説明

アリーリデンイソオキサゾロン色素、着色組成物、感熱転写記録用インクシートおよび感熱転写記録方法

【課題】色相、転写性、耐光性および溶解性のすべてを同時に満足する新規なアリーリデンイソオキサゾロン色素、該アリーリデンイソオキサゾロン色素を含有する着色組成物、該アリーリデンイソオキサゾロン色素を含有する着色組成物、感熱転写記録用インクシートおよび感熱転写記録方法を提供する。
【解決手段】下記一般式で表される色素。


(式中、R1、R2およびR4はそれぞれ独立に置換または無置換の炭素数1〜6のアルキル基を表し、R3は置換または無置換の炭素数1〜6のアルコキシ基を表し、R5は1価の置換基を表し、nは0〜3の整数を表す。nが2または3のとき、複数のR5は同一でも異なってもよい。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規なアリーリデンイソオキサゾロン色素、該色素を含有する着色組成物、感熱転写記録用インクシートおよび感熱転写記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像記録材料としては、特にカラー画像を形成するための材料が主流であり、具体的には、インクジェット方式の記録材料、感熱転写方式の記録材料、電子写真方式の記録材料、転写式ハロゲン化銀感光材料、印刷インク、記録ペン等が盛んに利用されている。また、撮影機器ではCCDなどの撮像素子において、ディスプレイではLCDやPDPにおいて、カラー画像を記録、再現するためにカラーフィルターが使用されている。
カラー画像記録材料やカラーフィルターでは、フルカラー画像を再現あるいは記録するために、いわゆる加法混色法や減法混色法の3原色の着色剤(色素や顔料)が使用されている。しかしながら、好ましい色再現域を実現できる吸収特性を有し、且つさまざまな使用条件に耐えうる堅牢な着色剤がないのが実情であり、改善が強く望まれている。
【0003】
感熱転写記録には、支持体(ベースフィルム)上に熱溶融性インク層を形成させた感熱転写材料をサーマルヘッドにより加熱し該インクを溶融して受像材料上に記録する方式と、支持体上に熱移行性色素を含有する色素供与層を形成させた感熱転写材料をサーマルヘッドにより加熱して色素を受像材料上に熱拡散転写させる方式とがある。後者の感熱転写方式は、サーマルヘッドに加えるエネルギーを変えることにより色素の転写量を変化させることができるために階調記録が容易であり、高画質のフルカラー記録には特に有利である。しかしこの方式に用いる熱移行性色素には種々の制約があり、必要とされる性能を全て満たすものは極めて少ない。
【0004】
感熱転写記録材料に用いられる色素に必要とされる性能としては、例えば、視感度に優れ色再現上好ましい分光特性を有すること、転写し易いこと、光や熱に堅牢であること、種々の化学薬品に堅牢であること、合成が容易であること、溶媒へ容易に溶解すること、感熱転写用記録材料を作りやすいことなどがある。しかしながら、視感度に優れ色再現上好ましい分光特性を有し、転写性がよく、光や熱に堅牢であるとして提案されている従来の特定の色素(例えば、特許文献1および2参照)は、各性能はある程度高いものもあるが、全体的な性能のバランスとしては満足できるレベルではなく、さらなる改良が強く望まれている。また、近年では溶媒溶解性についてもさらなる改良が望まれている。
【0005】
一方、銀塩写真材料における増感色素として、アリーリデンイソオキサゾロン系骨格を有する色素が従来から知られている(特許文献3)。しかしながら、これら銀塩写真材料における増感色素は、ごく弱い光源であるセーフティライトの下での使用を想定されたものであり、着色組成物としての有用性は報告されておらず、特に感熱転写記録材料の色材としての有用性は全く報告されていない。
特許文献3中、例示化合物21および37として本発明の一般式(1)で表されるアリーリデンイソオキサゾロン色素に類似する構造が開示されているが、これらは本発明の一般式(1)で表される構造とは具体的な部分構造が異なるものである。詳しくは、本発明の一般式(1)で表されるアリーリデンイソオキサゾロン色素ではイソオキサゾロン環の3位が炭素数1〜6のアルキル基であり、かつアニリン部分のメチンに対してオルト位の置換基が(一般式(1)におけるR3の置換基)炭素数1〜6のアルコキシ基であり、さらにアニリン部分の窒素原子が炭素数1〜6のアルキル基2個で置換されているが、これらの各置換基の構造は特許文献3には開示されていない。すなわち、特許文献3で開示されている例示化合物は鎖長が長い置換基を用いる点で、本発明の一般式(1)の構造とはっきり異なる。また、このような特定の炭素数のアルキル基やアルコキシ基を有するアリーリデンイソオキサゾロン色素については、特許文献3に限らず、これまで詳細な検討はなされていなかった。
【0006】
近年、感熱転写記録に使用する色素として、アリーリデンイソオキサゾロン系骨格を有する色素が提案されている(特許文献4参照)。しかしながら、特許文献4に例示されている色素では上記の要求特性が必ずしも満足できるレベルではなく、更なる検討が求められていた。
【特許文献1】特許2926715号公報
【特許文献2】特開2000−186222号公報
【特許文献3】欧州特許412379号明細書
【特許文献4】欧州特許628427号明細書
【0007】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
さらに、これらの色素は色相、転写性、耐光性および溶解性のすべてを同時に満足するものではなく、これらの色素を用いたインクシートや感熱転写記録方法も同様に満足いくものではなかった。そのためさらなる検討が求められていた。
本発明の目的は、色相、転写性、耐光性および溶解性のすべてを同時に満足する新規なアリーリデンイソオキサゾロン色素、該アリーリデンイソオキサゾロン色素を含有する着色組成物、該アリーリデンイソオキサゾロン色素を含有する感熱転写記録用インクシートおよび感熱転写記録方法を提供することにある。さらには、印画サンプルにおける優れた色再現性、画像保存性および転写感度の全てを同時に満足する感熱転写記録用インクシートおよび感熱転写記録方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、以下の構成によって上記課題が達成されることを見出した。
【0010】
(1) 下記一般式(1)で表されるアリーリデンイソオキサゾロン色素。
【化1】

【0011】
(一般式(1)中、R1、R2およびR4はそれぞれ独立に置換または無置換の炭素数1〜6のアルキル基を表し、R3は置換または無置換の炭素数1〜6のアルコキシ基を表し、R5は一価の置換基を表し、nは0〜3の整数を表す。nが2または3のとき、複数のR5は同一でも異なってもよい。)
(2) 前記(1)に記載のアリーリデンイソオキサゾロン色素を含有することを特徴とする着色組成物。
(3) 前記(1)に記載のアリーリデンイソオキサゾロン色素を含有することを特徴とする感熱転写記録用インクシート。
(4) 支持体上にポリマーを含有するインク受容層を有する受像材料の上に、前記(3)に記載の感熱転写記録用インクシートを用いて画像を形成することを特徴とする感熱転写記録方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によって、色相、転写性、耐光性および溶解性のすべてを同時に満足する新規なアリーリデンイソオキサゾロン色素、該アリーリデンイソオキサゾロン色素を含有する感熱転写用インクシートおよび感熱転写記録方法を提供することができる。予想外にもこれらの新規なアリーリデンイソオキサゾロン色素は従来公知のアリーリデンイソオキサゾロン色素と比較して、非常に高い耐光性を有し、なおかつ印画サンプルにおける優れた色再現性を満足する感熱転写材料用インクシートおよび感熱転写記録方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下において、本発明の感熱転写材料用インクシート、およびそれに用いるアリーリデンイソオキサゾロン色素などについて詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0014】
〔一般式(1)で表されるアリーリデンイソオキサゾロン色素〕
最初に、本発明の一般式(1)で表されるアリーリデンイソオキサゾロン色素について詳細に説明する。
一般式(1)で表されるアリーリデンイソオキサゾロン色素は、イソオキサゾロン環の3位がアルキル基であり、かつアニリン部分のメチンに対してオルト位の置換基が(一般式(1)におけるR3の置換基)アルコキシ基であることを特徴とする色素である。さらに、本発明の一般式(1)で表されるアリーリデンイソオキサゾロン色素は前記特徴に加え、前記イソオキサゾロン環の3位が炭素数1〜6のアルキル基であり、かつ前記アニリン部分のメチンに対してオルト位の置換基が(一般式(1)におけるR3の置換基)炭素数1〜6のアルコキシ基であり、さらにアニリン部分の窒素原子が炭素数1〜6のアルキル基2個で置換されていることを特徴とする構造の色素である。
このような特定の炭素数のアルキル基やアルコキシ基を有する前記一般式(1)で表されるアリーリデンイソオキサゾロン色素の構造について、これまで詳細な検討はなされていなかった。特に欧州特許412379号明細書においても、これら全てのアルキル基やアルコキシ基の鎖長を6以下に揃える構造は開示されていない。また、前記一般式(1)で表されるアリーリデンイソオキサゾロン色素の物性や性能についてもこれまで詳細な検討はなされていなかった。
【0015】
一般式(1)で表されるアリーリデンイソオキサゾロン色素は、着色組成物として好適に使用可能であり、特に色相、転写性、耐光性および溶解性のすべてを同時に満足するため感熱転写記録用インクシートの用途に好適である。さらに、他の用途(例えばカラートナー、インクジェット用インク、カラーフィルター等)にも好適に使用可能である。
【0016】
以下に、一般式(1)における各置換基をより詳細に説明する。
【0017】
【化2】

【0018】
一般式(1)中、R1、R2およびR4はそれぞれ独立に置換または無置換の炭素数1〜6のアルキル基を表し、R3は置換または無置換の炭素数1〜6のアルコキシ基を表し、R5は一価の置換基を表し、nは0〜3の整数を表す。nが2または3のとき、複数のR5は同一でも異なってもよい。
【0019】
5における一価の置換基としては、特に制限はないが、代表例として、ハロゲン原子、脂肪族基〔飽和脂肪基(アルキル基、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、架橋環式飽和炭化水素基もしくはスピロ飽和炭化水素基を含む環状飽和脂肪族基を意味する)、不飽和脂肪族基(二重結合または三重結合を有す、アルケニル基またはアルケニル基のような鎖状不飽和脂肪族基または、シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基、架橋環式不飽和炭化水素基もしくはスピロ不飽和炭化水素基を含む環状不飽和脂肪族基を意味する)〕、アリール基(好ましくは置換基を有してもよいフェニル基)、ヘテロ環基(好ましくは、環構成原子が酸素原子、硫黄原子または窒素原子を含む5〜8員環で、脂環、芳香環やヘテロ環で縮環していてもよい)、シアノ基、脂肪族オキシ基(代表としてアルコキシ基)、アリールオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、脂肪族オキシカルボニルオキシ基(代表としてアルコキシカルボニルオキシ基)、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基〔脂肪族アミノ基(代表としてアルキルアミノ基)、アニリノ基およびヘテロ環アミノ基を含む〕、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基(代表としてアルコキシカルボニルアミノ基)、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、脂肪族(代表としてアルキル)もしくはアリールスルホニルアミノ基、脂肪族チオ基(代表としてアルキルチオ基)、アリールチオ基、スルファモイル基、脂肪族(代表としてアルキル)もしくはアリールスルフィニル基、脂肪族(代表としてアルキル)もしくはアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、脂肪族オキシカルボニル基(代表としてアルコキシカルボニル基)、カルバモイル基、アリールもしくはヘテロ環アゾ基、イミド基、脂肪族オキシスルホニル基(代表としてアルコキシスルホニル基)、アリールオキシスルホニル基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、スルホ基を挙げることができ、それぞれの基はさらに置換基(例えば前記R5で挙げた置換基)を有していてもよい。
【0020】
5の各基が置換してもよい置換基としては、前記R5で挙げた置換基が挙げられる。
以下に、前記R5の置換基と、R5の各置換基が置換してもよい置換基をさらに詳しく説明する。
【0021】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、およびヨウ素原子が挙げられる。中でも塩素原子、臭素原子が好ましく、特に塩素原子が好ましい。
【0022】
脂肪族基は、直鎖、分枝または環状の脂肪族基であり、前述のように、飽和脂肪族基には、アルキル基、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基が含まれ、置換基を有してもよい。これらの炭素数は1〜30が好ましい。例としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、エイコシル基、2−クロロエチル基、2−シアノエチル基、ベンジル基および2−エチルヘキシル基を挙げることができる。ここで、シクロアルキル基としては置換もしくは無置換のシクロアルキル基が含まれる。置換もしくは無置換のシクロアルキル基は、炭素数3〜30のシクロアルキル基が好ましい。例としては、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基を挙げることができる。ビシクロアルキル基としては、炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基を挙げることができる。例として、ビシクロ[1.2.2]ヘプタン−2−イル基、ビシクロ[2.2.2]オクタン−3−イル基を挙げることができる。さらに環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。
【0023】
不飽和脂肪族基としては、直鎖、分枝または環状の不飽和脂肪族基であり、アルケニル基、シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基、アルキニル基が含まれる。アルケニル基としては直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基を表す。アルケニル基としては、炭素数2〜30の置換または無置換のアルケニル基が好ましい。例としてはビニル基、アリル基、プレニル基、ゲラニル基、オレイル基を挙げることができる。シクロアルケニル基としては、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3〜30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基が好ましい。例としては、2−シクロペンテン−1−イル基、2−シクロヘキセン−1−イル基が挙げられる。ビシクロアルケニル基としては、置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基が含まれる。ビシクロアルケニル基としては炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基が好ましい。例として、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−1−イル基、ビシクロ[2.2.2]オクト−2−エン−4−イル基を挙げることができる。アルキニル基は、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキニル基が好ましく、例えば、エチニル基、およびプロパルギル基が挙げられる。
【0024】
アリール基は、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、p−トリル基、ナフチル基、m−クロロフェニル基、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル基が挙げられ、置換基を有してもよいフェニル基が好ましい。
【0025】
ヘテロ環基は、置換もしくは無置換の芳香族もしくは非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、それらはさらに縮環していてもよい。これらのヘテロ環基としては、好ましくは5または6員のヘテロ環基であり、また環構成のヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子が好ましい。さらに好ましくは、炭素数3〜30の5もしくは6員の芳香族のヘテロ環基である。ヘテロ環基におけるヘテロ環としては、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、キナゾリン環、シンノリン環、フタラジン環、キノキサリン環、ピロール環、インドール環、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピラゾール環、イミダゾール環、ベンズイミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、ベンズオキサゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、イソチアゾール環、ベンズイソチアゾール環、チアジアゾール環、イソオキサゾール環、ベンズイソオキサゾール環、ピロリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、イミダゾリジン環、チアゾリン環が挙げられる。
【0026】
脂肪族オキシ基(代表としてアルコキシ基)は、置換もしくは無置換の脂肪族オキシ基(代表としてアルコキシ基)が含まれ、炭素数は1〜30が好ましい。例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、n−オクチルオキシ基、メトキシエトキシ基、ヒドロキシエトキシ基および3−カルボキシプロポキシ基などを挙げることができる。
【0027】
アリールオキシ基は、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシ基が好ましい。アリールオキシ基の例として、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−tert−ブチルフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ基、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ基などを挙げることができる。好ましくは、置換基を有してもよいフェニルオキシ基である。
【0028】
アシルオキシ基は、ホルミルオキシ基、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基が好ましい。アシルオキシ基の例には、ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ基などを挙げることができる。
【0029】
カルバモイルオキシ基は、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基が好ましい。カルバモイルオキシ基の例には、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ基、モルホリノカルボニルオキシ基、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ基、N−n−オクチルカルバモイルオキシ基などを挙げることができる。
【0030】
脂肪族オキシカルボニルオキシ基(代表としてアルコキシカルボニルオキシ基)は、炭素数2〜30が好ましく、置換基を有していてもよい。例えば、メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、tert−ブトキシカルボニルオキシ基、n−オクチルカルボニルオキシ基などを挙げることができる。
【0031】
アリールオキシカルボニルオキシ基は、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基が好ましい。アリールオキシカルボニルオキシ基の例には、フェノキシカルボニルオキシ基、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ基、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ基などを挙げることができる。好ましくは置換基を有してもよいフェノキシカルボニルオキシ基である。
【0032】
アミノ基は、アミノ基、脂肪族アミノ基(代表としてアルキルアミノ基)、アリールアミノ基およびヘテロ環アミノ基を含む。アミノ基は、炭素数1〜30の置換もしくは無置換の脂肪族アミノ基(代表としてアルキルアミノ基)、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールアミノ基が好ましい。アミノ基の例には、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N−メチル−アニリノ基、ジフェニルアミノ基、ヒドロキシエチルアミノ基、カルボキシエチルアミノ基、スルフォエチルアミノ基、3,5−ジカルボキシアニリノ基、4−キノリルアミノ基などを挙げることができる。
【0033】
アシルアミノ基は、ホルミルアミノ基、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基が好ましい。アシルアミノ基の例には、ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ基などを挙げることができる。
【0034】
アミノカルボニルアミノ基は、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ基が好ましい。アミノカルボニルアミノ基の例には、カルバモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ基、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ基、モルホリノカルボニルアミノ基などを挙げることができる。なお、この基における「アミノ」の用語は、前述のアミノ基における「アミノ」と同じ意味である。
【0035】
脂肪族オキシカルボニルアミノ基(代表としてアルコキシカルボニルアミノ基)は、炭素数2〜30が好ましく、置換基を有してもよい。例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、tert−ブトキシカルボニルアミノ基、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ基などを挙げることができる。
【0036】
アリールオキシカルボニルアミノ基は、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基が好ましい。アリールオキシカルボニルアミノ基の例には、フェノキシカルボニルアミノ基、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ基、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ基などを挙げることができる。置換基を有してもよいフェニルオキシカルボニルアミノ基が好ましい。
【0037】
スルファモイルアミノ基は、炭素数0〜30の置換もしくは無置換のスルファモイルアミノ基が好ましい。スルファモイルアミノ基の例には、スルファモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ基、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ基などを挙げることができる。
【0038】
脂肪族(代表としてアルキル)もしくはアリールスルホニルアミノ基は、炭素数1〜30の置換もしくは無置換の脂肪族スルホニルアミノ基(代表としてアルキルスルホニルアミノ基)、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ基(好ましくは置換基を有してもよいフェニルスルホニルアミノ基)が好ましい。例えば、メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ基、p−メチルフェニルスルホニルアミノ基などを挙げることができる。
【0039】
脂肪族チオ基(代表としてアルキルチオ基)は、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルチオ基が好ましい。アルキルチオ基の例には、メチルチオ基、エチルチオ基、n−ヘキサデシルチオ基などを挙げることができる。
【0040】
アリールチオ基は、炭素数6〜12の置換もしくは無置換のアリールチオ基が好ましい。アリールチオ基の例には、フェニルチオ基、1−ナフチルチオ基、2−ナフチルチオ基などを挙げることができる。
【0041】
スルファモイル基は、炭素数0〜30の置換もしくは無置換のスルファモイル基が好ましい。スルファモイル基の例には、N−エチルスルファモイル基、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−アセチルスルファモイル基、N−ベンゾイルスルファモイル基、N−(N’−フェニルカルバモイル)スルファモイル)基などを挙げることができる。
【0042】
脂肪族(代表としてアルキル)もしくはアリールスルフィニル基は、炭素数1〜30の置換または無置換の脂肪族スルフィニル基(代表としてアルキルスルフィニル基)、6〜30の置換または無置換のアリールスルフィニル基(好ましくは置換基を有してもよいフェニルスルフィニル基)が好ましい。例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、p−メチルフェニルスルフィニル基などを挙げることができる。
【0043】
脂肪族(代表としてアルキル)もしくはアリールスルホニル基は、炭素数1〜30の置換または無置換の脂肪族スルホニル基(代表としてアルキルスルホニル基)、6〜30の置換または無置換のアリールスルホニル基(好ましくは置換基を有してもよいフェニルスルホニル基)が好ましい。例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−トルエンスルホニル基などを挙げることができる。
【0044】
アシル基は、ホルミル基、炭素数2〜30の置換または無置換の脂肪族カルボニル基(代表としてアルキルカルボニル基)、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基(好ましくは置換基を有してもよいフェニルカルボニル基)、炭素数4〜30の置換もしくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基が好ましい。例えば、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル、2−ピリジルカルボニル、2−フリルカルボニル基などを挙げることができる。
【0045】
アリールオキシカルボニル基は、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基が好ましい。アリールオキシカルボニル基の例には、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−tert−ブチルフェノキシカルボニル基などを挙げることができる。好ましくは置換基を有してもよいフェニルオキシカルボニル基である。
【0046】
脂肪族オキシカルボニル基(代表としてアルコキシカルボニル基)は、炭素数2〜30が好ましく、置換基を有してもよい。例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル基などを挙げることができる。
【0047】
カルバモイル基は、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のカルバモイル基が好ましい。カルバモイル基の例には、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル基などを挙げることができる。
【0048】
アリールもしくはヘテロ環アゾ基として、例えば、フェニルアゾ、4−メトキシフェニルアゾ、4−ピバロイルアミノフェニルアゾ、2−ヒドロキシ−4−プロパノイルフェニルアゾ基などを挙げることができる。
【0049】
イミド基として、例えば、N−スクシンイミド基、N−フタルイミド基などを挙げることができる。
【0050】
脂肪族オキシスルホニル基(代表としてアルコキシスルホニル基)は、炭素数1〜30が好ましく、置換基を有してもよい。例えば、メトキシスルホニル、エトキシスルホニル、n−ブトキシスルホニル基などを挙げることができる。
【0051】
アリールオキシスルホニル基は、炭素数6〜12が好ましく、置換基を有してもよい。例えば、フェノキシスルホニル、2−ナフトキシフェニル基などを挙げることができる。
【0052】
これらに加え、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、カルボキシル基が挙げられる。
【0053】
これらの各基はさらに置換基を有してもよく、このような置換基としては、上述の置換基が挙げられる。
【0054】
5は、好ましくは置換または無置換の炭素数1〜6のアルキル基、置換または無置換のフェニル基、ハロゲン原子であり、より好ましくは無置換の炭素数1〜3のアルキル基、塩素原子、臭素原子であり、特に好ましくは塩素原子である。
【0055】
一般式(1)において、nは0〜3の整数を表す。nは好ましくは0〜2であり、より好ましくは0〜1であり、特に好ましくは0である。
【0056】
一般式(1)において、R1、R2およびR4は置換または無置換の炭素数1〜6のアルキル基を表す。ここでアルキル基とは、直鎖アルキル基、分岐アルキル基および環状アルキル基(例えば、シクロアルキル基、架橋環式飽和炭化水素基もしくはスピロ飽和炭化水素基を含む環状飽和脂肪族基)を意味する。R1、R2およびR4が分岐アルキル基である場合は、分岐の場所に制限はない。
炭素数1〜6の直鎖アルキル基または分岐アルキル基としては、特に制限はないが、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、n−ヘキシル基およびイソブチル基(例えば2−エチルヘキシル基)などを挙げることができる。シクロアルキル基の例としては、シクロヘキシル基、シクロペンチル基を挙げることができる。
【0057】
1、R2およびR4が置換基を有する場合は、置換基の場所や種類に特に制限はないが、このような置換基としては、R5で挙げた前記置換基群が挙げられる。また、R1、R2およびR4が置換基を有する場合は全体としてR1、R2およびR4が不飽和炭化水素になるような置換基も好ましく用いることができ、例えばアルキニルアルキル基、アルケニルアルキル基などが好ましい。なお、ここでいうR1、R2およびR4の炭素数には置換基の炭素数を含まないが、R1、R2およびR4とそれぞれの置換基の炭素数の合計は、8以下であることが好ましく、6以下であることがより好ましい。
【0058】
1およびR2は各々独立に、好ましくは置換または無置換の炭素数2〜6のアルキル基であり、より好ましくは置換または無置換の炭素数2〜5のアルキル基であり、特に好ましくは無置換の炭素数2〜4のアルキル基である。
4は、好ましくは置換または無置換の炭素数1〜6のアルキル基であり、より好ましくは無置換の炭素数3〜6のアルキル基であり、特に好ましくはtert−ブチル基である。
【0059】
一般式(1)において、R3は置換または無置換の炭素数1〜6のアルコキシ基を表す。ここでアルコキシ基とは、広く脂肪族オキシ基を意味し、直鎖アルコキシ基、分岐アルコキシ基および環状アルコキシ基(例えば、シクロアルコキシ基、架橋環式アルコキシ基もしくはスピロアルコキシ基を含む環状アルコキシ基)を意味する。R1、R2およびR4が分岐アルコキシ基である場合は、分岐の場所に制限はない。さらに、アルコキシ基は飽和であっても不飽和であってもよく、不飽和アルコキシ基の場合は炭素−炭素二重結合の位置に制限はない。
3における置換または無置換の炭素数1〜6のアルコキシ基としては、特に制限はないが、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソ−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソーペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、イソ−ヘキシルオキシ基が挙げられる。シクロアルキル基の例としては、シクロヘキシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基を挙げることができる。
【0060】
3はさらに置換基を有してもよく、このような置換基としては、R5で挙げた前記置換基群が挙げられる。ここでいうR3の炭素数には置換基の炭素数を含まないが、R3と置換基の炭素数の合計は、8以下であることが好ましく、6以下であることがより好ましい。
【0061】
3は、好ましくは置換または無置換の炭素数1〜6のアルコキシ基であり、より好ましくは無置換の炭素数1〜6のアルコキシ基であり、さらに好ましくは無置換の炭素数1〜5のアルコキシ基であり、特に好ましくは無置換の炭素数1〜5の直鎖飽和アルコキシ基であり、より特に好ましくは無置換の炭素数1〜4の直鎖飽和アルコキシ基であり、最も好ましくは無置換の炭素数1〜3の直鎖飽和アルコキシ基である。
【0062】
前記一般式(1)で表される化合物の好ましい置換基の組み合わせについては、これらの置換基の少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、より多くの種々の置換基が前記好ましい基である化合物がより好ましく、全ての置換基が前記好ましい基である化合物が最も好ましい。
【0063】
好ましい組み合わせは、R1が置換または無置換の炭素数2〜6のアルキル基であり、R2が置換または無置換の炭素数2〜6のアルキル基であり、R3が置換または無置換の炭素数1〜6のアルコキシ基であり、R4が置換または無置換の炭素数1〜6のアルキル基であり、R5が置換または無置換の炭素数1〜6のアルキル基、置換または無置換のフェニル基、ハロゲン原子であり、nが0〜1である組み合わせである。
より好ましい組み合わせは、R1が無置換の炭素数2〜6のアルキル基であり、R2が無置換の炭素数2〜6のアルキル基であり、R3が無置換の炭素数1〜6のアルコキシ基であり、R4が無置換の炭素数1〜6のアルキル基であり、nが0である組み合わせである。
特に好ましい組み合わせは、R1が無置換の炭素数2〜4のアルキル基であり、R2が無置換の炭素数2〜4のアルキル基であり、R3が無置換の直鎖飽和炭素数1〜3のアルコキシ基であり、R4が無置換の炭素数3〜6のアルキル基であり、nが0である組み合わせである。
【0064】
一般式(1)で表される色素化合物の分子量は、熱拡散性の観点から、550以下であることが好ましく、500以下であることがより好ましく、450以下であることが特に好ましい。
【0065】
以下に、本発明の一般式(1)で表されるアリーリデンイソオキサゾゾロン色素の具体例Y−1〜Y−10を示すが、本発明で用いることができる一般式(1)のアリーリデンイソオキサゾロン色素は以下の具体例によって限定的に解釈されるものではない。
【0066】
【表1】

【0067】
これらの化合物は、従来公知の類似化合物の合成方法に準じて合成することができる。例えば、欧州特許628427号明細書5頁15〜33行目、欧州特許412379号明細書10頁19〜26行目に記載に準じる方法で合成できる。具体的な製造方法は実施例で例示する。
【0068】
本発明のアリーリデンイソオキサゾロン色素は3原色のうちイエロー色として使用されることが好ましい。本発明のアリーリデンイソオキサゾロン色素の最大吸収波長は、好ましくは400〜500nmの範囲であり、より好ましくは440〜490nmの範囲である。
【0069】
〔着色組成物〕
本発明の着色組成物は、前記一般式(1)で表されるアリーリデンイソオキサゾロン色素を含有することを特徴とする。本明細書における着色組成物は、感熱転写記録用インクシート、インクジェット用インク、カラートナー、カラーフィルター、筆記用ペン、着色プラスチック、その他インク液などのことを指す。
本発明の着色組成物は、特に感熱転写記録用インクシート、インクジェット用インク、カラートナー、カラーフィルターとして有効に用いることができる。
【0070】
〔感熱転写記録用インクシート〕
本発明の感熱転写記録用インクシートは、前記一般式(1)で表されるアリーリデンイソオキサゾロン色素を含有することを特徴とする。感熱転写記録用インクシートは、一般に支持体上に色素供与層が形成された構造を有しており、その色素供与層中に一般式(1)で表されるアリーリデンイソオキサゾロン色素を含有させる。本発明の感熱転写記録用インクシートは、一般式(1)で表されるアリーリデンイソオキサゾロン色素をバインダーとともに溶剤中に溶解するか、あるいは溶媒中に微粒子状に分散させることによってインク液を調製し、該インク液を支持体上に塗設し、適宜乾燥して色素供与層を形成することにより製造することができる。また、アリーリデンイソオキサゾロン色素に加え、その他の色素化合物を同時に用いてもよい。
【0071】
本発明をフルカラー画像記録が可能な感熱転写記録材料に適用するには、シアン画像を形成することができる熱拡散性シアン色素を含有するシアンインクシート、マゼンタ画像を形成することができる熱拡散性マゼンタ色素を含有するマゼンタインクシート、イエロー画像を形成することができる熱拡散性イエロー色素を含有するイエローインクシートを支持体上に順次塗設して形成することが好ましい。また、必要に応じて他に黒色画像形成物質を含むインクシートがさらに形成されていてもよい。
シアン画像を形成することができる熱拡散性シアン色素を含有するシアンインクシートとしては、例えば、特開平3−103477号公報や特開平3−150194号公報などに記載されるものを好ましく用いることができる。マゼンタ画像を形成することができる熱拡散性マゼンタ色素を含有するマゼンタインクシートとしては、例えば、特開平4−350788号公報などに記載されるものを好ましく用いることができる。
一方、イエロー画像を形成することができる熱拡散性イエロー色素を含有するイエローインクシートとして一般式(1)で表される色素化合物を含有する本発明のインクシートを用いる。
【0072】
(支持体)
本発明の感熱転写記録用インクシートの支持体には、インクシート用支持体として従来から用いられているものを適宜選択して用いることができる。例えば特開平7−137466号公報の段落番号0050に記載される材料を好ましく用いることができる。支持体の厚みは、2〜30μmが好ましい。
【0073】
(色素供与層)
本発明の感熱転写記録用インクシートの色素供与層に用いることができるバインダー樹脂は、耐熱性が高くて、加熱されたときにアリーリデンイソオキサゾロン色素やその他の色素化合物が受像材料へ移行するのを妨げないものであれば特にその種類は制限されない。例えば、特開平7−137466号公報の段落番号0049に記載されるものを好ましい例として挙げることができる。また、色素供与層形成用の溶剤についても、従来公知の溶剤を適宜選択して用いることができ、特開平7−137466号公報の実施例に記載されるものを好ましく用いることができる。
色素供与層中における一般式(1)で表されるアリーリデンイソオキサゾロン色素の含有量は、0.03〜1.0g/m2が好ましく、0.1〜0.6g/m2がより好ましい。また、色素供与層の厚みは、0.2〜5μmが好ましく、0.4〜2μmがより好ましい。
【0074】
(機能層)
本発明の感熱転写記録用インクシートは、本発明の効果を過度に阻害しない範囲内であれば、色素供与層以外の層を有するものであってもよい。例えば、支持体と色素供与層との間に中間層を有するものであってもよいし、色素供与層とは反対側の支持体面(以下において「背面」ともいう)にバック層を有するものであってもよい。中間層としては、例えば下塗り層や、アリーリデンイソオキサゾロン色素やその他の色素の支持体方向への拡散を防止するための拡散防止層(親水性バリアー層)を挙げることができる。また、バック層としては、例えば耐熱スリップ層を挙げることができ、サーマルヘッドのインクシートへの粘着防止を図ることができる。
【0075】
〔感熱転写記録方法〕
本発明の感熱転写記録用インクシートを用いて感熱転写記録を行う際には、サーマルヘッド等の加熱手段と受像材料を組み合わせて用いる。すなわち、画像記録信号に従ってサーマルヘッドから熱エネルギーがインクシートに加えられ、該熱エネルギーが加えられた部分のアリーリデンイソオキサゾロン色素やその他の色素が受像材料に移行し固定されることによって画像記録がなされることを特徴とする、感熱転写記録方法である。受像材料は、通常は支持体上にポリマーを含有するインク受容層を設けた構成を有している。受像材料の構成や使用材料については、例えば特開平7−137466号公報の段落番号0056〜0074に記載されたものを好ましく用いることができる。
【実施例】
【0076】
以下に合成例と実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。
以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0077】
実施例101:<例示化合物(Y−1)の合成>
3−tert−ブチル−5−イソオキサゾロン2.8g(0.02モル)、4−N,N−ジエチルアミノ−2−メトキシベンズアルデヒド4.1g(0.02モル)および酢酸アンモニウム0.8gをイソプロパノール30mLに添加し、窒素雰囲気下70℃で1時間加熱した後、反応液を室温まで冷却し、析出した結晶を濾取した。濾取した結晶を酢酸エチルに溶解し、活性炭を加え室温で撹拌した後に、セライト濾過により活性炭を除去した濾液を濃縮し、酢酸エチル/n−ヘキサンで再結晶し例示化合物(Y−1)の橙色結晶を得た(収量3.9g、収率59%)。
1H NMR(重クロロホルム)δ=1.25(t,6H)、1.4(s,9H)、3.46(q,4H)、3.9(s,3H)、6.0(s,1H)、6.37(d,1H)、8.31(s,1H)、9.2ppm(d,2H)。FAB−MS(3−ニトロベンジルアルコール)m/z 331([M+1]+)、330([M]+、100%)。
【0078】
実施例102〜105:<例示化合物(Y−2)、(Y−5)、(Y−6)および(Y−7)の合成>
例示化合物(Y−2)、(Y−5)、(Y−6)および(Y−7)は、上記合成例に準じた方法で合成した。また、これらの例示化合物以外に関しても、化学的な見地から、上記合成例に準じた方法で合成することができる。
【0079】
<極大吸収波長の評価>
得られた実施例101〜104のアリーリデンイソオキサゾロン色素の酢酸エチル溶液中(濃度1×10-6mol/L、光路長10mm)における吸収スペクトルの極大吸収波長を下記表2に示す。
【0080】
【表2】

【0081】
実施例201:<感熱転写記録用インクシートの作製>
裏面に熱硬化アクリル樹脂(厚み1μm)により耐熱滑性処理が施された厚み6.0μmのポリエステルフィルム(ルミラー、商品名、(株)東レ製)を支持体として使用し、フィルムの表面側に実施例101で得られた本発明の色素化合物(例示化合物(Y−1))を含む下記の色素供与層形成用塗料組成物をワイヤーバーコーティングにより乾燥時の厚みが1μmとなるように塗布形成し、感熱転写記録用インクシート実施例201を作製した。
【0082】
(色素供与層形成用塗料組成物)
例示化合物(Y−1) 5.5質量部
ポリビニルブチラール樹脂 4.5質量部
(エスレックBX−1、商品名、積水化学工業(株)製)
メチルエチルケトン/トルエン(1/1) 90質量部
【0083】
実施例202〜203、比較例201〜207:<感熱転写記録用インクシートの作製>
次に、上記例示化合物(Y−1)を下記表3に記載の色素にそれぞれ変更したこと以外は実施例201と同様にして、本発明の感熱転写記録用インクシート実施例202〜203および比較用感熱転写記録用インクシート比較例201〜207をそれぞれ作製した。比較例201〜207に用いた比較色素(H−1)〜(H−7)の構造を下記に示す。
【0084】
【化3】

【0085】
【化4】

【0086】
【化5】

【0087】
【化6】

【0088】
【化7】

【0089】
【化8】

【0090】
【化9】

【0091】
(溶解性)
この際、各色素化合物のメチルエチルケトン/トルエン(1/1, w/w)を溶媒としたときの溶解性をA(直ちに溶解する)、B(撹拌により溶解する)、C(加熱しながら撹拌することにより溶解する)の三段階で評価した。結果を表3に示す。
【0092】
実施例301:<感熱転写記録用インクシートの評価および感熱転写記録方法による感熱転写記録画像の作製>
上記のようにして得られた実施例201の感熱転写記録用インクシートと富士フイルム(株)製ASK2000用受像材料とを、色素供与層と受像層とが接するようにして重ね合わせ、色素供与材料の背面側からサーマルヘッドを使用し、サーマルヘッドの出力0.25W/ドット、パルス巾0.15〜15ミリ秒、ドット密度6ドット/mmの条件で印字を行い、受像材料の受像層にイエロー色の色素を像状に染着させたところ、転写むらのない鮮明な感熱転写記録画像が得られた。実施例201の感熱転写用インクシートを実施例202〜203の感熱転写用インクシートにそれぞれ変更したこと以外は同様にして画像記録を行った。
【0093】
図1に実施例301で得られた記録画像の反射スペクトルを示す。図1の結果から明らかなように、本発明の感熱転写用インクシートは吸収がシャープで優れた分光特性を有し、優れた性質を示すことがわかった。また、本発明の感熱転写記録方法によって得られた感熱転写記録画像は吸収がシャープで優れた分光特性を有し、優れた性質を示すことがわかった。
【0094】
(色相)
得られた画像の色相を目視にて、視感度に優れる良好なイエロー色の場合をA、やや赤色がかっているイエロー色(だいだい色)または視感度に劣るイエロー色の場合をBの2段階で評価した。結果を下記表2に示す。
【0095】
(転写性)
得られた各画像のベタ濃度(100%網点濃度)におけるステータスA反射濃度を測定し、反射濃度が1.8以上をA(非常に良い)、1.6以上1.8未満をB(良い)、1.0以上1.6未満をC(悪い)、1.0未満をD(実用上問題がある)の4段階で転写性を評価した。結果を下記表2に示す。
【0096】
(耐光性)
次に、得られた記録済の各受像シートを5時間、Xeライト(17万ルクス)で照射し、色像の耐光性(光堅牢性)を調べた。イエロー部に関してはステータスA反射濃度1.0を示す部分の照射後のステータスA反射濃度を測定し、照射前の反射濃度1.0に対する残存率(百分率)でその安定度をA(70%以上100%未満)、B(50%以上70%未満)、C(50%未満)の3段階で評価した。結果を下記表2に示す。
【0097】
【表3】

【0098】
表3から、一般式(1)で表わされる本発明のアリーリデンイソオキサゾロン色素は、比較例で用いた色素よりも溶解性が優れることが判明した。また、表3の画像記録試験結果から、一般式(1)で表わされる本発明のアリーリデンイソオキサゾロン色素を用いたインクシートから受像層に転写された画像は、比較用の色素を用いた場合と比較して、いずれも色相が鮮やかであり、転写性が非常に良く、光に対する安定性が向上していることがわかった。したがって、実施例201〜203のインクシートは、色相・転写性・耐光性および溶解性のすべてを同時に高いレベルで満たすという課題を解決することができることがわかった。
さらに、一般式(1)で表される本発明のアリーリデンイソオキサゾロン色素は、他の色素と併用した場合や2次色や3次色においても交互作用による悪化が殆どないことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明によれば、色相・転写性・耐光性および溶解性のすべてを同時に高いレベルで満たす新規なアリーリデンイソオキサゾロン色素およびこれを含有する着色組成物を提供することができる。この色素は、他の色素と併用した場合や2次色や3次色においても交互作用による悪化が殆どない点でも優れている。また、本発明によれば、印画サンプルにおける優れた色再現性、吸収がシャープで優れた分光特性、画像保存性および転写感度の全てを満足する感熱転写材料用インクシートおよび感熱転写記録方法を提供することができる。このインクシートは、作製時の作業負荷と環境負荷が大幅に軽減されている点でも優れている。さらには、該アゾ色素化合物を用いたカラートナー、インクジェット用インクおよびカラーフィルターへの応用も容易にできる。このため、本発明は高画質のフルカラー記録等に効果的に用いられることが期待され、産業上の利用可能性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】実施例201において感熱転写記録により得られた画像の反射スペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるアリーリデンイソオキサゾロン色素。
【化1】

(一般式(1)中、R1、R2およびR4はそれぞれ独立に置換または無置換の炭素数1〜6のアルキル基を表し、R3は置換または無置換の炭素数1〜6のアルコキシ基を表し、R5は1価の置換基を表し、nは0〜3の整数を表す。nが2または3のとき、複数のR5は同一でも異なってもよい。)
【請求項2】
請求項1に記載のアリーリデンイソオキサゾロン色素を含有することを特徴とする着色組成物。
【請求項3】
請求項1に記載のアリーリデンイソオキサゾロン色素を含有することを特徴とする感熱転写記録用インクシート。
【請求項4】
支持体上にポリマーを含有するインク受容層を有する受像材料の上に、請求項3に記載の感熱転写記録用インクシートを用いて画像を形成することを特徴とする感熱転写記録方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−263517(P2009−263517A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−115420(P2008−115420)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】