説明

アフィニティー精製抗体を用いた甲状腺刺激ホルモン受容体自己抗体の同定

本発明は、生化学的に均質な状態を得るために精製され、少なくとも1IU/mgタンパク質(ヒト免疫グロブリン)の比活性を有する、グレーブス病患者の血清から得られた抗TSH受容体アフィニティー精製ポリクローナルヒト自己抗体(TSHR-Auto-Ab)、および/または、機能的なヒトTSH受容体の結合部位で前者と競合する動物抗体の使用であって、グレーブス病に関して検査されるべき患者の生物体液試料中にある抗TSH受容体自己抗体(TSHR-Auto-Ab)を臨床的に同定する免疫学的測定方法における特異的結合試薬としての使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(TSH受容体に対するポリクローナルヒト自己抗体の特性を有するアフィニティー精製抗体の、TSH受容体自己抗体を同定するための特異的結合試薬としての使用、ならびにそのような抗体を得るための試薬キットおよび選択方法)
本発明は、甲状腺の自己免疫疾患、詳細には、グレーブス病で生じるTSH受容体自己抗体(TSHR-Auto-Ab)を測定する、改善された受容体結合アッセイに関する。
【背景技術】
【0002】
甲状腺の関与する多数の疾患が自己免疫疾患であること、そして、これらの疾患では、甲状腺における分子の構造に対する自己抗体が形成され、これらの疾患と関連して、それらの分子が自己抗原として作用し始めることが知られている。甲状腺における最も重要な公知の自己抗原は、チレオグロブリン(Tg)、甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO)、およびTSH受容体(TSHR)であり、なかでも、TSHRはとりわけ重要である(Furmaniak Jら、Autoimmunity、1990年、第7巻、63〜80頁)。
【0003】
TSH受容体は、甲状腺膜に局在する受容体であり、これには、下垂体によって放出されるホルモンであるTSH(甲状腺刺激ホルモン)が結合し、それによって、事実上の甲状腺ホルモン、詳細にはチロキシンの分泌を引き起こす。TSH受容体は、大きなアミノ末端細胞外ドメインを有するGタンパク質共役糖タンパク質受容体からなる受容体ファミリーに属する(LH/CG受容体およびFSH受容体もこのファミリーに属する)。TSH受容体の化学構造に関する知見、すなわち、受容体をコードするDNA配列、および、それから得られた受容体自体のアミノ酸配列に関する知見は、1989年の終わりまでに得られた(Libert F.ら、Biochem. Biophys. Res. Commun.、第165巻、1250〜1255頁;およびNagayama Yら、Biochem. Biophys. Res. Commun.、第165巻、1184〜1190頁参照;欧州特許出願公開第0433509号または国際公開第WO91/09121号;第WO91/09137号;第WO91/10735号;および第WO91/03483号;ならびにYuji NagayamaおよびBasil Rapoport、Molecular Endocrinology、第6(2)巻、145〜156頁、およびその中の引用文献も参照のこと)。
【0004】
TSH受容体(TSHR)に対して産生され、甲状腺を刺激するように(すなわち、甲状腺機能亢進(甲状腺機能亢進症)の発症)、受容体と相互作用する刺激性自己抗体は、グレーブス病として知られる甲状腺自己免疫疾患に関与していると一般的に考えられている。しかし、ヒト患者の循環系では、刺激性の自己抗体に加えて、それらと正反対の抗体、さらには臨床的に有意ないかなる影響ももたない抗体さえも検出されることが知られており、これらはそれぞれ「中立」抗体または「阻止」抗体とも呼ばれる。TSH受容体に対する自己抗体(以下、TSHR-Auto-Abと短縮表記される。また、本発明者らによって開発されたアッセイを用いた測定と関連する場合は、後の用語法でTRAKとも表記される)の測定は、グレーブス病および他の甲状腺自己免疫疾患を診断するのに臨床上極めて重要である。
【0005】
したがって、TSHRに対して産生された甲状腺自己抗体を測定するアッセイは、臨床診断で長期にわたって日常的に用いられてきたものである。
【0006】
以前の方法では、測定されるべき自己抗体を、可溶化されたブタTSHR試料の結合部位でウシTSH(bTSH)と競合させ、固液分離のために、形成された免疫複合体をポリエチレングリコール(PEG)で沈降させる操作を常に行う必要があった。
【0007】
独国特許出願公開第19801319.1号、それに基づく国際公開第WO99/36782号、または欧州特許第0975970号により詳細に、そして、Sabine Costagliolaらによる文献、「Second Generation Assay for Thyrotropin Receptor Antibodies Has Superior Diagnostic Sensitivity for Graves' Disease」、J Clin Endocrinol Metab、第84巻、90〜97頁、1999年にさらにより詳細に記載されている方法が、TSHR-Auto-Abを測定する最新の方法と現在みなされている。これらの文献で実施されるべきアッセイとして教示されているものが、DYNOtest(登録商標)、TRAKhuman(登録商標)、またはLUMItest(登録商標)TRAKhuman(登録商標)という名称で市販されている、本出願人B.R.A.H.M.S Aktiengesellschaft社のアッセイである。
【0008】
上記の独国特許出願公開第19801319.1号および国際公開第WO99/36782号は、先行する従来技術およびTSHR-Auto-Abの測定に関連した様々な困難に関する詳細な考察を含んでいる。したがって、本発明における技術的背景のより深い理解を提供するものとして、上記の特許出願の内容と、そこで論じられている科学文献とに対する参照を明示的に行う。
【0009】
独国特許出願公開第19801319.1号、それに基づく国際公開第WO99/36782号、または欧州特許第0975970号による上記の方法は、ヒトTSHR、詳細には組換えTSHRを、機能性の減失なしに固相に固定することが初めて可能になったという事実に主として基づいており、その結果、TSHR-Auto-Ab測定がヘテロジニアスアッセイとして実行しうるものとなり、この測定に関連した測定シグナルが、固相に直接結合させることで得られるようになった。
【0010】
このアッセイでも、使用される競合物質は原則として、標識されたbTSHである。
【0011】
機能的なrhTSHRは、モノクローナル抗体BA8を用いて固定する。モノクローナル抗体BA8は、TSHRの立体構造エピトープ(conformative epitope)を認識し、S. CostagliolaおよびG. Vassart、J. Endocrinol. Invest.、第20(補5)、抄録4、(1997年)、ならびにS. Costagliolaら、「Genetic Immunization Against the Human Thyrotropin Receptor Causes Thyroiditis and Allows Production of Monoclonal Antibodies Recognizing the Native Receptor」、The Journal of Immunology、1998年、第160巻、1458〜1465頁に記載されている特定の方法で得られる。この方法によれば、抗体を産生するためには、マウスをペプチド抗原で免疫処置するのではなく、hTSHRをコードするDNAプラスミドコンストラクトを筋肉内注射することによって免疫処置を行う。このようにして、天然のhTSHRに高親和性を有する新規のモノクローナル抗体が、適当な選択の後に得られる。これらの抗体の少なくとも一部は、BA8のように、立体構造エピトープも認識するものである。
【0012】
固定された機能的なヒトTSHRは、固定された状態での洗浄によって、アフィニティー精製された形態として測定に使用でき、その使用には様々な利点がある。この結果、アッセイの革新がもたらされたが、その中でも、以下のものが特に重要である。
【0013】
1.あらかじめ形成されているTSHR-Auto-Abおよび固定されたアフィニティー精製rhTSHRの複合体と、標識されたbTSHを下流ステップで反応させることによる「ツーステップ測定」として測定が行われる場合、この複合体は元の測定溶液から分離されているため、患者試料中に内在的(per se)に存在しうることが知られている抗bTSH-Abは、もはや干渉性効果をもちえない。
【0014】
2.ヒト受容体を使用するので、個々の患者試料中で起こるように、疾患によるhTSH濃度の上昇によってアッセイが撹乱されうる。このような撹乱は、市販されているある種の抗TSH抗体を、試料を含有する測定溶液に添加することで中和できる。このような抗体は、hTSHに選択的に結合し、競合物質として用いられるbTSHとは交差反応しない。
【0015】
3.上記1で言及した新規の発見によって、第2のアッセイステップで、血清を含まない、正確に標準化可能なbTSH試薬を用いて、bTSHとの反応を行えるようになった。
【0016】
4.上述のアッセイにおける実際上の弱点は、アッセイで用いられるヒト組換えTSHRの結合能が、競合物質として用いられる標識されたウシTSHに比べて、比較的迅速に失われ、特にTSHRが液相中に提供される場合、例えば、懸濁された磁性粒子に結合される場合、または、ホモジーナスアッセイの成分として可溶化された形態で使用される場合にこれが顕著であるとの事実にあることが判明した。
【0017】
上記方法は、測定溶液から、固相に結合したアフィニティー精製組換えヒトTSHRへの、TSHR-Auto-Abの直接的結合、および標識された競合物質bTSHの直接的結合を可能にしたので、得られるシグナルの測定が、沈降アッセイと比べて、実際上、望ましい意味で単純化されたのみならず、アッセイ設計さえも、原則的に改変可能となった。すなわち、ワンステップアッセイ(途中で固液分離を行わず、逐次的なピペット操作で単一測定溶液を調製する)から、ツーステップアッセイへの転換が可能となった。このツーステップアッセイでは、固定、洗浄、およびアフィニティー精製されたTSHRと、試料との反応、ならびに標識された競合物質bTSHとの反応が、固液分離によって相互に分離された2段階の逐次ステップによって実行される。
【0018】
上述の方法は、機能的なヒトTSH受容体を使用してはいるが、測定される自己抗体と、TSH(原則として、標識されたウシTSH)との競合を利用するという点において、依然、伝統的方法と同様のものである。競合アッセイにおける競合物質として、標識されたbTSHの代わりに、TSH受容体に結合する標識抗体を用いる基本的可能性が、原則として議論されてきていることも事実である。その間、異なった抗原を用いて、そして、完全なTSHRまたはその個々のセグメントに対して異なった免疫技法を用いて産生されたモノクローナル抗体の数は、非常に大きなものとなった。しかし、グレーブス病の誘因物質として想定されている抗体など、刺激性抗体としての特性を有する抗体に関してはまだ記載がない。したがって、実際には、競合物質bTSHより適切な方法で、グレーブス病の特徴である抗体など、刺激性自己抗体の存在および量を認識できるようにする競合物質を用いたアッセイが提供される可能性はまだなかった。
【非特許文献1】Furmaniak Jら、Autoimmunity、1990年、第7巻、63〜80頁
【非特許文献2】Libert F.ら、Biochem. Biophys. Res. Commun.、第165巻、1250〜1255頁
【非特許文献3】Nagayama Yら、Biochem. Biophys. Res. Commun.、第165巻、1184〜1190頁
【特許文献1】欧州特許出願公開第0433509号
【特許文献2】国際公開第WO91/09121号
【特許文献3】国際公開第WO91/09137号
【特許文献4】国際公開第WO91/10735号
【特許文献5】国際公開第WO91/03483号
【非特許文献4】Yuji NagayamaおよびBasil Rapoport、Molecular Endocrinology、第6(2)巻、145〜156頁
【特許文献6】独国特許出願公開第19801319.1号
【特許文献7】国際公開第WO99/36782号
【特許文献8】欧州特許第0975970号
【非特許文献5】Sabine Costagliolaら、「Second Generation Assay for Thyrotropin Receptor Antibodies Has Superior Diagnostic Sensitivity for Graves' Disease」、J Clin Endocrinol Metab、第84巻、90〜97頁、1999年
【非特許文献6】S. CostagliolaおよびG. Vassart、J. Endocrinol. Invest.、第20(補 5)、抄録4、(1997年)
【非特許文献7】S. Costagliolaら、「Genetic Immunization Against the Human Thyrotropin Receptor Causes Thyroiditis and Allows Production of Monoclonal Antibodies Recognizing the Native Receptor」、The Journal of Immunology、1998年、第160巻、1458〜1465頁
【特許文献9】国際特許出願第PCT/EP97/06121号
【特許文献10】独国特許出願公開第19651093.7号
【非特許文献8】Y. Ochiら、Acta Endocrinologica (Copenh)、1989年、第120巻、773〜777頁
【非特許文献9】S. Sakataら、J. Endocrinol. Invest.、第14巻、123〜130頁、1991年
【非特許文献10】T. Inui、Thyroid、第6巻、295〜299頁、1996年
【非特許文献11】Sabine Costagliolaら、「Second Generation Assay for Thyrotropin Receptor Antibodies Has Superior Diagnostic Sensitivity for Graves' Disease」、J Clin Endocrinol Metab、第84巻、90〜97頁、1999年
【非特許文献12】Sabine Costagliolaら、「Selection of moAb by FACS」、J Clin Endocrinol Metab、第84巻、91頁、1999年
【非特許文献13】S. Costagliolaら、「Genetic Immunization Against the Human Thyrotropic Receptor Causes Thyroiditis and Allows Production of Monoclonal Antibodies Recognizing the Native Receptor」、The Journal of Immunology、1998年、第160巻、1458〜1465頁
【非特許文献14】Sabine Costagliolaら、「Preparation of hTSH-R」、J Clin Endocrinol Metab、第84巻、91頁、1999年
【非特許文献15】Rosalind Brownら、「Partial Purification and Characterisation of Thyrotropin Binding Inhibitory Immunoglobulins from Normal Human Plasma」、J Clin Endocrinol Metab、第56巻、156〜162頁(1983年)
【特許文献11】欧州特許第0257541号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、TSH受容体自己抗体を測定する受容体結合アッセイであって、従来技術における公知の競合受容体結合アッセイの欠点をもたず、臨床上の価値がさらに大きい受容体結合アッセイの提供を目的とする。
【0020】
詳細には、本発明は、TSH受容体自己抗体を同定する改善された受容体結合アッセイを設計し、それによって、変則的な血清成分によって測定に生じるある種の撹乱を、ワンステップ法においてさえ効果的に排除し、アッセイ方法における反応体の至適結合を確実にすることをさらに目的とする。
【0021】
本発明は、液相でのトレーサー/競合物質と比較してTSHRの結合能が低下するという問題を解決し、この方法を、TSHRが結合した磁性粒子の懸濁液を用いた通例の自動化法として、または、いわゆるKRYPTOR(登録商標)技法を用いたホモジニアス法として実行できるようにすることをさらに目的とする。
【0022】
本発明は、そのような改善がなされた受容体結合アッセイを、通常の臨床診断で実行するのに必要な試薬キットの提供をさらに目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記目的は、グレーブス病患者の血清から得られた抗TSH受容体アフィニティー精製ポリクローナルヒト自己抗体(TSHR-Auto-Ab)、および/または、機能的なヒトTSH受容体の結合部位でこれらと競合する動物抗体を、グレーブス病に関して検査されるべき患者の生物体液試料中にある抗TSH受容体自己抗体(TSHR-Auto-Ab)を臨床的に同定する免疫学的アッセイ方法における特異的結合試薬として使用することによって、本発明によって達成される。
【0024】
使用されるアフィニティー精製自己抗体のさらに詳細な特徴、および、その結果可能になった、改善された受容体結合アッセイの特に有利な実施形態を、従属クレームに記載し、より詳細には、以下の記述における詳説と併せて記載する。
【0025】
本発明を実現する試薬キットを提供するという目的は、請求項9に記載の好ましい試薬キットによって実現され、これは、特異的結合試薬として、より詳細には、標識された競合物質として機能的なTSHRを含有するのに加えて、グレーブス病患者の血清から得られた抗TSH受容体アフィニティー精製ポリクローナルヒト自己抗体(TSHR-Auto-Ab)、および/または、機能的なヒトTSH受容体の結合部位でこれらと競合する動物抗体の試料も含有する。
【0026】
しかし、本発明によるアフィニティー精製自己抗体は、任意選択で直接標識または間接標識された可溶化されたTSHRに対する特異的結合剤として、固相に固定された形態で、例えば、コーティングされたチューブまたはマイクロ粒子の壁に結合させて用いることもできる。
【0027】
患者血清から得られたポリクローナル自己抗体の代わりに、本発明によれば、機能的なヒトTSH受容体の結合部位でこれらと競合する選択された動物抗体、すなわち、ポリクローナルTSHR-Auto-Abを「模擬する」抗体を用いることもできる。そのような動物抗体、より詳細には動物モノクローナル抗体は、これまで見い出されておらず、また、より詳細には、確信をもって同定されていない。cAMP生産の刺激という観点において、モノクローナル抗体が「刺激性」抗体を構成するかどうかの調査が行われたバイオアッセイからは、これまで、陰性の結果のみが得られている。したがって、このことから、調査された抗体は、グレーブス病の病原性自己抗体と見なされる抗体を代表するものではないと結論しなければならなかった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
導入部およびこの出願の以下の部分において、用いられた試薬または被分析物/生体分子は、原則として様々な略語によって特徴付けられ、上記に言及された特許出願と同様に、例外として、特定の文脈から別のことが当業者に自明である場合を除いて、以下に示す意味を有するものとして常に理解される。特定のデータの使用は、実行された実験および測定の正確な記述を可能にするためのものであり、記載された結果および結論が記載された特別なケースのみに適用されることを意味するものではない。むしろ、提示された情報の中から得られる多くの情報は、当業者にとって、それらの、より一般的な意味において明確に認識可能である。
【0029】
(使用された略語の説明)
TSH = 甲状腺刺激ホルモン。略語TSHが、別段の付加なしに用いられる場合、それは特定の産物に関するものではなく、このホルモンの結合または機能の一般的な形態を論じるものである。
【0030】
bTSH = ウシTSH。TSH受容体に対する自己抗体を同定する従来のアッセイでトレーサーとして用いられる試料。
【0031】
hTSH = ヒトTSH。健康な人の血清/血漿中には、非常に低い濃度0.2〜4mU/lでのみ存在する。しかし、甲状腺機能低下症を患う患者の血清では、hTSH濃度がかなり上昇しうる。上昇したhTSHレベル(20mU/l超)によって引き起こされる自己抗体測定の撹乱は、上述の国際公開第WO99/36782号で論じられており、特別な方法によって中和される。
【0032】
TSHR = TSH受容体。TSH受容体は、甲状腺の膜に固着されている糖タンパク質受容体である。略語TSHRが、別段の付加なしに用いられる場合、それは特定の産物を表すものではなく、この受容体の機能、またはその結合参加の一般的な形態を論じるものである。
【0033】
rhTSHR = 遺伝子操作によって生成され、かつ天然に存在する12のTSHRのアミノ酸配列を少なくとも「機能的なヒトTSH受容体」と呼ばれうる程度まで有する(組換え)ポリペプチド。これは、抗TSHR自己抗体の結合、またはTSH(bTHS/hTSH)の結合に関して、それが有意な程度にまで、天然に存在するヒトTSHRと同様に反応することを意味する。略語rhTSHRが、別段の付加なしに用いられる場合、それは特定の産物を表すものではない。すなわち、rhTSHRは、ある程度グリコシル化された完全長組換えポリペプチドのいかなるものも、遺伝子操作によって生成された、その十分に長い部分配列または融合産物も表しうる(例えば、国際特許出願第PCT/EP97/06121号に記載される通り)。
【0034】
rhTSHR(imm) = 固相に選択的に結合した(固定された)rhTSHR試料。この結合は、本明細書において、下記により詳細に記載されるように適当な抗体を介して実現できるが、融合産物の場合には、特定のペプチド残基、例えば、ビオチン残基を介して実現することもできる。固相は試験管の壁(コーティングされた試験管、すなわちCT技法)でもよいが、適当な懸濁固体相でもよい。アフィニティー精製ポリクローナル自己抗体を得るには、rhTSHR(imm)を、アフィニティーカラムの調製に用いる物質に結合させる(実験セクションを参照)。
【0035】
Ab = 抗体。
【0036】
TSHR-Auto-Ab = 生物試料中、より詳細にはヒト血清または血漿中で検出可能な抗TSH受容体自己抗体。このタイプの刺激性TSHR-Auto-Ab(文献中では、TSI = 甲状腺刺激免疫グロブリンとも短縮表記される)の同定は、特にグレーブス病の診断において重要である。さらに別の慣習的な略語としてはTRAKがある。
【0037】
Anti-hTSHR-mAb = rhTSHRに結合するモノクローナル抗体。別段の説明がない場合、この抗体は、例えば、先行出願の独国特許出願公開第19651093.7号に記載されるように、結合挙動に関して配列性(sequential)であってもよいが例えば、BA8のように、立体構造特異的(conformative)であってもよい。
【0038】
Anti-bTSH-Ab = bTSHと反応して免疫複合体を形成し、それによって、アッセイ構成物に対するbTSHの結合、または得られる測定結果に影響を与える、ヒト血清中または血漿中に存在する、出自が明らかでない抗体(Y. Ochiら、Acta Endocrinologica (Copenh)、1989年、第120巻、773〜777頁; S. Sakataら、J. Endocrinol. Invest.、第14巻、123〜130頁、1991年; T. Inui、Thyroid、第6巻、295〜299頁、1996年)。
【0039】
本発明による新規の選択的結合試薬が使用される免疫学的アッセイ方法(リガンド結合試験)は、文献、および、例えば上述の特許出願から当業者に公知であるように、原則としていかなる適当なタイプのものでもよい。
【0040】
固相に固定されたTSHRをアッセイで利用する場合、プラスチック表面、より詳細にはCT技法に用いるプラスチック製試験管の壁の形態にあるもの、マイクロ粒子、磁性粒子、フィルター、重合体ゲル物質、および他の公知の固相基質を、そのような固相として用いることができる。アッセイ設計を、公知の自動化システムで測定を実行できるように適合させることもできる(例えば、Boehringer Mannheim社のElecsys(登録商標)システム、またはChiron社のACS 180システムを参照のこと)。
【0041】
本発明による試薬の使用は、多数の利点をもたらすものであり、これに関しては、後でもう一度、実験セクションで論じることとする。しかし、とりわけの利点が、ワンステップ法としての設計にあることが指摘されるべきである。これは、結合試薬として用いられるポリクローナル自己抗体の相同性の特性により、測定される試料中にあるhTSH結合抗体、またはbTSH結合抗体に起因する撹乱が重要ではなくなることによるものである。
【0042】
さらに別の利点は、公知の方法によるポリクローナル抗体の標識化(またはそれらを模擬する動物抗体の標識化)が、TSHの標識化を行う際に遭遇した困難を克服する必要なしに、事実上いかなる所望かつ公知の標識試薬ででも可能なことである。また、標識は、以下に示す方法に、それ自体用いられることが知られている1対の検出マーカーの一部であってもよい。この方法では、特異的結合試薬(可溶化TSHR;自己抗体形態の競合物質)が、液体反応混合物中に分散形態で存在し、蛍光もしくは化学発光消光、または増幅に基づく標識化システムの一部である第1の標識化成分が抗体に結合し、この標識化システムの第2の標識化成分が、可溶化TSHRの間接標識または直接標識に用いられる第2の非競合性抗体に結合し、それによって、標識抗体がTSHRに結合した後、測定可能なシグナル、例えば、蛍光シグナルが発生し、このシグナルが、測定溶液中にある、この結果得られたサンドイッチ複合体の検出を可能にする。この変法では、本発明による自己抗体試料と比較して、より詳細には、結合能をTSHと比較して、結合能がより長時間保たれるTSHRが、実施に際して極めて重要な利点となる。
【0043】
以下に、本発明を、5つの図を参照して、特定の実施形態および実験結果に基づき、その様々な態様において詳細に説明する。
【0044】
記載の実験に関連する一般的な説明は、参照により本発明に明示的に組み込む。図には
【0045】
以下の調製および測定実験の記載において、それ自体公知の技法または物質が用いられた場合、可能ならば、公表された文献にあるデータの参照を行った。
【実施例】
【0046】
(1.材料)
(1 グレーブス病患者の血清からのアフィニティー精製ポリクローナルヒト自己抗体試料の産生)
(1.1.結合TSHRを有するアフィニティーカラムの調製)
アフィニティー精製形態にある公知のモノクローナル立体構造抗体BA8(Sabine Costagliolaら、「Second Generation Assay for Thyrotropin Receptor Antibodies Has Superior Diagnostic Sensitivity for Graves' Disease」、J Clin Endocrinol Metab、第84巻、90〜97頁、1999年;91頁「Selection of moAb by FACS」;およびS. Costagliolaら、「Genetic Immunization Against the Human Thyrotropic Receptor Causes Thyroiditis and Allows Production of Monoclonal Antibodies Recognizing the Native Receptor」、The Journal of Immunology、1998年、第160巻、1458〜1465頁)20mgを2mg/mlで含むリン酸緩衝食塩水溶液(PBS)と、NaIO4 50mgとを混合し、20分間、室温で、インキュベートし、PBSで平衡化されたNAP25カラム(Pharmacia社)を用いて脱塩した。得られたタンパク質画分(14ml)を、PBSで洗浄し、Carbolink(商標)物質(5mlゲル;Pierce社)と混合し、穏やかに振盪させながら4℃で20時間インキュベートした。
【0047】
得られた懸濁液を、ガラスフィルターに注ぎ、PBS 200mlで洗浄した。その後、洗浄されたBA8抗体結合Carbolink物質を組換えヒトTSHR溶液(容積250ml、K562細胞6×109からの抽出物)に再懸濁し(Sabine Costagliolaら、「Second Generation Assay for Thyrotropin Receptor Antibodies Has Superior Diagnostic Sensitivity for Graves' Disease」、J Clin Endocrinol Metab、第84巻、90〜97頁、1999年;91頁、「Preparation of hTSH-R」)、4℃で10時間インキュベートした。
【0048】
この結果得られた固相物質を、ガラスフィルター上で、PBS 100mlを用いて3回洗浄した。
【0049】
(1.2.グレーブス病患者の血清からの自己抗体のアフィニティー精製)
1.1に従って得られた洗浄済み固相物質を、グレーブス病患者の血清プール400ml(平均濃度190U/l、全75U)に懸濁し、穏やかに振盪させながら、4℃で10時間インキュベートした。
【0050】
その後、下部をガラスフリットで閉じたガラスカラム(2×10cm)に固相物質を導入し、いずれの場合にも、50mlのPBSで3回洗浄した。流速は1ml/分であった。最終の洗浄の後、溶出液はタンパク質不含であった。
【0051】
その後、固相物質に固定されたTSHRを介して結合した自己抗体(図では、TRAKと短縮表記されている)の溶出を、50mMクエン酸の10ml部分を用いて、流速1ml/分で行った。カラム流出液は、1ml画分で収集した。
【0052】
得られた1ml画分に関して、本出願人のDYNOtest(登録商標)TRAKhuman(登録商標)を用いて、抗TSHR抗体が存在するかどうか試験し、タンパク質濃度をBCA法で測定した。同一と見なされるカーブは、タンパク質量および抗体活性が相互に一致するものであり、化学的に均質であると指定される抗体画分を得たことを示す。
【0053】
この結果を、図1および以下の表に再現する。
【0054】
【表1】

【0055】
これらの結果は、高抗体活性(1IU/mgタンパク質より高い活性)を有する純度の高い自己抗体試料が調製されたことを示す。このようなアフィニティー精製試料は、さらに遠い過去に、甲状腺膜からの試料を用いて濃縮されたもの、例えば、Rosalind Brownら、「Partial Purification and Characterisation of Thyrotropin Binding Inhibitory Immunoglobulins from Normal Human Plasma」、J Clin Endocrinol Metab、第56巻、156〜162頁(1983年)による産物などとは比較にならないものである。
【0056】
(1.3.グレーブス病血清から得たアフィニティー精製ポリクローナル自己抗体の標識化)
(1.3.1アクリジニウムエステルで直接的に化学発光標識された抗体)
1.2に記載したアフィニティー精製自己抗体30μl(100μg)を、1M NaPO4(pH7.2) 70μlで中和し、NHSアクリジニウムエステル(Behringwerke AG社Marburg;欧州特許第0257541号参照;アセトニトリル中1mg/ml) 10μlと混合し、室温で、10分間インキュベートした。その後、過剰のアクリジニウム活性エステルを、0.1グリシン/NaOH(pH7.2) 10μlで飽和させ、結合していないアクリジニウムエステルを、SW300カラム(Millipore社)を用いてゲル濾過HPLCによって沈降させた。280nmおよび368nmにUV吸収を有するカラム流出液の全画分を収集した。プールされたタンパク質画分は、受容体結合アッセイでさらに使用する必要が生じるまで-80℃で保存した。
【0057】
(1.3.2.ヤギ抗ヒト抗体による間接標識)
1.3.1の別法として、アフィニティー精製自己抗体を、アクリジニウムエステルで標識されたヤギ抗ヒトIgGと、1:1のモル比で反応させた(グレード2、Scantibodies社)(1% BSA、PBS 10ml中に自己抗体100μgおよびヤギ抗ヒトアクリジニウムエステル100μg)。2時間インキュベートした後、この物質を、PBS、1% BSA、および10%ヒト血清からなる緩衝液中に、100μlあたり20ng(約0.25mU抗体)となるように溶出した。
【0058】
直接標識(1.3.1)、および間接標識(1.3.2)されたこれら2つの自己抗体を、下記に示す対照血清および患者血清の測定で、トレーサーとして用いる。
【0059】
(1.4標準物質)
使用された標準物質は、本出願人のLUMItest(登録商標)TRAKの標準物質であった。
【0060】
(2.アッセイ手順:ピペット操作およびインキュベーションプロトコール)
グレーブス病患者の血清から得たアフィニティー精製自己抗体に基づく標識された新規のトレーサー試料を評価するために、以下の順序のピペット操作およびインキュベーションステップを用いて測定を行った。
【0061】
1.本出願人のLUMItest(登録商標)TRAKhuman(登録商標)から得た固定化rhTSHRでコーティングされた試験管に、試料(患者血清、標準血清、またはゼロ標準血清)100μlをピペットで入れる。
2.そこに、直接標識(1.3.1)または間接標識(1.3.2)されたアフィニティー精製自己抗体を、いずれの場合でも100μlピペットで入れる。
3.Heidolph社製オービタルシェーカー(300rpm)で、室温で、2時間インキュベートする。
4.洗浄溶液(PBS)1mlをピペットで入れる。
5.デカント。
6.ステップ4および5をそれぞれ3回反復する。
7.発光反応を引き起こし、化学発光光を発生させ、適当なルミノメータ、例えば、Berthold社製LB952T/16を用いることによって、試験管の壁に残存するアクリジニウムエステルを測定する。
8.患者血清中のTSHR-Auto-Abを測定する。
【0062】
2通りに異なって標識された自己抗体画分を用いた40の対照血清および40の患者血清の測定結果を図2および3に示す。
【0063】
LUMItest(登録商標)TRAKhuman(登録商標)で得られるより、比活性が実質的に高いシグナルを得たことが明らかである。一方、グレーブス病の診断に関しては、同程度、またはさらに高い感受性および特異性が得られる。
【0064】
驚いたことに、まさに可溶化TSHRと同様に、測定で特異的結合パートナーとして用いられた固定化組換えヒトTSH受容体も、標識された自己抗体に関して、結合能と、したがって、抗体測定用試薬としての適性とを、標識されたbTSHをトレーサーとして使用した場合より実質的に長く保持することがさらに判明した。これは、実用上かなりの利点となるものである。
【0065】
このアッセイは、測定されるトレーサーとリガンドとが実質上同一であるいわゆる相同アッセイ(homologous assay)であるので、hTSHの存在は、トレーサー結合と抗体結合とに同様の影響を与え、これによる測定への影響によって撹乱が起こることはありえない。500U/LまでのhTSH濃度で、トレーサー結合を試験したところ、hTSHの存在による干渉は全く見られなかった。
【0066】
(3.様々なトレーサーに関するTSHR試料の結合挙動における安定性の調査)
組換えヒトTSHRは、記載の通り、2%トリトン、10%グリセロール、10mM EDTA、0.5% BSA、pH7.4を含むHEPESで、K562細胞から抽出し、抽出物として22℃で保存した。
【0067】
図5に示す間隔で、いずれの場合にも、1アリコートのTSHR懸濁液を、あらかじめモノクローナル抗体(BA8)でコーティングされたポリスチレンチューブに添加し、300rpmのオービタルシェーカー(Heidolph社)上、4℃で1時間インキュベートした。インキュベーション容積は300μlであった。その後、チューブをHEPES緩衝液、pH7.4、0.5% BSAで満たし、チューブの内容物を吸引濾過し、さらに、このステップを2回反復した。
【0068】
その後、結合したTSHRを、真空乾燥によって安定化させた。最後に、乾燥したチューブを、本出願人のTRAKhuman(登録商標)から得たトレーサー溶液200μlと共に、または、上記1.3.2の記載の通り調製した間接標識されたアフィニティー精製自己抗体試料200μlと共に、振盪(300rpm)させながら22℃で2時間インキュベートした。トレーサー溶液は、放射標識されたbTSHを含有する。
【0069】
その後、いずれの場合にも、PBSでチューブを洗浄する(PBS 2mlの添加/吸引濾過を3回反復する)ことによって、結合していない標識された物質を除去した。最後に、チューブ表面に残留している標識を、ガンマカウンタまたルミノメータで測定した。
【0070】
これらの結果を図5に示す。保存時間が長くなるにつれて、標識されたbTSHトレーサーの結合量がますます少なくなったことが明確に明らかであり、100時間保存した後の試料では、初期値の約20%にまでbTSH結合が低下していた。一方、標識された自己抗体画分の結合は、同じ時間内にわずかに低下したのみであった。相同アッセイでは、結合能の低下がトレーサーと被分析物とに等しく関与する(一方、被分析物と比較したbTSHトレーサーの相対的結合能に関しては、このことは当てはまらない)ため
、これらの結果は、公知のアッセイにおける場合と比べて、測定精度が時間に影響される程度が非常に小さくなっていることを意味する。
【0071】
(4.機能的な組換えヒトTSH-Rの結合部位で、グレーブス病患者の血清から得られた自己抗体と競合する抗hTSHR動物抗体の同定/選択)
グレーブス病血清から得られた標識されたアフィニティー精製ポリクローナル自己抗体試料を競合物質として用いたアッセイは、それが相同アッセイの特性によるものなので、グレーブス病自己抗体と実際に競合する動物抗体、詳細にはモノクローナル抗体の選択を可能にするものである。そのような動物抗体は、これまで、いまだに記載のない、刺激性作用を有する抗体である可能性もある。
【0072】
S. Costagliolaら、「Genetic Immunization Against the Human Thyrotropic Receptor Causes Thyroiditis and Allows Production of Monoclonal Antibodies Recognizing the Native Receptor」、The Journal of Immunology、1998年、第160巻、1458〜1465頁、による遺伝的免疫化技法を用いて、TSH-Rに対する多数の動物モノクローナル抗体が産生された。
【0073】
上述した相同アッセイによる試験において、グレーブス病血清から得られた標識アフィニティー精製ポリクローナル自己抗体と競合できたクローンは、試験された3000クローンのうち、7クローンのみであったことが判明した。このバイオアッセイにおいて、これら7クローンのモノクローナル抗体すべてがcAMP生産に対する刺激性を示し、したがって、これらはグレーブス病で生じる抗TSH-R自己抗体を模擬できるものである。これは、あきらかに非常に低い頻度であるにせよ、それらの結合挙動が天然の自己抗体に一致するモノクローナル抗体を、実際に産生でき、したがって、例えば、患者血清からアフィニティー精製によって取得可能な抗体の代わりに、単独で、またはその混合物として、またはアフィニティー精製自己抗体との混合物または組合せにおいて、グレーブス病を診断するための特異的結合試薬(競合物質/トレーサー;固相成分;二次競合物質)として使用できることを示す。
【0074】
図には以下のことを様々な図表の形態で示す。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】グレーブス病患者の血清から得られた自己抗体のアフィニティー精製において、洗浄(3×50ml PBSを用いた)およびそれに続く溶出(いずれの場合でも10mlクエン酸pH2.5を用いた)の際に得られた溶出プロフィルを示す図である。クエン酸で溶出された抗体画分は化学的に均質であった。
【図2】アクリジニウムエステルで直接標識または間接標識されたアフィニティー精製ポリクローナルヒト自己抗体を用いて、TSHR-Auto-Abを測定するための標準曲線を、同じスケールのシグナル強度(RLU)における、本出願人のLUMItest(登録商標)TRAKhuman(登録商標)の標準曲線と比較して示す図である。
【図3】アクリジニウムエステルで直接標識または間接標識されたアフィニティー精製ポリクローナルヒト自己抗体を用いて、結合比率(B/B0)に基づいて、TSHR-Auto-Abを測定するための標準曲線を、本出願人のLUMItest(登録商標)TRAKhuman(登録商標)の標準曲線と比較して示す図である。
【図4】本出願人のLUMItest(登録商標)TRAKhuman(登録商標)(左列)、および患者血清から得られた標識アフィニティー精製ポリクローナル自己抗体を用いた試験(TRAKcompetition)(右列)による、患者血清(対照血清40; グレーブス病患者の血清40)の測定結果を示す図である。シグナル強度の増大によって、より大きなスケールの広がりがあること、また、したがって、より大きな識別を有する測定であったことが明らかである。
【図5】22℃で保存されている125I-bTSH、およびアクリジニウムエステルで標識されたアフィニティー精製ポリクローナル自己抗体に対するTSHR試料の結合力の変化を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グレーブス病患者の血清から得られた抗TSH受容体アフィニティー精製ポリクローナルヒト自己抗体(TSHR-Auto-Ab)、および/または、機能的なヒトTSH受容体の結合部位でこれらと競合する動物抗体の使用であって、
グレーブス病に関して検査されるべき患者の生物体液試料中にある抗TSH受容体自己抗体(TSHR-Auto-Ab)を臨床的に同定する免疫学的アッセイ方法における特異的結合試薬としての使用。
【請求項2】
前記抗TSH受容体アフィニティー精製ポリクローナルヒト自己抗体(TSHR-Auto-Ab)が、生化学的に均質な状態にまで精製され、少なくとも1IU/mgのタンパク質(ヒト免疫グロブリン)比活性を有する、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記抗TSH受容体アフィニティー精製ポリクローナルヒト自己抗体(TSHR-Auto-Ab)が、アフィニティークロマトグラフィーによる精製で得られ、前記精製中に、グレーブス病患者の血清プールから得られた自己抗体が、機能的なヒト組換えTSH受容体を結合した親和性物質に結合され、タンパク質を含まなくなるまで洗浄され、その後、前記親和性物質から溶出される、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
ヒトまたは動物のTSH受容体、またはそのような受容体の個々のセグメントに対する動物モノクローナル抗体を、グレーブス病患者の血清から得られた、標識された抗TSH受容体アフィニティー精製ポリクローナルヒト自己抗体(TSHR-Auto-Ab)と、ヒトTSH受容体の結合部位で競合させ、
単独で、または、競合する他の抗体との混合物中で、そのような競合を示すモノクローナル抗体を、生物体液の試料中にある抗TSH受容体自己抗体(TSHR-Auto-Ab)を臨床的に同定する免疫学的アッセイ方法における特異的結合試薬として用いることによって、
前記グレーブス病患者の血清から得られた抗TSH受容体アフィニティー精製ポリクローナルヒト自己抗体(TSHR-Auto-Ab)と競合する前記動物抗体が選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
前記グレーブス病患者の血清から得られた抗TSH受容体アフィニティー精製ポリクローナルヒト自己抗体(TSHR-Auto-Ab)、および/または、前者と競合する前記動物抗体が、直接標識または間接標識された形態で、患者試料中の、測定されるべき抗ヒトTSH受容体自己抗体に対する競合物質として、免疫学的競合アッセイ方法で用いられる、請求項1から4のいずれかに記載の使用。
【請求項6】
前記免疫学的アッセイ方法が競合的方法であり、
前記競合的方法で、固相に結合した形態、または可溶化された形態にある機能的な組換えヒトTSH受容体試料が、測定されるべき自己抗体、および、前記グレーブス病患者の血清から得られた競合物質として使用される抗TSH受容体アフィニティー精製ポリクローナルヒト自己抗体(TSHR-Auto-Ab)、および/またはこれらと競合する前記動物抗体の特異的結合パートナーとして用いられる、
請求項1から5のいずれかに記載の使用。
【請求項7】
前記グレーブス病患者の血清から得られた抗TSH受容体アフィニティー精製ポリクローナルヒト自己抗体(TSHR-Auto-Ab)、および/または、機能的なヒトTSH受容体の結合部位でこれらと競合する前記動物抗体が、固相に結合した形態で用いられ、直接標識または間接標識された形態の可溶化された機能的なヒト組換えTSH受容体が、特異的結合パートナーとして用いられる、請求項1から4のいずれかに記載の使用。
【請求項8】
前記グレーブス病患者の血清からの抗TSH受容体アフィニティー精製ポリクローナルヒト自己抗体(TSHR-Auto-Ab)、および/または、機能的なヒトTSH受容体の結合部位でこれらと競合する前記動物抗体が、ラジオ同位元素、化学発光標識、または蛍光標識で標識された形態で用いられるか、または同様に標識された動物抗ヒトIgGの補助のもとに用いられることを特徴とする、請求項5に記載の使用。
【請求項9】
患者血清中にある抗TSH受容体自己抗体を免疫学的に測定する臨床診断用試薬キットであって、
通例の構成物、詳細には、希釈および/または緩衝溶液、標準物質、ゼロ標準物質、任意選択で対照血清などに加えて、
2つの追加構成物として、可溶化されているか、または固相に結合されているヒトTSH受容体と、グレーブス病患者の血清から得られた抗TSH受容体アフィニティー精製ポリクローナルヒト自己抗体(TSHR-Auto-Ab)、および/または、機能的なヒトTSH受容体の結合部位でこれらと競合する動物抗体の標識された試料とを含む試薬キット。
【請求項10】
機能的なヒトTSH受容体の結合部位で、グレーブス病患者の血清から得られた自己抗体と競合するモノクローナル動物抗体を選択する方法であって、
TSH受容体に対する抗体を発現するハイブリドーマの培養上清を、グレーブス病患者の血清から得られた、標識された抗TSH受容体アフィニティー精製ポリクローナルヒト自己抗体(TSHR-Auto-Ab)と、機能的なヒトTSH受容体の結合部位で競合させ、
望ましい競合特性を有するモノクローナル抗体を、標識された自己抗体の結合低下に基づいて認識および選択する方法。
【請求項11】
グレーブス病患者の血清から得られた抗TSH受容体アフィニティー精製ポリクローナルヒト自己抗体(TSHR-Auto-Ab)であって、生化学的に均質な状態にまで精製され、標識された形態で、少なくとも1IU/mgタンパク質(ヒト免疫グロブリン)の比活性を有する抗体。
【請求項12】
グレーブス病患者の血清から得られた抗TSH受容体アフィニティー精製ポリクローナルヒト自己抗体(TSHR-Auto-Ab)と、機能的なヒトTSH受容体の結合部位で競合し、標識された形態にある、選択された動物抗体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−519754(P2006−519754A)
【公表日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−554304(P2004−554304)
【出願日】平成15年10月31日(2003.10.31)
【国際出願番号】PCT/EP2003/012129
【国際公開番号】WO2004/048415
【国際公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【出願人】(501154389)ベー・エル・アー・ハー・エム・エス・アクティエンゲゼルシャフト (29)
【Fターム(参考)】