説明

アミノ酸含有総合栄養食品およびその製造方法

【課題】経口的なアミノ酸補給を必要とする患者に対して,総エネルギーに対する脂質エネルギーを30%以下として,継続的な摂取に適した焼物菓子形態のアミノ酸含有総合栄養食品を提供することを目的とする.
【解決手段】全卵および小麦粉を主原料とし、アミノ酸,糖質,脂質,ビタミンおよびミネラルを含有するアミノ酸含有総合栄養食品において,アミノ酸の含有量が100kcalあたり2.0〜4.5gであり,脂質エネルギーが総エネルギーの30%以下であるとともに脂質源として配合される油脂が,全卵1重量部に対して0.8〜1.4重量部であり,乳化剤としてポリグリセリン縮合リシノレイン酸を含有し,該ポリグリセリン縮合リシノレイン酸が前記脂質源として配合される油脂1重量部に対し,0.015〜0.117重量部である焼物菓子形態のアミノ酸含有総合栄養食品.

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,アミノ酸,糖質,脂質,ビタミンおよびミネラルを含有する焼物菓子形態のアミノ酸含有総合栄養食品に関する.
【背景技術】
【0002】
腸管での吸収性や、目的とする生理作用に応じて選択的に配合できることから、たんぱく質に代えてアミノ酸を窒素源として配合した栄養食品が知られている。例えば,アルギニンは,成長ホルモンの分泌を介してたんぱく合成促進作用を有し,創傷治癒や免疫賦活に重要な役割を果たす.また,グルタミンは腸管粘膜の萎縮軽減作用があり,周術期や低栄養状態にある患者が,これらのアミノ酸を摂取することは,全身の栄養状態の改善や腸管免疫の賦活に意義がある.
また,アミノ酸のなかでも、イソロイシン,ロイシンおよびバリンの3種類の分岐鎖アミノ酸には,蛋白合成促進作用と筋蛋白崩壊抑制作用がある.分岐鎖アミノ酸は,筋でまずケト酸にアミノ基転移され,肝やその他の組織でインスリン依存性に代謝され,エネルギー基質となる.侵襲時や感染時には効率の良いエネルギー源となることから,術後早期や肝障害,腎障害などの場合にはこれらを含む製剤が良く使用される(非特許文献1,2).
例えば肝硬変患者は,(1)エネルギー需要の亢進に伴う分岐鎖アミノ酸酸化の亢進,(2)高インスリン血症による筋肉組織への分岐鎖アミノ酸の取り込みの増加,(3)高アンモニア血症による筋肉組織での分岐鎖アミノ酸代謝の亢進などが原因となり血中分岐鎖アミノ酸濃度が低下する.分岐鎖アミノ酸は,蛋白代謝におけるanticatabolic作用のあることが報告されており,分岐鎖アミノ酸の供給は肝硬変患者の筋肉における蛋白質代謝を改善する.
【0003】
これまでに,肝硬変患者に対して,食事の一部分をアミノ酸,糖質および脂質などを配合した市販製剤で置き換えることにより,栄養状態の改善が行われてきた.しかしながら,これらの製剤は水で溶解するという調製の手間が必要である.また摂取形態は液状であることから,摂取後に腹部膨満感あるいは胃もたれがあり,所定量を摂取できない場合がある.さらにはアミノ酸の苦味を強く感じるため,服用の観点から課題があった(非特許文献3).
そこで,これらの課題を解決する手段としては固形のものが好適であり,焼物菓子形態が最適と考えた.通常の焼物菓子は,美味しさや口どけのよさのために油脂含有量が高くなっている(脂質エネルギーとして40%以上).しかし,アミノ酸含有総合栄養食品は,食事の一部分として継続的に摂取するため,油脂含有量の高い組成は好ましくない.
【0004】
焼物菓子生地は基本的に油脂,糖類および全卵または卵黄をクリーム状に混合後,小麦粉を加える方法で製造される.油脂と全卵または卵黄の混合には適した比率があるが,油脂を減量すると,クリームの形成が悪くなり液状となり,そして乳化状態は不良となる.アミノ酸を含有する焼物菓子は,アミノ酸を配合することで生地が軟らかくなるため,油脂,糖類および全卵または卵黄を混合したクリームは,ある程度の硬さ(角がたつ状態)が必要である.しかし,油脂を減量するとクリームは液状となり,生地はさらに軟らかくなり成型が困難になる.また,油脂を減量すると乳化状態は不良で油脂と全卵が分離し,生地中の油脂の分散性が悪くなり,焼成後の成分安定性や味に影響を及ぼす.
アミノ酸を含有する焼物菓子は生地中の油脂を減量する必要があるが,油脂を減量すると安定した生地の製造は不可能で,従来技術では,これらの要求にすべて応える有効な手段はなかった.
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】タンパク質・アミノ酸の新栄養学,講談社サイエンティフィック,pp.172−175
【非特許文献2】全科に必要な栄養管理Q&A,総合医学社,pp.14−15,68−69,184−185
【非特許文献3】沖田極,栄養評価と治療,24(3),2007,pp.64−73
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上述の状況に鑑みてなされたもので、経口的なアミノ酸補給を必要とする患者に対して,脂質エネルギーを30%以下として,継続的な摂取に適した焼物菓子形態のアミノ酸含有総合栄養食品を提供するものである.
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は,下記(1)から(4)の本発明により達成される.
(1)全卵および小麦粉を主原料とし、アミノ酸,糖質,脂質,ビタミンおよびミネラルを含有するアミノ酸含有総合栄養食品において,アミノ酸の含有量が100kcalあたり2.0〜4.5gであり,脂質エネルギーが総エネルギーの30%以下であるとともに脂質源として配合される油脂が全卵1重量部に対して0.8〜1.4重量部であり,乳化剤としてポリグリセリン縮合リシノレイン酸を含有し,該ポリグリセリン縮合リシノレイン酸が前記脂質源として配合される油脂1重量部に対し,0.015〜0.117重量部である,焼物菓子形態のアミノ酸含有総合栄養食品.
(2)前記ポリグリセリン縮合リシノレイン酸のグリセリン重合度が,4〜10である上記(1)に記載のアミノ酸含有総合栄養食品.
(3)前記アミノ酸がイソロイシン,ロイシン,バリンの少なくとも1種である上記(1)に記載のアミノ酸含有総合栄養食品.
(4)クレメ法(シュガーバッター法)により生地を混合して賦型後,加熱焼成されるアミノ酸含有総合栄養食品において,油脂,糖類,全卵および乳化剤を混合し、クリームとしたときの硬さが,4.5×10−1N以上である(1)〜(3)のいずれかに記載のアミノ酸含有総合栄養食品の製造方法.
【発明の効果】
【0008】
以上述べたように,本発明のアミノ酸含有総合栄養食品およびその製造方法は,グリセリン重合度が4〜10であるポリグリセリン縮合リシノレイン酸を配合することにより,脂質エネルギーを30%以下として継続的な摂取に適した焼物菓子形態のアミノ酸含有総合栄養食品を提供するものである.
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下,本発明のアミノ酸含有総合栄養食品およびその製造方法を詳細に説明する.
本発明に示される「焼物菓子」とは,クレメ法(シュガーバッタ法)により生地を混合して賦型後,加熱焼成したものを意味する.クレメ法とは,まず油脂と糖類および全卵または卵黄をクリーム状に混合後,小麦粉等の粉類を混合する方法である.
本発明の「クリームの硬さ」とは,油脂,糖類および全卵または卵黄を混合してクリーム状とした後,その一部を直径4cm,高さ15mmの円形金属製容器に隙間なく詰め,室温にてレオメーター(COMPAC−100,株式会社サン科学)を用いて,テクスチャープロファイル試験を行った「硬さ1」の結果を意味する.感圧軸は,粘性用No.2(直径20mm)を用いて,モード21,速度60mm/分で試験を行う.
【0010】
生地に使用する原料は,従来,焼物菓子を調製する際に使用されているものはいずれも可能である.例えば,小麦粉,糖類,食用油脂,卵を主原料とし,必要に応じて食塩,乳製品,膨張剤などを加えたものである.この目的に合致する焼物菓子に属するものの代表例としては,クッキー類,ビスケット類,サブレ類などをあげることができる.
本発明のアミノ酸含有総合栄養食品に配合するアミノ酸としては,食品添加物公定書の規格を満たすものである限り,アルギニン、グルタミン等適宜使用することができ,特に限定されるものではないが、分岐鎖アミノ酸、すなわちイソロイシン,ロイシンおよびバリンの3種類のアミノ酸の少なくともいずれか1種であることが好ましい.
本発明のアミノ酸含有総合栄養食品に配合されるアミノ酸の配合量は,100kcalあたり2.0〜4.5g,好ましくは2.5〜4.3gの範囲である.アミノ酸の配合量が2.0gより少ないと,目的とするアミノ酸を十分量摂取できなくなり好ましくない.また,4.5gを超えるとアミノ酸の苦味を感じるようになり食品として好ましくない.
【0011】
本発明のアミノ酸含有総合栄養食品の脂質エネルギーは,該総合栄養食品の総エネルギーの30%以下,好ましくは28%以下である.
本発明のアミノ酸含有総合栄養食品に配合する乳化剤としては,グリセリン重合度が4〜10のポリグリセリン縮合リシノレイン酸,好ましくは縮合リシノレイン酸ペンタグリセリン,縮合リシノレイン酸ヘキサグリセリンである.
本発明のアミノ酸含有総合栄養食品に使用する配合する乳化剤は,脂質源として配合する油脂1重量部に対し,0.015〜0.117重量部,好ましくは0.015〜0.040重量部である.
本発明のアミノ酸含有総合栄養食品に配合する脂質としては,従来,食品で利用されている公知の各種の食用油脂類が単独または2種以上混合して使用できる.例えば,アマニ油,エゴマ油,オリーブ油,ゴマ油,米油,米糠油,サフラワー油,シソ油,大豆油,コーン油,ナタネ油,胚芽油,パーム油,パーム核油,ヒマワリ油,綿実油,ヤシ油,ナッツ油,落花生油,カカオ脂などの植物性油脂やラード,牛脂,魚油,乳脂などの動物性油脂,中鎖脂肪酸,高度不飽和脂肪酸,DHA,EPA,ジアシルグリセロールなどの加工油脂,また,これら油脂を含有するバター,マーガリン,ショートニングなどの油脂加工品が挙げられる.
【0012】
本発明のアミノ酸含有総合栄養食品に使用する糖質としては,従来,食品で利用されている公知の各種のもののいずれも使用できる.例えば,ブドウ糖(グルコース),乳糖(ラクトース),果糖(フルクトース)などの単糖類,ショ糖,グラニュー糖,麦芽糖,トレハロース,マルトース,イソマルトースなどの二糖類,デキストリン,デンプン(小麦デンプンなど)の多糖類や水飴,還元水飴,はちみつ,異性化糖,転化糖,オリゴ糖,粉飴,糖アルコール,砂糖結合水飴などが挙げられる.これらは,単独または2種以上混合して使用できる.また,従来公知もしくは将来知られうる甘味成分も糖類の代わりに用いることができる.具体的にはアスパルテーム,アセスルファムカリウム,スクラロース,アリテーム,ネオテーム,カンゾウ抽出物(グリチルリチン),サッカリン,サッカリンナトリウム,ステビア抽出物,ステビア末などの甘味成分を用いても良い.
【0013】
本発明のアミノ酸含有総合栄養食品を製造する際には,製品の種類に応じて通常用いられる適当なビタミン類やミネラル類などの成分を配合することができる.ビタミン類としては,ビタミンB1,ビタミンB2,ビタミンB6,ビタミンB12,ナイアシン,パントテン酸,葉酸,ビオチン,ビタミンC,ビタミンA,ビタミンD,ビタミンE,ビタミンKなどが挙げられる.これら複数をできるだけ組み合わせて配合するのが好ましい.ビタミンとしてビタミン誘導体を用いてもよい.
ビタミンの配合量としては,アミノ酸含有総合栄養食品100kcalあたり,下記の範囲が適当である.
ビタミンB1 0.1〜40mg,好ましくは0.3〜25mg
ビタミンB2 0.1〜20mg,好ましくは0.33〜12mg
ビタミンB6 0.1〜60mg,好ましくは0.3〜10mg
ビタミンB12 0.1〜100μg,好ましくは0.60〜60μg
ナイアシン 1〜300mg,好ましくは3.3〜60mg
パントテン酸 0.1〜55mg,好ましくは1.65〜30mg
葉酸 10〜1000μg,好ましくは60〜200μg
ビオチン 1〜1000μg,好ましくは14〜500μg
ビタミンC 10〜2000mg,好ましくは24〜1000mg
ビタミンA 0〜3000μg,好ましくは135〜600μg
ビタミンD 0.1〜50μg,好ましくは1.5〜5.0μg
ビタミンE 1〜800mg,好ましくは2.4〜150mg
ビタミンK 0.5〜1000μg,好ましくは2〜700μg
【0014】
本発明のアミノ酸含有総合栄養食品に用いるミネラル類としては,ナトリウム,カルシウム,カリウム,マグネシウム,リンおよび亜鉛などが挙げられる.これら複数をできるだけ組み合わせて配合するのが好ましい.これらは,無機電解質成分として配合されてもよいし,有機電解質成分として配合されてもよい.無機電解質成分としては,例えば,塩化物,硫酸化物,炭酸化物,リン酸化物などのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩類が挙げられる.また,有機電解質成分としては,有機酸,例えばクエン酸,乳酸,アミノ酸,アルギン酸,リンゴ酸またはグルコン酸が挙げられる.ミネラルの配合量としては,アミノ酸含有総合栄養食品100kcalあたり下記の範囲が適当である.
ナトリウム 5〜6000mg,好ましくは10〜3500mg
カルシウム 10〜2300mg,好ましくは250〜600mg
カリウム 1〜3500mg,好ましくは25〜1800mg
マグネシウム 1〜740mg,好ましくは25〜1800mg
リン 10〜2300mg,好ましくは25〜1500mg
亜鉛 0.1〜30mg,好ましくは1〜15mg
【0015】
本発明のアミノ酸含有総合栄養食品には,前記主成分のほかに必要に応じて栄養価を高めたり,風香味を付与したり,着色したりする目的で用いられる種々の添加物をさらに含有することができる.例えば,風香味付与を目的とする香料(合成香料および天然香料),醤油,味噌,化学調味料,風味物質など,また着色を目的とするカラメル,天然着色料などその他,安定剤,防腐剤などが挙げられる.これらの添加剤は,単独あるいは2種以上組み合わせても利用することができる.
なお,本発明のアミノ酸含有総合栄養食品には,食塩,イースト,酵素,膨張剤などを必要に応じて添加することもできる.酵素としては例えば,製菓用に一般によく知られている各種のプロテアーゼ,アミラーゼ,セルラーゼなどが挙げられる.膨張剤としては,食品業界で汎用されている例えば炭酸水素ナトリウム,炭酸水素アンモニウム,その代表例としては市販のベーキングパウダーが挙げられる.これらイースト,酵素,膨張剤などの添加量は通常,これらが配合される量と同程度であり,一般には約1重量%までとすることができる.
【0016】
本発明に係るアミノ酸含有総合栄養食品の製造方法においては,まず上記各成分を含有する生地を作製する.各成分の混合,混練による生地の調製は得られる生地が均一になるように適宜通常の装置,条件などを利用して行うことができる.まず,粉末状の各原料成分を秤量する.脂質源,全卵,糖質および乳化剤を混合し,クリームを形成した後,その他の原料成分を混合する.
本発明では,次いで上記で得られる生地を任意の形状に賦型する.この賦型は,通常の方法に従い,例えば麺棒あるいはデポジター,圧延ローラーなどの機械を用いて生地を延ばし型抜きする.また,搾り出し(ワイヤーカット),ロータリーモルダー,ステンシルモルダーなどの方法も挙げられる.これら賦型物の大きさおよび長さは最終製品の食べやすさ,取扱いの容易さなどを考慮し適宜定めればよい.
【0017】
本発明においては,上記生地を加熱焼成することを不可欠とし,これによってアミノ酸を含有する焼物菓子形態の総合栄養食品を得ることができる.加熱焼成の条件は,使用した原料素材,生地の水分含量などに応じて適宜選択でき,一般に製菓製造において採用されているそれらの条件と特に異なるものではない.通常,加熱温度範囲は約60〜250℃の範囲から選ばれ,加熱時間は約2〜60分の範囲から選ばれる.好ましい温度および時間は,約130〜220℃および8〜45分程度である.
上記加熱焼成のための熱源としては,特に制約はなく熱水,蒸気,電気ヒーター,ガスオーブンなどの燃焼熱を利用するもの,電子レンジなどのマイクロ波,遠赤外線,赤外線などの各種のものを用いることができる.
【0018】
本発明のアミノ酸含有総合栄養食品の水分量は3〜10重量%,好ましくは4〜8重量%の範囲である.アミノ酸含有総合栄養食品の水分量が3重量%より少ないとアミノ酸含有総合栄養食品が硬くなり食べにくく,またアミノ酸の苦味も増すために好ましくない.また,10重量%を超えると長期間の保存に適さなくなる.
このようにして得られたアミノ酸含有総合栄養食品は,グリセリン重合度が4〜10のポリグリセリン縮合リシノレイン酸を配合することにより,製造時に油脂と全卵の混合が良好であり,生地中の油脂の分散性が良く,焼成後の成分安定性や味が良好なものである.
【実施例】
【0019】
次に,実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが,本発明はこれらに限定されるものではない.
(実施例1)
表1に示す配合に基づき,調製法1の方法によりアミノ酸含有総合栄養食品を得た.アミノ酸含有量は,100kcalあたり4.0g,脂質エネルギーは総エネルギーの27.7%,脂質源として配合する油脂は全卵1重量部に対して1.2重量部である.また,縮合リシノレイン酸ヘキサグリセリンの配合割合は,油脂1重量部に対して0.023重量部である.結果を表3に示す.評価法1の結果は『良好』,評価法2の結果は『適』であった.
【0020】
【表1】

【0021】
【表2】

【0022】
(調製法1)
マーガリン(ブロンテ,株式会社ADEKA),グラニュー糖および乳化剤を4.8L容ステンレスボウルに入れ,ミキサー(KitchenAid 型式:KSM5,平面ビーター,株式会社エフ・エム・アイ)を用い,速度目盛り2で2分間ミキシングした.次に凍結全卵(製菓用,キユーピータマゴ株式会社)を加えて速度目盛り2で5分間ミキシングした.ここで,評価法1および2により油脂と全卵の混合状態を判定した.
さらに,ミクロカルマグS,ビタミンミックス,グルコン酸亜鉛,ロイシン,イソロイシン,バリン(L−ロイシン,L−イソロイシン,L−バリン,いずれも協和発酵バイオ株式会社),食物繊維(グアガム酵素分解物,サンファイバーR,太陽化学株式会社),濃縮大豆たんぱく(ARCON S,日本新薬株式会社)および乳清たんぱく(Lacprodan DI−9224,アーラーフーズイングレディエンツジャパン株式会社)を加えて速度目盛り1で30秒間,速度目盛り2で30秒間ミキシングした.最後に小麦粉(日清フラワー薄力小麦粉,日清フーズ株式会社)を加えて,速度目盛り1で30秒間,速度目盛り2で1分間ミキシングしてアミノ酸含有総合栄養食品用生地を調製した.得られた生地を麺棒で7mm厚の均一な板状に延ばし,直径6cmの型により型抜きした.その後,型抜きした生地をオーブンレンジ(品番:NE−M250,松下電器産業株式会社)で170℃,11分間焼成し,アミノ酸含有総合栄養食品を得た.評価法3により嗜好性を評価した.
【0023】
(評価法1)
マーガリン,グラニュー糖,乳化剤および全卵をクリーム状に混合した後,状態を肉眼観察した.均一なクリーム状になったものを『良好』,均一なクリーム状ではなく分離が認められるものを『不良』と判断した.結果を表3に示す.
(評価法2)
マーガリン,グラニュー糖,乳化剤および全卵をクリーム状に混合した後,一部を直径4cm,高さ15mmの円形金属性容器に隙間なく詰めた.室温にて,レオメーター(COMPAC−100,株式会社サン科学)を用いてテクスチャープロファイル試験を行った.測定はモード21により,試験速度60mm/分,最大荷重20Nで行った.感圧軸は,直径20mmの粘性用金属製球形プランジャーを用いた.データ解析はRHEO DATA ANALYZER(株式会社サン科学)で行った.硬さ1が,4.5×10−1N以上を『適』,4.5×10−1N未満を『不適』と判断した.
【0024】
(実施例2)
実施例1において,縮合リシノレイン酸ヘキサグリセリンを縮合リシノレイン酸ペンタグリセリンに変えた以外は,表1に示す配合に基づき,実施例1と全く同じ調製法を繰り返してアミノ酸含有総合栄養食品を得た.結果を表3に示す.評価法1の結果は『良好』,評価法2の結果は『適』であった.
(実施例3)
実施例1において,縮合リシノレイン酸ヘキサグリセリンを縮合リシノレイン酸テトラグリセリンに変えた以外は,表1に示す配合に基づき,実施例1と全く同じ調製法を繰り返してアミノ酸含有総合栄養食品を得た.結果を表3に示す.評価法1の結果は『良好』,評価法2の結果は『適』であった.
【0025】
(比較例1)
実施例1において,縮合リシノレイン酸ヘキサグリセリンを配合しなかった以外は,表1に示す配合に基づき,実施例1と全く同じ調製法を繰り返してアミノ酸含有総合栄養食品を得た.結果を表3に示す.評価法1の結果は『不良』,評価法2の結果は『不適』であった.
(比較例2)
実施例1において,縮合リシノレイン酸ヘキサグリセリンをパーム硬化油モノグリセリドに変えた以外は,表1に示す配合に基づき,実施例1と全く同じ調製法を繰り返してアミノ酸含有総合栄養食品を得た.結果を表3に示す.評価法1の結果は『不良』,評価法2の結果は『不適』であった.
(比較例3)
実施例1において,縮合リシノレイン酸ヘキサグリセリンをオレイン酸モノグリセリドに変えた以外は,表1に示す配合に基づき,実施例1と全く同じ調製法を繰り返してアミノ酸含有総合栄養食品を得た.結果を表3に示す.評価法1の結果は『不良』,評価法2の結果は『不適』であった.
(比較例4)
実施例1において,縮合リシノレイン酸ヘキサグリセリンをモノ・ジオレイン酸グリセリドに変えた以外は,表1に示す配合に基づき,実施例1と全く同じ調製法を繰り返してアミノ酸含有総合栄養食品を得た.結果を表3に示す.評価法1の結果は『不良』,評価法2の結果は『不適』であった.
(比較例5)
実施例1において,縮合リシノレイン酸ヘキサグリセリンをモノオレイン酸デカグリセリンに変えた以外は,表1に示す配合に基づき,実施例1と全く同じ調製法を繰り返してアミノ酸含有総合栄養食品を得た.結果を表3に示す.評価法1の結果は『不良』,評価法2の結果は『不適』であった.
(比較例6)
実施例1において,縮合リシノレイン酸ヘキサグリセリンを大豆レシチンに変えた以外は,表1に示す配合に基づき,実施例1と全く同じ調製法を繰り返してアミノ酸含有総合栄養食品を得た.結果を表3に示す.評価法1の結果は『不良』,評価法2の結果は『不適』であった.
(比較例7)
実施例1において,縮合リシノレイン酸ヘキサグリセリンをショ糖脂肪酸エステルに変えた以外は,表1に示す配合に基づき,実施例1と全く同じ調製法を繰り返してアミノ酸含有総合栄養食品を得た.結果を表3に示す.評価法1の結果は『不良』,評価法2の結果は『不適』であった.
【0026】
【表3】

【0027】
(実施例4)
実施例1において,縮合リシノレイン酸ヘキサグリセリンの配合量を1.41g(油脂1重量部に対して0.016重量部)に変えた以外は,表1に示す配合に基づき,調製法1の方法によりアミノ酸含有総合栄養食品を得た.結果を表4に示す.評価法1の結果は『良好』,評価法2の結果は『適』であった.(実施例5)
実施例1において,縮合リシノレイン酸ヘキサグリセリンの配合量を4.20g(油脂1重量部に対して0.047重量部)に変えた以外は,表1に示す配合に基づき,調製法1の方法によりアミノ酸含有総合栄養食品を得た.結果を表4に示す.評価法1の結果は『良好』,評価法2の結果は『適』であった.
(実施例6)
実施例1において,縮合リシノレイン酸ヘキサグリセリンの配合量を10.5g(油脂1重量部に対して0.117重量部)に変えた以外は,表1に示す配合に基づき,調製法1の方法によりアミノ酸含有総合栄養食品を得た.結果を表4に示す.評価法1の結果は『良好』,評価法2の結果は『適』であった.
【0028】
(比較例9)
実施例1において,縮合リシノレイン酸ヘキサグリセリンの配合量を1.05g(油脂1重量部に対して0.012重量部)に変えた以外は,表1に示す配合に基づき,調製法1の方法によりアミノ酸含有総合栄養食品を得た.結果を表4に示す.評価法1の結果は『不良』,評価法2の結果は『不適』であった.
(比較例10)
実施例1において,縮合リシノレイン酸ヘキサグリセリンの配合量を1.05g(油脂1重量部に対して0.233重量部)に変えた以外は,表1に示す配合に基づき,調製法1の方法によりアミノ酸含有総合栄養食品を得た.結果を表4に示す.評価法1の結果は『不良』,評価法2の結果は『不適』であった.
【0029】
【表4】

【0030】
(実施例7)
実施例1において,ロイシン,イソロイシンおよびバリンをアルギニンに変えた以外は,表1に示す配合に基づき,実施例1と全く同じ調製法を繰り返してアミノ酸含有総合栄養食品を得た.結果を表3に示す.評価法1の結果は『良好』,評価法2の結果は『適』であった.
(実施例8)
実施例1において,ロイシン,イソロイシンおよびバリンをグルタミンに変えた以外は,表1に示す配合に基づき,実施例1と全く同じ調製法を繰り返してアミノ酸含有総合栄養食品を得た.結果を表3に示す.評価法1の結果は『良好』,評価法2の結果は『適』であった.
【0031】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明のアミノ酸含有総合栄養食品およびその製造方法は,グリセリン重合度が4〜10であるポリグリセリン縮合リシノレイン酸を配合することにより,脂質エネルギーを30%以下として継続的な摂取に適した焼物菓子形態のアミノ酸含有総合栄養食品を提供するものである.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全卵および小麦粉を主原料とし、アミノ酸,糖質,脂質,ビタミンおよびミネラルを含有するアミノ酸含有総合栄養食品において,アミノ酸の含有量が100kcalあたり2.0〜4.5gであり,脂質エネルギーが総エネルギーの30%以下であるとともに脂質源として配合される油脂が,全卵1重量部に対して0.8〜1.4重量部であり,乳化剤としてポリグリセリン縮合リシノレイン酸を含有し,該ポリグリセリン縮合リシノレイン酸が前記脂質源として配合される油脂1重量部に対し,0.015〜0.117重量部であることを特徴とする焼物菓子形態のアミノ酸含有総合栄養食品.
【請求項2】
前記ポリグリセリン縮合リシノレイン酸のグリセリン重合度が,4〜10である請求項1に記載のアミノ酸含有総合栄養食品.
【請求項3】
前記アミノ酸がイソロイシン,ロイシン,バリンの少なくとも1種である請求項1または2に記載のアミノ酸含有総合栄養食品.
【請求項4】
クレメ法(シュガーバッター法)により生地を混合して賦型後,加熱焼成されるアミノ酸含有総合栄養食品において,油脂,糖類,全卵および乳化剤を混合し、クリームとしたときの硬さが,4.5×10−1N以上である請求項1〜3のいずれかに記載のアミノ酸含有総合栄養食品の製造方法.

【公開番号】特開2011−193834(P2011−193834A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66075(P2010−66075)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】