説明

アミノ酸−N−カルボキシ無水物の製造方法

【課題】アミノ酸−N−カルボキシ無水物製造方法の提供。
【解決手段】スキーム1に示す方法。


(式中、Rは、置換もしくは無置換のアルキル基、アリール基及び複素環基から選ばれる基を置換基として有していてもよい炭素数1〜5のアルキレン基である。Rは、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、アリール基又は複素環基を表す。RとRが結合し環を形成していてもよい。また、R及びRは、同一または相異なって、塩素原子又はトリクロロメトキシ基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノ酸−N−カルボキシ無水物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アミノ酸−N−カルボキシ無水物は、アミノ酸からポリアミノ酸を合成する際の中間体等として重要である。当該アミノ酸−N−カルボキシ無水物の合成法としては、アミノ酸にホスゲン誘導体を反応させる方法が主流となっているが、高分子量のポリアミノ酸を得るためには、高純度のアミノ酸−N−カルボキシ無水物が必要である。
アミノ酸−N−カルボキシ無水物の精製方法として、副生成物であるアミノ酸塩酸塩等の除去を目的とした、再結晶の繰り返しや低温条件下での分液精製等が知られている(例えば、非特許文献1を参照。)。
しかしながら、このような精製方法は操作が煩雑であり、さらに、元来アミノ酸−N−カルボキシ無水物は求核反応を受けやすい化合物であることから、該精製方法が分液精製である場合、該アミノ酸−N−カルボキシ無水物は水との接触や水の残留によって分解することが懸念されていた。
一方、たとえば特許文献1には、一旦単離したアミノ酸−N−カルボキシ無水物をトルエン等の芳香族系溶媒に溶解または懸濁し、シリカゲルに接触することによる脱色処理するという精製方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-149529号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Synthetic communications 1999, 29, 843.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記背景技術で述べたように、アミノ酸−N−カルボキシ無水物の製造方法において、生成物であるアミノ酸−N−カルボキシ無水物の分解等を十分防止しつつ、簡便に反応混合物からアミノ酸-N-カルボキシ無水物を単離する方法の開発が求められている。特許文献1記載の精製方法では、アミノ酸−N−カルボキシ無水物を一旦単離することが必要であり、反応混合物よりアミノ酸−N−カルボキシ無水物を精製・単離することは何ら開示されていない。
そこで、本発明は、特定のアミノ酸−N−カルボキシ無水物を製造する製造方法において、反応混合物からアミノ酸-N-カルボキシ無水物を、該アミノ酸-N-カルボキシ無水物の分解等を十分防止しつつ、簡便に精製する工程を含む製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、本発明に至った。
【0007】
すなわち、本発明は、
式(1)

(式中、Rは、置換もしくは無置換のアルキル基、アリール基及び複素環基から選ばれる基を置換基として有していてもよい炭素数1〜5のアルキレン基である。Rは、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、アリール基又は複素環基を表す。RとRが結合し環を形成していてもよい。)
で示されるアミノ酸又は、複数個の該アミノ酸が、RもしくはRを介して結合して形成された多量体と、
式(2)

(R及びRは、同一または相異なって、塩素原子又はトリクロロメトキシ基を表す。)
で示されるホスゲン誘導体と、
を反応させるアミノ酸−N−カルボキシ無水物の製造方法であって、
反応後の反応混合物を液体カラムクロマトグラフィーに供することにより、式(3)

(式中、R及びRは前記と同じ意味を表す。)
で示されるアミノ酸-N-カルボキシ無水物を、該反応混合物から分離する工程を含むことを特徴とする製造方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、アミノ酸−N−カルボキシ無水物の分解等を十分防止しつつ、簡便に高純度のアミノ酸−N−カルボキシ無水物を製造することができるため有用である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
式(3)で示されるアミノ酸−N−カルボキシ無水物(以下、アミノ酸−N−カルボキシ無水物(3)と略す。)は、
式(1)で示されるアミノ酸(以下、アミノ酸(1)と略す。)と、式(2)で示されるホスゲン誘導体(以下、ホスゲン誘導体(2)と略す。)と、を反応(カルボニル化反応)させることができる(下記スキーム1参照)。

【0010】
本発明に用いられるアミノ酸(1)は、通常市販のものを用いることができ、具体的には、アラニン、β-アラニン、2-アミノブチル酸、4-アミノブチル酸、6-アミノカプロン酸、α-アミノイソブチル酸、グリシン、4-クロロフェニルアラニン、シクロヘキシルアラニン、シスチン、3,4-デヒドロプロリン、2-フルオロフェニルアラニン、3-フルオロフェニルアラニン、4-フルオロフェニルアラニン、2-ピリジルアラニン、3-ピリジルアラニン、4-ピリジルアラニン、1-ナフタレニルアラニン、2-ナフタレニルアラニン、イソロイシン、tert-ロイシン、メチオニン、メチオニンスルホキシド、メチオニンスルホン、4-ニトロフェニルアラニン、ノルロイシン、ノルバリン、フェニルアラニン、フェニルグリシン、プロリン、サクロシン、β-(2-チエニル)アラニン、バリン、α-メチルフェニルアラニン、ベンゾチアゾールアラニン、N-β-キサントニルアスパラギン、N-β-(3,4,6-トリ-O-アセチル-2-アセチルアミノ-デオキシ-2-β-グルコピラノシル)アスパラギン、N-β-(1-シクロプロピル-1-メチルエチル)アスパラギン、N-β-トリチルアスパラギン、N-γ-キサントニルグルタミン、N-γ-(3,4,6-トリ-O-アセチル-2-アセチルアミノ-デオキシ-2-β-グルコピラノシル)グルタミン、N-γ-(1-シクロプロピル-1-メチルエチル)グルタミン、N-γ-トリチルグルタミン、システイン、ペニシラミン、S-アセトアミドメチルシステイン、S-tert-ブチルシステイン、S-tert-ブチルチオシステイン、S-p-メトキシトリチルシステイン、S-トリチルシステイン、S-ベンジルシステイン、S-p-メトキシベンジルシステイン、S-p-メチルベンジルシステイン、S-アセトアミドメチルペニシラミン、S-tert-ブチルペニシラミン、S-tert-ブチルチオペニシラミン、S-p-メトキシトリチルペニシラミン、S-トリチルペニシラミン、S-ベンジルペニシラミン、S-p-メトキシベンジルペニシラミン、S-p-メチルベンジルペニシラミン、3,5-ジヨードチロシン、ホモセリン、ヒドロキシプロリン、β-ヒドロキシバリン、スタチン、セリン、チロシン、トレオニン、3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン、3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン-アセトアミド、O-トリチルホモセリン、O-tert-ブチルヒドロキシプロリン、O-(2-アセトアミノ-2-デオキシ-3,4,6-トリ-O-アセチル-α-D-ガラクトピラノシル)セリン、O-tert-ブチルセリン、O-メチルセリン、O-ベンジルセリン、O-ベンジルホスホセリン、O-トリチルセリン、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸、O-(2-アセトアミノ-2-デオキシ-3,4,6-トリ-O-アセチル-α-D-ガラクトピラノシル)トレオニン、O-tert-ブチルトレオニン、O-ベンジルトレオニン、O-ベンジルホスホトレオニン、O-トリチルトレオニン、O-(2-ブロモ)ベンジルオキシカルボニルチロシン、O-tert-ブチルチロシン、O-2-クロロトリチルチロシン、O-メチルチロシン、O-ホスホ-チロシン、O-ベンジルホスホチロシン-、O-(ビス-ジメチルアミノ-ホスホノ)チロシン、O-ベンジルチロシン、O-2,6-ジクロロベンジルチロシン、ヒスチジン、トリプトファン、N-im-ブトキシカルボニルヒスチジン、N-im-トリチルヒスチジン、N-im-メチルトリチルヒスチジン、N-in-ブトキシカルボニルトリプトファン、N-in-トリチルトリプトファン、N-in-メチルトリチルトリプトファン、N-im-2,4-ジニトロフェニルヒスチジン、N-im-トシルヒスチジン、N-in-ホルミルトリプトファン、リジン、オルニチン、O-アミノセリン、ジアミノ酪酸、N-γ-tert-ブトキシカルボニルジアミノ酪酸、N-γ-1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキシ-1-イリデン)-3-メチルブチルジアミノ酪酸、N-γ-4-メチルトリチルジアミノ酪酸、N-α-tert-ブトキシカルボニルジアミノ酪酸、N-α-1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキシ-1-イリデン)-3-メチルブチルジアミノ酪酸、N-α-4-メチルトリチルジアミノ酪酸、ジアミノプロピオン酸、ジアミノプロピオン酸、N-α-tert-ブトキシカルボニルジアミノプロピオン酸、N-α-1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキシ-1-イリデン)-3-メチルブチルジアミノプロピオン酸、N-α-4-メチルトリチルジアミノプロピオン酸、N-β-tert-ブトキシカルボニルジアミノプロピオン酸、N-β-1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキシ-1-イリデン)-3-メチルブチルジアミノプロピオン酸、N-β-4-メチルトリチルジアミノプロピオン酸、0-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)セリン、N-ε-2-クロロベンジルカルボニルリジン、N-ε-アセチルリジン、N-ε-アリルオキシカルボニルリジン、N-ε-tert-ブトキシカルボニルリジン、N-ε-2,4-ジニトロフェニルリジン、N-ε-1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキシ-1-イリデン)エチルリジン、N-ε- (9H-フルオレン-9-イル)メトキシカルボニルリジン、N-ε-1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキシ-1-イリデン)-3-メチルブチルリジン、N-ε-7-メトキシクマリン-4-アセチルリジン、N-ε-メチル-N-ε-tert-ブトキシカルボニルリジン、N-ε-ジメチルリジン、塩化N-ε-トリメチルリジン、N-ε-4-メトキシトリチルリジン、N-ε-4-メチルトリチルリジン、N-ε-ベンジルオキシカルボニルリジン、N-ε-トリフルオロアセチルリジン、N-ε-トリチルリジン、N-α-2-クロロベンジルカルボニルリジン、N-α-アセチルリジン、N-α-アリルオキシカルボニルリジン、N-α-tert-ブトキシカルボニルリジン、N-α-2,4-ジニトロフェニルリジン、N-α-1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキシ-1-イリデン)エチルリジン、N-α- (9H-フルオレン-9-イル)メトキシカルボニルリジン、N-α-1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキシ-1-イリデン)-3-メチルブチルリジン、N-α-7-メトキシクマリン-4-アセチルリジン、N-α-メチル-N-α-tert-ブトキシカルボニルリジン、N-α-ジメチルリジン、塩化N-α-トリメチルリジン、N-α-4-メトキシトリチルリジン、N-α-4-メチルトリチルリジン、N-α-ベンジルオキシカルボニルリジン、N-α-トリフルオロアセチルリジン、N-α-トリチルリジン、N-δ-tert-ブトキシカルボニルオルニチン、N-δ-1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキシ-1-イリデン)-3-メチルブチルオルニチン、N-δ-メチル-N-δ-tert-ブトキシカルボニルオルニチン、N-δ-ベンジルオキシカルボニルオルニチン、N-α-tert-ブトキシカルボニルオルニチン、N-α-1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキシ-1-イリデン)-3-メチルブチルオルニチン、N-α-メチル-N-α-tert-ブトキシカルボニルオルニチン、N-α-ベンジルオキシカルボニルオルニチン、α-アミノスベリン酸、α-アミノスベリン酸-tert-ブチルエステル、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸-α-アリルエステル、アスパラギン酸-α-ベンジルエステル、アスパラギン酸-α-シクロヘキシルエステル、アスパラギン酸-α-tert-ブチルエステル、アスパラギン酸-α-4-(N-(1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシキロヘキシリデン)-3-メチルブチル)-アミノ)ベンジルエステル、アスパラギン酸-α-2-フェニルイソプロピルエステル、アスパラギン酸-α-3-メチルペンタ-3-イルエステル、アスパラギン酸-β-アリルエステル、アスパラギン酸-β-ベンジルエステル、アスパラギン酸-β-tert-ブチルエステル、アスパラギン酸-α-tert-ブチルエステル、アスパラギン酸-β-4-(N-(1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシキロヘキシリデン)-3-メチルブチル)-アミノ)ベンジルエステル、アスパラギン酸-β-2-フェニルイソプロピルエステル、グルタミン酸-α-アリルエステル、グルタミン酸-α-ベンジルエステル、グルタミン酸-α-tert-ブチルエステル、グルタミン酸-α-4-(N-(1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシキロヘキシリデン)-3-メチルブチル)-アミノ)ベンジルエステル、グルタミン酸-α-2-フェニルイソプロピルエステル、グルタミン酸-γ-3-メチルペンタ-3-イルエステル、グルタミン酸-γ-アリルエステル、グルタミン酸-γ-ベンジルエステル、グルタミン酸-γ-tert-ブチルエステル、グルタミン酸-γ-tert-ブチルエステル、グルタミン酸-γ-4-(N-(1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシキロヘキシリデン)-3-メチルブチル)-アミノ)ベンジルエステル、グルタミン酸-γ-2-フェニルイソプロピルエステル、グルタミン酸-γ-2-トリメチルシリルエチルエステル、アルギニン、N-ω,N-ω'-ビス-tert-ブトキシカルボニルアルギニン、N-ω,N-ω'-ビス-ベンジルオキシカルボニルアルギニン、N,N'-ω-ジメチル-N,N'-ω-ジ-tert-ブトキシカルボニルアルギニン、N,N-ω-ジメチル-N-ω'-(2,2,4,6,7-ペンタジメチルジヒドロベンゾフラン-5-スルホニル)アルギニン、N-ω-メチル-N-ω'-(2,2,4,6,7-ペンタジメチルジヒドロベンゾフラン-5-スルホニル)アルギニン、NG-(2,2,4,6,7-ペンタジメチルジヒドロベンゾフラン-5-スルホニル)アルギニン、NG-(2,2,5,7,8-ペンタジメチルクロマン-5-スルホニル)アルギニン、NG-(4-メトキシ-2,3,6-トリメチルベンゼンスルホニル)アルギニン、NG-トシルアルギニン等が挙げられる。
また、これらアミノ酸と、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トシル酸等との塩となっているもの、また、銅、銀等との金属錯体を形成しているものも使用可能である。また、該アミノ酸(1)は、光学活性体であっても異性体混合物(ラセミ混合物)のいずれも使用することが可能である。また、上記に例示したアミノ酸の複数個が、アミノ基及びカルボキシル基の連結基(上記式(1)のR)同士、アミノ基にある置換基(上記式(1)のR)同士又は該連結基と該置換基とが結合して形成された多量体も使用することが可能である。
【0011】
次に、ホスゲン誘導体(2)を具体的に述べると、ホスゲン、ジホスゲン、トリホスゲンのいずれかである。その使用量は制限されないが、好ましい使用量として、アミノ酸(1)に対して、ホスゲンは1当量、ジホスゲンは1/2当量、トリホスゲンは1/3当量である。
【0012】
カルボニル化反応は、溶媒の存在下で行うことが好ましい。
カルボニル化反応において用いることができる溶媒としては、無極性又は極性非プロトン性溶媒が挙げられ、具体的には、n-ヘプタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、n-ペンタン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドラフラン、1,4-ジオキサン、アニソール、メチルtert-ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル系溶媒、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラクロロエタン等のハロゲン系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル等の二トリル系溶媒等が挙げられる。好ましくは、通常、カルボニル化反応によく用いられる、テトラヒドロフラン、酢酸エチルが挙げられる。2種以上の溶媒を混合して使用してもよく、溶媒使用量の制限は特にない。
【0013】
カルボニル化反応は、アミノ酸(1)とホスゲン誘導体(2)とを溶媒中混合することにより実施することができる。反応温度は、通常、−10℃から使用する溶媒の沸点の範囲から選択することができるが、0℃〜100℃が好ましい。反応時間は、反応で用いるアミノ酸(1)、ホスゲン誘導体(2)の種類、反応温度等で異なるが、通常3分から15時間程度の範囲である。
【0014】
カルボニル化反応において反応を促進するため、公知文献(Synthesis1999,3,423、Makromol. Chem. 180, 465等)に記載の方法に準じて、トリエチルアミン等の3級アミン、酸化銀(Ag2O)、活性炭等を添加することが可能である。
【0015】
カルボニル化反応後の反応混合物は、直接、もしくは、必要に応じてろ過による不溶物の除去や濃縮を行った後、液体クロマトグラフィーに供する。この液体クロマトグラフィーでは、まず、クロマトグラフィー用固定相を充填したカラムを準備する。クロマトグラフィー用固定相をカラムに充填するときには、該固定相を溶出に用いる溶媒で十分湿潤させておいてからカラムに充填する。充填する際には、該固定相に気泡等が混入しないように充填することが好ましい。
【0016】
カラムクロマトグラフィー用固定相として、順相系のシリカゲル、シリカ、セライト、アルミナ、ハイドロキシアパタイト、セルロース、アガロース、ガラス、活性白土、水酸化カルシウム、珪藻土、ガラス、フロリジル、モレキュラーシーブス、アニオン系交換樹脂、ベントナイト、セラミック、シラス、白土、カチオン系イオン交換樹脂、活性炭;や、逆相系の直鎖アルキル基、芳香族官能基、親水性官能基又は極性内包型官能基がシルカゲルに化学結合したもの;が挙げられる。これらのカラムクロマトグラフィー用固定相は順相系のものを二種以上混合しても用いてもよく、逆相系のものを二種以上混合しても用いてもよい。好ましくは、通常、市販の順相用シリカゲルが用いられる。該カラムクロマトグラフィー用固定相の使用量は、使用するカラムの径や長さ、チャージする反応混合物の量により適宜調節すればよい。
【0017】
液体クロマトグラフィーに使用するカラムの内径は径が大きいほど、一度に大量の上記反応混合物をチャージすることができるため好ましい。また、カラムは長いほど理論段数が高くなり高純度のアミノ酸−N−カルボキシ無水物を分離し易くなるため好ましいが、長すぎると、必要量以上の溶出溶媒を使用することになるため、使用するクロマトグラフィー用固定相の種類や溶出溶媒の種類、あるいはチャージする上記反応混合物の量により適宜調節することが好ましい。なお、選択した溶出溶媒で目的とするアミノ酸―N-カルボキシ無水物のみが溶出し、除去すべき副生成物や不純物が溶出しない場合は、カラムの内径や長さが比較的小さいものを使用することができ、固定相の量も節約することができる。
【0018】
このようにして準備したカラムに上記反応混合物をチャージする。ここでいうチャージとは液体カラムクロマトグラフィーにおける試料導入法を意味し、具体的には、試料(上記反応混合物)を固定相上端に吸着させることを意味する(有機化学ハンドブック、有機合成化学協会編、(株)技報堂,昭和43年7月10日発行、770頁参照)。上記反応混合物をチャージするに際には、該反応混合物をチャージ溶媒により希釈してもよい(該チャージ溶媒には、液体クロマトグラフィーに用いる溶出溶媒を同じものを用いることが好ましい)。なお、チャージを行うときは、「できるだけ狭い帯になるように」(上記有機化学ハンドブック770頁記載)実施されるのが一般的であるが、選択した溶出溶媒で目的とするアミノ酸―N-カルボキシ無水物のみが溶出し、除去すべき副生成物や不純物が溶出しない場合は、帯の広さに制限はない。
【0019】
続いて、該カラム内に適当な溶出力を有する溶出溶媒を流し、当該カラムから溶出されてきた溶出液を適当な量ごとに分画する。上述のチャージ溶媒もしくは溶出溶媒としては、無極性又は極性非プロトン性溶媒が好ましく使用される。具体的に例示すると、n-ヘプタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、n-ペンタン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドラフラン、1,4-ジオキサン、アニソール、メチルtert-ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル系溶媒、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラクロロエタン等のハロゲン系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル等の二トリル系溶媒等が挙げられる。これらのうち、2種以上の溶媒を混合して使用し、溶出力を調節したものを用いてもよい。
【0020】
より好ましい溶出溶媒としては、該液体カラムクロマトグラフィーの前に適切な薄層クロマトグラフィー(TLC)実験を行うことで選択することができる。すなわち、該液体カラムクロマトグラフィーで用いる固定相と同種の固定相を用いる薄層クロマトグラフィーの展開溶媒として用いたとき、上記アミノ酸−N−カルボキシ無水物のRf値が0.3以上となる溶媒である。このような薄層クロマトグラフィーは公知の操作によって実施可能であるが、ここで簡単に説明しておく。まず、長尺状のガラスプレートに、上記液体クロマトグラフィーに用いるクロマトグラフィー用固定相と同じ吸着剤を薄く塗布して、該ガラスプレート上に該吸着剤の薄層を形成し、TLCプレートを調製する。このようにして調製したTLCプレートもしくは同種の固定相を用いて調製された市販のTLCの下端部に、少量の上記反応混合物をスポット吸着させる。続いて、溶出溶媒を入れた展開槽内に、反応混合物をスポット吸着させたTLCプレートを、該展開槽内に設置し、該TLCスポットにスポット吸着させた反応混合物を展開させる。成分ごとに分離された成分スポットの移動距離を、溶媒の移動距離により除することでRf値が求められる。
【0021】
上述のようなTLC実験を、種々展開溶媒をかえて実施し、上記アミノ酸−N−カルボキシ無水物のRf値が0.3以上となる溶媒を選択する。このようにして選択された溶媒を溶出溶媒として用い、上記液体クロマトグラフィーによるアミノ酸−N−カルボキシ無水物の精製は一層容易に実施することができる。
また、このようにTLC実験を実施することで選択される溶出溶媒を用いる上記液体クロマトグラフィーにおいては、カルボニル化反応で副生するアミノ酸塩、未反応のアミノ酸(1)、また反応を促進するために添加した3級アミン、酸化銀、活性炭等は溶出しないため、目的物であるアミノ酸−N−カルボキシ無水物以外の成分を容易に除去することできる。
【0022】
カラムから溶出される溶出液の溶出速度は、固定相の種類や溶出溶媒の種類等により適切に調節することが好ましい。
【0023】
以上の一連の操作による液体クロマトグラフィーにおいて溶出液を分画して得られた各分画溶出液(以下、「画分」という。)のそれぞれを適当な分析方法により分析することで、高純度のアミノ酸−N−カルボキシ無水物が含有されている画分を集め、集められた画分から溶出溶媒を除去することにより、アミノ酸−N−カルボキシ無水物が高純度で得られる。
【0024】
カルボニル化反応後の反応混合物の精製方法として、より好ましくは反応混合物を、直接クロマトグラフィー用固定相を充填したカラムにチャージし、アミノ酸−N−カルボキシ無水物製造に用いた反応溶媒と同一の溶媒を溶出溶媒として用いることにより、簡便に上記液体クロマトグラフィーを実施することが可能である。また、該反応溶媒及び該溶出溶媒を同種のものとすることにより、溶媒回収工程を簡略化することが可能である。上記カルボニル化反応の反応性を著しく損なうことなく、かつ液体クロマトグラフィーによるアミノ酸−N−カルボキシ無水物精製において適当な溶出力を有する溶媒としては、酢酸エチル、テトラヒドロフラン等が好ましい。
【0025】
上記液体カラムクロマトグラフィーにより得られたアミノ酸−N−カルボキシ無水物を含む画分については、通常の濃縮、再結晶操作等により目的物であるアミノ酸−N−カルボキシ無水物を単離することができる。
【0026】
かくして得られるアミノ酸−N−カルボキシ無水物(3)としては、例えば、アラニン-N-カルボキシ無水物、β-アラニン-N-カルボキシ無水物、2-アミノブチル酸-N-カルボキシ無水物、4-アミノブチル酸-N-カルボキシ無水物、6-アミノカプロン酸-N−カルボキシ無水物、α-アミノイソブチル酸-N-カルボキシ無水物、グリシン-N-カルボキシ無水物、4-クロロフェニルアラニン-N-カルボキシ無水物、シクロヘキシルアラニン-N-カルボキシ無水物、シスチン-N、N'−ビス(カルボキシ無水物)、3,4-デヒドロプロリン-N-カルボキシ無水物、2-フルオロフェニルアラニン-N-カルボキシ無水物、3-フルオロフェニルアラニン-N-カルボキシ無水物、4-フルオロフェニルアラニン-N-カルボキシ無水物、2-ピリジルアラニン-N-カルボキシ無水物、3-ピリジルアラニン-N-カルボキシ無水物、4-ピリジルアラニン-N-カルボキシ無水物、1-ナフタレニルアラニン-N-カルボキシ無水物、2-ナフタレニルアラニン-N-カルボキシ無水物、イソロイシン-N-カルボキシ無水物、tert-ロイシン-N-カルボキシ無水物、メチオニン-N-カルボキシ無水物、メチオニンスルホキシド-N-カルボキシ無水物、メチオニンスルホン-N-カルボキシ無水物、4-ニトロフェニルアラニン-N-カルボキシ無水物、ノルロイシン-N-カルボキシ無水物、ノルバリン-N-カルボキシ無水物、フェニルアラニン-N-カルボキシ無水物、フェニルグリシン-N-カルボキシ無水物、プロリン-N-カルボキシ無水物、サクロシン-N-カルボキシ無水物、β-(2-チエニル)アラニン-N-カルボキシ無水物、バリン-N-カルボキシ無水物、α-メチルフェニルアラニン-N-カルボキシ無水物、ベンゾチアゾールアラニン-N-カルボキシ無水物、N-β-キサントニルアスパラギン-N-カルボキシ無水物、N-β-(3,4,6-トリ-O-アセチル-2-アセチルアミノ-デオキシ-2-β-グルコピラノシル)アスパラギン-N-カルボキシ無水物、N-β-(1-シクロプロピル-1-メチルエチル)アスパラギン-N-カルボキシ無水物、N-β-トリチルアスパラギン-N-カルボキシ無水物、N-γ-キサントニルグルタミン-N-カルボキシ無水物、N-γ-(3,4,6-トリ-O-アセチル-2-アセチルアミノ-デオキシ-2-β-グルコピラノシル)グルタミン-N-カルボキシ無水物、N-γ-(1-シクロプロピル-1-メチルエチル)グルタミン-N-カルボキシ無水物、N-γ-トリチルグルタミン-N-カルボキシ無水物、システイン-N-カルボキシ無水物、ペニシラミン-N-カルボキシ無水物、S-アセトアミドメチルシステイン-N-カルボキシ無水物、S-tert-ブチルシステイン-N-カルボキシ無水物、S-tert-ブチルチオシステイン-N-カルボキシ無水物、S-p-メトキシトリチルシステイン-N-カルボキシ無水物、S-トリチルシステイン-N-カルボキシ無水物、S-ベンジルシステイン-N-カルボキシ無水物、S-p-メトキシベンジルシステイン-N-カルボキシ無水物、S-p-メチルベンジルシステイン-N-カルボキシ無水物、S-アセトアミドメチルペニシラミン-N-カルボキシ無水物、S-tert-ブチルペニシラミン-N-カルボキシ無水物、S-tert-ブチルチオペニシラミン-N-カルボキシ無水物、S-p-メトキシトリチルペニシラミン-N-カルボキシ無水物、S-トリチルペニシラミン-N-カルボキシ無水物、S-ベンジルペニシラミン-N-カルボキシ無水物、S-p-メトキシベンジルペニシラミン-N-カルボキシ無水物、S-p-メチルベンジルペニシラミン-N-カルボキシ無水物、3,5-ジヨードチロシン-N-カルボキシ無水物、ホモセリン-N-カルボキシ無水物、ヒドロキシプロリン-N-カルボキシ無水物、β-ヒドロキシバリン-N-カルボキシ無水物、スタチン-N-カルボキシ無水物、セリン-N-カルボキシ無水物、チロシン-N-カルボキシ無水物、トレオニン-N-カルボキシ無水物、3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン-N-カルボキシ無水物、3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン-N-カルボキシ無水物-アセトアミド、O-トリチルホモセリン-N-カルボキシ無水物、O-tert-ブチルヒドロキシプロリン-N-カルボキシ無水物、O-(2-アセトアミノ-2-デオキシ-3,4,6-トリ-O-アセチル-α-D-ガラクトピラノシル)セリン-N-カルボキシ無水物、O-tert-ブチルセリン-N-カルボキシ無水物、O-メチルセリン-N-カルボキシ無水物、O-ベンジルセリン-N-カルボキシ無水物、O-ベンジルホスホセリン-N-カルボキシ無水物、O-トリチルセリン-N-カルボキシ無水物、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸-N-カルボキシ無水物、O-(2-アセトアミノ-2-デオキシ-3,4,6-トリ-O-アセチル-α-D-ガラクトピラノシル)トレオニン-N-カルボキシ無水物、O-tert-ブチルトレオニン-N-カルボキシ無水物、O-ベンジルトレオニン-N-カルボキシ無水物、O-ベンジルホスホトレオニン-N-カルボキシ無水物、O-トリチルトレオニン-N-カルボキシ無水物、O-(2-ブロモ)ベンジルオキシカルボニルチロシン-N-カルボキシ無水物、O-tert-ブチルチロシン-N-カルボキシ無水物、O-2-クロロトリチルチロシン-N-カルボキシ無水物、O-メチルチロシン-N-カルボキシ無水物、O-ホスホ-チロシン-N-カルボキシ無水物、O-ベンジルホスホチロシン-N-カルボキシ無水物、O-(ビス-ジメチルアミノ-ホスホノ)チロシン-N-カルボキシ無水物、O-ベンジルチロシン-N-カルボキシ無水物、O-2,6-ジクロロベンジルチロシン-N-カルボキシ無水物、ヒスチジン-N-カルボキシ無水物、トリプトファン-N-カルボキシ無水物、N-im-ブトキシカルボニルヒスチジン-N-α-カルボキシ無水物、N-im-トリチルヒスチジン-N-α-カルボキシ無水物、N-im-メチルトリチルヒスチジン-N-α-カルボキシ無水物、N-in-ブトキシカルボニルトリプトファン-N-α-カルボキシ無水物、N-in-トリチルトリプトファン-N-α-カルボキシ無水物、N-in-メチルトリチルトリプトファン-N-α-カルボキシ無水物、N-im-2,4-ジニトロフェニルヒスチジン-N-α-カルボキシ無水物、N-im-トシルヒスチジン-N-α-カルボキシ無水物、N-in-ホルミルトリプトファン-N-α-カルボキシ無水物、リジン-N-α-カルボキシ無水物、リジン-N-ε-カルボキシ無水物、オルニチン-N-α-カルボキシ無水物、オルニチン-N-δ-カルボキシ無水物、O-アミノセリン-N-カルボキシ無水物、ジアミノ酪酸-N-α-カルボキシ無水物、ジアミノ酪酸-N-γ-カルボキシ無水物、N-γ-tert-ブトキシカルボニルジアミノ酪酸-N-α-カルボキシ無水物、N-γ-1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキシ-1-イリデン)-3-メチルブチルジアミノ酪酸-N-α-カルボキシ無水物、N-γ-4-メチルトリチルジアミノ酪酸-N-α-カルボキシ無水物、N-α-tert-ブトキシカルボニルジアミノ酪酸-N-γ-カルボキシ無水物、N-α-1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキシ-1-イリデン)-3-メチルブチルジアミノ酪酸-N-γ-カルボキシ無水物、N-α-4-メチルトリチルジアミノ酪酸-N-γ-カルボキシ無水物、ジアミノプロピオン酸-N-β-カルボキシ無水物、ジアミノプロピオン酸-N-β-カルボキシ無水物、N-α-tert-ブトキシカルボニルジアミノプロピオン酸-N-β-カルボキシ無水物、N-α-1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキシ-1-イリデン)-3-メチルブチルジアミノプロピオン酸-N-β-カルボキシ無水物、N-α-4-メチルトリチルジアミノプロピオン酸-N-β-カルボキシ無水物、N-β-tert-ブトキシカルボニルジアミノプロピオン酸-N-α-カルボキシ無水物、N-β-1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキシ-1-イリデン)-3-メチルブチルジアミノプロピオン酸-N-α-カルボキシ無水物、N-β-4-メチルトリチルジアミノプロピオン酸-N-α-カルボキシ無水物、0-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)セリン-N-カルボキシ無水物、N-ε-2-クロロベンジルカルボニルリジン-N-α-カルボキシ無水物、N-ε-アセチルリジン-N-α-カルボキシ無水物、N-ε-アリルオキシカルボニルリジン-N-α-カルボキシ無水物、N-ε-tert-ブトキシカルボニルリジン-N-α-カルボキシ無水物、N-ε-2,4-ジニトロフェニルリジン-N-α-カルボキシ無水物、N-ε-1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキシ-1-イリデン)エチルリジン-N-α-カルボキシ無水物、N-ε- (9H-フルオレン-9-イル)メトキシカルボニルリジン-N-α-カルボキシ無水物、N-ε-1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキシ-1-イリデン)-3-メチルブチルリジン-N-α-カルボキシ無水物、N-ε-7-メトキシクマリン-4-アセチルリジン-N-α-カルボキシ無水物、N-ε-メチル-N-ε-tert-ブトキシカルボニルリジン-N-α-カルボキシ無水物、N-ε-ジメチルリジン-N-α-カルボキシ無水物、塩化N-ε-トリメチルリジン-N-α-カルボキシ無水物、N-ε-4-メトキシトリチルリジン-N-α-カルボキシ無水物、N-ε-4-メチルトリチルリジン-N-α-カルボキシ無水物、N-ε-ベンジルオキシカルボニルリジン-N-α-カルボキシ無水物、N-ε-トリフルオロアセチルリジン-N-α-カルボキシ無水物、N-ε-トリチルリジン-N-α-カルボキシ無水物、N-α-2-クロロベンジルカルボニルリジン-N-ε-カルボキシ無水物、N-α-アセチルリジン-N-ε-カルボキシ無水物、N-α-アリルオキシカルボニルリジン-N-ε-カルボキシ無水物、N-α-tert-ブトキシカルボニルリジン-N-ε-カルボキシ無水物、N-α-2,4-ジニトロフェニルリジン-N-ε-カルボキシ無水物、N-α-1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキシ-1-イリデン)エチルリジン-N-ε-カルボキシ無水物、N-α- (9H-フルオレン-9-イル)メトキシカルボニルリジン-N-ε-カルボキシ無水物、N-α-1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキシ-1-イリデン)-3-メチルブチルリジン-N-ε-カルボキシ無水物、N-α-7-メトキシクマリン-4-アセチルリジン-N-ε-カルボキシ無水物、N-α-メチル-N-α-tert-ブトキシカルボニルリジン-N-ε-カルボキシ無水物、N-α-ジメチルリジン-N-ε-カルボキシ無水物、塩化N-α-トリメチルリジン-N-ε-カルボキシ無水物、N-α-4-メトキシトリチルリジン-N-ε-カルボキシ無水物、N-α-4-メチルトリチルリジン-N-ε-カルボキシ無水物、N-α-ベンジルオキシカルボニルリジン-N-ε-カルボキシ無水物、N-α-トリフルオロアセチルリジン-N-ε-カルボキシ無水物、N-α-トリチルリジン-N-ε-カルボキシ無水物、N-δ-tert-ブトキシカルボニルオルニチン-N-α-カルボキシ無水物、N-δ-1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキシ-1-イリデン)-3-メチルブチルオルニチン-N-α-カルボキシ無水物、N-δ-メチル-N-δ-tert-ブトキシカルボニルオルニチン-N-α-カルボキシ無水物、N-δ-ベンジルオキシカルボニルオルニチン-N-α-カルボキシ無水物、N-α-tert-ブトキシカルボニルオルニチン-N-δ-カルボキシ無水物、N-α-1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキシ-1-イリデン)-3-メチルブチルオルニチン-N-δ-カルボキシ無水物、N-α-メチル-N-α-tert-ブトキシカルボニルオルニチン-N-δ-カルボキシ無水物、N-α-ベンジルオキシカルボニルオルニチン-N-δ-カルボキシ無水物、α-アミノスベリン酸-N-カルボキシ無水物、α-アミノスベリン酸-N-α-カルボキシ無水物-tert-ブチルエステル、アスパラギン酸-N-カルボキシ無水物、グルタミン酸-N-カルボキシ無水物、アスパラギン酸-N-カルボキシ無水物-α-アリルエステル、アスパラギン酸-N-カルボキシ無水物-α-ベンジルエステル、アスパラギン酸-N-カルボキシ無水物-α-シクロヘキシルエステル、アスパラギン酸-N-カルボキシ無水物-α-tert-ブチルエステル、アスパラギン酸-N-カルボキシ無水物-α-4-(N-(1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシキロヘキシリデン)-3-メチルブチル)-アミノ)ベンジルエステル、アスパラギン酸-N-カルボキシ無水物-α-2-フェニルイソプロピルエステル、アスパラギン酸-N-カルボキシ無水物-α-3-メチルペンタ-3-イルエステル、アスパラギン酸-N-カルボキシ無水物-β-アリルエステル、アスパラギン酸-N-カルボキシ無水物-β-ベンジルエステル、アスパラギン酸-N-カルボキシ無水物-β-tert-ブチルエステル、アスパラギン酸-N-カルボキシ無水物-α-tert-ブチルエステル、アスパラギン酸-N-カルボキシ無水物-β-4-(N-(1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシキロヘキシリデン)-3-メチルブチル)-アミノ)ベンジルエステル、アスパラギン酸-N-カルボキシ無水物-β-2-フェニルイソプロピルエステル、グルタミン酸-N-カルボキシ無水物-α-アリルエステル、グルタミン酸-N-カルボキシ無水物-α-ベンジルエステル、グルタミン酸-N-カルボキシ無水物-α-tert-ブチルエステル、グルタミン酸-N-カルボキシ無水物-α-4-(N-(1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシキロヘキシリデ
ン)-3-メチルブチル)-アミノ)ベンジルエステル、グルタミン酸-N-カルボキシ無水物-α-2-フェニルイソプロピルエステル、グルタミン酸-N-カルボキシ無水物-γ-3-メチルペンタ-3-イルエステル、グルタミン酸-N-カルボキシ無水物-γ-アリルエステル、グルタミン酸-N-カルボキシ無水物-γ-ベンジルエステル、グルタミン酸-N-カルボキシ無水物-γ-tert-ブチルエステル、グルタミン酸-N-カルボキシ無水物-γ-tert-ブチルエステル、グルタミン酸-N-カルボキシ無水物-γ-4-(N-(1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシキロヘキシリデン)-3-メチルブチル)-アミノ)ベンジルエステル、グルタミン酸-N-カルボキシ無水物-γ-2-フェニルイソプロピルエステル、グルタミン酸-N-カルボキシ無水物-γ-2-トリメチルシリルエチルエステル、アルギニン-N-カルボキシ無水物、N-ω,N-ω'-ビス-tert-ブトキシカルボニルアルギニン-N-カルボキシ無水物、N-ω,N-ω'-ビス-ベンジルオキシカルボニルアルギニン-N-カルボキシ無水物、N,N'-ω-ジメチル-N,N'-ω-ジ-tert-ブトキシカルボニルアルギニン-N-カルボキシ無水物、N,N-ω-ジメチル-N-ω'-(2,2,4,6,7-ペンタジメチルジヒドロベンゾフラン-5-スルホニル)アルギニン-N-カルボキシ無水物、N-ω-メチル-N-ω'-(2,2,4,6,7-ペンタジメチルジヒドロベンゾフラン-5-スルホニル)アルギニン-N-カルボキシ無水物、NG-(2,2,4,6,7-ペンタジメチルジヒドロベンゾフラン-5-スルホニル)アルギニン-N-カルボキシ無水物、NG-(2,2,5,7,8-ペンタジメチルクロマン-5-スルホニル)アルギニン-N-カルボキシ無水物、NG-(4-メトキシ-2,3,6-トリメチルベンゼンスルホニル)アルギニン-N-カルボキシ無水物、NG-トシルアルギニン-N-カルボキシ無水物等を挙げることができる。
【実施例】
【0027】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0028】
[実施例1] L-フェニルアラニン−N-カルボキシ無水物の合成

L-フェニルアラニン(1.00g, 6.05mmol)とトリホスゲン(0.59g, 2.00mmol)を酢酸エチル(30mL)中70℃で8時間加熱した。反応混合物を種々の展開溶媒を用いて薄層クロマトグラフィー(順相系シリカゲル)に供し目的物のRf値を確認した結果(表1参照。)、シリカゲルカラムの溶出溶媒として反応液と同じ酢酸エチルが適当であると判断した。酢酸エチルを用いてシリカゲルカラム(10g)を作製後、反応混合物をチャージし、100mLの酢酸エチルで目的物を溶出した。目的物を含有する画分を濃縮後、酢酸エチル(5mL)で再度完溶し、ヘキサン(50mL)を加えて固体を析出させた。得られた固体を濾過後、ヘキサン/酢酸エチル(10:1,150mL)で洗浄することにより、L-フェニルアラニン-N-カルボキシ無水物の白色固体を得た(0.71g、収率62%)。NMR分析に供したところ、単一化合物のプロトンシグナルが確認された。

NMR (CDCl3, 270MHz): 7.17-7.40 (m, 5H, Ph), 5.87 (br. s, 1H, NH), 4.53 (dd, J=4.1, 8.7Hz, 1H, CH), 3.31(dd, J=4.0, 14.0Hz, 1H, CH2), 2.99(dd, J=8.7, 14.0Hz, 1H, CH2).

表1[L-フェニルアラニン−N-カルボキシ無水物の薄層クロマトグラフィーにおけるRf値]
【0029】
【表1】

【0030】
[実施例2] Nε-(9-フルオレニルメトキシカルボニル)-L-リシン-N-カルボキシ無水物の合成



文献記載の方法(Org. Prep. Proced. Int. 1994, 26, 578.)で調製した[Nε-(9-フルオレニルメトキシカルボニル)-L-リジン]2・銅(II)錯体(0.50g, 0.63mmol)とトリホスゲン(0.12g, 0.41mmol)を酢酸エチル(10mL)中70℃で5時間加熱した。反応混合物を代表的な展開溶媒を用いて薄層クロマトグラフィー(Silica gel 60 F254, 検出:UV254nm)に供し目的物のRf値を確認した結果(表2参照)、シリカゲルカラムの溶出溶媒として反応液と同じ酢酸エチルが適当であると判断した。酢酸エチルを用いてシリカゲルカラム(10g)を作製後、反応混合物をチャージし、50mLの酢酸エチルで目的物を溶出した。目的物を含有する画分を濃縮後、ジエチルエーテル(50mL)を加えて固体を析出させた。得られた固体を濾過後、ジエチルエーテル(150mL)で洗浄することにより、Nε-(9-フルオレニルメトキシカルボニル)-L-リシン-N-カルボキシ無水物の白色固体を得た(0.17g、収率34%)。

NMR (CDCl3, 270MHz): 7.26-7.78 ppm (m, 8H, ArH), 6.78 (br. s, α-NH, 1H), 4.87(br. s, ε-NH, 1H), 4.18-4.45 (m, 4H, α-CHおよびFmoc-CHCH2O), 3.17 (br. s, 2H, ε-CH2), 1.23-1.97 (m, 6H, βおよびγおよびδ-CH2).

表2[Nε-(9-フルオレニルメトキシカルボニル)-L-リシン-N-カルボキシ無水物の薄層クロマトグラフィーにおけるRf値]
【0031】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)

(式中、Rは、置換もしくは無置換のアルキル基、アリール基及び複素環基から選ばれる基を置換基として有していてもよい炭素数1〜5のアルキレン基である。Rは、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、アリール基又は複素環基を表す。RとRが結合し環を形成していてもよい。)
で示されるアミノ酸又は、複数個の該アミノ酸が、RもしくはRを介して結合して形成された多量体と、
式(2)

(R及びRは、同一または相異なって、塩素原子又はトリクロロメトキシ基を表す。)
で示されるホスゲン誘導体と、
を反応させるアミノ酸−N−カルボキシ無水物の製造方法であって、
反応後の反応混合物を液体カラムクロマトグラフィーに供することにより、式(3)

(式中、R及びRは前記と同じ意味を表す。)
で示されるアミノ酸-N-カルボキシ無水物を、該反応混合物から分離する工程を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項2】
液体カラムクロマトグラフィーに用いる溶出溶媒が、
該液体カラムクロマトグラフィーで用いる固定相と同種の固定相を用いる薄層クロマトグラフィーの展開溶媒として用いた際に、式(3)で示されるアミノ酸−N−カルボキシ無水物のRf値が0.3以上となる溶媒であることを特徴とする請求項1記載のアミノ酸−N−カルボキシ無水物の製造方法。
【請求項3】
液体カラムクロマトグラフィーにおける固定相が、順相系シリカゲルである請求項1又は2記載のアミノ酸−N−カルボキシ無水物の製造方法。

【公開番号】特開2010−260832(P2010−260832A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−114229(P2009−114229)
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】