説明

アラミド繊維の紡糸方法および洗浄方法ならびに硫酸の回収方法

本発明は、本発明は、以下の工程:
a)アラミドポリマーを硫酸紡糸ドープからヤーンに紡糸し、水または希釈硫酸のためのインレットと硫酸が濃縮された水のためのアウトレットとを有する凝固剤浴中で該ヤーンを凝固する工程;
b)上記ヤーンを水洗して洗浄後ヤーンと、0.5〜20重量%の硫酸を含有する洗浄水とを得る工程;
c)上記硫酸が濃縮された水および任意的に上記洗浄水を上記硫酸回収ユニットにリサイクルする工程;
d)上記リサイクルされた硫酸が濃縮された水および任意的に上記洗浄水の硫酸含有量を蒸発によって増加させ、20〜98%硫酸および水を得る工程;
e)上記20〜98%硫酸を発煙硫酸と混合して98〜105%硫酸を得る工程;
f)硫酸紡糸ドープとして使用するため、上記98〜105%硫酸を上記紡糸ユニットにリサイクルする工程
を含む、紡糸ユニットおよび硫酸回収ユニットを用いて行う、アラミド繊維の紡糸方法および洗浄方法ならびに硫酸の回収方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紡糸ユニットおよび硫酸回収ユニットを用いて行う、アラミド繊維の紡糸方法および洗浄方法ならびに硫酸の回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常アラミド繊維は、PPTA(パラ−フェニレンテレフタルアミド)ポリマーを100%硫酸中に溶解した後、得られた紡糸ドープを紡糸口金を通して吐出することによって製造される。その後、硫酸は水を使用する洗浄工程において繊維から除去され、約10〜15%HSOの希釈溶液を得る。
上記の希釈硫酸溶液は、中和して閑却することができるが、その結果、少なからぬ硫酸塩が排出され、外部供給源から相当量の硫酸および水を使用する。従って、これを再利用することはより便利である。例えば別途の1段階蒸留プロセスにおいて96%硫酸まで濃縮することができる。しかし、このようなプロセスはエネルギーを消費するものであり、相当の流量の排水の元となる。このプロセスにおいて水は硫酸溶液から蒸発し、かなりの量のエネルギーを要する。さらに、蒸発した水は微量の硫酸を含有しており、一般水としての使用には適さない。従って、アラミドの紡糸プロセス中に得られた硫酸を回収してリサイクルするための、エネルギー使用量が低く、密閉系中で実施できる方法を創出することが目的である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
この目的のため、本発明は、以下の工程:
a)アラミドポリマーを硫酸紡糸ドープからヤーンに紡糸し、水または希釈硫酸のためのインレットと硫酸が濃縮された水のためのアウトレットとを有する凝固剤浴中で該ヤーンを凝固する工程;
b)上記ヤーンを水洗して洗浄後ヤーンと、0.5〜20重量%の硫酸を含有する洗浄水(washing water)とを得る工程;
c)上記硫酸が濃縮された水および任意的に上記洗浄水を上記硫酸回収ユニットにリサイクルする工程;
d)上記リサイクルされた硫酸が濃縮された水および任意的に上記洗浄水の硫酸含有量を蒸発によって増加させ、20〜98%硫酸および水を得る工程;
e)上記20〜98%硫酸を発煙硫酸と混合して98〜105%硫酸を得る工程;
f)硫酸紡糸ドープとして使用するため、上記98〜105%硫酸を上記紡糸ユニットにリサイクルする工程
を含む、紡糸ユニットおよび硫酸回収ユニットを用いて行う、アラミド繊維の紡糸方法および洗浄方法ならびに硫酸の回収方法に関する。
【0004】
本発明によると、蒸発した水は、上記紡糸プロセスの洗浄工程における水として使用するためにリサイクルすることができ、このことによって硫酸塩の排出をさらに削減することができる。好ましい実施態様において、ヤーンを向流式の操作によって水洗する。この水は、少量の酸、塩基または塩、特に例えば0.05〜0.5重量%の微量の硫酸を含有していてもよい。
【0005】
硫酸の高濃度化に使用される外部供給源からの発煙硫酸は、例えば96%HSO〜100%HSOである。この結果、高濃度化プロセスにおいて20%を超え98%以下(好ましくは約96%)のHSOが生じる。過剰分はプロセスから除去することができ、硫酸および水双方のリサイクルにおいて微量物質の蓄積を避けるためのパージ剤として使用することができる。
20〜98%HSOまで、好ましくは約96%まで、の高濃度化の間、酸中の有機物は過酸化水素による酸化によって分解する。得られたHSOは、発煙硫酸と混合して98〜105%、好ましくは約100%HSOとしたうえで再使用される。このプロセスは、実質的に水および硫酸のいかなる損失もなく、得られる硫酸は紡糸ドープとして使用するために紡糸ユニットにリサイクルされる。酸のリサイクルには発煙硫酸が導入されるから、過剰のHSOが生じ、この過剰分は販売し、あるいは他のプロセスで使用することができる。
【0006】
多数の蒸発プロセスで得られた凝縮物は、これらを集めたうえで紡糸プロセスにおける洗浄水として再使用することができる。
全部の蒸発プロセスにおけるエネルギー消費を最小化するために、熱交換が行われる。すなわち、交換した熱によって供給物を加熱し流出物を冷却する。
この方法を実行するための設備を、以下の図面によって説明する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】酸および凝縮物のリサイクルのブロック図を示す。
【図2】2連の機械的気相再圧縮プロセスのブロック図を示す。
【図3】3連の蒸発器およびその後の1段階蒸発工程のブロック図を示す。
【図4】2連の蒸発プロセスのブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、希釈硫酸を供給する紡糸プラントを含む全プロセスのブロック図を示す。この希釈硫酸は、3つの独立した蒸発工程1、2および3によって例えば96%硫酸に高濃度化され、このうちの大部分は工程4によって発煙硫酸を加えられてさらに高濃度化された後に紡糸プラントにリサイクルされ、過剰の硫酸はプロセスから除去される。
本ブロック図は、以下の要素を示す:
1=20〜25%硫酸までの、MVR技術を用いる予備高濃度化工程。
2=78%硫酸までの、多重効用型(multi−effect)蒸発工程。
3=96%硫酸までの、2連の蒸発工程。
4=発煙硫酸を用いる100%硫酸の調製。
【0009】
図2の第1の蒸発工程において、10〜15%の硫酸溶液は、2連の機械的蒸気再圧縮(mechanical vapor recompression=MVR)プロセスにより20〜25%硫酸溶液に高濃度化される。この工程は任意的なものであるが、この工程によって酸の高濃度化プロセスのエネルギー効率がよくなる。この工程において、供給物は流下液膜式分離器6によって蒸発し、一部の生成物をスクラバー8経由で与える蒸発器7はブロワー5を用いてプロセス中でさらに移送し、そして一部の生成物は再び流下液膜式熱交換器6および蒸発器7に通される。
このブロック図は、以下の要素を示す:
5=蒸発段階からの蒸気を圧縮するブロワー
6=熱交換器
7=蒸発容器
8=スクラバー
【0010】
図3において、硫酸溶液は、78%HSOまでの第2の蒸発工程のために蒸発ユニット中で55〜65%HSOまで高濃度化される3連の蒸発によって高濃度化された後、1段階の蒸発によって78%HSOを得る。このブロック図は、以下の要素を示す:
9=第1段階のグラファイト製流下液膜式蒸発器
10=第1段階のライニングされた蒸発器
11=第2段階のグラファイト製流下液膜
12=第2段階のライニングされた蒸発容器
13=第3段階のグラファイト製流下液膜式蒸発器
14=第3段階の蒸発容器
15=第4段階の流下液膜式蒸発器
16=第4段階の蒸発容器
17=混合凝縮装置
【0011】
図4において、硫酸は、2連の蒸発プロセスによって96%HSOまで高濃度化される。この最終工程において、熱硫酸循環中に過酸化水素を添加して酸中に存在する有機成分を酸化して分解する。添加に先立ってHを78%硫酸の一部と混合し、添加されるHの大部分が有機成分の転化率を向上するよう考慮する。供給される78%酸は予備加熱され、内装の加熱器を有する第1の蒸発容器18に通され、酸は約85%HSOまで高濃度化される。この85%酸は、第2の蒸発段階から来る蒸気を洗浄するために使用される洗浄カラム19に通され、気相から可能な限り多くのHSOを除去する。このカラムにおいても過酸化水素を添加して、第2の蒸発段階において生成したSOを、酸溶液中に存在する水によってHSOに転化するSOに酸化する。
洗浄カラムからの液状の85%酸は第2の蒸発段階へ供給され、酸は96%HSOまで高濃度化される。
このブロック図は、以下の要素を示す:
18=好ましくは熱交換器を有する、第1段階の蒸発容器
19=洗浄カラム
20=第2段階の蒸発容器
21=第2段階の加熱器
22=循環ポンプ
23=スプレーオフカラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
a)アラミドポリマーを硫酸紡糸ドープからヤーンに紡糸し、水または希釈硫酸のためのインレットと硫酸が濃縮された水のためのアウトレットとを有する凝固剤浴中で該ヤーンを凝固する工程;
b)上記ヤーンを水洗して洗浄後ヤーンと、0.5〜20重量%の硫酸を含有する洗浄水とを得る工程;
c)上記硫酸が濃縮された水および任意的に上記洗浄水を上記硫酸回収ユニットにリサイクルする工程;
d)上記リサイクルされた硫酸が濃縮された水および任意的に上記洗浄水の硫酸含有量を蒸発によって増加させ、20〜98%硫酸および水を得る工程;
e)上記20〜98%硫酸を発煙硫酸と混合して98〜105%硫酸を得る工程;
f)硫酸紡糸ドープとして使用するため、上記98〜105%硫酸を上記紡糸ユニットにリサイクルする工程
を含む、紡糸ユニットおよび硫酸回収ユニットを用いて行う、アラミド繊維の紡糸方法および洗浄方法ならびに硫酸の回収方法。
【請求項2】
工程b)において、ヤーンを向流式の操作によって水洗する、請求項1の方法。
【請求項3】
洗浄水の少なくとも一部を凝固剤浴のインレットにリサイクルし、任意的に洗浄水の残部を硫酸回収ユニットにリサイクルする、請求項1または2の方法。
【請求項4】
洗浄水を完全に凝固剤浴のインレットにリサイクルする、請求項3の方法。
【請求項5】
工程d)で得られた水を、ヤーンの洗浄用水として使用するために紡糸ユニットにリサイクルする、請求項1〜4のいずれか一項の方法。
【請求項6】
硫酸濃度が、工程d)において少なくとも2つ、好ましくは3つの別個の蒸発工程によって増加されたものである、請求項1〜5のいずれか一項の方法。
【請求項7】
5〜20%硫酸を含有するリサイクルされた硫酸が濃縮された水が、第1段階において蒸発によって16〜24%硫酸となり、第2段階において蒸発によって72〜82%硫酸となり、第3段階において蒸発によって94〜98%硫酸となる、請求項6の方法。
【請求項8】
工程d)の工程中または工程後、且つ工程e)の前に、蒸発処理された硫酸を過酸化水素で処理することにより、有機不純物の分解および/または二酸化硫黄の三酸化硫黄への酸化を行う、請求項1または2の方法。
【請求項9】
硫酸含量を3つの別個の蒸発工程によって増加させ、該硫酸を第3の蒸発工程中に過酸化水素の一部で処理し、そして該第3の蒸発工程で得られた蒸気を、凝縮および紡糸ユニットへのリサイクルに先んじて過酸化水素の残部で処理する、請求項8の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−500988(P2011−500988A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530396(P2010−530396)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【国際出願番号】PCT/EP2008/063576
【国際公開番号】WO2009/053254
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(501469803)テイジン・アラミド・ビー.ブイ. (48)
【Fターム(参考)】