説明

アミロイド−ベータ・ペプチドに対して向けられる抗体、および該抗体を用いる方法

β−アミロイド・ペプチドのC末端側に対して向けられる抗体、ならびにアルツハイマー病およびAβペプチド関連疾患の診断および治療に、これらの抗体を使用する方法を記載する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連出願に関するクロス・リファレンス
[0001]本出願は、その全体が本明細書に援用される、米国仮出願第60/676,093号、2005年4月29日出願、および第60/704,818号、2005年8月1日出願の優先権の恩典を請求する。
発明の分野
[0002]本発明は、アミロイド−ベータ・ペプチドに対する抗体に関する。本発明はさらに、アルツハイマー病などの疾患の治療および/または予防におけるこうした抗体の使用に関する。
連邦政府が資金援助した研究または開発に関する記載
[0003]該当なし。
発明の背景
[0004]アルツハイマー病(AD)は、進行性の記憶欠損、錯乱、漸進性身体的悪化、および最終的な死によって臨床的に特徴付けられる、変性脳障害である。世界中でおよそ1500万人の人々がアルツハイマー病に罹患し、そして寿命が増加するにつれて、この数字が劇的に増加すると予測される。組織学的に、この疾患は、連合皮質、辺縁系、および基底核に主に見られる老人斑によって特徴付けられる。これらの斑の主な構成要素はアミロイド・ベータ・ペプチド(Aβ)であり、このペプチドは、ベータ・アミロイド前駆体タンパク質(βAPPまたはAPP)の切断産物である。APPは、巨大な異所性(ectopic)N末端ドメイン、膜貫通ドメイン、および小さい細胞質C末端テールを含有する、I型膜貫通糖タンパク質である。染色体21上の単一APP遺伝子の転写物の選択的スプライシングは、アミノ酸数が異なる、いくつかのアイソフォームを生じる。
【0002】
[0005]Aβは、アルツハイマー病の神経病理において中心的な役割を有するようである。この疾患の家族型は、APPおよびプレセニリン遺伝子における突然変異に結び付けられてきている(Tanziら, 1996, Neurobiol. Dis. 3:159−168; Hardy, 1996, Ann. Med. 28:255−258)。これらの遺伝子における疾患関連突然変異の結果、アミロイド斑に見られる主な型である、Aβの42アミノ酸型の産生が増加する。さらに、APPの疾患関連突然変異体型を過剰発現するトランスジェニックマウスをヒトAβで免疫すると、斑負荷および関連病理が減少し(Schenkら, 1999, Nature 400:173−177; WO 99/27944)、そしてまた、Aβに対して向けられる抗体を末梢投与しても、脳における斑負荷が減少する(Bardら, 2000, Nature Medicine 6(8):916−919; WO 2004/032868; WO 00/72880)。
【0003】
[0006]ミクログリア細胞および/またはマクロファージによるFc仲介性食作用が、in vivoの斑クリアランスのプロセスに重要であることが報告されてきている。Bardら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100, 2023−2028(2003)。しかし、免疫療法による、in vivoのアミロイド−βのクリアランスでは、Fcが仲介しない機構が関与することもまた報告されてきている。Bacskaiら, J. Neurosci. 22:7873−7878(2002);Dasら, J. Neurosci. 23:8532−8538(2003)。
【0004】
[0007]したがって、抗体療法は、アルツハイマー病の治療および予防に対する有望なアプローチを提供する。しかし、Aβ1−42を含むワクチンを用いたヒト臨床試験は、患者サブセットに髄膜脳炎(meningoencephalititis)が生じたため、中止された。Orgogozoら, Neruology 61:7−8(2003); Ferrerら, Brain Pathol. 14:11−20(200
4)。ヒトAD脳で観察されるものと類似の、アミロイド斑および神経変性の年齢に関連する発展、ならびに脳アミロイド血管症(CAA)を示すトランスジェニックマウスにおいて、N末端特異的抗Aβ抗体で受動免疫すると、主にびまん性のアミロイドの有意な減少が生じるが、脳微量出血(microhemorrhage)頻度の増加が誘導されることが報告されてきている。Pfeiferら, Science 298:1379(2002)。ベータ−アミロイドに対して向けられる抗体で受動免疫することによって、APPトランスジェニックマウスにおいて、脳アミロイド血管症(CAA)に関連する微量出血が増悪するのは、アミロイド・ベータ・ペプチドの沈着型が抗体に認識されることに依存すると示唆されてきている。Rackeら, J. Neurosci. 25:629−636(2005)。炎症リスクを減少させるため、抗体がFc領域を欠いている、アミロイド沈着物のペプチド構成要素に対する抗体で受動免疫することが示唆されている。WO 03/086310。有効性および安全性プロフィールが改善され、そしてヒト患者で使用するのに適している、Aβに対して向けられる抗体および他の免疫療法剤に関する必要性が依然としてある。
【0005】
[0008]本出願全体に渡って、多様な刊行物(特許および特許出願を含む)が引用されている。これらの刊行物の開示は、その全体が、本明細書に援用される。
発明の簡単な概要
[0009]本明細書に開示する本発明は、AβペプチドのC末端に結合する抗体およびポリペプチドに関する。1つの側面において、本発明は、Aβ1−40、Aβ1−42、およびAβ1−43に結合する抗体またはポリペプチドであって、Aβ1−42およびAβ1−43への結合よりも高い親和性でAβ1−40に結合し、そしてアミノ酸25−34および40を含むAβ1−40上のエピトープに結合する、前記抗体またはポリペプチドを提供する。いくつかの態様において、抗体は、Aβ1−42および/またはAβ1−43への結合より、少なくとも約40倍高い親和性でAβ1−40に結合する。いくつかの態様において、抗体は、抗体2294ではない。
【0006】
[0010]別の側面において、本発明は、抗体6G(交換可能に「6G」と称される)を提供する。6Gの重鎖および軽鎖の可変領域のアミノ酸配列を図1に示す。抗体6Gの相補性決定領域(CDR)部分(ChothiaおよびKabatのCDRを含む)もまた、図1に示す。
【0007】
[0011]別の側面において、本発明はまた、表3に示すアミノ酸配列を持つ、6Gの抗体変異体も提供する。
[0012]別の側面において、本発明は、表3に示す抗体6Gまたはその変異体の断片または領域を含む抗体を提供する。1つの態様において、断片は、抗体6Gの軽鎖である。別の態様において、断片は、抗体6Gの重鎖である。さらに別の態様において、断片は、抗体6Gの軽鎖および/または重鎖由来の1以上の可変領域を含有する。さらに別の態様において、断片は、図1に示す軽鎖および/または重鎖由来の1以上の可変領域を含有する。さらに別の態様において、断片は、抗体6Gの軽鎖および/または重鎖由来の1以上のCDRを含有する。
【0008】
[0013]別の側面において、本発明は、1以上の以下のいずれかを含むポリペプチド(抗体であっても、またなくてもよい)を提供する:a)抗体6Gまたは表3に示すその変異体の1以上のCDR(単数または複数);b)抗体6Gまたは表3に示すその変異体の重鎖由来のCDR H3;c)抗体6Gまたは表3に示すその変異体の軽鎖由来のCDR L3;d)抗体6Gまたは表3に示すその変異体の軽鎖由来の3つのCDR;e)抗体6Gまたは表3に示すその変異体の重鎖由来の3つのCDR;f)抗体6Gまたは表3に示すその変異体の軽鎖由来の3つのCDRおよび重鎖由来の3つのCDR。本発明はさらに、1以上の以下のいずれかを含むポリペプチド(抗体であっても、またなくてもよい)を提供する:a)抗体6Gまたは表3に示すその変異体由来の1以上(1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つ)のCDR(単数または複数);b)抗体6Gの重鎖由来のCDR H3由来のCDR;および/またはc)抗体6Gの軽鎖由来のCDR L3由来のCDR。いくつかの態様において、CDRは図1に示すCDRである。いくつかの態
様において、抗体6Gまたは表3に示すその変異体由来の1以上のCDRは、6Gまたはその変異体の少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または少なくとも6つのCDRに、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%、同一である。
【0009】
[0014]いくつかの態様において、CDRはKabat CDRである。他の態様において、CDRはコチアCDR(Chothia CDR)である。他の態様において、CDRは、KabatおよびChothiaのCDRの組み合わせである(「組み合わせCDR」または「拡張CDR」とも称される)。言い換えると、1より多いCDRを含有する所定の態様いずれに関しても、CDRは、Kabat、Chothia、および/または組み合わせのいずれであることも可能である。
【0010】
[0015]いくつかの態様において、本発明の抗体はヒト抗体である。他の態様において、本発明の抗体はヒト化抗体である。いくつかの態様において、抗体はモノクローナルである。いくつかの態様において、抗体(またはポリペプチド)は単離されている。いくつかの態様において、抗体(またはポリペプチド)は実質的に純粋である。
【0011】
[0016]抗体の重鎖定常領域は、IgG、IgM、IgD、IgA、およびIgEなどの定常領域のいずれかの種類;ならびにIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4などのいずれかのアイソタイプ由来であることも可能である。
【0012】
[0017]いくつかの態様において、本明細書記載の抗体またはポリペプチドは、損なわれたエフェクター機能を有する。いくつかの態様において、抗体またはポリペプチドは、損なわれたエフェクター機能を有する重鎖定常領域を含み、該重鎖定常領域はFc領域を含む。いくつかの態様において、Fc領域中のN−グリコシル化が除去されている。いくつかの態様において、Fc領域は、N−グリコシル化認識配列内に突然変異を含み、それによって、抗体またはポリペプチドのFc領域はN−グリコシル化されない。いくつかの態様において、Fc領域はPEG化されている。いくつかの態様において、抗体またはポリペプチドの重鎖定常領域は、以下の突然変異:A330P331からS330S331(野生型IgG2a配列に準拠するアミノ酸番号付け)を含有するヒト重鎖IgG2a定常領域を含む。いくつかの態様において、抗体またはポリペプチドは、以下の突然変異:E233F234L235からP233V234A235を含むIgG4の定常領域を含む。これらのアミノ酸位は、Kabatの番号付けに基づく。
【0013】
[0018]別の側面において、本発明は、抗体6Gまたは表3に示すその変異体の断片または領域をコードするポリヌクレオチドを含む、ポリヌクレオチド(単離されていてもよい)を提供する。1つの態様において、断片は、抗体6Gの軽鎖である。別の態様において、断片は抗体6Gの重鎖である。さらに別の態様において、断片は、抗体6Gの軽鎖および/または重鎖由来の1以上の可変領域を含有する。さらに別の態様において、断片は、抗体6Gの軽鎖および/または重鎖由来の1以上(すなわち1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ)の相補性決定領域(CDR)を含有する。
【0014】
[0019]別の側面において、本発明は、抗体6Gまたは表3に示すその変異体をコードするポリヌクレオチドを含む、ポリヌクレオチド(単離されていてもよい)である。いくつかの態様において、ポリヌクレオチドは、配列番号9および配列番号10に示すポリヌクレオチドのいずれかまたは両方を含む。
【0015】
[0020]別の側面において、本発明は、本明細書記載の抗体(抗体断片を含む)またはポリペプチドのいずれかをコードするポリヌクレオチドを提供する。
[0021]別の側面において、本発明は、本明細書に開示するポリヌクレオチドのいずれかを含む、ベクター(発現ベクターおよびクローニング・ベクターを含む)および宿主細胞を提供する。
【0016】
[0022]別の側面において、本発明は、本明細書記載の抗体のいずれかをコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞である。
[0023]別の側面において、本発明は、抗体6Gまたは表3に示すその変異体が結合している、Aβ1−40の複合体である。
【0017】
[0024]別の側面において、本発明は、本明細書記載の抗体またはポリペプチドのいずれかが結合している、Aβ1−40の複合体である。
[0025]別の側面において、本発明は、本明細書記載の抗体、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドのいずれかの有効量、および薬学的に許容しうる賦形剤を含む、薬剤組成物である。いくつかの態様において、抗体またはポリペプチドは、抗体6Gの1以上のCDRを含む。
【0018】
[0026]別の側面において、本発明は、抗体6Gを生成する方法であって、抗体6Gの産生を可能にする条件下で、宿主細胞またはその子孫を培養し、ここで宿主細胞は、抗体6Gをコードする発現ベクターを含む;そしていくつかの態様において、抗体6Gを精製することを含む、前記方法である。いくつかの態様において、発現ベクターは、配列番号9および配列番号10に示すポリヌクレオチド配列の一方または両方を含む。
【0019】
[0027]別の側面において、本発明は、適切な細胞において、抗体(単一の軽鎖または重鎖として別個に発現されることも可能であるし、あるいは1つのベクターから軽鎖および重鎖の両方が発現される)またはポリペプチドをコードする1以上のポリヌクレオチドを発現させ、一般的には、その後、目的の抗体またはポリペプチドを回収し、そして/または単離することによって、本明細書記載の抗体またはポリペプチドのいずれかを生成する方法を提供する。
【0020】
[0028]本発明はまた、アルツハイマー病、ならびに改変されたAβまたはβAPP発現、あるいはAβペプチドの集積に関連する他の疾患、例えばダウン症候群、パーキンソン病、多発脳梗塞性認知症、軽度認識障害、脳アミロイド血管症、うつ病、クロイツフェルト−ヤコブ病、レビー小体認知症、およびAIDSの発展を予防するか、治療するか、阻害するか、または遅延させるための方法も提供する。該方法は、本発明の抗体、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドを含む薬剤組成物の有効投薬量を、被験体に投与することを含む。
【0021】
[0029]本発明はまた、被験体において、アルツハイマー病、またはAβペプチドの集積と関連する他の疾患に関連する症状の発展を遅延させる方法であって、本発明の抗体、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドを含む薬剤組成物の有効投薬量を該被験体に投与することを含む、前記方法も提供する。
【0022】
[0030]本発明はまた、被験体において、アミロイド斑の形成および/またはアミロイド集積を抑制する方法であって、本発明の抗体、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドを含む薬剤組成物の有効投薬量を該被験体に投与することを含む、前記方法も提供する。いくつかの態様において、アミロイド斑は、被験体の脳(脳組織)にある。いくつかの態様において、アミロイド斑は脳血管系にある。他の態様において、アミロイド集積は循環系にある。
【0023】
[0031]本発明はまた、被験体において、アミロイド斑および/またはアミロイド集積を減少させる方法であって、本発明の抗体、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドを含む薬剤組成物の有効投薬量を該被験体に投与することを含む、前記方法も提供する。いくつかの態様において、アミロイド斑は、被験体の脳(脳組織)にある。いくつかの態様において、アミロイド斑は脳血管系にある。他の態様において、アミロイド集積は循環系にある。
【0024】
[0032]本発明はまた、被験体において、アミロイド斑および/またはアミロイド集積を除去するかまたは一掃する方法であって、本発明の抗体、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドを含む薬剤組成物の有効投薬量を該被験体に投与することを含む、前記方法も提供する。いくつかの態様において、アミロイド斑は、被験体の脳(脳組織)にある。いくつかの態様において、アミロイド斑は脳血管系にある。他の態様において、アミロイド集積は循環系にある。
【0025】
[0033]さらに、本発明は、組織におけるAβペプチドの集積を阻害するための方法であって、本発明の抗体またはポリペプチドと該組織を接触させることを含む、前記方
法を提供する。
【0026】
[0034]本発明はまた、被験体において、Aβペプチド(可溶性型、オリゴマー型および沈着型など)を減少させる方法であって、本発明の抗体、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドの有効量を該被験体に投与することを含む、前記方法も提供する。いくつかの態様において、Aβペプチドの集積が、脳において、阻害され(inhibited)、そして/または減少する(reduced)。いくつかの態様において、Aβペプチドの毒性効果が阻害され、そして/または減少する。したがって、本発明の方法を用いて、アルツハイマー病、ダウン症候群、パーキンソン病、多発脳梗塞性認知症、軽度認識障害、脳アミロイド血管症、うつ病、クロイツフェルト−ヤコブ病、またはレビー小体認知症などの、Aβペプチドの集積が存在するかまたは存在すると推測される、いかなる疾患を治療することも可能である。
【0027】
[0035]本発明はまた、アルツハイマー病などの、被験体におけるAβのアミロイド沈着物と関連する疾患に関連して、認識を改善するかまたは認識衰退を逆転させる方法であって、本発明の抗体、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドを含む、有効投薬量の薬剤組成物を該被験体に投与することを含む、前記方法も提供する。
【0028】
[0036]本明細書記載の抗体、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドのいずれも、本発明の方法に使用可能である。いくつかの態様において、抗体は抗体6Gである。
[0037]本発明の抗体およびポリペプチドをさらに、アルツハイマー病、ならびに改変されたAβまたはβAPP発現と関連する他の疾患、例えばダウン症候群およびAIDSの検出、診断および監視に用いることも可能である。該方法は、改変されたAβまたはβAPP発現を有すると推測される患者の検体を、本発明の抗体と接触させ、そしてAβまたはβAPPのレベルが、対照検体または比較検体のものと異なるかどうかを決定することを含む。いくつかの態様において、Aβの血清レベルを、抗Aβ抗体の投与前および投与後に測定し;そしてAβの血清レベルのいかなる増加も評価する。
【0029】
[0038]本発明の抗体またはポリペプチドいずれの投与も、当該技術分野に知られるいかなる手段によることも可能であり、この手段には:静脈内、皮下、吸入を介する、動脈内、筋内、心臓内、脳室内、非経口、クモ膜下内、および腹腔内が含まれる。投与は全身性、例えば静脈内であることも可能であるし、また限局性であることも可能である。これはまた、本発明のポリペプチドおよびポリヌクレオチドに一般的に当てはまる。
【0030】
[0039]別の側面において、本発明は、本明細書記載の1以上の組成物いずれかを含むキットおよび組成物を提供する。これらのキットは、一般的には適切なパッケージング中にあり、そして適切な使用説明書とともに提供され、本明細書記載の方法のいずれかに有用である。
発明の詳細な説明
[0046]本明細書に開示する本発明は、AβのC末端に結合する抗体およびポリペプチドを提供する。本発明はまた、これらの抗体および/またはポリペプチドをコードするポリヌクレオチドも提供する。本発明はまた、これらの抗体およびポリペプチドを作製し、そして用いる方法も提供する。
【0031】
[0047]本発明はまた、本明細書記載の抗体、ポリペプチド、あるいは該抗体またはポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む薬剤組成物の有効量を、被験体に投与することによって、被験体において、アルツハイマー病、ダウン症候群、多発脳梗塞性認知症、軽度認識障害、脳アミロイド血管症、うつ病、クロイツフェルト−ヤコブ病、およびレビー小体認知症などの、個体におけるβ−アミロイド沈着と関連する疾患を治療するか、または予防するための方法も提供する。
一般的な技術
[0048]本発明の実施は、別に示さない限り、当該技術分野の範囲内である、分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学および免疫学の慣用的技術を使用するであろう。こうした技術は:Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版(Sambrookら, 1989)Cold Spring Harbor Press; Oligonucleotide
Synthesis(M.J. Gait監修, 1984); Methods in
Molecular Biology, Humana Press; Cell Biology: A Laboratory Notebook(J.E. Cellis監修, 1998)Academic Press; Animal Cell Culture(R. I. Freshney監修, 1987); Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P. MatherおよびP.E. Roberts, 1998)Plenum Press; Cell and Tissue Culture: Laboratory Procedures(A. Doyle, J.B. Griffiths,およびD.G. Newell監修, 1993−1998)J. Wiley and Sons; Methods in Enzymology(Academic Press, Inc.); Handbook of Experimental Immunology(D.M. WeirおよびC.C. Blackwell監修); Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M. MillerおよびM.P. Calos監修, 1987); Current Protocols in Molecular Biology(F.M. Ausubelら監修, 1987); PCR: The Polymerase Chain Reaction, (Mullisら監修, 1994); Current Protocols in Immunology(J.E. Coliganら監修, 1991); Short Protocols in Molecular Biology(Wiley and Sons, 1999); Immunobiology(C.A. JanewayおよびP. Travers, 1997); Antibodies(P. Finch, 1997); Antibodies: a practical approach(D. Catty監修, IRL Press, 1988−1989); Monoclonal antibodies: a practical approach(P. ShepherdおよびC. Dean監修, Oxford University Press, 2000); Using antibodies: a laboratory manual(E. HarlowおよびD. Lane(Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1999); The Antibodies(M. ZanettiおよびJ.D. Capraら監修, Harwood Academic Publishers, 1995)などの文献に完全に説明されている。
定義
[0049]「抗体」は、免疫グロブリン分子の可変領域に位置する、少なくとも1つの抗原認識部位を通じて、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチド等の標的に特異的に結合可能な免疫グロブリン分子である。本明細書において、該用語は、損なわれていない(intact)ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体だけでなく、その断片(Fab、Fab’、F(ab’)、Fvなど)、一本鎖(ScFv)、その突然変異体、抗体部分を含む融合タンパク質、および抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の他の修飾立体配置いずれも含む。抗体は、IgG、IgA、またはIgM(またはそのサブクラス)などの、いかなるクラスの抗体も含み、そして抗体は、特定のクラスいずれかのものである必要はない。重鎖の定常ドメインの抗体アミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンを異なるクラスに割り当てることも可能である。5つの主要なクラスの免疫グロブリン:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMがあり、そしてこれらのいくつかを、さらにサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2に分けることも可能である。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、およびミューと呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造および三次元立体配置が周知である。
【0032】
[0050]本明細書において、「モノクローナル抗体」は、実質的に均質な抗体集団
から得た抗体を指し、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、少量存在しうる、ありうる天然存在突然変異を除いて、同一である。モノクローナル抗体は、単一の抗原性部位に対して向けられているため、非常に特異的である。さらに、典型的には、異なる決定基(エピトープ)に対して向けられる異なる抗体を含む、ポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して向けられる。修飾語句「モノクローナル」は、実質的に均質な抗体集団から得られるような抗体の特徴を示し、そして特定の方法いずれかによる抗体の産生が必要であるとは見なされないものとする。例えば、本発明にしたがって用いようとするモノクローナル抗体を、KohlerおよびMilstein, 1975, Nature, 256:495に最初に記載されたハイブリドーマ法によって、作製することも可能であるし、または米国特許第4,816,567号に記載されるものなどの組換えDNA法によって作製することも可能である。また、例えば、McCaffertyら, 1990, Nature, 348:552−554に記載される技術を用いて生成されたファージ・ライブラリーから、モノクローナル抗体を単離することもまた可能である。
【0033】
[0051]本明細書において、「ヒト化」抗体は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小限の配列を含有する、特異的キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、またはその断片(抗体のFv、Fab、Fab’、F(ab’)または他の抗原結合性サブ配列)である、非ヒト(例えばネズミ)抗体の型を指す。ヒト化抗体は、大部分、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であり、レシピエントの相補性決定領域(CDR)由来の残基が、所望の特異性、親和性、および能力を有するマウス、ラット、またはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDR由来の残基によって置き換えられている。いくつかの例において、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基が、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体、あるいは移入するCDRまたはフレームワーク配列のいずれにも見出されないが、抗体性能をさらに精緻化し、そして最適化するために含まれる残基を含むことも可能である。一般的に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、そして典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含むであろうし、ここで、CDR領域のすべてまたは実質的にすべてが、非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、そしてFR領域のすべてまたは実質的にすべてが、ヒト免疫グロブリン・コンセンサス配列のものである。ヒト化抗体は、最適にはまた、典型的にはヒト免疫グロブリンのものである、免疫グロブリン定常領域またはドメイン(Fc)の少なくとも一部を含むであろう。抗体は、WO99/58572に記載されるように修飾されたFc領域を有することも可能である。ヒト化抗体の他の型は、元来の抗体に関して改変されており、また、元来の抗体由来の1以上のCDRに「由来する」1以上のCDRとも称される、1以上のCDR(1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ)を有する。
【0034】
[0052]本明細書において、「ヒト抗体」は、ヒトによって産生された抗体のものに対応するアミノ酸配列を有し、そして/または当該技術分野に知られるか、または本明細書に開示する、ヒト抗体を作製する技術のいずれかを用いて作製されている、抗体を意味する。ヒト抗体のこの定義には、少なくとも1つのヒト重鎖ポリペプチドまたは少なくとも1つのヒト軽鎖ポリペプチドを含む抗体が含まれる。1つのこうした例は、ネズミ軽鎖およびヒト重鎖ポリペプチドを含む抗体である。当該技術分野に知られる多様な技術を用いて、ヒト抗体を産生することも可能である。1つの態様において、ヒト抗体は、ヒト抗体を発現するファージ・ライブラリーから選択される(Vaughanら, 1996, Nature Biotechnology, 14:309−314; Sheetsら, 1998, PNAS, (USA)95:6157−6162; HoogenboomおよびWinter, 1991, J. Mol. Biol., 227:381; Marksら, 1991, J. Mol. Biol., 222:581)。ヒト抗体はまた、トランスジェニック動物、例えば内因性免疫グロブリン遺伝子が、部分的に、または完全に不活性化されているマウスに、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を導入することによってもまた、作製可能である。このアプローチは、米国特許第5,545,807号;第5,545,806号;第5,569,825号;第5,625,
126号;第5,633,425号;および第5,661,016号に記載されている。あるいは、標的抗原に対して向けられる抗体を産生するヒトBリンパ球を不死化することによってヒト抗体を調製することも可能である(こうしたBリンパ球は個体から回収可能であるし、またはin vitroで免疫されていることも可能である)。例えば、Coleら, Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, p.77(1985); Boernerら, 1991, J. Immunol., 147(l):86−95;および米国特許第5,750,373号を参照されたい。
【0035】
[0053]本明細書において、用語「6G」および「抗体6G」は、交換可能に用いられ、配列番号11に示す重鎖アミノ酸配列および配列番号12に示す軽鎖アミノ酸配列を有する抗体を指す。重鎖および軽鎖の可変領域のアミノ酸配列を図1に示す。抗体6GのCDR部分(ChothiaおよびKabatのCDRを含む)を図1に図式的に示す。重鎖および軽鎖をコードするポリヌクレオチドを、配列番号13および配列番号14に示す。6Gの性質決定を実施例に示す。
【0036】
[0054]用語「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、本明細書において交換可能に用いられ、いかなる長さのアミノ酸のポリマーも指す。ポリマーは、直鎖であることもまたは分枝していることも可能であり、修飾アミノ酸を含むことも可能であり、そして非アミノ酸によって中断されていることも可能である。該用語はまた、天然に、または介入によって修飾されているアミノ酸ポリマーも含み;修飾には、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、あるいは他の操作または修飾いずれか、例えば標識構成要素を用いたコンジュゲート化がある。この定義内にやはり含まれるのは、例えば、1以上のアミノ酸類似体(例えば非天然アミノ酸等を含む)、ならびに当該技術分野に知られる他の修飾を含有するポリペプチドである。本発明のポリペプチドは、抗体に基づくため、ポリペプチドは、一本鎖または会合鎖として存在することも可能であることが理解される。
【0037】
[0055]本明細書において交換可能に用いられるような「ポリヌクレオチド」、または「核酸」は、いかなる長さのヌクレオチドのポリマーも指し、そしてDNAおよびRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチドまたは塩基、および/またはその類似体、あるいはDNAポリメラーゼまたはRNAポリメラーゼによってポリマーに取り込まれることも可能な基質いずれであることも可能である。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチドおよびその類似体などの修飾ヌクレオチドを含むことも可能である。存在する場合、ヌクレオチド構造に対する修飾を、ポリマーの組み立て前または後に与えることも可能である。非ヌクレオチド構成要素によって、ヌクレオチドの配列を中断することも可能である。標識構成要素とのコンジュゲート化によるなど、ポリヌクレオチドを重合後にさらに修飾することも可能である。他の種類の修飾には、例えば、「キャップ」、1以上の天然存在ヌクレオチドの類似体での置換、例えば非荷電連結(例えばメチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホアミデート、カバメートなど)および荷電連結(例えばホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)を用いるなどのヌクレオチド間修飾、タンパク質(例えばヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ポリL−リジンなど)などのペンダント部分を含有する修飾、挿入剤(intercalator)(例えばアクリジン、ソラレンなど)を用いる修飾、キレート剤(例えば金属、放射性金属、ホウ素、酸化金属など)を含有する修飾、アルキル化剤を含有する修飾、修飾連結を用いる修飾(例えばアルファ・アノマー核酸など)、ならびにポリヌクレオチド(単数または複数)の非修飾型を用いる修飾が含まれる。さらに、糖に通常存在するヒドロキシル基のいずれかを、例えばホスホネート基、リン酸基によって置換するか、標準的保護基によって保護するか、またはさらなるヌクレオチドへのさらなる連結に備えるため、活性化するか、あるいは固体支持体にコンジュゲート化することも可能である。5’および3’末端のOHをリン酸化するか、あるいはアミンまたは1〜20炭素原子の有機キャッピング基部分で置換することも可能である。他のヒドロキシルを標準的保護基に誘導体化することもまた可能である。ポリヌクレオチドはまた、
当該技術分野に一般的に知られるリボースまたはデオキシリボース糖の類似の型を含有することも可能であり、こうした型には、例えば、2’−−O−メチル−、2’−O−アリル−、2’−フルオロ−、または2’−アジド−リボース、炭素環式糖類似体、α−アノマー糖、アラビノース、キシロースまたはリキソースなどのエピマー糖、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環式類似体およびメチルリボシドなどの脱塩基性ヌクレオシド類似体が含まれる。1以上のホスホジエステル連結を、代替連結基によって置換することも可能である。これらの代替連結基には、限定されるわけではないが、ホスフェートがP(O)S(「チオエート」)、P(S)S(「ジチオエート」)、“(O)NR(「アミデート」)、P(O)R、P(O)OR’、COまたはCH(「ホルムアセチル」)(式中、各RまたはR’は、独立にHであるか、または場合によってエーテル(−O−)連結、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニルもしくはアラルジルを含有する、置換もしくは非置換アルキル(1〜20C)である)に置換されている態様が含まれる。ポリヌクレオチド中のすべての連結が同一である必要はない。前述の説明は、RNAおよびDNAを含めて、本明細書に言及するすべてのポリヌクレオチドに当てはまる。
【0038】
[0056]抗体の「可変領域」は、単独または組み合わせのいずれかの、抗体軽鎖の可変領域または抗体重鎖の可変領域を指す。重鎖および軽鎖の可変領域は各々、超可変領域としてもまた知られる3つの相補性決定領域(CDR)によって連結された、4つのフレームワーク領域(FR)からなる。各鎖中のCDRは、FRによって近接してともに保持され、そして他の鎖由来のCDRとともに、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する。CDRを決定するには、少なくとも2つの技術がある:(1)種間配列変動に基づくアプローチ(すなわちKabatら Sequences of Proteins of Immunological Interest, (第5版, 1991, National Institutes of Health, メリーランド州ベセスダ));および(2)抗原−抗体複合体の結晶学的研究に基づくアプローチ(Al−lazikaniら(1997)J. Molec. Biol. 273:927−948))。本明細書において、CDRは、いずれかのアプローチによるか、または両方のアプローチの組み合わせによって定義されるCDRを指すことも可能である。
【0039】
[0057]抗体の「定常領域」は、単独または組み合わせいずれかの、抗体軽鎖の定常領域または抗体重鎖の定常領域を指す。
[0058]抗体またはポリペプチドに「優先的に結合する」または「特異的に結合する」(本明細書において交換可能に用いられる)エピトープは、当該技術分野によく理解される用語であり、そしてこうした特異的結合または優先的結合を決定する方法もまた、当該技術分野に周知である。分子が、別の細胞または物質と反応するかまたは会合するよりも、特定の細胞または物質と、より頻繁に、より迅速に、より長い期間および/またはより高い親和性で反応するかまたは会合する場合、分子は「特異的結合」または「優先的結合」を示すと言う。抗体が、他の物質に結合するよりも、より高い親和性で、より高いアビディティーで、より容易に、そして/またはより長い期間、結合する場合、抗体は、標的に「特異的に結合する」かまたは「優先的に結合する」。例えば、Aβ1−40エピトープに特異的にまたは優先的に結合する抗体は、他のAβ1−40エピトープまたは非Aβ1−40エピトープに結合するよりも、より高い親和性で、より高いアビディティーで、より容易に、そして/またはより長い期間、このエピトープに結合する抗体である。この定義を読むことによって、例えば、第一の標的に特異的にまたは優先的に結合する抗体(あるいは部分またはエピトープ)は、第二の標的に特異的にまたは優先的に結合しても、またはしなくてもよいこともまた理解される。こうしたものとして、「特異的結合」または「優先的結合」は、必ずしも(含むことも可能であるが)排他的な結合を必要としない。必ずしもではないが、一般的に、結合への言及は優先的な結合を意味する。
【0040】
[0059]本明細書において、「実質的に純粋な」は、少なくとも50%純粋(すなわち混入物質不含)、より好ましくは少なくとも90%純粋、より好ましくは少なくとも95%純粋、より好ましくは少なくとも98%純粋、より好ましくは少なくとも99%純
粋である物質を指す。
【0041】
[0060]「宿主細胞」には、ポリヌクレオチド挿入物を取り込むベクター(単数または複数)のレシピエントであることが可能であるか、またはレシピエントであったことがある、個々の細胞または細胞培養物が含まれる。宿主細胞には、単一宿主細胞の子孫が含まれ、そして天然の、偶発的な、または故意の突然変異のため、子孫は、必ずしも、元来の親細胞に(形態において、またはゲノムDNA相補体において)完全に同一でなくてもよい。宿主細胞には、本発明のポリヌクレオチド(単数または複数)で、in vivoでトランスフェクションされた細胞が含まれる。
【0042】
[0061]用語「Fc領域」は、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するよう用いられる。「Fc領域」は、天然配列Fc領域または変異体Fc領域であることも可能である。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は多様であることも可能であるが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、通常、Cys226位、またはPro230位のアミノ酸残基から、そのカルボキシル末端に広がると定義される。Fc領域中の残基の番号付けは、KabatにおけるようにEU指標のものである。Kabatら, Sequences of Proteins of Imunological Interest, 第5版 Public Health Service, National Institutes of Health, メリーランド州ベセスダ, 1991。免疫グロブリンのFc領域は、一般的に、2つの定常ドメイン、CH2およびCH3を含む。
【0043】
[0062]本明細書において、「Fc受容体」および「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体を指す。好ましいFcRは、天然配列ヒトFcRである。さらに、好ましいFcRは、IgG抗体(ガンマ受容体)に結合するものであり、そしてFcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIサブクラスの受容体を含み、これらの受容体のアレル変異体および選択的スプライシング型が含まれる。FcγRII受容体には、FcγRIIA(「活性化受容体」)およびFcγRIIB(「阻害性受容体」)が含まれ、これらは主に細胞質ドメインが異なる、類似のアミノ酸配列を有する。FcRは、RavetchおよびKinet, 1991, Ann. Rev. Immunol., 9:457−92; Capelら, 1994, Immunomethods, 4:25−34;およびde Haasら, 1995, J. Lab. Clin. Med., 126:330−41に概説される。「FcR」には、胎児への母性IgGのトランスファーに関与する新生児受容体、FcRnもまた含まれる(Guyerら, 1976, J. Immunol., 117:587;およびKimら, 1994, J. Immunol., 24:249)。
【0044】
[0063]「補体依存性細胞傷害」および「CDC」は、補体の存在下の標的の溶解を指す。補体活性化経路は、同族(cognate)抗原と複合体化した分子(例えば抗体)への補体系の第一の構成要素(C1q)の結合によって開始される。補体活性化を評価するため、例えばGazzano−Santoroら, J. Immunol. Methods, 202:163(1996)に記載されるような、CDCアッセイを行ってもよい。
【0045】
[0064]「機能性Fc領域」は、天然配列Fc領域の少なくとも1つのエフェクター機能を所持する。典型的な「エフェクター機能」には、C1q結合;補体依存性細胞傷害(CDC);Fc受容体結合;抗体依存性細胞仲介性細胞傷害(ADCC);食作用;細胞表面受容体(例えばB細胞受容体;BCR)の下方制御などが含まれる。こうしたエフェクター機能は、一般的に、Fc領域が結合性ドメイン(例えば抗体可変ドメイン)と組み合わされることを必要とし、そしてこうした抗体エフェクター機能を評価するために当該技術分野に知られる多様なアッセイを用いて評価可能である。
【0046】
[0065]「天然配列Fc領域」は、天然に見られるFc領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。「変異体Fc領域」は、少なくとも1つのアミノ酸修飾のため、天然配列Fc領域のものと異なるが、なお天然配列Fc領域の少なくとも1つのエフェクター機能を保持する、アミノ酸配列を含む。好ましくは、変異体Fc領域は、天然配列Fc領域に比較して、または親ポリペプチドのFc領域に比較して、少なくとも1つのアミ
ノ酸置換を、例えば、天然配列Fc領域において、または親ポリペプチドのFc領域において、約1〜約10のアミノ酸置換を、そして好ましくは約1〜約5のアミノ酸置換を有する。本明細書の変異体Fc領域は、好ましくは、天然配列Fc領域および/または親ポリペプチドFc領域と、少なくとも約80%の配列同一性、そして最も好ましくは少なくとも約90%の配列同一性、より好ましくは少なくとも95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%の配列同一性を所持するであろう。
【0047】
[0066]本明細書において、「抗体依存性細胞仲介性細胞傷害」および「ADCC」は、Fc受容体(FcR)を発現する非特異的細胞傷害性細胞(例えばナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、およびマクロファージ)が、標的細胞上に結合した抗体を認識し、そして続いて、標的細胞の溶解を引き起こす、細胞仲介性反応を指す。米国特許第5,500,362号または第5,821,337号に記載されるものなどの、in vitro ADCCアッセイを用いて、目的の分子のADCC活性を評価することも可能である。こうしたアッセイに有用なエフェクター細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)およびNK細胞が含まれる。あるいは、またはさらに、例えば、Clynesら, 1998, PNAS(USA), 95:652−656に開示されるものなどの動物モデルにおいて、目的の分子のADCC活性をin vivoで評価することも可能である。
【0048】
[0067]本明細書において、薬剤、化合物、または薬剤組成物の「有効投薬量」または「有効量」は、有益な結果または望ましい結果を達成するのに十分な量である。予防的使用に関して、有益な結果または望ましい結果には、リスクを除去するかまたは減少させること、重症度を減少させること、あるいは疾患の生化学的、組織学的および/または行動的症状、その合併症、および疾患発展中に提示される中間の病的表現型を含めて、疾患の発生を遅延させることなどの結果が含まれる。療法的使用に関して、有益な結果または望ましい結果には、アミロイド斑の形成を阻害するか(inhibiting)、抑制するか(suppressing)、または減少させること(reducing)、アミロイド斑を減少させ(reducing)、除去し(removing)、一掃すること(clearing)、認識を改善すること、認識衰退を逆転させるかまたは遅延させること、体液中に循環する可溶性Aβペプチドを隔離するかまたは増加させること、その合併症、および疾患発展中に提示される中間の病的表現型を含めて、疾患から生じる1以上の症状(生化学的、組織学的および/または行動的症状)を減少させること、疾患に罹患した対象の生活の質を増加させること、疾患の治療に必要な他の薬剤の用量を減少させること、別の薬剤の効果を増進すること、疾患の進行を遅延させること、および/または患者の生存を延長することなどの臨床的結果が含まれる。1以上の投与で、有効投薬量を投与することも可能である。本発明の目的のため、薬剤、化合物、または薬剤組成物の有効投薬量は、直接または間接的のいずれかで、予防的治療または療法的治療を達成するのに十分な量である。臨床的関連で理解されるように、薬剤、化合物、または薬剤組成物の有効投薬量は、別の薬剤、化合物、または薬剤組成物と組み合わせて達成してもよいし、また組み合わせなくてもよい。したがって、「有効投薬量」は、1以上の療法剤の投与と関連して見なされることも可能であり、そして1以上の他の剤と組み合わせて、望ましい結果が達成可能であるかまたは達成される場合、単一の剤が、有効量で投与されたと見なすことも可能である。
【0049】
[0068]本明細書において、「治療」または「治療する」は、臨床的結果を含む有益な結果または望ましい結果を得るためのアプローチである。本発明の目的のため、有益な臨床的結果または望ましい臨床的結果には、限定されるわけではないが、1以上の以下が含まれる:アミロイド斑の形成を阻害するか、抑制するか、または減少させること、アミロイド斑を減少させ、除去し、または一掃すること、認識を改善すること、認識衰退を逆転させるかまたは遅延させること、体液中に循環する可溶性Aβペプチドを隔離すること、組織(脳など)中の(可溶性、オリゴマー性および沈着したものを含む)Aβペプチドを減少させること、脳中のAβペプチドの集積を阻害し、遅延させ、そして/または減少させること、組織(脳など)中のAβペプチドの毒性効果を阻害し、遅延させ、そして
/または減少させること、疾患から生じる症状を減少させること、疾患に罹患した対象の生活の質を増加させること、疾患の治療に必要な他の薬剤の用量を減少させること、疾患の進行を遅延させること、および/または患者の生存を延長すること。
【0050】
[0069]本明細書において、アルツハイマー病の発展を「遅延させること」は、疾患の発展を延期し、妨害し、減速し、遅らせ、固定し、そして/または先送りにすることを意味する。この遅延は、治療中の疾患および/または個体の病歴に応じて、多様な長さの時間であることも可能である。当業者に明らかであるように、十分なまたは有意な遅延は、事実上、個体が疾患を発展させない、予防を含むことも可能である。アルツハイマー病の発展を「遅延させる」方法は、該方法を用いない場合に比較して、所定の時間枠で、疾患が発展する可能性を減少させ、そして/または所定の時間枠で、疾患の度合いを減少させる方法である。こうした比較は、典型的には、統計的に有意な数の被験体を用いた、臨床的研究に基づく。
【0051】
[0070]アルツハイマー病の「発展(development)」は、個体内のアルツハイマー病の開始および/または進行を意味する。アルツハイマー病の発展は、本明細書に記載するような標準的な臨床的技術を用いて、検出可能でありうる。しかし、発展はまた、最初には検出不能であることも可能な疾患進行も指す。本発明の目的のため、進行は、疾患状態の生物学的経過を指し、この場合、標準的神経学的検査、または患者インタビューによって決定されるようなものであり、あるいはより特殊化された試験によって決定されることも可能である。これらの多様な診断試験には、限定されるわけではないが、神経画像化、血清または脳脊髄液中の特定のタンパク質(例えばアミロイド・ペプチドおよびTau)レベルの改変の検出、コンピュータ断層撮影(CT)、および磁気共鳴画像化(MRI)が含まれる。「発展」には、発生、再発、および開始が含まれる。本明細書において、アルツハイマー病の「開始」または「発生」には、最初の開始および/または再発が含まれる。
【0052】
[0071]本明細書において、「組み合わせ」投与には、同時投与および/または異なる時点の投与が含まれる。組み合わせ投与はまた、共配合物としての投与または別個の組成物の投与も含む。本明細書において、組み合わせ投与は、同時に、そして/または別個に起こることも可能である、抗Aβ抗体および別の剤を個体に投与する、いかなる状況を含むことも意味する。本明細書においてさらに論じるように、抗Aβ抗体および他の剤を、異なる投薬頻度または間隔で、投与することも可能であることが理解される。例えば、抗Aβ抗体を毎週投与し、一方、他の剤をより低頻度で投与することも可能である。同じ投与経路または異なる投与経路を用いて、抗Aβ抗体および他の剤を投与することも可能であることが理解される。
【0053】
[0072]「生物学的試料」は、個体から得られる多様な試料種を含み、そして診断アッセイまたは監視アッセイにおいて使用可能である。この定義は、血液および生物学的起源の他の液体試料、固体組織試料、例えば生検検体または組織培養物またはそれに由来する細胞、およびその子孫を含む。この定義にはまた、獲得後、試薬での処理、可溶化、あるいはタンパク質またはポリヌクレオチドなどの特定の構成要素に関する濃縮、あるいは切片作製目的のための半固体または固体マトリックス中の包埋によるなどの、いかなる方法で操作されている試料も含む。用語「生物学的試料」は、臨床的試料を含み、そしてまた、培養中の細胞、細胞上清、細胞溶解物、血清、血漿、体液、および組織試料も含む。
【0054】
[0073]「被験体」(あるいは「個体」とも称される)は、哺乳動物、より好ましくはヒトである。哺乳動物にはまた、限定されるわけではないが、農場動物(ウシなど)、スポーツ用動物、ペット(ネコ、イヌ、ウマなど)、霊長類、マウスおよびラットもまた含まれる。
【0055】
[0074]本明細書において、「ベクター」は、宿主細胞において、1以上の目的の遺伝子(単数または複数)または配列(単数または複数)を送達し、そして好ましくは発現することが可能な構築物を意味する。ベクターの例には、限定されるわけではないが、ウイルスベクター、裸のDNAまたはRNA発現ベクター、プラスミド、コスミドまたは
ファージベクター、陽イオン性凝縮剤と会合したDNAまたはRNA発現ベクター、リポソーム中に被包されたDNAまたはRNA発現ベクター、および産生細胞(producer cells)などの特定の真核細胞が含まれる。
【0056】
[0075]本明細書において、「発現調節配列」は、核酸の転写を指示する核酸配列を意味する。発現調節配列は、恒常性または誘導性プロモーターなどのプロモーター、あるいはエンハンサーであることも可能である。発現調節配列は、転写しようとする核酸配列に機能可能であるように連結されている。
【0057】
[0076]本明細書において、「薬学的に許容しうるキャリアー」には、活性成分と組み合わせた際、該成分が生物学的活性を保持するのを可能にし、そして被験体の免疫系と非反応性であるいかなる物質も含まれる。例には、限定されるわけではないが、リン酸緩衝生理食塩水溶液、水、油/水エマルジョンなどのエマルジョン、および多様な種類の湿潤剤などの標準的な薬剤キャリアーがいずれも含まれる。エアロゾルまたは非経口投与に好ましい希釈剤は、リン酸緩衝生理食塩水または正常(0.9%)生理食塩水である。周知の慣用的方法によって、こうしたキャリアーを含む組成物を配合する(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 第18版,
A. Gennaro監修, Mack Publishing Co., ペンシルバニア州イーストン, 1990;およびRemington, The Science and Practice of Pharmacy 第20版 Mack Publishing, 2000を参照されたい)。
【0058】
[0077]用語「kon」は、本明細書において、抗体の抗原への会合に関する、結合速度定数(on rate constant)を指すよう意図される。
[0078]用語「koff」は、本明細書において、抗体/抗原複合体からの抗体の解離に関する、解離速度定数(off rate constant)を指すよう意図される。
【0059】
[0079]用語「K」は、本明細書において、抗体−抗原相互作用の平衡解離定数を指すよう意図される。
組成物および組成物を作製する方法
抗β−アミロイド抗体およびポリペプチド
[0080]本発明は、AβペプチドのC末端に結合する抗体を提供する。本発明は、Aβ1−40、Aβ1−42、およびAβ1−43に結合する抗体またはポリペプチドを提供する。いくつかの態様において、抗体またはポリペプチドは、Aβ1−42およびAβ1−43への結合よりも高い親和性でAβ1−40に結合する。いくつかの態様において、抗体は、Aβ1−36、Aβ1−37、Aβ1−38、およびAβ1−39に結合する。いくつかの態様において、抗体は、Aβ22−35に結合する。いくつかの態様において、抗体は、Aβ28−40に結合する。いくつかの態様において、抗体またはポリペプチドは、アミノ酸25−34および40を含むAβ1−40上のエピトープに結合する。
【0060】
[0081]本発明はまた、本明細書記載の抗体またはポリペプチド(抗体6Gおよび表3に示すその変異体、または抗体6Gおよび表3に示すその変異体由来のポリペプチドなど);あるいは本明細書記載のポリヌクレオチドのいずれかを含む、薬剤組成物を含めた組成物も含む。本明細書において、組成物は、Aβ1−40のC末端に結合する1以上の抗体またはポリペプチド(抗体であってもまたはなくてもよい)、および/またはAβ1−40のC末端に結合する1以上の抗体またはポリペプチドをコードする配列を含む1以上のポリヌクレオチドを含む。これらの組成物は、当該技術分野に周知の、緩衝剤を含む薬学的に許容しうる賦形剤などの、適切な賦形剤をさらに含むことも可能である。
【0061】
[0082]本発明の抗体およびポリペプチドは、以下の特性のいずれか(1以上)によって特徴付けられる:(a)Aβ1−40、Aβ1−42、およびAβ1−43に結合する;(b)Aβ1−40、Aβ1−42、およびAβ1−43に結合するが、Aβ1−42およびAβ1−43に対してより、Aβ1−40により高い結合親和性で結合する、;(c)アミノ酸25−34および40を含む、Aβ1−40上のエピトープに結合する
;(d)Aβ1−36、Aβ1−37、Aβ1−38、およびAβ1−39に結合するが、Aβ1−40への結合に比較すると、より低い親和性である;(e)約1μM未満のKでAβ22−37に結合する;(f)Aβ22−35に結合する;(g)Aβ28−40に結合する;(h)細胞中で発現されるAPPには結合しない;(i)被験体におけるアミロイド斑の形成を抑制する;(j)被験体におけるアミロイド斑を減少させる;(k)アルツハイマー病または他のAβ集積関連疾患(例えばダウン症候群、パーキンソン病、多発脳梗塞性認知症、軽度認識障害、脳アミロイド血管症、うつ病、クロイツフェルト−ヤコブ病、レビー小体認知症)の1以上の症状を治療するか、予防するか、改善する;(l)認識機能(cognitive function)を改善する。本発明の抗体およびポリペプチドはまた、本明細書記載の損なわれたエフェクター機能を有することも可能である。損なわれたエフェクター機能を有する抗体およびポリペプチドは、他の報告される抗Aβ抗体と対照的に、望ましい安全性プロフィールを示すことも可能である。例えば、本発明の組成物は、有意なまたは許容しえないレベルの:脳血管系における出血(脳出血);髄膜脳炎(磁気共鳴スキャンの変化を含む);脳脊髄液中の上昇した白血球数;中枢神経系炎症のいずれか1以上を引き起こさないことも可能である。
【0062】
[0083]したがって、本発明は、以下のいずれか、または以下のいずれかを含む組成物(薬剤組成物を含む)を提供する:(a)抗体6Gまたは表3に示すその変異体;(b)抗体6Gまたは表3に示すその変異体の断片または領域;(c)抗体6Gまたは表3に示すその変異体の軽鎖;(d)抗体6Gまたは表3に示すその変異体の重鎖;(e)抗体6Gまたは表3に示すその変異体の軽鎖および/または重鎖由来の1以上の可変領域(単数または複数);(f)抗体6Gまたは表3に示すその変異体の1以上のCDR(単数または複数)(1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのCDR);(g)抗体6Gの重鎖由来のCDR H3;(h)抗体6Gまたは表3に示すその変異体の軽鎖由来のCDR L3;(i)抗体6Gまたは表3に示すその変異体の軽鎖由来の3つのCDR;(j)抗体6Gまたは表3に示すその変異体の重鎖由来の3つのCDR;(k)抗体6Gまたは表3に示すその変異体の、軽鎖由来の3つのCDRおよび重鎖由来の3つのCDR;および(l)(b)〜(k)のいずれか1つを含む抗体。本発明はまた、上記のいずれか1以上を含むポリペプチドも提供する。
【0063】
[0084]抗体6GのCDR部分(ChothiaおよびKabatのCDRを含む)を図1に図式的に示す。CDR領域の決定は、十分に当該技術分野の技術範囲内である。いくつかの態様において、CDRは、KabatおよびChothiaのCDRの組み合わせ(「組み合わせCDR」または「拡張CDR」とも称される)であってもよいことが理解される。いくつかの態様において、CDRはKabat CDRである。他の態様において、CDRはChothia CDRである。言い換えると、1より多いCDRを含む態様において、CDRは、Kabat、Chothia、組み合わせCDR、またはこれらの組み合わせのいずれであることも可能である。
【0064】
[0085]いくつかの態様において、本発明は、6Gまたは表3に示すその変異体の少なくとも1つのCDR、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または6つすべてのCDRに実質的に同一である、少なくとも1つのCDR、少なくとも2つ、少なくとも3つ、または少なくとも4つ、少なくとも5つ、または6つすべてのCDRを含む、ポリペプチド(抗体であってもまたはなくてもよい)を提供する。他の態様には、6Gの、または6Gに由来する、少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのCDRに実質的に同一である、少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのCDR(単数または複数)を有する抗体が含まれる。いくつかの態様において、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのCDR(単数または複数)は、6Gまたは表3に示すその変異体の少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのCDRに、少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である。本発明の目的のため、6Gまたは表3に示すその変異体に比較して、活性の度合いは多様であることも可能である(より高くてもまたは低くてもよい)が、結合特異性および/または全体的な活性は、一般的に保持さ
れる。
【0065】
[0086]本発明はまた、以下のいずれかを有する、6Gまたは表3に示すその変異体のアミノ酸配列を含むポリペプチド(抗体であってもまたなくてもよい)も提供する:6Gまたは表3に示すその変異体の配列の少なくとも5つの隣接アミノ酸、少なくとも8つの隣接アミノ酸、少なくとも約10の隣接アミノ酸、少なくとも約15の隣接アミノ酸、少なくとも約20の隣接アミノ酸、少なくとも約25の隣接アミノ酸、少なくとも約30の隣接アミノ酸、ここで、アミノ酸の少なくとも3つは、6G(図1)または表3に示すその変異体の可変領域由来である。1つの態様において、可変領域は、6Gの軽鎖由来である。別の態様において、可変領域は6Gの重鎖由来である。典型的なポリペプチドは、6Gの重鎖および軽鎖の可変領域両方に由来する隣接アミノ酸(上述の長さ)を有する。別の態様において、5つ(以上)の隣接アミノ酸は、図1に示す6Gの相補性決定領域(CDR)由来である。いくつかの態様において、隣接アミノ酸は、6Gの可変領域由来である。
【0066】
[0087]本発明の抗体およびポリペプチドの結合親和性は多様であることも可能であり、そして以下に記載する典型的な態様のように、特定の値または範囲である必要はない(が、こうした値または範囲であることも可能である)。Aβ1−40への本発明の抗体およびポリペプチドの結合親和性は、約0.10〜約0.80nM、約0.15〜約0.75nMおよび約0.18〜約0.72nMであることも可能である。いくつかの態様において、結合親和性は、約2pM、約5pM、約10pM、約15pM、約20pM、約40pMであるか、または約40pMを超える。1つの態様において、結合親和性は、約2pM〜22pMの間である。他の態様において、結合親和性は、約10nM、約5nM、約4nM、約3nM、約2nM、約1nM、約900pM、約800pM、約700pM、約600pM、約500pM、約400pM、約300pM、約200pM、約150pM、約100pM、約90pM、約80pM、約70pM、約60pM、約50pM、約40pM、約30pM、約10pM未満である。いくつかの態様において、結合親和性は、約10nMである。他の態様において、結合親和性は、約10nM未満、約50nM未満、約100nM未満、約150nM未満、約200nM未満、約250nM未満、約500nM未満、または約1000nM未満である。他の態様において、結合親和性は、約5nM未満である。他の態様において、結合親和性は、約1nM未満である。他の態様において、結合親和性は、約0.1nMまたは約0.07nMである。他の態様において、結合親和性は約0.1nM未満または約0.07nM未満である。他の態様において、結合親和性は、約10nM、約5nM、約1nM、約900pM、約800pM、約700pM、約600pM、約500pM、約400pM、約300pM、約200pM、約150pM、約100pM、約90pM、約80pM、約70pM、約60pM、約50pM、約40pM、約30pM、約10pMのいずれかから、約2pM、約5pM、約10pM、約15pM、約20pM、または約40pMのいずれかまでである。いくつかの態様において、結合親和性は、約10nM、約5nM、約1nM、約900pM、約800pM、約700pM、約600pM、約500pM、約400pM、約300pM、約200pM、約150pM、約100pM、約90pM、約80pM、約70pM、約60pM、約50pM、約40pM、約30pM、約10pMのいずれかである。さらに他の態様において、結合親和性は、約2pM、約5pM、約10pM、約15pM、約20pM、約40pMであるか、または約40pMを超える。
【0067】
[0088]本発明の抗体およびポリペプチドはまた、Aβ1−36、Aβ1−37、Aβ1−38、Aβ1−39、Aβ1−42、およびAβ1−43のいずれか1以上に結合してもよいが、これらペプチドのいずれか1以上への結合親和性は、Aβ1−40への結合親和性未満である。いくつかの態様において、Aβ1−36、Aβ1−37、Aβ1−38、Aβ1−39、Aβ1−42、およびAβ1−43のいずれか1以上に対する抗体またはポリペプチドのKは、Aβ1−40に対するKの少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約80倍、少なくとも約100倍、少なくとも約150倍、少
なくとも約200倍、または少なくとも約250倍である。
【0068】
[0089]本発明はまた、これらの抗体またはポリペプチドのいずれかを作製する方法も提供する。本発明の抗体は、当該技術分野に知られる方法によって作製可能である。例えば、Aβペプチド(免疫原としてのAβ25−40など)で哺乳動物を免疫することによって、抗体を生成してもよい。抗体のタンパク質分解的分解または他の分解によって、上述のような組換え法(すなわち単一または融合ポリペプチド)によって、または化学合成によって、ポリペプチドを産生することも可能である。抗体のポリペプチド、特に約50アミノ酸までの、より短いポリペプチドは、好適に、化学合成によって作製される。化学合成の方法は、当該技術分野に知られ、そして商業的に利用可能である。例えば、固相法を使用した自動化ポリペプチド合成装置によって、抗体を産生することも可能である。米国特許第5,807,715号;第4,816,567号;および第6,331,415号もまた、参照されたい。
【0069】
[0090]別の代替法において、当該技術分野に周知の方法を用いて、抗体を組換え的に産生することも可能である。1つの態様において、ポリヌクレオチドは、配列番号9および配列番号10に示す抗体6Gの重鎖および/または軽鎖の可変領域をコードする配列を含む。別の態様において、配列番号9および配列番号10に示すヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを、発現または増殖のため、1以上のベクターにクローニングする。目的の抗体をコードする配列を、宿主細胞においてベクター中で維持することも可能であるし、そして次いで、宿主細胞を増殖させ、そして将来の使用のために凍結することも可能である。ベクター(発現ベクターを含む)および宿主細胞を、本明細書にさらに記載する。
【0070】
[0091]本発明はまた、6Gなどの本発明の抗体の一本鎖可変領域断片(「scFv」)も含む。一本鎖可変領域断片は、短い連結ペプチドを用いることによって、軽鎖および/または重鎖の可変領域を連結することにより、作製される。Birdら(1988) Science 242:423−426。連結ペプチドの例は、一方の可変領域のカルボキシ末端および他方の可変領域のアミノ末端間の、およそ3.5nmを架橋する、(GGGGS)である。他の配列のリンカーが設計され、そして用いられてきている。Birdら(1988)。次に、薬剤の付着または固体支持体への付着などの、さらなる機能のため、リンカーを修飾することも可能である。組換え的または合成的のいずれかで、一本鎖変異体を産生することも可能である。scFvの合成的産生のため、自動化合成装置を使用してもよい。scFvの組換え産生のため、scFvをコードするポリヌクレオチドを含有する適切なプラスミドを、酵母、植物、昆虫または哺乳動物細胞などの真核細胞、あるいは大腸菌(E. coli)などの原核細胞いずれかの、適切な宿主細胞に導入することも可能である。ポリヌクレオチドの連結などのルーチンの操作によって、目的のscFvをコードするポリヌクレオチドを作製することも可能である。当該技術分野に知られる標準的タンパク質精製技術を用いて、生じたscFvを単離することも可能である。
【0071】
[0092]一本鎖抗体の他の型、例えばディアボディもまた含まれる。ディアボディは、VHドメインおよびVLドメインが、単一ポリペプチド鎖上に発現されるが、同じ鎖上の2つのドメイン間の対形成を可能にするには短すぎるリンカーが用いられ、それによって、ドメインが別の鎖の相補的ドメインと対形成するように強いられて、そして2つの抗原結合部位が生成される、二価の二重特異性抗体である(例えば、Holliger,
P.ら(1993)Proc. Natl. Acad Sci. USA 90:6444−6448; Poljak, R.J.ら(1994)Structure 2:1121−1123を参照されたい)。
【0072】
[0093]例えば、本明細書に開示する抗体を用いて、二重特異性抗体、少なくとも2つの異なる抗原への結合特異性を有するモノクローナル抗体を調製することも可能である。二重特異性抗体を作製する方法が、当該技術分野に知られる(例えば、Sureshら, 1986, Methods in Enzymology 121:210を参照されたい)。伝統的には、二重特異性抗体の組換え産生は、2つの重鎖が、異なる特異
性を有する、2つの免疫グロブリン重鎖−軽鎖対の同時発現に基づいた(MillsteinおよびCuello, 1983, Nature 305, 537−539)。
【0073】
[0094]二重特異性抗体を作製するための1つのアプローチにしたがって、望ましい結合特異性(抗体−抗原組み合わせ部位)を持つ抗体可変ドメインを、免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合させる。融合は、好ましくは、ヒンジの少なくとも一部、CH2領域およびCD3領域を含む、免疫グロブリン重鎖定常ドメインと行われる。軽鎖結合に必要な部位を含有する、第一の重鎖定常領域(CH1)が、融合体の少なくとも一方に存在することが好ましい。免疫グロブリン重鎖融合体、および望ましい場合、免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAを、別個の発現ベクター内に挿入し、そして適切な宿主生物に、同時トランスフェクションする。これは、構築中に用いられる3つのポリペプチド鎖が等しくない比である場合に最適な収量が提供される態様において、3つのポリペプチド断片の相互の比率を調整する際に高い柔軟性を提供する。しかし、少なくとも2つのポリペプチド鎖の発現が等しい比である場合に高い収量を生じるか、または比率が特に重要でない場合、1つの発現ベクター中に2つまたは3つすべてのポリペプチドのコード配列を挿入することが可能である。
【0074】
[0095]1つのアプローチにおいて、二重特異性抗体は、一方のアームにおける、第一の結合特異性を持つハイブリッド免疫グロブリン重鎖、および他方のアームにおける、ハイブリッド免疫グロブリン重鎖−軽鎖対(第二の結合特異性を提供する)で構成される。二重特異性分子の半分のみに免疫グロブリン軽鎖を含む、この非対称構造は、望ましくない免疫グロブリン鎖の組み合わせから、望ましい二重特異性化合物を分離するのを容易にする。このアプローチは、PCT公報第WO 94/04690号、1994年3月3日公表に記載されている。
【0075】
[0096]2つの共有結合抗体を含む、へテロコンジュゲート抗体もまた、本発明の範囲内にある。こうした抗体は、望ましくない細胞に、免疫系の細胞をターゲティングするため(米国特許第4,676,980号)、そしてHIV感染の治療のため(PCT出願公報第WO 91/00360号および第WO 92/200373号; EP 03089)、用いられてきている。好適な架橋法いずれを用いて、ヘテロコンジュゲート抗体を作製することも可能である。適切な架橋剤および技術が、当該技術分野に周知であり、そして米国特許第4,676,980号に記載されている。
【0076】
[0097]架橋剤を伴うものを含めて、合成タンパク質化学反応の既知の方法を用いて、キメラ抗体またはハイブリッド抗体を、in vitroで調製することも可能である。例えば、ジスルフィド交換反応を用いて、またはチオエーテル結合を形成することによって、免疫毒素を構築することも可能である。この目的に適した試薬の例には、イミノチオレートおよびメチル−4−メルカプトブチルイミデートが含まれる。
【0077】
[0098]当該技術分野に知られる方法いずれを用いて、抗体6Gの1以上のCDRまたは抗体6G由来の1以上のCDRを含むヒト化抗体を作製することも可能である。例えば、4つの一般的な工程を用いて、モノクローナル抗体をヒト化することも可能である。これらは:(1)出発抗体軽鎖および重鎖の可変ドメインのヌクレオチド配列および予測されるアミノ酸配列の決定、(2)ヒト化抗体の設計、すなわちヒト化プロセス中、どの抗体フレームワーク領域を用いるかの決定、(3)実際のヒト化方法論/技術、ならびに(4)ヒト化抗体のトランスフェクションおよび発現である。例えば、米国特許第4,816,567号;第5,807,715号;第5,866,692号;第6,331,415号;第5,530,101号;第5,693,761号;第5,693,762号;第5,585,089号;第6,180,370号;第5,225,539号;第6,548,640号を参照されたい。
【0078】
[0099]組換えヒト化型において、Fcγ部分を修飾して、Fcγ受容体および補体免疫系の相互作用を回避することも可能である。この種の修飾は、ケンブリッジ大学病理学部のMike Clark博士によって設計され、そしてこうした抗体を調製するための技術は、WO 99/58572、1999年11月18日公表に記載されている。
【0079】
[0100]例えば、抗体を臨床試験およびヒトにおける治療に用いる場合、免疫応答
を回避するため、ヒト定常領域に、より似るように、定常領域を操作することも可能である。例えば、米国特許第5,997,867号および第5,866,692号を参照されたい。
【0080】
[0101]本発明は、抗体6Gへの修飾を含み、これには、その特性に有意に影響を及ぼさない、機能的に同等な抗体、および増進したかまたは減少した活性および/または親和性を有する変異体が含まれる。例えば、抗体6Gのアミノ酸配列を突然変異させて、Aβ1−40ペプチドに対する望ましい結合親和性を持つ抗体を得ることも可能である。ポリペプチドの修飾は、当該技術分野においてルーチンで実行され、そして本明細書に詳細に記載する必要はない。ポリペプチドの修飾を実施例に例示する。修飾ポリペプチドの例には、アミノ酸残基の保存的置換を持つポリペプチド、機能的活性を有意に有害に変化させない、アミノ酸の1以上の欠失または付加、あるいは化学的類似体の使用が含まれる。
【0081】
[0102]アミノ酸配列挿入には、1残基から100以上の残基を含有するポリペプチドの長さの範囲のアミノ末端および/またはカルボキシル末端融合、ならびに単一または多数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。末端挿入の例には、N末端メチオニル残基を持つ抗体、またはエピトープタグに融合した抗体が含まれる。抗体分子の他の挿入変異体には、抗体のN末端またはC末端への、酵素、または抗体の血清半減期を増加させるポリペプチドの融合が含まれる。
【0082】
[0103]置換変異体では、抗体分子の少なくとも1つのアミノ酸残基が除去され、そして異なる残基がその代わりに挿入されている。置換突然変異誘発に最も関心が持たれる部位には、超可変領域が含まれるが、FR改変もまた意図される。「保存的置換」の見出し下、表1に保存的置換を示す。こうした置換が生物学的活性の変化を生じる場合、表1に「典型的な置換」と名づけるか、またはアミノ酸クラスに関して、以下にさらに言及するような、より実質的な変化を導入し、そして産物をスクリーニングすることも可能である。
表1.アミノ酸置換
【0083】
【表1】

【0084】
[0104]抗体の生物学的特性における実質的な修飾は、(a)例えばシートまたはらせんコンホメーションとしての、置換領域中のポリペプチド主鎖の構造、(b)標的部位の分子の荷電または疎水性、あるいは(c)側鎖の大きさを維持することに対する影響
が有意に異なる置換を選択することによって、達成される。共通の側鎖特性に基づいて、天然存在残基をグループに分ける:
(1)非極性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)非荷電極性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性(負に荷電):Asp、Glu;
(4)塩基性(正に荷電):Lys、Arg;
(5)鎖配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro;および
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe、His。
【0085】
[0105]非保存的置換は、これらの1つのクラスのメンバーを別のクラスのものに交換することによって作製される。
[0106]抗体の適切なコンホメーションを維持するのに関与しない、いかなるシステイン残基も、一般的にはセリンで置換して、分子の酸化安定性を改善し、そして異常な架橋を妨げることも可能である。逆に、特に抗体がFv断片などの抗体断片である場合、抗体にシステイン結合(単数または複数)を添加して、安定性を改善することも可能である。
【0086】
[0107]アミノ酸修飾は、1以上のアミノ酸の変化または修飾から、可変領域などの領域の完全な再設計の範囲に渡ることも可能である。可変領域中の変化は、結合親和性および/または特異性を改変することも可能である。いくつかの態様において、CDRドメイン内で、1〜5以下の保存的アミノ酸置換を作製する。他の態様において、CDRドメイン内で、1〜3以下の保存的アミノ酸置換を作製する。さらに他の態様において、CDRドメインはCDR H3および/またはCDR L3である。
【0087】
[0108]修飾にはまた、グリコシル化および非グリコシル化ポリペプチド、ならびに例えば異なる糖でのグリコシル化、アセチル化、およびリン酸化などの、他の翻訳後修飾を含むポリペプチドも含まれる。抗体は、定常領域中の保存される位でグリコシル化される(JefferisおよびLund, 1997, Chem. Immunol.
65:111−128; WrightおよびMorrison, 1997, TibTECH 15:26−32)。免疫グロブリンのオリゴ糖側鎖は、タンパク質の機能(Boydら, 1996, Mol. Immunol. 32:1311−1318; WittweおよびHoward, 1990, Biochem. 29:4175−4180)、ならびに、糖タンパク質のコンホメーションおよび提示される三次元表面に影響を及ぼす可能性もある、糖タンパク質部分間の分子内相互作用(HefferisおよびLund、上記; WyssおよびWagner, 1996, Current Opin. Biotech. 7:409−416)に影響を及ぼす。オリゴ糖はまた、特異的認識構造に基づいて、特定の分子に所定の糖タンパク質をターゲティングするようにも働きうる。抗体のグリコシル化はまた、抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)に影響を及ぼすとも報告されてきている。特に、2つに分かれたGlcNAcの形成を触媒するグリコシルトランスフェラーゼ、β(1,4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII)を、テトラサイクリン制御性に発現するCHO細胞は、改善されたADCC活性を有すると報告された(Umanaら, 1999, Mature Biotech. 17:176−180)。
【0088】
[0109]抗体のグリコシル化は、典型的には、N連結またはO連結のいずれかである。N連結は、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の付着を指す。3ペプチド配列、アスパラギン−X−セリン、アスパラギン−X−スレオニン、およびアスパラギン−X−システイン(式中、Xはプロリン以外のアミノ酸いずれかである)は、アスパラギン側鎖への炭水化物部分の酵素的付着のための認識配列である。したがって、ポリペプチドにおけるこれらの3ペプチド配列いずれかの存在は、潜在的なグリコシル化部位を生成する。O連結グリコシル化は、糖、N−アセチルガラクトサミン、ガラクトース、またはキシロースの1つの、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリンまたはスレオニンへの付着を指すが、5−ヒドロキシプロリンまたは5−ヒドロキシリジンもまた使用可能である。
【0089】
[0110]抗体へのグリコシル化部位の付加は、1以上の上述の3ペプチド配列(N
連結グリコシル化部位の場合)を含有するように、アミノ酸配列を改変することによって、好適に達成される。改変はまた、元来の抗体の配列に1以上のセリンまたはスレオニン残基を付加するか、または元来の配列をこれらの残基で置換することによっても作製可能である(O連結グリコシル化部位の場合)。
【0090】
[0111]抗体のグリコシル化パターンはまた、根底にあるヌクレオチド配列を改変することなく、改変することも可能である。グリコシル化は、主に、抗体を発現させるのに用いる宿主細胞に依存する。潜在的な療法剤としての組換え糖タンパク質、例えば抗体の発現に用いる細胞種が、天然細胞であることは稀であるため、抗体のグリコシル化パターンの変動は予測可能である(例えばHseら, 1997, J. Biol. Chem. 272:9062−9070を参照されたい)。
【0091】
[0112]宿主細胞の選択に加えて、抗体の組換え産生中のグリコシル化に影響を及ぼす要因には、増殖様式、培地配合、培養密度、酸化、pH、精製スキーム等が含まれる。特定の宿主生物で達成されるグリコシル化パターンを改変する、多様な方法が提唱されてきており、こうした方法には、オリゴ糖産生に関与する特定の酵素の導入または過剰発現が含まれる(米国特許第5,047,335号;第5,510,261号および第5,278,299号)。例えば、エンドグリコシダーゼH(EndoH)、実施例1に記載するようなN−グリコシダーゼF、エンドグリコシダーゼF1、エンドグリコシダーゼF2、エンドグリコシダーゼF3を用いて、グリコシル化または特定の種類のグリコシル化を、糖タンパク質から酵素的に除去することも可能である。さらに、組換え宿主細胞を遺伝子操作して、特定の種類の多糖のプロセシングが不全になるようにしてもよい。これらの技術および類似の技術が当該技術分野に周知である。
【0092】
[0113]修飾の他の方法には、当該技術分野に知られるカップリング技術を用いる工程が含まれ、これには、限定されるわけではないが、酵素的手段、酸化的置換およびキレート化が含まれる。修飾は、例えば、イムノアッセイのための標識の付着を使用することも可能である。当該技術分野において確立された方法を用いて、修飾6Gポリペプチドを作製し、そして当該技術分野に知られる標準的アッセイを用いて、該ポリペプチドをスクリーニングすることも可能であり、こうしたアッセイのいくつかを、以下に、そして実施例に記載する。
【0093】
[0114]他の抗体修飾には、PCT公報第WO 99/58572号、1999年11月18日公表に記載されるように修飾されている抗体が含まれる。これらの抗体は、標的分子に向けられる結合ドメインに加えて、ヒト免疫グロブリン重鎖の定常ドメインのすべてまたは一部に実質的に相同なアミノ酸配列を有する、エフェクタードメインを含む。これらの抗体は、標的の有意な補体依存性溶解、または細胞仲介性分解を誘発することなく、標的分子に結合可能である。いくつかの態様において、エフェクタードメインは、FcRnおよび/またはFcγRIIbに特異的に結合可能である。これらは、典型的には、2以上のヒト免疫グロブリン重鎖C2ドメイン由来のキメラドメインに基づく。この方式で修飾される抗体は、長期の抗体療法における使用に特に適しており、慣用的な抗体療法に対する炎症性反応および他の不都合な反応を回避する。
【0094】
[0115]本発明には、親和性成熟態様が含まれる。例えば、当該技術分野に知られる方法によって、親和性成熟抗体を産生することも可能である(Marksら, 1992, Bio/Technology, 10:779−783; Barbasら, 1994, Proc Nat. Acad. Sci, USA 91:3809−3813; Schierら, 1995, Gene, 169:147−155; Yeltonら, 1995, J. Immunol., 155:1994−2004; Jacksonら, 1995, J. Immunol., 154(7):3310−9; Hawkinsら, 1992, J. Mol. Biol., 226:889−896;およびWO2004/058184)。
【0095】
[0116]抗体の親和性を調整し、そしてCDRを性質決定するため、以下の方法が使用可能である。抗体のCDRを性質決定し、そして/または抗体などのポリペプチドの結合親和性を改変する(例えば改善する)1つの方法は、「ライブラリー・スキャニング
突然変異誘発」と称される。一般的に、ライブラリー・スキャニング突然変異誘発は、以下のように働く。CDR中の1以上のアミノ酸位を、当該技術分野に認められる方法を用いて、2以上(3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20など)のアミノ酸で置換する。これは、各々が2以上のメンバーの複雑性を持つ(すべての位で、2以上のアミノ酸で置換される場合)、クローンの小さいライブラリー(いくつかの態様において、分析するすべてのアミノ酸位について1つ)を生じる。一般的に、ライブラリーはまた、天然(非置換)アミノ酸を含むクローンも含む。各ライブラリー由来の少数のクローン、例えば約20〜80クローン(ライブラリーの複雑性に応じる)を、標的ポリペプチド(または他の結合性標的)に対する結合親和性に関してスクリーニングし、そして結合が増加したか、結合が同じか、結合が減少したか、または結合しない候補を同定する。結合親和性を決定するための方法は、当該技術分野に周知である。約2倍以上の結合親和性の相違を検出する、BIAcore表面プラズモン共鳴分析を用いて、結合親和性を決定することも可能である。BIAcoreは、出発抗体が、すでに比較的高い親和性で、例えば約10nM以下のKで結合する場合、特に有用である。BIAcore表面プラズモン共鳴を用いたスクリーニングを、本明細書の実施例に記載する。
【0096】
[0117]Kinexa Biocensor、シンチレーション近接アッセイ、ELISA、ORIGENイムノアッセイ(IGEN)、蛍光消光、蛍光移動、および/または酵母ディスプレイを用いて、結合親和性を決定することも可能である。適切なバイオアッセイを用いて、結合親和性をスクリーニングすることもまた可能である。
【0097】
[0118]いくつかの態様において、当該技術分野に認められる突然変異誘発法(このうちいくつかを本明細書に記載する)を用いて、CDR中のすべてのアミノ酸位を、20の天然アミノ酸すべてで置換する(いくつかの態様において、1つずつ)。これは、各々が20のメンバーの複雑性を持つ(すべての位で、20のアミノ酸すべてで置換される場合)、クローンの小さいライブラリー(いくつかの態様において、分析するすべてのアミノ酸位について1つ)を生じる。
【0098】
[0119]いくつかの態様において、スクリーニングされるべきライブラリーは、同じCDR中でも、また2以上のCDR中でもよい、2以上の位での置換を含む。したがって、ライブラリーは、1つのCDR中の2以上の位での置換を含むことも可能である。ライブラリーは、2以上のCDR中の2以上の位での置換を含むことも可能である。ライブラリーは、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのCDRで見られる、3、4、5またはそれより多い位での置換を含むことも可能である。重複性が低いコドンを用いて、置換を調製することも可能である。例えば、Balintら, (1993)Gene 137(l):109−18)の表2を参照されたい。
【0099】
[0120]CDRは、CDRH3および/またはCDRL3であることも可能である。CDRは、CDRL1、CDRL2、CDRL3、CDRH1、CDRH2、および/またはCDRH3の1以上であることも可能である。CDRは、Kabat CDR、Chothia CDR、または拡張CDRであることも可能である。
【0100】
[0121]結合が改善された候補を配列決定し、それによって、親和性改善を生じるCDR置換突然変異体を同定することも可能である(「改善」置換とも称される)。結合する候補を配列決定し、それによって、結合を保持するCDR置換を同定することもまた可能である。
【0101】
[0122]多数の周期のスクリーニングを行うことも可能である。例えば、結合が改善された候補(各々、1以上のCDRの1以上の位でのアミノ酸置換を含む)はまた、各々、改善されたCDR位(すなわち置換突然変異体が結合改善を示したCDRのアミノ酸位)で、少なくとも元来のアミノ酸および置換されたアミノ酸を含有する第二のライブラリーを設計するためにも有用である。このライブラリーの調製、およびスクリーニングまたは選択を、以下にさらに論じる。
【0102】
[0123]ライブラリー・スキャニング突然変異誘発はまた、結合が改善されたか、結合が同じか、結合が減少したか、または結合しないクローンの頻度がまた、抗体−抗原
複合体の安定性に関して、各アミノ酸位の重要性に関する情報も提供する範囲で、CDRを性質決定するための手段も提供する。例えば、CDRの位を20のアミノ酸すべてに変化させても、結合が保持されるならば、その位は、抗原結合に必要とされる可能性が低いと同定される。逆に、CDRの位が、置換のわずかな割合でしか結合を保持しないならば、その位は、CDR機能に重要な位と同定される。したがって、ライブラリー・スキャニング突然変異誘発法は、多くの異なるアミノ酸(20のアミノ酸すべてを含む)に変化させることが可能なCDR中の位、および変化させることが不能であるか、またはいくつかのアミノ酸にのみ変化させることが可能であるCDR中の位に関する情報を生成する。
【0103】
[0124]第二のライブラリーにおいて、親和性が改善された候補を組み合わせることも可能であり、第二のライブラリーは、改善されたアミノ酸、その位の元来のアミノ酸を含み、そして望ましいライブラリーの複雑性に応じて、あるいは望ましいスクリーニング法または選択法を用いて許容される、その位でのさらなる置換をさらに含むことも可能である。さらに、望ましい場合、隣接するアミノ酸位を、少なくとも2以上のアミノ酸にランダム化することも可能である。隣接するアミノ酸のランダム化は、突然変異体CDRにおいて、さらなるコンホメーション柔軟性を許容することも可能であり、これは次に、より多数の改善突然変異の導入を許容するかまたは容易にすることも可能である。ライブラリーはまた、第一の周期のスクリーニングにおいて、親和性改善を示さなかった位の置換も含むことも可能である。
【0104】
[0125]BIAcore表面プラズモン共鳴分析を用いたスクリーニング、ならびにファージディスプレイ、酵母ディスプレイ、およびリボソームディスプレイを含む、選択に関して当該技術分野に知られる方法いずれかを用いた選択を含む、当該技術分野に知られる方法いずれかを用いて、結合親和性が改善され、そして/または改変されたライブラリーメンバーに関して、第二のライブラリーをスクリーニングするかまたは選択する。
【0105】
[0126]本発明はまた、本発明の抗体(6Gなど)またはポリペプチド由来の1以上の断片または領域を含む融合タンパク質も含む。1つの態様において、配列番号2(図1)に示す可変軽鎖領域の少なくとも10の隣接アミノ酸および/または配列番号1(図1)に示す可変重鎖領域の少なくとも10のアミノ酸を含む、融合ポリペプチドを提供する。他の態様において、配列番号2(図1)に示す可変軽鎖領域の少なくとも約10、少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約25、または少なくとも約30の隣接アミノ酸、および/または配列番号1(図1)に示す可変重鎖領域の少なくとも約10、少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約25、または少なくとも約30の隣接アミノ酸を含む、融合ポリペプチドを提供する。別の態様において、融合ポリペプチドは、図1の配列番号2および配列番号1に示すような、6Gの軽鎖可変領域および/または重鎖可変領域を含む。別の態様において、融合ポリペプチドは、6Gの1以上のCDR(単数または複数)を含む。さらに他の態様において、融合ポリペプチドは、抗体6GのCDR H3および/またはCDR L3を含む。本発明の目的のため、6G融合タンパク質は、1以上の6G抗体、および天然分子では付着していない別のアミノ酸配列、例えば異種配列または別の領域由来の相同配列を含有する。典型的な異種配列には、限定されるわけではないが、FLAGタグまたは6Hisタグなどの「タグ」が含まれる。タグは当該技術分野に周知である。
【0106】
[0127]6G融合ポリペプチドを、当該技術分野に知られる方法によって、例えば合成的または組換え的に、生成することも可能である。典型的には、本発明の6G融合タンパク質は、本明細書記載の組換え法を用いて、該タンパク質をコードするポリヌクレオチドを調製し、そして発現させることによって、作製されるが、例えば化学合成を含む、当該技術分野に知られる他の手段によって、調製されることもまた可能である。
【0107】
[0128]本発明はまた、固体支持体へのカップリングを促進する剤(ビオチンまたはアビジンなど)にコンジュゲート化された(例えば連結された)6G抗体またはポリペプチドを含む組成物もまた提供する。これらの方法が、本明細書記載のAβ1−40結合性態様のいずれにも適用されることを理解しつつ、簡単にするために、一般的に6Gまたは抗体への言及を行う。コンジュゲート化は、一般的に、本明細書に記載するようなこれ
らの構成要素の連結を指す。いかなる方法によって連結(一般的に、少なくとも投与のため、これらの構成要素を近接した関係に固定する)を達成することも可能である。例えば、剤および抗体各々が、互いと反応することが可能な置換基を所持する場合、剤および抗体間の直接の反応が可能である。例えば、一方の上のアミノ基またはスルフィドリル基などの求核基は、他方の上の、無水物または酸ハロゲン化物などのカルボニル含有基と、あるいは優れた脱離基(例えばハロゲン化物)を含有するアルキル基と、反応可能でありうる。
【0108】
[0129]本発明の抗体またはポリペプチドを、蛍光分子、放射性分子または当該技術分野に知られる他の標識いずれかなどの標識剤(あるいは「標識」と称される)に連結することも可能である。標識は、当該技術分野に知られ、一般的に(直接または間接的のいずれかで)シグナルを提供する。
【0109】
[0130]本発明はまた、抗体6G、および本開示が明らかにするように、本明細書記載のあらゆる抗体および/またはポリペプチドを含む組成物(薬剤組成物を含む)およびキットも提供する。
損なわれたエフェクター機能を有する、抗Aβ抗体およびポリペプチド
[0131]本明細書記載の抗体またはポリペプチド(抗体またはポリペプチドを含む薬剤組成物を含む)は、損なわれたエフェクター機能を有することも可能である。本明細書において、「損なわれたエフェクター機能」を有する抗体またはポリペプチド(「免疫学的に不活性」または「部分的に免疫学的に不活性」と交換可能に用いられる)は、(非修飾または天然存在定常領域を有する抗体またはポリペプチドに比較して)いかなるエフェクター機能も持たないか、あるいはエフェクター機能の単数または複数の減少した活性を有する抗体またはポリペプチドを指し、例えば、以下:a)補体仲介性溶解誘発;b)抗体依存性細胞仲介性細胞傷害(ADCC)刺激;およびc)ミクログリア活性化のいずれか1以上において、活性を持たないか、または減少した活性を有する。エフェクター機能活性は、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、および100%のいずれかが減少することも可能である。いくつかの態様において、抗体は、標的の有意な補体依存性溶解、または細胞仲介性分解を誘発することなく、ベータ−アミロイド・ペプチドに結合する。例えば、定常領域上のFc受容体結合部位を修飾するかまたは突然変異させて、FcγRI、FcγRII、および/またはFcγRIIIなどの特定のFc受容体への結合親和性を除去するかまたは減少させることも可能である。この態様が、ポリペプチドにも適用されることを理解しつつ、簡単にするために、抗体への言及を行う。定常領域(例えばIgG抗体のもの)のどのアミノ酸残基(単数または複数)を改変するか、または突然変異させるか示すため、EU番号付け体系(Kabatら, Sequences of Proteins of Imunological Interest; 第5版 Public Health Service, National Institutes of Healthy, メリーランド州ベセスダ, 1991)を用いる。抗体の種類および種に渡って、類似の変化を行うことも可能であることを理解しつつ、特定の種類の抗体(例えばIgG1)または種(例えばヒト)に関して、この番号付けを用いることも可能である。
【0110】
[0132]いくつかの態様において、Aβペプチドに特異的に結合する抗体は、損なわれたエフェクター機能を有する重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、天然存在配列を有することも可能であるし、または変異体である。いくつかの態様において、天然存在重鎖定常領域のアミノ酸配列を、例えばアミノ酸置換、挿入および/または欠失によって突然変異させ、これによって、定常領域のエフェクター機能が損なわれる。いくつかの態様において、重鎖定常領域のFc領域のN−グリコシル化もまた、変化させることも可能であり、例えば完全にまたは部分的に除去することも可能であり、これによって、定常領域のエフェクター機能が損なわれる。
【0111】
[0133]いくつかの態様において、抗AβペプチドのFc領域(例えばIgGのCH2ドメイン中)のN−グリコシル化を除去することによって、エフェクター機能が損なわれる。いくつかの態様において、Fc領域のN−グリコシル化は、定常領域中のグリコ
シル化アミノ酸残基、またはグリコシル化認識配列の一部である隣接残基を突然変異させることによって、除去される。3ペプチド配列、アスパラギン−X−セリン(N−X−S)、アスパラギン−X−スレオニン(N−X−T)およびアスパラギン−X−システイン(N−X−C)(式中、Xはプロリン以外のアミノ酸いずれかである)は、N−グリコシル化のため、アスパラギン側鎖への炭水化物部分の酵素的付着のための認識配列である。定常領域中、3ペプチド配列中のアミノ酸いずれの突然変異も、非グリコシル化IgGを生じる。例えば、ヒトIgG1およびIgG3のN−グリコシル化部位、N297を、A、D、Q、K、またはHに突然変異させることも可能である。Taoら, J. Immunology 143:2595−2601(1989);およびJefferisら, Immunological Reviews 163:59−76(1998)を参照されたい。Asn−297をGln、His、またはLysに置換したヒトIgG1およびIgG3は、ヒトFcγRIに結合せず、そして補体を活性化せず、IgG1に関しては、C1q結合能が完全に失われ、そしてIgG3に関しては劇的に減少することが報告されてきている。いくつかの態様において、3ペプチド配列中のアミノ酸Nを、アミノ酸A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W、Yのいずれか1つに突然変異させる。いくつかの態様において、3ペプチド配列中のアミノ酸Nを、保存的置換に突然変異させる。いくつかの態様において、3ペプチド配列中のアミノ酸Xをプロリンに突然変異させる。いくつかの態様において、3ペプチド配列中のアミノ酸Sを、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、V、W、Yに突然変異させる。いくつかの態様において、3ペプチド配列中のアミノ酸Tを、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、V、W、Yに突然変異させる。いくつかの態様において、3ペプチド配列中のアミノ酸Cを、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、V、W、Yに突然変異させる。いくつかの態様において、3ペプチドに続くアミノ酸をPに突然変異させる。いくつかの態様において、定常領域中のN−グリコシル化を、酵素的に(実施例1に記載するようなN−グリコシダーゼF、エンドグリコシダーゼF1、エンドグリコシダーゼF2、エンドグリコシダーゼF3、およびエンドグリコシダーゼHなど)除去する。N−グリコシル化に関して欠損を有する細胞株において、抗体を産生することによって、N−グリコシル化の除去を達成することも可能である。Wrightら J Immunol. 160(7):3393−402(1998)。
【0112】
[0134]いくつかの態様において、定常領域のN−グリコシル化部位に付着したオリゴ糖と相互作用するアミノ酸残基を突然変異させて、FcγRIへの結合親和性を減少させる。例えば、ヒトIgG3のF241、V264、D265を突然変異させることも可能である。Lundら, J. Immunology 157:4963−4969(1996)を参照されたい。
【0113】
[0135]いくつかの態様において、PCT WO 99/58572およびArmourら, Molecular Immunology 40:585−593(2003); Reddyら, J. Immunology 164:1925−1933(2000)に記載されるようなヒトIgGの233−236、297、および/または327−331などの領域を修飾することによって、エフェクター機能が損なわれる。PCT WO 99/58572およびArmourらに記載される抗体は、標的分子に向けられる結合性ドメインに加えて、ヒト免疫グロブリン重鎖の定常領域のすべてまたは一部に実質的に相同なアミノ酸配列を有するエフェクタードメインを含む。これらの抗体は、標的の有意な補体依存性溶解、または細胞仲介性分解を誘発することなく、標的分子に結合可能である。いくつかの態様において、エフェクタードメインは、FcγRI、FcγRIIa、およびFcγRIIIに対して減少した親和性を有する。いくつかの態様において、エフェクタードメインは、FcRnおよび/またはFcγRIIbに特異的に結合可能である。これらは、典型的には、2以上のヒト免疫グロブリン重鎖C2ドメイン由来のキメラドメインに基づく。この方式で修飾される抗体は、長期の抗体療法における使用に特に適しており、慣用的な抗体療法に対する炎症性反応および他の不都合な反応を
回避する。いくつかの態様において、抗体の重鎖定常領域は、以下の突然変異のいずれかを含むヒト重鎖IgG1である:1)A327A330P331からG327S330S331;2)E233L234L235G236からP233V234A235、G236は欠失;3)E233L234L235からP233V234A235;4)E233L234L235G236A327A330P331からP233V234A235G327S330S331、G236は欠失;5)E233L234L235A327A330P331からP233V234A235G327S330S331;および6)N297からA297またはNを除く他のアミノ酸いずれか。これらの突然変異を組み合わせてもよく、例えば1)〜5)のいずれかを6)と組み合わせてもよい。いくつかの態様において、抗体の重鎖定常領域は、以下の突然変異を含む、ヒト重鎖IgG2である:A330P331からS330S331;N297からQ297;およびN297G327A330P331からQ297G327S330S331。いくつかの態様において、抗体の重鎖定常領域は、以下の突然変異のいずれかを含む、ヒト重鎖IgG4である:E233F234L235G236からP233V234A235、G236は欠失;E233F234L235からP233V234A235;P228L235からS228E235;N297からQ297;およびE233F234L235G236N297からP233V234A235G236Q297。
【0114】
[0136]抗体の定常領域を修飾して、補体活性化を損なうこともまた可能である。例えば、C1結合モチーフ(例えばC1q結合モチーフ)において、定常領域中のアミノ酸残基を突然変異させることによって、補体のC1構成要素の結合後のIgG抗体の補体活性化を減少させることも可能である。ヒトIgG1のD270、K322、P329、P331の各々をAlaに突然変異させると、抗体がC1qに結合し、そして補体を活性化する能力が有意に減少すると報告されてきている。ネズミIgG2bに関しては、C1q結合モチーフは、残基E318、K320、およびK322で構成される。Idusogieら, J. Immunology 164:4178−4184(2000);
Duncanら, Nature 322:738−740(1988)。
【0115】
[0137]ネズミIgG2bに関して同定されたC1q結合モチーフ、E318、K320、およびK322は、他の抗体アイソタイプに共通すると考えられる。Duncanら, Nature 322:738−740(1988)。3つの明記された残基のいずれか1つを、側鎖上に不適切な官能性を有する残基で置換することによって、IgG2bのC1q結合活性を無効にすることも可能である。C1q結合を無効にするには、Alaでイオン性残基を置換することのみが必要とされるわけではない。C1q結合を無効にするため、3つの残基のいずれか1つの代わりに、GIy、Ile、Leu、またはValなどの他のアルキル置換非イオン性残基、あるいはPhe、Tyr、TrpおよびProなどの芳香族非極性残基を用いることもまた可能である。さらに、C1q結合活性を無効にするため、残基320および322の代わりに、Ser、Thr、Cys、およびMetなどの極性非イオン性残基を用いることもまた可能であるが、318の代わりにこれらを用いることは不能である。
【0116】
[0138]本発明はまた、抗体が修飾ヒンジ領域を有する、損なわれたエフェクター機能を有する抗体も提供する。ヒンジ領域を修飾することによって、Fc受容体へのヒトIgGの結合親和性を調節することも可能である。Canfieldら, J. Exp. Med. 173:1483−1491(1991); Hezarehら, J.
Virol. 75:12161−12168(2001); Redpathら, Human Immunology 59:720−727(1998)。特定のアミノ酸残基を突然変異させるかまたは欠失させることも可能である。修飾ヒンジ領域は、CH1ドメインのものとは異なる抗体種またはサブクラスの抗体に由来する、完全ヒンジ領域を含むことも可能である。例えば、クラスIgG抗体の定常ドメイン(CH1)を、クラスIgG4抗体のヒンジ領域に付着させることも可能である。あるいは、新規ヒンジ領域は、天然ヒンジの一部、またはリピート中の各単位が天然ヒンジ領域に由来するリピート単位を含むことも可能である。いくつかの態様において、天然ヒンジ領域は、1以上のシ
ステイン残基を、アラニンなどの中性残基に変換することによって、または適切に配置された残基をシステイン残基に変換することによって、改変される。米国特許第5,677,425号。当該技術分野に認められるタンパク質化学、そして好ましくは遺伝子操作技術を用いて、そして本明細書に記載するように、こうした改変を行う。
【0117】
[0139]本明細書に記載する方法のため、Aβペプチドに特異的に結合し、そして損なわれたエフェクター機能を有する重鎖定常領域に融合されたポリペプチドを用いることもまた可能である。いくつかの態様において、ポリペプチドは、抗体6Gまたは表3に示すその変異体に由来する配列を含む。いくつかの態様において、ポリペプチドは、Aβペプチドに結合する単一ドメイン抗体に由来する。当該技術分野に知られる方法を用いて、単一ドメイン抗体を生成することも可能である。Omidfarら, Tumour Biol. 25:296−305(2004); Herringら, Trends
in Biotechnology 21:484−489(2003)。
【0118】
[0140]いくつかの態様において、抗体またはポリペプチドは、F(ab’)断片である。いくつかの態様において、抗体またはポリペプチドは、Fab断片である。いくつかの態様において、抗体またはポリペプチドは、一本鎖抗体scFvである。いくつかの態様において、抗体またはポリペプチドは、PEG化F(ab’)断片である。いくつかの態様において、抗体またはポリペプチドは、PEG化Fab断片である。いくつかの態様において、抗体またはポリペプチドは、PEG化一本鎖抗体scFvである。
【0119】
[0141]当該技術分野に知られる、損なわれたエフェクター機能を有する抗体を作製する他の方法もまた、使用可能である。
[0142]1以上のアッセイにおいて、修飾定常領域を持つ抗体およびポリペプチドを試験して、出発抗体に比較した、生物学的活性におけるエフェクター機能減少のレベルを評価することも可能である。例えば、改変されたFc領域または改変されたヒンジ領域を持つ抗体またはポリペプチドが、補体またはFc受容体(例えばミクログリア上のFc受容体)に結合する能力を、本明細書に開示するアッセイ、ならびに当該技術分野に認められるアッセイいずれかを用いて評価することも可能である。PCT WO 99/58572; Armourら, Molecular Immunology 40:585−593(2003); Reddyら, J. Immunology 164:1925−1933(2000); Songら, Infection and Immunity 70:5177−5184(2002)。
【0120】
[0143]競合アッセイを用いて、同一のまたは立体的に重複するエピトープを認識することによって、2つの抗体が同じエピトープに結合するのか、あるいは1つの抗体が、抗原への別の抗体の結合を競合的に阻害するのかを決定することも可能である。これらのアッセイが、当該技術分野に知られる。典型的には、抗原をマルチウェルプレート上に固定し、そして未標識抗体が標識抗体の結合を遮断する能力を測定する。こうした競合アッセイのための一般的な標識は、放射性標識または酵素標識である。
【0121】
[0144]アミロイド沈着物を除去する際の有効性、および認識を改善するなどの他の有益な効果に関して、Aβに特異的に結合する抗体およびポリペプチドをスクリーニングすることも可能である。例えば、抗体またはポリペプチドを、アルツハイマーの病変を有する動物に投与することも可能である。アルツハイマー病の多様な動物モデルが当該技術分野に知られる。投与後、当該技術分野に知られ、そして実施例2に詳細に記載する方法を用いて、コンパクトなアミロイド斑およびびまん性のアミロイド斑のレベル、認識に関する行動分析、ならびにミクログリア活性化および微量出血を試験することも可能である。PCT WO 2004/032868; Wilcockら, J. Neurosci. 23:3745−3751(2003); Wilcockら, J. Neuroinflammation 1:24(2004)。
ポリヌクレオチド、ベクターおよび宿主細胞
[0145]本発明はまた、本発明の抗体およびポリペプチド(図1に示す軽鎖および重鎖の可変領域のポリペプチド配列を含む抗体を含む)をコードする単離ポリヌクレオチド、ならびに該ポリヌクレオチドを含むベクターおよび宿主細胞も提供する。
【0122】
[0146]したがって、本発明は、以下のいずれかをコードするポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチド(または薬剤組成物を含む組成物)を提供する:(a)抗体6Gまたは表3に示すその変異体;(b)抗体6Gまたは表3に示すその変異体の断片または領域;(c)抗体6Gまたは表3に示すその変異体の軽鎖;(d)抗体6Gまたは表3に示すその変異体の重鎖;(e)抗体6Gまたは表3に示すその変異体の軽鎖および/または重鎖由来の1以上の可変領域(単数または複数);(f)抗体6Gまたは表3に示すその変異体の1以上のCDR(単数または複数)(1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのCDR);(g)抗体6Gの重鎖由来のCDR H3;(h)抗体6Gまたは表3に示すその変異体の軽鎖由来のCDR L3;(i)抗体6Gまたは表3に示すその変異体の軽鎖由来の3つのCDR;(j)抗体6Gまたは表3に示すその変異体の重鎖由来の3つのCDR;(k)抗体6Gまたは表3に示すその変異体の、軽鎖由来の3つのCDRおよび重鎖由来の3つのCDR;および(l)(b)〜(k)のいずれか1つを含む抗体。いくつかの態様において、ポリヌクレオチドは、配列番号9および配列番号10に示すポリヌクレオチド(単数または複数)のいずれかまたは両方を含む。
【0123】
[0147]別の側面において、本発明は、損なわれたエフェクター機能を有する抗体およびポリペプチドなどの、本明細書記載の抗体(抗体断片を含む)およびポリペプチドのいずれかをコードするポリヌクレオチドを提供する。当該技術分野に知られる方法によって、ポリヌクレオチドを作製することも可能である。
【0124】
[0148]別の側面において、本発明は、本発明のポリヌクレオチドのいずれかを含む組成物(薬剤組成物など)を提供する。いくつかの態様において、組成物は、本明細書に記載するような6G抗体をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターを含む。他の態様において、組成物は、本明細書記載の抗体またはポリペプチドのいずれかをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターを含む。さらに他の態様において、組成物は、配列番号9および配列番号10に示すポリヌクレオチドのいずれかまたは両方を含む。発現ベクター、およびポリヌクレオチド組成物の投与をさらに本明細書に記載する。
【0125】
[0149]別の側面において、本発明は、本明細書記載のポリヌクレオチドいずれかを作製する方法を提供する。
[0150]こうした配列いずれかに相補的なポリヌクレオチドもまた、本発明に含まれる。ポリヌクレオチドは、一本鎖(コードまたはアンチセンス)または二本鎖であることも可能であるし、そしてDNA分子(ゲノム、cDNAまたは合成)またはRNA分子であることも可能である。RNA分子には、イントロンを含有し、そして一対一方式でDNA分子に対応するHnRNA分子、およびイントロンを含有しないmRNA分子が含まれる。さらなるコード配列または非コード配列が、本発明のポリヌクレオチド内に存在することも可能であるが、存在していなくてもよく、そしてポリヌクレオチドは、他の分子および/または固体支持体に連結されていることも可能であるが、連結されていなくてもよい。
【0126】
[0151]ポリヌクレオチドは、天然配列(すなわち抗体またはその一部をコードする内因性配列)を含むことも可能であるし、またはこうした配列の変異体を含むことも可能である。ポリヌクレオチド変異体は、天然免疫反応性分子と比較して、コードされるポリペプチドの免疫反応性が減少しないように、1以上の置換、付加、欠失および/または挿入を含有する。コードされるポリペプチドの免疫反応性に対する影響は、一般的に、本明細書に記載するように評価可能である。変異体は、天然抗体またはその一部をコードするポリヌクレオチド配列に、好ましくは少なくとも約70%の同一性、より好ましくは少なくとも約80%の同一性、そして最も好ましくは少なくとも約90%の同一性を示す。
【0127】
[0152]2つのポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列は、以下に記載するように最大に対応するように並列させた際、2つの配列中のヌクレオチドまたはアミノ酸の配列が同じであるならば、「同一である」と言う。2つの配列間の比較は、典型的には、比較ウィンドウに渡って配列を比較して、配列類似性の局所領域を同定し、そして比較することによって、行われる。「比較ウィンドウ」は、本明細書において、少なくとも約20の隣接する位、通常30〜約75の隣接する位、40〜約50の隣接する位のセグメ
ントであって、2つの配列を最適に並列させた後、このセグメント中の配列を、隣接する位の同数の参照配列に比較することが可能である、前記セグメントを指す。
【0128】
[0153]デフォルト・パラメータを用い、バイオインフォマティクス・ソフトウェアのLasergeneパッケージソフト(DNASTAR, Inc.、ウィスコンシン州マディソン)中のMegalignプログラムを用いて、比較のための配列の最適並列を行うことも可能である。このプログラムは、以下の参考文献に記載されるいくつかの並列スキームを具現化する:Dayhoff, M.O.(1978)A model of evolutionary change in proteins −Matrices for detecting distant relationships. Dayhoff, M.O.(監修) Atlas of Protein Sequence and Structure中, National Biomedical Research Foundation, Washington DC Vol.5, Suppl.3, pp.345−358; Hein J., 1990, Unified Approach to Alignment and Phylogenes pp.626−645 Methods in Enzymology vol.183, Academic Press, Inc., カリフォルニア州サンディエゴ; Higgins, D.G.およびSharp, P.M., 1989, CABIOS 5:151−153; Myers, E.W.およびMuller W., 1988, CABIOS 4:11−17; Robinson, E.D.,
1971, Comb. Theor. 11:105; Santou, N., Nes, M., 1987, Mol. Biol. Evol. 4:406−425; Sneath, P.H.A.およびSokal, R.R., 1973, Numerical Taxonomy the Principles and Practice of Numerical Taxonomy, Freeman Press, カリフォルニア州サンフランシスコ; Wilbur, W.J.およびLipman, D.J., 1983, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:726−730。
【0129】
[0154]好ましくは、「配列同一性パーセント」は、少なくとも20位の比較ウィンドウに渡って、2つの最適に並列された配列を比較することによって決定され、ここで、比較ウィンドウ中のポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列の部分は、2つの配列の最適並列のため、参照配列(付加または欠失を含まない)に比較した際、20パーセント以下、通常5〜15パーセント、または10〜12パーセントの付加または欠失(すなわちギャップ)を含むことも可能である。両方の配列に同一の核酸塩基またはアミノ酸残基が生じる位の数を決定して、マッチした位の数を得て、参照配列中の位の総数(すなわちウィンドウサイズ)によってマッチした位の数を割り、そして結果に100を掛けて、配列同一性パーセントを得ることによって、パーセントを計算する。
【0130】
[0155]変異体はまた、またはあるいは、天然遺伝子またはその一部または相補体に実質的に相同であることも可能である。こうしたポリヌクレオチド変異体は、天然抗体をコードする天然存在DNA配列(または相補配列)に、中程度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズ可能である。
【0131】
[0156]適切な「中程度にストリンジェントな条件」には、5xSSC、0.5%SDS、1.0mM EDTA(pH8.0)の溶液中で前洗浄し;50℃〜65℃、5xSSC、一晩ハイブリダイズし;その後、0.1%SDSを含有する2xSSC、0.5xSSCおよび0.2xSSC各々で、65℃20分間で、2回洗浄することが含まれる。
【0132】
[0157]本明細書において、「非常にストリンジェントな条件」または「高ストリンジェンシー条件」は:(1)洗浄に、低イオン強度および高温、例えば0.015M塩化ナトリウム/0.0015Mクエン酸ナトリウム/0.1%ドデシル硫酸ナトリウム、50℃を使用し;(2)ハイブリダイゼーション中に、750mM塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウムを含む、0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%Ficoll/
0.1%ポリビニルピロリドン/50mMリン酸ナトリウム緩衝剤、pH6.5とともに、変性剤、例えばホルムアミド、例えば50%(v/v)ホルムアミドを、42℃で使用するか;または(3)50%ホルムアミド、5xSSC(0.75M NaCl、0.075Mクエン酸ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5xデンハート溶液、超音波処理したサケ精子DNA(50μg/ml)、0.1%SDS、および10%硫酸デキストランを、42℃で使用し、0.2xSSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)中、42℃で、そして50%ホルムアミドで、55℃で洗浄し、その後、EDTAを含有する0.1xSSCからなる、55℃での高ストリンジェンシー洗浄を使用する。当業者は、プローブ長などの要因に適応するのに必要であるように、どのように温度、イオン強度等を調整するかを認識するであろう。
【0133】
[0158]遺伝暗号の縮重の結果として、本明細書に記載するようなポリペプチドをコードする多くのヌクレオチド配列があることが、一般の当業者によって認識されるであろう。これらのポリヌクレオチドのいくつかは、天然の遺伝子いずれかのヌクレオチド配列に、最小限の相同性を所持する。にもかかわらず、コドン使用の相違のために異なるポリヌクレオチドが、本発明に特異的に意図される。さらに、本明細書に提供するポリヌクレオチド配列を含む遺伝子のアレルは、本発明の範囲内にある。アレルは、ヌクレオチドの欠失、付加および/または置換などの1以上の突然変異の結果として改変されている、内因性遺伝子である。生じたmRNAおよびタンパク質は、改変された構造または機能を有することも可能であるが、そうである必要はない。標準的技術(ハイブリダイゼーション、増幅および/またはデータベース配列比較)を用いて、アレルを同定することも可能である。
【0134】
[0159]化学合成、組換え法、またはPCRを用いて、本発明のポリヌクレオチドを得ることも可能である。化学的ポリヌクレオチド合成の方法は、当該技術分野に周知であり、そして本明細書に詳細に記載する必要はない。当業者は、本明細書に提供する配列および商業的DNA合成装置を用いて、所望のDNA配列を産生することも可能である。
【0135】
[0160]本明細書にさらに論じるように、組換え法を用いてポリヌクレオチドを調製するため、所望の配列を含むポリヌクレオチドを適切なベクターに挿入して、そして続いて、複製および増幅のため、適切な宿主細胞内にベクターを導入することも可能である。当該技術分野に知られるいかなる手段によって、ポリヌクレオチドを宿主細胞に挿入することも可能である。直接取り込み、エンドサイトーシス、トランスフェクション、F交配またはエレクトロポレーションにより外因性ポリヌクレオチドを導入することによって、細胞を形質転換する。ひとたび導入されたら、外因性ポリヌクレオチドを、非組込みベクター(プラスミドなど)として細胞内で維持することも可能であるし、また宿主細胞ゲノムに組み込むことも可能である。当該技術分野内で周知の方法によって、こうして増幅したポリヌクレオチドを宿主細胞から単離することも可能である。例えばSambrookら(1989)を参照されたい。
【0136】
[0161]あるいは、PCRは、DNA配列の複製を可能にする。PCR技術は、当該技術分野に周知であり、そして米国特許第4,683,195号、第4,800,159号、第4,754,065号および第4,683,202号、ならびにPCR: The Polymerase Chain Reaction, Mullisら監修, Birkauswer Press, ボストン(1994)に記載される。
【0137】
[0162]適切なベクター中で単離DNAを用いて、そして適切な宿主細胞に挿入することによって、RNAを得ることも可能である。細胞が複製し、そしてDNAがRNAに転写された際、例えばSambrookら(1989)に示されるような、当業者に周知の方法を用いて、RNAを単離することも可能である。
【0138】
[0163]標準的技術にしたがって、適切なクローニングベクターを構築することも可能であるし、または当該技術分野で利用可能な多数のクローニングベクターから選択することも可能である。選択されるクローニングベクターは、使用しようと意図する宿主細胞にしたがって、多様であることも可能である一方、有用なクローニングベクターは、一般的に、自己複製能を有するであろうし、特定の制限エンドヌクレアーゼの単一の標的を
所持することも可能であり、そして/またはベクターを含有するクローンを選択する際に使用可能なマーカーの遺伝子を所持することも可能である。適切な例には、プラスミドおよび細菌ウイルス、例えばpUC18、pUC19、Bluescript(例えばpBS SK+)およびその誘導体、mp18、mp19、pBR322、pMB9、ColE1、pCR1、RP4、ファージDNA、ならびにpSA3およびpAT28などのシャトルベクターが含まれる。これらのクローニングベクターおよび多くの他のクローニングベクターが、BioRad、Stratagene、およびInvitrogenなどの商業的業者から入手可能である。
【0139】
[0164]発現ベクターは、一般的に、本発明にしたがったポリヌクレオチドを含有する複製可能ポリヌクレオチド構築物である。発現ベクターが、エピソームとして、または染色体DNAの内在性(integral)部分としてのいずれかで、宿主細胞中で複製可能でなければならないことが暗示される。適切な発現ベクターには、限定されるわけではないが、プラスミド、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルスを含むウイルスベクター、コスミド、およびPCT公報第WO 87/04462号に開示される発現ベクター(単数または複数)が含まれる。ベクター構成要素は、一般的に、限定されるわけではないが、1以上の以下を含むことも可能である:シグナル配列;複製起点;1以上のマーカー遺伝子;適切な転写調節要素(プロモーター、エンハンサーおよびターミネーターなど)。発現(すなわち翻訳)のため、リボソーム結合部位、翻訳開始部位、および停止コドンなどの1以上の翻訳調節要素もまた、通常、必要である。
【0140】
[0165]エレクトロポレーションや、塩化カルシウム、塩化ルビジウム、リン酸カルシウム、DEAE−デキストラン、または他の物質を使用したトランスフェクション;微粒子銃;リポフェクション;および感染(例えばベクターがワクシニアウイルスなどの感染性病原体である場合)を含む、いくつかの適切な手段のいずれによって、目的のポリヌクレオチドを含有するベクターを宿主細胞に導入することも可能である。ベクターまたはポリヌクレオチドを導入する選択は、しばしば、宿主細胞の特徴次第であろう。
【0141】
[0166]本発明はまた、本明細書記載のポリヌクレオチドのいずれかを含む宿主細胞も提供する。目的の抗体、ポリペプチドまたはタンパク質をコードする遺伝子を単離する目的で、異種DNAを過剰発現することが可能な、いかなる宿主細胞を用いることも可能である。哺乳動物宿主細胞の限定されない例には、限定されるわけではないが、COS、HeLa、およびCHO細胞が含まれる。PCT公報第WO 87/04462号もまた参照されたい。適切な非哺乳動物宿主細胞には、原核生物(大腸菌または枯草菌(B.
subtillis)など)および酵母(S.セレビシエ(S. cerevisae)、S.ポンベ(S. pombe);またはK.ラクティス(K. lactis)など)が含まれる。目的の抗体またはタンパク質に対応する内因性のものが宿主細胞において存在する場合、好ましくは、宿主細胞は、これらのものより、約5倍高く、より好ましくは10倍高く、さらにより好ましくは20倍高いレベルで、cDNAを発現する。Aβ1−40への特異的結合に関する宿主細胞のスクリーニングは、イムノアッセイまたはFACSによって達成される。目的の抗体またはタンパク質を過剰発現する細胞を同定することも可能である。
損なわれたエフェクター機能を有する6G由来抗体および抗Aβ抗体の診断的使用
[0167]AβのC末端に結合する抗体6Gを用いて、Aβの存在または非存在を同定するかまたは検出することも可能である。これらの方法が、本明細書記載のAβ結合性態様(ポリペプチドなど)のいずれにも適用されることを理解しつつ、簡単にするために、一般的に6Gまたは抗体への言及を行う。検出は、一般的に、Aβに結合する本明細書記載の抗体と生物学的試料を接触させ、そしてAβ、およびAβに特異的に結合する抗体(例えば6G)間の複合体を形成させることを伴う。こうした複合体の形成は、in vitroまたはin vivoであることも可能である。用語「検出」は、本明細書において、対照を参照した、または参照しない、定性的および/または定量的検出(レベル測定)を含む。
【0142】
[0168]限定されるわけではないが、例えば酵素連結免疫吸着アッセイ(ELIS
A)、ラジオイムノアッセイ(RIA)等による、ポリペプチドに結合する抗体を用いたイムノアッセイ;およびコードされるポリペプチドに関する機能アッセイ、例えば結合活性または酵素アッセイを含む、多様な既知の方法のいずれを検出のために用いてもよい。いくつかの態様において、抗体を検出可能に標識する。他の態様が当該技術分野に知られ、そして本明細書に記載される。
【0143】
[0169]本発明の抗体およびポリペプチドを、改変されたかまたは異常なAβまたはβAPP発現に関連する疾患、状態、または障害、例えばアルツハイマー病およびダウン症候群の検出、診断および監視に用いることも可能である。したがって、いくつかの態様において、本発明は、本発明の抗体またはポリペプチドと、改変されたかまたは異常なAβ発現を有すると推測される個体の検体(試料)を接触させ、そしてAβのレベルが、対照検体または比較検体のものと異なるかどうかを決定することを含む方法を提供する。他の態様において、本発明は、個体の検体(試料)を接触させ、そしてAβ発現のレベルを決定することを含む方法を提供する。
【0144】
[0170]診断適用のため、限定されるわけではないが、放射性同位体、蛍光標識、および多様な酵素−基質標識を含む、検出可能部分で、抗体を標識することも可能である。抗体に標識をコンジュゲート化する方法が当該技術分野に知られる。本発明の他の態様において、本発明の抗体は、標識されている必要はなく、そしてその存在を、本発明の抗体に結合する標識抗体を用いて検出することも可能である。
【0145】
[0171]競合的結合アッセイ、直接および間接的サンドイッチアッセイ、ならびに免疫沈降アッセイなどの、既知のアッセイ法いずれにおいて、本発明の抗体を使用することも可能である。Zola, Monoclonal Antibodies: A Manual of Techniques, pp.147−158(CRC Press, Inc. 1987)。
【0146】
[0172]抗体はまた、in vivo診断アッセイ、例えばin vivo画像化にもまた使用可能である。一般的に、免疫シンチグラフィーを用いて、目的の細胞または組織を位置決定可能であるように、抗体を放射性核種(111In、99Tc、14C、131I、125I、またはH)で標識する。
【0147】
[0173]当該技術分野に周知の技術にしたがって、病理学における染色試薬として、抗体を使用することもまた可能である。
[0174]ADのリスクがあるかまたはADと診断された被験体の診断のために、脳アミロイド負荷を測定し、そして治療いずれかの進行および疾患段階を評価するため、損なわれたエフェクター機能を有する抗Aβ抗体を用いてもよい。モノクローナル抗Aβ抗体を末梢投与すると、血漿Aβの迅速な増加が生じ、そしてこの増加の度合いは、海馬および皮質におけるアミロイド負荷と非常に相関することが報告されてきている。DeMattosら, Science 295:2264−2267(2002)。いくつかの態様において、損なわれたエフェクター機能を有する抗Aβ抗体を被験体に投与し、そして血漿中のAβのレベルを測定し、それによって、血漿Aβが増加していると、被験体における脳アミロイド負荷の存在および/またはレベルの指標となる。これらの方法を用いて、治療の有効性および疾患段階を監視して、そして将来の投薬および頻度を決定することも可能である。損なわれたエフェクター機能を有する抗体は、より優れた安全性プロフィールを有し、そしてこれらの診断使用のため、利点を提供することも可能である。
療法目的のため、抗Aβ抗体を用いる方法
[0175]本明細書記載の抗体(ポリペプチドを含む)、ポリヌクレオチド、および薬剤組成物を、アルツハイマー病、ならびに改変されたAβもしくはβAPP発現と、またはAβペプチドの集積もしくは沈着物と関連する他の疾患(集合的に、「Aβ関連疾患」と称される)、例えばダウン症候群、パーキンソン病、多発脳梗塞性認知症、軽度認識障害、脳アミロイド血管症、血管におけるAβペプチドの沈着物によって引き起こされる血管障害(脳卒中およびHCHWA−Dなど)、うつ病、クロイツフェルト−ヤコブ病、およびレビー小体認知症の発展を治療し、予防し、そして阻害するための方法において用いることもまた可能である。こうした方法は、抗体、ポリペプチド、またはポリヌクレオ
チド、あるいは薬剤組成物を被験体に投与することを含む。予防的適用において、アルツハイマー病(または他のAβ関連疾患)に感受性であるか、または別の方式でそのリスクがある患者に、疾患の生化学的、組織学的および/または行動的症状、その合併症、および疾患の発展中に提示される中間の病的表現型を含めて、疾患のリスクを除去するかまたは減少させ、重症度を低下させ、あるいは開始を遅延させるのに十分な量で、薬剤組成物または薬剤を投与する。療法的適用において、疾患の合併症、および疾患の発展中の中間の病的表現型を含む、疾患の症状(生化学的、組織学的および/または行動的)を治癒させるか、または少なくとも部分的に抑止するのに十分な量で、組成物または薬剤を、こうした疾患に罹患したと推測されるか、または既に罹患している患者に投与する。
【0148】
[0176]本発明はまた、被験体において、アルツハイマー病(または他のAβ関連疾患)と関連する症状の発展を遅延させる方法であって、本明細書記載の抗体、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドを含む薬剤組成物の有効投薬量を、該被験体に投与することを含む、前記方法も提供する。アルツハイマー病に関連する症状には、限定されるわけではないが、記憶、問題の解決、語学、計算、視空間知覚、判断、および行動の異常が含まれる。
【0149】
[0177]本発明はまた、被験体におけるアミロイド斑の形成および/またはAβ集積を阻害するかまたは抑制する方法であって、本明細書記載の抗体、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドを含む薬剤組成物の有効用量を、該被験体に投与することを含む、前記方法も提供する。いくつかの態様において、アミロイド斑は、被験体の脳にある。いくつかの態様において、アミロイド斑は、被験体の脳血管系にある。他の態様において、Aβ集積は、被験体の循環系にある。
【0150】
[0178]本発明はまた、被験体におけるアミロイド斑を減少させ、そして/またはAβ集積を減少させるかもしくは遅延させる方法であって、本明細書記載の抗体、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドを含む薬剤組成物の有効用量を、該被験体に投与することを含む、前記方法も提供する。いくつかの態様において、アミロイド斑は、被験体の脳にある。いくつかの態様において、アミロイド斑は、被験体の脳血管系にある。他の態様において、Aβ集積は、被験体の循環系にある。
【0151】
[0179]本発明はまた、被験体におけるアミロイド斑および/またはAβ集積を除去するかまたは一掃する方法であって、本明細書記載の抗体、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドを含む薬剤組成物の有効用量を、該被験体に投与することを含む、前記方法も提供する。いくつかの態様において、アミロイド斑は、被験体の脳にある。いくつかの態様において、アミロイド斑は、被験体の脳血管系にある。他の態様において、Aβ集積は、被験体の循環系にある。
【0152】
[0180]本発明はまた、被験体において、組織(脳など)中のAβペプチドを減少させ、組織(脳など)中のAβペプチドの集積を阻害し、そして/または減少させ、そして組織(脳など)中のAβペプチドの毒性効果を阻害し、そして/または減少させる方法であって、本明細書記載の抗体、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドを含む薬剤組成物の有効用量を、該被験体に投与することを含む、前記方法も提供する。Aβポリペプチドは、可溶性型、オリゴマー型、または沈着型であることも可能である。Aβのオリゴマー型は、2−50 Aβポリペプチドで構成されることも可能であり、これは、全長1−40および1−42ペプチドおよび/またはこれらのペプチドの一部切除(truncated)型いずれかの混合物であることも可能である。
【0153】
[0181]本発明はまた、アルツハイマー病などの、被験体におけるAβのアミロイド沈着物と関連する疾患に関連して、認識を改善するかまたは認識衰退を逆転させる方法であって、本明細書記載の抗体、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドを含む薬剤組成物の有効投薬量を、該被験体に投与することを含む、前記方法も提供する。
【0154】
[0182]単一部位または多数の部位への、単一の時点または多数の時点での、単一の直接注射によって、本明細書記載の方法(予防法または療法を含む)を達成することも可能である。投与はまた、多数の部位に対してほぼ同時であることも可能である。投与頻度を決定し、そして療法経過に渡って調整することも可能であり、そして投与頻度は、望
ましい結果を達成することに基づく。いくつかの場合、本発明の抗体(ポリペプチドを含む)、ポリヌクレオチド、および薬剤組成物の持続性連続放出配合物が適切でありうる。持続性放出を達成するための多様な配合物およびデバイスが当該技術分野に知られる。
【0155】
[0183]患者、被験体、または個体には、ヒト、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、ブタ、およびヒツジ動物などの哺乳動物が含まれる。被験体は、好ましくはヒトであり、そして疾患に罹患していてもまたはしていなくても、あるいは現在、症状を示していてもまたは示していなくてもよい。アルツハイマー病の場合、十分に長く生存したならば、実質的に誰もが、アルツハイマー病を患うリスクがある。したがって、対象患者のリスクの評価のいずれも必要とせずに、一般的な集団に、本方法を予防的に投与することも可能である。本方法は、アルツハイマー病の既知の遺伝的リスクを有する個体に有用である。こうした個体には、この疾患を経験した親戚を有する個体、および遺伝的マーカーまたは生化学的マーカーの分析によって、リスクがあると決定された個体が含まれる。アルツハイマー病に向かうリスクの遺伝子マーカーには、APP遺伝子中の突然変異、特に、それぞれHardy突然変異およびスウェーデン突然変異と称される、717位の突然変異、ならびに670位および671位の突然変異が含まれる(Hardy(1997)Trends Neurosci. 20:154−9を参照されたい)。他のリスクマーカーは、プレセニリン遺伝子、PS1およびPS2、ならびにApoE4における突然変異、ADの家族歴、高コレステロール血症またはアテローム性動脈硬化症である。現在アルツハイマー病を患う個体は、特徴的な認知症ならびに上述のリスク要因の存在から認識可能である。さらに、ADを有する個体を同定するため、いくつかの診断試験が利用可能である。これらには、CSFタウおよびAβ42レベルの測定が含まれる。上昇したタウおよび減少したAβ42レベルが、ADの存在を示す。ADRDA(アルツハイマー病および関連障害関連)基準によって、アルツハイマー病を患う個体を診断することもまた可能である。無症状患者において、どの年齢で治療を開始することも可能である(例えば10歳、20歳、30歳)。しかし、通常、患者が40歳、50歳、60歳または70歳に到達するまで、治療を開始する必要はない。治療は、典型的には、ある期間に渡って、多数の投薬量を必要とする。長期に渡って、当該技術分野に知られる多様な方法によって、治療を監視することも可能である。潜在的なダウン症候群患者の場合、療法剤を母親に投与することによって出生前に、または生後間もなく、治療を開始することも可能である。
【0156】
[0184]上述の方法で使用可能である薬剤組成物には、本明細書記載の抗体、ポリペプチド、および/またはポリヌクレオチドのいずれも含まれる。いくつかの態様において、抗体は、抗体6Gまたは表3に示すその変異体である。いくつかの態様において、抗体は、Aβペプチドに特異的に結合する抗体であり、そして損なわれたエフェクター機能を有する定常領域を含む。
【0157】
投与および投薬量
[0185]抗体は、好ましくは、キャリアー;好ましくは薬学的に許容しうるキャリアー中で、哺乳動物に投与される。適切なキャリアーおよびその配合が、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 第18版, A. Gennaro監修, Mack Publishing Co., ペンシルバニア州イーストン, 1990;およびRemington, The Science and
Practice of Pharmacy 第20版 Mack Publishing, 2000に記載される。典型的には、配合物中に、適切な量の薬学的に許容しうる塩を用いて、配合物を等張性にする。キャリアーの例には、生理食塩水、リンゲル溶液およびデキストロース溶液が含まれる。溶液のpHは、好ましくは約5〜約8であり、そしてより好ましくは約7〜約7.5である。さらなるキャリアーには、持続性放出調製物、例えば抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが含まれ、このマトリックスは、成形物品の形、例えばフィルム、リポソームまたは微粒子である。当業者には、例えば投与経路および投与される抗体の濃度に応じて、特定のキャリアーがより好ましい可能性もあることが明らかであろう。
【0158】
[0186]注射(例えば全身性、静脈内、腹腔内、皮下、筋内、門脈内、脳内、脳室
内、および鼻内)によって、または有効な型で血流に送達されることを確実にする注入などの他の方法によって、抗体を哺乳動物に投与することも可能である。単離灌流(isolated perfusion)技術、例えば単離組織灌流によって、抗体を投与して、限局性療法効果を発揮することもまた可能である。静脈内注射が好ましい。
【0159】
[0187]抗体投与に関する有効投薬量および投与スケジュールを経験的に決定することも可能であり、そしてこうした決定は当該技術分野の技術範囲内である。当業者は、投与しなければならない抗体の投薬量は、例えば、抗体を投与される哺乳動物、投与経路、用いる抗体の特定の種類および哺乳動物に投与される他の薬剤に応じて多様であろうことを理解するであろう。抗体の適切な用量を選択する際の指針が、抗体の療法的使用に関する文献、例えばHandbook of Monoclonal Antibodies, Ferroneら監修, Noges Publications, ニュージャージー州パークリッジ, 1985, 22章およびpp.303−357; Smithら, Antibodies in Human Diagnosis and Therapy, Haberら監修, Raven Press, ニューヨーク, 1977, pp.365−389に見られる。単独で用いる抗体の典型的な一日投薬量は、上述の要因に応じて、1日あたり約1μg/kg〜100mg/kg体重までの範囲、またはそれより多いことも可能である。一般的に、以下の用量のいずれかを用いることも可能である:少なくとも約50mg/kg体重;少なくとも約10mg/kg体重;少なくとも約3mg/kg体重;少なくとも約1mg/kg体重;少なくとも約750μg/kg体重;少なくとも約500μg/kg体重;少なくとも約250μg/kg体重;少なくとも約100μg/kg体重;少なくとも約50μg/kg体重;少なくとも約10μg/kg体重;少なくとも約1μg/kg体重の用量またはそれより多くを、投与する。一時的脳アミロイド血症(CAA)などの潜在的な副作用を回避するため、治療開始時に、より低い用量またはより低い頻度で、抗体を投与することも可能である。
【0160】
[0188]いくつかの態様において、1より多い抗体が存在することも可能である。こうした組成物は、本発明の少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つの異なる抗体(ポリペプチドを含む)を含有することも可能である。
【0161】
[0189]1以上の他の療法剤の有効量と組み合わせて、哺乳動物に抗体を投与することもまた可能である。抗体を、1以上の他の療法剤と連続してまたは同時に投与することも可能である。抗体および療法剤の量は、例えば、用いる薬剤の種類、治療する病的状態、ならびに投与のスケジューリングおよび経路に応じるが、一般的に、各々を個々に用いる場合より少ないであろう。
【0162】
[0190]哺乳動物に抗体を投与した後、当業者に周知の多様な方法で、哺乳動物の生理学的状態を監視することも可能である。
[0191]投与および投薬量の上記原理を、本明細書記載のポリペプチドに適応させることも可能である。
【0163】
[0192]本明細書記載の抗体またはポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを、所望の細胞における抗体またはポリペプチドの送達および発現に用いることもまた可能である。発現ベクターを用いて、抗体の発現を導くことも可能であることが明らかである。発現ベクターを、全身性、腹腔内、静脈内、筋内、皮下、クモ膜下内、脳室内、経口、経腸、非経口、鼻内、皮膚投与するか、または吸入によって投与することも可能である。例えば、発現ベクターの投与には、注射、経口投与、微粒子銃、またはカテーテル化投与、および局所投与を含む、限局性投与または全身性投与が含まれる。当業者は、in vivoで、外因性タンパク質の発現を得るための、発現ベクターの投与を熟知している。例えば、米国特許第6,436,908号;第6,413,942号;および第6,376,471号を参照されたい。
【0164】
[0193]本発明の抗体をコードするポリヌクレオチドを含む療法組成物のターゲティング送達を用いることもまた可能である。受容体仲介性DNA送達技術が、例えば、Findeisら, Trends Biotechnol.(1993)11:202;
Chiouら, Gene Therapeutics: Methods And Applications Of Direct Gene Transfer(J.A. Wolff監修)(1994); Wuら, J. Biol. Chem.(1988)263:621; Wuら, J. Biol Chem.(1994)269:542; Zenkeら, Proc. Natl. Acad. Sci.(USA)(1990)87:3655; Wuら, J. Biol. Chem.(1991)266:338に記載される。遺伝子治療プロトコルにおいて、限局性投与のため、約100ng〜約200mgの範囲のDNAで、ポリヌクレオチドを含有する療法組成物を投与する。遺伝子治療プロトコル中、約500ng〜約50mg、約1μg〜約2mg、約5μg〜約500μg、および約20μg〜約100μgの濃度範囲のDNAを用いることも可能である。遺伝子送達ビヒクルを用いて、本発明の療法ポリヌクレオチドおよびポリペプチドを送達することも可能である。遺伝子送達ビヒクルは、ウイルス起源または非ウイルス起源であることも可能である(一般的に、Jolly, Cancer Gene Therapy(1994)1:51; Kimura, Human Gene Therapy(1994)5:845; Connelly, Human Gene
Therapy(1995)1:185;およびKaplitt, Nature Genetics(1994)6:148を参照されたい)。内因性哺乳動物または異種プロモーターを用いて、こうしたコード配列の発現を誘導することも可能である。コード配列の発現は、恒常性であっても、または制御されていても、いずれでもよい。
【0165】
[0194]所望のポリヌクレオチドの送達および所望の細胞における発現のための、ウイルスに基づくベクターが当該技術分野に周知である。ウイルスに基づく典型的なビヒクルには、限定されるわけではないが、組換えレトロウイルス(例えばPCT公報第WO
90/07936号;第WO 94/03622号;第WO 93/25698号;第WO 93/25234号;第WO 93/11230号;第WO 93/10218号;第WO 91/02805号;米国特許第5,219,740号;第4,777,127号; GB特許第2,200,651号;およびEP 0 345 242を参照されたい)、アルファウイルスに基づくベクター(例えばシンドビスウイルスベクター、セムリキ森林ウイルス(ATCC VR−67; ATCC VR−1247)、ロスリバーウイルス(ATCC VR−373; ATCC VR−1246)およびベネズエラ・ウマ脳炎ウイルス(ATCC VR−923; ATCC VR−1250; ATCC
VR 1249; ATCC VR−532))、およびアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター(例えばPCT公報第WO 94/12649号;第WO 93/03769号;第WO 93/19191号;第WO 94/28938号;第WO 95/11984号および第WO 95/00655号)が含まれる。Curiel, Hum. Gene Ther.(1992)3:147に記載されるような、死んだアデノウイルスに連結されたDNAの投与もまた使用可能である。
【0166】
[0195]非ウイルス送達ビヒクルおよび方法を使用することもまた可能であり、これには限定されるわけではないが、死んだアデノウイルスのみに連結されたまたは連結されないポリカチオン性凝集DNA(例えばCuriel, Hum. Gene Ther. (1992)3:147を参照されたい);リガンド連結DNA(例えばWu, J. Biol. Chem.(1989)264:16985を参照されたい);真核細胞送達ビヒクル細胞(例えば米国特許第5,814,482号; PCT公報第WO 95/07994号;第WO 96/17072号;第WO 95/30763号;および第WO 97/42338号を参照されたい)および核酸電荷中和または細胞膜との融合が含まれる。裸のDNAを使用することもまた可能である。典型的な裸のDNA導入法が、PCT公報第WO 90/11092号および米国特許第5,580,859号に記載される。遺伝子送達ビヒクルとして作用可能なリポソームが、米国特許第5,422,120号; PCT公報第WO 95/13796号;第WO 94/23697号;第WO 91/14445号;およびEP 0 524 968に記載される。さらなるアプローチが、Philip, Mol. Cell Biol.(1994)14:24
11、およびWoffendin, Proc. Natl. Acad. Sci.(1994)91:1581に記載されている。
キット
[0196]本発明はまた、アルツハイマー病または他のAβ関連疾患(ダウン症候群、パーキンソン病、多発脳梗塞性認知症、軽度認識障害、脳アミロイド血管症、血管におけるAβペプチドの沈着物によって引き起こされる血管障害(脳卒中およびHCHWA−Dなど))などの病的状態を治療するか、あるいはAβまたはβAPPを検出するかまたは精製するのに有用な物質を含有する、製品およびキットも提供する。製品は、ラベルがついた容器を含む。適切な容器には、例えば瓶、バイアル、および試験管が含まれる。ガラスまたはプラスチックなどの多様な材料から、容器を形成することも可能である。容器は、病的状態を治療するか、あるいはAβまたはβAPPを検出するかまたは精製するのに有効な活性剤を有する組成物を保持する。組成物中の活性剤は抗体であり、そして好ましくは、AβまたはβAPPに特異的なモノクローナル抗体を含む。いくつかの態様において、活性剤は、抗体6G、あるいは抗体6G由来の抗体またはポリペプチドいずれかを含む。いくつかの態様において、活性剤は、損なわれたエフェクター機能を有する、本明細書記載の抗Aβ抗体またはポリペプチドを含む。いくつかの態様において、抗Aβ抗体またはポリペプチドは、損なわれたエフェクター機能を有する重鎖定常領域を含む。容器上のラベルは、組成物が、アルツハイマー病などの病的状態を治療するか、あるいはAβまたはβAPPを検出するかまたは精製するのに用いられることを示し、そしてまた、上述のものなどの、in vivoまたはin vitro使用のいずれかに関する使用法を示すことも可能である。
【0167】
[0197]本発明はまた、本明細書記載の抗体(6Gなど)、ポリペプチド、ポリヌクレオチドのいずれかを含むキットも提供する。いくつかの態様において、本発明のキットは、上述の容器を含む。他の態様において、本発明のキットは、上述の容器、および緩衝剤を含む第二の容器を含む。商業的観点および使用者の観点から望ましい他の物質がさらに含まれることも可能であり、これらには、他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、および本明細書記載の方法いずれか(アルツハイマー病を治療するための方法、および脳中のAβペプチドの集積を阻害するかまたは減少させる方法など)を実行するための使用説明を記した添付文書が含まれる。AβまたはβAPPを検出するかまたは精製するために用いようとするキットにおいて、抗体は典型的には検出可能マーカー、例えば放射性同位体、蛍光化合物、生物発光化合物、化学発光化合物、金属キレーターまたは酵素で標識されている。
【0168】
[0198]いくつかの態様において、本発明は、薬剤としての使用および/または薬剤製造のための使用の関連で、本明細書記載の方法のいずれかで使用するための組成物(本明細書記載)を提供する。
【0169】
[0199]以下の実施例は本発明を例示するために提供するが、限定するためではない。
実施例
実施例1.抗体6Gおよびその変異体の結合親和性決定
A.一般的な方法
[0200]本実施例および他の実施例では、以下の一般的な方法を用いた。
【0170】
クローン性質決定に用いた発現ベクター
[0201]抗体のFab断片の発現は、Barbas(2001)Phage display: a laboratory manual, ニューヨーク州コールドスプリングハーバー, Cold Spring Harbor Laboratory Press pg 2.10、ベクターpComb3Xに記載されるものと類似の、IPTG誘導性lacZプロモーターの調節下にあったが、以下のさらなるドメインの付加および発現の修飾を含んだ:ヒト・カッパ軽鎖定常ドメインおよびIgG2aヒト免疫グロブリンのCH1定常ドメイン、Igガンマ−2鎖C領域、タンパク質寄託番号P01859;免疫グロブリン・カッパ軽鎖(ヒト(homosapiens))、タンパク質寄託
番号CAA09181。
【0171】
小規模Fab調製
[0202]96ウェルプレート中のFabの小規模発現を以下のように行った。Fabライブラリーで形質転換した大腸菌から出発して、コロニーを摘み取って、マスタープレート(寒天LB+アンピシリン(50μg/ml)+2%グルコース)および作業プレート(2ml/ウェル、1.5mlのLB+アンピシリン(50μg/ml)+2%グルコースを含有する96ウェル/プレート)の両方に接種した。両方のプレートを30℃で8〜12時間増殖させた。マスタープレートを4℃で保存し、そして作業プレート由来の細胞を5000rpmでペレットにし、そして1mlのLB+アンピシリン(50μg/ml)+1mM IPTGに再懸濁して、Fabの発現を誘導した。30℃で5時間発現させた後、遠心分離によって細胞を採取し、次いで、500μlの緩衝剤HBS−EP(100mM HEPES緩衝剤、pH7.4、150mM NaCl、0.005%P20)に再懸濁した。凍結(−80℃)後、37℃の融解の1周期によって、HBS−EP再懸濁細胞の溶解を達成した。細胞溶解物を5000rpmで30分間遠心分離して、Fabを含有する上清から細胞破片を分離した。次いで、上清をBIAcoreプラズモン共鳴装置に注入して、各Fabの親和性情報を得た。DNA配列を決定するため、そして大規模Fab産生および以下に記載するような詳細な性質決定のため、マスタープレートからFabを発現するクローンをレスキューした。
【0172】
大規模Fab調製
[0203]詳細な動力学パラメータを得るため、Fabを発現させ、そして大規模培養から精製した。200mlのLB+アンピシリン(50μg/ml)+2%グルコースを含有する三角フラスコに、選択したFab発現大腸菌クローン由来の一晩培養物5mlを接種した。1.0のOD550nmが達成されるまで、クローンを30℃でインキュベーションし、そして次いで、培地を200mlのLB+アンピシリン(50μg/ml)+1mM IPTGに交換することによって、誘導した。30℃で5時間発現させた後、遠心分離によって細胞をペレットにし、次いで、10mlのPBS(pH8)に再懸濁した。2周期の凍結/融解(それぞれ−80℃および37℃)によって、細胞の溶解を得た。PBS、pH8で平衡化したNi−NTAスーパーフロー・セファロース(Qiagen、カリフォルニア州バレンシア)カラム上に細胞溶解物の上清を装填し、次いで5カラム体積のPBS、pH8で洗浄した。PBS(pH8)+300mMイミダゾールを含む異なる分画中に個々のFabが溶出された。Fabを含有する分画をプールし、そしてPBS中で透析し、次いで親和性性質決定前に、ELISAによって定量化した。
【0173】
完全抗体調製
[0204]完全抗体を発現するため、哺乳動物発現ベクター中に重鎖および軽鎖の可変領域をクローニングし、そして一過性発現のため、リポフェクタミンを用いて、HEK293細胞内にトランスフェクションした。標準法を用い、プロテインAを用いて、抗体を精製した。
【0174】
[0205]ベクターpDb.6G.hFc2aは、6G抗体の重鎖を含む発現ベクターであり、そして重鎖の一過性発現または安定発現に適している。ベクターpDb.6G.hFc2aは、以下の領域に対応するヌクレオチド配列を有する:ネズミ・サイトメガロウイルス・プロモーター領域(ヌクレオチド1−612);合成イントロン(ヌクレオチド619−1507);DHFRコード領域(ヌクレオチド707−1267);ヒト成長ホルモン・シグナルペプチド(ヌクレオチド1525−1602);6Gの重鎖可変領域;以下の突然変異を含有するヒト重鎖IgG2a定常領域:A330P331からS330S331(野生型IgG2a配列に準拠するアミノ酸番号付け; Eur. J.
Immunol.(1999)29:2613−2624を参照されたい); SV40後期ポリアデニル化シグナル; SV40エンハンサー領域;ファージfl領域およびベータ・ラクタマーゼ(AmpR)コード領域。
【0175】
[0206]ベクターpEb.6G.hKは、6G抗体の軽鎖を含む発現ベクターであり、そして軽鎖の一過性発現に適している。ベクターpEb.6G.hKは、以下の領域
に対応するヌクレオチド配列を有する:ネズミ・サイトメガロウイルス・プロモーター領域(ヌクレオチド1−612);ヒトEF−1イントロン(ヌクレオチド619−1142);ヒト成長ホルモン・シグナルペプチド(ヌクレオチド1173−1150);抗体6G軽鎖可変領域;ヒト・カッパ軽鎖定常領域; SV40後期ポリアデニル化シグナル; SV40エンハンサー領域;ファージfl領域およびベータ・ラクタマーゼ(AmpR)コード領域。
【0176】
Biacoreアッセイ
[0207]BIAcore3000TM表面プラズモン共鳴(SPR)システム(BIAcore, INC. ニュージャージー州ピスカタウェイ)を用いて、6Gモノクローナル抗体の親和性を決定した。親和性を決定する1つの方法は、CM5チップ上に6Gを固定して、そして抗体に対するAβ1−40ペプチドまたは他のAβペプチドの結合動力学を測定することであった。供給者の指示にしたがって、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸(EDC)およびN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)でCM5チップを活性化した。抗体6Gまたはその変異体を10mM酢酸ナトリウムpH4.0または5.0で希釈し、そして0.005mg/mlの濃度で活性化チップ上に注入した。個々のチップチャネルを渡る、多様な流動時間を用いて、ある範囲の抗体密度を達成した:1000〜2000または2000〜3000応答単位(RU)。チップをエタノールアミンでブロッキングした。再生研究によって、2体積のPIERCE溶出緩衝液および1体積の4M NaClを含有する溶液が、200回の注入に渡って、チップ上の6Gの活性を維持しつつ、結合したAβペプチドを有効に除去することが示された。すべてのBIAcoreアッセイに関して、HBS−EP緩衝液(0.01M HEPES、pH7.4、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.005%サーファクタントP20)を流動緩衝液として用いた。精製Aβ1−40合成ペプチドまたは他のAβペプチド試料の連続希釈(0.1〜10x概算K)を、100μl/分で1分間注入し、そして10分間の解離時間を許容した。BIAevaluationプログラムを用いて、データを1:1ラングミュア結合モデルに適合させることによって、動力学的会合速度(kon)および解離速度(koff)を同時に得た(Karlsson, R. Roos, H. Fagerstam, L. Petersson,
B.(1994). Methods Enzymology 6. 99−110)。koff/konとして、平衡解離定数(K)値を計算した。
【0177】
[0208]あるいは、SAチップ上にAβ1−40ペプチドまたは他のAβペプチドを固定し、そして固定されたAβペプチドに対する6G Fabおよび6G変異体のFabの結合動力学を測定することによって、親和性を決定した。表面プラズモン共鳴(SPR)システム(BIAcore3000TM、BIAcore, Inc.、ニュージャージー州ピスカタウェイ)によって、6G Fab断片およびその変異体Fab断片の親和性を決定した。供給者の指示にしたがって、SAチップ(ストレプトアビジン)を用いた。ビオチン化Aβペプチドを、HBS−EP(100mM HEPES、pH7.4、150mM NaCl、3mM EDTA、0.005%P20)で希釈し、そして0.005mg/mlの濃度で、チップ上に注入した。個々のチップチャネルを渡る、多様な流動時間を用いて、2つの範囲の抗原密度を達成した:詳細な動力学研究のための100〜400応答単位(RU)、ならびに濃度研究およびスクリーニングのための500〜2000RU。再生研究によって、100mMリン酸(また、2体積の50mM NaOHおよび1体積の70%エタノールを含有する溶液が続いてもよい)が、200回の注入に渡って、チップ上のAβペプチドの活性を維持しつつ、結合したFabを有効に除去することが示された。すべてのBIAcoreアッセイに関して、HBS−EP緩衝液を流動緩衝液として用いた。精製Fab試料の連続希釈(0.1〜10x概算KD)を、100μl/分で2分間注入し、そして10分間の解離時間を許容した。既知の濃度の標準Fab(アミノ酸分析によって決定)を用いたELISAおよび/またはSDS−PAGE電気泳動によって、Fabタンパク質の濃度を決定した。BIAevaluationプログラムを用いて、データを1:1ラングミュア結合モデルに適合させることによって、動
力学的会合速度(kon)および解離速度(koff)を同時に得た(Karlsson, R. Roos, H. Fagerstam, L. Petersson, B.(1994). Methods Enzymology 6. 99−110)。koff/konとして、平衡解離定数(K)値を計算した。
【0178】
ELISAアッセイ
[0209]非ビオチン化Aβペプチドへの抗体6Gおよび変異体の結合を測定するため、ELISAを用いた。PBS pH7.4中の2.5μg/mlのAβペプチドを用いて、1時間を超えて、4℃で、NUNC maxisorpプレートをコーティングした。プレートをPBS緩衝液、pH7.4中の1%BSAでブロッキングした。固定されたAβペプチドと一次抗体(細胞上清由来、抗Aβ抗体を含有する血清、あるいは所望の希釈の精製完全抗体またはFab)を室温で1時間インキュベーションした。洗浄後、二次抗体である、1:5000希釈のHRPコンジュゲート化ヤギ抗ヒト・カッパ鎖抗体(MP Biomedicals、55233)と、プレートをインキュベーションした。洗浄後、TMB基質(KPL、50−76−02、50−65−02)を添加することによって、結合した二次抗体を測定した。1Mリン酸を添加することによってHRP反応を停止し、そして450nmの吸光度を測定した。
【0179】
[0210]ビオチン化Aβペプチドへの抗体6Gおよび変異体の結合を測定するため、ELISAを用いた。PBS pH7.4中の6μg/mlのストレプトアビジン(Pierce、21122)を用いて、1時間を超えて、4℃で、NUNC maxisorpプレートをコーティングした。プレートをPBS緩衝液、pH7.4中の1%BSAでブロッキングした。洗浄後、PBS pH7.4中のビオチン化Aβペプチドを室温で1時間インキュベーションした。固定されたAβペプチドと一次抗体(細胞上清由来、抗Aβ抗体を含有する血清、あるいは所望の希釈の精製完全抗体またはFab)を室温で1時間インキュベーションした。洗浄後、二次抗体である、1:5000希釈のHRPコンジュゲート化ヤギ抗ヒト・カッパ鎖抗体(MP Biomedicals、55233)と、プレートをインキュベーションした。洗浄後、TMB基質(KPL、50−76−02、50−65−02)を添加することによって、結合した二次抗体を測定した。1Mリン酸を添加することによってHRP反応を停止し、そして450nmの吸光度を測定した。
B.Aβ1−40、Aβ1−42、および他のAβペプチドへの抗体6Gおよび変異体の結合親和性
[0211]抗体6Gの重鎖および軽鎖の可変領域のアミノ酸配列を図1に示す。上述のBiacoreを用いて決定した、Aβ1−40、Aβ1−42、およびAβ22−37への6G抗体の結合親和性を、以下の表2に示す。
表2.抗体6G Fab断片の結合親和性
【0180】
【表2】

【0181】
[0212]6Gの変異体のアミノ酸配列を以下の表3に示す。表3に示す変異体のすべてのアミノ酸置換は、6Gの配列に比較して記載される。6G変異体の相対的結合もまた、表3に示す。ELISAプレート表面上に固定された非ビオチン化Aβ1−40またはAβ1−42を用いた、上述のELISAによって、結合を決定した。
表3.抗体6G変異体に関するアミノ酸配列および結合データ
【0182】
【表3−1】

【0183】
【表3−2】

【0184】
(実施例2)
抗体6Gが結合するAβペプチド上のエピトープの性質決定
[0213]抗体6Gによって認識されるAβポリペプチド上のエピトープを決定するため、ELISA結合分析を用いた。多様なAβペプチド(Global Peptide Services、コロラド州)を、ELISAプレート上に固定した。上述のように、ELISAによって、固定されたAβへの6G完全抗体(20nM)の結合を測定した。Aβ1−40、Aβ1−42、およびAβ1−43のアミノ酸配列を以下の表5に示す。図2に示すように、抗体6Gは、Aβペプチド17−40、17−42、22−35、28−40、1−38、1−40、1−42、1−43、および28−42に結合する;が、28−42への結合は、他のAβペプチドよりはるかに弱かった。抗体6Gは、Aβペプチド1−16、1−28および33−40には結合しなかった。したがって、抗体6Gは、多様な一部切除Aβペプチド、例えば22−35、1−38、1−40、1−42、および1−43のC末端に結合する。
【0185】
[0214]以下の表4は、Biacoreアッセイを用いて、koff(1/s)によって測定した際の、他のAβペプチドに比較した、Aβ1−40への6Gの結合親和性を示す。抗体6Gは、他のペプチドに比較した際、最高の親和性でAβ1−40に結合し、一部切除Aβ1−40(1−36、1−37、1−38、および1−39など)、Aβ1−42およびAβ1−43への親和性は有意により低かった。これは、Aβのアミノ酸40(バリン)の側鎖または主鎖が、Aβ1−40への6Gの結合に関与し;そしてこのアミノ酸が存在しないと、結合は有意に減少する(例えば約10から約50〜250倍の親和性損失)ことを示す。カルボキシ末端アミド化Aβ1−40への親和性がより低いことから、Aβ1−40への6Gの結合が、Aβ1−40の未結合(free)C末端を伴うが、これに依存しないことが示される。Aβ1−42およびAβ1−43への結合の親
和性がより低いのは、Aβ1−40およびAβ1−42またはAβ1−43の単量体型の間のコンホメーションの相違による可能性もある。Aβ1−42の単量体は、溶液中で、Aβ1−40単量体とは異なるコンホメーションを有することが示されてきている。寄託番号1IYTで、Protein Data Bank(pdbファイル)に示されるAβ1−42に関する単量体構造座標;ならびに寄託番号1BA6および1BA4で、Protein Data Bank(pdbファイル)に示されるAβ1−40に関する単量体構造座標を参照されたい。
【0186】
表4
【0187】
【表4】

【0188】
アミン化学反応によって固定された6Gモノクローナル抗体(リガンド)を伴うCM5チップ上に、分析物としてペプチドが流れる
#カルボキシ末端がアミド化されたペプチド
[0215]抗体6GのエピトープマッピングをELISAアッセイによって行った。多様なAβペプチドのビオチン化15量体または10量体(これらのペプチドは、C末端に付加されたグリシンを有する)を、ストレプトアビジンでコーティングしたプレート上に固定した。抗体6G(2.5μg/ml〜10μg/ml)を、固定されたペプチドとインキュベーションし、そして上述のように結合を測定した。図3に示すように、抗体6Gは、C末端にグリシンを伴うアミノ酸20−34、21−35、22−36、23−37、24−38、25−39および25−34を持つAβペプチドに結合する;が、ペプチドのC末端にグリシンを有する、アミノ酸19−33、26−40、27−41、24−33、および26−35を持つAβペプチドには結合しない。これによって、抗体6Gが結合するエピトープには、25−34のアミノ酸が含まれることが示唆される。
【0189】
[0216]上述のデータに基づいて、抗体6Gが結合するエピトープには、アミノ酸25−34および40が含まれるようである。図4は、抗体6Gのエピトープを示す模式図である。
表5.β−アミロイド・ペプチドのアミノ酸配列
【0190】
【表5】

【0191】
B.抗体6Gは、APPには結合しない
[0217]6Gが、アミロイド前駆体タンパク質(APP)に結合するかどうか決定するため、野生型APPでトランスフェクションした細胞への6Gの結合を決定した。野生型ヒト・アミロイド前駆体タンパク質をコードするcDNAで、HEK293細胞をトランスフェクションした。トランスフェクション48時間後、モノクローナル抗体抗Aβ1−16(m2324)または6G(10%FCSを含むDMEM中、5μg/ml)とともに、細胞を氷上で45分間インキュベーションした。次いで、細胞を、PBS中で5分間3回洗浄し、4%PFAで固定した。細胞を、再び、PBS中で3回洗浄し、そして蛍光顕微鏡下で、Jackson Immunoresearchの二次Cy3−コンジュゲート化ヤギ抗マウス抗体(1:500の希釈)を用いて、抗体結合を検出した。
【0192】
[0218]図5に示すように、AβのN末端のエピトープを認識する、抗Aβ1−16抗体は、細胞上に発現されたAPP前駆体タンパク質に対する有意な結合を示した。対照的に、6Gは、APP発現細胞に結合しなかった。
実施例3.抗体2294が結合するAβペプチド上のエピトープの性質決定
[0219]抗体2294は、Aβ1−40でマウスを免疫することによって作製されたネズミ抗体である。この抗体は、US 2004/0146512およびWO 04/032868に記載される。
【0193】
[0220]上述のようなBiacoreを用いて、Aβ1−40、Aβ1−42、またはAβ22−37への抗体2294の結合親和性を測定した。以下の表6は、多様なAβペプチドへの抗体2294 Fab断片の親和性を示す。
表6.抗体2294 Fab断片の結合親和性
【0194】
【表6】

【0195】
[0221]ELISAアッセイによって、抗体2294のエピトープマッピングを行った。多様なAβペプチド(これらのペプチドは、C末端に付加されたグリシンを有する)のビオチン化15量体または10量体を、ストレプトアビジンでコーティングされたプレート上に固定した。NUNC maxisorpプレートを、PBS pH7.4中の
6μg/mlのストレプトアビジン(Pierce、21122)を用いて、1時間を超えて、4℃でコーティングした。プレートをPBS緩衝液、pH7.4中の1%BSAでブロッキングした。洗浄後、PBS pH7.4中のビオチン化Aβペプチドを、室温で1時間インキュベーションした。固定されたAβペプチドと抗体2294(2.5μg/ml〜10μg/ml)を室温で1時間インキュベーションした。洗浄後、二次抗体である、1:5000希釈のHRPコンジュゲート化ヤギ抗ヒト・カッパ鎖抗体(MP Biomedicals、55233)と、プレートをインキュベーションした。洗浄後、TMB基質(KPL、50−76−02、50−65−02)を添加することによって、結合した二次抗体を測定した。1Mリン酸を添加することによってHRP反応を停止し、そして450nmの吸光度を測定した。図6に示すように、抗体2294は、C末端にグリシンを伴う、アミノ酸20−34、21−35、22−36、23−37、24−38、25−39、26−40、および25−34を持つAβペプチドに結合する;が、ペプチドのC末端にグリシンを有する、アミノ酸19−33、27−41、24−33、および27−35を持つAβペプチドには結合しない。これによって、抗体2294が結合するエピトープには、26−34のアミノ酸が含まれることが示唆される。
【0196】
[0222]抗体2294に認識されるAβペプチド上のエピトープをさらに決定するため、ELISA結合分析を用いた。多様なAβペプチド(Global Peptide Services、コロラド州)をELISAプレート上に固定した。上述のようなELISAによって、固定Aβへの2294完全抗体(20nM)の結合を決定した。抗体2294は、Aβペプチド17−40、17−42、28−40、1−38、1−40、1−42、および1−43に結合する。抗体2294は、Aβペプチド1−16、1−28、28−42、22−35、および33−40には結合しなかった。したがって、抗体2294は、多様な一部切除Aβペプチド、例えば1−38、1−40、1−42、および1−43のC末端に結合する。
【0197】
[0223]以下の表7は、Biacoreアッセイによって測定した際の、他のAβペプチドに対して比較した、Aβ1−40への2294の結合を示す。抗体2294(完全抗体)は、他のペプチドに比較した際、Aβ1−40に最強の結合を有し、一部切除Aβ1−40(1−36、1−37、1−38、および1−39など)、Aβ1−42およびAβ1−43への結合は有意により低かった。これは、Aβのアミノ酸40(バリン)の側鎖または主鎖が、Aβ1−40への2294の結合に関与し;そしてこのアミノ酸が存在しないと、結合は有意に減少することを示す。
表7
【0198】
【表7】

【0199】
「−」は結合なしを示し;「+」は非常に低い結合を示し;「++」は中程度の結合を示し;「+++」は強い結合を示し;そして「++++」は非常に強い結合を示す。
[0224]上に示すデータに基づいて、抗体2294が結合するエピトープには、アミノ酸26−34および40が含まれるようである。抗体2294は、図6に示す抗体6Gに非常によく似たエピトープに結合する。しかし、抗体6Gの結合は、抗体2294よりも、アミノ酸40により依存しない。
【0200】
[0225]Biacoreアッセイを用いた、2294、6G、2H6、および2289間の抗体結合競合実験を行った。抗体2H6は、Aβ33−40に結合する抗体であり、そして米国仮出願60/653,197、2005年2月14日出願に記載される。抗体2289は、Aβ16−28に結合する抗体であり、そして米国公報第2004/0146512号およびPCT WO 04.032868に記載される。Biacoreアッセイを用いて、競合実験を行った。抗体2294、6G、2H6、および2289をCM5チップの異なるチャネル上に固定した。供給者の指示にしたがって、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸(EDC)およびN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)でCM5チップチャネルを活性化した。抗体2294、6G、2H6、および2289を、各々、10mM酢酸ナトリウムpH4.0で希釈し、そして0.005mg/mlの濃度で活性化チップ上に注入した。各チャネルをエタノールアミンでブロッキングした。Aβ1−40ペプチド(150μM)をチップ上に2分間流した。次いで、0.6μMの抗体2294(結合の競合に関して試験しようとするもの)をチップ上に1分間流した。すべてのBIAcoreアッセイに関して、HBS−EP緩衝液(0.01M HEPES、pH7.4、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.005%サーファクタントP20)を流動緩衝液として用いた。Aβ1−40の結合を測定した後、Pierce溶出緩衝液(製品番号21004、Pierce Biotechnology、イリノイ州ロックフォード)および4M NaClの混合物(2:1)で6秒間、2回洗浄することによって、チップのすべてのチャネルを再生した。次いで、抗体6G、2H6に関して、そして次いで抗体2289に関して、競合結合を行った。Aβ1−40への結合に関して、2294および6G間、ならびに2294および2H6間の競合が観察されたが、2294および2289間、または6Gおよび2289間に、競合は観察されなかった。固定された抗体およびチップ上を流れる同じ抗体間の競合の観察は、陽性対照として働いた。データは、抗体2294が、Aβ1−40への結合に関して、2H6および6Gと競合することを示す。
実施例4.ネズミFcγ受容体への抗体2294 Fc領域の結合親和性
[0226]上述のように、BIAcoreを用いて、Fcγ受容体への抗体Fc領域の結合親和性を測定した。簡潔には、アミン化学反応によって、精製ネズミFcγ受容体(R&D Systems)をBIAcore CM5チップ上に固定した。モノクローナル抗体の連続希釈(2nMから表8に示すような最大濃度までの範囲)を注入した。HBS−EP(0.01M HEPES、pH7.4、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.005%サーファクタントP20)を流動緩衝液および試料緩衝液として用いた。高親和性相互作用に関しては1:1ラングミュア相互作用モデルを、または低親和性相互作用に関しては定常状態親和性モデルを用いて、結合データを分析した。
【0201】
[0227]以下の表8は、K(nM)によって測定されるような、ネズミFcγRI、FcγRIIb、およびFcγRIIIへの抗体2294の結合親和性を示す。脱グリコシル化抗体は、N−グリコシル化が除去された定常領域を有する。表8に示すように、脱グリコシル化2294は、N−グリコシル化が除去されていない対応する抗体各々に比較した際、すべてのネズミFcγ受容体に、減少した親和性を有した。
表8.K(nM)によって測定した際のネズミFcγ受容体への抗体の結合親和性
【0202】
【表8】

【0203】
NB:試験した最大濃度で抗体を用いた際、有意な結合がない
実施例5.アルツハイマー病の動物モデルにおいて、Aβ沈着および認識を減少させる際の、抗体2294および脱グリコシル化抗体2294の効果
[0228]精製抗体2294を、20mM Tris−HCl pH8.0中、ペプチド−N−グリコシダーゼF(Prozyme、抗体mgあたり、0.05U)と37℃で7日間インキュベーションすることによって、脱グリコシル化抗体2294を調製した。MALDI−TOF−MSおよびタンパク質ゲル電気泳動によって、脱グリコシル化の完全性を検証した。プロテインAクロマトグラフィーによって、脱グリコシル化抗体を精製し、そしてQ−セファロースによって、内毒素を除去した。上述のBiacoreアッセイを用いて、脱グリコシル化2294のAβ1−40への結合親和性を試験し、そして脱グリコシル化2294のAβ1−40への結合親和性が、損なわれていない抗体2294のものと同一であることが見出された。
【0204】
[0229]認識欠損、組織学的症状、および微量出血の逆転に対する効果に関して、トランスジェニックマウスAPP Tg2576において、抗体2294および脱グリコシル化2294を試験した。抗体投与、組織学的および行動学的分析を以下に記載するように行う。
【0205】
[0230]抗体の投与。「スウェーデン」突然変異体アミロイド前駆体タンパク質を過剰発現するトランスジェニックマウス(K670N/M671を持つAPP Tg2576; Hsiaoら, Science 274:99−102(1996))を実験に用いた。これらのマウスに存在するアルツハイマー様表現型は、よく性質決定されてきている。Holcombら, Nat. Med. 4:97−100(1998); Holcombら, Behav. Gen. 29:177−185(1999);およびMcGowan E, Neurobiol. Dis. 6:231−244(1999)。16週間処置研究のため、20ヶ月齢のAPPトランスジェニックマウスを、4つの群の1つに割り当てた。第一の群には、16週間の期間、毎週、腹腔内抗Aβ抗体2294注射を投与した(n=4)。第二の群には、16週間の期間、毎週、腹腔内脱グリコシル化抗Aβ抗体2294注射を投与した(n=5)。第三の群には、16週間の期間、毎週、腹腔内抗AMN抗体(2906;マウス−モノクローナル抗ショウジョウバエ(Drosophila)記憶喪失タンパク質IgG1)注射を投与した(n=6)。非トランスジェニック同腹仔を、16週間、抗AMN抗体(n=4)または2294(n=2)のいずれかで、処置した。
【0206】
[0231]行動分析。16週間の抗体処置後、研究中のマウスを、先に記載されるように、2日間放射状アーム水迷路パラダイムに供する。Wilcockら, J. Neuroinflammation 1:24(2004)。装置は、先に記載されるような6アーム迷路である。Gordonら, Neurobiol. Aging 22:
377−385(2001)。第1日、5回3ブロックで15回の試験を行う。4匹のマウスのコホートを、各ブロックに関して連続して試験する(すなわち4匹のマウス各々が試験1を受ける場合、次いで同じマウスが試験2を受ける)。各5回の試験1ブロックの後、マウスの第二のコホートが試験を受け、マウスが第二ブロックの5回の試験に供される前に、長い休息期間を許す。においの手がかりを最小限にするため、コホート中の各マウスに関して、ゴール・アームは異なる。出発アームは、各トライアルに関して多様であり、どちらの日も、所定の個体に関して、ゴール・アームは一定のままである。最初の11回の試験では、プラットホームは交互に、可視であり、その後、隠される(最後の4回の試験では隠す)。第2日、すべての試験に関して、プラットホームが隠されている以外、第1日と正確に同じ方式で、マウスを試験する。1分間の時間枠で、エラー(正しくないアームへの進入)の数を測定する。20秒以内のアーム選択に失敗したマウスは1回のエラーに割り当てるが、この研究ではこの方式でエラーに割り当てなければならないマウスはいなかった。研究中はマウス番号を使用するため、試験者は、各マウスの処置群の同一性を知らない。放射状アーム水迷路タスクにおける依存性測定値は定量的であって、評価的ではないため、試験者のバイアスの見込みは減少する。個々の試験のばらつきの影響を最小限にするため、3回の連続試験に関する各マウスのエラーを平均して、各日5つのデータポイントを生じ、これを、StatView(SAS Institute Inc.、ノースカロライナ州)を用いたANOVAによって、統計的に分析する。
【0207】
[0232]組織学的分析。屠殺の日、マウスの体重を測定し、100mg/kgネンブタール(Abbott laboratories、イリノイ州ノースシカゴ)を過剰投与し、そして次いで、25mlの0.9%塩化ナトリウムで心臓内灌流する。脳を迅速に取り除き、そして組織病理のため、100mM KPO(pH7.2)中の4%パラホルムアルデヒドを新鮮に調製し、その中で、脳の左半分を24時間、液浸固定する。次いで、凍結保護のため、半分の脳を10%、20%および30%スクロース中、連続して24時間インキュベーションする。スライド式ミクロトームを用いて、25μ厚の水平切片を収集し、そしてアジ化ナトリウムを含むダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)中、4℃で保存して、微生物増殖を妨げる。600μ離れて等間隔である一連の8つの組織切片を、脳全体に渡って、無作為に選択し、そして先に記載されるように、総Aβに関して、自由流動(free−floating)免疫組織化学を用いて染色する(ウサギ・ポリクローナル抗汎Aβ;Biosource、カリフォルニア州カマリロ、1:10,000)。Gordonら, Exp. Neurol. 173:183−195(2002); Wilcockら, J. Neurosci. 24:6144−6151(2004)。NaCl飽和80%エタノール中の0.2%コンゴーレッドを用いて、600μm離れた、第二の一連の組織切片を染色する。別の組の切片もまたマウントし、そして2%塩酸中の2%フェロシアン化カリウムを15分間用いて、ヘモシデリンに関して染色し、その後、1%ニュートラルレッド溶液中で10分間対比染色する。Image−Pro Plus(Media Cybernetics、メリーランド州シルバースプリング)を用いて、コンゴーレッド染色およびAβ免疫組織化学の定量化を行って、陽性染色によって占められる面積の割合を分析する。前頭葉の1つの領域および海馬の3つの領域を分析する(海馬の値に局所的なバイアスがないことを確実にするため)。コンゴーレッドの最初の分析を行って、全体の値を得る。実質アミロイド沈着物のすべてを手動で削除した後、第二の分析を行って、血管コンゴーレッド染色に限定された面積の割合を得る。コンゴーレッドの実質面積を概算するため、全体の割合から、血管アミロイド値を引く。ヘモシデリン染色のため、すべての切片上で、プルシアンブルー陽性部位の数を計数し、そして切片あたりの部位の平均数を計算する。低倍率の切片で、動物間の定性的な相違を観察する。等間隔をおいた8つの切片を調べ、そして陽性プロフィールの数を決定し、そして平均して切片あたりの値とする。処置に関連する、ありうる相違を評価するため、一方向ANOVA、その後、フィッシャーのLSD平均比較によって、各処置群に関する値を分析する。
【0208】
[0233]ELISAを用いたAβペプチドの血清レベルの測定。抗体の最後の投薬
の1日後に収集した血清を希釈し、そしてPBS緩衝液、pH7.4中、5μg/mlの抗体6E10(Aβ1−17に結合する、抗ベータ・アミロイド抗体; Signet、マサチューセッツ州デダム)であらかじめコーティングした、96ウェル・マイクロタイタープレート(MaxiSorp; Nunc、デンマーク・ロスクライド)中でインキュベーションする。二次抗体は、1:5000希釈のビオチン化4G8(Aβ17−24に結合する抗ベータ・アミロイド抗体; Signet)である。ストレプトアビジン−西洋ワサビ・ペルオキシダーゼ・コンジュゲート(Amersham Biosciences)、その後、TMB基質(KPL、メリーランド州ガイザーズバーグ)を用いて、検出を行う。6〜400pMのスケーリングのAβ1−40(American Peptide)を標準曲線に用いる。
【0209】
[0234]本明細書記載の実施例および態様は、例示目的のみのためであり、そして当業者には、その見地で、多様な修飾または変化が示唆されるであろうし、そしてこれらは、本出願の精神および範囲内に含まれるものとすることが理解される。本明細書に引用するすべての刊行物、特許および特許出願は、個々の刊行物、特許または特許出願が、具体的にそして個々に本明細書に援用されると示されたのと同じ度合いに、すべての目的のため、全体として、本明細書に援用される。
【0210】
生物学的物質の寄託
[0235]以下の物質をアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、10801 University Boulevard, Manassas, Virginia 20110−2209, USA(ATCC)に寄託した:
【0211】
【表9】

【0212】
[0236]ベクターpEb.6G.hKは、6G軽鎖可変領域および軽鎖カッパ定常領域をコードするポリヌクレオチドであり;そしてベクターpDb.6G.hFc2aは、6G重鎖可変領域、および以下の突然変異:A330P331からS330S331(アミノ酸番号付けは、野生型IgG2a配列に準拠するKabat番号付けに基づく; Eur. J. Immunol.(1999)29:2613−2624を参照されたい)を含有する重鎖IgG2a定常領域をコードするポリヌクレオチドである。
【0213】
[0237]これらの寄託は、特許手続き上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約およびそれに基づく条例(ブダペスト条約)の規定のもとに行われた。これは、寄託日から30年間、寄託物の生存培養物の維持を保証する。この寄託は、ブダペスト条約の条件下で、ATCCによって入手可能になり、そしてRinat Neuroscience Corp.およびATCC間の取り決めの対象であり、これは、適正な米国特許の発行、あるいは米国または外国特許出願いずれかの公開開始の、いずれか早い方に際して、公共に、この寄託物の培養物の子孫が永続的に、そして無制限に利用可能になることを確実にし、そして米国特許商標庁長官が、35USCセクション122およびそれに準ずる長官命令(37CFRセクション1.14を含み、特に886 OG 638に関する)にしたがって、資格があると決定したものに対して、子孫の入手可能性を確実にする。
【0214】
[0238]本出願の譲受人は、寄託に際して、物質培養物が、適切な条件下で培養された際に、死ぬかまたは失われるかまたは破壊された場合、届出に際して、物質が、同じ別のものと遅滞なく交換されるであろうことに合意している。寄託物質が入手可能であっても、特許法にしたがって、いずれかの政府の権威のもとに許諾された権利に違反して、本発明を実施するライセンスと見なしてはならない。
【0215】
抗体配列
【0216】
【化1−1】

【0217】
【化1−2】

【0218】
【化1−3】

【0219】
【化1−4】

【図面の簡単な説明】
【0220】
【図1】[0040]図1は、6G抗体の重鎖可変領域(配列番号1)および軽鎖可変領域(配列番号2)のアミノ酸配列を示す。Kabat CDRは太字テキストであり、そしてChothia CDRを下線で示す。重鎖および軽鎖の可変領域のアミノ酸残基を連続して番号付けしている。
【図2】[0041]図2は、ELISAによる抗体6Gのエピトープマッピングを示す。Aβペプチド(1−16、1−28、17−40、17−42、22−35、28−40、28−42、1−38、1−40、1−42、1−43、および33−40)をELISAプレート上に固定した。モノクローナル抗体6G(20nM)を多様な固定ペプチドと1時間インキュベーションした。ヤギ抗ヒト・カッパHRPコンジュゲート化二次抗体を用いて、固定Aβペプチドに結合した抗体6Gを測定した。
【図3】[0042]図3は、ELISAによる抗体6Gのエピトープマッピングを示す。多様なAβペプチド(上の配列から下の配列の順で配列番号18〜29を割り当てる)をELISAプレート上に固定した。抗体6Gを多様な固定ペプチドと1時間インキュベーションした。ヤギ抗ヒト・カッパHRPコンジュゲート化二次抗体を用いて、固定Aβペプチドに結合した抗体6Gを測定した。「NB」は、結合が検出されないことを指す。
【図4】[0043]図4は、抗体6Gが結合するAβ上のエピトープを示す模式図である。アミロイド前駆体タンパク質(APP)中のAβの相対的位置および細胞膜中のAPPの部分を示す。「CT99」は、APPのC末端99アミノ酸を指す。示すアミノ酸配列に、配列番号30を割り当てる。
【図5】[0044]図5は、Aβ1−16に対して向けられるモノクローナル抗体(m2324)および抗体6Gでの、APP発現細胞の免疫染色を示す写真である。上部パネルは、細胞をm2324または6G(各5μg/ml)とインキュベーションし、そして二次Cy3コンジュゲート化ヤギ抗マウスまたは抗ヒト抗体によって結合を検出した後の、蛍光顕微鏡下の細胞を示す。下部パネルは、顕微鏡下で観察される細胞を示す。
【図6】[0045]図6は、ELISAによる抗体2294および6Gのエピトープマッピングを示す。多様なAβペプチド(上の配列から下の配列の順で配列番号18〜26、31、および27〜29を割り当てる)をELISAプレート上に固定した。抗体を多様な固定ペプチドと1時間インキュベーションした。ヤギ抗ヒト・カッパHRPコンジュゲート化二次抗体を用いて、固定Aβペプチドに結合した抗体6Gを測定した。重鎖および軽鎖の両方に結合し、そしてHRPコンジュゲート化二次抗体である、ヤギ抗マウスを用いて、固定Aβペプチドに結合した抗体2294を測定した。「NB」は結合が検出されないことを指す。「2294」および「6G」下の列中の数字は、450nmでの吸光度に相当する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Aβペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体であって、アミノ酸25−34および40を含むAβ1−40上のエピトープに結合し、Aβ1−42およびAβ1−43への結合よりも高い親和性でAβ1−40に結合し、そして抗体2294ではない、前記モノクローナル抗体。
【請求項2】
Aβ1−42またはAβ1−43への結合より、少なくとも約40倍高い親和性でAβ1−40に結合する、請求項1の抗体。
【請求項3】
抗体のFab断片が、約5nM以下の親和性でAβ1−40に結合する、請求項1の抗体。
【請求項4】
抗体のアイソタイプが、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4からなる群より選択される、請求項1の抗体。
【請求項5】
抗体がFc領域を含む重鎖定常領域を含み、該重鎖定常領域が、損なわれたエフェクター機能を有する、請求項1の抗体。
【請求項6】
Fc領域中のN−グリコシル化が除去されている、請求項5の抗体。
【請求項7】
抗体の重鎖定常領域が、A330P331からS330S331へのアミノ酸突然変異を含むヒトIgG2a定常領域であり、アミノ酸位が、ヒト野生型IgG2a配列に準拠するKabat番号付けに基づく、請求項5の抗体。
【請求項8】
抗体の重鎖定常領域が、E233F234L235からP233V234A235へのアミノ酸突然変異を含むヒトIgG4定常領域であり、アミノ酸位が、ヒト野生型IgG4配列に準拠するKabat番号付けに基づく、請求項5の抗体。
【請求項9】
ヒト抗体である、請求項1の抗体。
【請求項10】
ヒト化抗体である、請求項1の抗体。
【請求項11】
表3に示す抗体の重鎖可変領域由来の3つのCDRを含む重鎖可変領域、および表3に示す抗体の軽鎖可変領域由来の3つのCDRを含む軽鎖可変領域を含む、請求項1の抗体。
【請求項12】
配列番号1に示す抗体6G重鎖可変領域由来の3つのCDRを含む重鎖可変領域、および配列番号2に示す抗体6G軽鎖可変領域由来の3つのCDRを含む軽鎖可変領域を含む、請求項1の抗体。
【請求項13】
配列番号3、配列番号4、および配列番号5に示す3つのCDRを含む重鎖可変領域、ならびに配列番号6、配列番号7、および配列番号8に示す3つのCDRを含む軽鎖可変領域を含む、請求項1の抗体。
【請求項14】
配列番号1に示すアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号2に示すアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項1の抗体。
【請求項15】
配列番号11に示す重鎖アミノ酸配列、および配列番号12に示す軽鎖アミノ酸配列を含む、請求項1の抗体。
【請求項16】
表3に示す抗体の重鎖由来の3つのCDRを含む、抗体重鎖。
【請求項17】
3つのCDRが、配列番号1に示す抗体6G重鎖可変領域由来である、請求項16の抗体重鎖。
【請求項18】
配列番号1に示すアミノ酸配列を含む、請求項16の抗体重鎖。
【請求項19】
表3に示す抗体の軽鎖由来の3つのCDRを含む、抗体軽鎖。
【請求項20】
3つのCDRが、配列番号2に示す抗体6G軽鎖可変領域由来である、請求項19の抗体軽鎖。
【請求項21】
配列番号2に示すアミノ酸配列を含む、請求項19の抗体軽鎖。
【請求項22】
抗体6Gの結合特異性を有するかまたは保持する、抗体6Gの断片。
【請求項23】
断片が、Fab、Fab’、F(ab’)、またはFvである、請求項22の断片。
【請求項24】
請求項1〜15のいずれか1項の抗体および薬学的に許容しうるキャリアーを含む、薬剤組成物。
【請求項25】
請求項1〜15のいずれか1項の抗体をコードするヌクレオチド配列を含む、ポリヌクレオチド。
【請求項26】
配列番号13および14のヌクレオチド配列を含む、請求項25のポリヌクレオチド。
【請求項27】
請求項16〜18のいずれか1項の重鎖をコードするヌクレオチド配列を含む、ポリヌクレオチド。
【請求項28】
請求項19〜21のいずれか1項の軽鎖をコードするヌクレオチド配列を含む、ポリヌクレオチド。
【請求項29】
請求項22または23の断片をコードするヌクレオチド配列を含む、ポリヌクレオチド。
【請求項30】
請求項25のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項31】
請求項27のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項32】
ベクターが、ATCC第PTA−6786号の寄託番号を持つpDb.6G.hFc2aである、請求項31のベクター。
【請求項33】
請求項28のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項34】
ベクターが、ATCC第PTA−6787号の寄託番号を持つpEb.6G.hKである、請求項33のベクター。
【請求項35】
請求項29のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項36】
請求項25のポリヌクレオチドを含む宿主細胞。
【請求項37】
請求項27のポリヌクレオチドを含む宿主細胞。
【請求項38】
請求項28のポリヌクレオチドを含む宿主細胞。
【請求項39】
請求項29のポリヌクレオチドを含む宿主細胞。
【請求項40】
抗体が産生される条件下で、請求項36の宿主細胞を培養し;そして宿主細胞または培養から抗体を単離する工程を含む、抗体産生法。
【請求項41】
被験体において、アルツハイマー病を治療するための方法であって、請求項24の薬剤組成物の有効量を該被験体に投与することを含む、前記方法。
【請求項42】
被験体において、アミロイド斑の形成を抑制する方法であって、請求項24の薬剤組成物の有効量を該被験体に投与することを含む、前記方法。
【請求項43】
被験体において、アミロイド斑を減少させる方法であって、請求項24の薬剤組成物の有効量を該被験体に投与することを含む、前記方法。
【請求項44】
被験体において、アルツハイマー病と関連する症状の発展を遅延させる方法であって、請求項24の薬剤組成物の有効量を該被験体に投与することを含む、前記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−538925(P2008−538925A)
【公表日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−509136(P2008−509136)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【国際出願番号】PCT/US2006/016071
【国際公開番号】WO2006/118959
【国際公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(505129415)ライナット ニューロサイエンス コーポレイション (33)
【Fターム(参考)】