説明

アニオン電着塗料

【課題】 焼付け時に塗膜から発生するホルムアルデヒドを低減し、耐薬品性及び低温硬化性に優れるアニオン電着塗料を提供すること。
【解決手段】 エポキシ樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、及びカルボジイミド基含有樹脂から選ばれる少なくとも1種を内包成分(a1)とし、ポリウレタン樹脂及び/又はポリ
ウレア樹脂を被覆成分(a2)としてなる複合粒子(A)、カルボキシル基含有樹脂(B
)を含有するアニオン電着塗料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼付け時に塗膜から発生するホルムアルデヒドを低減し、耐薬品性及び低温硬化性に優れるアニオン電着塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウムは軽量で加工性が容易であることや耐蝕性に優れるといった性質を利用して、建材関係の材料として多く使用されるようになってきている。
このようなアルミニウムの製造は、通常、円柱形のアルミニウム鋳塊を加熱して溶融させ、次いでこの溶融物を押し出し機に入れ、所定の断面形状の孔を持つダイスに押し付け、ところてん式に孔を通過させて所定の形状を持つ型材を得る熱間押し出し方法が用いられている。
【0003】
アルミニウム材は、それ自体、防食性、耐摩耗性、耐薬品性などが劣ることからアルミニウムを陽極酸化処理した後、アニオン電着塗料により塗膜が被覆されているのが一般的である。
従来、アルミニウム材の電着塗料は、アクリル樹脂・アミノ樹脂による塗料が主流を占め、塗膜の硬化には180℃以上の焼付け温度を必要とする。そのため陽極酸化被膜がヒビワレを生じ、外観や性能が低下すること及び消費する燃費が多くなるので経済的にも不利であるという欠点があった。
【0004】
従来、架橋剤としてブロック化ポリイソシアネート化合物を含有し、低温硬化性に優れたアニオン電着塗料に関する発明(特許文献1)。またアニオン電着塗料組成物において、アクリル樹脂、架橋剤としてメラミン樹脂やブロックイソシアネート化合物を用いた発明がある(特許文献2)。
しかし架橋剤にメラミン樹脂を用いた場合は、焼き付け時にメラミン樹脂が自己架橋してホルムアルデヒドが発生し、ブロックイソシアネート化合物を用いた場合は、焼き付け時にブロック剤が揮散して、環境負荷の低減が課題としてあった。
【特許文献1】特開平8−41380号公報
【特許文献2】特開2003−49112号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする課題は、焼付け時に塗膜からホルムアルデヒドの発生が少なく、耐薬品性及び低温硬化性に優れるアニオン電着塗料を見出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記した課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の複合粒子(A)を含有するアニオン電着塗料によって解決できることを見出し、発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、
1.エポキシ樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、及びカルボジイミド基含有樹脂から選ばれる少なくとも1種を内包成分(a1)とし、ポリウレタン樹脂及び/又はポリウレア樹
脂を被覆成分(a2)としてなる複合粒子(A)、カルボキシル基含有樹脂(B)を含有
するアニオン電着塗料、
2.エポキシ樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、及びカルボジイミド基含有樹脂から選ばれる少なくとも1種の内包成分(a1)の20℃における水に対する溶解度が、5重量%
以下である1項に記載のアニオン電着塗料。
【0007】
3.エポキシ樹脂が、少なくとも2個以上のグリシジル基を含有し、かつエポキシ当量が100〜500である請求項1又は2に記載のアニオン電着塗料。
4.オキサゾリン基含有樹脂が、構成する単量体の固形分合計100重量部に対して、オキサゾリン基含有ラジカル重合性不飽和単量体を1重量部〜30重量部含有し、ラジカル共重合反応を行って得られたビニル系共重合体樹脂である1項又は2項に記載のアニオン電着塗料、
5.被覆成分(a2)のガラス転移温度が70〜130℃である1項に記載のアニオン
電着塗料、
6.複合粒子(A)の平均粒子径が0.05μm〜1.0μmである1項に記載のアニオン電着塗料、
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のアニオン電着塗料は、架橋剤としてメラミン樹脂やブロックイソシアネート化合物を使用せず、焼付け時に塗膜からホルムアルデヒドの発生を低減し、耐薬品性及び低温硬化性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のアニオン電着塗料について、以下に詳細に説明する。
複合粒子(A):
複合粒子(A)は、エポキシ樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、及びカルボジイミド基含有樹脂から選ばれる少なくとも1種の内包成分(a1)を必要に応じて有機溶剤に溶解し
、ポリイソシアネート化合物等を混合したものを、乳化剤の存在下、水性媒体中に乳化分散した後、必要に応じてポリオールやポリアミン等を添加し混合した後、重合促進触媒を添加、及び/又は液温を上昇させることによって、ポリイソシアネート化合物を水やポリオール、ポリアミン等の活性水素基を有する化合物と反応させる方法などで得ることができる。
【0010】
上記有機溶剤は必要に応じて留去することができる。このようにして得られた複合粒子(A)は、内包成分(a1)が、ポリイソシアネート化合物、ポリオール、ポリアミン、
水などの反応生成物であるポリウレタン樹脂及び/又はポリウレア樹脂からなる被覆成分(a2)で被覆された構造となる。
内包成分(a1):
内包成分(a1)として用いるエポキシ樹脂は、ポリフェノール化合物とエピハロヒドリ
ン、例えばエピクロルヒドリンとの反応によって得られるものが挙げられる。
【0011】
該エポキシ樹脂の形成のために用い得るポリフェノール化合物としては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2,2−プロパン(ビスフェノールA)、4,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタン、ビス(4−ヒドロキシ−tert−ブチル−フェニル)−2,2−プロパ
ン、ビス(2−ヒドロキシナフチル)メタン、テトラ(4−ヒドロキシフェニル)−1,
1,2,2−エタン、4,4−ジヒドロキシジフェニルスルホン、フェノールノボラック、
クレゾールノボラック等を挙げることができる。
【0012】
他には、ソルビトール、ポリグリセロール、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ヘキサンジオール、レゾルシノールなどのポリオールのグリシジルエーテル化物が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、アルミ基材の腐食を抑制するためにも、残存する塩素を除去する脱塩素処理を行なうことが好ましい。このようなエポキシ樹脂のエポキ
シ当量としては、100〜500の範囲内にあるものが適している。
【0013】
かかるエポキシ樹脂の市販品としては、例えば、ジャパンエポキシレジン(株)からエピコート828EL、同1001なる商品名で販売されているもの、ナガセケムテックス(株)からデナコールEX-622、デナコールEX-512、デナコールEX-411、
デナコールEX-421、デナコールEX-313、デナコール
EX-321、デナコールEX-201、デナコールEX-211、デナコールEX-212、デナコールEX-252、デナコールEX-931、デナコールEX-721なる商品名
で販売されているものが挙げられる。
【0014】
内包成分(a1)として用いるオキサゾリン基含有樹脂としては、2,2’-(1,3-フェニレン)ビス-2-オキサゾリン、テトラメチレンビスオキサゾリン及びこれらのオリゴマ
ー、オキサゾリン基含有ラジカル重合性不飽和単量体とその他のラジカル重合性不飽和単量体とをラジカル共重合してなる樹脂などを用いることができる。
上記のオキサゾリン基含有ラジカル重合性不飽和単量体としては、例えば、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン等を挙げることができる。
【0015】
その他のラジカル重合性不飽和単量体として、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとカプロラクトンとの付加生成物(例えば、ダイセル株式会社製の商品名としてプラクセルFA−2、及びFM−3等が挙げられる。)の水酸基含有ラジカル重合性不飽和単量体;
例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジ−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミノ基含有ラジカル重合性不飽和単量体;
他に、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0016】
内包成分(a1)として用いるカルボジイミド基含有樹脂は、ポリイソシアネート化合
物をカルボジイミド化触媒の存在下で反応させることにより得ることができる。
カルボジイミド化触媒としては、有機リン系化合物が好適であり、特に活性の面でフォスフォレンオキシド類が好ましい。具体的には、3−メチル−1−フェニル−2−フォスフォレン−1−オキシド、3−メチル−1−エチル−2−フォスフォレン−1−オキシド、1,3−ジメチル−2−フォスフォレン−1−オキシド、1−フェニル−2−フォスフォレン−1−オキシド、1−エチル−2−フォスフォレン−1−オキシド、1−メチル−2−フォスフォレン−1−オキシド及びこれらの二重結合異性体を例示することができ、中でも工業的に入手の可能な3−メチル−1−フェニル−2−フォスフォレン−1−オキシドが特に好ましい。
【0017】
またカルボジイミド基含有樹脂の末端のイソシアネート基を、イソシアネート基と反応し得る基を有する一官能の化合物、例えば、ポリエチレングリコールなどのアルコール、アミン、カルボン酸又は酸無水物で錫化合物などの触媒を適宜に加え封止することもできる。
カルボジイミド基含有樹脂については、例えば、次の式(1)で示されるものを用いる
ことが好ましい。
【0018】
1−Y−(R2−N=C=N)n−R2−Y−R3 式(1)
(式中、R1及びR3は、イソシアネート基と反応し得る官能基又は結合を有する化合物から当該官能基又は結合を除いた水素原子又は炭素数1〜40の有機残基を表し、同一或いは異なっていても良く、R2は、脂肪族及び/又は芳香族ジイソシアネートからイソシ
アネート基を除いた残基を表し、当該ジイソシアネートは異なる種類のものであっても良く、Yは、前記イソシアネート基と、前記イソシアネート基と反応し得る官能基とで形成された結合を表し、nは、平均重合度であって1〜100の範囲である。)
さらに、説明すると、前記の式(1)において、R1又はR3は、イソシアネート基と反応する官能基又は結合を有する化合物より当該官能基又は結合を除いた残基からなるセグメントである。
【0019】
イソシアネート基と反応する官能基又は結合を有する化合物の代表的なものは、例えば、以下の(a)水酸基(−OH(H2O含む))含有化合物、(b)メルカプト基(−S
H)含有化合物、(c)アミノ基(−NH2)含有化合物、(d)カルボキシル基(−C
OOH)含有化合物、(e)イソシアネート基(−NCO)含有化合物、(f)ウレタン結合(−NHCOO−)含有化合物、(g)尿素結合(−NHCONH−)含有化合物、(h)アミド結合(−NHCO−)含有化合物、(i)カルボジイミド結合(−NCN−)含有化合物、(j)イソシアネート2量化結合含有化合物などが挙げられる。
【0020】
具体的には、(a)水酸基含有化合物は、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、secブチルアルコール、ter−ブチルアルコール等の1価のアルコール類;
エチレングリコール、プロピレングルコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,4−ブテンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等の飽和或いは不飽和のグリコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル等の各種ヒドロキシアルキルビニルエーテル類;アリルアルコール、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル等の各種アリル化合物類;n−ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル等のアルキルグリシジルエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の水酸基含有高分子類等が挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種類以上を併用しても良い。
(b)メルカプト基含有化合物は、メタンチオール、エタンチオール、n−およびiso−プロパンチオール、n−およびiso−ブタンチオール、ペンタンチオール、ヘキサンチオール、ヘプタンチオール、オクタンチオール、ノナンチオール、デカンチオール、シクロヘキサンチオール等の脂肪族アルキル単官能チオール類;1,4−ジチアン−2−チオール、2−(1−メルカプトメチル)−1,4−ジチアン、2−(1−メルカプトエチル)−1,4−ジチアン、2−(1−メルカプトプロピル)−1,4−ジチアン、2−(メルカプトブチル)−1,4−ジチアン、テトラヒドロチオフェン−2−チオール、テトラヒドロチオフェン−3−チオール、ピロリジン−2−チオール、ピロリジン−3−チオール、テトラヒドロフラン−2−チオール、テトラヒドロフラン−3−チオール、ピペリジン−2−チオール、ピペリジン−3−チオール、ピペリジン−4−チオール等の複素環を有する脂肪族チオール類;1,2−エタンジチオール、1,3−プロパンジチオール、1,4−ブタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,8−オクタンジチオール、1,2−シクロヘキサンジチオール、エチレングリコールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオプロピオネート、ブタンジオールビスチオクリコレート、ブタン
ジオールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート、トリス(2−メルカプトエチル)イソシアヌレート、トリス(3−メルカプトプロピル)イソシアヌレート等の脂肪族ジチオール類;1,2−ベンゼンジチオール、1,4−ベンゼンジチオール、4−メチルー1,2−ベンゼンジチオール、4−ブチルー1,2−ベンゼンジチオール、4−クロロー1,2−ベンゼンジチオール等の芳香族ジチオール類等;また、メルカプト基を有するポリビニルアルコール変性体等のメルカプト基を含有した高分子類等も挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0021】
(c)アミノ基含有化合物では、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、モノエタノールアミン、n−プロパノールアミン、イソプロパノールアミン、アニリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、n−ウンデシルアミン、n−ドデシルアミン、n−トリデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ペンタデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、n−ヘプタデシルアミン、n−オクタデシルアミン、n−エイコシルアミン、アミノメチルトリメチルシラン、アミノメチルトリエチルシラン、アミノメチルトリプロピルシラン、アミノエチルトリメチルシラン、アミノエチルトリエチルシラン、アミノエチルトリプロピルシアン、アミノプロピルトリメチルシラン、アミノプロピルトリエチルシラン、アミノプロピルトリプロピルシラン、アミノメチルトリメトキシシラン、アミノメチルトリエトキシシラン、アミノメチルトリプロポキシシラン、アミノメチルジメトキシメチルシラン、アミノメチルメトキシジメチルシラン、アミノメチルジエトキシメチルシラン、アミノメチルエトキシジメチルシラン、アミノメチルジメトキシエチルシラン、アミノメチルメトキシジエチルシラン、アミノメチルジエトキシエチルシラン、アミノメチルエトキシジエチルシラン、アミノエチルジメトキシメチルシラン、アミノエチルメトキシジメチルシラン、アミノエチルジエトキシメチルシラン、アミノエチルエトキシジメチルシラン、アミノエチルジメトキシエチルシラン、アミノエチルメトキシジエチルシラン、アミノエチルジエトキシエチルシラン、アミノエチルエトキシジエチルシラン、アミノプロピルジメトキシメチルシラン、アミノプロピルメトキシジメチルシラン、アミノプロピルジエトキシメチルシラン、アミノプロピルエトキシジメチルシラン、アミノプロピルジメトキシエチルシラン、アミノプロピルメトキシジエチルシラン、アミノプロピルジエトキシエチルシラン、アミノプロピルエトキシジエチルシラン、アミノメチルフェニルジメチルシラン、ジエチルアミン、ジエタノールアミン、ジn−プロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン等の脂肪族又は芳香族アミン含有化合物等が挙げられる。また、アミノ基を含有した高分子類等も挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0022】
(d)カルボキシル基含有化合物では、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、イソ吉草酸、ヘキサン酸などの飽和脂肪族モノカルボン酸類;シュウ酸、マロン酸、コハク酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸類;2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、3−アクリロイルオキシプロピルフタル酸等のエステル基を有する有機カルボン酸類;安息香酸、トルイル酸、サリチル酸等の炭素環カルボン酸類;フランカルボン酸、チオフェンカルボン酸、ピリジンカルボン酸等の複素環カルボン酸類;無水酢酸、無水コハク酸、無水フタル酸などのカルボン酸由来の酸無水物類;ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸等の高分子カルボン酸類等が挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0023】
(e)イソシアネート基含有化合物では、シクロヘキシルイソシアネート、n−デシルイソシアネート、n−ウンデシルイソシアネート、n−ドデシルイソシアネート、n−トリデシルイソシアネート、n−テトラデシルイソシアネート、n−ペンタデシルイソシア
ネート、n−ヘキサデシルイソシアネート、n−ヘプタデシルイソシアネート、n−オクタデシルイソシアネート、n−エイコシルイソシアネート、フェニルイソシアネート、ナフチルイソシアネート等が挙げられ、また、カルボジイミド基含有樹脂に使用されるようなイソシアネート基を2個以上有するイソシアネート化合物等も挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0024】
また、(f)〜(j)のイソシアネート基と反応する代表的な結合を有する化合物は、上記(a)〜(e)で記述したような化合物と各種イソシアネート化合物とを加熱(又は触媒存在下で加熱)して重合反応することで得ることができる。
尚、イソシアネート基と反応する代表的な化合物は、上記(a)〜(j)に記載のものに限らず、イソシアネート基と反応する官能基又は結合を有する化合物であれば、特に制限は無く、2種以上を併用しても良い。
【0025】
また、前記の式(1)において、R1又はR3は、上記(a)〜(j)の官能基又は結合を有する化合物より当該官能基又は結合を除いた残基である。Yの結合としては、ウレタン結合、チオウレタン結合、尿素結合、アミド結合、カルボジイミド結合、アロファネート結合、ビュレット結合、アシル尿素結合、ウレトンイミン結合、イソシアネート3量化結合、等が挙げられる。
【0026】
前記の式(1)で示されるカルボジイミド基含有樹脂は、重量平均分子量が、200〜100,000であり、好ましくは、500〜50,000であり、更に好ましくは600〜30,000であり、最良は1,000〜20,000である。また、カルボジイミド基含有樹脂の一分子中のカルボジイミド基数は1〜100個、好ましくは2〜50個である。
【0027】
なおカルボジイミド基含有樹脂の市販品としては、例えば、カルボジライトV−01、カルボジライトV−02、カルボジライトV−02−L2、カルボジライトV−02B、カルボジライトV−03、カルボジライトV−04、カルボジライトV−05、カルボジライトV−06、カルボジライトV−07、カルボジライトV−09、カルボジライトHMV−8CA、カルボジライトHMV−10B、カルボジライトEペレット、カルボジライトBペレット、カルボジライト10M−SP、カルボジライトIM−25P、カルボジライト9010、カルボジライトt−01、カルボジライトT−02、Elastostab H01(以上、日清紡社製、商品名)等を挙げることができる。
以上に説明した内包成分(a1)の20℃における水に対する溶解度は、5重量%以下
であることが複合粒子(A)の製造安定性の点から好ましい。
内包成分(a1)の水に対する溶解度の測定は、内包成分(a1)の溶剤を希散して行なった。
【0028】
被覆成分(a2)として用いるポリウレタン樹脂及び/又はポリウレア樹脂は、活性水
素基を2個以上有する化合物(以下、活性水素基含有化合物という)とイソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート化合物を反応させて得られるものである。
活性水素基含有化合物としては、例えば末端にヒドロキシル基やアミン基を有する単量体またはプレポリマーが挙げられる。その具体例としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール、ポリエーテルポリアミン等の高分子ポリオール、高分子ポリアミン、ひまし油、糖類が挙げられる。
【0029】
活性水素基含有化合物として、分子量の調整や水酸基の導入を目的として、鎖延長剤、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、シクロへキサンジメタノール等の低分子アルコール
やプロピレンジアミン、へキサメチレンジアミン等のジアミン類や低分子アミノアルコール、あるいは水などを使用してもよい。その他の活性水素基含有化合物として、モノアルコール、モノアミンなども挙げることができ、これらや前記の低分子アミノアルコールは、反応停止剤としても使用される。これらは1種または2種以上を用いることができる。前記の高分子ポリオールのうち、ポリエステルポリオールの具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4一ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2−ペンタンジオール、1,3一ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチルー1,5−ペンタンジオール、3−メチルー1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、2,2,4−トリメチルー1,3−プロパンジオール、2−エチルー1,3−ヘキサンジオール、2,2−ジエチルー1,3−プロパンジオール、2−n−ブチルー2−エチルー1,3−プロパンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等のいわゆる低分子グリコール類や、これらの混合物等と、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フマル酸、マレイン酸、シュウ酸、ナフチレンジカルボン酸等のジカルボン酸、これらの酸エステル、酸無水物等やこれらの混合物との脱水縮合反応で得られる両末端水酸基のポリエステル、あるいはε−カプロラクトンの開環重合にて得られるポリカプロラクトンジオール等が挙げられる。
【0030】
ポリエーテルポリオールの具体例としては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のオキシラン化合物を、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の低分子量ポリオールまたは水を開始剤として重合して得られるポリエーテルポリオール等やエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のエポキサイドの単品や混合物を開環重合して得られるポリエーテルポリオール、あるいはテトラヒドロフランを開環重合して得られるポリテトラメチレングリコールが挙げられる。
【0031】
ポリカーボネートポリオールの具体例としては、上記のポリエステルポリオールの合成に用いられる低分子グリコール類とジフェニルカーボネートとの脱フェノール反応にて得られるものが挙げられる。
低分子アルコールとしては、先に示したポリエステルポリオールの合成に使用される低分子グリコール類が挙げられる。低分子ポリアミンの具体例としては、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミンや、イソホロンジアミン、シクロへキシルジアミン等の脂環族ジアミンや、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等の芳香族ジアミンが挙げられる。
【0032】
低分子アミノアルコールの具体例としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等が挙げられる。モノアルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等が挙げられる。モノアミンの具体例としては、エチルアミン、ブチルアミン等の第−モノアミン類、ジエチルアミン、ジブチルアミン等の第二モノアミン類が挙げられる。
【0033】
ポリイソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、フェニレンジイソシアネート、シクロへキシルジイソシアネート、4,4´−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添トリメチルキシリレンジイソシアネート、2−メチルペンタンー1,5−ジイソシアネート、3−メチルペンタンー1,5−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルへキサメチレンー1,6−ジイソシアネート、2,4,4、トリメチルへキサメチレンー1,6−ジイソシアネート、4,4´ジフェニルメタン
ジイソシアネート(MDI)、2,4´ジフェニルメタンジイソシアネート等のMDl異性体、4,4´ジフェニルメタンジイソシアネートおよびその異性体またはその多核体混合物であるポリメチレンポリフェニルイソシアネート(ポリメリックMDI)、4,4−ジベンジルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、2,4−または2,6−トリレンジイソシアネートもしくはその混合物、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、1,3−または1,4−キシリレンジイソシアネートもしくはその混合物等の芳香脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。
【0034】
また、トリフェニルメタンー4,4´,4´´−トリイソシアネート等、上記ポリイソシアネート単量体から誘導されたダイマー,トリマー,ビューレット体、炭酸ガスと上記ポリイソシアネート単量体とから得られる2,4,6−オキサジリジントリオン環を有するポリイソシアネート、エチレングリコール,プロピレングリコール,ブチレングリコール,ヘキシレングリコール,ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール等の低分子量ポリオールとポリイソシアネートとの付加体、イソシアネート化合物のカルボジイミドでの変性体、或いはポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等とポリイソシアネートとの高分子ポリオール等との付加体等のNCO末端化合物及び、これらの2種以上の混合物等が挙げられる。
【0035】
次に、乳化剤としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、スルホン基変性ポリビニルアルコールなどの変性ポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、スチレン−無水マレイン酸共重合体塩及びそれらの誘導体等の水溶性合成高分子化合物の他、各種界面活性剤、消泡剤等を使用することができる。
【0036】
乳化剤の使用量については特に限定はないが、内包成分(a1)と被覆成分(a2)の固形分合計100重量部に対して、1〜100重量部、より好ましくは5〜70重量部であり、特に好ましくは10〜50重量部である。さらにこの乳化液に、必要に応じて、多価アミン類、ポリオール化合物等の反応性物質を使用することができる。
その添加量は、内包成分(a1)と被覆成分(a2)の固形分合計100重量部に対して、0.1〜100重量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜50重量部であり、特に好ましくは、3〜20重量部である。
【0037】
また被覆成分(a2)のガラス転移温度(注1)は、複合粒子(A)の貯蔵安定性と、
内包成分(a1)が焼付け時に放出し易いことから70〜130℃の範囲が望ましい。
(注1)ガラス転移温度:ガラス転移温度は、あらかじめ内包成分(a1)のガラス転移
温度を測定し、次に複合粒子(A)を減圧乾燥して、DSC220U(セイコーインスツル株式会社製、示差熱分析機)によって変化のみられた温度を被覆成分(a2)のガラス
転移温度とした。
このようにして得られる複合粒子(A)の平均粒子径(注2)は、0.05〜1μm、好ましくは0.08〜0.7μmであり、特に好ましくは、0.1〜0.5μmである。(注2)平均粒子径:試料を脱イオン水にて希釈し、「SALD−3100」(商品名、島津製作所社製、レーザー回折式粒度分布測定装置)を用いて、常温(20℃程度)にして測定した。
【0038】
上記のようにして得られた複合粒子(A)は、水分散体のまま使用すること、又はスプレードライ法などにより水分を除去して、粉体状にして使用してもよい。
カルボキシル基含有樹脂(B):
カルボキシル基含有樹脂(B)は、1分子中に少なくとも1個のカルボキシル基を有し、好ましくはさらに少なくとも1個の水酸基を有する樹脂である。具体的には、例えば、
カルボキシル基を有するアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、及びウレタン樹脂などの樹脂が挙げられ、この中でも耐候性の面からアクリル樹脂が好適である。
【0039】
上記アクリル樹脂は、カルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体、及びその他のラジカル重合性不飽和単量体を共重合せしめることによって製造することができる。これらの単量体成分としては、下記のものを挙げることができる。
カルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等の単量体が挙げられ、これらの単量体を単独、もしくは2種以上組み合わせて使用して、カルボキシル基含有樹脂(B)中にカルボキシル基を導入し、中和剤によって水分散することができる。
【0040】
その他のラジカル共重合性不飽和単量体としては、水酸基含有ラジカル共重合性不飽和単量体として、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、などのアクリル酸またはメタクリル酸のC2〜C8のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)ブチレングリコール(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチルビニルエーテル、(メタ)アリルアルコール、N−メチロールアクリルアミド等が挙げられ、これらは単独で、もしくは2種以上組み合わせて使用できる。
【0041】
他には、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどの(メタ)アクリル酸のC1〜C18のアルキル又はシクロアルキルエステル類;ジビ
ニルジメトキシシラン、(CH2=CH)2Si(OCH3)2、ジビニルジ−β−メトキ
シエトキシシラン、(CH2=CH)2Si(OCH2CH2OCH32、ビニルトリメトキシシラン、CH2=CHSi(OCH33、ビニルトリエトキシシラン、CH2=CHSi(OC253、ビニルトリス−β―メトキシエトキシシラン、CH2=CHSi(OCH2CH2OCH32、γ-(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ-(メタ)イソシアナトプロピルトリ
エトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどの(メタ)アルコキシシリル化合物類;スチレンなどの芳香族ビニルモノマ−類、(メタ)アクリル酸アミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N,N−ジブチルアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド及びその誘導体類、(メタ)アクリロニトリル化合物類;等が挙げられ、これらは単独で、もしくは2種以上組み合わせて使用できる。
カルボキシル基含有樹脂(B)の製造は、通常、上記のカルボキシル基含有ラジカル共重合性不飽和単量体及びその他のラジカル重合性不飽和単量体を溶媒中にて、重合開始剤の存在下でラジカル重合反応して得られる。この重合反応に際し、カルボキシル基含有重合性不飽和単量体が1〜20重量%、好ましくは2〜10重量%、その他のラジカル重合性不飽和単量体が80〜99重量%、好ましくは90〜98重量%の範囲が好適である。
【0042】
重合反応に使用する溶媒としては、例えば、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブチルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール類、セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−イソプロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、ジエチレングリコール、ジエチレングルコールモノエチルエーテル、ジエチレングル
コールモノブチルエーテル、トリエチレングルコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類などが好適に使用できる。
【0043】
また、これ以外にも必要に応じて、例えば、キシレン、トルエンなどの芳香族類、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、2−ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ペンチル、3−メトキシブチルアセテート、2−エチルヘキシルアセテート、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等のエステル類も併用することができる。
【0044】
また、ラジカル共重合反応に用いる重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、ジ−t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クミルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンザンハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ラウリルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の過酸化物、α,α'
−アゾビスイソブチルニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリルなどのアゾ化合物が挙げられる。
【0045】
上記のようにして製造されたアクリル樹脂の重量平均分子量(注3)は5,000〜150,000、好ましくは20,000〜100,000の範囲が好適である。
(注3)重量平均分子量:JIS K 0124−83に準じて行ない、分離カラムにTSK GEL4000HXL+G3000HXL+G2500HXL+G2000HXL(東洋曹達(株)製)を用いて40℃で流速1.0ml/分、溶離液にGPC用テトラヒドロフランを用いて、RI屈折計で得られたクロマトグラフとポリスチレンの検量線から計算により求めた。
【0046】
本発明のアニオン電着塗料を製造するに当り、カルボキシル基含有樹脂(B)のアニオン性基に対して0.1〜1.5当量、好ましくは0.2〜1.2当量の中和剤(塩基性化合物)を配合した後、複合粒子(A)を固形分で、カルボキシル基含有樹脂(B)の固形分100重量部に対して、0.1〜100重量部、好ましくは3〜80重量部、さらに好ましくは10〜60重量部となるように配合して、さらに脱イオン水で固形分10〜60重量%、好ましくは10〜40重量%になるように滴下し、次いでpHを7.0〜8.0になるように中和剤で調整して得られるエマルションを使用することができる。
【0047】
上記の中和剤としては、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ベンジルアミン、モノエタノールアミン、ネオペンタノールアミン、2−アミノプロパノール、3−アミノプロパノールなどの第1級モノアミン;ジエチルアミジエタノールアミン、ジ−n−またはジ−iso −プロパノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミンなどの第2級モノアミン;ジメチルエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルアミノエタノールなどの第3級モノアミン;ジエチレントリアミン、ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、エチルアミノエチルアミン、メチルアミノプロピルアミンなどがある。
【0048】
またアニオン電着塗料には、必要に応じて、顔料、染料、硬化触媒、表面調整剤、紫外線吸収剤、光安定剤を加えて、pH調整を行い、脱イオン水を加えて固形分5〜20重量%のアニオン電着塗料を得ることができる。
上記の硬化触媒としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジブチルベンゼンスルホン酸、ドデシルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸などの高級アルキルアリールスルホン酸類及びこれらの塩類(例え
ば、アミン化合物、アンモニアなど)等のスルホン酸系化合物;
トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N−テトラメチルヘキサン−1,6−ジアミン、N−ペンタメチルジエチレントリアミン、2−メチル−1,4−ジアザビシクロ〔2,2,2〕オクタン等の3級アミン等のアミン化合物;等を配合することができる。
【0049】
このようなアニオン電着塗料を使用して塗膜を形成するには、上記で得られたアニオン電着塗料を浴とし、この浴中に該アルミニウム材を浸漬した後、被塗物として、着色もしくは無着色陽極酸化アルミニウム材を用い、乾燥膜厚が約5〜30μmになるようにアニオン電着塗装を行った後、ノンリンス(水洗を行わず)で、又はリンス(水洗)を行う。塗膜の焼き付けは、160℃以下、好ましくは、120〜150℃で約20〜40分間により塗膜を形成することができる。
【0050】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。本発明はこれによって限定されるものではない。尚、「部」及び「%」は「重量部」及び「重量%」を示す。
製造例1 複合粒子No.1(エポキシ樹脂を用いた例)
スルホン酸基変性ポリビニルアルコール(日本合成化学工業株式会社製、ゴーセランL−3266)3gを水27gに溶解し、その中へネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社製、デナコールEX−211、エポキシ当量138、水に不溶)10gとヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット型プレポリマー(住化バイエルウレタン株式会社製、スミジュールN−3200)5gを添加し、高圧ホモジナイザーで乳化分散した。その後、水4gおよびトリエチレンテトラミン0.5gを加え室温で3時間攪拌し、複合粒子No.1を得た。平均粒子径は0.5μmであった。
【0051】
複合粒子No.1における被覆成分(a2)のガラス転移温度(注1参照)は、100
℃であった。
製造例2 複合粒子No.2(オキサゾリン基含有樹脂を用いた例)
反応容器中に、イソプロピルアルコール150部、プロピレングリコールモノメチルエーテル120部を仕込み80℃に保持した中へ、以下の「モノマー混合物1」を4時間掛けて滴下し、次いでアゾビスジメチルバレロニトリル3部を添加し、80℃で3時間保持して反応を行って、固形分65%のオキサゾリン基含有樹脂(水に対する溶解度3重量%)を製造した。重量平均分子量約25,000であった。
【0052】
「モノマー混合物1」
スチレン 20部
メチルメタクリレート 10部
n−ブチルアクリレート 260部
エチルアクリレート 130部
2−ヒドロキシエチルアクリレート 75部
ビニルオキサゾリン 5部
アゾビスジメチルバレロニトリル 8部
ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル10gの代わりに上記オキサゾリン基含有樹脂15gを用いた以外は製造例No.1と同様にして複合粒子No.2を得た。平均粒子径は0.6μmであった。
複合粒子No.2における被覆成分(a2)のガラス転移温度(注1参照)は、90℃
であった。
【0053】
製造例3 複合粒子No.3(カルボジイミド基含有樹脂を用いた例)
撹拌装置、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた4つ口フラスコに4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート400部を仕込み、3−メチル−1−フェニ
ル−2−フォスホレン−1−オキサイドを1.0部添加し、窒素気流下にて170℃で20時間反応させた。
【0054】
次いで、1,3−ジメチルブチルアルコール50部とジブチルチンラウレート0.3部を加え、窒素気流下、50℃で6時間反応させ、有機溶剤で固形分を調整し、固形分90%のカルボジイミド基含有樹脂(水に対する溶解度1重量%)を得た。
ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル10gの代わりに上記カルボジイミド基含有樹脂11gを用いた以外は製造例No.1と同様にして複合粒子No.3を得た。平均粒子径は0.4μmであった。
複合粒子No.3における被覆成分(a2)のガラス転移温度(注1参照)は、95℃
であった。
【0055】
製造例4 カルボキシル基含有樹脂(B−1)の製造例
反応容器中に、イソプロピルアルコール150部、プロピレングリコールモノメチルエーテル120部を仕込み80℃に保持した中へ、以下の「モノマー混合物2」を4時間掛けて滴下し、次いでアゾビスジメチルバレロニトリル3部を添加し、80℃で3時間保持して反応を行って、固形分65%のカルボキシル基含有樹脂(B−1)を製造した。固形分65%のカルボキシル基樹脂含有(B−1)は、重量平均分子量約25,000、酸価55mg/KOH/g、水酸基価72mgKOH/g、SP値9.11であった。
【0056】
「モノマー混合物2」
スチレン 20部
メチルメタクリレート 10部
n−ブチルアクリレート 260部
エチルアクリレート 100部
2−ヒドロキシエチルアクリレート 75部
アクリル酸 35部
アゾビスジメチルバレロニトリル 8部
【0057】
製造例5 カルボキシル基含有樹脂(B−2)の製造例
反応容器中に、イソプロピルアルコール200部、プロピレングリコールモノメチルエーテル150部を仕込み、80℃に保持した中へ、以下の「モノマー混合物4」を4時間掛けて滴下し、次いでアゾビスジメチルバレロニトリル3部を添加し、80℃で3時間保持して反応を行って、固形分59%のカルボキシル基含有樹脂(B−2)を製造した。固形分59%のカルボキシル基含有樹脂(B−2)は、重量平均分子量約30,000、酸価53mgKOH/g、水酸基価72mgKOH/g、SP値9.48であった。
【0058】
「モノマー混合物2」
スチレン 75部
メチルメタクリレート 155部
n−ブチルアクリレート 105部
エチルアクリレート 50部
2−ヒドロキシエチルアクリレート 75部
アクリル酸 35部
γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン 5部
アゾビスジメチルバレロニトリル 6部
【0059】
実施例1 アニオン電着塗料No.1の製造
上記の製造例4で得た59%のカルボキシル基含有樹脂(B−1)169.49部(固形分100部)のカルボキシル基に対して0.4当量のトリエチルアミンを加えて混合し
、その中に製造例1で得た複合粒子108部(固形分40部)を加えて混合し、攪拌しながら脱イオン水を樹脂固形分が10%になるように徐々に滴下して均一なエマルジョンとし、さらに攪拌しながらトリエチルアミンを添加し、pHを8.4となるように調整してアニオン電着塗料No.1を得た。
【0060】
実施例2〜6
表1の配合内容にて、実施例2〜6のアニオン電着塗料No.2〜No.6を得た。
表1中、カッコ内は固形分量を表わす。
【0061】
【表1】

【0062】
比較例1 アニオン電着塗料No.7の製造
上記の製造例4で得た固形分59%のカルボキシル基含有樹脂(B−2)118.6部(固形分70部)、ニカラックMX−430(注4)30部(固形分30部)、及びカルボキシル基含有樹脂(B−2)のカルボキシル基に対して0.4当量のトリエチルアミンを加えて混合し、攪拌しながら脱イオン水を樹脂固形分が10%になるように徐々に滴下して均一なエマルジョンとし、さらに攪拌しながらトリエチルアミンを添加し、pHを8.4となるように調整してアニオン電着塗料No.7を得た。
【0063】
比較例2〜4
表2の配合内容にて、比較例2〜4のアニオン電着塗料No.8〜No.10を得た。
表2中、カッコ内は固形分量を表わす。
【0064】
【表2】

【0065】
(注4)ニカラックMX430:三和ケミカル工業(社製、商品名、メチル/ブチルの混合エーテル化のメラミン樹脂
(注5)デュラネートMF−B80M:旭化成(株)社製、商品名、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレートタイプ、メチルエチルケトキシムブロック化剤、固形分80%
【0066】
試験板の作成
実施例及び比較例で得られたアニオン電着塗料を浴として、2次電解処理(脱脂−エッチング−中和−陽極酸化処理−封孔)を施した被膜厚さ約10μmのアルミニウム材(シルバー:大きさは150mm×70mm×0.5mm)を浸漬し、乾燥膜厚が10μmになるように電着塗装を行い、水洗後、150℃−30分間焼き付けた。下記の試験条件に従い試験に供した。
実施例の試験結果を表3に、比較例の試験結果を表4に示す。
【0067】
【表3】

【0068】
【表4】

【0069】
(注6)ホルムアルデヒド放散量:下記の方法で測定した。
焼付け前の電着塗膜2gをかきとって、密閉したガラス瓶に入れて150℃×30分焼付けし、一旦冷却後、50℃に加熱してからガラス瓶に水10mlを入れてよく攪拌する。そこへジニトロフェニルヒドラジン塩酸酸性溶液5mlを加え、30分放置した後、クロロホルム5mlで抽出して液体クロマトグラフィーで、ホルマリン量を定量した。
【0070】
◎は、電着塗膜固形分1gあたりのホルマリン放散量が、10μg以下
○は、電着塗膜固形分1gあたりのホルマリン放散量が10〜20μg
△は、電着塗膜固形分1gあたりのホルマリン放散量が20〜500μg
×は、電着塗膜固形分1gあたりのホルマリン放散量が500μg以上
(注7)塗面平滑性:塗膜表面(ユズ肌、凹凸等)を目視で評価した。
【0071】
評価:目視
○は、変化なく良好
△は、異常あり
×は、著しく異常が認められる
(注8)鉛筆硬度:
JIS K 5600-5-4に準じて、試験塗板面に対し約45°の角度に鉛筆の芯を
当て、芯が折れない程度に強く試験塗板面に押し付けながら前方に均一な速さで約10mm動かした。この操作を試験箇所を変えて5回繰り返して塗膜が破れなかった場合のもっとも硬い鉛筆の硬度記号を鉛筆硬度とした。
【0072】
(注9)60度鏡面光沢度:
塗膜の光沢の程度を、JIS K−5400 7.6(1990)の60度鏡面光沢度に従い、入射角と受光角とがそれぞれ60度のときの反射率を測定して、鏡面光沢度の基準面の光沢度を100としたときの百分率で表した。
(注10)ダイスマーク隠蔽性:
被塗物のダイスマークの状態を目視で評価した。
【0073】
○は、ダイスマーク隠蔽性が良好、
△は、ダイスマーク隠蔽性が劣る、
×は、ダイスマーク隠蔽性が著しく劣る。
(注11)耐薬品性:20℃、5%硫酸水溶液に500時間浸漬したのちの塗面、又は20℃、1%水酸化ナトリウム水溶液に300時間浸漬したのちの塗面の異常の有無を調べ
た。
【0074】
◎は、異常なし
○は、若干劣るが実用上問題なく良好
△は、異常あり
×は、著しく異常が認められる
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明のアニオン電着塗料は消費する燃費も低減でき、経済的にも有利である。焼き付け時には塗膜からホルムアルデヒドやブロック剤の放散が少なく環境負荷が少ない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、及びカルボジイミド基含有樹脂から選ばれる少なくとも1種を内包成分(a1)とし、ポリウレタン樹脂及び/又はポリウレア樹脂を
被覆成分(a2)としてなる複合粒子(A)、カルボキシル基含有樹脂(B)を含有する
アニオン電着塗料。
【請求項2】
エポキシ樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、及びカルボジイミド基含有樹脂から選ばれる少なくとも1種の内包成分(a1)の20℃における水に対する溶解度が、5重量%以下
である請求項1に記載のアニオン電着塗料。
【請求項3】
エポキシ樹脂が、少なくとも2個以上のグリシジル基を含有し、かつエポキシ当量が100〜500である請求項1又は2に記載のアニオン電着塗料。
【請求項4】
オキサゾリン基含有樹脂が、構成する単量体の固形分合計100重量部に対して、オキサゾリン基含有ラジカル重合性不飽和単量体を1重量部〜30重量部含有し、ラジカル共重合反応を行って得られたビニル系共重合体樹脂である請求項1又は2に記載のアニオン電着塗料。
【請求項5】
被覆成分(a2)のガラス転移温度が70〜130℃である請求項1に記載のアニオン
電着塗料。
【請求項6】
複合粒子(A)の平均粒子径が0.05μm〜1.0μmである請求項1に記載のアニオン電着塗料。











【公開番号】特開2006−111765(P2006−111765A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−301646(P2004−301646)
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】