位置に対する前記相対位置関係により設定される前記移動目標位置に移動させる初期化手段と
を備えることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のアナログ表示装置。
<請求項5>
前記早送り設定手段は、前記複数の指針各々の移動ステップ数を算出し、
前記第1駆動制御手段及び前記第2駆動制御手段は、前記駆動手段への前記駆動信号の出力回数を計数し、計数された前記出力回数が前記移動ステップ数に達するまで前記駆動信号の出力を繰り返す
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のアナログ表示装置。
<請求項6>
前記複数の指針には、複数の標識が上面に設けられた一の回転円板が含まれ、
当該回転円板を除く前記複数の指針のうち一つが前記複数の標識のうち一つを指し示す
ことを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載のアナログ表示装置。
<請求項7>
前記複数の指針は3本以上であり、
前記早送り設定手段は、当該複数の指針のうち任意の2本の組み合わせにおいて設定可能な前記移動目標位置への最短の到達時間が最大となる2本の指針位置に基づいて当該移動目標位置を設定し、その後に全ての前記複数の指針について各々移動方向と移動ステップ数とを算出して設定する
ことを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載のアナログ表示装置。
【符号の説明】
【0092】
1、1a アナログ電子時計
2 時針
3 分針
4 秒針
5 機能針
6、6a 回転円板
7、7a 文字盤
8、8a ベゼル
10 ケーシング
32〜36 輪列機構
42 時針駆動部
43 分針駆動部
44 秒針駆動部
45 機能針駆動部
46 回転円板駆動部
47 ROM
47a 早送り制御プログラム
48 RAM
49 CPU
50 電源部
51 発振回路
52 分周回路
53 計時回路
54 操作部
B1〜B3 ボタンスイッチ
C1 リュウズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の回転軸に対して各々回動可能な複数の指針と、
当該複数の指針を各々独立して駆動し、正転方向又は逆転方向に各々所定の単位移動角度ずつ移動させる駆動手段と、
前記複数の指針の早送り情報に基づいて、当該複数の指針それぞれの早送り方向を設定する早送り設定手段と、
前記早送り設定手段により正転方向への早送りが設定された第1指針が前記早送り情報に基づいて設定された各々の移動目標位置に到達するまで、各々予め設定された正転早送り速度で前記第1指針を駆動させる駆動信号を前記駆動手段に出力する第1駆動制御手段と、
前記早送り設定手段により逆転方向への早送りが設定された第2指針が前記早送り情報に基づいて設定された各々の移動目標位置に到達するまで、各々予め設定された逆転早送り速度で前記第2指針を駆動させる駆動信号を前記駆動手段に出力する第2駆動制御手段と、
を備え、
前記早送り設定手段は、前記早送り情報として早送り後の前記複数の指針の指針位置情報を取得し、当該指針位置情報において指定された前記複数の指針の絶対位置に基づく当該複数の指針の相対位置関係を満たす指針位置のうち、前記指針位置情報において指定された前記複数の指針の絶対位置へ当該複数の指針を早送りさせる場合と比較して前記早送りの時間が短縮される指針位置を前記移動目標位置として設定する
ことを特徴とするアナログ表示装置。
【請求項2】
前記早送り設定手段は、前記早送り情報として取得された早送り後の前記複数の指針の相対位置関係を満たす指針位置のうち、前記複数の指針が各々の現在位置から早送りにより最短時間で到達する指針位置を算出して、当該指針位置を前記移動目標位置として設定する
ことを特徴とする請求項1記載のアナログ表示装置。
【請求項3】
前記早送り設定手段は、
前記早送り情報として取得された早送り後の前記複数の指針の指針位置情報に含まれる前記絶対位置への早送りが必要であるか否かを示す移動先情報を取得し、
当該移動先情報により前記絶対位置への早送りが必要ではないことが示された場合には、早送り後の前記複数の指針の相対位置関係に基づいて前記移動目標位置を設定する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のアナログ表示装置。
【請求項4】
前記複数の指針の初期設定指針位置を記憶する記憶手段と、
一の前記指針を当該記憶手段により記憶された前記初期設定指針位置に移動させると共に、当該一の指針を除く前記複数の指針を前記一の指針の前記初期設定指針位置に対する前記相対位置関係により設定される前記移動目標位置に移動させる初期化手段と
を備えることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のアナログ表示装置。
【請求項5】
前記早送り設定手段は、前記複数の指針各々の移動ステップ数を算出し、
前記第1駆動制御手段及び前記第2駆動制御手段は、前記駆動手段への前記駆動信号の出力回数を計数し、計数された前記出力回数が前記移動ステップ数に達するまで前記駆動信号の出力を繰り返す
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のアナログ表示装置。
【請求項6】
前記複数の指針には、複数の標識が上面に設けられた一の回転円板が含まれ、
当該回転円板を除く前記複数の指針のうち一つが前記複数の標識のうち一つを指し示す
ことを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載のアナログ表示装置。
【請求項7】
前記複数の指針は3本以上であり、
前記早送り設定手段は、当該複数の指針のうち任意の2本の組み合わせにおいて設定可能な前記移動目標位置への最短の到達時間が最大となる2本の指針位置に基づいて当該移動目標位置を設定し、その後に全ての前記複数の指針について各々移動方向と移動ステップ数とを算出して設定する
ことを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載のアナログ表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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