説明

アミノアルキルアルコキシシランの製造方法

ハロゲン化アルキルアルコキシシランを、アンモニアと共に、高圧反応器内において前記ハロゲン化アルキルアルコキシシランの20〜99.99%(w/w)を消費するために十分な時間反応させ、アミノアルキルアルコキシシランを生成する工程と、前記反応器からアンモニアを放出し、前記アミノアルキルアルコキシシラン、未反応のハロゲン化アルキルアルコキシシラン、およびハロゲン化アンモニウムを含む混合物を与える工程と、第一級アミンを用いて前記混合物を処理し、N−置換アミノアルキルアルコキシシランを生成する工程と、を具えるアミノアルキルアルコキシシランの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノアルキルアルコキシシランの製造方法に関し、特に、ハロゲン化アルキルアルコキシシランをアンモニアと反応させアミノアルキルアルコキシシランを生成する工程と、反応器からアンモニアを放出し、前記アミノアルキルアルコキシシラン、未反応のハロゲン化アルキルアルコキシシラン、およびハロゲン化アンモニウムを含む混合物を与える工程と、第一級アミンを用いて前記混合物を処理し、N−置換アミノアルキルアルコキシシランを生成する工程と、を具える方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アミノアルキルアルコキシシランの製造方法は、当技術分野では周知である。例えば、アミノアルキルアルコキシシランは、高圧下において過剰のアンモニアと共にハロゲン化アルキルアルコキシシランをアミノリシスすることにより製造することができる。しかしながら、アンモニアを過剰にしても、長時間、例えば、12〜15時間が反応を完了するのに必要とされ、ハロゲン化アルキルアルコキシシランの最後10%(w/w)を消費するために、その反応時間の約70%が費やされる。さらに、反応の最終段階の間、相当量の不要なビスアミンおよびトリスアミン副生成物が、アミノアルキルアルコキシシラン生成物と開始物質であるハロゲン化アルキルアルコキシシランとの反応により生成し、所望の生成物の収率を減少させる。反応をより短い時間で行った場合、未反応のハロゲン化アルキルアルコキシシランからアミノアルキルアルコキシシラン生成物を分離することは、これらの化合物が類似の沸点を有するため、商業的な規模で達成することが難しく、かつ、コストがかかる。そのため、反応時間を最小とし、副生成物の生成を減少させ、そして開始物質と生成物の分離を回避する、ハロゲン化アルキルアルコキシシランのアミノリシスによるアミノアルキルアルコキシシランの製造方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、アミノアルキルアルコキシシランの製造方法を対象とし、その方法は、
(i)X(CHSiR(OR3−n(I)または(II)の式を有するハロゲン化アルキルアルコキシシランを、アンモニアと共に、高圧反応器内において、30〜200℃で、前記ハロゲン化アルキルアルコキシシランの20〜99.99%(w/w)を消費するのに十分な時間反応させ、アミノアルキルアルコキシシランを生成する工程と、
【化1】


(式中、各Rは、独立してC〜C10の炭化水素基から選ばれ、各Rは、独立してHおよびC〜Cの炭化水素基から選ばれ、mは、1,2,3,4,5または6であり、nは、0,1,または2であり、pは、0または1であり、qは、2,3,4または5であり、Xは、ハロゲンである)
(ii)前記反応器からアンモニアを放出し、前記アミノアルキルアルコキシシラン、未反応のハロゲン化アルキルアルコキシシラン、およびハロゲン化アンモニウムを含む混合物を与える工程と、
(iii)少なくとも115℃の沸点を有する第一級アミンを用いて前記混合物を処理し、前記第一級アミンが前記未反応のハロゲン化アルキルアルコキシシランと反応してN−置換アミノアルキルアルコキシシランを生成する工程と、
を具える。
【0004】
本発明の方法は、ハロゲン化アルキルアルコキシシランのアミノリシスによりアミノアルキルアルコキシシランを製造し、反応時間を最小とし、副生成物の生成を減少させ、そして開始物質と生成物の分離を回避する。さらに、本発明の方法は、高純度のアミノアルキルアルコキシシランを製造する。その上、本発明の方法は、商業的に有用なN−置換アミノアルキルアルコキシシランを製造する。さらに、本発明の方法は、アミノアルキルアルコキシシランから容易に分離されるN−置換アミノアルキルアルコキシシランを製造する。
【0005】
本発明の方法のアミノアルキルアルコキシシラン生成物は、ガラスまたは無機充填剤と共に熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂のためのカップリング剤として用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本明細書で用いる「a」および「an」は、1またはそれ以上を意味する。
【0007】
本発明に係るアミノアルキルアルコキシシランの製造方法は、
(i)X(CHSiR(OR3−n(I)または(II)の式を有するハロゲン化アルキルアルコキシシランを、アンモニアと共に、高圧反応器内において、30〜200℃で、前記ハロゲン化アルキルアルコキシシランの20〜99.99%(w/w)を消費するのに十分な時間反応させ、アミノアルキルアルコキシシランを生成する工程と、
【化2】


(式中、各Rは、独立してC〜C10の炭化水素基から選ばれ、各Rは、独立してHおよびC〜Cの炭化水素基から選ばれ、mは、1,2,3,4,5または6であり、nは、0,1,または2であり、pは、0または1であり、qは、2,3,4または5であり、Xは、ハロゲンである)
(ii)前記反応器からアンモニアを放出し、前記アミノアルキルアルコキシシラン、未反応のハロゲン化アルキルアルコキシシラン、およびハロゲン化アンモニウムを含む混合物を与える工程と、
(iii)少なくとも115℃の沸点を有する第一級アミンを用いて前記混合物を処理し、前記第一級アミンが前記未反応のハロゲン化アルキルアルコキシシランと反応してN−置換アミノアルキルアルコキシシランを生成する工程と、を具える。
【0008】
アミノアルキルアルコキシシランの製造方法の工程(i)において、X(CHSiR(OR3−n(I)または(II)の式を有するハロゲン化アルキルアルコキシシランを、アンモニアと共に、高圧反応器内において30〜200℃において前記ハロゲン化アルキルアルコキシシランの20〜99.99%を消費するために十分な時間反応させ、アミノアルキルアルコキシシランを生成する。
【化3】


式中、各Rは、独立してC〜C10の炭化水素基から選ばれ、各Rは、独立してHおよびC〜Cの炭化水素基から選ばれ、mは、1〜6であり、nは、0,1,または2であり、pは、0または1であり、qは、2,3,4,または5であり、そしてXは、ハロゲンである。
【0009】
ハロゲン化アルキルアルコキシシランは、X(CHSiR(OR3−n(I)または(II)の式を有する。
【化4】


式中、各Rは、独立してC〜C10の炭化水素基から選ばれ、Rは、C〜Cの炭化水素基から選ばれ、mは、1,2,3,4,5または6であり、nは、0,1,または2であり、pは、0または1であり、qは、2,3,4,または5であり、そしてXは、ハロゲンである。Xで表わされるハロゲン原子の例としては、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素が挙げられる。
【0010】
で表わされる炭化水素基は、通常、1〜10個の炭素原子、あるいは1〜6個の炭素原子、あるいは1〜4個の炭素原子を有する。少なくとも3個の炭素原子を有する非環式の炭化水素基は、分岐構造または非分岐構造を有することができる。炭化水素基の例として、メチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、ペンチル、1−メチルブチル、1−エチルプロピル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,2−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、およびデシル等のアルキル;シクロペンチル、シクロヘキシル、およびメチルシクロヘキシル等のシクロアルキル;フェニルおよびナフチル等のアリール;トリル、およびキシリル等のアルカリル;ベンジルおよびフェニルエチル等のアラルキル;ビニル、アリル、およびプロペニル等のアルケニル;スチリルおよびシンナミル等のアラルケニル;ならびにエチニルおよびプロピニル等のアルキニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0011】
で表わされる炭化水素基は、通常、1〜4個の炭素原子、あるいは1〜2個の炭素原子を有する。少なくとも3個の炭素原子を有する非環式の炭化水素基は、分岐構造または非分岐構造を有することができる。炭化水素基の例として、メチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル等のアルキルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0012】
下付き文字m、n、p、およびqは、整数である。下付き文字mは、通常、1〜6であり、あるいは2〜4であり、あるいは3であり、下付き文字nは、通常、0〜2であり、あるいは0または1であり、下付き文字pは、通常、0または1であり、あるいは0であり、下付き文字qは、通常、2〜5であり、あるいは2〜4であり、あるいは2である。
【0013】
ハロゲン化アルキルアルコキシシランの例としては、以下の式を有するハロゲン化アルキルアルコキシシランが挙げられるが、これらに限定されない。
Cl(CHSi(OCH
Cl(CHSi(CH)(OCH
Cl(CHSi(CH(OCH)、
Cl(CHSi(OCHCH
Cl(CHSi(CH)(OCHCH
Cl(CHSi(CH(OCHCH)、
Br(CHSi(OCH
Br(CHSi(CH)(OCH
Br(CHSi(CH(OCH)、
Br(CHSi(OCHCH
Br(CHSi(CH)(OCHCH
Br(CHSi(CH(OCHCH)、
I(CHSi(OCH
I(CHSi(CH)(OCH
I(CHSi(CH(OCH)、
I(CHSi(OCHCH
I(CHSi(CH)(OCHCH
I(CHSi(CH(OCHCH)、
【化5】


【化6】

【0014】
ハロゲン化アルキルアルコキシシランの製造方法は、当技術分野では周知であり、これらの化合物の多くが市販されている。ハロゲン化アルキルアルコキシシランは、適切なハロゲン化アルキルハロシランとアルコールとの反応により製造してもよい。また、それらを、適切な条件下、ハロゲン化アルキルアルコキシシランとアルカンジオールとの反応により製造してもよい。ハロゲン化アルキルアルコキシシランの製造に使用されるアルコールは、例えば、メタノール、エタノール、プロパノールおよびブタノールである。ハロゲン化アルキルアルコキシシランの製造に使用されるジオールは、例えば、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、および2−iso−ブチル−1,4−ブタンジオールである。
【0015】
アンモニアは、反応の温度および圧力において、気体状のアンモニアと平衡状態にある液体状のアンモニアである。液体状のアンモニアは市販されている。
【0016】
アミノアルキルアルコキシシランを製造するためのハロゲン化アルキルアルコキシシランとアンモニアとの反応は、ハロゲン化アルキルアルコキシシランとアンモニアとを、例えば、接触させるのに適したどのような標準的な高圧反応器内においても行うことができる。好適な反応器としては、高圧Parr反応器、オートクレーブ、および回転オートクレーブが挙げられる。好ましくは、反応器は、撹拌等のかき混ぜ手段を具えている。
【0017】
ハロゲン化アルキルアルコキシシランとアンモニアは、どのような順序で混合してもよい。一般的には、アンモニアとハロゲン化アルキルアルコキシシランは、室温において反応器に同時にまたはほぼ同時に加えられるが、アンモニアとハロゲン化アルキルアルコキシシランのいずれか一方を先に加えて、他方をその後に加えてもよい。
【0018】
アンモニアとハロゲン化アルキルアルコキシシランのいずれかを反応器に加える速度は特に存在しない。一般的に、反応器に投入するアンモニアとハロゲン化アルキルアルコキシシランを測り、反応を進めるために反応器を加熱する。
【0019】
アンモニアとハロゲン化アルキルアルコキシシランとの反応は、一般的に30〜200℃、あるいは30〜150℃、あるいは30〜110℃で行われる。反応温度は、反応器蒸気ジャケットまたは加熱マントル等の適切な機材の使用により上げることができる。
【0020】
アンモニアとハロゲン化アルキルアルコキシシランの反応時間は、温度およびハロゲン化アルキルアルコキシシランの消費に依存する。反応は、ハロゲン化アルキルアルコキシシランの20〜99.99%、あるいは40〜99.99%、あるいは70〜99.98%、あるいは85〜99.98%を消費するために十分な時間行われる。本明細書で用いる「消費する」とは、ハロゲン化アルキルアルコキシシランが、以下に述べるアミノアルキルアルコキシシラン等のハロゲン化アルキルアルコキシシランとは異なる化合物を生成するために反応したことを意味する。ハロゲン化アルキルアルコキシシランが消費される速さは、温度の増加と共に増す。反応時間は、70〜110℃において、通常、0.5〜15時間、あるいは0.5〜12時間、あるいは0.5〜2.5時間である。消費したハロゲン化アルキルアルコキシシランの量は、その製造方法の間にハロゲン化アルキルアルコキシシランについて反応混合物をその分野で一般的な手法を用いて分析することにより求めることができる。
【0021】
アンモニアとハロゲン化アルキルアルコキシシランとの反応の圧力は、温度に依存する。反応温度が増すと共に圧力も増す。ゲージ圧は、30〜110℃において、通常、1300〜10300kPa、あるいは2000〜8000kPa、あるいは2800〜6900kPaである。
【0022】
アンモニアとハロゲン化アルキルアルコキシシランは、通常、アンモニアとハロゲン化アルキルアルコキシシランのモル比が、10:1〜100:1、あるいは20:1〜60:1、あるいは20:1〜40:1で反応する。
【0023】
アミノアルキルアルコキシシランの製造方法の工程(ii)において、反応器からアンモニアを放出し、アミノアルキルアルコキシシラン、未反応のハロゲン化アルキルアルコキシシラン、およびハロゲン化アンモニウムを含む混合物を与える。
【0024】
反応器からアンモニアを放出する温度は、通常、およそ室温であるが、室温より高い温度で放出してもよい。高圧反応器からアンモニアを放出するためのその技術分野で周知の手法を用いてもよい。
【0025】
アミノアルキルアルコキシシランを製造する方法の工程(iii)では、少なくとも115℃の沸点を有する第一級アミンを用いて前記混合物を処理し、前記第一級アミンが未反応のハロゲン化アルキルアルコキシシランと反応し、N−置換アミノアルキルアルコキシシランを生成する。本明細書で用いる「処理」または「処理される」とは、第一級アミンと混合物を一緒にして、第一級アミンが混合物中において未反応のハロゲン化アルキルアルコキシシランと反応するようにすることを意味する。「第一級アミン」とは、窒素原子とその窒素原子に結合した一つの有機基と二つの水素原子を有する化合物を意味する。第一級アミンは、モノアミン、ジアミン、トリアミン、テトラアミン、またはペンタアミンでもよく、あるいは、第一級アミンは、次式で表わされるものであってもよい。
N(−RNH−)H、またはHNR
式中、各Rは、独立して2価の炭化水素(hydrocarbylene)基であり、そしてcは、1,2,3または4であり、Rは、炭化水素基である。
【0026】
で表わされる2価の炭化水素基は、通常、2〜6個の炭素原子、あるいは1〜4個の炭素原子、あるいは2〜4個の炭素原子を有する。さらに、2価の炭化水素基の自由原子価は、通常、2,3,または4個の炭素原子、あるいは2または3個の炭素原子により離れている。Rで表わされる2価の炭化水素基の例としては、以下のものが挙げられるがこれらに限定されない。
−CHCH−、
−CHCHCH−、
−CHCH(CH)−、
−CH(CHCH−、
−CH(CHCH−、
−C(CHCHCHCH−、
オルトフェニレン、
パラフェニレン、
−C(CHCHCH(CH)−、および
−CHCH(CH)CH(CHCH)−
【0027】
で表わされる炭化水素基は、通常、6〜20個の炭素原子、あるいは6〜12個の炭素原子、あるいは6〜10個の炭素原子を有する。非環式の2価の炭化水素基は、分岐構造または非分岐構造を有することができる。炭化水素基の例として、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシル、ヘンエイコシル、ドコシル、トリコシル等のアルキル;シクロヘキシル、およびメチルシクロヘキシル等のシクロアルキル;フェニルおよびナフチル等のアリール;トリルおよびキシリル等のアルカリル;ベンジルおよびフェニルエチル等のアラルキル;ヘキセニル等のアルケニル;スチリルおよびシンナミル等のアラルケニル;ならびにヘキシニル等のアルキニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
下付き文字cは、通常、1〜4、あるいは1〜3、あるいは1または2の整数である。
【0029】
第一級アミンの沸点は少なくとも115℃である。例えば、第一級アミンの沸点は、115〜400℃、あるいは115〜250℃である。第一級アミンの沸点は、N−置換アミノアルキルアルコキシシランの沸点が、アミノアルキルアルコキシシランの沸点と十分に異なり、分離が可能となるように選ばれる。
【0030】
第一級アミンの例としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン、およびベンジルアミンが挙げられるが、これらに限定されない。一の実施態様では、第一級アミンは、エチレンジアミン、シクロヘキシルアミン、またはアニリンである。第一級アミンは、単一の第一級アミンでもよいし、または2以上の異なる第一級アミンの混合物でもよい。さらに、第一級アミンを製造する方法は、当技術分野では周知であり、これらの化合物の多くは市販されている。例えば、エチレンジアミン、シクロヘキシルアミン、アニリンおよびベンジルアミンは、市販されている。
【0031】
第一級アミンと前記混合物は、バッチもしくは連続的なプロセスにおいて、従来の反応器内、配管内もしくは他の工程段階および設備へ繋がる導管、または工程(i)において使用した高圧反応器内において混合されてもよい。N−置換アミノアルキルアルコキシシランの製造について当技術分野で周知の反応槽、設備、および混合方法を用いてもよい。好ましくは、反応器は、撹拌等のかき混ぜ手段、および加熱ジャケットまたは加熱マントル等の加熱手段を具えている。第一級アミンと混合物は、空気またはハロゲン化アルキルアルコキシシランからN−置換アミンを生成するための他の一般的な雰囲気において混合することができる。
【0032】
前記混合物と第一級アミンは、どのような順序で混合してもよい。通常、第一級アミンと混合物は、第一級アミンを前記混合物に加えることにより混合されるが、逆に加えること(すなわち、前記混合物を第一級アミンに加えること)も可能である。
【0033】
第一級アミンを前記混合物に加える速さまたは前記混合物を第一級アミンに加える速さは、残りのハロゲン化アルキルアルコキシシランを消費するために第一級アミンの反応にとって重要ではない。第一級アミンを前記混合物に、全て一度に加えてもよいし、または徐々に加えてもよい。通常は、第一級アミンを前記混合物に100℃より高い温度で数秒ないし60分の時間で加える。
【0034】
前記混合物は、第一級アミンによって、20〜200℃、あるいは40〜160℃、あるいは50〜150℃で、通常、処理される。
【0035】
前記混合物が、第一級アミンによって処理される時間は、第一級アミンの構造および温度を含むいくつかの要因に依存する。前記混合物は、第一級アミンによって、20〜150℃で、24時間以下、あるいは1〜4時間、あるいは5分〜2.5時間で、通常、処理される。最適な処理時間は、後述する実験項の方法を用いて日常の実験により決定することができる。
【0036】
第一級アミンの濃度は、前記混合物中のハロゲン化アルキルアルコキシシランとの反応に影響するのに、通常、十分である。例えば、第一級アミンの濃度は、前記混合物中のハロゲン化アルキルアルコキシシラン1モル当たり、通常は、0.5〜40モル、あるいは1〜30モル、あるいは2〜20モルである。
【0037】
本発明の方法は、アミノアルキルアルコキシシランからハロゲン化アンモニウムを除去する工程、をさらに具えることができる。ハロゲン化アンモニウムは、通常、ろ過により除去されるが、遠心分離等の他の除去の方法も考えられる。ハロゲン化アンモニウムの除去は、大気圧において行ってもよいし、または真空ろ過もしくは加圧ろ過を用いてもよい。除去は、通常、工程(ii)の後、工程(iii)の後、または工程(ii)と工程(ii)の後である。工程(iii)の後に除去する場合、本発明の方法においてハロゲン化水素から生じた第一級アミンのハロゲン化物塩と過剰の第一級アミンも除去してもよい。
【0038】
さらに、アミノアルキルアルコキシシランとN−置換アミノアルキルアルコキシシランとを、ハロゲン化アンモニウム等の塩を沈殿させ、そして、後述するように相分離の間に第一級アミンの相にこれらの塩を入れるために、無極性溶媒と共に混合してもよい。無極性溶媒を用いる場合、無極性溶媒の質量は、通常、生成物の相の質量の0.3〜2倍である。無極性溶媒は、本発明の方法において生じたハロゲン化物塩の沈殿を引き起こすどのような無極性溶媒であってもよい。無極性溶媒の例は、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンおよびそれらの異性体等の直鎖状、分岐状および環状のC〜C10アルカンである。無極性溶媒との混合は、振とうまたは撹拌等の従来の方法を用いて行うことができる。
【0039】
本発明の方法は、アミノアルキルアルコキシシランとN−置換アミノアルキルアルコキシシランとを回収する工程、をさらに具えることができる。工程(iii)の後、アミノアルキルアルコキシシランとN−置換アミノアルキルアルコキシシランは、アミノアルキルアルコキシシランとN−置換アミノアルキルアルコキシシランとを含む生成物の相を第一級アミンの相から分離することにより回収することができる。分離は、撹拌を中止し、2層に分離し、そして生成物または第一級アミンの相を除去することにより行うことができる。
【0040】
次いで、アミノアルキルアルコキシシランとN−置換アミノアルキルアルコキシシランとを分離および/または精製してもよい。分離および/または精製は、蒸留等の適切な分離および/または精製手法を用いてもよい。分離および/または精製は、一連の蒸留システムを用いて繰り返してもよいし、またはその後の精製および/または分離のために同じシステムに戻してもよい。
【0041】
本発明の方法により製造されるアミノアルキルアルコキシシランは、典型的には、HN(CHSiR(OR3−n(III)または(IV)の式を有する。
【化7】


式中、各Rは、独立してC〜C10の炭化水素基から選ばれ、各Rは、独立してHおよびC〜Cの炭化水素基から選ばれ、mは、1,2,3,4,5または6であり、nは、0,1,または2であり、pは、0または1であり、qは、2,3,4または5である。
【0042】
およびRで表わされる炭化水素基、ならびに下付き文字m、n、p、およびqは、ハロゲン化アルキルアルコキシシランについて上述し、例示したものと同様である。
【0043】
本発明の方法により製造され得るアミノアルキルアルコキシシランは、以下の式を有するアミノアルキルアルコキシシランであるが、これらに限定されない。
N(CHSi(OCH
N(CHSi(CH)(OCH
N(CHSi(CH(OCH)、
N(CHSi(OCHCH
N(CHSi(CH)(OCHCH
N(CHSi(CH(OCHCH)、
N(CHSi(CHCH)(OCH
N(CHSi(CHCH(OCH)、
N(CHSi(CHCH)(OCHCH
N(CHSi(CHCH(OCHCH)、
N(CHSi(OCHCHCH
N(CHSi(CH)(OCHCHCH
N(CHSi(CH(OCHCHCH)、
N(CHSi(OCH
N(CHSi(CH)(OCH
N(CHSi(CH(OCH)、
N(CHSi(OCHCH
N(CHSi(CH)(OCHCH
N(CHSi(CH(OCHCH)、
【化8】

【0044】
本発明の方法により製造されるN−置換アミノアルキルアルコキシシランは、典型的には、YNH(CHSiR(OR3−n(V)または(VI)の式を有する。
【化9】


式中、各Rは、独立してC〜C10の炭化水素基から選ばれ、各Rは、独立してHおよびC〜Cの炭化水素基から選ばれ、mは、1,2,3,4,5または6であり、nは、0,1,または2であり、pは、0または1であり、qは、2,3,4または5であり、Yは、−RNH(−RNH−)H、またはRであり、Rは、2価の炭化水素基であり、Rは、炭化水素基であり、そしてcは、0,1,2,または3である。
【0045】
およびRで表わされる炭化水素基、ならびに下付き文字m、n、p、およびqは、ハロゲン化アルキルアルコキシシランについて上述し、例示したものと同様である。Rで表わされる炭化水素基およびRで表わされる2価の炭化水素基は、第一級アミンについて上述し、例示したものと同様である。
【0046】
下付き文字cは、通常、0〜3、あるいは0〜2、あるいは0または1の整数である。
【0047】
N−置換アミノアルキルアルコキシシランは、アミノアルキルアルコキシシランの沸点と異なる沸点を有する。例えば、N−置換アミノアルキルアルコキシシランの沸点は、アミノアルキルアルコキシシランの沸点と、通常、少なくとも4℃、あるいは少なくとも10℃、あるいは10℃〜200℃異なる。沸点の違いにより、N−置換アミノアルキルアルコキシシランとアミノアルキルアルコキシシランの分離が可能となる。
【0048】
本発明の方法により製造され得るN−置換アミノアルキルアルコキシシランの例としては、以下の式を有するものが挙げられるがこれらに限定されない。
NCHCHNH(CHSi(OCH
NCHCHNH(CHSi(CH)(OCH
NCHCHNH(CHSi(CH(OCH)、
NCHCHNH(CHSi(OCHCH
NCHCHNH(CHSi(CH)(OCHCH
NCHCHNH(CHSi(CH(OCHCH)、
N(CHNH(CHNH(CHSi(OCH
N(CHNH(CHNH(CHSi(CH)(OCH
N(CHNH(CHNH(CHSi(CH(OCH)、
N(CHNH(CHNH(CHSi(OCHCH
N(CHNH(CHNH(CHSi(CH)(OCHCH
N(CHNH(CHNH(CHSi(CH(OCHCH)、
11NH(CHSi(OCH
11NH(CHSi(CH)(OCH
11NH(CHSi(CH(OCH)、
11NH(CHSi(OCHCH
11NH(CHSi(CH)(OCHCH
11NH(CHSi(CH(OCHCH)、
NH(CHSi(OCH
NH(CHSi(CH)(OCH
NH(CHSi(CH(OCH)、
11NH(CHSi(OCHCH
NH(CHSi(CH)(OCHCH
NH(CHSi(CH(OCHCH)、
CHNH(CHSi(OCH
CHNH(CHSi(CH)(OCH
CHNH(CHSi(CH(OCH)、
CHNH(CHSi(OCHCH
CHNH(CHSi(CH)(OCHCH
CHNH(CHSi(CH(OCHCH)、
【化10】


【化11】

【0049】
本発明の方法にはいくつかの利点がある。本発明の方法により、N−置換アミノアルキルアルコキシシランおよびアミノアルキルアルコキシシランの高純度での製造と単離が可能となる。本発明の方法により、より少ない時間でハロゲン化アルキルアルコキシシランを消費し、したがって、ハロゲン化アルキルアルコキシシランとアンモニアのみで反応させる場合よりもエネルギー消費が少なくなる。本発明の方法により、商業的に有用で、かつ、アミノアルキルアルコキシシランから例えば、蒸留等により容易に分離されるN−置換アミノアルキルアルコキシシランを製造することが可能となる。本発明の方法は、ビスアミンおよびトリスアミン副生成物の生成を減少させ、かつ、高純度のアミノアルキルアルコキシシランを製造するための全体の時間を減少させる。ここで述べた本発明の全ての実施態様が、説明した全ての利点を有することを意図するものではない。
【0050】
本発明の方法のアミノアルキルアルコキシシラン生成物は、ガラスまたは無機充填剤と共に熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂のためのカップリング剤として用いることができる。
【実施例】
【0051】
以下の実施例は、本発明の製造方法の実施態様を明示するためのものである。当業者は、実施例において開示される手法が、発明者らにより見出された手法に付随し、本発明を実施する際に機能し、その実施のための方法に寄与すると考えられることを理解する。しかしながら、当業者は、本開示に照らして、本発明の精神と範囲を逸脱しない範囲で、その開示された具体的な実施態様において多くの変更が可能であること、および同様の結果を得られることを理解する。全ての%は重量%である。
【0052】
例1は、アミノアルキルアルコキシシラン、未反応のハロゲン化アルキルアルコキシシラン、およびハロゲン化アンモニウムの混合物を生成するためのアンモニアとハロゲン化アルキルアルコキシシランとの反応を含む方法の全体を実証するものである。残りの実施例は、そのアンモニアとハロゲン化アルキルアルコキシシランとの反応が停止し、アミノアルキルアルコキシシラン、未反応のハロゲン化アルキルアルコキシシラン、およびハロゲン化アンモニウムの混合物を与えるために反応器から放出した後の方法を実証するものである。参考のために実施例で用いた頭文字と略語の表を以下に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
ガスクロマトグラフィーは、40〜450℃で操作される30.0m×320.00μmキャピラリーカラム(型番Agilent 19091J-413)とフレームイオン化検出器(FID)検出器とを具えたヒューレットパッカード6890ガスクロマトグラフを用いて行った。
【0055】
塩化物は、銀指示電極及び銀−塩化銀ダブルジャンクション参照電極を用いた硝酸銀を用いた電位差滴定法により求めた。
【0056】
例1
2リットルのParr高圧反応器に、CPTES151gとアンモニア430gを投入した。反応器の温度を80〜100℃の間で3時間保持し、次いで室温まで冷却し、全てのCPTESが消費される前にアンモニアを徐々に減らすことにより放出を行った。その生成物をヘキサン161gと混合し、次いで、すすぎのためのヘキサン83gと共に加圧ろ過容器に注ぎ入れ、窒素により加圧ろ過した。そのろ過した生成物をEDA176gと共に1リットルフラスコ内において混合し、室温で二日間反応させた。その反応後、2つの相が観察され、その2つの相を分離し、加圧ろ過し、GC−FIDにより分析した。上側の半透明で白色の相は337gで、その大部分はヘキサンとシランだった。一方、ぼんやりした淡黄色の下側の層は140gで、主にEDAとEDAの塩だった。CPTESは検出されなかった。この例は、EDAが残りのCPTESと反応することを示している。
【0057】
例2
2リットルのフラスコに、APTES298.85g、CPTES36.12g、およびEDA180.30gを投入した。その混合物を115℃で2時間、還流した。その生成物は、397gの上側の相と、25gの下側の相の2相に分離した。その下側の相と上側の相をGC−FIDにより分析したところ、少量のDAを含み、CPTESは検出されなかった。蛍光X線(XRF)分析により、下側の相が塩酸塩を含むことが確認された。この例は、アンモニア−CPTES反応の工程を行わない例1を再現したものであり、EDAが残りのCPTESを消費するために反応することを示している。
【0058】
例3
2リットルのフラスコに、APTES298.85g、CPTES36.12g、およびEDA180.30gを投入した。その混合物を115℃で2時間、還流した。生成物の相460gおよび塩の相30gが得られた。その生成物の相を絶対圧約2inHgでバキュームストリッピングした。GC−FIDテストをしたところ、カット1とカット2は主にEDAを含み、カット3は大部分がAPTESで、かすんだ黄色だった。カット4として採取した塔頂留出物の物質の大部分は、琥珀色で約90%がAPTESだった。ポットに残った少量の琥珀色の物質は、カット4よりもわずかに多いジアミンを含んでいた。回収の結果をまとめたものを表2に示す。C−DAまたはCPTESは検出されなかった。
【0059】
【表2】

【0060】
窒素スイープ、15インチVigreux式蒸留塔、およびトータルコンデンサーを具えた1リットルの反応フラスコに、カット3、カット4、およびそのポットの物質を投入し、分別蒸留を行った。その分別蒸留の結果をまとめたものを表3に示す。7つの塔頂留出物のカットが採集され、粘性の暗い琥珀色の物質20gがフラスコに残った。始めの5つのカットをGC−FIDにより分析したところ、98%以上のAPTES(環状のものを含む)を含むことが分かった。EDAとCPTESは検出されなかった。
【0061】
【表3】

【0062】
この例は、残りのCPTESがEDAと反応して消費され、そしてその結果、APTESとN−アミノエチル−3−アミノプロピルトリエトキシシランを分別蒸留によって分離することができ、APTESを98%以上の純度で与えることを示している。
【0063】
例4
例3で述べた反応装置と同じものを用いて、アミノプロピルトリエトキシシラン232g、CPTES108g、およびEDA270gを115℃で2時間、還流した。2時間後、2つの相が形成された。上側の生成物の相は464gで、下側の相は106gだった。次いで、表4に示すように、4つの生成物の層のサンプルと種々の量のヘキサンとを混合した。ヘキサンを加えた各サンプルを相分離した。
【0064】
相分離に要した時間が減少して、サンプル中のヘキサンの濃度が増加するにつれて廃棄する層の量が増加した。各サンプルの上側の相を0.45マイクロメートルのシリンジフィルターを用いてろ過し、硝酸銀を用いた電位差滴定法により塩化物を測定した。表4にその結果を示す。
【0065】
【表4】

【0066】
その4つのろ過したサンプルを次いで、200gの生成物の層およびヘキサンと混合してヘキサンの質量分率を0.5として、分離した。そのEDA/EDA−HClの廃液を相分離して捨て、生成物の相を加圧ろ過して、蒸留した。その生成物−ヘキサンの相を例3で用いたものと同じ蒸留装置に加えて、絶対圧2inHgで蒸留した。カット1およびカット2は、主にヘキサンとEDAを含んでいた。カット3をポットに戻し、窒素スイープを100cm/分に減らし、蒸留を継続した。カット4〜10についての蒸留の結果を表5および表6に示す。GC−FIDではCPTESは検出されなかった。蒸留終了時に約20gの粘性でカラメル色の物質がポットに残っていた。
【0067】
【表5】

【0068】
【表6】

【0069】
例5
撹拌機、還流冷却器、および窒素雰囲気生成装置を具えた3リットルのフラスコに、APTES465g、CPTES217g、塩化アンモニウム6.82g、およびEDA557gを投入した。そのフラスコを加熱し、その内容物を115℃で2時間、還流した。2時間後、2つの相が形成された。予測したシラン703gに対して1:1の質量比になるように徐々にヘキサンを加えた。各ヘキサンの追加と塩化物の滴定の後に、上側の相からサンプル7gを得た。追加の間に、そのフラスコを10分間撹拌し、次いで10分間で分離した。ろ過していないサンプルに対して、硝酸銀を用いた電位差滴定法によりイオン化塩化物測定を行った(結果は表7に示す)。
【0070】
【表7】

【0071】
最後のヘキサンの追加と分離の後に生成物のサンプルをシリンジろ過したところ、30.3ppmの塩化物が含まれていた。最後のヘキサンの追加の後、その上側の層を単離し、およそ100cm/分の窒素スイープにおいて、トータルコンデンサーを具えた15インチVigreux式カラムを具えた5リットルのフラスコを用いて絶対圧4inHgで回収した。その留分を受器と冷却トラップとを用いて採集し、GC−FIDにより測定した。室温、93℃、および132℃で採集された始めの3つの留分は、主にヘキサン、EDAおよび少量のシランを含んでいた。この始めの3つの留分の後に、ポットの大きさを1リットルに変更し、ポットの温度を200℃に上げ、それに合わせて塔頂留出物温度を約165℃とした。受器に総量565gの澄んだ無色透明の物質が回収され、ポットには約22gのゲルが残った。
【0072】
10トレイ蒸留塔と、トータルコンデンサーを具えた還流制御ヘッドと、を具えた1リットルのフラスコ内に、その回収した物質565gを投入した。その装置を窒素で不活性化した。絶対圧10〜20mmHgで分留を行った。9つの蒸留カットを秤量し、GC−FIDにより分析した。その結果を表8に示す。CPTESは検出されなかった。
【0073】
【表8】

*これらのサンプル中に白色結晶が観察された。その結晶をカット7bとして単離してヘキサンに溶解し、その組成を決定するためにGC−MSにより分析したところ、DAとDAのジシロキサンであることが分かった。
【0074】
例6
1リットルの3口丸底フラスコにAPTES164.70g(0.744g−mol)およびCPTES59.49g(0.247g−mol)を投入した。そのフラスコを80℃まで加熱し、次いでシクロヘキシルアミン215.73gを添加漏斗を通して45分間かけて追加した。そのフラスコの温度を2時間、75〜80℃に保ち、蒸発による物質の損失を防ぐためにリービッヒ冷却器を用いた。そのフラスコを室温まで冷却し、サンプルを回収した。そのサンプルはわずかに液体でほとんど固体だったため、相分離を促進するためにヘキサンを加えた。GCを用いてそのサンプルを分析した。そのサンプルの組成は、少量(15〜20%)のCPTESのみがシクロヘキシルアミノプロピルトリエトキシシランに変換されたことを示していた。この実験から、シクロヘキシルアミンとCPTESとの間の反応速度は75〜80℃では遅いことが示された。
【0075】
例7
例6と同じ装置に、APTES161.18g(0.728g−mol)およびCPTES62.04g(0.258g−mol)を投入した。そのフラスコを125℃まで加熱し、次いでシクロヘキシルアミン220.07g(2.22g−mol)を追加した。その温度を125℃で2時間保ち、次いで室温に下げた。次いでそのフラスコを110℃〜115℃まで加熱し、サンプルを回収した。ヘキサンを追加し、他のサンプルを取り、そこにNaOEtを追加した。そのGCクロマトグラムは、8%のシクロヘキシルアミノプロピルトリエトキシシラン生成物が生成したことと、初期に環状シラザンまたは生成した塩に変換されていたことを示していた。そのGC測定は、全てのCPTESが消費されたことを示していた。
【0076】
例6と同じ装置に、APTES191.16g(0.864g−mol)およびCPTES67.06g(0.278g−mol)を投入した。そのフラスコを140℃まで加熱し、次いでアニリン254.98g(2.78g−mol)を30分間かけてゆっくり追加した。その追加が完了した後、そのフラスコの温度を140℃で2時間保った。GC測定のためにサンプルを抽出するときに、そのフラスコの温度を80℃まで下げた。そのGCクロマトグラムは、ポットのサンプルがアニリン70%、APTES18%、シクロヘキシルアミノプロピルトリエトキシシラン5%を含むことを示していた。CPTESは完全に消費されていた。
【0077】
そのフラスコおよび内容物をさらに2回、高い温度で加熱した。そのフラスコを150℃で2時間加熱し、次いで170℃で2時間加熱した。GC測定のために、150℃で加熱した後と、170℃で加熱した後にサンプルを回収した。ヘキサンは追加しなかった。3つ全てのGCの測定値から生成物のピークが観察され、塩または環状生成物を示すピークも同様に観察された。そのサンプル中の環状および塩の形態の化学物質を除去し、それらを非塩または非環状の形態に変換するために、ナトリウムエチレート(NaOEt)を170℃まで加熱したサンプルに加えた。塩/環状の生成物であることを示すピークが確認された。各サンプルにおける生成物の量には違いは見られなかった。この例は、アニリンが未反応のCPTESと反応して生成物を生成し、CPTESを消費することを示している。
【0078】
例9
例6と同じ装置に、APTES183.34gおよびCPTES69.48gを投入した。そのフラスコを145℃にして、アニリン254.81gをそのフラスコに15〜30分間かけて追加した。その温度を2時間保ち、GC測定のためにサンプルを採取した。他のサンプルを採取し、NaOEtと混合した。GC−FID分析は、そのサンプルがアニリン67%、APTES20%、およびシクロヘキシルアミノプロピルトリエトキシシラン5%を含むことを示していた。CPTESは完全に消費されていた。
【0079】
例10
例8および例9の生成物を混合し、5トレーのクライゼン蒸留ヘッドを具えた1リットルの3口丸底フラスコ内で蒸留した。その圧力は、絶対圧5mmHg〜100mmHgに及び、その温度は100℃〜200℃に及んだ。そのアニリンおよびAPTESを蒸留し、ポットにはP−APTESが残った。絶対圧9.5mmHgとポット温度110℃の真空蒸留により、約90%の純度でアニリンは容易に回収された。そのAPTESは容易に回収されなかった。13mmHgの低い絶対圧と、145℃の高い温度で、APTESおよびC−APTESを90%含むカットが得られた。ポットの内容物のGC−MSクロマトグラムは、4つのピークを示し、P−APTES、P−APTES塩、環状P−APTES、環状P−APTES塩と同定された。
【0080】
例11(机上の比較例)
この例は、研究室および生産工程のデータを用いて用意された。それは反応速度モデルであり、実際の物理実験をただ予測するためのものである。高圧反応容器内において、アンモニアとCPTESとが、アンモニアとCPTESのモル比が35:1で混合される。その反応器は加熱され、85℃を13時間保持する。CPTESの変換は、4時間後に94.01%、6時間後に98.54%、8時間後に99.64%、10時間後に99.91%、12時間後に99.98%、そして13時間後に99.99%と予測される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)X(CHSiR(OR3−n(I)または(II)の式を有するハロゲン化アルキルアルコキシシランを、アンモニアと共に、高圧反応器内において、30〜200℃で、前記ハロゲン化アルキルアルコキシシランの20〜99.99%(w/w)を消費するのに十分な時間反応させ、アミノアルキルアルコキシシランを生成する工程と、
【化1】


(式中、各Rは、独立してC〜C10の炭化水素基から選ばれ、各Rは、独立してHおよびC〜Cの炭化水素基から選ばれ、mは、1,2,3,4,5または6であり、nは、0,1,または2であり、pは、0または1であり、qは、2,3,4または5であり、Xは、ハロゲンである)
(ii)前記反応器からアンモニアを放出し、前記アミノアルキルアルコキシシラン、未反応のハロゲン化アルキルアルコキシシラン、およびハロゲン化アンモニウムを含む混合物を与える工程と、
(iii)少なくとも115℃の沸点を有する第一級アミンを用いて前記混合物を処理し、前記第一級アミンが前記未反応のハロゲン化アルキルアルコキシシランと反応してN−置換アミノアルキルアルコキシシランを生成する工程と、
を具える、アミノアルキルアルコキシシランの製造方法。
【請求項2】
前記ハロゲン化アルキルアルコキシシランが、式 X(CHSiR(OR3−n(式中、各Rは、独立してエチルまたはメチルであり、mは、3であり、nは0であり、Xが塩素である)を有する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記ハロゲン化アルキルアルコキシシランを、当該ハロゲン化アルキルアルコキシシランの70〜99.98%(w/w)を消費するために十分な時間前記アンモニアと反応させる、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記ハロゲン化アルキルアルコキシシランとアンモニアとを、0.5時間〜2.5時間反応させる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記アンモニアと前記ハロゲン化アルキルアルコキシシランとを、3400〜5500kPaのゲージ圧において反応させる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記第一級アミンが、115〜400℃の沸点を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記第一級アミンが、式 HN(−RNH−)HまたはHNR(式中、各Rは、独立して2価の炭化水素基であり、cは、1,2,3または4であり、Rは、炭化水素基である)を有する請求項1〜6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記混合物が、前記第一級アミンを用いて、50〜150℃で処理される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記混合物が、前記第一級アミンを用いて、5分〜2.5時間処理される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記混合物が、当該混合物中のハロゲン化アルキルアルコキシシラン1モル当たり0.5〜40モルの第一級アミンによって処理される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記アミノアルキルアルコキシシラン及び前記N−置換アミノアルキルアルコキシシランを回収する工程、をさらに具える、請求項1〜10のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項12】
前記ハロゲン化アンモニウムを除去する工程、をさらに具える、請求項1〜11のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項13】
前記アミノアルキルアルコキシシランと前記N−置換アミノアルキルアルコキシシランとを分離する工程、をさらに具える、請求項1〜12のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項14】
前記アミノアルキルアルコキシシランが、HN(CHSiR(OR3−n(III)または(IV)の式を有する請求項1に記載の製造方法。
【化2】


(式中、各Rは、独立してC〜C10の炭化水素基から選ばれ、各Rは、独立してHおよびC〜Cの炭化水素基から選ばれ、mは、1,2,3,4,5または6であり、nは、0,1,または2であり、pは、0または1であり、qは、2,3,4または5である)
【請求項15】
前記N−置換アミノアルキルアルコキシシランが、YNH(CHSiR(OR3−n(V)または(VI)の式を有する請求項1に記載の製造方法。
【化3】


(式中、各Rは、独立してC〜C10の炭化水素基から選ばれ、各Rは、独立してHおよびC〜Cの炭化水素基から選ばれ、mは、1,2,3,4,5または6であり、nは、0,1または2であり、pは、0または1であり、qは、2,3,4または5であり、Yは、−RNH(RNH)H、またはRであり、Rは、2価の炭化水素基であり、Rは、炭化水素基であり、そしてcは、0,1,2,または3である)

【公表番号】特表2013−508275(P2013−508275A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534230(P2012−534230)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際出願番号】PCT/US2010/051726
【国際公開番号】WO2011/046791
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(590001418)ダウ コーニング コーポレーション (166)
【氏名又は名称原語表記】DOW CORNING CORPORATION
【Fターム(参考)】