説明

アミド系化合物、ポリオレフィン樹脂組成物及び成形体

開示されているのは、一般式(1)


[式中、aは2〜6の整数を表す。Rは、脂肪族ポリカルボン酸残基である。Rは、トランス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基又はシス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基を表す。]で表されるアミド系化合物の混合物であって、トランス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基の含量が、混合物中の全2−アルキルシクロヘキシルアミン残基の70モル%以上である混合物、又は該混合物を含むポリオレフィン樹脂組成物及び該組成物を成形して得られる成形体等である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、アミド系化合物、その製造法、該アミド系化合物を含有するポリオレフィン樹脂用造核剤、該造核剤を含むポリオレフィン樹脂組成物及びその成形体に関する。
【背景技術】
ポリオレフィン樹脂は、成形性、機械特性、電気特性等が優れているために、フイルム成形、シート成形、ブロー成形、射出成形等の素材として、様々な分野に応用されている。
しかし、当該樹脂は、一般的には優れた物性を有しているものの、透明性、結晶性及び剛性が低いという問題点があり、ある種の用途によっては、その樹脂本来の優れた性能が充分に引き出せないために、その適用が制限されたものとなっているのが現状である。
従来より、ポリオレフィン樹脂の透明性、結晶性及び剛性を改善するために、アミド系化合物を活用する技術が提案されている(日本特許第3401868号公報,特開平7−242610号公報,WO00/52089号公報)。しかしながら、これらアミド系化合物は、ポリオレフィン樹脂に対する透明性や機械的強度(特に、剛性)の付与効果は良好であるが、更に優れた物性をポリオレフィン樹脂に与え得る造核剤の開発が望まれている。
特に、特開平7−242610号公報に記載のアミド系造核剤は、優れた透明性、結晶性及び剛性をポリオレフィン樹脂に付与するものであるが、当該アミド系造核剤はそれ自体の熱安定性、耐アルカリ性の点で必ずしも満足し得るものではなく、更に、熱安定性、耐アルカリ性の向上が求められている。
【発明の開示】
本発明は、上記問題点を解消し、透明性、結晶性(耐熱性)及び剛性がより向上した成形体を製造できると共に、それ自体の熱安定性及び耐アルカリ性も向上したアミド系化合物、その製造法、該アミド系化合物を必須成分として含むポリオレフィン樹脂用造核剤、該造核剤を含むポリオレフィン樹脂組成物及びその成形体を提供することを目的とする。
本発明者らは、かかる現状に鑑み、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、次の知見を得た。
(1)前記特開平7−242610号公報に記載のアミド系造核剤については、原料として市販の2−メチルシクロヘキシルアミンを使用したものである。これまでに試薬として又は工業製品として市販されている2−メチルシクロヘキシルアミンは、トランス体:シス体=約68:32(GLC(気液クロマトグラフィー)組成%)の混合物であり、これ以外の組成のものは販売されていない。かかる原料を使用して得られる前記特開平7−242610号公報に記載のアミド系造核剤、例えば、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(2−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(2−メチルシクロヘキシルアミド)等においても、アミド部分がトランス配置とシス配置との種々の混合体の形態となっている構造を有し、その結果、アミド部分のトランス配置部分:シス配置部分の比率が異なる2種以上の化合物の混合物となっている。
(2)このアミド化合物の混合物中のトランス配置部分:シス配置部分の割合は、原料2−アルキルシクロヘキシルアミン中のトランス体:シス体の比と、当該原料をアミド化反応に供した後に残留した未反応2−アルキルシクロヘキシルアミン中のトランス体:シス体比を比較すること等の一連の研究から、原料の2−アルキルシクロヘキシルアミンのトランス体:シス体の比(GLC組成比)と実質上同一割合となっていることが明らかとなった。従って、アミド系化合物の混合物中のトランス配置部分:シス配置部分の比率は、原料アミンのトランス体:シス体の比率によりコントロールできる。
(3)また、アミド化合物の混合物中のトランス配置部分の比率は、1)FT−IR法(Fourier Transform Infrared Spectroscopy)で測定される、対応するオールトランス化合物のトランス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基のN−H伸縮振動吸収シグナルが現れる波数における吸光度(Atrans)と、2)FT−IR法で測定される、対応するオールシス化合物のシス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基のN−H伸縮振動吸収シグナルが現れる波数における吸光度(Acis)を用いて定義される比(即ち、後述のCtrans)と正比例関係にあることも見出された。よって、アミド化合物の混合物のFT−IRスペクトルを測定することにより、アミド化合物の混合物中のトランス配置部分:シス配置部分の比率を確認することもできる。
(4)本発明者らは、アミド系化合物の混合物中の上記トランス配置部分とシス配置部分との割合を変化させて検討したところ、トランス配置部分の比率(含量)が多いアミド系化合物の混合物又はオールトランスのアミド系化合物を含む造核剤を用いると、該造核剤を含むポリオレフィン樹脂組成物の結晶化温度が高くなり、また、該ポリオレフィン樹脂組成物から得られるポリオレフィン樹脂成形体の剛性が向上することを見出した。
(5)また、アミド系化合物の混合物中のトランス配置部分の比率(含量)が多い造核剤は、前記特開平7−242610号公報に記載の造核剤より融点が高く、熱安定性に優れ、更に耐アルカリ性にも優れていることも見出された。
本発明は、これら知見に基づき、更に検討を重ねて完成されたものであって、次の一般式(1)で表される化合物の二種以上の混合物、オールトランスの一般式(1)で表されるアミド系化合物、該混合物又はオールトランス化合物の製造法、該混合物又はオールトランス化合物を含有するポリオレフィン樹脂用造核剤、該混合物又はオールトランス化合物(又は該造核剤)を含むポリオレフィン樹脂組成物及びその成形体を提案するものである。
項1 一般式(1)

[式中、
aは、2〜6の整数を表す。
は、炭素数2〜30の飽和若しくは不飽和脂肪族ポリカルボン酸残基を表し、該脂肪族ポリカルボン酸残基の価数は、2〜6(aと同一の値)である。
2〜6個のR基は、同一又は異なって、それぞれ、一般式(a)

(式中、Rは炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表す。)で表されるトランス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基、又は、一般式(b)

(式中、Rは炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表す。)で表されるシス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基を表す。]
で表されるアミド系化合物の少なくとも2種の混合物であって、
上記一般式(a)で表されるトランス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基が、混合物中の全2−アルキルシクロヘキシルアミン残基の70モル%以上100モル%未満の割合で存在している混合物。
項2 上記一般式(a)で表されるトランス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基が、混合物中の全2−アルキルシクロヘキシルアミン残基の71.9モル%以上100モル%未満の割合で存在している項1に記載の混合物。
項3 Rが、炭素数1〜6の直鎖状又は分枝状のアルキル基である項1又は2に記載の混合物。
項4 Rが、メチル基である項1又は2に記載の混合物。
項5 Rが、1,2,3−プロパントリカルボン酸残基又は1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸残基である項1〜4のいずれかに記載の混合物。
項6 Rが1,2,3−プロパントリカルボン酸残基であって、下記数式(E)で定義されるトランス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基の吸光度の割合(Ctrans)が56.3%以上72.0%未満である項1〜4のいずれかに記載の混合物:

[式中、
Atransは、FT−IR法(Fourier Transform Infrared Spectroscopy)で測定される、対応するオールトランス化合物の上記一般式(a)で表されるトランス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基のN−H伸縮振動吸収のシグナルが現れる波数における吸光度を示し、
Acisは、FT−IR法で測定される、対応するオールシス化合物の上記一般式(b)で表されるシス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基のN−H伸縮振動吸収のシグナルが現れる波数における吸光度を示す。]。
本明細書及び請求の範囲において、「オールトランスのアミド系化合物」または「オールトランス化合物」という用語は、一般式(1)において全てのR基が同一であって、上記式(a)で表されるトランス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基を示すアミド系化合物を意味する。同様に、「オールシスのアミド系化合物」又は「オールシス化合物」という用語は、一般式(1)において全てのR基が同一であって、上記式(b)で表されるシス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基を示すアミド系化合物を意味する。
項7 Rが1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸残基であって、下記数式(E)で定義されるトランス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基の吸光度の割合(Ctrans)が58.8%以上71.5%未満である項1〜4のいずれかに記載の混合物:

[式中、
Atransは、FT−IR法で測定される、対応するオールトランス化合物の上記一般式(a)で表されるトランス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基のN−H伸縮振動吸収のシグナルが現れる波数における吸光度を示し、
Acisは、FT−IR法で測定される、対応するオールシス化合物の上記一般式(b)で定義されるシス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基のN−H伸縮振動吸収のシグナルが現れる波数における吸光度を示す。]。
項8 一般式(1)

[式中、
aは、2〜6の整数を表す。
は、炭素数2〜30の飽和若しくは不飽和脂肪族ポリカルボン酸残基を表し、該脂肪族ポリカルボン酸残基の価数は、2〜6(aと同一の値)である。
2〜6個のR基は、同一であって、一般式(a)

(式中、Rは、炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表す。)で表されるトランス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基を示す。]
で表されるアミド系化合物(即ち、オールトランスのアミド系化合物)。
項9 Rが炭素数1〜6の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表す項8に記載のアミド系化合物。
項10 Rがメチル基である項8に記載のアミド系化合物。
項11 Rが1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸残基又は1,2,3−プロパントリカルボン酸残基である項8〜10のいずれかに記載のアミド系化合物。
項12 Rが1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸残基であり、Rがメチル基である項8に記載のアミド系化合物。
項13 Rが1,2,3−プロパントリカルボン酸残基であり、Rがメチル基である項8に記載のアミド系化合物。
項14 項1〜7のいずれかに記載の混合物を含有するポリオレフィン樹脂用造核剤。
項15 項8〜13のいずれかに記載のアミド系化合物を含有するポリオレフィン樹脂用造核剤。
項16 ポリオレフィン樹脂及び項1〜7のいずれかに記載の混合物又は項8〜13に記載のアミド系化合物(或いは、項14又は15に記載のポリオレフィン樹脂用造核剤)を含有するポリオレフィン樹脂組成物。
項17 ポリオレフィン樹脂100重量部に対し、項1〜7のいずれかに記載の混合物又は項8〜13に記載のアミド系化合物を、(或いは、項14に記載の該混合物を含有するポリオレフィン樹脂用造核剤又は項15に記載の該アミド系化合物を含有するポリオレフィン樹脂用造核剤を、該混合物又は該アミド化合物換算で)、0.01〜10重量部含有する項16に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
項18 項16又は17に記載のポリオレフィン樹脂組成物を成形することにより得ることができる(又は得られた)ポリオレフィン樹脂成形体。
項19 一般式(1)

[式中、
aは、2〜6の整数を表す。
は、炭素数2〜30の飽和若しくは不飽和脂肪族ポリカルボン酸残基を表し、該脂肪族ポリカルボン酸残基の価数は、2〜6(aと同一の値)である。
2〜6個のR基は、同一又は異なって、それぞれ、一般式(a)

(式中、Rは炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表す。)で表されるトランス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基、又は、一般式(b)

(式中、Rは炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表す。)で表されるシス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基を表す。]
で表されるアミド系化合物の少なくとも2種以上の混合物であって、上記一般式(a)で表されるトランス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基が、混合物中の全2−アルキルシクロヘキシルアミン残基の70モル%以上100モル%未満の割合で存在している混合物の製造方法であって、
一般式(2)

[式中、Rは炭素数2〜30の飽和若しくは不飽和脂肪族ポリカルボン酸残基を表し、aは2〜6の整数を表す。]
で表されるポリカルボン酸又はその反応性誘導体と
(i) 一般式(3a)

[式中、Rは炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表す。]で表されるトランス−2−アルキルシクロヘキシルアミン及び
(ii) 一般式(3b)

[式中、Rは炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表す。]で表されるシス−2−アルキルシクロヘキシルアミンとを含み、ガスクロマトグラフィー(GLC)により測定した一般式(3a)で表されるトランス−2−アルキルシクロヘキシルアミン含量が70%以上100%未満であるアミン混合物
とをアミド化反応させることを包含する製造法。
項20 一般式(1)

[式中、
aは、2〜6の整数を表す。
は、炭素数2〜30の飽和若しくは不飽和脂肪族ポリカルボン酸残基を表し、該脂肪族ポリカルボン酸残基の価数は、2〜6(aと同一の値)である。
2〜6個のR基は、同一であって、一般式(a)

(式中、Rは、炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表す。)で表されるトランス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基を示す。]
で表されるアミド系化合物(即ち、オールトランスのアミド系化合物)の製造方法であって、
一般式(2)

[式中、Rは炭素数2〜30の飽和若しくは不飽和脂肪族ポリカルボン酸残基を表し、aは2〜6の整数を表す。]
で表されるポリカルボン酸又はその反応性誘導体と
一般式(3a)

[式中、Rは炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表す。]で表されるトランス−2−アルキルシクロヘキシルアミンとをアミド化反応させることを包含する製造法。
項21 項1〜7のいずれかに記載の混合物又は項8〜13に記載のアミド系化合物(或いは、項14又は15に記載のポリオレフィン樹脂用造核剤)をポリオレフィン樹脂に配合して樹脂組成物を得、該樹脂組成物を成形することからなるポリオレフィン樹脂成形体の剛性向上方法。
項22 ポリオレフィン樹脂成形体の剛性向上のための項1〜7のいずれかに記載の混合物又は項8〜13に記載のアミド系化合物の使用。
本発明によれば、ポリオレフィン樹脂用造核剤として有用なアミド系化合物の混合物又はオールトランスのアミド系化合物が提供される。当該アミド系化合物の混合物又はオールトランスのアミド系化合物をポリオレフィン樹脂に配合することにより、透明性、結晶性(耐熱性)及び剛性に優れたポリオレフィン樹脂成形体に成形加工できる樹脂組成物を得ることができる。
また、本発明のアミド系化合物の混合物又はオールトランスのアミド系化合物からなるポリオレフィン樹脂用造核剤は、熱安定性及び耐アルカリ性に優れている。
【図面の簡単な説明】
図1は、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(トランス−2−メチルシクロヘキシルアミド)のFT−IRチャートである。
図2は、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(トランス−2−メチルシクロヘキシルアミド)のFT−IRチャート(3100−3500cm−1)である。
図3は、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(シス−2−メチルシクロヘキシルアミド)のFT−IRチャート(3100−3500cm−1)である。
図4は、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(トランス−2−メチルシクロヘキシルアミド)と1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(シス−2−メチルシクロヘキシルアミド)との混合物(トランス:シスモル比=80:20)のFT−IRチャート(3100−3500cm−1)である。
発明の詳細な記述
アミド系化合物
本発明のポリオレフィン樹脂用造核剤として使用するのは、前記一般式(1)で表されるオールトランスのアミド系化合物であるか、又は、一般式(1)で表されるアミド系化合物の2種以上の混合物であって、2−アルキルシクロヘキシルアミン残基の立体異性構造におけるトランス構造(一般式(a)で表されるトランス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基)の総和とシス構造(一般式(b)で表されるシス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基)の総和の比率(トランス体の総和/シス体の総和)が70/30〜100/0の範囲にある混合物である。
既述のように、このアミド系化合物の混合物のトランス配置部分:シス配置部分の割合は、原料2−アルキルシクロヘキシルアミン中のトランス体:シス体の比と、当該原料をアミド化反応に供した後に残留した未反応2−アルキルシクロヘキシルアミン中のトランス体:シス体比を比較すること等の一連の研究から、原料の2−アルキルシクロヘキシルアミンのトランス体:シス体の比(GLC組成比)と実質上同一割合となっていることが明らかとなった。従って、アミド化合物中のトランス配置部分:シス配置部分の比率は、原料アミンのトランス体:シス体の比率によりコントロールできる。
本発明の一般式(1)で表されるアミド系化合物(2種以上の混合物又はオールトランス化合物)は、典型的には、次の態様を包含している。
(i)2〜6個のR基のうちの少なくとも一つが上記一般式(a)で表されるトランス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基(トランス配置部分)であり、残りが一般式(b)で表されるシス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基(シス配置部分)であるアミド化合物の2種以上の混合物であって、上記一般式(a)で表されるトランス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基が、当該混合物中の全2−アルキルシクロヘキシルアミン残基の70モル%以上100モル%未満の割合で存在している混合物、
(ii)2〜6個のR基の全てが上記一般式(a)で表されるトランス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基(トランス配置部分)であるアミド系化合物(即ち、オールトランス化合物)の少なくとも1種と、2〜6個のR基の全てが上記一般式(b)で表されるシス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基(シス配置部分)であるアミド系化合物(即ち、オールシス化合物)の少なくとも1種との混合物であって、上記一般式(a)で表されるトランス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基が、当該混合物中の全2−アルキルシクロヘキシルアミン残基の70モル%以上100モル%未満の割合で存在している混合物
(iii)1)2〜6個のR基のうちの少なくとも一つが上記一般式(a)で表されるトランス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基(トランス配置部分)であり、残りが一般式(b)で表されるシス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基(シス配置部分)であるアミド化合物の2種以上の混合物と、2)オールトランス化合物とからなる組成物であって、上記一般式(a)で表されるトランス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基が、当該組成物中の全2−アルキルシクロヘキシルアミン残基の70モル%以上100モル%未満の割合で存在している組成物
(iv)2〜6個のR基の全てが上記一般式(a)で表されるトランス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基(トランス配置部分)である単一のアミド系化合物(即ち、オールトランス化合物)。
本発明は、上記(i)〜(iv)に限定されるものではなく、上記一般式(a)で表されるトランス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基が、全2−アルキルシクロヘキシルアミン残基の70モル%以上100モル%未満の割合で存在している混合物である限り、他の態様も包含するものである。
<好ましいアミド系化合物>
本発明に係るアミド系化合物の中でも、上記式(a)で表されるトランス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基の含量が70モル%以上、特に71.9モル%以上100モル%未満である混合物又はオールトランスの単一化合物が好ましい。
かかる混合物の中でも、上記式(a)で表されるトランス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基の含量が70〜90モル%、特に71.9〜80モル%である混合物が好ましい。
一般式(1)において、Rは、炭素数1〜6、好ましくは1〜4の直鎖状又は分枝状のアルキル基、特にメチル基であるのが有利である。
また、一般式(1)において、aが3又は4である化合物が好ましい。なかでもRが、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸(以下、「BTC」と略記する。)残基、1,2,3−プロパントリカルボン酸(以下、「PTC」と略記する。)残基であるものが好ましい。
特に、透明性、剛性、結晶化温度、熱安定性、耐アルカリ性等の物性の点で有利とする観点からは、一般式(1)において、Rが、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸残基又は1,2,3−プロパントリカルボン酸残基であり、Rが2−アルキル(炭素数1〜6、特にメチル)シクロヘキシルアミン残基であるアミド系化合物が好ましい。
尚、本発明のアミド系化合物の混合物中のトランス体の含量(割合)、又は、オールトランスのアミド系化合物中のトランス体の含量は、後述の実施例の項に記載のように、FT−IR法により測定される、対応するオールトランス化合物のN−H伸縮振動吸収シグナルが現れる波数において測定された吸光度(Atrans)と、対応するオールシス化合物のN−H伸縮振動吸収シグナルが現れる波数における吸光度(Acis)とから算出されるトランス配置部分の吸光度の割合(Ctrans)と正比例しているので、検量線を用いて容易に確認することができる。
例えば、Rが1,2,3−プロパントリカルボン酸残基であり、トランス配置部分の含量が70%以上100%未満の本発明のアミド系化合物の混合物は、下記数式(E)で定義されるトランス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基の吸光度の割合(Ctrans)が56.3%以上72.0%未満である:

[式中、
Atransは、FT−IR法(Fourier Transform Infrared Spectroscopy)で測定される、対応するオールトランス化合物の上記一般式(a)で表されるトランス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基のN−H伸縮振動吸収のシグナルが現れる波数における吸光度を示し、
Acisは、FT−IR法で測定される、対応するオールシス化合物の上記一般式(b)で表されるシス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基のN−H伸縮振動吸収のシグナルが現れる波数における吸光度を示す。]。
が1,2,3−プロパントリカルボン酸残基である本発明のアミド系化合物の混合物は、上記Ctransが56.3〜61.6%、特に57.3〜61.6%であるのが好ましい。
が1,2,3−プロパントリカルボン酸残基であるオールトランス化合物のCtransは72.0%である。
また、Rが1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸残基であり、トランス配置部分の含量が70モル%以上100モル%未満の本発明のアミド系化合物の混合物は、上記数式(E)で定義されるトランス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基の吸光度の割合(Ctrans)が58.8〜71.5%である。
が1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸残基である場合、上記Ctransは、58.8〜63.1%、特に59.6〜63.1%であるのが好ましい。
が1,2,3,4−ブタンテトラカルボン残基であるオールトランス化合物のCtransは71.5%である。
上記本発明の混合物又はオールトランス化合物を構成する一般式(1)で表される化合物の好ましいものとしては、例えば、次の化合物を例示できる。
1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(2−メチルシクロヘキシルアミド)、
1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(2−エチルシクロヘキシルアミド)、
1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(2−n−プロピルシクロヘキシルアミド)、
1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(2−iso−プロピルシクロヘキシルアミド)、
1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(2−n−ブチルシクロヘキシルアミド)、
1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(2−sec−ブチルシクロヘキシルアミド)、
1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(2−iso−ブチルシクロヘキシルアミド)、
1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(2−n−ペンチルシクロヘキシルアミド)、
1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(2−n−ヘキシルシクロヘキシルアミド)、
1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(2−メチルシクロヘキシルアミド)、
1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(2−エチルシクロヘキシルアミド)、
1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(2−n−プロピルシクロヘキシルアミド)、
1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(2−iso−プロピルシクロヘキシルアミド)、
1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(2−n−ブチルシクロヘキシルアミド)、
1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(2−sec−ブチルシクロヘキシルアミド)
1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(2−iso−ブチルシクロヘキシルアミド)、
1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(2−n−ペンチルシクロヘキシルアミド)
1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(2−n−ヘキシルシクロヘキシルアミド)。
これらのなかでも一般式(1)において、Rが1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸残基又は1,2,3−プロパントリカルボン酸残基であり、Rが2−メチルシクロヘキシルアミン残基であるアミド系化合物が好ましい。
アミド系化合物の製造法
本発明のアミド系化合物は、種々の方法により合成できるが、一般には、2〜6個のカルボキシル基を有する脂肪族ポリカルボン酸又はその反応性誘導体(例えば酸無水物、酸ハライド、低級アルキルエステル)と、一般式RNH(式中、Rは前記に同じ)で表される2−アルキルシクロヘキシルアミン(トランス体が、GLC組成(%)で、70%以上であるもの)とを反応させることにより合成できる。上記反応性誘導体を使用する場合は、特に、低級アルキル(炭素数1〜4、特に炭素数1)エステルが取扱いが容易な点で好ましい。
より詳しくは、本発明のアミド系化合物の混合物の製造法は、前記一般式(2)で表されるポリカルボン酸又はその反応性誘導体と
前記一般式(3a)で表されるトランス−2−アルキルシクロヘキシルアミン、及び、一般式(3b)で表されるシス−2−アルキルシクロヘキシルアミンとからなり、GLCにより測定したトランス−2−アルキルシクロヘキシルアミン含量が70%以上100%未満であるアミン混合物
とをアミド化反応させることを特徴とするものである。
また、本発明のオールトランスのアミド系化合物の製造法は、前記一般式(2)で表されるポリカルボン酸又はその反応性誘導体と、前記一般式(3a)で表されるトランス−2−アルキルシクロヘキシルアミンとをアミド化反応させることを特徴とするものである。
<ポリカルボン酸>
上記ポリカルボン酸は、一般式(2)

[式中、Rは炭素数2〜30の飽和若しくは不飽和脂肪族ポリカルボン酸残基を表す。aは2〜6の整数を表す。]
で表される。
従って、一般式(1)のRで示される「ポリカルボン酸残基」とは、一般式(2)で表される脂肪族ポリカルボン酸から全てのカルボキシル基を除いて得られる残基を指し、aと同一の価数を有する残基、即ち、2〜6価の基である。また、Rの炭素数は、全てのカルボキシル基を除いて得られるポリカルボン酸残基が有する炭素数を指す。
本発明に用いるポリカルボン酸としては、一般式(2)で表される飽和若しくは不飽和脂肪族ポリカルボン酸が挙げられる。かかるポリカルボン酸は、水酸基、アルキル基(炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜4)、アルケニル基(炭素数2〜10、好ましくは3〜4)、アリール基(炭素数6〜20,好ましくは6〜15)及びアセトキシ基からなる群から選択される1個若しくは2個以上(特に1又は2個)の置換基を有していてもよい。
脂肪族ポリカルボン酸としては、一般式(2)においてRが炭素数2〜30、好ましくは3〜10であり、カルボキシル基を2〜6個(特に3又は4個)有する飽和又は不飽和のポリカルボン酸が挙げられる。例えば、ジフェニルマロン酸、コハク酸、フェニルコハク酸、ジフェニルコハク酸、グルタル酸、3,3−ジメチルグルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,12−ドデカン二酸、1,14−テトラデカン二酸、1,18−オクタデカン二酸、クエン酸、メタントリカルボン酸、エタントリカルボン酸、プロパントリカルボン酸、プロペントリカルボン酸、カンホロン酸、ブタントリカルボン酸、ペンタントリカルボン酸、ヘキサントリカルボン酸、ヘプタントリカルボン酸、オクタントリカルボン酸、ノナントリカルボン酸、デカントリカルボン酸、アセトキシプロパントリカルボン酸、アセトキシペンタントリカルボン酸、アセトキシヘプタントリカルボン酸、エタンテトラカルボン酸、プロパンテトラカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、ペンタンテトラカルボン酸、ドデカンテトラカルボン酸、ペンタンペンタカルボン酸、アセトキシペンタンペンタカルボン酸、ペンタンヘキサカルボン酸、テトラデカンヘキサカルボン酸、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、エチレングリコールビス(β−アミノエチルエーテル)N,N,N’,N’−四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、N−ヒドロキシエチルエチレンジアミン−N,N’,N’−三酢酸、1,3−ジアミノプロパン−2−オール−N,N,N’,N’−四酢酸、1,2−ジアミノプロパン−N,N,N’,N’−四酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、ニトリロ三プロピオン酸、1,6−ヘキサメチレンジアミン四酢酸、N−(2−カルボキシエチル)イミノ二酢酸等が例示される。
<2−アルキルシクロヘキシルアミン>
一般式(1)のRで示される2−アルキルシクロヘキシルアミン残基は、下記一般式(3a)

[式中、Rは炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表す。]
で表されるトランス−2−アルキルシクロヘキシルアミン又は一般式(3b)

[式中、Rは炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表す。]
で表されるシス−2−アルキルシクロヘキシルアミンからアミノ基を除いて得られる残基を指す。
2−アルキルシクロヘキシルアミンとしては、2−メチルシクロヘキシルアミン、2−エチルシクロヘキシルアミン、2−n−プロピルシクロヘキシルアミン、2−iso−プロピルシクロヘキシルアミン、2−n−ブチルシクロヘキシルアミン、2−iso−ブチルシクロヘキシルアミン、2−sec−ブチルシクロヘキシルアミン、2−tert−ブチルシクロヘキシルアミン、2−n−ペンチルシクロヘキシルアミン、2−n−ヘキシルシクロヘキシルアミン、2−n−ヘプチルシクロヘキシルアミン、2−n−オクチルシクロヘキシルアミン、2−エチルヘキシルシクロヘキシルアミン、2−n−ノニルシクロヘキシルアミン、2−n−デシルシクロヘキシルアミン等の直鎖状又は分枝状アルキル(炭素数1〜10)基を有する2−アルキルシクロヘキシルアミン等のシス体、トランス体又はこれらの混合物が例示される。
これらのうち、2−メチルシクロヘキシルアミン、2−エチルシクロヘキシルアミン、2−n−プロピルシクロヘキシルアミン、2−iso−ブロピルシクロヘキシルアミン、2−n−ブチルシクロヘキシルアミン、2−iso−ブチルシクロヘキシルアミン、2−sec−ブチルシクロヘキシルアミン、2−tert−ブチルシクロヘキシルアミン、2−n−ペンチルシクロヘキシルアミン等の2−アルキル(炭素数1〜5)シクロヘキシルアミン等のシス体、トランス体又はこれらの混合物が好ましく、特に2−メチルシクロヘキシルアミンのシス体、トランス体又はこれらの混合物が例示される。
これらのアミンは、単独で又は2種以上を混合してアミド化反応に供することができる。また、これらのアミン(トランス体、シス体、トランス体−シス体混合物)の純度は、100%であってもよいが、若干不純物を含むものであってもかまわない。一般に、2−アルキルシクロヘキシルアミンの純度としては、98重量%以上、好ましくは99重量%以上、より好ましくは99.5重量%以上である。
前記のように、アミド系化合物の混合物又はオールトランス化合物を構成する2−アルキル(炭素数1〜10)シクロヘキシルアミン残基の立体異性構造におけるトランス構造の総和とシス構造の総和の比率(トランス体の総和/シス体の総和)は、70/30〜100/0である。
換言すると、本発明は、一般式(1)で表される単一のアミド系化合物であって、2〜6個のR基が全てトランスである化合物を包含する。また、本発明は、一般式(1)のアミド系化合物の2種以上の混合物であって、当該混合物中の全2−アルキルシクロヘキシルアミン残基に対するトランス構造部分の割合が70モル%以上100モル%未満であるものをも包含する。
そのために、一般式(1)で表されるオールトランスのアミド系化合物又はトランス構造部分が70モル%以上100モル%未満の混合物を調製するに当たっては、原料として使用するトランス−2−アルキルシクロヘキシルアミン(トランス体)そのもの、又は、トランス−2−アルキルシクロヘキシルアミンとシス−2−アルキルシクロヘキシルアミン(シス体)とを含有し、トランス−2−アルキルシクロヘキシルアミンの含量(GLCにより測定)が70%以上、特に71.9%以上、好ましくは70〜90%、より好ましくは70〜80%である混合物を使用する。また、原料の入手容易性及び経済的な観点からは、トランス−2−アルキルシクロヘキシルアミンの含量(GLCにより測定)が70〜80%であるのが好ましい。
かかるトランス体純品又はトランス体リッチの混合物は、市販のトランス体及びシス体からなる混合物(GLCにより測定したトランス体含量=68.4%程度)を、トランス体のみを分離する操作、例えば蒸留等を行なうことにより得られる。かかる蒸留操作は、大気圧下でも減圧下でも行うことができ、一般には、アミンの分解を抑える観点からは、減圧下で行うことが好ましい。蒸留温度としては、特に限定されないが150℃以下、好ましくは100℃以下である。そのため、通常は減圧下で蒸留を行う場合、その圧力としては、特に限定されないが、0.5〜15kPa程度、特に1〜10kPa程度が好ましい。蒸留は、通常用いられている方法でよく、例えば、単蒸留や多段の蒸留塔等を用いる蒸留が挙げられる。もちろん、これに限定されるものではない。かかる蒸留により、実質上純粋なトランス体のみを得ることも可能であり、また、トランス体含量が70%以上(GLCにより測定)であるトランス体−シス体混合物を得ることも可能である。
こうして得られるトランス体純品と、又はGLCにより測定したトランス体含量が70%以上のトランス体−シス体混合物であるアミン原料と、上記一般式(2)で表されるポリカルボン酸又はその反応性誘導体(例えば酸無水物、酸ハライド、エステル等)とをアミド化反応させることにより、所望の一般式(1)で表されるアミド系化合物又は所望の混合物を合成することができる。
また、この方法と同様にして得られるR基のトランス構造部分が100%の上記オールトランスのアミド系化合物と、他のタイプの立体構造部分を有するアミド系化合物(例えば、分子内の2〜6個のR基の全てがシス構造部分であるアミド系化合物、2〜6個のR基のうちの少なくとも1個がトランス構造を有し、残りがシス構造を有する混在型のアミド系化合物等)とを、上記式(a)で表されるトランス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基の含量が70モル%以上100モル%未満となるように混合することにより、所望の一般式(1)で表されるアミド系化合物の混合物を調製することもできる。
上記アミド化反応は、公知の方法、例えば、前記特開平7−242610号公報に記載の方法に従って行うことができる。より具体的には、次の方法を採用できる。
(i)一般式(2)で表されるポリカルボン酸とその3〜20当量倍の上記アミン原料とを不活性溶媒中、60〜280℃で2〜50時間反応させる。
本製造法においては、反応時間を短縮するために、活性化剤を用いるのがより好ましい。該活性化剤としては、五酸化リン、ポリリン酸、五酸化リン−メタンスルホン酸、亜リン酸エステル(例えば、亜リン酸トリフェニル等)−ピリジン、亜リン酸エステル−金属塩(例えば、塩化リチウム等)、トリフェニルホスフィン−ヘキサクロロエタン等が例示され、通常、一般式(1)で表されるポリカルボン酸のカルボキシル基に対して等モル程度使用される。
(ii)一般式(2)で表されるポリカルボン酸のクロリドとその3〜6当量倍のアミン原料とを不活性溶媒中、0〜100℃で1〜5時間反応させる。
(iii)一般式(2)で表されるポリカルボン酸のポリアルキルエステルとその3〜30当量倍のアミン原料とを無溶媒又は不活性溶媒中、無触媒又は触媒の存在下、20〜280℃で3〜50時間反応させる。
当該触媒としては、通常のエステル・アミド交換反応に用いられる酸触媒や塩基触媒等が挙げられるが、中でも塩基触媒がより好ましい。具体的には、Li、Na、K、LiH、NaH、KH等のアルカリ金属及びアルカリ金属水素化物、LiOH,NaOH,KOH等の金属水酸化物、NaOMe、NaOEt、tert−BuOK等の金属アルコラート、NaNH,LiNPr等のアルカリ金属アミド等が例示され、通常、ポリカルボン酸のカルボキシル基に対して等モル量程度使用される。
上記(i)、(ii)及び(iii)法に係る不活性溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、クロルベンゼン、ジクロルベンゼン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等が例示される。
ポリオレフィン樹脂用造核剤
本発明のポリオレフィン樹脂用造核剤は、本発明の一般式(1)で表されるアミド系化合物の混合物又はオールトランスのアミド系化合物のみからなるものであるか、又は本発明のアミド系化合物の混合物又はオールトランスのアミド系化合物と後述の添加剤、ポリオレフィン樹脂用改質剤等とを含有するものである。
本発明において、ポリオレフィン樹脂用造核剤として用いられるアミド系化合物の粒径は、本発明の効果が得られる限り特に限定されないが、溶融樹脂に対する溶解速度又は分散性の点からできる限り粒径が小さいものが好ましく、通常、レーザー回折光散乱法で測定した平均粒径が0.1〜500μm、好ましくは1〜200μm、より好ましくは1〜100μmの範囲である。
本発明に係るアミド系化合物の結晶形態は、本発明の効果が得られる限り特に限定されないが、立方晶、単斜晶、三方晶、六方晶等の任意の結晶形が使用できる。
これらの結晶の粒子径は、特に限定されることなく、目的に応じて任意に選択することができる。例えば、ポリオレフィン樹脂へのアミド系化合物の分散、溶解又は融解を短時間としたい場合には、その分散、溶解又は融解混合時の温度にも影響されるが、その粒子径としては、最大粒子径が50μm以下であり、好ましくは10μm以下であることが推奨される。
アミド系化合物の最大粒子径を上記範囲に調整する方法としては、この分野で公知の慣用装置を用いて微粉砕し、これを分級する方法が提示される。具体的には、ジェットミル、例えば、「流動層式カウンタージェットミル100AFG」(商品名、ホソカワミクロン社製)、「超音速ジェットミルPJM−200」(商品名、日本ニューマチック社製)等を用いて微粉砕並びに分級する方法が例示される。
本発明の造核剤には、本発明のアミド系化合物に加えて、必要に応じて、添加剤として、芳香族カルボン酸金属塩、芳香族カルボン酸無水物、芳香族リン酸エステルの金属塩、芳香族リン酸エステルのアミン塩、ソルビトール誘導体、脂肪族ジカルボン酸金属塩若しくはアミン塩、ロジン酸誘導体、水添ナジック酸金属塩等の一般にポリオレフィン樹脂組成物の結晶化温度及び/又は透明性を高め得る化合物を本発明の効果を損なわない範囲で併用することができる。
具体的には、安息香酸ナトリウム、p−tert−ブチル安息香酸ナトリウム、ヒドロキシビス(p−tert−ブチル安息香酸)アルミニウム等の芳香族カルボン酸金属塩;安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、アルキル置換安息香酸等の芳香族カルボン酸無水物;ナトリウム−2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフェート、ナトリウム−2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフェート、リチウム−2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフェート、リチウム−2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフェート、ナトリウム−2,2’−エチリデン−ビス(4−i−プロピル−6−t−ブチルフェニル)ホスフェート、リチウム−2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェニル)ホスフェート、リチウム−2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェニル)ホスフェート等の芳香族リン酸エステルの金属塩;リン酸2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)と脂肪酸族多価アミンとの塩等の芳香族リン酸エステルのアミン塩;ジベンジリデンソルビトール、ビス(p−メチルベンジリデン)ソルビトール、ビス(p−エチルベンジリデン)ソルビトール、ビス(3,4−ジメチルベンジリデン)ソルビトール等のソルビトール誘導体;ロジン酸ナトリウム塩,ロジン酸カリウム塩,ロジン酸マグネシウム塩等のロジン酸金属塩、ロジン酸アミド系化合物等のロジン酸誘導体;水添ナジック酸二ナトリウム等の水添ナジック酸金属塩等が例示される。これらの化合物は、単独で使用しても、二種以上組み合わせて使用してもよい。
本発明の造核剤には、更に、その他の任意成分として従来公知のポリオレフィン用改質剤を含むことができる。例えば、ポリオレフィン等衛生協議会編「ポジティブリストの添加剤要覧」(2002年1月)に記載されている各種添加剤が挙げられ、より具体的には、安定剤(金属化合物、エポキシ化合物、窒素化合物、燐化合物、硫黄化合物等)、紫外線吸収剤(ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物等)、酸化防止剤(フェノール系化合物、亜リン酸エステル系化合物、イオウ系化合物等)、界面活性剤、滑剤(パラフィン、ワックス等の脂肪族炭化水素、炭素数8〜22の高級脂肪酸、炭素数8〜22の高級脂肪酸金属(Li、Na、K、Al、Ca、Mg、Zn)塩、炭素数8〜22の高級脂肪族アルコール、ポリグリコール、炭素数4〜22の高級脂肪酸と炭素数4〜18の脂肪族1価アルコールとのエステル、炭素数8〜22の高級脂肪酸アマイド、シリコーン油、ロジン誘導体等、充填剤(タルク、ハイドロタルサイト、マイカ、ゼオライト、パーライト、珪藻土、炭酸カルシウム、ガラス繊維等)、発泡剤、発泡助剤、ポリマー添加剤の他、可塑剤(ジアルキルフタレート、ジアルキルヘキサヒドロフタレート等)、架橋剤、架橋促進剤、帯電防止剤、難燃剤、分散剤、有機無機の顔料、加工助剤、他の核剤等が例示される。
上記添加剤、ポリオレフィン用改質剤を使用する場合、これらは、上記本発明の一般式(1)で表されるアミド系化合物の1種単独又は2種以上の混合物に、例えば、ドライブレンドして混合物とする等の公知の方法に従って配合すればよい。
ポリオレフィン樹脂組成物
本発明のポリオレフィン樹脂組成物は、本発明のアミド系化合物の混合物若しくはオールトランス化合物、又は、本発明のアミド系化合物の混合物若しくはオールトランス化合物を含有する造核剤を、ポリオレフィン樹脂に常法にしたがって配合することにより得られる。
本発明のポリオレフィン樹脂組成物の調製法としては、所望の該樹脂組成物が得られる限り、限定されることなく、常法を用いることができる。例えば、ポリオレフィン樹脂(粉末又は顆粒)、本発明のアミド系化合物、及び必要に応じて上記のポリオレフィン用樹脂改質剤を、慣用の混合機、例えば、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、Vブレンダー等を用いて混合したブレンドタイプのポリオレフィン樹脂組成物を得る方法、又は、このブレンドタイプのポリオレフィン樹脂組成物を、慣用の混練機、例えば、一軸又は二軸の押し出し機等を用いて、通常160〜300℃、好ましくは180〜260℃の温度で溶融混練し、押し出されたストランドを、冷却し、得られたストランドをカッティングすることでペレットとする方法などが例示される。
本発明のアミド系化合物の混合物又はオールトランスのアミド系化合物を、そのままで、又は、上記添加剤、ポリオレフィン用改質剤等と配合された造核剤の形態で、ポリオレフィン樹脂に配合する場合、本発明の混合物またはオールトランス化合物の配合量(造核剤として配合する場合は、本発明の混合物またはオールトランスのアミド系化合物換算での配合量)は、所定の効果が得られる限り特に限定されるものではなく、広い範囲から適宜選択することができるが、通常、ポリオレフィン樹脂100重量部当たり、0.01〜10重量部、好ましくは0.03〜5重量部、さらに好ましくは0.05〜3重量部である。これらの範囲内で配合することにより十分に本発明の効果を得ることができる。
0.01重量部未満では核剤効果が不十分であり、成形体の機械的特性(例えば、剛性等)が低い。一方、10重量部を越えても更なる効果の向上は得られない。
アミド系化合物のポリオレフィン樹脂への添加方法としては、慣用されている装置、例えば、一軸又は二軸の押し出し機等を用いる一段添加法が好ましいが、2〜15重量%程度の高濃度マスターバッチの形態による二段添加法を採用しても何ら差し支えない。
本発明で使用するポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン系樹脂、メチルペンテン系樹脂、ブタジエン系樹脂等が例示され、より具体的には、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、エチレン含量50重量%以上、好ましくは70重量%以上のエチレンコポリマー、プロピレンホモポリマー、プロピレン50重量%以上、好ましくは70重量%以上のプロピレンコポリマー、ブテンホモポリマー、ブテン含量50重量%以上、好ましくは70重量%以上のブテンコポリマー、メチルペンテンホモポリマー、メチルペンテン含量50重量%以上、好ましくは70重量%以上のメチルペンテンコポリマー、ポリブタジエン等が例示される。
上記コポリマーはランダムコポリマーであってもよく、ブロックコポリマーであってもよい。これらの樹脂の立体規則性がある場合は、アイソタクチックでもシンジオタクチックでもよい。
上記コポリマーを構成し得るコモノマーとして、具体的にはエチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ウンデセン、ドデセン等の炭素数2〜12のα−オレフィン、1,4−エンドメチレンシクロヘキセン等のビシクロ型モノマー、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル等が例示できる。
かかる重合体を製造するために適用される触媒としては、一般に使用されているチーグラー・ナッタ型触媒はもちろん、遷移金属化合物(例えば、三塩化チタン、四塩化チタン等のチタンのハロゲン化物)を塩化マグネシウム等のハロゲン化マグネシウムを主成分とする担体に担持してなる触媒と、アルキルアルミニウム化合物(トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド等)とを組み合わせてなる触媒系やメタロセン触媒も使用できる。
本発明に係るポリオレフィン樹脂の推奨されるメルトフローレート(以下、「MFR」と略記する。JIS K 7210−1995)は、その適用する成形方法により適宜選択されるが、通常、0.01〜200g/10分、好ましくは0.05〜100g/10分である。
本発明に係るポリオレフィン樹脂組成物には、使用目的やその用途に応じて適宜、上記の従来公知のポリオレフィン用改質剤を本発明の効果を損なわない範囲で添加することができる。
ポリオレフィン樹脂成形体および成形体の剛性向上方法
本発明のポリオレフィン樹脂成形体は、上記本発明のポリオレフィン樹脂組成物を、慣用されている成形法に従って成形することにより得られる。
本発明にかかるポリオレフィン樹脂組成物を成形するに際しては、射出成形、押出成形、ブロー成形、圧空成形、回転成形、フィルム成形等の従来公知の成形方法のいずれをも採用できる。成形条件としては、従来採用されている条件が広い範囲から適宜選択できる。
本発明により得られるポリオレフィン樹脂成形体は、後述の実施例からも明らかなように、優れた剛性を有している。従って、本発明は、本発明の一般式(1)で表される化合物の2種以上の混合物又はオールトランス化合物、又は本発明の造核剤をポリオレフィン樹脂に配合して樹脂組成物を得、該樹脂組成物を成形することを特徴とするポリオレフィン樹脂成形体の剛性向上方法を提供するものでもある。
こうして得られた本発明のポリオレフィン樹脂成形体は、従来、リン酸金属塩類、カルボン酸金属塩類、ベンジリデンソルビトール類等を核剤として配合してなるポリオレフィン樹脂組成物が用いられてきたと同様の分野において適用され、具体的には、熱や放射線等により滅菌されるディスポーザブル注射器、輸液・輸血セット、採血器具等の医療用器具類;放射線等により滅菌される食品・植物等の包装物;衣料ケースや衣料保存用コンテナ等の各種ケース類;食品を熱充填するためのカップ、レトルト食品の包装容器;電子レンジ用容器;ジュース、茶等の飲料用、化粧品用、医薬品用、シャンプー用等の缶、ビン等の容器;味噌、醤油等の調味料用容器及びキャップ;水、米、パン、漬物等の食品用ケース及び容器;冷蔵庫用ケース等の雑貨;文具;電気・機械部品;自動車用部品等の素材として好適である。
【実施例】
以下、実施例及び比較例を揚げ、本発明を詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
本発明のポリオレフィン樹脂用造核剤のアミド系化合物の融点、トランス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基の含量、ポリオレフィン樹脂成形体のヘイズ値(%)、結晶化温度(℃)、曲げ弾性率(kg/mm)、熱安定性(10%重量減少温度、℃)、及び耐アルカリ性を以下の方法により測定し、評価した。
1)融点(℃)
示差走査熱量計(商品名「DSC−50」、(株)島津製作所製)を用いて、以下の条件にて測定し、最大吸熱ピークのピークトップを融点とした:
窒素流量:30ml/分、昇温速度:10℃/分、試料重量:5mg、標準試料:シリカゲル5mg。
2)トランス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基の吸光度の割合
(Ctrans)
FT−IR装置(商品名「Spectrum One」、パーキンエルマー社製)を用いて、3400から3100cm−1に現れるN−H伸縮振動の吸収帯を測定した。
トランス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基の吸光度の割合(Ctrans)は、対応するオールトランス化合物の上記一般式(a)で表されるトランス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基のN−H伸縮振動吸収のシグナルが現れる波数における吸光度(Atrans)、及び、対応するオールシス化合物の上記一般式(b)で表されるシス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基のN−H伸縮振動吸収のシグナルが現れる波数における吸光度(Acis)から、下記数式(E)に従って算出した。

[式中、
Atransは、FT−IR法で測定される、対応するオールトランス化合物の上記一般式(a)で表されるトランス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基のN−H伸縮振動吸収のシグナルが現れる波数における吸光度を示し、
Acisは、FT−IR法で測定される、対応するオールシス化合物の上記一般式(b)で表されるシス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基のN−H伸縮振動吸収のシグナルが現れる波数における吸光度を示す。]。
以下に、具体例として1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(2−メチルシクロヘキシルアミド)中のトランス−2−メチルシクロヘキシルアミン残基の吸光度の割合(Ctrans、%)の求め方について説明する。
a)標準サンプルの調製方法
1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(トランス−2−メチルシクロヘキシルアミド)(オールトランス化合物)及び1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(シス−2−メチルシクロヘキシルアミド)(オールシス化合物)を、イソプロピルアルコール及びイソプロピルアルコール水溶液で十分に洗浄し、80℃で6時間乾燥した。
次いで、トランス−2−メチルシクロヘキシルアミン残基の含量が、混合物中の全2−メチルシクロヘキシルアミン残基に対して、80モル%、50モル%及び20モル%となるように、上記洗浄乾燥した1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(トランス−2−メチルシクロヘキシルアミド)と上記洗浄乾燥した1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(シス−2−メチルシクロヘキシルアミド)とを混合して、サンプルを調製した。また、上記洗浄及び乾燥したオールトランス化合物を、トランス−2−メチルシクロヘキシルアミン残基の含量が100モル%のサンプルとして使用した。
こうして調製された各サンプルを、測定前にめのう乳鉢でメタノール湿潤下で十分に粉砕し、乾燥後、FT−IR測定用標準サンプルとして用いた。
b)測定方法及び検量線の作成方法
FT−IR装置(商品名「Spectrum One」、パーキンエルマー社製)に、赤外全反射吸収スペクトル(Attenuated Total Reflection、以下「ATR」と略記する)装置(パーキンエルマー社製ユニバーサルATR装置)を装備して使用した。なお,測定は波数範囲650〜4000cm−1、分解能4cm−1、積算回数16回、25°Cの温度で行った。この条件下で、FT−IR−ATR法)によってトランス−2−メチルシクロヘキシルアミン残基の含量100モル%、80モル%、50モル%、及び20モル%の標準サンプルの赤外吸収スペクトルを測定した。
図1及び図2は、上記オールトランス化合物の赤外吸収スペクトルチャートである。また、図3は、同様の測定法により得られたオールシス化合物の赤外吸収スペクトルチャート(3100〜3500cm−1)である。図4は、トランス−2−メチルシクロヘキシルアミン残基含量80モル%の標準サンプルの赤外吸収スペクトルチャート(3100〜3500cm−1)である。
図2及び図3に示すチャートから、オールトランス化合物のトランス−2−メチルシクロヘキシルアミン残基のNH伸縮振動シグナルが現れる波数(3281cm−1)及びオールシス化合物のシス−2−メチルシクロヘキシルアミン残基のNH伸縮振動シグナルが現れる波数(3313cm−1)を求めた。
次いで、図4に示したように、各標準サンプルの赤外吸収スペクトルから、ベースライン法(3400cm−1、3150cm−1)により、3281cm−1における吸光度Atrans、3313cm−1における吸光度Acisを求めた。
Ctrans(%)、即ち[Atrans/(Atrans+Acis)]×100を標準サンプルのトランス−2−メチルシクロヘキシルアミン残基の含量(モル%)に対してプロットしたところ、直線関係にある検量線が得られた。得られた検量線により各実施例及び比較例で使用した混合物及びオールトランスのアミド系化合物のCtrans(%)を算出した。
3)ヘイズ値(%)
東洋精機製作所製のヘイズメーターを用いて、JIS K7136−2000に準じて測定した。得られた数値が小さい程、透明性に優れている。
4)結晶化温度Tc(℃)
示差走査熱量計(商品名「DSC7」、パーキンエルマー社製)を用いて、JIS K−7121に準じて測定した。結晶化温度Tcが高い程、結晶化速度が速く、成形サイクルの短縮が可能である。
5)曲げ弾性率(kg/mm
インストロン万能試験機を用いて、JIS K7203−1982に準じて測定した。尚、試験温度は25℃、試験速度は10mm/分とした。曲げ弾性率の値が大きい程、剛性に優れている。
6)熱安定性:10%重量減少温度(℃)
示差熱熱重量同時測定装置(商品名「TG−DTA2000」、(株)マック・サイエンス製)を用いて、窒素流量:100ml/分、昇温速度:10℃/分、試料重量:10mgの条件にて測定した。10%重量減少温度が高い程、熱安定性に優れている。
7)耐アルカリ性
アミド系化合物の混合物またはオールトランスのアミド系化合物0.1g及び粉末水酸化カルシウム0.1gをめのう乳鉢で十分に粉砕混合した試料を用いて、示差熱熱重量同時測定装置(商品名「TG−DTA2000」、(株)マック・サイエンス社製)により、重量減少を以下の条件にて測定した。
窒素流量:100ml/分
温度:50℃/分で300℃まで昇温後、300℃/60分保持
試料重量:10mg
300℃に到達して5分後における重量減少を測定し、サンプル重量に対する重量減少率(%)(PWR)を算出した。重量減少率が低いほど耐アルカリ性に優れている。
[実施例1]
(1)攪拌機、温度計、冷却管及びガス導入口を備えた500mlの4ツ口フラスコにPTC9.7g(0.055モル)とN−メチル−2−ピロリドン100gを秤取り、窒素雰囲気下、室温にて攪拌しながらPTCを完全溶解させた。続いて、2−メチルシクロヘキシルアミン(トランス体:シス体=100.0:0.0、GLC組成%)20.5g(0.1815モル)、亜リン酸トリフェニル56.3g(0.1815モル)、ピリジン14.4g(0.1815モル)及びN−メチル−2−ピロリドン50gを加え、窒素雰囲気下、攪拌しながら100℃で4時間反応を行った。冷却後、反応溶液をイソプロピルアルコール500mlと水500mlの混合溶液中にゆっくり注ぎ込み、40から50℃にて1時間攪拌後、析出した白色沈殿物を濾別した。更に、得られた白色固体を40から50℃のイソプロピルアルコール500mlで2回洗浄した後、100℃、133Paにて6時間乾燥した。
得られた乾燥物を乳鉢で粉砕し、目開き106μmの標準篩い(JIS Z−8801規格)に通して、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(2−メチルシクロヘキシルアミド)(以下、「PTC−2MeCHA」と略記する。)20.3g(収率80%)を得た。
得られた白色粉体の融点とトランス−2−メチルシクロヘキシルアミン残基の吸光度の割合(Ctrans)を測定し、その評価結果を表1に記載した。また、得られた白色固体の赤外線特性吸収(C=O伸縮振動(アミドI吸収帯)及びN−H変角振動(アミドII吸収帯))、10%重量減少温度及び耐アルカリ性(PWR)を表1に示す。
(2)また、アミド化反応後に回収した未反応2−メチルシクロヘキシルアミンをGLC分析に供したところ、該未反応アミンのトランス:シス比は100:0であり、原料として使用した2−メチルシクロヘキシルアミンのトランス:シス比(100:0、GLC組成%)と一致した。
また、上記で得られた生成物アミドを、アミド化反応条件と実質上同様の温度条件(室温〜280℃)で処理しても、FT−IRスペクトル、融点が処理前のそれらと完全に一致することから、アミド化反応により、立体配置が変更されないことも確認された。
その結果、本実施例1の生成物であるアミド系化合物のアミド構造におけるトランス配置部分:シス配置部分の比は、原料アミンのトランス:シス比と一致することが確認された。
他の実施例及び比較例においても、上記と同様にして、生成物であるアミド系化合物又はアミド系化合物の混合物のアミド構造におけるトランス配置部分:シス配置部分の比は、原料アミンのトランス:シス比と一致することが確認された。
(3)次に、アイソタクチックホモポリプロピレン樹脂(MFR=30g/10分、以下、「h−PP」と略記する。)100重量部に対して上記方法により調製したPTC−2MeCHAを0.2重量部添加し、更に、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製、商品名「IRGANOX1010」)0.05重量部、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製、商品名「IRGAFOS168」)0.05重量部及びステアリン酸カルシウム0.05重量部を配合し、ヘンシェルミキサーで1000rpm、5分間ドライブレンドした。
次に、樹脂温度240℃で直径25mmの一軸押出機を用いて溶融混練して、押し出されたストランドを水冷し、次に得られたストランドを切断してペレット状ポリオレフィン樹脂組成物を得た。
得られたペレットを樹脂温度240℃、金型温度40℃の条件下で射出成形し、ポリオレフィン樹脂成形体(試験片)2種類を調製した。一方は、ヘイズ測定用の試験片であり、サイズは70mm×40mm×1mmである。他方は曲げ弾性率測定用の試験片であり、サイズは90mm×10mm×4mmである。得られた試験片のヘイズ値、結晶化温度及び曲げ弾性率を測定し、その評価結果を表1に記載した。
[実施例2]
トランス体含量100%の2−メチルシクロヘキシルアミンに代えて、2−メチルシクロヘキシルアミン(トランス体:シス体=90.3:9.7、GLC組成%)を用いた他は実施例1と同様に行い、その評価結果を表1に記載した。反応により得られたPTC−2MeCHAは、20.3g(収率80%)であった。
[実施例3]
トランス体含量100%の2−メチルシクロヘキシルアミンに代えて、2−メチルシクロヘキシルアミン(トランス体:シス体=77.2:22.8、GLC組成%)を用いた他は実施例1と同様に行い、その評価結果を表1に記載した。反応により得られたPTC−2MeCHAは、20.0g(収率79%)であった。
[実施例4]
トランス体含量100%の2−メチルシクロヘキシルアミンに代えて、2−メチルシクロヘキシルアミン(トランス体:シス体=71.9:28.1、GLC組成%)を用いた他は実施例1と同様に行い、その評価結果を表1に記載した。反応により得られたPTC−2MeCHAは、19.9g(収率78%)であった。
比較例1
トランス体含量100%の2−メチルシクロヘキシルアミンに代えて、2−メチルシクロヘキシルアミン(トランス体:シス体=68.2:31.8、GLC組成%)を用いた他は実施例1と同様に行い、その評価結果を表1に記載した。反応により得られたPTC−2MeCHAは、19.3g(収率76%)であった。
比較例2
トランス体含量100%の2−メチルシクロヘキシルアミンに代えて、2−メチルシクロヘキシルアミン(トランス体:シス体=58.9:41.1、GLC組成%)を用いた他は実施例1と同様に行い、その評価結果を表1に記載した。反応により得られたPTC−2MeCHAは、19.3g(収率76%)であった。
比較例3
トランス体含量100%の2−メチルシクロヘキシルアミンに代えて、2−メチルシクロヘキシルアミン(トランス体:シス体=50.4:49.6、GLC組成%)を用いた他は実施例1と同様に行い、その評価結果を表1に記載した。反応により得られたPTC−2MeCHAは、18.0g(収率71%)であった。
比較例4
トランス体含量100%の2−メチルシクロヘキシルアミンに代えて、2−メチルシクロヘキシルアミン(トランス体:シス体=26.4:73.6、GLC組成%)を用いた他は実施例1と同様に行い、その評価結果を表1に記載した。反応により得られたPTC−2MeCHAは、15.5g(収率61%)であった。
比較例5
トランス体含量100%の2−メチルシクロヘキシルアミンに代えて、2−メチルシクロヘキシルアミン(トランス体:シス体=1.0:99.0、GLC組成%)を用いた他は実施例1と同様に行い、その評価結果を表1に記載した。反応により得られたPTC−2MeCHAは、11.7g(収率46%)であった。
[実施例5]
PTCに代えて、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸9.4g(0.04モル)を使用し、また、2−メチルシクロヘキシルアミン(トランス体:シス体=100.0:0.0、GLC組成%)19.9g(0.176モル)、亜リン酸トリフェニル54.6g(0.176モル)、ピリジン13.9g(0.176モル)にそれぞれ使用量を変更した(しかし、N−メチル−2−ピロリドンの量は変更しなかった)以外は実施例1と同様に行い、その評価結果を表1に記載した。反応により得られた1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(2−メチルシクロヘキシルアミド)(以下、「BTC−2MeCHA」と略記する。)は、16.0g(収率65%)であった。
[実施例6]
トランス体含量100%の2−メチルシクロヘキシルアミンに代えて、2−メチルシクロヘキシルアミン(トランス体:シス体=90.3:9.7、GLC組成%)を用いた他は実施例5と同様に行い、その評価結果を表1に記載した。反応により得られたBTC−2MeCHAは、18.7g(収率76%)であった。
[実施例7]
トランス体含量100%の2−メチルシクロヘキシルアミンに代えて、2−メチルシクロヘキシルアミン(トランス体:シス体=77.2:22.8、GLC組成%)を用いた他は実施例5と同様に行い、その評価結果を表1に記載した。反応により得られたBTC−2MeCHAは、18.7g(収率76%)であった。
[実施例8]
トランス体含量100%の2−メチルシクロヘキシルアミンに代えて、2−メチルシクロヘキシルアミン(トランス体:シス体=71.9:28.1、GLC組成%)を用いた他は実施例5と同様に行い、その評価結果を表1に記載した。反応により得られたBTC−2MeCHAは、18.7g(収率76%)であった。
比較例6
トランス体含量100%の2−メチルシクロヘキシルアミンに代えて、2−メチルシクロヘキシルアミン(トランス体:シス体=69.0:31.0、GLC組成%)を用いた他は実施例5と同様に行い、その評価結果を表1に記載した。反応により得られたBTC−2MeCHAは、18.7g(収率76%)であった。
比較例7
トランス体含量100%の2−メチルシクロヘキシルアミンに代えて、2−メチルシクロヘキシルアミン(トランス体:シス体=54.1:45.9、GLC組成%)を用いた他は実施例5と同様に行い、その評価結果を表1に記載した。反応により得られたBTC−2MeCHAは、18.7g(収率76%)であった。
比較例8
トランス体含量100%の2−メチルシクロヘキシルアミンに代えて、2−メチルシクロヘキシルアミン(トランス体:シス体=2.8:97.2、GLC組成%)を用いた他は実施例5と同様に行い、その評価結果を表1に記載した。反応により得られたBTC−2MeCHAは、19.4g(収率79%)であった。

[実施例9]
h−PPに代えて、エチレン含量3.0重量%のアイソタクチックランダムポリプロピレン樹脂(MFR=20g/10分、以下、「r−PP」と略記する。)を用いた他は実施例1と同様に行い、その評価結果を表2に記載した。
[実施例10]
h−PPに代えてr−PPを用いた他は実施例2と同様に行い、その評価結果を表2に記載した。
[実施例11]
h−PPに代えてr−PPを用いた他は実施例3と同様に行い、その評価結果を表2に記載した。
[実施例12]
h−PPに代えてr−PPを用いた他は実施例4と同様に行い、その評価結果を表2に記載した。
比較例9
h−PPに代えてr−PPを用いた他は比較例1と同様に行い、その評価結果を表2に記載した。
比較例10
h−PPに代えてr−PPを用いた他は比較例2と同様に行い、その評価結果を表2に記載した。
比較例11
h−PPに代えてr−PPを用いた他は比較例3と同様に行い、その評価結果を表2に記載した。
比較例12
h−PPに代えてr−PPを用いた他は比較例4と同様に行い、その評価結果を表2に記載した。
比較例13
h−PPに代えてr−PPを用いた他は比較例5と同様に行い、その評価結果を表2に記載した。
[実施例13]
h−PPに代えてr−PPを用いた他は実施例5と同様に行い、その評価結果を表2に記載した。
[実施例14]
h−PPに代えてr−PPを用いた他は実施例6と同様に行い、その評価結果を表2に記載した。
[実施例15]
h−PPに代えてr−PPを用いた他は実施例7と同様に行い、その評価結果を表2に記載した。
[実施例16]
h−PPに代えてr−PPを用いた他は実施例8と同様に行い、その評価結果を表2に記載した。
比較例14
h−PPに代えてr−PPを用いた他は比較例6と同様に行い、その評価結果を表2に記載した。
比較例15
h−PPに代えてr−PPを用いた他は比較例7と同様に行い、その評価結果を表2に記載した。
比較例16
h−PPに代えてr−PPを用いた他は比較例8と同様に行い、その評価結果を表2に記載した。

表1及び表2の結果から、次の事項が明らかである。
(1)本発明のアミド系化合物自体の熱安定性に関して、トランス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基の含量(又はCtransの値)が増大するにつれて、融点及び10%重量減少温度が高くなり、該含量が70モル%以上である場合(実施例1〜16)は、該含量が70モル%未満のアミド系化合物(比較例1〜16)に比べて、融点及び10%重量減少温度が高くなっており、核剤自体の熱安定性がかなり向上している点で顕著な改善がみられる。
更に、トランス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基の含量が70モル%以上の本発明アミド系造核剤は、該含量が70モル%未満のアミド系造核剤に比べて、耐アルカリ性の点で著しく向上している。
ポリオレフィン樹脂には重合触媒の中和剤としてアルカリ性物質(例えば、ステアリン酸カルシウム、水酸化カルシウム等)が通常使用されており、造核剤には耐アルカリ性が要求される。従って、本発明のアミド系造核剤の高い耐アルカリ性は、工業上有利である。
(2)また、成形体の物性も、トランス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基含量の増大に伴って向上している。より詳しくは、トランス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基含量が増大するにつれて成形体の物性が向上し、トランス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基含量が68.2モル%又は69モル%の場合(比較例1、6、9及び14)でも、既に優れた透明性(ヘイズ値)、結晶化温度(Tc)及び曲げ弾性率を有しているが、トランス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基含量が70モル%〜100モル%である場合(実施例1〜16)は、その優れた透明性、結晶化温度及び曲げ弾性率が実質上維持され又は向上している。
(3)従って、アミド系核剤の熱安定性等の各種物性及び成形体の各種物性を総合して考慮すると、トランス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基含量を70モル%以上、特に70〜90モル%とするのが好ましく、70〜80モル%とすることがより好ましい。
【産業上の利用可能性】
本発明に従い、一般式(1)で表されるオールトランスのアミド系化合物またはアミド系化合物の混合物を構成する2−アルキルシクロヘキシルアミン残基の立体異性構造におけるトランス体含量が70〜100モル%の範囲にある場合、当該アミド系化合物または混合物自体の熱安定性に優れ、また、かかるアミド系化合物もしくは混合物又はアミド系化合物もしくは混合物を含有するポリオレフィン用造核剤をポリオレフィン樹脂に配合することにより、透明性、結晶性及び剛性に優れたポリオレフィン樹脂組成物及び成形体を得ることができる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)

[式中、
aは、2〜6の整数を表す。
は、炭素数2〜30の飽和若しくは不飽和脂肪族ポリカルボン酸残基を表し、該脂肪族ポリカルボン酸残基の価数は2〜6である。
2〜6個のR基は、同一又は異なって、それぞれ、一般式(a)

(式中、Rは炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表す。)で表されるトランス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基、又は、一般式(b)

(式中、Rは炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表す。)で表されるシス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基を表す。]
で表されるアミド系化合物の少なくとも2種の混合物であって、
上記一般式(a)で表されるトランス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基が、混合物中の全2−アルキルシクロヘキシルアミン残基の70モル%以上100モル%未満の割合で存在している混合物。
【請求項2】
上記一般式(a)で表されるトランス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基が、混合物中の全2−アルキルシクロヘキシルアミン残基の71.9モル%以上100モル%未満の割合で存在している請求項1に記載の混合物。
【請求項3】
が、炭素数1〜6の直鎖状又は分枝状のアルキル基である請求項1に記載の混合物。
【請求項4】
が、メチル基である請求項1に記載の混合物。
【請求項5】
が、1,2,3−プロパントリカルボン酸残基又は1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸残基である請求項1に記載の混合物。
【請求項6】
が1,2,3−プロパントリカルボン酸残基であって、下記数式(E)で定義されるトランス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基の吸光度の割合(Ctrans)が56.3%以上72.0%未満である請求項1に記載の混合物:

[式中、
Atransは、FT−IR法(Fourier Transform Infrared Spectroscopy)で測定される、対応するオールトランス化合物の上記一般式(a)で表されるトランス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基のN−H伸縮振動吸収のシグナルが現れる波数における吸光度を示し、
Acisは、FT−IR法で測定される、対応するオールシス化合物の上記一般式(b)で表されるシス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基のN−H伸縮振動吸収のシグナルが現れる波数における吸光度を示す。]。
【請求項7】
が1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸残基であって、下記数式(E)で定義されるトランス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基の吸光度の割合(Ctrans)が58.8%以上71.5%未満である請求項1〜4のいずれかに記載の混合物:

[式中、
Atransは、FT−IR法(Fourier Transform Infrared Spectroscopy)で測定される、対応するオールトランス化合物の上記一般式(a)で表されるトランス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基のN−H伸縮振動吸収のシグナルが現れる波数における吸光度を示し、
Acisは、FT−IR法で測定される、対応するオールシス化合物の上記一般式(b)で表されるシス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基のN−H伸縮振動吸収のシグナルが現れる波数における吸光度を示す。]。
【請求項8】
一般式(1)

[式中、
aは、2〜6の整数を表す。
は、炭素数2〜30の飽和若しくは不飽和脂肪族ポリカルボン酸残基を表し、該脂肪族ポリカルボン酸残基の価数は2〜6である。
2〜6個のR基は、同一であって、一般式(a)

(式中、Rは、炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表す。)で表されるトランス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基を示す。]
で表されるアミド系化合物。
【請求項9】
が炭素数1〜6の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表す請求項8に記載のアミド系化合物。
【請求項10】
がメチル基である請求項8に記載のアミド系化合物。
【請求項11】
が1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸残基又は1,2,3−プロパントリカルボン酸残基である請求項8に記載のアミド系化合物。
【請求項12】
が1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸残基であり、Rがメチル基である請求項8に記載のアミド系化合物。
【請求項13】
が1,2,3−プロパントリカルボン酸残基であり、Rがメチル基である請求項8に記載のアミド系化合物。
【請求項14】
請求項1〜7のいずれかに記載の混合物を含有するポリオレフィン樹脂用造核剤。
【請求項15】
請求項8〜13のいずれかに記載のアミド系化合物を含有するポリオレフィン樹脂用造核剤。
【請求項16】
ポリオレフィン樹脂及び請求項1〜7のいずれかに記載の混合物又は請求項8〜13に記載のアミド系化合物を含有するポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項17】
ポリオレフィン樹脂100重量部に対し、請求項1〜7のいずれかに記載の混合物又は請求項8〜13に記載のアミド系化合物を、0.01〜10重量部含有する請求項16に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項18】
請求項16に記載のポリオレフィン樹脂組成物を成形することにより得ることができるポリオレフィン樹脂成形体。
【請求項19】
一般式(1)

[式中、
aは、2〜6の整数を表す。
は、炭素数2〜30の飽和若しくは不飽和脂肪族ポリカルボン酸残基を表し、該脂肪族ポリカルボン酸残基の価数は2〜6である。
2〜6個のR基は、同一又は異なって、それぞれ、一般式(a)

(式中、Rは炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表す。)で表されるトランス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基、又は、一般式(b)

(式中、Rは炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表す。)で表されるシス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基を表す。]
で表されるアミド系化合物の少なくとも2種の混合物であって、上記一般式(a)で表されるトランス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基が、混合物中の全2−アルキルシクロヘキシルアミン残基の70モル%以上100モル%未満の割合で存在している混合物の製造方法であって、
一般式(2)

[式中、Rは炭素数2〜30の飽和若しくは不飽和脂肪族ポリカルボン酸残基を表し、aは2〜6の整数を表す。]
で表されるポリカルボン酸又はその反応性誘導体と
(i) 一般式(3a)

[式中、Rは炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表す。]
で表されるトランス−2−アルキルシクロヘキシルアミン及び(ii)一般式(3b)

[式中、Rは炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表す。]
で表されるシス−2−アルキルシクロヘキシルアミンとを含み、ガスクロマトグラフィー(GLC)により測定した一般式(3a)で表されるトランス−2−アルキルシクロヘキシルアミン含量が70%以上100%未満であるアミン混合物
とをアミド化反応させることを包含する製造法。
【請求項20】
一般式(1)

[式中、
aは、2〜6の整数を表す。
は、炭素数2〜30の飽和若しくは不飽和脂肪族ポリカルボン酸残基を表し、該脂肪族ポリカルボン酸残基の価数は2〜6である。
2〜6個のR基は、同一であって、一般式(a)

(式中、Rは、炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表す。)で表されるトランス−2−アルキルシクロヘキシルアミン残基を示す。]
で表されるアミド系化合物の製造方法であって、
一般式(2)

[式中、Rは炭素数2〜30の飽和若しくは不飽和脂肪族ポリカルボン酸残基を表し、aは2〜6の整数を表す。]
で表されるポリカルボン酸又はその反応性誘導体と
一般式(3a)

[式中、Rは炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表す。]
で表されるトランス−2−アルキルシクロヘキシルアミンとをアミド化反応させることを包含する製造法。
【請求項21】
請求項1〜7のいずれかに記載の混合物又は請求項8〜13に記載のアミド系化合物をポリオレフィン樹脂に配合して樹脂組成物を得、該樹脂組成物を成形することからなるポリオレフィン樹脂成形体の剛性向上方法。
【請求項22】
ポリオレフィン樹脂成形体の剛性向上のための請求項1〜7のいずれかに記載の混合物又は請求項8〜13に記載のアミド系化合物の使用。

【国際公開番号】WO2005/037770
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【発行日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−514807(P2005−514807)
【国際出願番号】PCT/JP2004/015297
【国際出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【出願人】(000191250)新日本理化株式会社 (90)
【Fターム(参考)】