アミロイドβ(Abeta)の病理学的なアセンブリを標的とするモノクローナル抗体
アミロイドβ(Abeta)の可溶性オリゴマーと高い特異性で結合する抗体及び当該抗体を利用する方法を本明細書で開示する。当該抗体は、アルツハイマー病(AD)の脳抽出物とコントロールのヒト脳抽出物とを区別することができる。当該抗体はAD脳切片における内因性のAbetaオリゴマーを同定し、そして更に培養海馬細胞上のAbetaオリゴマーに対して結合する。当該抗体は内因性Abetaオリゴマー、及び溶液中で生成したAbetaオリゴマーを中和する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2004年7月2日に出願された米国特許出願第60/585,318号、及び2004年10月25日に出願された米国特許出願第60/621,776号の優先権を主張するものである。
【0002】
政府支援の記述
本明細書中に記載の本発明の一部を、保健社会福祉省の国立衛生研究所からの助成金(助成金番号NIHR01−AG18877、NIH R01−AG22547、およびNIH R03−AG22237)を使用して行った。したがって、政府は、本発明において一定の権利を有し得る。
【0003】
本発明は、生物学および薬物の分野に関する。具体的には、本発明は、神経変性疾患、例えば、限定しないがアルツハイマー病の予防、診断、及び処置に関する。
【背景技術】
【0004】
アルツハイマー病(AD)は、進行性の変性認知症である(Terry,R.D.,et al.(1991)Ann.Neurol.,vol.30,pp.572−580;Coyle,J.T.(1987)Alzheimer’s Disease.In:Encyclopedia of Neuroscience(Adelman G,ed),pp 29−31.Boston−Basel−Stuttgart)。しかし、その初期段階では、ADは、主に、新たな記憶形成が著しく不可能になることによって発症する(Selkoe,D.J.(2002)Science,vol.298,pp.789−791)。この具体的なの影響についての根拠は知られていないが、現在、アミロイドβ(Aβ)由来の神経毒の関与が支持されている。Aβは、両親媒性ペプチドであり、この豊富さは遺伝子の変異およびADに関連する危険因子により増大する。Aβから形成する線維は、AD脳の特徴である、アミロイド斑のコアを構成する。in vitroで生成する類似のフィブリルは培養脳ニューロンにとって致命的である。これらの知見は、著しく創造性に富んだ理論である、最初のアミロイドカスケード仮説についての中心となる論理的根拠をもたらし、この中では、記憶喪失が原線維Aβにより引き起こされたニューロンの死滅の結果であると提唱されている。
【0005】
その強力な実験による裏付けおよび直感的な魅力にも関わらず、最初のアミロイドカスケード仮説は、鍵となる所見との矛盾、例えば、認知症とアミロイド斑負荷との間の相関が低いこと、が証明された(Katzman, R. (1988) "Clinical, pathological, and neurochemical changes in dementia: a subgroup with preserved mental status and numerous neocortical plaques" Ann. Neurol., vol. 23, no. 2, pp. 138-144)。特に、最近の研究で、トランスジェニックhAPPマウスを使用して実施したADワクチン実験が報告されている(Dodart,J.C.et al.(2002) "Immunization reverses memory deficits without reducing brain Abeta burden in Alzheimer's disease model." Nat. Neurosci., vol. 5, pp. 452-457; Kotilinek, L.A. et al. (2002) "Reversible memory loss in a mouse transgenic model of Alzheimer's disease" J. Neurosci., vol. 22, pp. 6331-6335)。これらのマウスにより、発症年齢依存性アミロイド斑、最も重要には、発症年齢依存性記憶機能障害を発症する初期ADの良好なモデルが得られる。マウスをAβに対するモノクローナル抗体で処置した場合に、以下の2つの驚くべき所見が得られた。(1)ワクチン接種したマウスは記憶喪失の逆転が認められ、24時間で明らかに回復したこと、(2)プラークレベルは変化しないにもかかわらず、ワクチン接種の認知に対する利点が生じた。このような所見は、アミロイド原線維に起因するニューロン死に依存的な記憶喪失機構と一致しない。
【0006】
最初の仮説の主な欠点は、Aβのセルフアセンブリによって形成された非原線維性の(non−fibrillar)神経学的に活性な分子が果たす役割を組み込んだ最新のアミロイドカスケードによって排除されつつある。これらの分子は可溶性Aβオリゴマーである。オリゴマーは準安定性であり、低濃度のAβ1−42により形成する(Lambert, M.P. et al. "Diffusible, nonfibrillar ligands derived from Abetal-42 are potent central nervous system neurotoxins" Proc. Natl. Acad. Sci. USA, vol. 95, pp. 6448-6453)。本質的に、最初のカスケードのミッシングリンクであるAβオリゴマーは、記憶およびシナプス可塑性についての古典的な実験パラダイムである長期電位(LTP)を阻害する。最新のカスケードにおいて、(1)記憶喪失は、ニューロン死前のシナプス不全に起因し、そして(2)シナプス不全は原線維ではなくAβオリゴマーにより引き起こされる、ということである(Hardy, J. & Selkoe, DJ. (2002) "The amyloid hypothesis of Alzheimer's disease: progress and problems on the road to therapeutics" Science, vol. 297, pp. 353-356)。最近のレポートによると、可溶性オリゴマーは脳組織内で生じ、そしてAD(Kayed, R. et al. (2003) "Common structure of soluble amyloid oligomers implies common mechanism of pathogenesis" Science, vol. 300, pp. 486-489; Gong, Y. et al. (2003) "Alzheimer's disease-affected brain: presence of oligomeric A[beta] ligands (ADDLs) suggests a molecular basis for reversible memory loss" Proc. Natl. Acad. Sci. USA, vol. 100, pp. 10417-10422)およびhAPPトランスジェニックマウスADモデル(Kotilinek, L.A. et al. (2002) "Reversible memory loss in a mouse transgenic model of Alzheimer's disease" J. Neurosci., vol. 22, pp. 6331- 6335; Chang, L. et al. (2003) "Femtomole immunodetection of synthetic and endogenous amyloid-[beta] oligomers and its application to Alzheimer's Disease drug candidate screening" J. MoI. Neurosci., vol. 20, pp. 305-313)で著しく上昇することが証明されている。
【0007】
アルツハイマー病のアミロイドベータ免疫療法は、ADのマウスモデル及び髄膜脳炎に罹患しにくいヒトの患者において初期成功を収めている。本明細書では、可溶性Aβオリゴマー(ADDL)に対するモノクローナル抗体を開示する、当該抗体は、ADのヒト脳抽出物とコントロールのヒト脳抽出物とを区別する。当該抗体は、AD脳スライス内の内因性オリゴマーを同定し、そして更に培養海馬細胞と結合する。当該抗体は、溶液の内因性ADDLと「合成」ADDLを中和する。いわゆる「合成」ADDLは、精製アミロイドβ1−42を、ADDLを生成する条件下で混合することによりin vitroで生成される(米国特許第6,218,506号を参照のこと)。当該抗体の1つである20C2は、3〜24量体についての高い選択性を示すが、モノマーであるAβペプチドは最小限しか検出しない。20C2によるADDLの認識は、Aβ1−42の線形配列を包含する短いペプチドによって、又はAβ1−40によっては阻止されない。しかしながら、結合はAβ1−28により阻止されたことから、高次構造的に独特な構造に基づいたエピトープもAβ1−28により到達したことが示唆される。
【0008】
ADは、現在治療法がない致死性の進行性認知症である。当該疾患の分子基盤は確立されておらず、多数の証拠が、42アミノ酸のペプチドアミロイドベータ(Aβ)に由来する神経毒が関与するタンパク質異常症(proteinopathy)であることを示している。疾患の進行を説明するための主要な「アミロイドカスケード仮説」の最近の改訂によると、小さな可溶性Aβオリゴマーは、プラークのコアを構成するより大きなAβフィブリルと同様に病原性であることが主張されている(Hardy, J. & Selkoe, DJ. (2002) "The amyloid hypothesis of Alzheimer's disease: progress and problems on the road to therapeutics" Science, vol. 297, pp. 353-356)。
【0009】
近年の研究によると、小さな可溶性Aβオリゴマー(Aβ由来拡散性リガンド又はADDLとも称される)がAD脳に存在しており、コントロールの被験者よりも最大70倍増大することが証明されている(Gong, Y. et al. (2003) "Alzheimer's disease-affected brain: Presence of oligomeric A[beta] ligands (ADDLs) suggests a molecular basis for reversible memory loss" Proc. Natl. Acad. Sci. USA, vol. 100, pp. 10417-10422)。AD脳にADDLが非常に大量に存在することは、それらが治療薬又はワクチンにとって可能性があることを示唆している。ワクチンの初期の臨床試験により、当該ワクチンに対し力強い免疫反応を起こす人が認知に関する利益を示したことが明らかとなった(Hock, C. et al. (2003) "Antibodies against beta-amyloid slow cognitive decline in Alzheimer's disease" Neuron, vol. 38, pp. 547-554)。これらの所見は、当該試験の一部の初期の終結が引き起こしたCNS炎症が許容できない頻度であったにも関わらず、、真の治療的確約を示している(Birmingham, K. & Frantz, S. (2002) "Set back to Alzheimer vaccine studies" Nat. Med., vol. 8, pp. 199-200)。
【0010】
生ワクチンの代わりとして、モノマー又は原線維と結合することなくADDLを標的とする治療抗体が開発されている(Klein, W.L. (2002) "A/3 toxicity in Alzheimer's disease: globular oligomers (ADDLs) as new vaccine and drug targets" Neurochem. Int., vol. 41, pp. 345-352)。以前の研究では、ADDLが優れた抗原であり、〜50μg/mlという非常に低濃度でウサギ中にオリゴマー選択的ポリクローナル抗体を産生させることが証明されている(Lambert, M.P. et al. (2001) "Vaccination with soluble Abeta oligomers generates toxicity-neutralizing antibodies" J. Neurochem., vol. 79, pp. 595-605)。tgマウスモデル由来の結果も、抗体が記憶力低下を回復に向かわせるのに成功し得ることを示唆している(Dodart, J.C. et al. (2002) "Immunization reverses memory deficits without reducing brain Abeta burden in Alzheimer's disease" Nat. Neurosci., vol. 5, pp. 452-457)。
【0011】
ADのtgマウスを原線維アミロイドベータタンパク質(Aβ)で免疫化すると、脳のAβ沈着が低下し、そしてその形成前に投与した場合にはこの病態の形成が予防される(Schenk, D. (2002) Amyloid-beta immunotherapy for Alzheimer's disease: the end of the beginning. Nat. Rev. Neurosci. 3(10):824-8; Schenk, D. et al. (1999) Immunization with amyloid-beta attenuates Alzheimer-disease-like pathology in the PDAPP mouse. Nature 400(6740): 173-7)。これらのマウスで生み出される学習及び記憶の欠損は、原線維Aβを含む調製物による同様の能動的なワクチン接種によっても低下し、又は予防される(Janus, C. et al. (2000) A beta peptide immunization reduces behavioural impairment and plaques in a model of Alzheimer's disease. Nature 408(6815):979-82; Morgan, D. et al. (2000) A beta peptide vaccination prevents memory loss in an animal model of Alzheimer's disease. Nature 408(6815):982-5)。動物モデル由来の結果に基づき、臨床試験が開始され、そしてフェーズ1において多少の有害な反応が示された。しかしながら、フェーズ2の試験は、患者の6%が髄膜脳炎を発症した時点で中止された(Birmingham, K. & Frantz, S. (2002) Set back to Alzheimer vaccine studies. Nat. Med. 8(3): 199-200; Hock, C. et al. (2003) Antibodies against beta-amyloid slow cognitive decline in Alzheimer's disease. Neuron 38(4):547-54; Orgogozo, J.M. et al. (2003) Subacute meningoencephalitis in a subset of patients with AD after Abeta42 immunization. Neurology 61(l):46-54; Schenk, D. (2002) Amyloid-beta immunotherapy for Alzheimer's disease: the end of the beginning. Nat. Rev. Neurosci. 3(10):824-8; Schenk, D. et al. (2004) Current progress in beta-amyloid immunotherapy. Curr. Opin. Immunol. 16(5):599-606)。これらの臨床試験の臨床転帰のレポートによると、プラークを標的とする抗体を産生する患者は、1年後、抗体を産生しなかった患者よりも認知低下の速度が遅かったことが明らかとなった(Hock, C. et al. (2003) Antibodies against beta-amyloid slow cognitive decline in Alzheimer's disease. Neuron 38(4):547- 54)。二人の患者の検視結果上、有効な免疫反応を示唆するミクログリアとともに、新皮質内には全く又はほとんどプラークが見られなかった(Ferrer, I. et al. (2004) Neuropathology and pathogenesis of encephalitis following amyloid-beta immunization in Alzheimer's disease. Brain Pathol 14(1): 11-20; Nicoll, J.A. et al. (2003) Neuropathology of human Alzheimer disease after immunization with amyloid-beta peptide: a case report. Nat. Med. 9(4):448-52)。
【0012】
治療抗体の使用による炎症反応を回避するための代替的なアプローチが現在開発されている(Agadjanyan, M.G. et al. (2005) Prototype Alzheimer's disease vaccine using the immunodominant B cell epitope from beta-amyloid and promiscuous T cell epitope pan HLA DR-binding peptide. J. Immunol. 174(3): 1580-6; Gelinas, D.S. et al. (2004) Immunotherapy for Alzheimer's disease. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101(Suppl 2):14657-62; Morgan, D. & Gitter, B.D. (2004) Evidence supporting a role for anti-Abeta antibodies in the treatment of Alzheimer's disease. Neurobiol. Aging 25(5):605-8; Schenk, D. et al. (2004) Current progress in beta- amyloid immunotherapy. Curr. Opin. Immunol. 16(5):599-606)。Aβにより生成したモノクローナル抗体による注射は、ADのtgマウスモデルの認知の改善をもたらすことが確証されている。エピトープがAβペプチドの中心を標的とする抗体を用いると、記憶障害が処置後24時間以内にPDAPPマウスで逆転しうることが証明されている(Dodart, J.C. et al. (2002) Immunization reverses memory deficits without reducing brain A beta burden in Alzheimer's disease model. Nature Neuroscience 5(5):452-7)。同様に、Tg2576マウスにおいても、AβのN末端を標的とする抗体を用いた結果、記憶喪失が逆転した(Kotilinek, L.A. et al. (2002) Reversible memory loss in a mouse transgenic model of Alzheimer's disease. J. Neurosci. 22(15):6331-5)。
【0013】
前もっての受動ワクチン接種は、PDAPP及び他のtgマウスモデルからプラークを取り除くことが証明された(Bacskai, BJ. et al. (2002) Non-Fc-mediated mechanisms are involved in clearance of amyloid-beta in vivo by immunotherapy. J. Neurosci. 22(18):7873-8; Bard, F. et al. (2003) Epitope and isotype specificities of antibodies to beta -amyloid peptide for protection against Alzheimer's disease-like neuropathology. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100(4):2023-8; Bard, F. et al. (2000) Peripherally administered antibodies against amyloid beta-peptide enter the central nervous system and reduce pathology in a mouse model of Alzheimer disease. Nat. Med. 6(8):916-9; McLaurin, J. et al. (2002) Therapeutically effective antibodies against amyloid-beta peptide target amyloid-beta residues 4-10 and inhibit cytotoxicity and fibrillogenesis. Nature Medicine 8(11): 1263-9)。しかしながら、記憶障害からの回復を示す研究においては、Aβプラーク断面積比(plaque burden)は低下しなかった。プラーク断面積比の変化無しに認知が改善したことの考えられる説明としては、これらの治療抗体が、ADシナプス不全に関与しているAβの小さな可溶性オリゴマーを免疫中和するということである(Lacor, P.N. et al. (2004) Synaptic targeting by Alzheimer's-related amyloid beta oligomers. J. Neurosci. 24(45): 10191 -200)。Aβオリゴマーは、低濃度のAβ1−42で形成し、LTPをブロックし、そして特異的にシナプス終末に結合する(Lacor, P.N. et al. (2004) Synaptic targeting by Alzheimer's-related amyloid beta oligomers. J. Neurosci. 24(45):10191-200; Lambert, M.P. et al. (1998) Diffusible, nonfibrillar ligands derived from Abetal-42 are potent central nervous system neurotoxins. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95(11):6448-53; Wang, H.W. et al. (2002) Soluble oligomers of beta amyloid (1-42) inhibit long-term potentiation, but not long- term depression, in rat dentate gyrus. Brain Res. 924(2): 133-40; Wang, Q. et al. (2004) Block of long-term potentiation by naturally secreted and synthetic amyloid beta-peptide in hippocampal slices is mediated via activation of the kinases c-Jun N-terminal kinase, cyclin-dependent kinase 5, and p38 mitogen-activated protein kinase as well as metabotropic glutamate receptor type 5. J. Neurosci. 24(13):3370-8)。これらのオリゴマー(ADDLと称する)は、AD脳及びCSF並びにtgマウスモデルにおいて増大する(Chang, L. et al. (2003) Femtomole immunodetection of synthetic and endogenous amyloid-beta oligomers and its application to Alzheimer's disease drug candidate screening. J. MoI. Neurosci. 20(3):305-13; Georganopoulou, D.G. et al. (2005) Nanoparticle-based detection in cerebral spinal fluid of a soluble pathogenic biomarker for Alzheimer's disease. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102(7):2273-76; Gong, Y. et al. Alzheimer's disease-affected brain: presence of oligomeric A beta ligands (ADDLs) suggests a molecular basis for reversible memory loss. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 2003 100(18): 10417-22)。
【0014】
これらのことを考慮すると、オリゴマーは、治療用抗体にとって最適な標的を提供するものである。本発明は、オリゴマー(ADDL)選択性のモノクローナル抗体を得るための必要性について対処するものである。本明細書で開示するアプローチは、抗原として可溶性Aβオリゴマー(ADDL)を使用するが、これは、それらがポリクローナル抗体の生成において、四次構造依存性のエピトープを提供するのに有用であることが既に証明されたためである。このストラテジーは、ADとコントロールの脳とを識別し、且つ溶液中のオリゴマーを中和するモノクローナル抗体を生成し、治療上有用な抗体にとって必須であると考えられる特徴を有している。
【0015】
本発明の要約
ある態様において、本発明は、アミロイドβ1−42の可溶性オリゴマーと結合する抗体を含んで成る。当該オリゴマーはADDLであってもよい。当該抗体はモノクローナルであってもよい。当該抗体は選択的にオリゴマー(ADDL)と結合することができ、アミロイドβモノマー又はアミロイド原線維とは結合することができない。上述のとおり、Aβオリゴマー(ADDL)特異的なエピトープを標的とするモノクローナル抗体の開発及び特徴を本明細書で開示する。かかる抗体は、プラーク結合による干渉を受けることなくAβオリゴマー(ADDL)を中和することができるヒトワクチンとしての役割を果たすことができる。かかる抗体はまた、そのようなワクチンのプロトタイプとしての役割を果たすことができる。当該ワクチンはヒト化抗体を含むことがある。
【0016】
別の態様において、本発明は、アミロイドβモノマー又は原線維と結合しないモノクローナル抗体を用いて、アミロイドβ1−42の可溶性オリゴマーをアッセイする方法を含んで成る。当該アッセイは、定量的又は定性的であり得る。当該発生は、in vitro, in vivo, 又はin vitro且つin vivoであってもよい。当該アッセイは、患者又は対象から単離した試料で実施してもよい。当該アッセイは、オリゴマーに干渉する化合物を検出することができる。当該化合物は、オリゴマーのアセンブリ、オリゴマーの活性、オリゴマーとそれらの受容体との結合、又はそれらの任意な組み合わせに干渉することがある。当該抗体を使用して、オリゴマーの1又は複数の細胞性の受容体を同定することができる。
【0017】
別の態様において、本発明は、前記オリゴマーと選択的に結合するモノクローナル抗体を含んで成る組成物を含んで成る。当該組成物は、当業者に周知の方法に従い調製され、特徴付けられ、そして使用される医薬組成物であってもよい。当該組成物は、予防的、治療的、あるいは治療的且つ予防的であってもよい。当該組成物は、神経変性疾患を余郷し、又は神経変性疾患を処置するために投与することができる。当該疾患は、アルツハイマー病(AD)、軽度認識障害(MCI)、ダウン症等でありうる。
【0018】
詳細な説明
抗体の生成、調製、特徴づけ、及び使用についての一般的な技術は当業者にとって周知である(例えば、Harlow, E. & Lane, D. (1988) Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor: N.Y.; Harlow, E. & Lane, D. (1999) Using Antibodies: A Laboratory Manual, Cold, Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor: N. Y.; Sambrook, J. et al. (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor: N. Y.;等を参照のこと)。
【実施例】
【0019】
抗ADDL抗体
(開発及び特徴づけ)
材料と方法
モノクローナル抗体の開発。免疫化及び融合は、ノースウェスト大学のCore Antibody Facility及びカナダ国ブリティッシュコロンビア州ビクトリアのImmuno-Precise Antibodies, Ltd.にて行った。増殖、スクリーニング、及びサブクローニング(必要に応じて)は、ノースウェスト大学のWilliam Klein博士の研究所にて行った。
【0020】
ノースウェスタン大学では、既述の通りAβ1−42から調製したF12培地中のADDL[22;27]を、完全フロイントアジュバント(初回及び二回目のワクチン接種)又は不完全フロイントアジュバント(その後の全てのワクチン接種)と1:1で混合し、そして3匹のマウスに合計量〜1ml/マウスで皮下注射(最初の2回の注射)又は腹腔注射した。各注射は、194±25μgの全タンパク質に相当するADDLから構成した。ほぼ3週毎にマウスに注射した。6回注射した後、1匹のマウスが死に、そしてその脾臓を後のプロジェクトのために凍結した。最高の力価の血清を有するマウス由来の脾臓を続いてSP2.0ミエローマ細胞と融合し、そしてこれを6枚の96穴プレート内にプレーティングした。これらのプレート由来の上清を後述のようにスクリーニングした。最後のマウスは、2ヶ月後に7回目の注射を行い、そして前述の通り融合した。ハイブリドーマ細胞を20枚の96穴プレートにプレーティングし、そして37℃、5%CO2で生育した。増殖培地はDMEM/F12であり、これにHAT(1x, Sigma)、グルタミン(2mM)、ハイブリドーマエンハンシングサプリメント(10%、Sigma)、OPI(オキサロ酢酸、プリン、インスリン、0.1%、Sigma)、PMA(ホルボールモノアミンアセテート、0.6μg/L、Sigma)、ウシ胎児血清(0.15%)、及び胎児クローンII血清(15%、HyClone)を加えた。これらのプレートをKleinのラボに移し、ここで、上清を以下のようにスクリーニングした。選択したハイブリドーマを広げ、そして後のサブクローニングのために凍結した。2つのハイブリドーマを凍結することなくサブクローニングした。
【0021】
スクリーニング工程は、最終的に5つのアッセイを利用した:合成ADDLを用いた[27]に記載のドットイムノブロット及びウェスタンイムノブロット、並びに後述のネイティブイムノブロット、並びに後述の、ヒト組織から得た内因性原線維を用いたドットイムノブロット及びウェスタンブロット。これらのアッセイにより、ADDLに対する抗体の結合(ドットイムノブロット)及び特定のオリゴマー種に対する親和性(ウェスタンブロット)が試験された。上清は、5ピコモルのADDLを用いたドットイムノブロットにより最初に試験した(最初の融合における576の上清及び第二の融合における1920の上清)。試験でポジティブだったこれらのクローンを更に、1レーン当たり10〜20ピコモルでのウェスタンブロットによりスクリーニングした。当該スクリーニングを繰り返し、低ポジティブ又は偽陽性のものを同定した。10個のウェルを最初のマウスのために広げ、そして45個のウェルを第二のマウスのために広げ、続いてこれらを凍結又はサブクローニングした。
【0022】
Immuno-Precise Antibodies, Ltd. (カナダ国ブリティッシュコロンビア州ビクトリア)において、彼等が所有するRapid-Prime法を用いてクローンを生成した。〜0.25−0.35mLのADDLを用いて2週間にわたり平均0.505mg/mlで動物を免疫化した。続いて、クローンの上清(288/プロジェクト)を、上述のようなスクリーニングのためにKleinのラボに送った。
【0023】
合成及び内因性のADDL及び原線維:合成ADDLは[22;27]に記載のようにF12中で調製した。合成の原線維は[40]に従い調製した。内因性のADDLは、[15]に記載のように濃縮段階を省略してAD脳組織から抽出した。内因性の原線維は、同一の調製方法を用いて獲得し、但し、ペレットはその後1時間2%SDS/F12を用いて1時間インキュベートし、そして220,000xgで1時間遠心した。原線維を含むペレットを、続いてF12中で懸濁し、そして30〜60秒間超音波処理して材料をタンパク質濃度の決定のために懸濁した。
【0024】
ドットイムノブロット及びペプチド競合:ドットブロットによる最初のスクリーニングは、[27]に従い、ADDL(5ピコモル/ドット)又は原線維(1μg/ドット)のいずれかを利用して実施した。競合ドットブロットの場合、ADDLは、0.5μLの容積中種々のピコモル濃度で、2つ1組で、SurfBlot装置由来の鋳型を用い、乾燥したニトロセルロースに適用した。続いてブロットを15分間乾燥し、1時間ブロッキングし、そしてSurfBlot装置内に挿入した。抗体±ペプチドをウェル中で1.5時間インキュベートし、ドットブロット装置から取り出し、ウェルをブロッキングバッファーで洗浄し、そして膜を当該装置から取り出した。ニトロセルロースを続いて洗浄し、二次抗体で処理し、そして下文で引用する通り可視化した。
【0025】
イムノブロッティング.ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)を[27]に従い実施し、但し、10〜20%トリス−トリシンゲル(BioRad)を用い、そして分離は120Vで実施した。二次抗体はルーチンに1:40,000希釈で使用した。
【0026】
最初のスクリーニングのために、調製用の10〜20%ゲルは、1レーン当たり〜16−20ピコモルに等しいサンプルウェル中2.7μgのADDLと一緒に使用した。電気泳動及びトランスファーは上述の通りである。ガイドとしてトラッキング色素を用い、ブロッキングしたニトロセルロースをSurfblot装置内に据え、そして200μlのハイブリドーマ上清とブロッキングバッファー(5%脱脂粉乳/TBST−トリス緩衝溶液とTween20−[27]を参照のこと)を20〜21個のウェルのそれぞれに添加した。室温で1.5時間インキュベートした後、上清を除去し、そしてウェルをバッファーで洗浄した。膜を続いてSurfblotから取り出し、そして3x15分間TBST中で洗浄した。二次抗体を続いて膜と一緒に1時間室温でインキュベートした。洗浄後(3x15分間)、オリゴマーを半分の強度のSuperSignal(Pierce)で可視化した。ヒトの原線維を用いてのウェスタンイムノブロットを、同じ方法により、各ゲルにつき約64μgの調製した材料を用いて実施した。
【0027】
ネイティブポリアクリルアミドゲル電気泳動は、[7]に従い、120Vで実施した。
【0028】
免疫細胞化学:免疫細胞化学は[27]に記載の通り実施し、但し、培養は21 DIVで行い、そしてAlexaFluor 488 (Molecular Probes)を使用してマウスIgGを可視化した。ブロッキング実験において、抗体とADDLを、1:4のモル比で用いて、海馬細胞培養物に適用する前に1時間室温で予めインキュベートした。
【0029】
サイズ排除クロマトグラフィー:サイズ排除クロマトグラフィーを[7]の通りに実施した。ストレプトアビジン−ダイナビーズ(50μl、Dynal)を1%BSA/PBS中で30分間4℃でブロッキングした。ビーズをビオチン化した20C2(250μlのPBS中25μg)と一緒に70分間4℃でインキュベートし、そして3x10分間1mlのPBSで洗浄した。続いて、ビーズは、抗体と一緒に又は抗体無しで、ADDL(40μl、25μM)と一緒に70分間4℃でインキュベートし、そして15,000gで10分間遠心した。上清のアリコート(30μl)をSECによりPBS(0.06ml/分)で平衡化Superdex 75 PC 3.2/30カラム上で解析し、そして画分(0.3ml)を回収した。吸光度を215nmでモニタリングした。
【0030】
免疫組織化学:AD及びコントロールの海馬由来の、軽く固定して凍結した切片(4%パラホルムアルデヒド中4℃で30時間、続いてスクロース中で凍結保護。40μm)を、抗体(PBS中1:1000)と一緒に一晩4℃でインキュベートした。抗体の除去後、切片を3回PBSで洗浄し、そして次に1:500の適当な二次抗体と一緒に一晩4℃でインキュベートした。切片を3回PBSですすぎ、そして2時間4度でVector ABCペルオキシダーゼスタンダードキットと一緒にインキュベートした。続いて結合をDAB(トリスバッファー中0.05%又は1:500で2分間)で可視化した。切片をヘマトキシリンで対比染色し、これにpermaslipを乗せ、そしてNikon Eclipse E600光学顕微鏡とSpot Insight デジタルビデオカメラ(v. 3.2)で撮像した。
【0031】
結果:
オリゴマー特異的モノクローナルスクリーニングストラテジー
モノマー及び/又は原線維の代わりにオリゴマーを認識するクローンを同定するために、最初に、5ピコモルの合成ADDL又は1μgの内因性AD原線維を用いたドットイムノブロットにより上清をスクリーニングした(図1)。このスクリーニングに由来するポジティブなもの(〜30%)を続いてウェスタンイムノブロットにより試験して更に結合種を規定した。ウェスタンブロットにより試験したクローンのうち、〜2%が、低ADDL濃度でオリゴマーと結合し、モノマーには結合しないことが明らかとなった。これらのクローンの多くも、原線維と結合し、そして1つ(20C2)が徹底的な特徴づけのために選択された。あるクローン(1H9)は、トリマー/テトラマー種と比較してより高次のオリゴマー(12〜24量体)とよく結合することが明らかとなった。天然の条件下でのみADDLと結合する1つのクローン(3A5)が見つかった。原線維と結合し、オリゴマー(3A7、3A9)とは結合しない2つのクローンが見つかった。およそ50個のクローンが、更なる展開、精製、及び試験のために選択された。
【0032】
AD脳とコントロールの脳とを特異的に識別するモノクローナル抗体
抗体が、ヒトAD脳(内因性ADDLを含む)の可溶性抽出物とコントロール脳の抽出物とを識別することができるかどうかを決定することが必須の試験であった。合成(ADDL(1ピコモル)及び3つのヒト脳抽出物(0.5μg、Braakw及びCERADで病期分類したもの)をドットイムノブロットでアッセイした。代表的な結果を図2Aに示す。6E10(Aβ3−8内にエピトープを有する市販の抗体)、2B4、及び2A10は、AD脳抽出物に対し弱い結合を示したが、尚もAD脳とコントロール脳とを識別した。しかしながら、2つのモノクローナル抗体20C2及び11B5は、ポリクローナル抗体M71/2と共に、高度な特異性でAD脳とコントロール脳とを識別した。
【0033】
AD脳における20C2の免疫反応性
次に20C2がヒト脳の切片内の抗原を検出する能力について試験した。固定したAD脳及びコントロール脳を抗体に曝露し、そして次にヘマトキシリンで対比染色した。免疫反応性はAD脳の海馬、嗅内皮質、及び中前頭回で顕著であった(図2B、中央)。標識部分は変化に富み、プラーク様の領域と血管因子から成る。コントロール脳は20C2による染色を示さなかった(図20B、左)。更に、興味深い拡散性の標識パターンが、既にポリクローナル抗体で見られているように[25]、個々のニューロン及び細胞集団の周囲で見られた(ニューロン周囲の標識、図2B、右側)。ニューロン周囲の標識は、培養物に見られる樹状部位に対してのオリゴマーの結合に類似している。
【0034】
20C2の特異性:ウェスタンイムノブロット及びドットイムノブロット
20C−2がAβ1−40と結合する能力を続いて試験し、ADDLと、ADDL画分をSuperdex 75カラムを用いたSECにより分離した。これまでに報告されているように、SECは2つの主要な画分をもたらし、ピーク1は空隙容量の直後に溶出するものであり、そしてピーク2は13kDaのマーカー付近で溶出するものである[7;25]。比較のために、6E10とM71/2も試験した。SDS−PAGEに続いて銀染色(図3A)又はイムノブロッティング(図3B)を行った。6E10のみが、モノマーとして独占的に移動するAβ1−40を認識した。6E10はまた、3つ全ての画分においてモノマーのAβ1−42の顕著な染色をもたらした。低分子量のピーク2は主にモノマーであった。20C2とM71/2は、6E10と対照的に、ピーク2においてわずかにうっすらとしたモノマーの染色を示し、そしてピーク1又は分画していないADDLにおいては全くモノマーの染色を示さなかった。3つ全ての抗体が、ADDL調製物及びピーク1のトリマー、テトラマー、及び12〜24量体と反応を示した。このように、ウェスタンブロットは、20C2がモノマーよりもオリゴマーに対し非常に優先的に結合することを示唆している。
【0035】
オリゴマーについての選択性の評価
特異性の3つの追加試験を実施した。最初に、10nMのモノマーのAβ1−42からのオリゴマーの時間依存的な形成(図3C及びD)をドットイムノブロットで測定した。当初、モノマーが優勢である場合、染色は軽微であった。次の10分間、オリゴマー化は比較的迅速であり、そして免疫反応性は400%増大した。Aβ1−40モノマーはほとんど検出されなかった(図3C)。ウェスタンブロットと調和して、ニトロセルロースと結合した変性していない分子のこれらのアッセイは、20C2がオリゴマー選択的であることを示唆している。
【0036】
続いて、免疫沈降を使用して、20C2が選択的に溶液中でモノマーよりもADDLを選択的に認識するか否かを決定した。磁気Dynabeadを20C2と一緒に、又は20C2無しでADDLとインキュベートし、ビーズと、結合した材料を除去し、そして上清はSuperdex 75カラムを用いて分画した(示さず)。ピーク1で見られたより高分子量の種を、ピーク2と比較して選択的に除去した(73%対33%)。ピーク2は低分子量のオリゴマーを含んで成るが、主にモノマーを含んで成る。結果は、モノマーと比較した場合のオリゴマーについての20C2の溶液選択性と一致している。
【0037】
第三に、溶液中でのADDL又はAβ1−40についての20C2の親和性は、競合アッセイを用いて比較した。20C2をADDLの量を増やしつつ予めインキュベートし、続いてニトロセルロース上に固定したADDLと結合する能力について試験した(図4A)。溶液中のADDLは、固定化したADDLに対する結合を、30nMの半阻害濃度(half maximal)で効果的にブロックした(図4B)。モノマーのAβ1−40は、結合をブロッキングするのに有効ではなく、非特異的な会合を示唆する線形の低下を示した。非特異的な会合は、先に見られた低レベルの反応性と一致する(図3C)。
【0038】
20C2エピトープの高次構造の性質
20C2のエピトープを研究するために、Aβ1−42の全長を包含する4つの短いペプチド(1−12,12−28,25−35,35−42)を用いて、競合ドットイムノブロットを最初に実施した。いずれのペプチドもADDLに対する20C2の結合に対しなんら効果を有さなかったが(図5A)、ADDLコントロールは完全に結合をブロックした。続いて、より長いペプチドであるAβ1−28及びAβ17−42をアッセイした。ADDLに対する20C2の結合は、Aβ1−28によって完全に阻害された(図5B)。半阻害濃度は10nMであり(図5C)、ADDLによる場合よりも若干低かった。ADDLはモノマーを含む混合溶液中にあるので、この差異は驚くべきものではない。Aβ17−42はインパクトもなく、任意の組み合わせのペプチドもそうであった。20C2とAβ1−28とのプレインキュベーションもウェスタンブロットにおいて結合をブロックする(図5D)。Aβ1−28の高次構造エピトープは三次又は四次構造から導くことができる。Aβ1−28がダイマーを形成することは既に示唆されており[28]
そしてSDS−PAGEで解析した場合(図5D)、我々の調製物は単一のバンドで移動し、これはこのような示唆と一致している。しかしながら、このダイマーはウェスタンブロットにおいて20C2により認識されなかった。
【0039】
細胞に対するADDLの結合の免疫中和
ADDLは、in vitroで形成したか、AD脳から得られたかに関係なく、海馬の培養物中のシナプスに結合する[25]。最後の実験において、20C2はこのシナプスの結合を阻害する能力について試験された。ADDLは、20C2と一緒に、又は20C2を用いずに、培養物と60分間インキュベートされ、そしてADDLの結合は免疫蛍光顕微鏡で検出した(図6)。20C2無しで、ADDLは、これまでに観察されているように[25;27]、点状のシナプスパターンと結合した。担体と非二次抗体コントロールは、染色を示さなかった。AD脳由来(5C)ADDL及び合成(5D)ADDLの結合は共に20C2とのプレインキュベーションによりブロックされた。これらの条件下での20C2による結合の阻害は90%超であった(5E)。
【0040】
考察
ADDLを使用して、病理学的なAβのアセンブリを標的とするモノクローナル抗体を生成した。注目の3つの方の抗体が生成した;オリゴマー及び原線維と結合することができるもの;原線維とは結合することができるが、オリゴマーとは結合することができないもの;及び、オリゴマーとは結合することができるが、原線維とは結合することができないもの。第一のクラスが最も一般的であり、そしてこのクラスの1つの特定のクローンを展開し、そして徹底的に特徴付けた(20C2)。この抗体は、抽出物及び組織切片中で、コントロール脳をAD脳から識別した。ADDLに共通する3Dエピトープに由来する識別及びAβ1−28のアセンブリはAβ1−40及び他の直鎖配列にはなかった。20C2によるADDLの結合は、それらが海馬の培養物中のシナプスに結合するのを防いだ。従って、20C2は病理学的なAβのアセンブリを選択的に免疫中和する治療用モノクローナル抗体のプロトタイプである。
【0041】
種々の形態のAβフラグメント及びアセンブリによる免疫化は、種々の有用な特性を有する抗体を生成させた。短いN末端ペプチドは、例えば、本研究で使用する6E10[10]を生成させ、これは全ての形態のAβと実質的に結合する。C末端抗原は、Aβ1−40をAβ1−42と区別するモノクローナル抗体を生成させ、これはそれらを選択的ELISAにとって有用なものとする[19;34]。Kayedらは[20]最近、金コロイドとカップリングしたAβ1−40を使用して、in vitroでオリゴマーと結合するがモノマー又は原線維と結合せず、そして脳の切片において拡散性の初期のプラークと反応するがチオフラビンポジティブな高密度プラークと反応しない抗体を生成させた。ADDL調製物によるワクチン接種で生成したポリクローナル抗体[27]は、AD脳組織をコントロールの脳組織から切片及びドットイムノブロット両方で区別し、AD脳のオリゴマーの性質を特徴づけ、培養細胞上のシナプスに対して結合したADDLを同定し、そして抗ADDLの創薬のためのリード化合物を同定するのに使用された[25;27;43]。
【0042】
20C2モノクローナル抗体は、ウェスタンブロット及びドットイムノブロットパラダイムにおいてオリゴマー及び原線維を認識するが、モノマーを認識しない点について、ADDLにより生成したポリクローナル抗体と似ている。AD脳の切片において、わずかなニューロン周囲の免疫反応性は明らかであった。この免疫反応性は、仮定では、シナプスに対するオリゴマーの結合に寄与しており、ADにおいて初期に又は前臨床時にさえ生じていると考えられている。ウェスタンブロットにおいて20C2により認識された種は、銀染色ではなんら材料は検出されなかったが、より高次オリゴマー(12〜24量体)を含んでいた。Aβ1−40モノマーは、20C2ではイムノブロットにおいて検出されず、Aβ1−42もSDSがトランスファーバッファー中に存在しているときには検出されなかった。しかしながら、SDS無しに、20C2はモノマーの位置に免疫反応性を示した。モノマーの移動は、ビオチン化したAβ1−42についてのストレプトアビジン−HRPアッセイにおいて、SDSに影響を受けないことが確認された(データは示さない)。いずれか1つの説明又は機構に拘束されることを意図するものではないが、SDS無しで、モノマーは移動の間に複合し、そしてオリゴマーを生成すると仮定され、これはAβが非常に低濃度であっても見られる迅速なオリゴマー化と一致している(図3)。競合実験では、20C2が溶液中でモノマーについての最小の親和性を有していることが証明され、これによりSDS−PAGE解析に伴う不明確さが回避される。
【0043】
競合的な実験(図5)によると、ADDLに対する20C2の結合が高次構造の決定因子に依存していることが更に示され、これはAβ1−42の抗原性についてのこれまでの示唆と一致している[8]。20C2と、ADDL又はAβ1−28を含む溶液とのプレインキュベーションは、ドットイムノブロットにおけるADDLに対するその後の結合をブロックした。他のペプチド、例えばAβ1−40は効果がなかった。エレクトロスプレー質量分析によるAβ1−28の解析は、これが、ダイマー、おそらくは他のより高次のオリゴマーを気相で形成することを示唆している[28]。2つのダイマー構造が、Aβ17−23又はAβ17−28のいずれかのコアのオーバーラップにより、当該データに適合すると仮定された。したがって、20C2エピトープは3次元であり、Aβ1−28が凝集してダイマーを形成することは、正確なアミノ酸を結合ポケットにアラインさせるのに必要であり、おそらく幾つかはそれぞれの単一ペプチドに由来する。変性したAβ1−28は、銀染色で見られるように(図5)、ダイマーと一致する位置に移動する。あるいは、単一のペプチド自体がフォールディングしてアミノ酸を適切な配列中にアラインさせることがあり、一方、より短いペプチドは、完全長のAβ1−40と同様にフォールディングすることができない。
【0044】
N末端エピトープを有する抗体は、C末端又は中央のエピトープよりも、tgマウスにおけるプラークのクリアランス[3]、そして原線維形成及び細胞毒性の阻害[29]に有効であるようである。Aβ3−6配列(EFRH)に依拠する置換一本鎖抗体は、Aβの凝集物のin vitroでの形成を抑制し、そしてtgマウスにおける脳アミロイド負担の損失をもたらした[12;39]。別のN末端抗体であるBAM−10は、アミロイド斑を減少させずにtgマウスにおける記憶障害の回復をもたらした[24]。当該抗体は、認知障害を引き起こす脳内の可溶性Aβのアセンブリを中和することで働くと仮定された。中央ドメインAβ13−28に対して生じた第二の抗体M266も、記憶の欠損の回復をもたらした[10]。当該回復は、脳のAβ斑を変化させることなくわずか24時間後に生じた。この抗体はCNS及び血漿のAβのクリアランスを変化させるため[38]。この筆者等は当該抗体がAβのシンクとして働き、CNSのクリアランスを引き起こすことを示唆している[9]。
【0045】
マウスADモデルにおける能動及び受動ワクチン接種の成功は、AD患者における能動ワクチンの臨床試験へとつながる[36;37]。フェーズ2の試験は、患者の6%が髄膜脳炎を発症したことにより中止されたが[17][33]、免疫治療に由来する初期臨床データは有望なものであり、代替のAβ免疫療法の開発は継続中である[13]。能動ワクチンは、Aβのフラグメント、通常はN末端又は中央領域からのものから構成される免疫抱合体を、キャリヤータンパク質と連結させて用いて開発されている[37]。これらの抗原は、T細胞の反応を開始させる、Aβ1−42由来のエピトープを含んでおらず、これにより自己免疫反応が排除されうる。受動ワクチンも開発されており、これは、Aβに対するT細胞の反応を排除するだけでなく、高齢の患者の乏しい免疫反応を回避するという利点を提示する。既に、ADDLを標的とする治療用抗体の開発がこのアプローチの有効性を最大限利用しうることが示唆されている[23]。本発明は、比較的強力なモノクローナル抗体が、免疫原として合成ADDLを用いて生成することができること、そして、生じた抗体がAβの病理学的アセンブリに選択的であることを確証する。当該抗体は更に、AD脳から得られたADDLを免疫中和して、それらが細胞培養アッセイにおいてシナプスに接着することをブロックする。したがって、当該抗体は、tgマウスADモデルにおけるADDLの中和の行動学的研究に将来的に使用するのに有望であり、臨床的に価値のある抗体へのステップを提供するものである。
【0046】
ADDL選択的なモノクローナル抗体はまた、ADの診断に有用である。近年の研究において、ADDL選択的抗体は、ヒトCSFにおいてADDLを検出することができるアッセイを開発するためのナノテクノロジーの開発と組み合わされた(Georganopoulou, D. G. et al. (2005) Nanoparticle-based detection in cerebral spinal fluid of a soluble pathogenic biomarker for Alzheimer's disease. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102(7):2273-76; Haes, AJ. et al. (2005) Detection of a biomarker for Alzheimer's disease from synthetic and clinical samples using a nanoscale optical biosensor. J. Am. Chem. Soc. 127(7):2264-71)。新規なアッセイは、利用可能な最善のELISAよりも桁違いに高感度であり、低atmolarのADDL濃度を検出することができる。ADの対象者とコントロールの対象者との間のCSF ADDLレベルの10倍の違いを示す結果(Georganopoulou, D.G. et al. (2005) Nanoparticle-based detection in cerebral spinal fluid of a soluble pathogenic biomarker for Alzheimer's disease. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102(7):2273-76)は、ADDL選択的モノクローナル抗体と組み合わせたナノテクノロジーベースのアッセイが、ADの化学的診断を初めて提供することができることを示唆している。
【0047】
引用文献
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【0048】
実施例2
抗ADDLモノクローナル抗体
(開発及び特徴づけ)
材料と方法
Aβ由来ジスルフィドリガンド(ADDL)の調製:ADDLは、これまでに公開されているプロトコールに従い調製した(Lambert 1998, 2001; Klein 2002)。American Peptide Co. (Sunnyvale, CA)又はCalifornia Peptide Research, Inc. (Napa, CA)由来のAβ1−42は、ヘキサフルオロ−2−プロパノール(HFIP)中に溶解した。ADDLを調製するために、Aβ1−42のアリコートをニートのDMSOに溶解して5mMにし、続いて冷たいF12培地に添加して100μMにした。この溶液を4℃で24時間インキュベートし、そして14,000xgで10分間遠心した。上清はADDLを含んでいる。
【0049】
ヒト原線維の調製:凍結したヒトの皮質(NADC grant # AG 13854及びNADC Neuropathology Core)から得た試料を、プロテアーゼ阻害剤(Roche Complete(登録商標))を含む20xの冷F12培地中で1分間ホモジェナイズした。試料を続いて10,000gで1分間4℃で遠心した。F12で2回洗浄した後、ペレットを2%SDS/F12中で再懸濁し、そして氷上で30分間インキュベートした。試料を続いて220,000gで1時間4℃で遠心した。ペレットを続いて冷F12中で再懸濁し、そして15秒の破壊を繰り返して1分間超音波処理した。タンパク質は、クーマシープラスキットを用いて決定した(Pierce Biotechnology, Rockford, IL)。
【0050】
海馬の培養:培養物は、これまでに公開されている手順(Brewer, 1997; Stevens, 1996)に従い、E18胚から調製した。生存細胞の数を数え、そしてポリリジン(200μg/ml)でコーティングしたカバーグラス上に、1.5x104〜106細胞/cm2の密度でプレーティングした。培地は、半分を捨て、そして追加したNeurobasal培地と置き換えることで交換した。
【0051】
定量免疫細胞化学:培養した海馬細胞を500nMのADDLと一緒に1時間37℃でインキュベートした。ADDLはその後洗浄することで除去し、そして細胞を3.7%ホルムアルデヒドで固定した。細胞を0.1%Triton X−100/PBS−NGS(10%の普通のヤギ血清を含むPBS)で30分間インキュベートし、1回洗浄し、そして所望の一次抗体(PBS−NGSで希釈したもの)で一晩4℃でインキュベートした。試料を続いて洗浄し、そして適切な二次抗体[Alexa Fluor(登録商標) 488又は594抗マウスIgG及び抗ウサギIgG(Molecular Probes, Inc., Eugene, OR)]と一緒に2時間37℃でインキュベートした。カバーガラスを洗浄し、そしてProLong anti-fade mounting medium (Molecular Probes, Inc., Eugene, OR)に乗せ、そしてLeica TCS SP2共焦点スキャナDMRXE7顕微鏡を用いて撮像した。
【0052】
ウェスタンブロット:試料はネイティブPAGE(4〜20%トリス−HCl レディゲル、BioRad)又はSDS−PAGE(10〜20%のトリストリシンレディゲル、BioRad)により分離した。続いてタンパク質をニトロセルロースに移した。ブロットは、5%の脱脂粉乳又は1%BSA/TBST(0.1%Tween20を含むTBS)で一晩ブロッキングし、そして一次抗体と一緒に1.5時間インキュベートし、洗浄し、そしてHRPコンジュゲート二次抗体(Amersham Biosciences Corp., Piscataway, NJ)と一緒に1時間インキュベートした。最後の洗浄をした後、タンパク質をWest Femto chemiluminescence キット(Pierce Biotechnology, Rockford, IL)及びImage Station 440 CF (Kodak) 又はフィルム(Hyperfilm, Amersham Biosciences Corp., Piscataway, NJ)で可視化した。
【0053】
ELISA:ポリクローナル抗ADDL IgG(M90/1; Bethyl Laboratories, Inc., Montgomery, TX)を0.25mg/ウェルでImmulon 3 Removawell ストリップ(Dynatech Labs, VA, USA)上に2時間室温でプレーティングし、そして当該ウェルを2%BSA/TBSでブロッキングした。1%BSA/TBSで希釈した試料をウェルに添加し、2時間4℃で結合させ、そしてBSA/TBSを用いて室温で3回洗浄した。BSA/TBSで希釈したモノクローナル抗体を90分間室温でインキュベートし、そしてマウスIgGに対するVectastain ABCキットで検出した。HRP標識をBioRadのペルオキシダーゼ基質で可視化し、そしてDynex MRX-TCマイクロプレートリーダー上で405nmで読み取った。
【0054】
アイソタイピング:マウスモノクローナル抗体アイソタイピング試薬を有するSigma Immunotype(登録商標)キットを、取扱説明書に従い使用した(Sigma- Aldrich Co., St. Louis, MO)。
【0055】
結果及び考察:図7〜11及び表1(以下)を参照のこと。
【0056】
結論:ADDLは、マウスにおいて強力な免疫原性の反応を誘発する。4つの異なる結合プロファイルを有する抗体は、変性したAβオリゴマーを認識するものであり、天然のAβオリゴマーとの選択性に乏しい。これらの抗体は、更に、サイズ排除クロマトグラフィーによって分離されたADDLを認識する能力により他のものと区別することができる。これらの抗体により培養細胞の軸索及び細胞体に沿った点と結合したADDLが検出された。点はADDLであり、そしてAβモノマー又は大きなオリゴマー種には起因していない。モノクローナル抗体は、ADDL処理した培養細胞に対して異なる結合を示す。複数のアイソタイプのモノクローナル抗体が生成しうる。
【0057】
【表7】
【0058】
実施例2の引用文献:
【表8】
【0059】
実施例3
診断試薬としての抗ADDLモノクローナル抗体
抗ADDL抗体、特に、ADDLに見られ、アミロイドモノマー又は原線維には見られない高次構造のエピトープに特異的なモノクローナル抗ADDL抗体が、当業者に知られている任意の診断用アッセイ、例えば、限定しないが、タンパク質アッセイ;核酸アッセイ;病理学的アッセイ;ウェスタンブロットアッセイ;ELISAアッセイ;RIAアッセイ;ドットブロットアッセイ;疫学的アッセイ;ADDLのアセンブリを阻害する化合物を検出するためのアッセイ;ADDLが受容体に結合するのを阻害する化合物を検出するためのアッセイ;アルツハイマー病(AD)、ダウン症、及び軽度認識障害(MCI)を予防又は処置する化合物を検出するためのアッセイ;患者又は対象がアルツハイマー病、ダウン症、及び軽度認識障害を有しているか否かを検出するためのアッセイ、等(例えば、Georganopoulou, D. G. et al. (2005) Nanoparticle-based detection in cerebral spinal fluid of a soluble pathogenic biomarker for Alzheimer's disease. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102(7):2273-76; 国際特許公報WO 2005/003394; 米国特許6,872,554; 6,866,850; 6,815,175; 6,808,712; 6,787,523; 6,787,144; 6,710,226; 6,710,226; 6,703,015; 6,670,195; 6,582,945; 6,375,949; 6,194,163; 5,786,180; 5,716,619; 5,693,753; 5,693,478; 5,679,531; 5,270,165; 米国特許公開番号2005/0142131; 2005/0129695; 2005/0119227; 2005/0090648; 2005/0053614; 2005/0048049; 2005/0037026; 2005/0031629; 2005/0019343; 2005/0019330; 2005/0013815; 2004/0265308; 2004/0234990; 2004/0228865; 2004/0219146; 2004/0197831; 2004/0192898; 2004/0181042; 2004/0175394; 2004/0170641; 2004/0166119; 2004/0157779; 2004/0081657; 2004/0052766; 2003/0235897; 2003/0157117; 2003/0086938; 2003/0073655; 2002/0182660; 2002/0150948; 2002/0136718; 2002/0102261; 2002/0086847; 2002/0009445等を参照のこと)において使用することができる。
【0060】
本明細書で開示したモノクローナル抗体は、当業者に知られており、そしてADDLの存在について脳の抽出物をアッセイするために本明細書で開示した(図12を参照のこと)、方法、プロトコール、及び手順に従い使用することができる。このようなアッセイは、病態がない又は軽度(low)の患者が非常に低い検出可能なレベルのADDLを有していることを示す。また、病態が重度(high)の患者は、可変レベルの検出可能なADDLを有している。最後に、かかるアッセイは、AD患者が一貫して高レベルの検出可能なADDLを有していることを示す。
【0061】
本明細書で開示したモノクローナル抗体は、当業者に知られており、そしてADDLの存在について脳の切片(slice section)(例えば、図13A−13Dを参照のこと)をアッセイするために本明細書で開示した、方法、プロトコール、及び手順に従い使用することができる。かかるアッセイは、ADDLがADの病理に影響を受けている領域に存在していることを示す。ADDLは、2つのコントロール中に存在しておらず、そのうち1つはADの病態を有していないものであり、そして1つはCERAD0、BraakIである。ADDLは病態が「重度」のコントロールの試料−CERAD A,BraakIII及びADに存在していた。更に、これは病態が「重度」のコントロールの試料よりもADの場合に多く存在していた。このようなアッセイの結果は、可変のIHCパターンを示す:ニューロン周囲、びまん性老人斑様、老人斑様、アミロイド血管症、Nbmニューロン周囲の標識−これは典型的に老人斑を有する領域ではない。
【0062】
29のケースに由来する免疫組織化学的なアッセイ(例えば、図14、15及び16を参照のこと)によると、ADDLが見られる脳の領域は、限定しないが、海馬前部の切片:海馬、海馬支脚、前海馬支脚、嗅内皮質、海馬傍回、側頭後頭回(temporooccipital gyrus)、中前頭回が含まれる。ADDLは、ニューロン周囲、びまん性老人斑様、老人斑様の沈着について半定量的に評価することができる。このようなアッセイにより、選択したケースと、Abeta 4G8及び1280 IHCとを比較することができる(例えば、図16を参照のこと)。更に、このようなアッセイは、ADDLの標識が認知の状態と相関しているか否か、ADDLの標識がシナプスの損失の測定に比肩するか否か;ミクログリア細胞の補充/活性化がAD及び/又はMCIへの移行に比肩するか否か、等について研究することを可能にする。
【0063】
同様のアッセイを6つの認知力が評価されたケースにより実施した。当該アッセイの予備的な結果を図17及び18に示す。
【0064】
このようなIHCアッセイは、以下のように要約することができる情報を提供する:ADDL標識は、局所的な分布及び密度におけるAD病態と相関しており(例外:ニューロン周囲のnbm標識)、ADDL標識は認知状態と相関しており、そしてヒトの組織の研究はin vitroでの細胞培養及びドットイムノブロットアッセイ研究と相関している。
【0065】
本明細書で開示したモノクローナル抗体は、当業界で知られており、そして正常及びADと診断された患者又は対象に由来するCSF試料をアッセイするために本明細書で開示した方法、プロトコール、及び手順に従い使用することができる。ナノテクノロジーを用いた例示的なアッセイ(例えば、Georganopoulou, D. G. et al. (2005) Nanoparticle-based detection in cerebral spinal fluid of a soluble pathogenic biomarker for Alzheimer's disease. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102(7):2273-76; 国際特許出願公報WO 2005/003394等を参照のこと)は、図19に示すようなデータを作り出し、これは、ADを診断する臨床医の助けとなるべく使用することができる。CSFにおける上昇したADDLレベルはADの診断と相関しており、そして当該診断のマーカーとして使用することができる(以下に示す関連の特許公報、特に米国特許出願第10/676,871号及び第10/924,372号並びに国際特許出願PCT/US03/30930も参照のこと)。
【0066】
本明細書で開示したモノクローナル抗体は、当業界で知られており、そして本明細書のELISAアッセイで開示した方法、プロトコール、及び手順に従い使用することができる。このようなアッセイは、ELISAで検出した場合の26のDIVの海馬細胞培養物に対するADDLの結合が濃度依存性であることを示す。
【0067】
図20で言及する海馬細胞(26DIV;20,000細胞/ウェルでプレーティングしたもの)は96穴プレートで培養した。非細胞コントロールウェルは培地でプレーティングした。細胞は1時間37℃で、増殖細胞から回収した培地で希釈した100mlのADDLで処理した。ウェルを3x200mlの温かいNeurobasal培地及び1x200mlの1%BSA/TBS(20mMのTris−HCl、pH7.5、0.8%NaCl)でそれぞれ10分間洗浄した。モノクローナル抗体は、BSA/TBS中で1:2500に希釈し、そして100ml/ウェルで1時間室温でインキュベートし、続いて4x200mlのBSA/TBSで上述のとおり洗浄し、そして3x200mlのTBSですすいだ。Bio-Radのペルオキシダーゼ基質(100ml)を各ウェルに添加し、1時間室温で展開し、そしてDynex MRXマイクロプレートリーダー上で、405nmで読み取った。
【0068】
本明細書で開示したモノクローナル抗体は、当業界で知られており、そして本明細書の点状の結合(「ホットスポット」)免疫蛍光アッセイにおいて開示した方法、プロトコール、及び手順に従い使用することができる(例えば、図21、及び下文で言及する関連出願における類似の情報を参照のこと)。
【0069】
図21で言及する海馬細胞は3週間ポリリジンコートしたカバーガラス上で生育させた。細胞を100μMのADDL、等量のビヒクル、0.5mg(全タンパク質)の内因性ADDL(脳から抽出したADDL)、又は0.5mg(全タンパク質)の高齢の対応するコントロール脳抽出物で1時間処理した。細胞を3・7%ホルムアルデヒド/PBSで合計15分間固定し、PBSですすぎ、そして2B4抗体(1:500希釈)、続いてAlexa Fluor 488抗マウス二次抗体(Invitrogen)で免疫標識した。これらの細胞を、Nikon optihot倒立顕微鏡及びMetaMorphソフトウェア(Universal Imaging)を用いて可視化した。画像はMetaMorph及びPhotoshop (Adobe)を用いて処理した。海馬細胞に対して結合する典型的な点状ADDLは、2B4モノクローナル抗体を用いて検出される。かかるアッセイは多数の異なる解析、例えば、限定しないがADDLが受容体に結合するのを阻害する化合物の検出及び特徴づけ、等にとって有用である。
【0070】
関連の特許及び特許出願には、限定しないが、米国特許第6,218,506号;国際特許出願PCT/US98/02426;国際特許公報WO 98/33815;米国特許出願09/369,236;国際特許出願PCT/US00/21458;米国特許出願第09/745,057号;米国特許出願第11/130,566号;米国特許出願第10/166,856号;国際特許出願PCT/US03/19640;米国特許出願第10/676,871号;米国特許出願第10/924,372号;米国特許出願第11/100,212号;米国特許出願第11/142,869号;国際特許出願 PCT/US03/30930;国際特許出願 PCT/US05/17176等が含まれる。
【0071】
本明細書で言及した特許、特許出願、ならびに任意の他の科学文献および技術文献は、これらが矛盾しない範囲で引用により組み入れられる。
【0072】
本発明の好ましい実施形態の上記開示は、例示および説明を目的として示している。厳密な形態または開示の形態は網羅的でなく、本発明を制限することを意図しない。意図する特定の用途に合わせる場合に当業者が種々の実施形態および種々の修正形態で本発明を最良に実施することができるようにするために本発明の原理およびこれらの原理の実際の適用を最良に説明するために説明を選択した。意図する特定の用途に適している。本発明の範囲は、明細書によって制限されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】Aβ1−42に対するオリゴマー選択的なモノクローナル抗体を開発するために使用したスクリーニング工程の略図。本明細書で詳述した通り、マウスにADDL(〜194μg/注射/マウス)を3週間毎に6回接種した。これらのマウスの脾臓とSP2細胞との融合から生成したハイブリドーマを96ウェルプレートにプレーティングし、そして示す通り2種類のドットブロットでスクリーニングした。有望なハイブリドーマをサブクローニングし、そしてポジティブなものを続いて種々のアッセイ、例えばウェスタンブロット、AD脳由来の抽出物(内因性ADDL含有)のドットブロット、及び免疫細胞化学を用いて検証した。選択した抗体を培養液から回収し、そしてプロテインGセファロースを用いて更に精製した。
【図2】AD脳組織とコントロールの脳組織とを識別する選択された抗体。A.合成ADDL(1pmol)及びヒト脳抽出物/F12(ヒトAD脳及びコントロール脳由来;0.5μg.方法の項参照)をニトロセルロース上に二回一組でスポットした。ペルオキシダーゼ処理(3%H2O2、20分)及びブロッキングの後、垂直のレーンをそれぞれ指定のモノクローナル抗体又はウサギポリクローナル抗体(M71/2)で1時間室温でプローブした。洗浄後、ニトロセルロースは、適切なHRPをコンジュゲートした二次抗体と一緒にインキュベートし;結合した二次抗体を続いてケミルミネセンスで可視化した。注意:20C2、11B5、及びM71/2はAD脳試料と強固に結合するが、コントロールの脳試料とは結合しない。B.a−c:コントロール(a)及びアルツハイマー(b.c)の脳から調製した海馬の切片(40μm)をモノクローナル20C2と一緒に一晩4℃でインキュベートした。結合した抗体は、続いて抗HRP二次抗体及びDABを用いて可視化した。続いて試料をヘマトキシリンで対比染色した。オリゴマーはAD脳(b)において広範に見られたが、コントロール脳(a)においては見られなかった(200x)。より高倍率(c)のものは、染色が細胞体をニューロン周囲のパターンで取り囲んでいることを示している(600x)。
【図3】Aβペプチドの最小のモノマーを示す20C2。Aβ1−40、ADDL、及びSEC[7]で2つのピークに分離したADDLは、10〜20%トリス−トリシンゲルを用いたSDS−PAGEにより分離した。一方のゲルを銀染色し(A)、他方の試料をニトロセルロースにトランスファーし、続いて6E10、20C2、及びM71/2でプローブした(B)。銀染色上では、Aβ1−40は、重鎖のモノマーのバンドのみを示した。ADDL及び分離したADDLのピークは全て、種々の強度のモノマー、トリマー及びテトラマーのバンドを有している。ウェスタン解析において、6E10は、4つの試料全てでモノマーのバンドを同定し、ADDL及びピーク1は強いトリマー、テトラマー及び12〜24量体のバンドを示し、一方、ピーク2は主にモノマーと、トリマー及びテトラマーとを示した。20C2とM71/2は、反対に、ADDL及びピーク1でほとんど又は全くモノマー染色を示さなかったが、6E10と同様に強いトリマー、テトラマー、及び12〜24量体を示した。ピーク2は、20C2及びM71/2で染色すると僅かにモノマー、トリマー、及びテトラマーを示したが、12〜24量体は示さなかった。Aβ1−40は、20C2又はM71/2で認識されなかった。C及びDにおいて、モノマー化したAβ1−42ペプチドの氷上での凝集は、ドットブロットにより、20C2及びウサギポリクローナルM90/1抗体で比較しながらモニタリングした。溶液の等量のアリコート(20fmol)を指定した時間でスポットし、そして抗体でプローブした。いずれの抗体も、Aβ1−42からADDLが時間依存的に形成することを検出した。両抗体はまた、100倍超高いペプチド濃度であっても、モノマーAβ1−40ではほとんどシグナルを示さなかった。Dにおいて、ドットブロットの相対的な強度を時間の関数として示す。これらのデータは、モノクローナル20C2抗体がオリゴマー特異的であるという更なる証拠となる。
【図4】低濃度の固定化ADDLに対する20C2の結合をブロックする可溶性ADDLと、ブロックしないモノマーのAβ1−40。Aにおいて、ADDLは10pmol/0.5μlの濃度でニトロセルロースに適用した。ブロッキングした後、各レーンは、ADDL又はAβ1−40のいずれかと一緒に指定の種々の濃度でプレインキュベートした20C2と一緒に1.5時間インキュベートした。続いて抗体の結合を抗マウスHRPとのインキュベーション及びケミルミネセンスにより決定した。Kodak Image Station 440を使用してブロットの強度を定量した。次に、これらのデータを、SigmaPlotを用いてペプチド濃度の関数としてプロットした(B)。溶液のADDLは、固定化したADDLに対する20C2の結合を効果的にブロックするが(半阻害濃度〜32nM)、モノマーのAβ1−40は、非特異的なブロッキングのみを示す。
【図5】ADDLに対する20C2の結合をブロックする可溶性ペプチドAβ1−28。20C2のエピトープを研究するための調査に、Aβ1−42の全長を覆う8〜17アミノ酸の4つの短い直鎖ペプチドとのインキュベーションを用い、抗体が固定化したADDLに結合するのをブロックした。試験したペプチドのいずれも、抗体より100倍超であっても結合をブロッキングしなかった。続いて、2つのより長いペプチドを同様のアッセイにおいて試験した結果、Aβ1−28は、単独でも他のペプチドと組み合わせても、優れたブロッキング能を示した(B)。Aβ1−28のブロッキング効力はADDLと同様であり、11nMの推定の半阻害濃度を有していた(C)。Aβ1−28はまた、SDS−PAGEイムノブロットにおいて、変性したADDLに対する20C2の結合をブロックした。
【図6】培養細胞に対する内因性ADDL及び合成ADDLの結合を中和する20C2。3週齢の培養海馬細胞は、内因性ADDL(A)又は合成ADDL(B)のいずれかを含有するAD脳由来の可溶性抽出物と一緒に60分間インキュベートした。結合しなかったADDLを、温かい培養液で洗浄した後、結合したADDLを20C2及び抗マウスAlexaFluor488で同定した(方法の項を参照のこと)。免疫中和について試験するために、上述の培養海馬細胞とのインキュベーション前に、ADDLを20C2と一緒に1時間37℃でプレインキュベーションした。洗浄後、抗マウスAlexaFluor488を用いて結合抗体を同定した。20C2は、内因性ADDL(C)及び合成ADDL(D)を含有するAD脳由来の両可溶性抽出物が海馬細胞培養物に対して結合するのをブロックした。新鮮な20C2がAlexaFluor488の前に細胞に加えられたコントロールのプレートも、ADDL結合を示さなかった。
【図7】ADDLにより生成したモノクローナル抗体間の差異を浮き彫りにするスクリーニング方法。2つの異なるプロトコールを用いてマウスにADDLを接種した。標準的な5ヶ月の接種期間及び融合方法が、ノースウェスタン大学のCoreAntibody Facilityで採用されたが、Immuno-Precise, Inc. (British Columbia, Canada)は、2週間の接種期間と選りすぐりの選択方法を使用した。ハイブリドーマの上清はその後スクリーニングのために我々に送付された。我々の最初のスクリーニングは、認識分子のために最初にADDLを利用し、そして次にAD脳由来の原線維を利用する超高感度ドットブロットアッセイで行った(Lambert, M.P. et al. "Diffusible, nonfibrillar ligands derived from Abetal-42 are potent central nervous system neurotoxins" Proc. Natl. Acad. Sci. USA, vol. 95, pp. 6448-6453)。続いて、ポジティブなウェルは、ウェスタンプロトコールにおいて、変性(左上段)及びネイティブ(右上段)の両条件下でADDLを用いてスクリーニングした。最後に、AD脳由来の原線維をウェスタンプロトコールで用いて(下段)、最終的な選択を決定した。
【図8】選択した抗体間で異なる結合プロファイル。(左上段)合成ADDLを20pmol/レーンで用いたSDS−PAGEウェスタンイムノブロットをハイブリドーマの上清と一緒にインキュベートし、そして適切なHRP二次抗体及びケミルミネセンスを用いて可視化した。4つのプロファイルを図示する:1:モノマー、低分子量オリゴマー、及び高分子量オリゴマー(20C2);2:小分子量オリゴマー(3B7);高分子量の主要な認識(11B4);4:小分子及び高分子量のオリゴマー(2B4)。コントロールはポリクローナルADDL抗体M88/3である。(右側上段)1レーン当たり20pmolの合成ADDLを用いてのネイティブウェスタンイムノブロットを調製した。当該ブロットを続いて5分間煮沸し、その後同一のハイブリドーマ上清で可視化した。上清は、主要な非変性型のADDL種と重要でないものとを認識する能力によって異なる。コントロールは6E10モノクローナル抗体である。(下側)1レーン当たり20pmolの合成ADDLを用いてのネイティブウェスタンイムノブロットを煮沸しない点を除いて上述の通り調製した。上清は、主要なより低分子量の種及びより高分子量の種のスメアを認識する。3B7は非変性型の材料をほとんど認識しない。コントロールは6E10である。
【図9】サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により分子したADDLの検出における差異を示す、ADDLにより生成したモノクローナル抗体。サンドイッチELISAは、捕捉抗体としてADDLに対するポリクローナル抗体M90を用いて展開した。SECピーク1及びピーク2の画分は、セファデックス75カラム上で分画したADDLの2つの主要なピークを指す(潜在的に生体活性なオリゴマーと不活性なオリゴマーとを区別するために、「合成」ADDLをゲルろ過クロマトグラフィーにかけ、これにより2つお主要なピークが生成した;非変性ゲル電気泳動により、37℃で安定な、大きな(59kDa超)の凝集物と小さい(30kDa未満)の凝集物への分離が確認された)。これらのピークは、クローン上清についての検出物質として別々に使用した。結合はVectastainキットを用いて可視化した。データは、SigmaPlotソフトウェアを用いて定量した。2つのピークの認識の差異は全ての抗体で見られる。例えば、抗体2B4及び20C2についてのピーク1とピーク2との比率を比較する。わずかに1つの抗体が、ピーク2についてのコントロール抗体(6E10)の好みを反映している。
【図10】培養細胞に結合したときにオリゴマーであるADDL。(左側)ADDL及び原線維を含む合成溶液に対して結合する3B7モノクローナル抗体及びM94ポリクローナル抗体を示すウェスタンイムノブロット。3B7が原線維、高分子量オリゴマー、及びモノマーと結合しないことに注意すること。(右側)3B7で検出し、そしてAlexaFluor(登録商標)488抗マウスIgGで可視化した、3週齢の培養海馬細胞と結合したADDLのイメージ。3B7は、原線維又はモノマーを認識しないので、ADDLのホットスポット結合はオリゴマーである。
【図11】ADDL処理した培養細胞に対して異なる結合を示す、ADDLにより生成したモノクローナル抗体。E18から得た培養海馬細胞は、実施例2で述べた通り3週間生育した。続いて細胞を1時間ADDL(500nM)に曝露し、洗浄し、そして固定した。ADDLは、指定の抗体で同定し、そしてAlexaFluor(登録商標)488抗マウスIgGで可視化した。抗体は、細胞に対して結合したADDL上の異なるエピトープを認識するようであり、これは、工程上のホットスポット(M94、2A10)から細胞体特異的付着(4E2)、そして他の中間状態(2D6、4C2、2B4、5F10、5G12)に及ぶ。
【図12】ドットブロットイムノアッセイによるヒト脳抽出物におけるADDLの相対的定量。
【図13A】ヒト切片のADDL免疫組織化学(IHC)解析。領域分布。2ケース。
【図13B】ヒト切片のADDL免疫組織化学(IHC)解析。領域分布。2ケース。
【図13C】ヒト切片のADDL免疫組織化学(IHC)解析。領域分布。2ケース。
【図13D】ヒト切片のADDL免疫組織化学(IHC)解析。領域分布。2ケース。
【図14】抗ADDLモノクローナル抗体を用いるIHC解析の要約。
【図15】ヒト脳切片のADDL免疫組織化学(IHC)解析。
【図16】ヒト脳切片を用いてのADDL IHC解析の要約。
【図17】6つの認識的に評価したケースのADDL IHC解析の結果。
【図18】ヒト脳切片を用いての選択認識的に評価したケースについてのADDL IHC解析。
【図19】多数の正常な対象とADと診断された対象についてのバイオバーコードアッセイから放出したバーコードDNAの検出により生成したデータのスキャッタープロット解析。(例えば、Georganopoulou, D.G. et al. (2005) Nanoparticle-based detection in cerebral spinal fluid of a soluble pathogenic biomarker for Alzheimer's disease. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102(7):2273-76を参照のこと)。
【図20】ELISAで検出した26 DIV海馬細胞培養に対する、ADDL濃度依存性の結合。培養物をADDLと一緒に1時間37℃でインキュベートし、モノクローナル2B4又は20C2抗体で標識し、そしてHRP連結抗マウスIgG二次抗体を用いて検出した。個々の読み取り(白色の記号)、平均(黒色の記号;n=6)及びSEM(棒)をプロットする。
【図21】抗ADDLモノクローナル抗体2B4を用いての点状の結合(「ホットスポット」)免疫蛍光アッセイ。in vitroで調製したADDL及びヒト脳抽出物から単離した内因性ADDLを培養海馬細胞に加え、そして2B4モノクローナル抗体を用いて検出した。
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2004年7月2日に出願された米国特許出願第60/585,318号、及び2004年10月25日に出願された米国特許出願第60/621,776号の優先権を主張するものである。
【0002】
政府支援の記述
本明細書中に記載の本発明の一部を、保健社会福祉省の国立衛生研究所からの助成金(助成金番号NIHR01−AG18877、NIH R01−AG22547、およびNIH R03−AG22237)を使用して行った。したがって、政府は、本発明において一定の権利を有し得る。
【0003】
本発明は、生物学および薬物の分野に関する。具体的には、本発明は、神経変性疾患、例えば、限定しないがアルツハイマー病の予防、診断、及び処置に関する。
【背景技術】
【0004】
アルツハイマー病(AD)は、進行性の変性認知症である(Terry,R.D.,et al.(1991)Ann.Neurol.,vol.30,pp.572−580;Coyle,J.T.(1987)Alzheimer’s Disease.In:Encyclopedia of Neuroscience(Adelman G,ed),pp 29−31.Boston−Basel−Stuttgart)。しかし、その初期段階では、ADは、主に、新たな記憶形成が著しく不可能になることによって発症する(Selkoe,D.J.(2002)Science,vol.298,pp.789−791)。この具体的なの影響についての根拠は知られていないが、現在、アミロイドβ(Aβ)由来の神経毒の関与が支持されている。Aβは、両親媒性ペプチドであり、この豊富さは遺伝子の変異およびADに関連する危険因子により増大する。Aβから形成する線維は、AD脳の特徴である、アミロイド斑のコアを構成する。in vitroで生成する類似のフィブリルは培養脳ニューロンにとって致命的である。これらの知見は、著しく創造性に富んだ理論である、最初のアミロイドカスケード仮説についての中心となる論理的根拠をもたらし、この中では、記憶喪失が原線維Aβにより引き起こされたニューロンの死滅の結果であると提唱されている。
【0005】
その強力な実験による裏付けおよび直感的な魅力にも関わらず、最初のアミロイドカスケード仮説は、鍵となる所見との矛盾、例えば、認知症とアミロイド斑負荷との間の相関が低いこと、が証明された(Katzman, R. (1988) "Clinical, pathological, and neurochemical changes in dementia: a subgroup with preserved mental status and numerous neocortical plaques" Ann. Neurol., vol. 23, no. 2, pp. 138-144)。特に、最近の研究で、トランスジェニックhAPPマウスを使用して実施したADワクチン実験が報告されている(Dodart,J.C.et al.(2002) "Immunization reverses memory deficits without reducing brain Abeta burden in Alzheimer's disease model." Nat. Neurosci., vol. 5, pp. 452-457; Kotilinek, L.A. et al. (2002) "Reversible memory loss in a mouse transgenic model of Alzheimer's disease" J. Neurosci., vol. 22, pp. 6331-6335)。これらのマウスにより、発症年齢依存性アミロイド斑、最も重要には、発症年齢依存性記憶機能障害を発症する初期ADの良好なモデルが得られる。マウスをAβに対するモノクローナル抗体で処置した場合に、以下の2つの驚くべき所見が得られた。(1)ワクチン接種したマウスは記憶喪失の逆転が認められ、24時間で明らかに回復したこと、(2)プラークレベルは変化しないにもかかわらず、ワクチン接種の認知に対する利点が生じた。このような所見は、アミロイド原線維に起因するニューロン死に依存的な記憶喪失機構と一致しない。
【0006】
最初の仮説の主な欠点は、Aβのセルフアセンブリによって形成された非原線維性の(non−fibrillar)神経学的に活性な分子が果たす役割を組み込んだ最新のアミロイドカスケードによって排除されつつある。これらの分子は可溶性Aβオリゴマーである。オリゴマーは準安定性であり、低濃度のAβ1−42により形成する(Lambert, M.P. et al. "Diffusible, nonfibrillar ligands derived from Abetal-42 are potent central nervous system neurotoxins" Proc. Natl. Acad. Sci. USA, vol. 95, pp. 6448-6453)。本質的に、最初のカスケードのミッシングリンクであるAβオリゴマーは、記憶およびシナプス可塑性についての古典的な実験パラダイムである長期電位(LTP)を阻害する。最新のカスケードにおいて、(1)記憶喪失は、ニューロン死前のシナプス不全に起因し、そして(2)シナプス不全は原線維ではなくAβオリゴマーにより引き起こされる、ということである(Hardy, J. & Selkoe, DJ. (2002) "The amyloid hypothesis of Alzheimer's disease: progress and problems on the road to therapeutics" Science, vol. 297, pp. 353-356)。最近のレポートによると、可溶性オリゴマーは脳組織内で生じ、そしてAD(Kayed, R. et al. (2003) "Common structure of soluble amyloid oligomers implies common mechanism of pathogenesis" Science, vol. 300, pp. 486-489; Gong, Y. et al. (2003) "Alzheimer's disease-affected brain: presence of oligomeric A[beta] ligands (ADDLs) suggests a molecular basis for reversible memory loss" Proc. Natl. Acad. Sci. USA, vol. 100, pp. 10417-10422)およびhAPPトランスジェニックマウスADモデル(Kotilinek, L.A. et al. (2002) "Reversible memory loss in a mouse transgenic model of Alzheimer's disease" J. Neurosci., vol. 22, pp. 6331- 6335; Chang, L. et al. (2003) "Femtomole immunodetection of synthetic and endogenous amyloid-[beta] oligomers and its application to Alzheimer's Disease drug candidate screening" J. MoI. Neurosci., vol. 20, pp. 305-313)で著しく上昇することが証明されている。
【0007】
アルツハイマー病のアミロイドベータ免疫療法は、ADのマウスモデル及び髄膜脳炎に罹患しにくいヒトの患者において初期成功を収めている。本明細書では、可溶性Aβオリゴマー(ADDL)に対するモノクローナル抗体を開示する、当該抗体は、ADのヒト脳抽出物とコントロールのヒト脳抽出物とを区別する。当該抗体は、AD脳スライス内の内因性オリゴマーを同定し、そして更に培養海馬細胞と結合する。当該抗体は、溶液の内因性ADDLと「合成」ADDLを中和する。いわゆる「合成」ADDLは、精製アミロイドβ1−42を、ADDLを生成する条件下で混合することによりin vitroで生成される(米国特許第6,218,506号を参照のこと)。当該抗体の1つである20C2は、3〜24量体についての高い選択性を示すが、モノマーであるAβペプチドは最小限しか検出しない。20C2によるADDLの認識は、Aβ1−42の線形配列を包含する短いペプチドによって、又はAβ1−40によっては阻止されない。しかしながら、結合はAβ1−28により阻止されたことから、高次構造的に独特な構造に基づいたエピトープもAβ1−28により到達したことが示唆される。
【0008】
ADは、現在治療法がない致死性の進行性認知症である。当該疾患の分子基盤は確立されておらず、多数の証拠が、42アミノ酸のペプチドアミロイドベータ(Aβ)に由来する神経毒が関与するタンパク質異常症(proteinopathy)であることを示している。疾患の進行を説明するための主要な「アミロイドカスケード仮説」の最近の改訂によると、小さな可溶性Aβオリゴマーは、プラークのコアを構成するより大きなAβフィブリルと同様に病原性であることが主張されている(Hardy, J. & Selkoe, DJ. (2002) "The amyloid hypothesis of Alzheimer's disease: progress and problems on the road to therapeutics" Science, vol. 297, pp. 353-356)。
【0009】
近年の研究によると、小さな可溶性Aβオリゴマー(Aβ由来拡散性リガンド又はADDLとも称される)がAD脳に存在しており、コントロールの被験者よりも最大70倍増大することが証明されている(Gong, Y. et al. (2003) "Alzheimer's disease-affected brain: Presence of oligomeric A[beta] ligands (ADDLs) suggests a molecular basis for reversible memory loss" Proc. Natl. Acad. Sci. USA, vol. 100, pp. 10417-10422)。AD脳にADDLが非常に大量に存在することは、それらが治療薬又はワクチンにとって可能性があることを示唆している。ワクチンの初期の臨床試験により、当該ワクチンに対し力強い免疫反応を起こす人が認知に関する利益を示したことが明らかとなった(Hock, C. et al. (2003) "Antibodies against beta-amyloid slow cognitive decline in Alzheimer's disease" Neuron, vol. 38, pp. 547-554)。これらの所見は、当該試験の一部の初期の終結が引き起こしたCNS炎症が許容できない頻度であったにも関わらず、、真の治療的確約を示している(Birmingham, K. & Frantz, S. (2002) "Set back to Alzheimer vaccine studies" Nat. Med., vol. 8, pp. 199-200)。
【0010】
生ワクチンの代わりとして、モノマー又は原線維と結合することなくADDLを標的とする治療抗体が開発されている(Klein, W.L. (2002) "A/3 toxicity in Alzheimer's disease: globular oligomers (ADDLs) as new vaccine and drug targets" Neurochem. Int., vol. 41, pp. 345-352)。以前の研究では、ADDLが優れた抗原であり、〜50μg/mlという非常に低濃度でウサギ中にオリゴマー選択的ポリクローナル抗体を産生させることが証明されている(Lambert, M.P. et al. (2001) "Vaccination with soluble Abeta oligomers generates toxicity-neutralizing antibodies" J. Neurochem., vol. 79, pp. 595-605)。tgマウスモデル由来の結果も、抗体が記憶力低下を回復に向かわせるのに成功し得ることを示唆している(Dodart, J.C. et al. (2002) "Immunization reverses memory deficits without reducing brain Abeta burden in Alzheimer's disease" Nat. Neurosci., vol. 5, pp. 452-457)。
【0011】
ADのtgマウスを原線維アミロイドベータタンパク質(Aβ)で免疫化すると、脳のAβ沈着が低下し、そしてその形成前に投与した場合にはこの病態の形成が予防される(Schenk, D. (2002) Amyloid-beta immunotherapy for Alzheimer's disease: the end of the beginning. Nat. Rev. Neurosci. 3(10):824-8; Schenk, D. et al. (1999) Immunization with amyloid-beta attenuates Alzheimer-disease-like pathology in the PDAPP mouse. Nature 400(6740): 173-7)。これらのマウスで生み出される学習及び記憶の欠損は、原線維Aβを含む調製物による同様の能動的なワクチン接種によっても低下し、又は予防される(Janus, C. et al. (2000) A beta peptide immunization reduces behavioural impairment and plaques in a model of Alzheimer's disease. Nature 408(6815):979-82; Morgan, D. et al. (2000) A beta peptide vaccination prevents memory loss in an animal model of Alzheimer's disease. Nature 408(6815):982-5)。動物モデル由来の結果に基づき、臨床試験が開始され、そしてフェーズ1において多少の有害な反応が示された。しかしながら、フェーズ2の試験は、患者の6%が髄膜脳炎を発症した時点で中止された(Birmingham, K. & Frantz, S. (2002) Set back to Alzheimer vaccine studies. Nat. Med. 8(3): 199-200; Hock, C. et al. (2003) Antibodies against beta-amyloid slow cognitive decline in Alzheimer's disease. Neuron 38(4):547-54; Orgogozo, J.M. et al. (2003) Subacute meningoencephalitis in a subset of patients with AD after Abeta42 immunization. Neurology 61(l):46-54; Schenk, D. (2002) Amyloid-beta immunotherapy for Alzheimer's disease: the end of the beginning. Nat. Rev. Neurosci. 3(10):824-8; Schenk, D. et al. (2004) Current progress in beta-amyloid immunotherapy. Curr. Opin. Immunol. 16(5):599-606)。これらの臨床試験の臨床転帰のレポートによると、プラークを標的とする抗体を産生する患者は、1年後、抗体を産生しなかった患者よりも認知低下の速度が遅かったことが明らかとなった(Hock, C. et al. (2003) Antibodies against beta-amyloid slow cognitive decline in Alzheimer's disease. Neuron 38(4):547- 54)。二人の患者の検視結果上、有効な免疫反応を示唆するミクログリアとともに、新皮質内には全く又はほとんどプラークが見られなかった(Ferrer, I. et al. (2004) Neuropathology and pathogenesis of encephalitis following amyloid-beta immunization in Alzheimer's disease. Brain Pathol 14(1): 11-20; Nicoll, J.A. et al. (2003) Neuropathology of human Alzheimer disease after immunization with amyloid-beta peptide: a case report. Nat. Med. 9(4):448-52)。
【0012】
治療抗体の使用による炎症反応を回避するための代替的なアプローチが現在開発されている(Agadjanyan, M.G. et al. (2005) Prototype Alzheimer's disease vaccine using the immunodominant B cell epitope from beta-amyloid and promiscuous T cell epitope pan HLA DR-binding peptide. J. Immunol. 174(3): 1580-6; Gelinas, D.S. et al. (2004) Immunotherapy for Alzheimer's disease. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101(Suppl 2):14657-62; Morgan, D. & Gitter, B.D. (2004) Evidence supporting a role for anti-Abeta antibodies in the treatment of Alzheimer's disease. Neurobiol. Aging 25(5):605-8; Schenk, D. et al. (2004) Current progress in beta- amyloid immunotherapy. Curr. Opin. Immunol. 16(5):599-606)。Aβにより生成したモノクローナル抗体による注射は、ADのtgマウスモデルの認知の改善をもたらすことが確証されている。エピトープがAβペプチドの中心を標的とする抗体を用いると、記憶障害が処置後24時間以内にPDAPPマウスで逆転しうることが証明されている(Dodart, J.C. et al. (2002) Immunization reverses memory deficits without reducing brain A beta burden in Alzheimer's disease model. Nature Neuroscience 5(5):452-7)。同様に、Tg2576マウスにおいても、AβのN末端を標的とする抗体を用いた結果、記憶喪失が逆転した(Kotilinek, L.A. et al. (2002) Reversible memory loss in a mouse transgenic model of Alzheimer's disease. J. Neurosci. 22(15):6331-5)。
【0013】
前もっての受動ワクチン接種は、PDAPP及び他のtgマウスモデルからプラークを取り除くことが証明された(Bacskai, BJ. et al. (2002) Non-Fc-mediated mechanisms are involved in clearance of amyloid-beta in vivo by immunotherapy. J. Neurosci. 22(18):7873-8; Bard, F. et al. (2003) Epitope and isotype specificities of antibodies to beta -amyloid peptide for protection against Alzheimer's disease-like neuropathology. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100(4):2023-8; Bard, F. et al. (2000) Peripherally administered antibodies against amyloid beta-peptide enter the central nervous system and reduce pathology in a mouse model of Alzheimer disease. Nat. Med. 6(8):916-9; McLaurin, J. et al. (2002) Therapeutically effective antibodies against amyloid-beta peptide target amyloid-beta residues 4-10 and inhibit cytotoxicity and fibrillogenesis. Nature Medicine 8(11): 1263-9)。しかしながら、記憶障害からの回復を示す研究においては、Aβプラーク断面積比(plaque burden)は低下しなかった。プラーク断面積比の変化無しに認知が改善したことの考えられる説明としては、これらの治療抗体が、ADシナプス不全に関与しているAβの小さな可溶性オリゴマーを免疫中和するということである(Lacor, P.N. et al. (2004) Synaptic targeting by Alzheimer's-related amyloid beta oligomers. J. Neurosci. 24(45): 10191 -200)。Aβオリゴマーは、低濃度のAβ1−42で形成し、LTPをブロックし、そして特異的にシナプス終末に結合する(Lacor, P.N. et al. (2004) Synaptic targeting by Alzheimer's-related amyloid beta oligomers. J. Neurosci. 24(45):10191-200; Lambert, M.P. et al. (1998) Diffusible, nonfibrillar ligands derived from Abetal-42 are potent central nervous system neurotoxins. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95(11):6448-53; Wang, H.W. et al. (2002) Soluble oligomers of beta amyloid (1-42) inhibit long-term potentiation, but not long- term depression, in rat dentate gyrus. Brain Res. 924(2): 133-40; Wang, Q. et al. (2004) Block of long-term potentiation by naturally secreted and synthetic amyloid beta-peptide in hippocampal slices is mediated via activation of the kinases c-Jun N-terminal kinase, cyclin-dependent kinase 5, and p38 mitogen-activated protein kinase as well as metabotropic glutamate receptor type 5. J. Neurosci. 24(13):3370-8)。これらのオリゴマー(ADDLと称する)は、AD脳及びCSF並びにtgマウスモデルにおいて増大する(Chang, L. et al. (2003) Femtomole immunodetection of synthetic and endogenous amyloid-beta oligomers and its application to Alzheimer's disease drug candidate screening. J. MoI. Neurosci. 20(3):305-13; Georganopoulou, D.G. et al. (2005) Nanoparticle-based detection in cerebral spinal fluid of a soluble pathogenic biomarker for Alzheimer's disease. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102(7):2273-76; Gong, Y. et al. Alzheimer's disease-affected brain: presence of oligomeric A beta ligands (ADDLs) suggests a molecular basis for reversible memory loss. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 2003 100(18): 10417-22)。
【0014】
これらのことを考慮すると、オリゴマーは、治療用抗体にとって最適な標的を提供するものである。本発明は、オリゴマー(ADDL)選択性のモノクローナル抗体を得るための必要性について対処するものである。本明細書で開示するアプローチは、抗原として可溶性Aβオリゴマー(ADDL)を使用するが、これは、それらがポリクローナル抗体の生成において、四次構造依存性のエピトープを提供するのに有用であることが既に証明されたためである。このストラテジーは、ADとコントロールの脳とを識別し、且つ溶液中のオリゴマーを中和するモノクローナル抗体を生成し、治療上有用な抗体にとって必須であると考えられる特徴を有している。
【0015】
本発明の要約
ある態様において、本発明は、アミロイドβ1−42の可溶性オリゴマーと結合する抗体を含んで成る。当該オリゴマーはADDLであってもよい。当該抗体はモノクローナルであってもよい。当該抗体は選択的にオリゴマー(ADDL)と結合することができ、アミロイドβモノマー又はアミロイド原線維とは結合することができない。上述のとおり、Aβオリゴマー(ADDL)特異的なエピトープを標的とするモノクローナル抗体の開発及び特徴を本明細書で開示する。かかる抗体は、プラーク結合による干渉を受けることなくAβオリゴマー(ADDL)を中和することができるヒトワクチンとしての役割を果たすことができる。かかる抗体はまた、そのようなワクチンのプロトタイプとしての役割を果たすことができる。当該ワクチンはヒト化抗体を含むことがある。
【0016】
別の態様において、本発明は、アミロイドβモノマー又は原線維と結合しないモノクローナル抗体を用いて、アミロイドβ1−42の可溶性オリゴマーをアッセイする方法を含んで成る。当該アッセイは、定量的又は定性的であり得る。当該発生は、in vitro, in vivo, 又はin vitro且つin vivoであってもよい。当該アッセイは、患者又は対象から単離した試料で実施してもよい。当該アッセイは、オリゴマーに干渉する化合物を検出することができる。当該化合物は、オリゴマーのアセンブリ、オリゴマーの活性、オリゴマーとそれらの受容体との結合、又はそれらの任意な組み合わせに干渉することがある。当該抗体を使用して、オリゴマーの1又は複数の細胞性の受容体を同定することができる。
【0017】
別の態様において、本発明は、前記オリゴマーと選択的に結合するモノクローナル抗体を含んで成る組成物を含んで成る。当該組成物は、当業者に周知の方法に従い調製され、特徴付けられ、そして使用される医薬組成物であってもよい。当該組成物は、予防的、治療的、あるいは治療的且つ予防的であってもよい。当該組成物は、神経変性疾患を余郷し、又は神経変性疾患を処置するために投与することができる。当該疾患は、アルツハイマー病(AD)、軽度認識障害(MCI)、ダウン症等でありうる。
【0018】
詳細な説明
抗体の生成、調製、特徴づけ、及び使用についての一般的な技術は当業者にとって周知である(例えば、Harlow, E. & Lane, D. (1988) Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor: N.Y.; Harlow, E. & Lane, D. (1999) Using Antibodies: A Laboratory Manual, Cold, Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor: N. Y.; Sambrook, J. et al. (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor: N. Y.;等を参照のこと)。
【実施例】
【0019】
抗ADDL抗体
(開発及び特徴づけ)
材料と方法
モノクローナル抗体の開発。免疫化及び融合は、ノースウェスト大学のCore Antibody Facility及びカナダ国ブリティッシュコロンビア州ビクトリアのImmuno-Precise Antibodies, Ltd.にて行った。増殖、スクリーニング、及びサブクローニング(必要に応じて)は、ノースウェスト大学のWilliam Klein博士の研究所にて行った。
【0020】
ノースウェスタン大学では、既述の通りAβ1−42から調製したF12培地中のADDL[22;27]を、完全フロイントアジュバント(初回及び二回目のワクチン接種)又は不完全フロイントアジュバント(その後の全てのワクチン接種)と1:1で混合し、そして3匹のマウスに合計量〜1ml/マウスで皮下注射(最初の2回の注射)又は腹腔注射した。各注射は、194±25μgの全タンパク質に相当するADDLから構成した。ほぼ3週毎にマウスに注射した。6回注射した後、1匹のマウスが死に、そしてその脾臓を後のプロジェクトのために凍結した。最高の力価の血清を有するマウス由来の脾臓を続いてSP2.0ミエローマ細胞と融合し、そしてこれを6枚の96穴プレート内にプレーティングした。これらのプレート由来の上清を後述のようにスクリーニングした。最後のマウスは、2ヶ月後に7回目の注射を行い、そして前述の通り融合した。ハイブリドーマ細胞を20枚の96穴プレートにプレーティングし、そして37℃、5%CO2で生育した。増殖培地はDMEM/F12であり、これにHAT(1x, Sigma)、グルタミン(2mM)、ハイブリドーマエンハンシングサプリメント(10%、Sigma)、OPI(オキサロ酢酸、プリン、インスリン、0.1%、Sigma)、PMA(ホルボールモノアミンアセテート、0.6μg/L、Sigma)、ウシ胎児血清(0.15%)、及び胎児クローンII血清(15%、HyClone)を加えた。これらのプレートをKleinのラボに移し、ここで、上清を以下のようにスクリーニングした。選択したハイブリドーマを広げ、そして後のサブクローニングのために凍結した。2つのハイブリドーマを凍結することなくサブクローニングした。
【0021】
スクリーニング工程は、最終的に5つのアッセイを利用した:合成ADDLを用いた[27]に記載のドットイムノブロット及びウェスタンイムノブロット、並びに後述のネイティブイムノブロット、並びに後述の、ヒト組織から得た内因性原線維を用いたドットイムノブロット及びウェスタンブロット。これらのアッセイにより、ADDLに対する抗体の結合(ドットイムノブロット)及び特定のオリゴマー種に対する親和性(ウェスタンブロット)が試験された。上清は、5ピコモルのADDLを用いたドットイムノブロットにより最初に試験した(最初の融合における576の上清及び第二の融合における1920の上清)。試験でポジティブだったこれらのクローンを更に、1レーン当たり10〜20ピコモルでのウェスタンブロットによりスクリーニングした。当該スクリーニングを繰り返し、低ポジティブ又は偽陽性のものを同定した。10個のウェルを最初のマウスのために広げ、そして45個のウェルを第二のマウスのために広げ、続いてこれらを凍結又はサブクローニングした。
【0022】
Immuno-Precise Antibodies, Ltd. (カナダ国ブリティッシュコロンビア州ビクトリア)において、彼等が所有するRapid-Prime法を用いてクローンを生成した。〜0.25−0.35mLのADDLを用いて2週間にわたり平均0.505mg/mlで動物を免疫化した。続いて、クローンの上清(288/プロジェクト)を、上述のようなスクリーニングのためにKleinのラボに送った。
【0023】
合成及び内因性のADDL及び原線維:合成ADDLは[22;27]に記載のようにF12中で調製した。合成の原線維は[40]に従い調製した。内因性のADDLは、[15]に記載のように濃縮段階を省略してAD脳組織から抽出した。内因性の原線維は、同一の調製方法を用いて獲得し、但し、ペレットはその後1時間2%SDS/F12を用いて1時間インキュベートし、そして220,000xgで1時間遠心した。原線維を含むペレットを、続いてF12中で懸濁し、そして30〜60秒間超音波処理して材料をタンパク質濃度の決定のために懸濁した。
【0024】
ドットイムノブロット及びペプチド競合:ドットブロットによる最初のスクリーニングは、[27]に従い、ADDL(5ピコモル/ドット)又は原線維(1μg/ドット)のいずれかを利用して実施した。競合ドットブロットの場合、ADDLは、0.5μLの容積中種々のピコモル濃度で、2つ1組で、SurfBlot装置由来の鋳型を用い、乾燥したニトロセルロースに適用した。続いてブロットを15分間乾燥し、1時間ブロッキングし、そしてSurfBlot装置内に挿入した。抗体±ペプチドをウェル中で1.5時間インキュベートし、ドットブロット装置から取り出し、ウェルをブロッキングバッファーで洗浄し、そして膜を当該装置から取り出した。ニトロセルロースを続いて洗浄し、二次抗体で処理し、そして下文で引用する通り可視化した。
【0025】
イムノブロッティング.ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)を[27]に従い実施し、但し、10〜20%トリス−トリシンゲル(BioRad)を用い、そして分離は120Vで実施した。二次抗体はルーチンに1:40,000希釈で使用した。
【0026】
最初のスクリーニングのために、調製用の10〜20%ゲルは、1レーン当たり〜16−20ピコモルに等しいサンプルウェル中2.7μgのADDLと一緒に使用した。電気泳動及びトランスファーは上述の通りである。ガイドとしてトラッキング色素を用い、ブロッキングしたニトロセルロースをSurfblot装置内に据え、そして200μlのハイブリドーマ上清とブロッキングバッファー(5%脱脂粉乳/TBST−トリス緩衝溶液とTween20−[27]を参照のこと)を20〜21個のウェルのそれぞれに添加した。室温で1.5時間インキュベートした後、上清を除去し、そしてウェルをバッファーで洗浄した。膜を続いてSurfblotから取り出し、そして3x15分間TBST中で洗浄した。二次抗体を続いて膜と一緒に1時間室温でインキュベートした。洗浄後(3x15分間)、オリゴマーを半分の強度のSuperSignal(Pierce)で可視化した。ヒトの原線維を用いてのウェスタンイムノブロットを、同じ方法により、各ゲルにつき約64μgの調製した材料を用いて実施した。
【0027】
ネイティブポリアクリルアミドゲル電気泳動は、[7]に従い、120Vで実施した。
【0028】
免疫細胞化学:免疫細胞化学は[27]に記載の通り実施し、但し、培養は21 DIVで行い、そしてAlexaFluor 488 (Molecular Probes)を使用してマウスIgGを可視化した。ブロッキング実験において、抗体とADDLを、1:4のモル比で用いて、海馬細胞培養物に適用する前に1時間室温で予めインキュベートした。
【0029】
サイズ排除クロマトグラフィー:サイズ排除クロマトグラフィーを[7]の通りに実施した。ストレプトアビジン−ダイナビーズ(50μl、Dynal)を1%BSA/PBS中で30分間4℃でブロッキングした。ビーズをビオチン化した20C2(250μlのPBS中25μg)と一緒に70分間4℃でインキュベートし、そして3x10分間1mlのPBSで洗浄した。続いて、ビーズは、抗体と一緒に又は抗体無しで、ADDL(40μl、25μM)と一緒に70分間4℃でインキュベートし、そして15,000gで10分間遠心した。上清のアリコート(30μl)をSECによりPBS(0.06ml/分)で平衡化Superdex 75 PC 3.2/30カラム上で解析し、そして画分(0.3ml)を回収した。吸光度を215nmでモニタリングした。
【0030】
免疫組織化学:AD及びコントロールの海馬由来の、軽く固定して凍結した切片(4%パラホルムアルデヒド中4℃で30時間、続いてスクロース中で凍結保護。40μm)を、抗体(PBS中1:1000)と一緒に一晩4℃でインキュベートした。抗体の除去後、切片を3回PBSで洗浄し、そして次に1:500の適当な二次抗体と一緒に一晩4℃でインキュベートした。切片を3回PBSですすぎ、そして2時間4度でVector ABCペルオキシダーゼスタンダードキットと一緒にインキュベートした。続いて結合をDAB(トリスバッファー中0.05%又は1:500で2分間)で可視化した。切片をヘマトキシリンで対比染色し、これにpermaslipを乗せ、そしてNikon Eclipse E600光学顕微鏡とSpot Insight デジタルビデオカメラ(v. 3.2)で撮像した。
【0031】
結果:
オリゴマー特異的モノクローナルスクリーニングストラテジー
モノマー及び/又は原線維の代わりにオリゴマーを認識するクローンを同定するために、最初に、5ピコモルの合成ADDL又は1μgの内因性AD原線維を用いたドットイムノブロットにより上清をスクリーニングした(図1)。このスクリーニングに由来するポジティブなもの(〜30%)を続いてウェスタンイムノブロットにより試験して更に結合種を規定した。ウェスタンブロットにより試験したクローンのうち、〜2%が、低ADDL濃度でオリゴマーと結合し、モノマーには結合しないことが明らかとなった。これらのクローンの多くも、原線維と結合し、そして1つ(20C2)が徹底的な特徴づけのために選択された。あるクローン(1H9)は、トリマー/テトラマー種と比較してより高次のオリゴマー(12〜24量体)とよく結合することが明らかとなった。天然の条件下でのみADDLと結合する1つのクローン(3A5)が見つかった。原線維と結合し、オリゴマー(3A7、3A9)とは結合しない2つのクローンが見つかった。およそ50個のクローンが、更なる展開、精製、及び試験のために選択された。
【0032】
AD脳とコントロールの脳とを特異的に識別するモノクローナル抗体
抗体が、ヒトAD脳(内因性ADDLを含む)の可溶性抽出物とコントロール脳の抽出物とを識別することができるかどうかを決定することが必須の試験であった。合成(ADDL(1ピコモル)及び3つのヒト脳抽出物(0.5μg、Braakw及びCERADで病期分類したもの)をドットイムノブロットでアッセイした。代表的な結果を図2Aに示す。6E10(Aβ3−8内にエピトープを有する市販の抗体)、2B4、及び2A10は、AD脳抽出物に対し弱い結合を示したが、尚もAD脳とコントロール脳とを識別した。しかしながら、2つのモノクローナル抗体20C2及び11B5は、ポリクローナル抗体M71/2と共に、高度な特異性でAD脳とコントロール脳とを識別した。
【0033】
AD脳における20C2の免疫反応性
次に20C2がヒト脳の切片内の抗原を検出する能力について試験した。固定したAD脳及びコントロール脳を抗体に曝露し、そして次にヘマトキシリンで対比染色した。免疫反応性はAD脳の海馬、嗅内皮質、及び中前頭回で顕著であった(図2B、中央)。標識部分は変化に富み、プラーク様の領域と血管因子から成る。コントロール脳は20C2による染色を示さなかった(図20B、左)。更に、興味深い拡散性の標識パターンが、既にポリクローナル抗体で見られているように[25]、個々のニューロン及び細胞集団の周囲で見られた(ニューロン周囲の標識、図2B、右側)。ニューロン周囲の標識は、培養物に見られる樹状部位に対してのオリゴマーの結合に類似している。
【0034】
20C2の特異性:ウェスタンイムノブロット及びドットイムノブロット
20C−2がAβ1−40と結合する能力を続いて試験し、ADDLと、ADDL画分をSuperdex 75カラムを用いたSECにより分離した。これまでに報告されているように、SECは2つの主要な画分をもたらし、ピーク1は空隙容量の直後に溶出するものであり、そしてピーク2は13kDaのマーカー付近で溶出するものである[7;25]。比較のために、6E10とM71/2も試験した。SDS−PAGEに続いて銀染色(図3A)又はイムノブロッティング(図3B)を行った。6E10のみが、モノマーとして独占的に移動するAβ1−40を認識した。6E10はまた、3つ全ての画分においてモノマーのAβ1−42の顕著な染色をもたらした。低分子量のピーク2は主にモノマーであった。20C2とM71/2は、6E10と対照的に、ピーク2においてわずかにうっすらとしたモノマーの染色を示し、そしてピーク1又は分画していないADDLにおいては全くモノマーの染色を示さなかった。3つ全ての抗体が、ADDL調製物及びピーク1のトリマー、テトラマー、及び12〜24量体と反応を示した。このように、ウェスタンブロットは、20C2がモノマーよりもオリゴマーに対し非常に優先的に結合することを示唆している。
【0035】
オリゴマーについての選択性の評価
特異性の3つの追加試験を実施した。最初に、10nMのモノマーのAβ1−42からのオリゴマーの時間依存的な形成(図3C及びD)をドットイムノブロットで測定した。当初、モノマーが優勢である場合、染色は軽微であった。次の10分間、オリゴマー化は比較的迅速であり、そして免疫反応性は400%増大した。Aβ1−40モノマーはほとんど検出されなかった(図3C)。ウェスタンブロットと調和して、ニトロセルロースと結合した変性していない分子のこれらのアッセイは、20C2がオリゴマー選択的であることを示唆している。
【0036】
続いて、免疫沈降を使用して、20C2が選択的に溶液中でモノマーよりもADDLを選択的に認識するか否かを決定した。磁気Dynabeadを20C2と一緒に、又は20C2無しでADDLとインキュベートし、ビーズと、結合した材料を除去し、そして上清はSuperdex 75カラムを用いて分画した(示さず)。ピーク1で見られたより高分子量の種を、ピーク2と比較して選択的に除去した(73%対33%)。ピーク2は低分子量のオリゴマーを含んで成るが、主にモノマーを含んで成る。結果は、モノマーと比較した場合のオリゴマーについての20C2の溶液選択性と一致している。
【0037】
第三に、溶液中でのADDL又はAβ1−40についての20C2の親和性は、競合アッセイを用いて比較した。20C2をADDLの量を増やしつつ予めインキュベートし、続いてニトロセルロース上に固定したADDLと結合する能力について試験した(図4A)。溶液中のADDLは、固定化したADDLに対する結合を、30nMの半阻害濃度(half maximal)で効果的にブロックした(図4B)。モノマーのAβ1−40は、結合をブロッキングするのに有効ではなく、非特異的な会合を示唆する線形の低下を示した。非特異的な会合は、先に見られた低レベルの反応性と一致する(図3C)。
【0038】
20C2エピトープの高次構造の性質
20C2のエピトープを研究するために、Aβ1−42の全長を包含する4つの短いペプチド(1−12,12−28,25−35,35−42)を用いて、競合ドットイムノブロットを最初に実施した。いずれのペプチドもADDLに対する20C2の結合に対しなんら効果を有さなかったが(図5A)、ADDLコントロールは完全に結合をブロックした。続いて、より長いペプチドであるAβ1−28及びAβ17−42をアッセイした。ADDLに対する20C2の結合は、Aβ1−28によって完全に阻害された(図5B)。半阻害濃度は10nMであり(図5C)、ADDLによる場合よりも若干低かった。ADDLはモノマーを含む混合溶液中にあるので、この差異は驚くべきものではない。Aβ17−42はインパクトもなく、任意の組み合わせのペプチドもそうであった。20C2とAβ1−28とのプレインキュベーションもウェスタンブロットにおいて結合をブロックする(図5D)。Aβ1−28の高次構造エピトープは三次又は四次構造から導くことができる。Aβ1−28がダイマーを形成することは既に示唆されており[28]
そしてSDS−PAGEで解析した場合(図5D)、我々の調製物は単一のバンドで移動し、これはこのような示唆と一致している。しかしながら、このダイマーはウェスタンブロットにおいて20C2により認識されなかった。
【0039】
細胞に対するADDLの結合の免疫中和
ADDLは、in vitroで形成したか、AD脳から得られたかに関係なく、海馬の培養物中のシナプスに結合する[25]。最後の実験において、20C2はこのシナプスの結合を阻害する能力について試験された。ADDLは、20C2と一緒に、又は20C2を用いずに、培養物と60分間インキュベートされ、そしてADDLの結合は免疫蛍光顕微鏡で検出した(図6)。20C2無しで、ADDLは、これまでに観察されているように[25;27]、点状のシナプスパターンと結合した。担体と非二次抗体コントロールは、染色を示さなかった。AD脳由来(5C)ADDL及び合成(5D)ADDLの結合は共に20C2とのプレインキュベーションによりブロックされた。これらの条件下での20C2による結合の阻害は90%超であった(5E)。
【0040】
考察
ADDLを使用して、病理学的なAβのアセンブリを標的とするモノクローナル抗体を生成した。注目の3つの方の抗体が生成した;オリゴマー及び原線維と結合することができるもの;原線維とは結合することができるが、オリゴマーとは結合することができないもの;及び、オリゴマーとは結合することができるが、原線維とは結合することができないもの。第一のクラスが最も一般的であり、そしてこのクラスの1つの特定のクローンを展開し、そして徹底的に特徴付けた(20C2)。この抗体は、抽出物及び組織切片中で、コントロール脳をAD脳から識別した。ADDLに共通する3Dエピトープに由来する識別及びAβ1−28のアセンブリはAβ1−40及び他の直鎖配列にはなかった。20C2によるADDLの結合は、それらが海馬の培養物中のシナプスに結合するのを防いだ。従って、20C2は病理学的なAβのアセンブリを選択的に免疫中和する治療用モノクローナル抗体のプロトタイプである。
【0041】
種々の形態のAβフラグメント及びアセンブリによる免疫化は、種々の有用な特性を有する抗体を生成させた。短いN末端ペプチドは、例えば、本研究で使用する6E10[10]を生成させ、これは全ての形態のAβと実質的に結合する。C末端抗原は、Aβ1−40をAβ1−42と区別するモノクローナル抗体を生成させ、これはそれらを選択的ELISAにとって有用なものとする[19;34]。Kayedらは[20]最近、金コロイドとカップリングしたAβ1−40を使用して、in vitroでオリゴマーと結合するがモノマー又は原線維と結合せず、そして脳の切片において拡散性の初期のプラークと反応するがチオフラビンポジティブな高密度プラークと反応しない抗体を生成させた。ADDL調製物によるワクチン接種で生成したポリクローナル抗体[27]は、AD脳組織をコントロールの脳組織から切片及びドットイムノブロット両方で区別し、AD脳のオリゴマーの性質を特徴づけ、培養細胞上のシナプスに対して結合したADDLを同定し、そして抗ADDLの創薬のためのリード化合物を同定するのに使用された[25;27;43]。
【0042】
20C2モノクローナル抗体は、ウェスタンブロット及びドットイムノブロットパラダイムにおいてオリゴマー及び原線維を認識するが、モノマーを認識しない点について、ADDLにより生成したポリクローナル抗体と似ている。AD脳の切片において、わずかなニューロン周囲の免疫反応性は明らかであった。この免疫反応性は、仮定では、シナプスに対するオリゴマーの結合に寄与しており、ADにおいて初期に又は前臨床時にさえ生じていると考えられている。ウェスタンブロットにおいて20C2により認識された種は、銀染色ではなんら材料は検出されなかったが、より高次オリゴマー(12〜24量体)を含んでいた。Aβ1−40モノマーは、20C2ではイムノブロットにおいて検出されず、Aβ1−42もSDSがトランスファーバッファー中に存在しているときには検出されなかった。しかしながら、SDS無しに、20C2はモノマーの位置に免疫反応性を示した。モノマーの移動は、ビオチン化したAβ1−42についてのストレプトアビジン−HRPアッセイにおいて、SDSに影響を受けないことが確認された(データは示さない)。いずれか1つの説明又は機構に拘束されることを意図するものではないが、SDS無しで、モノマーは移動の間に複合し、そしてオリゴマーを生成すると仮定され、これはAβが非常に低濃度であっても見られる迅速なオリゴマー化と一致している(図3)。競合実験では、20C2が溶液中でモノマーについての最小の親和性を有していることが証明され、これによりSDS−PAGE解析に伴う不明確さが回避される。
【0043】
競合的な実験(図5)によると、ADDLに対する20C2の結合が高次構造の決定因子に依存していることが更に示され、これはAβ1−42の抗原性についてのこれまでの示唆と一致している[8]。20C2と、ADDL又はAβ1−28を含む溶液とのプレインキュベーションは、ドットイムノブロットにおけるADDLに対するその後の結合をブロックした。他のペプチド、例えばAβ1−40は効果がなかった。エレクトロスプレー質量分析によるAβ1−28の解析は、これが、ダイマー、おそらくは他のより高次のオリゴマーを気相で形成することを示唆している[28]。2つのダイマー構造が、Aβ17−23又はAβ17−28のいずれかのコアのオーバーラップにより、当該データに適合すると仮定された。したがって、20C2エピトープは3次元であり、Aβ1−28が凝集してダイマーを形成することは、正確なアミノ酸を結合ポケットにアラインさせるのに必要であり、おそらく幾つかはそれぞれの単一ペプチドに由来する。変性したAβ1−28は、銀染色で見られるように(図5)、ダイマーと一致する位置に移動する。あるいは、単一のペプチド自体がフォールディングしてアミノ酸を適切な配列中にアラインさせることがあり、一方、より短いペプチドは、完全長のAβ1−40と同様にフォールディングすることができない。
【0044】
N末端エピトープを有する抗体は、C末端又は中央のエピトープよりも、tgマウスにおけるプラークのクリアランス[3]、そして原線維形成及び細胞毒性の阻害[29]に有効であるようである。Aβ3−6配列(EFRH)に依拠する置換一本鎖抗体は、Aβの凝集物のin vitroでの形成を抑制し、そしてtgマウスにおける脳アミロイド負担の損失をもたらした[12;39]。別のN末端抗体であるBAM−10は、アミロイド斑を減少させずにtgマウスにおける記憶障害の回復をもたらした[24]。当該抗体は、認知障害を引き起こす脳内の可溶性Aβのアセンブリを中和することで働くと仮定された。中央ドメインAβ13−28に対して生じた第二の抗体M266も、記憶の欠損の回復をもたらした[10]。当該回復は、脳のAβ斑を変化させることなくわずか24時間後に生じた。この抗体はCNS及び血漿のAβのクリアランスを変化させるため[38]。この筆者等は当該抗体がAβのシンクとして働き、CNSのクリアランスを引き起こすことを示唆している[9]。
【0045】
マウスADモデルにおける能動及び受動ワクチン接種の成功は、AD患者における能動ワクチンの臨床試験へとつながる[36;37]。フェーズ2の試験は、患者の6%が髄膜脳炎を発症したことにより中止されたが[17][33]、免疫治療に由来する初期臨床データは有望なものであり、代替のAβ免疫療法の開発は継続中である[13]。能動ワクチンは、Aβのフラグメント、通常はN末端又は中央領域からのものから構成される免疫抱合体を、キャリヤータンパク質と連結させて用いて開発されている[37]。これらの抗原は、T細胞の反応を開始させる、Aβ1−42由来のエピトープを含んでおらず、これにより自己免疫反応が排除されうる。受動ワクチンも開発されており、これは、Aβに対するT細胞の反応を排除するだけでなく、高齢の患者の乏しい免疫反応を回避するという利点を提示する。既に、ADDLを標的とする治療用抗体の開発がこのアプローチの有効性を最大限利用しうることが示唆されている[23]。本発明は、比較的強力なモノクローナル抗体が、免疫原として合成ADDLを用いて生成することができること、そして、生じた抗体がAβの病理学的アセンブリに選択的であることを確証する。当該抗体は更に、AD脳から得られたADDLを免疫中和して、それらが細胞培養アッセイにおいてシナプスに接着することをブロックする。したがって、当該抗体は、tgマウスADモデルにおけるADDLの中和の行動学的研究に将来的に使用するのに有望であり、臨床的に価値のある抗体へのステップを提供するものである。
【0046】
ADDL選択的なモノクローナル抗体はまた、ADの診断に有用である。近年の研究において、ADDL選択的抗体は、ヒトCSFにおいてADDLを検出することができるアッセイを開発するためのナノテクノロジーの開発と組み合わされた(Georganopoulou, D. G. et al. (2005) Nanoparticle-based detection in cerebral spinal fluid of a soluble pathogenic biomarker for Alzheimer's disease. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102(7):2273-76; Haes, AJ. et al. (2005) Detection of a biomarker for Alzheimer's disease from synthetic and clinical samples using a nanoscale optical biosensor. J. Am. Chem. Soc. 127(7):2264-71)。新規なアッセイは、利用可能な最善のELISAよりも桁違いに高感度であり、低atmolarのADDL濃度を検出することができる。ADの対象者とコントロールの対象者との間のCSF ADDLレベルの10倍の違いを示す結果(Georganopoulou, D.G. et al. (2005) Nanoparticle-based detection in cerebral spinal fluid of a soluble pathogenic biomarker for Alzheimer's disease. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102(7):2273-76)は、ADDL選択的モノクローナル抗体と組み合わせたナノテクノロジーベースのアッセイが、ADの化学的診断を初めて提供することができることを示唆している。
【0047】
引用文献
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【0048】
実施例2
抗ADDLモノクローナル抗体
(開発及び特徴づけ)
材料と方法
Aβ由来ジスルフィドリガンド(ADDL)の調製:ADDLは、これまでに公開されているプロトコールに従い調製した(Lambert 1998, 2001; Klein 2002)。American Peptide Co. (Sunnyvale, CA)又はCalifornia Peptide Research, Inc. (Napa, CA)由来のAβ1−42は、ヘキサフルオロ−2−プロパノール(HFIP)中に溶解した。ADDLを調製するために、Aβ1−42のアリコートをニートのDMSOに溶解して5mMにし、続いて冷たいF12培地に添加して100μMにした。この溶液を4℃で24時間インキュベートし、そして14,000xgで10分間遠心した。上清はADDLを含んでいる。
【0049】
ヒト原線維の調製:凍結したヒトの皮質(NADC grant # AG 13854及びNADC Neuropathology Core)から得た試料を、プロテアーゼ阻害剤(Roche Complete(登録商標))を含む20xの冷F12培地中で1分間ホモジェナイズした。試料を続いて10,000gで1分間4℃で遠心した。F12で2回洗浄した後、ペレットを2%SDS/F12中で再懸濁し、そして氷上で30分間インキュベートした。試料を続いて220,000gで1時間4℃で遠心した。ペレットを続いて冷F12中で再懸濁し、そして15秒の破壊を繰り返して1分間超音波処理した。タンパク質は、クーマシープラスキットを用いて決定した(Pierce Biotechnology, Rockford, IL)。
【0050】
海馬の培養:培養物は、これまでに公開されている手順(Brewer, 1997; Stevens, 1996)に従い、E18胚から調製した。生存細胞の数を数え、そしてポリリジン(200μg/ml)でコーティングしたカバーグラス上に、1.5x104〜106細胞/cm2の密度でプレーティングした。培地は、半分を捨て、そして追加したNeurobasal培地と置き換えることで交換した。
【0051】
定量免疫細胞化学:培養した海馬細胞を500nMのADDLと一緒に1時間37℃でインキュベートした。ADDLはその後洗浄することで除去し、そして細胞を3.7%ホルムアルデヒドで固定した。細胞を0.1%Triton X−100/PBS−NGS(10%の普通のヤギ血清を含むPBS)で30分間インキュベートし、1回洗浄し、そして所望の一次抗体(PBS−NGSで希釈したもの)で一晩4℃でインキュベートした。試料を続いて洗浄し、そして適切な二次抗体[Alexa Fluor(登録商標) 488又は594抗マウスIgG及び抗ウサギIgG(Molecular Probes, Inc., Eugene, OR)]と一緒に2時間37℃でインキュベートした。カバーガラスを洗浄し、そしてProLong anti-fade mounting medium (Molecular Probes, Inc., Eugene, OR)に乗せ、そしてLeica TCS SP2共焦点スキャナDMRXE7顕微鏡を用いて撮像した。
【0052】
ウェスタンブロット:試料はネイティブPAGE(4〜20%トリス−HCl レディゲル、BioRad)又はSDS−PAGE(10〜20%のトリストリシンレディゲル、BioRad)により分離した。続いてタンパク質をニトロセルロースに移した。ブロットは、5%の脱脂粉乳又は1%BSA/TBST(0.1%Tween20を含むTBS)で一晩ブロッキングし、そして一次抗体と一緒に1.5時間インキュベートし、洗浄し、そしてHRPコンジュゲート二次抗体(Amersham Biosciences Corp., Piscataway, NJ)と一緒に1時間インキュベートした。最後の洗浄をした後、タンパク質をWest Femto chemiluminescence キット(Pierce Biotechnology, Rockford, IL)及びImage Station 440 CF (Kodak) 又はフィルム(Hyperfilm, Amersham Biosciences Corp., Piscataway, NJ)で可視化した。
【0053】
ELISA:ポリクローナル抗ADDL IgG(M90/1; Bethyl Laboratories, Inc., Montgomery, TX)を0.25mg/ウェルでImmulon 3 Removawell ストリップ(Dynatech Labs, VA, USA)上に2時間室温でプレーティングし、そして当該ウェルを2%BSA/TBSでブロッキングした。1%BSA/TBSで希釈した試料をウェルに添加し、2時間4℃で結合させ、そしてBSA/TBSを用いて室温で3回洗浄した。BSA/TBSで希釈したモノクローナル抗体を90分間室温でインキュベートし、そしてマウスIgGに対するVectastain ABCキットで検出した。HRP標識をBioRadのペルオキシダーゼ基質で可視化し、そしてDynex MRX-TCマイクロプレートリーダー上で405nmで読み取った。
【0054】
アイソタイピング:マウスモノクローナル抗体アイソタイピング試薬を有するSigma Immunotype(登録商標)キットを、取扱説明書に従い使用した(Sigma- Aldrich Co., St. Louis, MO)。
【0055】
結果及び考察:図7〜11及び表1(以下)を参照のこと。
【0056】
結論:ADDLは、マウスにおいて強力な免疫原性の反応を誘発する。4つの異なる結合プロファイルを有する抗体は、変性したAβオリゴマーを認識するものであり、天然のAβオリゴマーとの選択性に乏しい。これらの抗体は、更に、サイズ排除クロマトグラフィーによって分離されたADDLを認識する能力により他のものと区別することができる。これらの抗体により培養細胞の軸索及び細胞体に沿った点と結合したADDLが検出された。点はADDLであり、そしてAβモノマー又は大きなオリゴマー種には起因していない。モノクローナル抗体は、ADDL処理した培養細胞に対して異なる結合を示す。複数のアイソタイプのモノクローナル抗体が生成しうる。
【0057】
【表7】
【0058】
実施例2の引用文献:
【表8】
【0059】
実施例3
診断試薬としての抗ADDLモノクローナル抗体
抗ADDL抗体、特に、ADDLに見られ、アミロイドモノマー又は原線維には見られない高次構造のエピトープに特異的なモノクローナル抗ADDL抗体が、当業者に知られている任意の診断用アッセイ、例えば、限定しないが、タンパク質アッセイ;核酸アッセイ;病理学的アッセイ;ウェスタンブロットアッセイ;ELISAアッセイ;RIAアッセイ;ドットブロットアッセイ;疫学的アッセイ;ADDLのアセンブリを阻害する化合物を検出するためのアッセイ;ADDLが受容体に結合するのを阻害する化合物を検出するためのアッセイ;アルツハイマー病(AD)、ダウン症、及び軽度認識障害(MCI)を予防又は処置する化合物を検出するためのアッセイ;患者又は対象がアルツハイマー病、ダウン症、及び軽度認識障害を有しているか否かを検出するためのアッセイ、等(例えば、Georganopoulou, D. G. et al. (2005) Nanoparticle-based detection in cerebral spinal fluid of a soluble pathogenic biomarker for Alzheimer's disease. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102(7):2273-76; 国際特許公報WO 2005/003394; 米国特許6,872,554; 6,866,850; 6,815,175; 6,808,712; 6,787,523; 6,787,144; 6,710,226; 6,710,226; 6,703,015; 6,670,195; 6,582,945; 6,375,949; 6,194,163; 5,786,180; 5,716,619; 5,693,753; 5,693,478; 5,679,531; 5,270,165; 米国特許公開番号2005/0142131; 2005/0129695; 2005/0119227; 2005/0090648; 2005/0053614; 2005/0048049; 2005/0037026; 2005/0031629; 2005/0019343; 2005/0019330; 2005/0013815; 2004/0265308; 2004/0234990; 2004/0228865; 2004/0219146; 2004/0197831; 2004/0192898; 2004/0181042; 2004/0175394; 2004/0170641; 2004/0166119; 2004/0157779; 2004/0081657; 2004/0052766; 2003/0235897; 2003/0157117; 2003/0086938; 2003/0073655; 2002/0182660; 2002/0150948; 2002/0136718; 2002/0102261; 2002/0086847; 2002/0009445等を参照のこと)において使用することができる。
【0060】
本明細書で開示したモノクローナル抗体は、当業者に知られており、そしてADDLの存在について脳の抽出物をアッセイするために本明細書で開示した(図12を参照のこと)、方法、プロトコール、及び手順に従い使用することができる。このようなアッセイは、病態がない又は軽度(low)の患者が非常に低い検出可能なレベルのADDLを有していることを示す。また、病態が重度(high)の患者は、可変レベルの検出可能なADDLを有している。最後に、かかるアッセイは、AD患者が一貫して高レベルの検出可能なADDLを有していることを示す。
【0061】
本明細書で開示したモノクローナル抗体は、当業者に知られており、そしてADDLの存在について脳の切片(slice section)(例えば、図13A−13Dを参照のこと)をアッセイするために本明細書で開示した、方法、プロトコール、及び手順に従い使用することができる。かかるアッセイは、ADDLがADの病理に影響を受けている領域に存在していることを示す。ADDLは、2つのコントロール中に存在しておらず、そのうち1つはADの病態を有していないものであり、そして1つはCERAD0、BraakIである。ADDLは病態が「重度」のコントロールの試料−CERAD A,BraakIII及びADに存在していた。更に、これは病態が「重度」のコントロールの試料よりもADの場合に多く存在していた。このようなアッセイの結果は、可変のIHCパターンを示す:ニューロン周囲、びまん性老人斑様、老人斑様、アミロイド血管症、Nbmニューロン周囲の標識−これは典型的に老人斑を有する領域ではない。
【0062】
29のケースに由来する免疫組織化学的なアッセイ(例えば、図14、15及び16を参照のこと)によると、ADDLが見られる脳の領域は、限定しないが、海馬前部の切片:海馬、海馬支脚、前海馬支脚、嗅内皮質、海馬傍回、側頭後頭回(temporooccipital gyrus)、中前頭回が含まれる。ADDLは、ニューロン周囲、びまん性老人斑様、老人斑様の沈着について半定量的に評価することができる。このようなアッセイにより、選択したケースと、Abeta 4G8及び1280 IHCとを比較することができる(例えば、図16を参照のこと)。更に、このようなアッセイは、ADDLの標識が認知の状態と相関しているか否か、ADDLの標識がシナプスの損失の測定に比肩するか否か;ミクログリア細胞の補充/活性化がAD及び/又はMCIへの移行に比肩するか否か、等について研究することを可能にする。
【0063】
同様のアッセイを6つの認知力が評価されたケースにより実施した。当該アッセイの予備的な結果を図17及び18に示す。
【0064】
このようなIHCアッセイは、以下のように要約することができる情報を提供する:ADDL標識は、局所的な分布及び密度におけるAD病態と相関しており(例外:ニューロン周囲のnbm標識)、ADDL標識は認知状態と相関しており、そしてヒトの組織の研究はin vitroでの細胞培養及びドットイムノブロットアッセイ研究と相関している。
【0065】
本明細書で開示したモノクローナル抗体は、当業界で知られており、そして正常及びADと診断された患者又は対象に由来するCSF試料をアッセイするために本明細書で開示した方法、プロトコール、及び手順に従い使用することができる。ナノテクノロジーを用いた例示的なアッセイ(例えば、Georganopoulou, D. G. et al. (2005) Nanoparticle-based detection in cerebral spinal fluid of a soluble pathogenic biomarker for Alzheimer's disease. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102(7):2273-76; 国際特許出願公報WO 2005/003394等を参照のこと)は、図19に示すようなデータを作り出し、これは、ADを診断する臨床医の助けとなるべく使用することができる。CSFにおける上昇したADDLレベルはADの診断と相関しており、そして当該診断のマーカーとして使用することができる(以下に示す関連の特許公報、特に米国特許出願第10/676,871号及び第10/924,372号並びに国際特許出願PCT/US03/30930も参照のこと)。
【0066】
本明細書で開示したモノクローナル抗体は、当業界で知られており、そして本明細書のELISAアッセイで開示した方法、プロトコール、及び手順に従い使用することができる。このようなアッセイは、ELISAで検出した場合の26のDIVの海馬細胞培養物に対するADDLの結合が濃度依存性であることを示す。
【0067】
図20で言及する海馬細胞(26DIV;20,000細胞/ウェルでプレーティングしたもの)は96穴プレートで培養した。非細胞コントロールウェルは培地でプレーティングした。細胞は1時間37℃で、増殖細胞から回収した培地で希釈した100mlのADDLで処理した。ウェルを3x200mlの温かいNeurobasal培地及び1x200mlの1%BSA/TBS(20mMのTris−HCl、pH7.5、0.8%NaCl)でそれぞれ10分間洗浄した。モノクローナル抗体は、BSA/TBS中で1:2500に希釈し、そして100ml/ウェルで1時間室温でインキュベートし、続いて4x200mlのBSA/TBSで上述のとおり洗浄し、そして3x200mlのTBSですすいだ。Bio-Radのペルオキシダーゼ基質(100ml)を各ウェルに添加し、1時間室温で展開し、そしてDynex MRXマイクロプレートリーダー上で、405nmで読み取った。
【0068】
本明細書で開示したモノクローナル抗体は、当業界で知られており、そして本明細書の点状の結合(「ホットスポット」)免疫蛍光アッセイにおいて開示した方法、プロトコール、及び手順に従い使用することができる(例えば、図21、及び下文で言及する関連出願における類似の情報を参照のこと)。
【0069】
図21で言及する海馬細胞は3週間ポリリジンコートしたカバーガラス上で生育させた。細胞を100μMのADDL、等量のビヒクル、0.5mg(全タンパク質)の内因性ADDL(脳から抽出したADDL)、又は0.5mg(全タンパク質)の高齢の対応するコントロール脳抽出物で1時間処理した。細胞を3・7%ホルムアルデヒド/PBSで合計15分間固定し、PBSですすぎ、そして2B4抗体(1:500希釈)、続いてAlexa Fluor 488抗マウス二次抗体(Invitrogen)で免疫標識した。これらの細胞を、Nikon optihot倒立顕微鏡及びMetaMorphソフトウェア(Universal Imaging)を用いて可視化した。画像はMetaMorph及びPhotoshop (Adobe)を用いて処理した。海馬細胞に対して結合する典型的な点状ADDLは、2B4モノクローナル抗体を用いて検出される。かかるアッセイは多数の異なる解析、例えば、限定しないがADDLが受容体に結合するのを阻害する化合物の検出及び特徴づけ、等にとって有用である。
【0070】
関連の特許及び特許出願には、限定しないが、米国特許第6,218,506号;国際特許出願PCT/US98/02426;国際特許公報WO 98/33815;米国特許出願09/369,236;国際特許出願PCT/US00/21458;米国特許出願第09/745,057号;米国特許出願第11/130,566号;米国特許出願第10/166,856号;国際特許出願PCT/US03/19640;米国特許出願第10/676,871号;米国特許出願第10/924,372号;米国特許出願第11/100,212号;米国特許出願第11/142,869号;国際特許出願 PCT/US03/30930;国際特許出願 PCT/US05/17176等が含まれる。
【0071】
本明細書で言及した特許、特許出願、ならびに任意の他の科学文献および技術文献は、これらが矛盾しない範囲で引用により組み入れられる。
【0072】
本発明の好ましい実施形態の上記開示は、例示および説明を目的として示している。厳密な形態または開示の形態は網羅的でなく、本発明を制限することを意図しない。意図する特定の用途に合わせる場合に当業者が種々の実施形態および種々の修正形態で本発明を最良に実施することができるようにするために本発明の原理およびこれらの原理の実際の適用を最良に説明するために説明を選択した。意図する特定の用途に適している。本発明の範囲は、明細書によって制限されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】Aβ1−42に対するオリゴマー選択的なモノクローナル抗体を開発するために使用したスクリーニング工程の略図。本明細書で詳述した通り、マウスにADDL(〜194μg/注射/マウス)を3週間毎に6回接種した。これらのマウスの脾臓とSP2細胞との融合から生成したハイブリドーマを96ウェルプレートにプレーティングし、そして示す通り2種類のドットブロットでスクリーニングした。有望なハイブリドーマをサブクローニングし、そしてポジティブなものを続いて種々のアッセイ、例えばウェスタンブロット、AD脳由来の抽出物(内因性ADDL含有)のドットブロット、及び免疫細胞化学を用いて検証した。選択した抗体を培養液から回収し、そしてプロテインGセファロースを用いて更に精製した。
【図2】AD脳組織とコントロールの脳組織とを識別する選択された抗体。A.合成ADDL(1pmol)及びヒト脳抽出物/F12(ヒトAD脳及びコントロール脳由来;0.5μg.方法の項参照)をニトロセルロース上に二回一組でスポットした。ペルオキシダーゼ処理(3%H2O2、20分)及びブロッキングの後、垂直のレーンをそれぞれ指定のモノクローナル抗体又はウサギポリクローナル抗体(M71/2)で1時間室温でプローブした。洗浄後、ニトロセルロースは、適切なHRPをコンジュゲートした二次抗体と一緒にインキュベートし;結合した二次抗体を続いてケミルミネセンスで可視化した。注意:20C2、11B5、及びM71/2はAD脳試料と強固に結合するが、コントロールの脳試料とは結合しない。B.a−c:コントロール(a)及びアルツハイマー(b.c)の脳から調製した海馬の切片(40μm)をモノクローナル20C2と一緒に一晩4℃でインキュベートした。結合した抗体は、続いて抗HRP二次抗体及びDABを用いて可視化した。続いて試料をヘマトキシリンで対比染色した。オリゴマーはAD脳(b)において広範に見られたが、コントロール脳(a)においては見られなかった(200x)。より高倍率(c)のものは、染色が細胞体をニューロン周囲のパターンで取り囲んでいることを示している(600x)。
【図3】Aβペプチドの最小のモノマーを示す20C2。Aβ1−40、ADDL、及びSEC[7]で2つのピークに分離したADDLは、10〜20%トリス−トリシンゲルを用いたSDS−PAGEにより分離した。一方のゲルを銀染色し(A)、他方の試料をニトロセルロースにトランスファーし、続いて6E10、20C2、及びM71/2でプローブした(B)。銀染色上では、Aβ1−40は、重鎖のモノマーのバンドのみを示した。ADDL及び分離したADDLのピークは全て、種々の強度のモノマー、トリマー及びテトラマーのバンドを有している。ウェスタン解析において、6E10は、4つの試料全てでモノマーのバンドを同定し、ADDL及びピーク1は強いトリマー、テトラマー及び12〜24量体のバンドを示し、一方、ピーク2は主にモノマーと、トリマー及びテトラマーとを示した。20C2とM71/2は、反対に、ADDL及びピーク1でほとんど又は全くモノマー染色を示さなかったが、6E10と同様に強いトリマー、テトラマー、及び12〜24量体を示した。ピーク2は、20C2及びM71/2で染色すると僅かにモノマー、トリマー、及びテトラマーを示したが、12〜24量体は示さなかった。Aβ1−40は、20C2又はM71/2で認識されなかった。C及びDにおいて、モノマー化したAβ1−42ペプチドの氷上での凝集は、ドットブロットにより、20C2及びウサギポリクローナルM90/1抗体で比較しながらモニタリングした。溶液の等量のアリコート(20fmol)を指定した時間でスポットし、そして抗体でプローブした。いずれの抗体も、Aβ1−42からADDLが時間依存的に形成することを検出した。両抗体はまた、100倍超高いペプチド濃度であっても、モノマーAβ1−40ではほとんどシグナルを示さなかった。Dにおいて、ドットブロットの相対的な強度を時間の関数として示す。これらのデータは、モノクローナル20C2抗体がオリゴマー特異的であるという更なる証拠となる。
【図4】低濃度の固定化ADDLに対する20C2の結合をブロックする可溶性ADDLと、ブロックしないモノマーのAβ1−40。Aにおいて、ADDLは10pmol/0.5μlの濃度でニトロセルロースに適用した。ブロッキングした後、各レーンは、ADDL又はAβ1−40のいずれかと一緒に指定の種々の濃度でプレインキュベートした20C2と一緒に1.5時間インキュベートした。続いて抗体の結合を抗マウスHRPとのインキュベーション及びケミルミネセンスにより決定した。Kodak Image Station 440を使用してブロットの強度を定量した。次に、これらのデータを、SigmaPlotを用いてペプチド濃度の関数としてプロットした(B)。溶液のADDLは、固定化したADDLに対する20C2の結合を効果的にブロックするが(半阻害濃度〜32nM)、モノマーのAβ1−40は、非特異的なブロッキングのみを示す。
【図5】ADDLに対する20C2の結合をブロックする可溶性ペプチドAβ1−28。20C2のエピトープを研究するための調査に、Aβ1−42の全長を覆う8〜17アミノ酸の4つの短い直鎖ペプチドとのインキュベーションを用い、抗体が固定化したADDLに結合するのをブロックした。試験したペプチドのいずれも、抗体より100倍超であっても結合をブロッキングしなかった。続いて、2つのより長いペプチドを同様のアッセイにおいて試験した結果、Aβ1−28は、単独でも他のペプチドと組み合わせても、優れたブロッキング能を示した(B)。Aβ1−28のブロッキング効力はADDLと同様であり、11nMの推定の半阻害濃度を有していた(C)。Aβ1−28はまた、SDS−PAGEイムノブロットにおいて、変性したADDLに対する20C2の結合をブロックした。
【図6】培養細胞に対する内因性ADDL及び合成ADDLの結合を中和する20C2。3週齢の培養海馬細胞は、内因性ADDL(A)又は合成ADDL(B)のいずれかを含有するAD脳由来の可溶性抽出物と一緒に60分間インキュベートした。結合しなかったADDLを、温かい培養液で洗浄した後、結合したADDLを20C2及び抗マウスAlexaFluor488で同定した(方法の項を参照のこと)。免疫中和について試験するために、上述の培養海馬細胞とのインキュベーション前に、ADDLを20C2と一緒に1時間37℃でプレインキュベーションした。洗浄後、抗マウスAlexaFluor488を用いて結合抗体を同定した。20C2は、内因性ADDL(C)及び合成ADDL(D)を含有するAD脳由来の両可溶性抽出物が海馬細胞培養物に対して結合するのをブロックした。新鮮な20C2がAlexaFluor488の前に細胞に加えられたコントロールのプレートも、ADDL結合を示さなかった。
【図7】ADDLにより生成したモノクローナル抗体間の差異を浮き彫りにするスクリーニング方法。2つの異なるプロトコールを用いてマウスにADDLを接種した。標準的な5ヶ月の接種期間及び融合方法が、ノースウェスタン大学のCoreAntibody Facilityで採用されたが、Immuno-Precise, Inc. (British Columbia, Canada)は、2週間の接種期間と選りすぐりの選択方法を使用した。ハイブリドーマの上清はその後スクリーニングのために我々に送付された。我々の最初のスクリーニングは、認識分子のために最初にADDLを利用し、そして次にAD脳由来の原線維を利用する超高感度ドットブロットアッセイで行った(Lambert, M.P. et al. "Diffusible, nonfibrillar ligands derived from Abetal-42 are potent central nervous system neurotoxins" Proc. Natl. Acad. Sci. USA, vol. 95, pp. 6448-6453)。続いて、ポジティブなウェルは、ウェスタンプロトコールにおいて、変性(左上段)及びネイティブ(右上段)の両条件下でADDLを用いてスクリーニングした。最後に、AD脳由来の原線維をウェスタンプロトコールで用いて(下段)、最終的な選択を決定した。
【図8】選択した抗体間で異なる結合プロファイル。(左上段)合成ADDLを20pmol/レーンで用いたSDS−PAGEウェスタンイムノブロットをハイブリドーマの上清と一緒にインキュベートし、そして適切なHRP二次抗体及びケミルミネセンスを用いて可視化した。4つのプロファイルを図示する:1:モノマー、低分子量オリゴマー、及び高分子量オリゴマー(20C2);2:小分子量オリゴマー(3B7);高分子量の主要な認識(11B4);4:小分子及び高分子量のオリゴマー(2B4)。コントロールはポリクローナルADDL抗体M88/3である。(右側上段)1レーン当たり20pmolの合成ADDLを用いてのネイティブウェスタンイムノブロットを調製した。当該ブロットを続いて5分間煮沸し、その後同一のハイブリドーマ上清で可視化した。上清は、主要な非変性型のADDL種と重要でないものとを認識する能力によって異なる。コントロールは6E10モノクローナル抗体である。(下側)1レーン当たり20pmolの合成ADDLを用いてのネイティブウェスタンイムノブロットを煮沸しない点を除いて上述の通り調製した。上清は、主要なより低分子量の種及びより高分子量の種のスメアを認識する。3B7は非変性型の材料をほとんど認識しない。コントロールは6E10である。
【図9】サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により分子したADDLの検出における差異を示す、ADDLにより生成したモノクローナル抗体。サンドイッチELISAは、捕捉抗体としてADDLに対するポリクローナル抗体M90を用いて展開した。SECピーク1及びピーク2の画分は、セファデックス75カラム上で分画したADDLの2つの主要なピークを指す(潜在的に生体活性なオリゴマーと不活性なオリゴマーとを区別するために、「合成」ADDLをゲルろ過クロマトグラフィーにかけ、これにより2つお主要なピークが生成した;非変性ゲル電気泳動により、37℃で安定な、大きな(59kDa超)の凝集物と小さい(30kDa未満)の凝集物への分離が確認された)。これらのピークは、クローン上清についての検出物質として別々に使用した。結合はVectastainキットを用いて可視化した。データは、SigmaPlotソフトウェアを用いて定量した。2つのピークの認識の差異は全ての抗体で見られる。例えば、抗体2B4及び20C2についてのピーク1とピーク2との比率を比較する。わずかに1つの抗体が、ピーク2についてのコントロール抗体(6E10)の好みを反映している。
【図10】培養細胞に結合したときにオリゴマーであるADDL。(左側)ADDL及び原線維を含む合成溶液に対して結合する3B7モノクローナル抗体及びM94ポリクローナル抗体を示すウェスタンイムノブロット。3B7が原線維、高分子量オリゴマー、及びモノマーと結合しないことに注意すること。(右側)3B7で検出し、そしてAlexaFluor(登録商標)488抗マウスIgGで可視化した、3週齢の培養海馬細胞と結合したADDLのイメージ。3B7は、原線維又はモノマーを認識しないので、ADDLのホットスポット結合はオリゴマーである。
【図11】ADDL処理した培養細胞に対して異なる結合を示す、ADDLにより生成したモノクローナル抗体。E18から得た培養海馬細胞は、実施例2で述べた通り3週間生育した。続いて細胞を1時間ADDL(500nM)に曝露し、洗浄し、そして固定した。ADDLは、指定の抗体で同定し、そしてAlexaFluor(登録商標)488抗マウスIgGで可視化した。抗体は、細胞に対して結合したADDL上の異なるエピトープを認識するようであり、これは、工程上のホットスポット(M94、2A10)から細胞体特異的付着(4E2)、そして他の中間状態(2D6、4C2、2B4、5F10、5G12)に及ぶ。
【図12】ドットブロットイムノアッセイによるヒト脳抽出物におけるADDLの相対的定量。
【図13A】ヒト切片のADDL免疫組織化学(IHC)解析。領域分布。2ケース。
【図13B】ヒト切片のADDL免疫組織化学(IHC)解析。領域分布。2ケース。
【図13C】ヒト切片のADDL免疫組織化学(IHC)解析。領域分布。2ケース。
【図13D】ヒト切片のADDL免疫組織化学(IHC)解析。領域分布。2ケース。
【図14】抗ADDLモノクローナル抗体を用いるIHC解析の要約。
【図15】ヒト脳切片のADDL免疫組織化学(IHC)解析。
【図16】ヒト脳切片を用いてのADDL IHC解析の要約。
【図17】6つの認識的に評価したケースのADDL IHC解析の結果。
【図18】ヒト脳切片を用いての選択認識的に評価したケースについてのADDL IHC解析。
【図19】多数の正常な対象とADと診断された対象についてのバイオバーコードアッセイから放出したバーコードDNAの検出により生成したデータのスキャッタープロット解析。(例えば、Georganopoulou, D.G. et al. (2005) Nanoparticle-based detection in cerebral spinal fluid of a soluble pathogenic biomarker for Alzheimer's disease. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102(7):2273-76を参照のこと)。
【図20】ELISAで検出した26 DIV海馬細胞培養に対する、ADDL濃度依存性の結合。培養物をADDLと一緒に1時間37℃でインキュベートし、モノクローナル2B4又は20C2抗体で標識し、そしてHRP連結抗マウスIgG二次抗体を用いて検出した。個々の読み取り(白色の記号)、平均(黒色の記号;n=6)及びSEM(棒)をプロットする。
【図21】抗ADDLモノクローナル抗体2B4を用いての点状の結合(「ホットスポット」)免疫蛍光アッセイ。in vitroで調製したADDL及びヒト脳抽出物から単離した内因性ADDLを培養海馬細胞に加え、そして2B4モノクローナル抗体を用いて検出した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミロイドβ(Abeta)1−42の可溶性オリゴマーと選択的に結合するモノクローナル抗体を含んで成る組成物。
【請求項2】
アミロイドβ(Abeta)の可溶性オリゴマーをアッセイする方法であって、モノクローナル抗体を当該オリゴマーに添加する工程及び当該オリゴマーに対する前記抗体の効果を決定する工程を含んで成る方法。
【請求項3】
試料中のアミロイドβ(Abeta)の可溶性オリゴマーを検出する方法であって、当該試料を、アミロイドβ(Abeta)1−42の可溶性オリゴマーと選択的に結合するモノクローナル抗体と接触させる工程及び当該試料中のオリゴマー量を決定する工程を含んで成る方法。
【請求項1】
アミロイドβ(Abeta)1−42の可溶性オリゴマーと選択的に結合するモノクローナル抗体を含んで成る組成物。
【請求項2】
アミロイドβ(Abeta)の可溶性オリゴマーをアッセイする方法であって、モノクローナル抗体を当該オリゴマーに添加する工程及び当該オリゴマーに対する前記抗体の効果を決定する工程を含んで成る方法。
【請求項3】
試料中のアミロイドβ(Abeta)の可溶性オリゴマーを検出する方法であって、当該試料を、アミロイドβ(Abeta)1−42の可溶性オリゴマーと選択的に結合するモノクローナル抗体と接触させる工程及び当該試料中のオリゴマー量を決定する工程を含んで成る方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図13D】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図13D】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公表番号】特表2008−513732(P2008−513732A)
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−520466(P2007−520466)
【出願日】平成17年7月5日(2005.7.5)
【国際出願番号】PCT/US2005/023958
【国際公開番号】WO2006/014478
【国際公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(596057893)ノースウエスタン ユニバーシティ (35)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月5日(2005.7.5)
【国際出願番号】PCT/US2005/023958
【国際公開番号】WO2006/014478
【国際公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(596057893)ノースウエスタン ユニバーシティ (35)
【Fターム(参考)】
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