説明

アラミド繊維製布帛の捺染方法

【課題】
アラミド繊維製布帛を捺染するにおいて、従来方法では得られなかった高堅牢度且つ高濃度固着で意匠性に優れ、風合いや着用快適性のよい捺染物を得ることができる捺染方法を提供する。
【解決手段】
メタ型アラミド繊維及び/又はパラ型アラミド繊維からなるアラミド繊維製布帛に分散染料、酸性染料、塩基性染料、建染染料より選ばれた一種又は二種以上の染料を含む糊を捺染後、乾燥したものにレーザーを照射し、しかるのちソーピングする。
レーザー照射前にエネルギー吸収剤を布帛に付着させておくことが効果的である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアラミド繊維製布帛の捺染方法に関するものであり、さらに詳しくは、高堅牢度、高濃度固着性があり、柄のシャープ性に優れ、かつ風合いが柔らかく、着用快適性に優れたアラミド繊維製布帛の捺染物を得るための捺染方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリ−m−フェニレンイソフタールアミド(通称メタ型アラミド、以下メタ型アラミドという)繊維、又は、ポリ−p−フェニレンイソフタールアミド(通称パラ型アラミド、以下パラ型アラミドという)繊維よりなるアラミド繊維は耐熱性や難燃性に優れ、かつ高強力であるため、それらの高機能を要求される分野において広く使用されているものである。しかしながら、アラミド繊維を素材とする布帛を捺染物とする場合、素材の性質上染料が容易には染着し難く、通常の方法にては十分な堅牢度や固着性のある捺染物が得られないという欠点がある。
このような欠点を除くために、従来、種々の捺染方法が提案されているものである。
【特許文献1】米国特許第6451070号明細書
【特許文献2】特開昭62−268876号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1の米国特許第6451070号明細書においては、顔料およびバインダーを含む糊を使用してアラミド繊維製布帛に捺染を施す方法が記載されている。これは従来他の繊維へ適用していた方法をすぐに応用できるものであり、比較的濃色で鮮明な柄を得ることができ、堅牢度面でも良好な耐光堅牢度を得ることができる方法である。しかしながら、バインダーを使用するため風合いは硬く、着用快適性に劣るという欠点がある。
【0004】
特許文献2の特開昭62−268876号公報ではジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセタミド、N−メチル−2−ピロリドン等の溶媒を使用した方法が記載されている。これはカチオン染料、アニオン染料、建染染料、分散染料などの染料とアクリル酸ポリマーの糊、および上記溶媒からなる捺染糊をアラミド繊維製布帛に捺染することにより、溶媒により繊維を膨潤させて繊維内部にまで染料を導入させるものである。この方法によれば建染染料以外では良好な固着率が得られ、比較的濃色でしかも鮮明でかつ風合いの良い捺染布を得ることができる。
【0005】
しかしながら、この方法では捺染糊に大量の溶媒を含むため環境に悪影響を与えるだけでなく、染料の繊維内部への到達には限界があり、そのため十分な耐光堅牢度を得ることができないという欠点がある。また建染染料では堅牢度は良好であるが十分な濃度を得ることができないという欠点もある。
【0006】
上記のようにアラミド繊維製布帛に捺染するにおいて、従来方法では濃色で鮮明な色を得ることや一部の堅牢度面ではある程度の改善が見られたが、十分な濃度でしかも良好な堅牢度及び風合いを兼ね備えた染色布帛を得るには十分ではなかった。
【0007】
本発明はこのような従来技術の欠点を解消するためのものであり、メタ型アラミド繊維及び/又はパラ型アラミド繊維からなる布帛に対し分散染料、酸性染料、塩基性染料、建染染料のいずれの染料で捺染しても高堅牢度はもとより、高濃度固着で風合いの良好な、着用快適性にすぐれた意匠性の高い捺染物を得ることができる捺染方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等はかかる課題を解決するためレーザーを利用することが効果的であることを見出し、本発明をするに到ったものである。
すなわち、本発明は請求項1に示すようにメタ型アラミド繊維及び/又はパラ型アラミド繊維からなるアラミド繊維製布帛に分散染料、酸性染料、塩基性染料、建染染料より選ばれた一種又は二種以上の染料を含む糊を捺染後、乾燥したものにレーザーを照射し、 しかる後ソーピングすることを特徴としている。
このように構成することにより、後述するように染料を繊維内の奥深くまで移行させ高堅牢度、高濃度固着性のある捺染物が得られるものである。
【0009】
更には、請求項2に示すごとく、レーザーを照射する前に予めエネルギー吸収剤を布帛に付着させておくことが、レーザー照射のエネルギー効率を高めると共に、色の違いによって生じるエネルギー吸収の差を緩和して、多色柄の意匠の固着を均一化する効果も併せ持つものであり得策である。
【0010】
本発明の捺染方法は更に具体的には次のような手順をとるものであり、その作用効果とともに詳述する。
すなわち本発明においては、メタ型アラミド繊維及び/又はパラ型アラミド繊維から構成された布帛に分散染料、酸性染料、塩基性染料、建染染料より選ばれた一種又は二種以上の染料を含む糊を用いて任意の柄の捺染を施した後乾燥し、染料を固着させる目的をもって該捺染部分にレーザーを照射する。
このときレーザーの照射された部分の繊維はレーザーのエネルギーにより膨潤するため繊維間に隙間を生じ、染料が繊維内の深部へ拡散浸透して行くものと考えられる。この内部への拡散浸透がレーザーという高エネルギーでかつ効率のよい手段によるため他の手段による捺染方法に比べて大きく、よって高固着で高堅牢度となるものと推定できるものである。
しかも、この膨潤による拡散浸透作用はメタ型又はパラ型のいずれのアラミド繊維製布帛においても同様に起こり、また、使用する染料も分散染料、酸性染料、塩基性染料、建染染料においてはいずれの染料で捺染しても高堅牢度で、高濃度固着の捺染物を得ることができるものである
【0011】
この効果をさらに高めるために、当該レーザーの波長領域に吸収帯を有するエネルギー吸収剤を、レーザー照射前に当該捺染部分に付着させておくことが効果的である。このエネルギー吸収剤はレーザーのエネルギーを効率良く吸収してレーザーによる膨潤浸透効果を助けるだけでなく、柄の色の違いによって生じるエネルギー吸収の差を緩和する働きを持ち、多色柄の意匠の固着を均一化して色柄をシャープに発現させる効果も併せ持つものである。
【0012】
レーザーを照射した後には未固着の染料を除去するため、定法にしたがってソーピングを行う。その際、還元状態による洗浄で未固着染料を分解した後に行っても良い。
【0013】
本発明はメタ型アラミド繊維又はパラ型アラミド繊維のどちらか一方のみによる布帛のほか、両者の交織又は混紡による布帛に対しても効果的に実施することができる。
【0014】
本発明におけるレーザーの種類としては、繊維が膨潤し染料が繊維内部に移行するのに十分なエネルギー与えることができるものであればいかなるタイプのレーザーでも使用することができる。
具体的には炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、半導体レーザー等が挙げられるが、これらの中から適するものを適宜選択し使用すればよい。
また、レーザーの出力条件は繊維が膨潤し染料が繊維内部に移行するのに十分なエネルギーを与えることができるレベルであればよく、過大な出力を要しない。
【0015】
使用する糊は染料と相溶性がよく、レーザーの照射効率を妨げず、洗浄によって容易に除去できるものであればいかなるタイプの糊も使用することができる。
具体的にはでんぷん、可溶性でんぷん、グアーガム、ローカストビーンガム、カルボキシメチルでんぷん、アルギン酸ナトリウム、水溶性メチルセルロース、エマルジョン等が挙げられるが、これらの中から適するものを適宜選択して使用すればよい。
【0016】
使用する染料は捺染糊に可溶であり、均質性に影響を及ぼさず、レーザーによって与えられるエネルギーに安定で、かつアラミド繊維内部まで移行染着するものであればいかなるタイプの染料を使用することができるが、研究の結果、染料の種類としては分散染料、酸性染料、塩基性染料、建染染料においては十分な効果が得られることが分かったものであり、これらの染料の中から適するものを適宜選択し使用すればよい。
なお、異種染料の組み合わせも捺染糊中での相溶性が良好で、発色に影響を及ぼさない限りはこれを妨げるものではない。
【0017】
レーザーのエネルギー吸収剤としては使用するレーザーの波長領域に吸収帯を持つ物質であればいかなる物質も使用できる。
たとえば赤外線領域に吸収帯を持つポリメチン系吸収剤、シアニン系吸収剤が有効であり、また染料のブラックであれば幅広い波長領域で吸収するので、レーザーにより染着しないものの中から適宜選択して使用すればよい。
この吸収剤は予め捺染糊の中に混合しておき、捺染作業と同時に付着させることが作業効率よりみて好ましいが、捺染後にスプレーで吹きつけ乾燥する等状況に応じて適する方法で付着させればよい。
【発明の効果】
【0018】
請求項1記載の本発明によれば、レーザー照射のエネルギーによる膨潤作用によって、メタ型アラミド繊維及び/又はパラ型アラミド繊維からなるアラミド繊維製布帛製品において、分散染料、酸性染料、塩基性染料、建染染料においては染料の種類の別なく、高堅牢度はもとより、高濃度固着した捺染物を得ることができるものであり、また、バインダーや溶媒を使用しないから風合いが柔らかく、着用快適性に優れた捺染物を得ることができ、また環境の汚染も最小限に押さえることができるものである。
【0019】
請求項2記載の発明によれば、多色柄が均一に固着し、高堅牢度かつ高濃度固着で、色柄がシャープに現れた意匠性に優れたアラミド繊維製布帛の捺染物を得ることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明に係る、高堅牢度且つ高濃度固着の捺染を施したアラミド繊維製布帛製品を得るという目的を、その工程中においてレーザー照射を施すという手段によって実現したものであって、更に詳しい本発明の実施例並びに比較例を示すと以下のとおりである。
【実施例】
【0021】
本発明で得られる効果は、次の数値を測定、算出して判断した。
(1)K/S値 測色機COLOR−7e2(倉敷紡績株式会社製)により反射率Rを測定し、下記のKubelka−Munk式にて算出した。この値は大きいほど着色濃度が大であることを示しているものである。
K/S=(1−R)2/2R( Rは捺染布の最大吸収波長における反射率)
(2)耐光堅牢度 JIS.L−0842に準じてカーボンアーク灯光40時間照射後、照射部分と未照射部分の色差をL*a*b*表色系における以下の計算式にて算出した。この値は大きいほど照射部分の耐光堅牢度が悪いことを示すものであり、数値10前後かそれ以下で耐光堅牢度は良好と判断できるものである。
【数1】

【0022】
なお、洗濯堅牢度はJIS.L−0844、汗堅牢度はJIS.L−0848、摩擦堅牢度はJIS.L−0849に準じて判定した。これらは1級〜5級にランク付けされ、数値が大きいほど良好であることを示すものである。
【0023】
(実施例1)
メタ型アラミド繊維100%の30番手単糸を縦糸、30番手単糸を横糸、縦密度82本/インチ、横密度60本/インチで製織し、毛焼き、糊抜きを行った織物に、ターペン400g/kg、乳化剤40g/kg、水560g/kgからなる糊を元糊として、元糊97重量%に、染料として建染染料のCibanoneGreenBF3重量%を混合した糊を捺染し、120℃で5分間乾燥した。
乾燥後赤外線吸収剤としてポリメチン系吸収剤1000ppm溶液を生地重量あたり50%の割合でスプレー後乾燥し、半導体レーザー(波長808nm)をエネルギー密度19.7W/cm2、スキャンスピード12mm/secの条件で照射した。その後水洗、還元状態での洗い、常法によるソーピングで未固着の染料を洗い落とした後乾燥した。
処理された織物の洗濯堅牢度、汗堅牢度、耐光堅牢度、摩擦堅牢度およびK/S値の測定結果は表1のとおりであり、湿時の摩擦堅牢度のみはやや劣るが、その他は十分な数値が得られた。
【0024】
(実施例2)
メタ型アラミド繊維100%の30番手単糸を縦糸、30番手単糸を横糸、縦密度82本/インチ、横密度60本/インチで製織し、毛焼き、糊抜きを行った織物に、ターペン400g/kg、乳化剤40g/kg、水560g/kgからなる糊を元糊として、元糊97重量%に、染料として分散染料のDianixBlueS−BG3重量%を混合した糊を捺染し120℃で5分間乾燥した。
乾燥後赤外線吸収剤としてポリメチン系吸収剤1000ppm溶液を生地重量あたり50%の割合でスプレー後乾燥し、半導体レーザー(波長808nm)をエネルギー密度27.5W/cm2、スキャンスピード12mm/secの条件で照射した。その後水洗、還元状態での洗い、常法によるソーピングで未固着の染料を洗い落とした後乾燥した。
処理された織物の洗濯堅牢度、汗堅牢度、耐光堅牢度、摩擦堅牢度およびK/S値の測定結果は表1のとおりであり、ほぼ全てにおいて十分な数値が得られた。
【0025】
(実施例3)
メタ型アラミド繊維100%の30番手単糸を縦糸、30番手単糸を横糸、縦密度82本/インチ、横密度60本/インチで製織し、毛焼き、糊抜きを行った織物に、ターペン400g/kg、乳化剤40g/kg、水560g/kgからなる糊を元糊として、元糊97重量%に、染料として酸性染料のKayakalanGrayBL3重量%、ポリメチン系赤外線吸収剤0.1重量%を混合した糊を捺染し120℃で5分間乾燥した。半導体レーザー(波長808nm)をエネルギー密度28.0W/cm2、スキャンスピード12mm/secの条件で照射した。その後水洗、還元状態での洗い、常法によるソーピングで未固着の染料を洗い落とした後乾燥した。
処理された織物の洗濯堅牢度、汗堅牢度、耐光堅牢度、摩擦堅牢度およびK/S値の測定結果は表1のとおりであり、摩擦堅牢度がやや劣る以外はほぼ全てにおいて十分な数値が得られた。
【0026】
(実施例4)
メタ型アラミド繊維100%の30番手単糸を縦糸、30番手単糸を横糸、縦密度82本/インチ、横密度60本/インチで製織し、毛焼き、糊抜きを行った織物に、ターペン400g/kg、乳化剤40g/kg、水560g/kgからなる糊を元糊として、元糊97重量%に、染料として塩基性染料のAizenCathilonBlueBRLH3重量%、ポリメチン系赤外線吸収剤0.1重量%を混合した糊を捺染し120℃で5分間乾燥した。半導体レーザー(波長808nm)をエネルギー密度11.2W/cm2、スキャンスピード12mm/secの条件で照射した。その後水洗、還元状態での洗い、常法によるソーピングで未固着の染料を洗い落とした後乾燥した。
処理された織物の洗濯堅牢度、汗堅牢度、耐光堅牢度、摩擦堅牢度およびK/S値の測定結果は表1のとおりであり、ほぼ全てにおいて十分な数値が得られた。
【0027】
(実施例5)
パラ型アラミド繊維100%の40番手双糸を縦糸、40番手双糸を横糸、縦密度60本/インチ、横密度42本/インチで製織し、毛焼き、糊抜きを行った織物に、ターペン400g/kg、乳化剤40g/kg、水560g/kgからなる糊を元糊として、元糊97重量%に、染料として塩基性染料のAizenCathilonBlueBRLH3重量%、ポリメチン系赤外線吸収剤0.1重量%を混合した糊を捺染し120℃で5分間乾燥した。半導体レーザー(波長808nm)をエネルギー密度28.0W/cm2、スキャンスピード12mm/secの条件で照射した。その後水洗、還元状態での洗い、常法によるソーピングで未固着の染料を洗い落とした後乾燥した。
処理された織物の洗濯堅牢度、汗堅牢度、耐光堅牢度、摩擦堅牢度およびK/S値の測定結果は表1のとおりであり、湿摩擦堅牢度がやや劣るが他はほぼ全てにおいて十分な数値が得られた。
【0028】
(実施例6)
パラ型アラミド繊維100%の40番手双糸を縦糸、40番手双糸を横糸、縦密度60本/インチ、横密度42本/インチで製織し、毛焼き、糊抜きを行った織物に、ターペン400g/kg、乳化剤40g/kg、水560g/kgからなる糊を元糊として、元糊97重量%に、染料として建染染料のCibanoneGreenBF3重量%、ポリメチン系赤外線吸収剤0.1重量%を混合した糊を捺染し120℃で5分間乾燥した。半導体レーザー(波長808nm)をエネルギー密度25.6W/cm2、スキャンスピード12mm/secの条件で照射した。その後水洗、還元状態での洗い、常法によるソーピングで未固着の染料を洗い落とした後乾燥した。
処理された織物の洗濯堅牢度、汗堅牢度、耐光堅牢度、摩擦堅牢度およびK/S値の測定結果は表1のとおりであり、ほぼ全てにおいて十分な数値が得られた。
【0029】
(比較例1)
実施例1と同一織成の織物にカルボキシメチルセルロース150g/kg、水850g/kgからなる糊を元糊として元糊を61重量%、ジメチルスルホキシドを35重量%に、染料として建染染料のCibanoneGreenBF3重量%を混合した糊を捺染し120℃で5分間乾燥してから170℃の過熱蒸気で15分間処理した。その後水洗、還元状態での洗い、常法によるソーピングで未固着の染料を洗い落とした後乾燥した。
この捺染品の堅牢度はまず良好であったが、K/S値に示されるように色は十分な濃度ではなかった。処理された織物の測定結果は表1のとおりであり、着色濃度や摩擦堅牢度において劣っていることがわかる。
【0030】
(比較例2)
実施例2と同一織成の織物にカルボキシメチルセルロース150g/kg、水850g/kgからなる糊を元糊として元糊を61重量%、ジメチルスルホキシドを35重量%に、染料として分散染料のDianixBlueS−BG3重量%を混合した糊を捺染し120℃で5分間乾燥してから170℃の過熱蒸気で15分間処理した。その後水洗、還元状態での洗い、常法によるソーピングで未固着の染料を洗い落とした後乾燥した。
この捺染品は十分な濃度は得られたが、色差の数値に見られるように十分な耐光堅牢度が得られなかった。処理された織物の測定結果は表1のとおりであり、耐光堅牢度や摩擦堅牢度において劣っていることがわかる。
【0031】
(比較例3)
実施例3と同一織成の織物にカルボキシメチルセルロース150g/kg、水850g/kgからなる糊を元糊として元糊を87重量%、1−シクロヘキシル−2−ピロリドンを10重量%に、染料として酸性染料のKayakalanGrayBL3重量%を混合した糊を捺染し120℃で5分間乾燥してから170℃の過熱蒸気で15分間処理した。その後水洗、還元状態での洗い、常法によるソーピングで未固着の染料を洗い落とした後乾燥した。
この捺染品はK/S値に見られるように十分な濃度が得られず、色差の数値に見られるように耐光堅牢度も十分ではなかった。なお、この比較例3においては洗濯、汗及び摩擦における堅牢度の判定数値が実施例3に対し相対的に高くあらわれているが、着色濃度が薄いために起こる逆転現象であり、実施例3に比較して着色濃度や耐光堅牢度の基本性能において明らかに劣る欠点を有しているものである。
【0032】
(比較例4)
実施例4と同一織成の織物にカルボキシメチルセルロース150g/kg、水850g/kgからなる糊を元糊として元糊を87重量%、1−シクロヘキシル−2−ピロリドンを10重量%に、染料として塩基性染料のAizenCathilonBlueBRLH3重量%を混合した糊を捺染し120℃で5分間乾燥してから170℃の過熱蒸気で15分間処理した。その後水洗、還元状態での洗い、常法によるソーピングで未固着の染料を洗い落とした後乾燥した。
この捺染品は十分な濃度が得られず、色差の数値に見られるように耐光堅牢度も十分ではなかった。また汗堅牢度が劣っていた。
【0033】
(比較例5)
実施例5と同一織成の織物にカルボキシメチルセルロース150g/kg、水850g/kgからなる糊を元糊として元糊を87重量%、1−シクロヘキシル−2−ピロリドンを10重量%に、染料として塩基性染料のAizenCathilonBlueBRLH3重量%を混合した糊を捺染し120℃で5分間乾燥してから170℃の過熱蒸気で15分間処理した。その後水洗、還元状態での洗い、常法によるソーピングで未固着の染料を洗い落とした後乾燥した。
この捺染品は十分な濃度は得られたが、色差の数値に見られるように十分な耐光堅牢度が得られなかった。処理された織物の測定結果は表1のとおりであり、汗堅牢度が著しく劣り実用としては使用できない程度であった。
【0034】
(比較例6)
実施例6と同一織成の織物にカルボキシメチルセルロース150g/kg、水850g/kgからなる糊を元糊として元糊を87重量%、1−シクロヘキシル−2−ピロリドンを10重量%に、染料として建染染料のCibanoneGreenBF3重量%を混合した糊を捺染し120℃で5分間乾燥してから170℃の過熱蒸気で15分間処理した。その後水洗、還元状態での洗い、常法によるソーピングで未固着の染料を洗い落とした後乾燥した。
この捺染品は染着がわずかで実用としては使用できない程度のものであり、K/S値及び色差は測定不能であった。また、各堅牢度の判定は行わなかった。
【0035】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタ型アラミド繊維及び/又はパラ型アラミド繊維よりなるアラミド繊維製布帛に分散染料、酸性染料、塩基性染料、建染染料より選ばれた一種又は二種以上の染料を含む糊を捺染後乾燥し、これにレーザー照射後ソーピングをすることを特徴とするアラミド繊維製布帛の捺染方法。
【請求項2】
レーザー照射前に予めレーザーのエネルギー吸収剤を布帛に付着させておくことを特徴とする請求項1記載のアラミド繊維製布帛の捺染方法。

【公開番号】特開2007−16346(P2007−16346A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−198821(P2005−198821)
【出願日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(590002389)静岡県 (173)
【出願人】(399091267)大和染工株式会社 (3)
【Fターム(参考)】