説明

アニロックスロールの洗浄用シート及び洗浄方法

【課題】アニロックスロールの洗浄を簡単に行えるアニロックスロールの洗浄用シート及び洗浄方法を提供する。
【解決手段】刷版が巻回された版胴ロールとアニロックスロールを当接させ、両ロールを回転させながら被印刷物に印刷を行う印刷装置におけるアニロックスロールの洗浄用シート20を、版胴ロールに巻回されるシート21と、このシート21の表面に装着される粗面材と、この粗面材に対応するこのシート21の裏面に装着された弾性シート24から構成する。そして粗面材は、版胴ロールの軸方向に長尺の複数条の線状粗面材22と、この線状粗面材22に並設された面状粗面材23から成る。したがって両ロールを当接させて洗浄液を供給しながら回転させれば、アニロックスロールの表面は両粗面材22,23によりきれいに自動洗浄される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置におけるアニロックスロールの洗浄用シート及び洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
印刷装置において、インキ(塗料)供給手段としてアニロックスロールを用いることが知られている。アニロックスロールの表面(周面)は凹凸のある粗面などのインキ含浸面となっており、版胴ロールの表面(周面)に巻回された樹脂シートなどから成る刷版が当接する。そしてアニロックスロールと版胴ロールの両ロールを回転させながら、アニロックスロール表面のインキを刷版に転写し、刷版を用紙などのシートに当接させて印刷するようになっている。
【0003】
インキ品種変更時や一日の作業終了時などにおいては、アニロックスロールの表面に付着するインキを洗浄することが行われる。このようなアニロックスロールの洗浄装置として、版胴ロールに粗面材が装着された洗浄用シートを巻回し、この洗浄用シートをアニロックスロールに当接させ、アニロックスロールの表面に洗浄液を供給してアニロックスロールと版胴ロールを回転させながら、アニロックスロールの表面を洗浄する装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−212187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記従来の洗浄用シートの洗浄力はやや弱く、アニロックスロールの表面に付着したインキを必ずしもきれいに洗浄除去できなかった。また洗浄用シートを版胴ロールに巻回してアニロックスロールに強く当接させると、版胴ロールを痛めやすいという問題点があった。
【0006】
そこで本発明は、版胴ロールを痛めずに、アニロックスロールの表面に付着したインキをよりきれいに洗浄除去できるアニロックスロールの洗浄用シート及び洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の本発明は、刷版が巻回された版胴ロールとアニロックスロールを当接させ、両ロールを回転させながら被印刷物に印刷を行う印刷装置におけるアニロックスロールの洗浄用シートであって、版胴ロールに巻回されるシートと、このシートの表面に装着された粗面材と、この粗面材に対応するこのシートの裏面に装着された弾性シートから成り、前記粗面材が、前記版胴ロールの軸方向に長尺の複数条の線状粗面材と、この線状粗面材に並設された面状粗面材からアニロックスロールの洗浄用シートを構成した。
【0008】
請求項2の発明のアニロックスロールの洗浄方法は、刷版が巻回された版胴ロールとアニロックスロールを当接させ、両ロールを回転させながら被印刷物に印刷を行う印刷装置におけるアニロックスロールの洗浄方法であって、版胴ロールに請求項1に記載の洗浄用シートを巻回して装着し、前記線状粗面材と面状粗面材を前記弾性シートの弾性力によりアニロックスロールに弾接させ、アニロックスロールの表面に洗浄液を供給してアニロックスロールと版胴ロールを回転させながら、アニロックスロールの表面を洗浄するようにした。
【発明の効果】
【0009】
本発明のアニロックスロールの洗浄用シートによれば、アニロックスロールの表面に線状粗面材と面状粗面材を当接させてこの表面に付着したインキを両粗面材によりこすり落としてアニロックスロールの表面をきれいにクリーニングすることができる。しかも、線状粗面材と面状粗面材に対応するシートの裏面には弾性シートが設けられているので、両粗面材をアニロックスロールの表面にしっかり弾接させてその洗浄を行うことができ、両粗面材をアニロックスロールに強く弾接させて洗浄を行っても、版胴ロールを痛めることはない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態における印刷装置の印刷中の側面図
【図2】本発明の実施の形態におけるアニロックスロールをクリーニング中の印刷装置の側面図
【図3】本発明の実施の形態におけるアニロックスロールの洗浄用シートの斜視図
【図4】本発明の実施の形態におけるアニロックスロールの洗浄用シートの断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1において、版胴ロール1は軸部2を中心に回転する(矢印a)。版胴ロール1の表面(周面)には樹脂シートから成る刷版3が巻回されている。刷版3は、樹脂シート31の表面に版部32を突設して成っており、またその両側部には長板状の係止体33が装着されている。
【0012】
図1において、版胴ロール1の上方にはアニロックスロール11が設けられている。アニロックスロール11は版胴ロール1に刷版3を介して当接し、軸部12を中心に回転する(矢印b)。なお、版胴ロール1、アニロックスロール11、給紙ロール(後述)などを駆動するためのモータなどの駆動系は公知であり、その説明は省略する。
【0013】
図1において、A2はアニロックスロール11のA1部の部分拡大図である。アニロックスロール11の表面は凸凹のある粗面などのインキ含浸面になっており、これにインキ13が含浸されている。アニロックスロール11の表面にはインキ供給器14が当接している。インキ供給器14にはチューブ15を通してインキ13が供給される。インキ供給器14に貯留されたインキ13はアニロックスロール11の表面に付着される。
【0014】
図1において、5は給紙ロールであり、それぞれ矢印方向へ回転し、被印刷物である用紙6を右方へ搬送する(矢印c)。図1において、中央の給紙ロール5は用紙6を刷版3に押しつけ、両ロール1,11が互いに当接して回転することにより用紙6に印刷が行われる。
【0015】
図3、図4において、洗浄用シート20は、樹脂などのシート21の表面に複数条の線状粗面材22と面状粗面材23を並設して成っている。両粗面材22,23に対応するシート21の裏面(版胴ロール1の表面に当接する面)には弾性シート24が装着されている(図2のB1部の拡大図であるB2も参照)。洗浄用シート20のタテヨコ寸法は、刷版3のタテヨコ寸法と同じであり、またその両側部には、刷版3の係止体33と同様の長板状の係止体25が装着されている。したがって洗浄用シート20は、刷版3と同様に版胴ロール1に巻回して装着される。装着状態において、線状粗面材22は版胴ロール1の軸方向(版胴ロール1の回転方向aに直交する方向)に長尺である。
【0016】
この印刷装置は上記のような構成より成り、次にその運転、取扱い方法を説明する。図1において、版胴ロール1とアニロックスロール11を版胴ロール11に巻回された刷版3を介して互いに当接させて回転させながら、給紙ロール5で用紙6を搬送し、用紙6に印刷を行う。
【0017】
インキの品種変更時や1日の作業終了時には、次のようにしてアニロックスロール11の表面に付着したインキを洗浄除去する。すなわち、図2に示すように、版胴ロール1から刷版3を取り外し、版胴ロール1の表面に洗浄用シート20を巻回して装着する。上述のように、洗浄用シート20のタテヨコ寸法は刷版3のタテヨコ寸法と同じであり、また刷版3の係止体33と同様の係止体25を有しているので、洗浄用シート20は刷版3と差し替えて、刷版3と同様に簡単に版胴ロール1に巻回して装着することができる。
【0018】
また、インキ供給器14を洗浄液供給器14’と差し替える。なおこの差し替えを行わずに、インキ供給器14に洗浄液を送ることにより、インキ供給器14を洗浄液供給器として兼用してもよい。あるいは、このような洗浄液供給器14’を用いずに、固定式シャワーや手持ち式シャワーなどの洗浄液供給手段により、アニロックスロール11表面に洗浄液を供給してもよいものであり、アニロックスロール11の表面に洗浄液を供給する方法は様々な方法が可能である。
【0019】
さて、版胴ロール1に洗浄用シート20を装着したならば、用紙6への印刷時と同様に、版胴ロール1とアニロックスロール11の両ロール1,11を回転させる(矢印a,b)。すると、線状粗面材22と面状粗面材23は、交互にアニロックスロール11の表面に摺接して、複数条線状粗面材22でインキをこすり出し、面状粗面材でこすり出されたインキや洗浄液を吸収する。しかも、両粗面材22、23の裏面は弾性シート24が版胴ロール1に弾接しているので、両粗面材22、23をアニックスロール11の表面に強く弾接させてこの表面の洗浄を行うことができ、かつ強く弾接させても版胴ロールを傷めることはない。なお、両粗面材22、23の材質としては、アニックスロール11の表面に付着したインキのこすり落し力と吸収力が大きいものが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明によれば、アニロックスロールの表面に線状粗面材と面状粗面材を当接させてこの表面に付着したインキをこすり落としてアニロックスロールの表面をきれいにクリーニングすることができる。しかも、線状粗面材と面状粗面材に対応するシートの裏面には弾性シートが設けられているので、両粗面材をアニックスロールの表面に強く弾接させてアニロックスロールの洗浄をしっかり行うことができる。またシートの裏面には弾性シートが装着されているので、両粗面材をアニロックスロールに強く弾接させて洗浄を行っても、版胴ロールを痛めることはない。
【符号の説明】
【0021】
1 版胴ロール
3 刷版
5 給紙ロール
6 用紙
11 アニロックスロール
20 洗浄用シート
22 線状粗面材
23 面状粗面材
24 弾性シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刷版が巻回された版胴ロールとアニロックスロールを当接させ、両ロールを回転させながら被印刷物に印刷を行う印刷装置におけるアニロックスロールの洗浄用シートであって、版胴ロールに巻回されるシートと、このシートの表面に装着される粗面材と、この粗面材に対応するこのシートの裏面に装着された弾性シートから成り、前記粗面材が、前記版胴ロールの軸方向に長尺の複数条の線状粗面材と、この線状粗面材に並設された面状粗面材から成ることを特徴とするアニロックスロールの洗浄用シート。
【請求項2】
刷版が巻回された版胴ロールとアニロックスロールを当接させ、両ロールを回転させながら被印刷物に印刷を行う印刷装置におけるアニロックスロールの洗浄方法であって、版胴ロールに請求項1に記載の洗浄用シートを巻回して装着し、前記線状粗面材と前記面状粗面材を前記弾性シートの弾性力によりアニロックスロールに弾接させ、アニロックスロールの表面に洗浄液を供給してアニロックスロールと版胴ロールを回転させながら、アニロックスロールの表面を洗浄することを特徴とするアニロックスロールの洗浄方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−25644(P2011−25644A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−176536(P2009−176536)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(599146897)株式会社 寳章堂 (4)
【Fターム(参考)】