説明

アポリポ蛋白A−1の精製方法

コーンエタノール分離法により得られた血漿因子(IV)を1〜8M尿素と混合し、因子(IV)前処理溶液を作り、第1陰イオンクロマトグラフィカラムへ流入し、その後1〜8M尿素溶液で溶離してアポA-1蛋白溶液を生成する。このアポA-1蛋白溶液を第2陰イオンクロマトグラフィカラムに流入し、0〜1M尿素溶液で溶離して純アポA-1蛋白を得る工程からなるアポリポ蛋白A-1精製の方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蛋白精製、特にアポA-1の精製に関する。
【背景技術】
【0002】
高比重リポ蛋白(HDL)は血液中の重要なリポ蛋白である。コレステロール逆転送系(RCT)と呼ばれるプロセスに関与し、これを介して組織細胞内のコレステロールは肝臓に輸送され無害な物質に代謝されることで、動脈硬化症(AS)の発症や進行を防いでいる。アポリポ蛋白A-1(アポA-1)は高比重リポ蛋白(HDL)中の主要となるアポリポ蛋白である。アポA-1は、血中HDLの生理機能に密接に関与しており、またHDLの抗動脈硬化機能の主要な担い手である。更に、近年の研究結果によれば、アポA-1欠損は動脈硬化の進行や炎症の増悪を引き起こす可能性がある。また、アポA-1は低比重リポ蛋白(LDL)を減少させ、プラークを除去する。更に、最近の研究結果によれば、アポA-1は薬に抗炎症効果や肝標的機能を持たす上で有望である。
【0003】
通常、超高速遠心分離、有機溶媒沈殿や高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)などの方法がアポA-1を精製するのに用いられる。しかし、これらの方法には低収益、高コスト、不安定さや生産性が非常に少ないなどの特有の欠陥がある。アポA-1を商業生産するには、これらの方法は適さない。
【0004】
一方で、血漿分離後に出来る因子の一つである血漿因子(IV)は市場利用するには有効な製品が精製されないため、常に廃棄されている。本発明は、大規模な生産に適しており、また血漿因子(IV)より高純度のアポA-1を作るものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明によれば、尿素はイオン交換クロマトグラフィでのアポA-1の動きに大きな影響を及ぼすことが分かった。アポA-1が尿素に結合していない時は、陰イオン交換カラムに非常に容易に吸収され、カラムから溶出することは比較的難しい。しかし、アポA-1が尿素に結合している場合は、陰イオン交換カラムから溶出することは非常に簡単である。それゆえ、本発明は2つの異なる溶離プロファイルを使いながら2本の交換カラムによりアポA-1を精製する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はアポリポ蛋白A-1を精製する方法で、次のステップからなる。a)(コーンエタノール分離方法により作られた)血漿因子(IV)を1〜8Mの尿素液と混合し、因子(IV)前処理溶液を作る。b)ステップa)で作られた前処理溶液を第1陰イオンクロマトグラフィーカラムに流入し、アポA-1蛋白を得るために1〜8M尿素液で溶離する。c) ステップb)で作られたアポA-1蛋白溶液を第2陰イオンクロマトグラフィーカラムに流入し、純アポA-1蛋白を得るために0〜1M尿素溶液で溶離する。
【発明の効果】
【0007】
この方法は高い生産性、低コスト及び工業的生産に適するなどの利点を有する。更に、この方法は血漿因子(IV)を未加工材料として用いるため、血漿成分を完全使用することが出来る。
本発明で作られる純アポA-1は動脈硬化治療、抗炎症治療、抗毒素治療、肝標的薬剤などに適応する上で有望である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】血漿因子(IV)からアポ蛋白A-1を精製する工程を示したフローチャートである。
【図2】第1実施例の第1イオン交換クロマトグラフィの溶離工程を示している。
【図3】第1実施例の第1イオン交換クロマトグラフィで採られたサンプルのSDS-PAGE電気泳動の結果を示している。
【図4】第1実施例の第2イオン交換クロマトグラフィで採られたサンプルのSDS-PAGE電気泳動の結果を示している。
【図5】第4実施例で採られたサンプルのSDS-PAGE電気泳動の結果を示している。
【図6】第2実施例で採られたサンプルのSDS-PAGE電気泳動の結果を示している。
【図7】第3実施例で採られたサンプルのSDS-PAGE電気泳動の結果を示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明による具体例の工程は図1に示されており、図1は血漿因子(IV)からアポA-1を製造する工程を示したフローチャートである。
【0010】
(1)血漿因子(IV)の前処理
該因子(IV)はコーンエタノール分離方法(Cohn, E.J. ; Strong, L.E. ; Huges, W.L. 等、血清と血漿蛋白(IV)の調合と特性。生物組織と液体を蛋白因子及びリポ蛋白成分に分離するシステム。Amer
Chem Soc. 1964年 68:459〜475)により得る。因子(IV)は緩衝液で溶解し、ある一定量の尿素を溶液に加えて完全に混合する。この工程で、アポA-1が尿素に結合するが、この結合は可逆的である。加える尿素の濃度は1〜8M、好ましくは3〜7M、更に好ましくは5〜6Mである。因子(IV)と尿素の質量比は1:30〜300、好ましくは1:90〜240、更に好ましくは1:150〜210である。
【0011】
この分野で通常使用される緩衝液、即ち、トリス緩衝液、リン酸緩衝液又はHEPES緩衝液が選択可能であるが、トリス緩衝液が望ましい。緩衝液のpHは7.2〜8.5であるが、7.5〜8が好ましく、7.8が更に良い。
【0012】
別の実施例では、因子(IV)は低温(0〜4℃)で溶解される。
【0013】
別の実施例では、前処理溶液は沈殿物を除去するために遠心分離され、その後濾過される。遠心分離回転数は6,000〜10,000rpmであるが、8,000rpmが好ましい。また、濾過膜の孔径は0.2〜0.6μmであるが、0.45μmが好ましい。
【0014】
(2)第1DEAE陰イオン交換クロマトグラフィ
工程(1)で作られた溶液をDEAE(ジエチルアミノエタノール)陰イオン交換カラムに流入し、アポA-1を含有する溶液中の蛋白をカラム上に吸着させる。具体的には、工程(1)で作られたアポA-1溶液を水で1〜10倍、好ましくは3〜7倍に希釈する。希釈後、溶液を陰イオン交換カラムに0.5〜1.5ml/min、好ましくは0.8〜1.2ml/minの流速で流入する。
【0015】
その後、蛋白は2つの溶離ステップを経て溶離される。第1ステップでは、カラムの溶離に低電導度の緩衝液が用いられる。アポA-1はこの時点ではカラムに弱く吸着しており、アポA-1を主に含有する蛋白が最初に溶離される。第2ステップでは、カラムを溶離するのに高電導度の緩衝液が用いられ、主に不純物を含有する蛋白が溶離される。
【0016】
アポA-1を溶離する溶離剤は1〜8Mの尿素、好ましくは3〜7M、更に好ましくは5〜6Mの尿素を含有している。電導度は1〜4ms/cm、好ましくは2〜3.8ms/cm、更に好ましくは2.5〜3.6ms/cmである。溶離剤中に塩を含んでもよいが、NaCl、KCl、MgCl2、CaCl2に限定されるものではない。NaClが好ましい。
【0017】
不純物を溶離する溶離剤は0〜1Mの尿素を含有するが、0Mが好ましい。電導度は4.5〜100ms/cmである。溶離剤中に塩を含んでもよいが、NaCl、KCl、MgCl2、CaCl2に限定されるものではない。NaClが好ましい。
【0018】
この分野で通常使用される緩衝液が用いられる。即ち、トリス緩衝液、リン酸緩衝液又はHEPES緩衝液、好ましくはトリス緩衝液を用いる。緩衝液のpHは7.2〜8.5、好ましくは7.5〜8、更に好ましくは7.8である。
【0019】
ステップ1で作られた因子前処理溶液のカラムへの流速は0.5〜1.5ml/min、好ましくは0.8〜1.2ml/minである。因子(IV)とカラムの体積比率は1:5〜50、好ましくは1:15〜40、更に好ましくは1:20〜30である。
【0020】
(3)第2DEAE陰イオン交換クロマトグラフィ
アポA-1、尿素及び僅かな不純物を含有する、第1DEAE陰イオン交換クロマトグラフィ工程で得られたアポA-1溶液を、水で希釈し低電導にして、第2DEAEカラムへ流入する。
【0021】
蛋白は第2DEAEカラムに吸着し、尿素は溶液中に残留し流出物として除去する。そして、蛋白は二つの溶離工程を経て溶離される。第1工程では、比較的低電導度の緩衝液がカラムを溶離するのに使用される。アポA-1はカラムに強力に吸着し、不純物はカラムから溶離する。第2工程では、高電導度の緩衝液がカラムを溶離するのに使用され、高純度のアポA-1が溶離する。
【0022】
不純物を溶離する溶離剤の電導度は1〜20ms/cm、好ましくは7〜15ms/cm、更に好ましくは9〜12ms/cmである。0〜1Mの尿素が溶離剤に存在してもよいが、0M濃度が好ましい。溶離剤中に塩を含んでもよいが、NaCl、KCl、MgCl2、CaCl2に限定されるものではない。NaClが好ましい。
【0023】
アポA-1を溶離する溶離剤の電導度は50〜100ms/cm、好ましくは70〜95ms/cm、更に好ましくは80〜90ms/cmである。0〜1Mの尿素が溶離剤中に存在してもよいが、0M濃度が好ましい。溶離剤中に塩を含んでもよいが、NaCl、KCl、MgCl2、CaCl2に限定されるものではない。NaClが好ましい。
【0024】
別の実施例では、アポA-1と僅かな量の不純物が第2DEAEカラムに吸着した後に、3ms/cm/minの電導勾配を適用し蛋白を溶離する。溶離剤の電導度を1ms/cmから100ms/cmに上昇させる。純アポA-1は電導度が30ms/cmと60ms/cmの時に溶離し、収集される。
【0025】
この分野で通常使用される緩衝液が用いられる。即ち、トリス緩衝液、リン酸緩衝液又はHEPES緩衝液、好ましくはトリス緩衝液を用いる。緩衝液のpHは7.2〜8.5、好ましくは7.5〜8、更に好ましくは7.8である。
【0026】
本発明においては、後処理法も実施され、ステップ(3)で得られた純アポA-1溶液を処理する。この方法は、限外濾過工程、安定剤付加工程、凍結乾燥工程を含む。後処理工程を経て、最後に凍結乾燥されたアポA-1を得る。
【0027】
この分野でよく適用される限外濾過が、アポA-1溶液の調整やその溶液を最適pHや蛋白濃度に調整するのに用いられる。限外濾過には、分子量カットオフ値5,000のミリポアPES限外濾過膜が使用され、作業温度は4℃、作業気圧は0.3Mpa以下とする。
【0028】
加える安定化剤はこの分野でよく使用されているものであり、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、グリコール酸セルロースナトリウム、ショ糖、ソルビトールなどであるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
この分野でよく用いられる凍結乾燥法が使用される。製品は−36℃以下で3〜4時間冷凍され、その後7〜9Paの真空下で凍結乾燥される。冷トラップの温度は約−55℃で、その次に、約15時間、棚の温度を40℃とする。
【0030】
本発明で用いられるクロマトグラフィカラムはこの分野でよく使用されるものの中から選らんでもよく、クロマトグラフィ媒体はQAE(第4級アミン)又はDEAE陰イオン交換クロマトグラフィ媒体でもよいが、好ましくはDEAEである。
【0031】
本発明は更に下記実施例でその詳細を述べる。これらの実施例は本発明を説明するために用いるのであって、発明の範囲を限定するものではない。下記実施例中の実験において、条件が特定されていない場合は、一般的なものか、又は製造者により考えられることを意味する。別段の特定がなければ、下記比率は質量比である。
【0032】
別段の定義がなければ、専門用語又は技術用語の定義はこの分野で通常の能力を有する当業者に一般的に理解されているものである。
【実施例】
【0033】
(実施例1) アポA-1の精製
初期材料は、0.2gの血漿因子(IV)、5mlのDEAE陰イオン交換カラム(GE ヘルスケア社製)2本、精製及び電導度測定装置、詳しくはAKTA エクスプローラ 100(GE ヘルスケア社製)である。
【0034】
(1)血漿因子(IV)の前処理
0.2gの因子(IV)を100mlのトリス緩衝液(pH7.8、4℃)に溶解する。尿素を加え、最終濃度が6mol/Lとなる溶液を作り、完全に混和する。溶液を8,000rpmで遠心分離して沈殿物を取り除き、0.45μmのフィルターで濾過する。
【0035】
(2)第1DEAE陰イオン交換クロマトグラフィ
第1DEAEカラムを6mol/Lの尿素を含有するトリス緩衝液(pH7.8)で平衡化する。ステップ(1)で作った溶液をDEAEカラムへ1ml/minの流速で流入する。6mol/Lの尿素濃度のトリス緩衝液(pH7.8、電導度3.5ms/cm)を用いカラムを溶離する。アポA-1が溶離される。溶離量は20mlである。4つの異なったトリス緩衝液(pH7.8で、夫々の電導度が4.3ms/cm、5.4ms/cm、6.7ms/cm、59.2ms/cmのもの)がカラム溶離に用いられ、不純物が溶離される。溶離工程とSDS-PAGE電気泳動の結果を図2、図3に夫々示す。図2のx座標はクロマトグラフィ工程の溶離量を示し、y座標は溶離における蛋白濃度を示す。符号1〜9はサンプルが採られた箇所を示す。図3で示される通り、サンプルはSDS-PAGE電気泳動で測定される。矢印はアポA-1の位置を示している。
【0036】
(3)第2DEAE陰イオンクロマトグラフィ
アポA-1、尿素、及び僅かな不純物を含有するステップ(2)の溶離されたアポA−1(pH7.8、電導度3.5ms/cm)は水で5倍に希釈され、第2DEAEカラムへ10ml/minの流速で流入される。アポA-1と僅かな不純物はカラムへ吸着され、尿素は溶液中に残留し、流出物として除去される。
【0037】
尿素を含まないトリス緩衝液(pH7.8 、電導度11.7ms/cm)を用いカラムを溶離し、不純物をカラムから溶離する。その後、尿素を含まないトリス緩衝液(pH7.8、電導度85.2ms/cm)を用いカラムを溶離し、アポA-1を溶離する。
【0038】
SDS-PAGE電気泳動の結果は、この工程で純アポA-1が得られていることを示す(図4)。サンプル1は流入処理中のカラム流出液中の蛋白である。サンプル2は蛋白マークである。符号3〜5は第1溶離処理中に収集されたサンプルを示し、主に不純物からなる。符号6〜10は第2溶離処理中に収集されたサンプルを示し、主にアポA-1からなる。サンプル6、7は5倍に希釈され、サンプル8は10倍に希釈される。矢印はアポA-1蛋白の位置を示している。
【0039】
(実施例2) アポA-1の精製
0.2gの血漿因子(IV)及び装置は実施例1と同様である。
【0040】
(1)血漿因子(IV)の前処理
0.2gの因子(IV)を100mlのトリス緩衝液(pH7.8、4℃)に溶解する。尿素を加え、最終濃度が6mol/Lとなる溶液を作り、溶液を完全に混合する。溶液を8,000rpmで遠心分離して沈殿物を取り除き、0.45μmのフィルターで濾過する。
【0041】
(2)第1DEAE陰イオン交換クロマトグラフィ
第1DEAEカラムを1mol/Lの尿素を含有するトリス緩衝液(pH7.8)で平衡化する。ステップ(1)で作った溶液をDEAEカラムへ1ml/minの流速で流入する。1mol/Lの尿素濃度のトリス緩衝液(pH7.8、電導度3.5ms/cm)を用いてカラムを溶離する。アポA-1が溶離され、溶離量は20mlである。トリス緩衝液(pH7.8、電導度59.2ms/cm)を用いてカラムを溶離し、不純物を溶離する。
【0042】
(3)第2DEAE陰イオン交換クロマトグラフィ
手順は実施例1と同様である。精製結果は図5に示す。サンプル1は事前処理後の血漿因子(IV)の上澄み液である。サンプル4から8は精製処理で収集されたアポA-1である。サンプル10は精製処理中に収集された不純物である。矢印はアポA-1蛋白の位置を示す。
【0043】
(実施例3) アポA-1の精製
0.2gの血漿因子(IV)及び装置は実施例1と同様である。
【0044】
(1)血漿因子(IV)の前処理
0.2gの因子(IV)を100mlのトリス緩衝液(pH7.8、4℃)に溶解する。尿素を加え、最終濃度が6mol/Lとなる溶液を作り、溶液を完全に混合する。溶液を8,000rpmで遠心分離して沈殿物を取り除き、0.45μmのフィルターで濾過する。
【0045】
(2)第1DEAE陰イオン交換クロマトグラフィ
第1DEAEカラムを8mol/Lの尿素を含有するトリス緩衝液(pH7.8)で平衡化する。ステップ(1)で作った溶液をDEAEカラムへ1ml/minの流速で流入する。8mol/Lの尿素濃度のトリス緩衝液(pH7.8、電導度3.5ms/cm)を用いカラムを溶離する。アポA-1が溶離され、溶離量は20mlである。トリス緩衝液(pH7.8、電導度59.2ms/cm)を用いカラムを溶離し、不純物を溶離する。
【0046】
(3)第2DEAE陰イオン交換クロマトグラフィ
手順は実施例1と同様である。精製結果は図7に示す。
【0047】
(実施例4) アポA-1のパイロット規模精製
初期材料は、60gの血漿因子(IV)、1,500mlイオン交換カラム(上海浙江省クロマトグラフィ機器コーポレーション製)2本、陰イオン交換媒体、詳しくはDEAEセファロースFF(GE Healthcare社製)、ポンプ及びUV測定器(上海浙江省クロマトグラフィ機器コーポレーション製)、そして電導度測定器、詳しくはAKTA エクスプローラ100(GE Healthcare社製)である。
【0048】
(1)血漿因子(IV)の事前処理
60gの因子(IV)を100mlのトリス緩衝液(pH7.8、4℃)に溶解する。尿素を加え、最終濃度が6mol/Lとなる溶液を作り、溶液を完全に混合する。溶液を8,000rpmで遠心分離して沈殿物を取り除き、0.45μmのフィルターで濾過する。
【0049】
(2)第1DEAE陰イオン交換クロマトグラフィ
第1DEAEカラムを6mol/Lの尿素を含有するトリス緩衝液(pH7.8)で平衡化する。ステップ(1)で作った溶液をDEAEカラムへ10ml/minの流速で流入する。6mol/Lの尿素濃度のトリス緩衝液(pH7.8、電導度3.7ms/cm)を用いカラムを溶離する。アポA-1が溶離され、溶離量は10Lである。トリス緩衝液(pH7.8、電導度80.3ms/cm)を用いてカラムを溶離し、不純物を溶離する。
【0050】
(3)第2DEAE陰イオンクロマトグラフィ
アポA-1、尿素、及び僅かな不純物を含有するステップ(2)で溶離したアポA−1(pH7.8、電導度3.7ms/cm)を水で5倍に希釈し、第2DEAEカラムへ10ml/minの流速で流入する。アポA-1及び僅かな不純物はカラムに吸着され、尿素は溶液中に残留し、流出物として除去される。
【0051】
尿素を含まないトリス緩衝液(pH7.8 、電導度12.2ms/cm)を用いカラムを溶離し、不純物をカラムから溶離する。その後、尿素を含まないトリス緩衝液(pH7.8、電導度50.4ms/cm)を用いカラムを溶離し、アポA-1を溶離させる。
【0052】
SDS-PAGE電気泳動の結果は、図5に示されている。この結果から、純アポA-1がパイロット規模の処理でも得られることがわかる。
【0053】
(実施例5) アポA-1の蛋白定量
実施例1で精製したアポA-1蛋白を(有)上海サンバイオテック社製のアポA-1免疫比濁測定キットで定量した。
【0054】
10μlの精製蛋白を1mlのアポA-1抗血清に加えた後、37℃で15分間培養する。培養後、溶液を505nmの吸光度で検出する。結果は、この蛋白がアポA-1であることを示している。
【0055】
(実施例6) アポA-1の蛋白定量
実施例5で記載の方法を用いて、実施例2及び実施例3でそれぞれ作ったアポA-1蛋白と実施例4で作ったアポA-1蛋白を(有)上海サンバイオテック社製のアポA-1免疫比濁測定キットで定量した。
【0056】
同様な結果が得られている。
【0057】
更に、この技術分野で能力を有する者が、ここで記載された具体案を本発明の精神と範囲を逸脱しない範囲で変更することが考えられる。従って、先の記載は単に説明であり、本発明の精神と範囲は次のクレームにより規定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 血漿因子(IV)を1〜8M尿素と混合し、因子(IV)前処理溶液を生成すること、
b) ステップa)により得た前処理溶液を、第1陰イオンクロマトグラフィカラムに流入し、電導度1〜4ms/cmの1〜8M尿素からなる緩衝液(I)で溶離し、アポA-1蛋白を主に含有する溶離剤(I)を得ること、
c) 溶離剤(I)を第2陰イオンクロマトグラフィカラムに流入し、先ず電導度1〜15ms/cmの緩衝液(II)で溶離し、次に電導度30〜100ms/cmの緩衝液(III)で溶離し、純アポA-1蛋白を得ることからなるアポリポ蛋白A-1精製の方法。
【請求項2】
血漿因子(IV)はコーンエタノール分離法により得られることを特徴とした請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項3】
緩衝液(II)は0〜1M尿素を含有することを特徴とした請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項4】
緩衝液(III)は0〜1M尿素を含有することを特徴とした請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項5】
ステップa)とb)の尿素濃度は3〜8Mであることを特徴とした請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項6】
ステップa)とb)の尿素濃度は5〜7Mであることを特徴とした請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項7】
緩衝液(I)の電導度は2〜4ms/cmで、緩衝液(II)の電導度は7〜15ms/cmで、緩衝液(III)の電導度は70〜95ms/cmであることを特徴とした請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項8】
緩衝液(I)の電導度は2.5〜3.6ms/cmで、緩衝液(II)の電導度は9〜12ms/cmで、緩衝液(III)の電導度は80〜90ms/cmであることを特徴とした請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項9】
各陰イオン交換クロマトグラフィカラムは、強陰イオン交換クロマトグラフィカラムと弱陰イオン交換クロマトグラフィカラムのどちらかであることを特徴とした請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項10】
各陰イオン交換クロマトグラフィカラムは、QAEイオン交換カラム及びDEAEイオン交換カラムのどちらかであることを特徴とした請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項11】
ステップ1の因子(IV)と尿素の質量比は1:30〜300であることを特徴とした請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項12】
ステップ1の因子(IV)と尿素の質量比は1:90〜240であることを特徴とした請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項13】
ステップ1の因子(IV)と尿素の質量比は1:150〜210であることを特徴とした請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項14】
ステップb)とc)の緩衝液(I)、(II)、(III)は、NaCl、KCl、MgCl2、CaCl2からなる群の少なくとも1つの塩を含有することを特徴とした請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項15】
ステップb)とc)の緩衝液(I)、(II)、(III)はNaClを含有することを特徴とした請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項16】
ステップb)とステップc)の間で、因子(IV)前処理溶液を遠心分離して沈殿物を除去し、その後濾過することを特徴とした請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項17】
因子(IV)前処理溶液は6,000〜10,000rpmの速度で遠心分離され、孔径0.2〜0.6μm.の濾過膜で濾過されることを特徴とした請求の範囲第16項記載の方法。
【請求項18】
ステップb)、ステップc)間で、ほとんどの不純物を電導度4.5〜70s/cmの緩衝液(IV)で溶離することを特徴とした請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項19】
緩衝液(IV)は0〜1M尿素を含有することを特徴とした請求の範囲第18項記載の方法。
【請求項20】
緩衝液(IV)は、NaCl、KCl、MgCl2、CaCl2からなる群の少なくとも1つの塩を含有することを特徴とした請求の範囲第18項記載の方法。
【請求項21】
緩衝液(IV)はNaClを含有することを特徴とした請求の範囲第18項記載の方法。
【請求項22】
緩衝液(I)、(II)、(III)のpHは7.2〜8.5であることを特徴とした請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項23】
緩衝液(I)、(II)、(III)はトリス緩衝液からなることを特徴とした請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項24】
緩衝液(I)、(II)、(III)のpHは7.5〜8であることを特徴とした請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項25】
緩衝液(I)、(II)、(III)のpHは7.8であることを特徴とした請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項26】
ステップc)後に、純アポA-1蛋白の限外濾過、純アポA-1蛋白へ安定剤の付加、又は純アポA-1蛋白の凍結乾燥のうち少なくとも一つの処理を行うことを特徴とした請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項27】
請求の範囲第1項記載の方法で得られるアポリポ蛋白A-1。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−513480(P2010−513480A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−542756(P2009−542756)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【国際出願番号】PCT/US2007/020258
【国際公開番号】WO2008/088403
【国際公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(509174004)
【Fターム(参考)】