説明

アリールアセトニトリラーゼを使用して5−ノルボルネン−2−カルボニトリルから5−ノルボルネン−2−カルボン酸を製造する方法

本発明は、5-ノルボルネン-2-エンド-カルボニトリル及び/又は5-ノルボルネン-2-エキソ-カルボニトリルから5-ノルボルネン-2-カルボン酸を調製するための製造方法に関する。本発明は、特に、5-ノルボルネン-2-カルボン酸を高基質濃度下で調製する方法に関する。本発明は、さらに、5-ノルボルネン-2-カルボニトリルを5-ノルボルネン-2-カルボン酸に、特に、高基質濃度で酵素的に反応させるのに適したポリペプチド、並びに前記ポリペプチドをコードする核酸、5-ノルボルネン-2-カルボニトリル並びに5-ノルボルネン-2-エンド-カルボン酸及び5-ノルボルネン-2-エキソ-カルボン酸を含有する組成物、さらにまた前記ポリペプチドの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5-ノルボルネン-2-カルボン酸を5-ノルボルネン-2-エンド-カルボニトリル及び/又は5-ノルボルネン-2-エキソ-カルボニトリルから調製するための製造方法に関する。本発明は、特に5-ノルボルネン-2-カルボン酸を高濃度の基質下で調製できるようにする製造方法に関する。本発明は、さらに、5-ノルボルネン-2-カルボン酸を特に高濃度の基質で生じさせるための5-ノルボルネン-2-カルボニトリルの酵素的変換に適したポリペプチド、前記ポリペプチドをコードする核酸、5-ノルボルネン-2-カルボニトリルから5-ノルボルネン-2-エンド-カルボン酸及び5-ノルボルネン-2-エキソ-カルボン酸までを含む組成物、並びに前記ポリペプチドの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
5-ノルボルネン-2-カルボン酸は、有機合成の多方面にわたる基質として使用され、特に環状オレフィン共重合体(COC)、医薬品中間体、農薬、又は香料の調製に適している。
【0003】
今日まで、5-ノルボルネン-2-カルボン酸の経済的製造は、実質的に化学合成を介してのみ可能であった。既知の製造方法には、異性体の混合物を生じるため、その異性体を複雑な精製工程によって分離しなければならないという特有の欠点がある。
【0004】
5-ノルボルネン-2-カルボン酸の酵素的調製方法が、非特許文献1に記載されている。しかし、そこに記載されたロドコッカス・ロドキュラス(Rhodococcus rhodochrous)のニトリラーゼは、5-ノルボルネン-2-カルボニトリルを変換する活性が非常に低く(表5)、それ故、発酵工程における5-ノルボルネン-2-カルボン酸の経済的な製造には適していない。さらに、非特許文献1でニトリラーゼとして記載された酵素は、ニトリルヒドラターゼであることが判明した。
【非特許文献1】Eur. J. Biochem. 182, 349-156, 1989
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明は、5-ノルボルネン-2-カルボン酸を発酵による経済的方法で調製するのに使用できる製造方法を提供するという目的に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本目的は、本明細書に記載された本発明の製造方法によって、また特許請求の範囲で特徴付けられた実施形態によって、達成される。
【0007】
したがって、本発明は、下記の化合物Iからアリールアセトニトリラーゼを用いて下記化合物IIを酵素的に製造する方法に関する。
【化1】

【0008】
(式中、R1〜R9は、いずれの場合もお互いに独立して、H、直鎖又は分岐した1〜6個の炭素を有するアルキル基、2〜6個の炭素を有するシクロアルキル基、非置換の、又はアミノ基、ヒドロキシル基若しくはハロ基で置換された3〜10個の炭素を有するアリール基とすることができ、ここで、
R5及びR7、また同様にR8及びR9は、3〜6個の炭素を有するシクロアルキル基、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、又はシクロヘキシル基を形成することもでき、
R8及びR9、また同様にR5及びR7は、環外二重結合を任意の置換基と共に担持することもでき、並びに
R3及びR4は、環(4,5,6)を形成することができるか、又はアニールされた芳香族化合物の一部となることができる。)
【化2】

(式中、R1〜R9は、上記の通り)
【発明の効果】
【0009】
驚くべきことに、化合物I、特に、5-ノルボルネン-2-カルボニトリルを調製して、アリールアセトニトリラーゼ (EC 3.5.5.5)を用いた有利な方法で、化合物II(特に、5-ノルボルネン-2-カルボン酸)を生成できることが判明した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
ニトリラーゼは、ニトリルの加水分解を触媒して、対応するカルボン酸とアンモニウムイオンを生じさせる酵素である(Faber, Biotransformations in Organic Chemistry, Springer Verlag Berlin/Heidelberg, 1992)。ニトリラーゼは、最初に植物で記載され(Thimann and Mahadevan (1964) Arch Biochem Biophys 105:133-141)、その後、同様に多くの微生物で発見された。ニトリラーゼは、種々の基質特異性を有しているが、大まかに3つのグループ(脂肪族ニトリルに特異的なニトリラーゼ、芳香族ニトリルに特異的なニトリラーゼ、及びアリールアセトニトリルに特異的なニトリラーゼ)に分類することができる。
【0011】
キラル及びアキラルなカルボン酸、並びにα-ヒドロキシカルボン酸のニトリラーゼを用いた酵素的合成は、先行技術に記載されている。ほとんどのニトリラーゼは、非常に基質特異的であり、ほんの僅かの基質しか転換することができない。それ故、それらの適用は限定され、経済的に効率のよい方法となると、1又は数種のニトリルの変換のみとなる。したがって、入手可能なニトリラーゼが高効率で又は好都合な条件下で新たな化合物を変換できるようにすることは都合がよい。
【0012】
「ニトリラーゼ」とは、本明細書で使用する場合、ニトリラーゼ活性を有するあらゆるポリペプチドを含む。
【0013】
「ニトリラーゼ活性」とは、本明細書では、ニトリルを加水分解してそれに対応するカルボン酸とアンモニウムを生じさせる能力を意味する。「ニトリラーゼ活性」は、好ましくは2モル当量の水をニトリル基に付加するのを触媒し、それによって、対応するカルボン酸を形成する酵素能力(R-CN+2H2O → R-COOH+NH3)を意味する。
【0014】
「ニトリラーゼ」は、好ましくは、ECクラス3.5.5.1(ニトリラーゼ類)、 3.5.5.2(リシニン ニトリラーゼ類)、3.5.5.4(シアノアラニン ニトリラーゼ類),3.5.5.5 (アリールアセトニトリラーゼ類)、3.5.5.6(ブロモキシニル)、及び3.5.5.7(脂肪族ニトリラーゼ類)の酵素からなる。最も好ましいのは、アリールアセトニトリラーゼ類(EC 3.5.5.5)である。
【0015】
アリールアセトニトリラーゼ類(EC 3.5.5.5)は、通常、脂肪族化合物(例えば、プロピオニトリル又はスベロニトリル)及びベンゾニトリル類に対する活性が殆どなく、仮にあったとしても極僅かである。それ故、アリールアセトニトリラーゼが5-ノルボルネン-2-カルボニトリルを高活性で変換できるという知見は、驚きであった。
【0016】
好ましくは、本発明の製造方法で以下の化合物Iを用いて以下の化合物IIbを生じさせる。
【化3】

【0017】
(式中、R1〜R9は、いずれの場合もお互いに独立して、H、直鎖又は分岐した1〜6個の炭素を有するアルキル基、2〜6個の炭素を有するシクロアルキル基、非置換の、又はアミノ基、ヒドロキシル基若しくはハロ基で置換された3〜10個の炭素を有するアリール基とすることができ、ここで、
R5及びR7、また同様にR8及びR9は、3〜6個の炭素を有するシクロアルキル基、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、又はシクロヘキシル基を形成することもでき、
R8及びR9、また同様にR5及びR7は、化合物IIbで見られるように、環外二重結合を任意の置換基と共に担持することもでき、R5、R7、R10,11は、例えば、いずれの場合もお互いに独立して、H、1〜6個の炭素を有するアルキル基、又はアリール基であり、並びに
R3及びR4は、環(4,5,6)を形成することができるか、又はアニールされた芳香族化合物の一部となることができる。)
【化4】

【0018】
(式中、R1〜R11は、上記の通り)
本発明によれば、本発明の活性を持つ使用酵素は、本発明の製造方法において、処理済みの微生物又は細胞として(例えば、破壊した、遊離の又は固定した酵素、微生物又は細胞として)、又は部分的に若しくは完全に精製した酵素製剤(例えば、遊離又は固定形態で)として、化合物IをIIに変換するのに使用することができる。
【0019】
したがって、本発明の製造方法で、本発明の核酸、核酸構築物、又はベクターを含む増殖細胞を使用することもできる。静止細胞や破壊細胞を使用することもできる。破壊細胞とは、例えば、溶媒で処理することによって透過性にした細胞、又は酵素処理(例えば、溶解)によって、機械的処理(例えば、フレンチプレスや超音波)によって、若しくは他の方法によって破壊された細胞を意味する。この方法で得られるクルードな抽出物は、有利なことに、本発明の製造方法に適している。精製された又は部分精製された酵素も本製造方法に用いることができる。さらに適当なものとしては、反応に有利に適用することのできる固定化した微生物又は酵素がある。
【0020】
遊離の生物又は酵素を本発明の製造方法で使用するのであれば、それらを抽出前に、例えば濾過や遠心によって、取り出しておくのが都合がよい。
【0021】
本発明の微生物は、その微生物を増殖できる培地中で培養又は増殖することができる。培地は、合成又は天然起源の培地とすることができる。微生物用の様々な培地が知られている。微生物の増殖のために、培地は、炭素源、窒素源、無機塩類、及び任意で少量のビタミン及び/又は微量元素を含んでいる。
【0022】
炭素源として好ましい例は、例えば、多価アルコール(例えば、グリセロール、単糖類、二糖類、若しくは多糖類のような糖(例えば、グルコース、フルクトース、マンノース、キシルロース、ガラクトース、リボース、ソルボース、リブロース、ラクトース、マルトース、スクロース、ラフィノース、デンプン、又はセルロース)、複雑な糖源(例えば、糖蜜)、糖リン酸(例えば、フルクトース-1-ex-二リン酸)、糖アルコール(例えば、マンニトール))、アルコール(例えば、メタノール、又はエタノール)、カルボン酸(例えば、大豆油、又は亜麻仁油)、アミノ酸若しくはアミノ酸混合物(例えば、カザミノ酸;Difco社)又は特定のアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン)又はアミノサッカライドが挙げられ、後者は、窒素源としても利用することができる。特に好ましいのは、グルコース及び多価アルコール(特にグリセロール)である。
【0023】
窒素源として好ましいのは、有機又は無機窒素化合物又はそれらの化合物を含んだ物質である。窒素源として好ましい例は、アンモニウム塩(例えばNH4Cl又は(NH4)2SO4)、硝酸塩、尿素、及び複合窒素源(例えば、酵母溶解物、大豆ミール、小麦グルテン、イーストエクストラクト、ペプトン、肉エキス、カゼイン加水分解物、酵母若しくはジャガイモタンパク質)が挙げられ、後者は炭素源としても役立ち得る。
【0024】
無機塩の例としては、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、コバルト、マンガン、カリウム、亜鉛、銅及び鉄塩が含まれる。対応する陰イオンとして特に好ましいのは、塩素、硫酸、亜硫酸及びリン酸イオンである。培地中のFe2+‐又はFe3+‐イオン濃度を制御することが、良好な生産を行う上で重要な要素となる。
【0025】
培地は、任意で、及び追加で、例えばビタミン若しくは増殖促進物質(ビオチン、2-ケト-l-グロン酸、アスコルビン酸、チアミン、葉酸、アミノ酸、カルボン酸)のような増殖因子、又は例えばDTTのような物質を含むことができる。
【0026】
発酵及び増殖条件は、所望の産物(例えば、高ニトリラーゼ活性、特に高アリールアセトニトリラーゼ活性)を高収率で得ることができるように選択される。望ましい発酵条件は、15℃〜40℃、好ましくは25℃〜37℃である。pHは、pH3〜9の範囲内に調整されていることが好ましく、より一層好ましくは、pH5〜8の範囲内に調整されていることである。発酵継続時間は、通常、数時間から数日の間であり、好ましくは8時間〜21日間、より好ましくは4時間〜14日間である。培地及び発酵条件の最適化に関する方法は、先行技術で公知である(Applied Microbiol Physiology, A practical approach 1997, pages 53 to 73)。
【0027】
一の実施形態で、本発明の製造方法は、化合物Iから化合物IIへの酵素的変換がポリペプチド又はポリペプチドを含む媒体とのインキュベーションを介して実行されるように、行われる。前記ポリペプチドは、
(a)配列番号2又は4で示されるポリペプチドをコードする核酸分子、
(b)少なくとも配列番号1又は3に記載のコード配列のポリヌクレオチドを含む核酸分子、
(c)遺伝コードの縮重のため、(a)又は(b)に記載の核酸分子にコードされるポリペプチド配列から誘導され得る配列を有する核酸分子、
(d)(a)又は(b)に記載の核酸分子にコードされたポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも60%相同な配列を有するポリペプチドをコードする核酸分子、
(e)アリールアセトニトリラーゼポリペプチドに由来し、配列番号2と比べて、最大25%のアミノ酸残基が欠失、挿入、置換又はそれらの組み合わせで改変されており、かつ配列番号2の酵素活性の少なくとも30%をなお保持しているポリペプチドをコードする核酸分子、及び
(f)(a)〜(c)に記載のいずれかの核酸分子によりコードされるアリールアセトニトリラーゼの断片又はエピトープをコードする核酸分子、
からなる群より選択される核酸分子、又は前記各核酸分子に相補的な配列を含む核酸分子にコードされている。
【0028】
また、任意で前記形成された産物は、分離される。
【0029】
本発明の活性を有する好ましい酵素は、配列番号2又は4に記載のアミノ酸配列を含む。
【0030】
本発明のニトリラーゼは、フェニルアセトニトリル>フェニルプロピオニトリル>マンデロニトリル(適度なエナンチオ選択性で)の順でこれらを非常によく加水分解するが、脂肪族化合物(例えば、プロピオニトリル、スベロニトリル)又はベンゾニトリルには、ほとんど、又は全く活性がない。それ故にノルボルネンニトリルに対する活性には、特に驚かされた。
【0031】
さらなる利点として、本発明の酵素の反応装置条件下における非常に大きな安定性と生産性、及び容易な操作性が挙げられる。これは、広範囲の温度及びpHが利用でき、かつ前記酵素がニトリルに対して高い耐性を有している(すなわち、ニトリルを測り分ける必要がない)ことに起因する。
【0032】
同様に、本発明は、本発明の活性を有する具体的に開示された酵素と「機能的に同等なもの」、及びそれらの同等物を本発明の製造方法に使用することを含む。
【0033】
「機能的に同等なもの」又は具体的に開示された酵素の類似物とは、本発明の目的において、具体的に開示された酵素とは異なるが、例えば基質特異性のような所望の生物活性を有しているポリペプチドをいう。したがって、例えば「機能的に同等なもの」とは、化合物Iを化合物IIに変換し、かつ配列番号2のアミノ酸配列を有している酵素の活性の少なくとも50%、好ましくは60%、特に好ましくは75%、より一層好ましくは90%又はそれ以上を有する酵素を意味する。さらに、機能的に同等なものは、0℃〜70℃の温度で安定であることが好ましく、またpH5〜8に最適pHを及び10℃〜50℃の範囲内に最適な温度を有しているのが有利である。
【0034】
また、本発明の「機能的に同等なもの」とは、特に、前記アミノ酸配列の少なくとも一の配列位置において、具体的に言及したもの以外のアミノ酸を有するが、それにもかかわらず前記生物活性の一を有する変異体を意味する。それ故、「機能的に同等なもの」とは、一以上のアミノ酸の付加、置換、欠失、及び/又は逆位によって得ることのできる変異体を含む。このような改変は、それらが本発明の特性プロファイルをもつ変異体をもたらす限り、あらゆる配列位置で生じることができる。特に、変異体と未改変ポリペプチド間の反応性パターンが質的に一致する(すなわち、例えば、同じ基質を異なる速度で変換する)のであれば、機能的な等価性も存在する。
【0035】
適当なアミノ酸置換の例を以下の表に挙げる。
【表1】

【0036】
また、本発明の「機能的に同等なもの」とは、特に、前記アミノ酸配列の少なくとも一の配列位置において、具体的に言及したもの以外のアミノ酸を有するが、それにもかかわらず前記生物活性の一を有する変異体も意味する。それ故、「機能的に同等なもの」とは、一以上のアミノ酸の付加、置換、欠失、及び/又は逆位によって得ることのできる変異体を含む。このような改変は、それらが本発明の特性プロファイルをもつ変異体をもたらす限り、あらゆる配列位置で起こり得る。特に、変異体と未改変ポリペプチド間の反応パターンが質的に一致する(すなわち、例えば、同じ基質を異なる速度で、未改変ポリペプチドの速度の少なくとも30%以上、好ましくは100%超、特に好ましくは150%超の速度で、より一層好ましくは2、5若しくは10倍増の速度で変換する)場合、機能的な等価性が存在する。
【0037】
上記意味での「機能的に同等なもの」はまた、記載したポリペプチドの「前駆体」並びに前記ポリペプチドの「機能的誘導体」及び「塩」でもある。
【0038】
「前駆体」は、ここでは、所望の生物活性を持つ又は持たないポリペプチドの天然又は合成前駆体である。
【0039】
「塩」とは、本発明のタンパク質分子のカルボキシル基の塩とアミノ基酸付加塩の双方を意味する。カルボキシル基の塩は、それ自体公知の方法で調製することができ、例えば、ナトリウム、カルシウム、アンモニウム、鉄及び亜鉛塩のような無機塩、並びに、例えばトリエタノールアミンのようなアミン類、アルギニン、リジン、ピペリジン等のような有機塩基との塩を含む。同様に、本発明は、例えば、鉱酸(塩酸又は硫酸等)、及び有機酸(酢酸及びシュウ酸等)との酸付加塩に関する。
【0040】
本発明のポリペプチドの「機能的誘導体」は、同様に、公知技術によって機能的アミノ酸側基、又はポリペプチドのN末端若しくはC末端において調製することができる。このような誘導体は、カルボン酸基の脂肪族エステル又は例えばアンモニア、又は1級若しくは2級アミンとの反応によって得ることができるカルボン酸基のアミド、アシル基との反応により調製される遊離アミノ基のN-アシル誘導体、又はアシル基との反応により調製される遊離ヒドロキシ基のO-アシル誘導体を含む。
【0041】
「機能的に同等なもの」は、当然ながら他の生物から入手可能なポリペプチド、及び天然の変異体も含む。例えば、配列の比較によって相同配列領域の範囲を明らかにすること、及び本発明特有の要件に基づいて同等の酵素を突き止めることができる。
【0042】
同様に、「機能的に同等なもの」は、本発明のポリペプチドの断片、好ましくは単一のドメイン又は配列モチーフであって、例えば所望の生物学的機能を有するものを含む。
【0043】
加えて、「機能的に同等なもの」とは、上記ポリペプチド配列の1つ若しくはそれから誘導される機能的に同等なものと、さらに、それらとは機能的に異なり、かつ機能上、N末端若しくはC末端に連結されている少なくとも1つの異種配列を含む融合タンパク質(すなわち、融合タンパク質の部分間の相互の機能障害は無視できる)である。前記異種配列の非限定的な例として、例えば、シグナルペプチドや酵素が挙げられる。
【0044】
また、本発明に包含される「機能的に同等なもの」には、具体的に開示されたタンパク質のホモログがある。これらは、PearsonとLipmanのアルゴリズム(Proc. Natl. Acad, Sci. (USA) 85(8), 1988, 2444-2448)によって算出される、具体的に開示されたアミノ酸配列の一つと少なくとも60%、好ましくは少なくとも75%、特には少なくとも85%(例えば、90%、95%又は99%等)の相同性を有している。本発明の相同ポリペプチドの相同パーセンテージは、特に、本明細書で具体的に記載した一のアミノ酸配列の全長に対するアミノ酸残基の同一パーセンテージを意味する。
【0045】
潜在的なタンパク質グリコシル化の場合、本発明の「機能的に同等なもの」は、脱グリコシル化型若しくはグリコシル化型における上記で定義された種類のタンパク質、及びグリコシル化パターンを変えることで得ることのできる改変型を含む。
【0046】
本発明のタンパク質又はポリペプチドのホモログは、突然変異誘発によって(例えば、点突然変異又はタンパク質のトランケーションによって)作製することができる。
【0047】
本発明のタンパク質ホモログは、例えば、トランケーション変異体のような変異体のコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることによって同定することができる。例えば、タンパク質変異体の多様なライブラリーを、核酸レベルでコンビナトリアル突然変異誘発によって(例えば、合成オリゴヌクレオチドの混合物の酵素的なライゲーションによって)作製することができる。縮重オリゴヌクレオチド配列由来の潜在的ホモログのライブラリーを調製するのに使用できる数多くの方法がある。縮重遺伝子配列の化学合成は、自動DNA合成機で行える。合成された遺伝子は、適当な発現ベクター内に連結することができる。遺伝子の縮重セットの使用によって、一つの混合物中に潜在的タンパク質配列の所望のセットをコードする全ての配列を提供することが可能になる。縮重オリゴヌクレオチドを合成する方法は、当業者には公知である(例えば、Narang, S.A. (1983) Tetrahedron 39:3;Itakura et al. (1984) Annu. Rev. Biochem. 53:323;Itakura et al., (1984) Science 198:1056;Ike et al. (1983) Nucleic Acids Res. 11:477を参照されたい)。
【0048】
当該分野においていくつかの技術が、点突然変異又はトランケーションによって作製されたコンビナトリアルライブラリーにおいて遺伝子産物をスクリーニングするために、また選択された性質をもつ遺伝子産物のcDNAライブラリーをスクリーニングするために知られている。これらの技術は、本発明のホモログのコンビナトリアル突然変異誘発によって作製された遺伝子ライブラリーの迅速スクリーニング法に適応できる。膨大な遺伝子ライブラリーをスクリーニングするための、ハイスループット解析を前提とした最も一般的に使用される技術は、複製可能な発現ベクター内への遺伝子ライブラリーのクローニング、得られたベクターライブラリーを用いた適当な細胞の形質転換、及び目的とする活性の検出によって、検出された産物の遺伝子をコードするベクターの単離が容易になる条件下でのコンビナトリアル遺伝子の発現を含む。帰納的集合突然変異誘発(Recursive ensemble mutagenesis:REM)は、ライブラリー中の機能的な変異体の頻度を増加させる技術であって、スクリーニングテストと組み合わせて使用し、ホモログを同定することができる(Arkin and Yourvan (1992) PNAS 89:7811-7815; Delgrave et al. (1993) Protein Engineering 6(3):327-331)。
【0049】
一の実施形態において、本発明の製造方法は、5〜75℃の反応温度で行われる。反応温度は、大気温若しくは室温又はそれ以上(例えば、30℃又はそれ以上)であるが、70℃以下、好ましくは60℃、50℃若しくはそれ以下であることが望ましい。好ましい実施形態において、xNonを調製するための反応温度は、約35〜45℃(例えば、40℃)である。好ましい実施形態で、eNonを調製するための反応温度は、大気温〜50℃の間である。
【0050】
化合物Iは、鏡像異性体の混合物(例えば、R、S又はエンド/エキソ鏡像異性体)と鏡像異性体的に純粋なもの(すなわち、主に一の鏡像異性体から成る)のどちらであってもよい。一の実施形態で、本発明の製造方法では、鏡像異性体的に純粋な基質を変換する。
【0051】
本発明の製造方法で、異性体的に純粋な、鏡像異性体的に純粋な、若しくはキラルな産物、又は光学活性化合物とは、富化状態にある一の鏡像異性体を意味する。本製造方法は、好ましくは少なくとも70% ee、好ましくは少なくとも80% ee、特に好ましくは少なくとも90% ee、非常に好ましくは少なくとも98% ee、さらにより好ましくは99% ee、及び最も好ましくは少なくとも99.5% eeの鏡像異性の純度を達成する。
【0052】
一の実施形態において、本発明の製造方法では、R-5-ノルボルネン-2-エンド-カルボニトリル、S-5-ノルボルネン-2-エンド-カルボニトリル、R-5-ノルボルネン-2-エキソ-カルボニトリル、及び/又は S-5-ノルボルネン-2-エキソ-カルボニトリルを加水分解して、それぞれ対応するS-5-ノルボルネン-2-エキソ-カルボン酸、S-5-ノルボルネン-2-エンド-カルボン酸、R-5-ノルボルネン-2-エキソ-カルボン酸及びR-5-ノルボルネン-2-エンド-カルボン酸を得る。
【0053】
さらなる実施形態で、化合物Iは、R-5-ノルボルネン-2-エンド-カルボニトリル及びS-5-ノルボルネン-2-エンド-カルボニトリル、又はR-5-ノルボルネン-2-エキソ-カルボニトリル及びS-5-ノルボルネン-2-エキソ-カルボニトリルに相当する。
【0054】
他の実施形態において、化合物Iは、R-5-ノルボルネン-2-エンド-カルボニトリル若しくはS-5-ノルボルネン-2-エンド-カルボニトリル又はR-5-ノルボルネン-2-エキソ-カルボニトリル若しくはS-5-ノルボルネン-2-エキソ-カルボニトリルに相当する。
【0055】
従って、本発明はまた、鏡像異性的に純粋な産物を得る製造方法に関する。
【0056】
一の実施形態において、本発明は、基質の濃度が少なくとも20mM、好ましくは50mM、70mM、100mM、150mM、200mM、250mM、300mM、400mM、500mM、700mM、1000mM、2000mM又はそれ以上である製造方法に関する。ここで、少なくとも50%、好ましくは60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又はそれ以上の基質、すなわち化合物I(特に、R-5-ノルボルネン-2-エンド-カルボニトリル、S-5-ノルボルネン-2-エンド-カルボニトリル、R-5-ノルボルネン-2-エキソ-カルボニトリル、及び/又は S-5-ノルボルネン-2-エキソ-カルボニトリル)が変換されて化合物IIが生じる。
【0057】
一の実施形態において、使用される基質は、化合物Iの異性体の混合物、特に鏡像異性体の混合物であり、一の異性体、特に化合物IIの一の鏡像異性体が産物中に冨化される。本発明の製造方法では、化合物Iのエンド又はエキソ鏡像異性体を用い、化合物IIのエンド又はエキソ鏡像異性体が富化されることが好ましい。特に好ましくは、本発明の富化用製造方法において、R-5-ノルボルネン-2-エンド-カルボニトリル及び/又はS-5-ノルボルネン-2-エンド-カルボニトリル並びにR-5-ノルボルネン-2-エキソ-カルボニトリル及び/又はS-5-ノルボルネン-2-エキソ-カルボニトリルの混合物を加水分解して、対応するS-5-ノルボルネン-2-エキソ-カルボン酸及び/又はR-5-ノルボルネン-2-エキソ-カルボン酸並びにR-5-ノルボルネン-2-エンド-カルボン酸及び/又はS-5-ノルボルネン-2-エンド-カルボン酸を生じさせ、好ましくはノルボルネン酸のエンド鏡像異性体が富化される。
【0058】
本発明の製造方法におけるpHは、有利にはpH6〜10、好ましくはpH7〜9、特に好ましくはpH7.5〜8.5で維持される。
【0059】
本発明の製造方法で調製される産物(例えば、R及び/又はS-5-ノルボルネン-2-エキソ-カルボン酸、並びに/或いはR-及び/又はS-5-ノルボルネン-2-エンド-カルボン酸)は、反応水溶液から抽出又は蒸留によって有利に分離することができる。収率を上げるため、抽出を数回繰り返しても良い。限定はしないが、適当な抽出剤の例として、トルエン、塩化メチレン、酢酸ブチル、ジイソプロピルエーテル、ベンゼン、MTBE、又は酢酸エチルのような溶媒が挙げられる。
【0060】
有機相の濃縮後、一般的に産物を十分な(すなわち、80%を超える、好ましくは85%、90%、95%、98%又はそれ以上の)化学的純度で得ることができる。一方、抽出後に、産物を含む有機相を一部だけ濃縮することもでき、またその産物を晶出することもできる。この目的のために、溶液は、有利には0℃〜10℃の温度に冷却される。有機溶液から又は水溶液から直接的に結晶化することも可能である。結晶化した産物を再度同一の又は異なる再結晶化用の溶媒中に溶かし、再び結晶化することができる。
【0061】
必要に応じて、その後、好ましくは少なくとも一回、任意の結晶化を行うことによって、産物の鏡像異性体の純度をさらに高めることが可能である。
【0062】
上記方法によって、本発明の製造方法の産物は、反応に使用された基質(例えば、R-5-ノルボルネン-2-エンド-カルボニトリル、R-5-ノルボルネン-2-エキソ-カルボニトリル、S-5-ノルボルネン-2-エンド-カルボニトリル、及び/又はS-5-ノルボルネン-2-エキソ-カルボニトリル等)に基づいて、60〜100%、好ましくは80〜100%、特に好ましくは90〜100%の収率で分離することができる。分離された産物は、>90%の、好ましくは>95%の、特に好ましくは>98%の化学的高純度で識別される。さらに、産物は、鏡像異性的に高純度であり、有利なことに、必要であれば、前記結晶化によってさらに純度を高めることができる。
【0063】
本発明の製造方法は、バッチ式で、半バッチ式で、又は連続的に行うことができる。
【0064】
本製造方法は、例えば、Biotechnology, volume 3, 2nd edition, Rehm et al Eds., (1993)の、特に Chapter IIに記載されているように、有利にはバイオリアクター内で行うことができる。
【0065】
一の実施形態において、本発明はまた、化合物Iを酵素的に加水分解して、化合物IIを生じさせるのに適したポリペプチドに関する。本ポリペプチドは、好ましくはニトリラーゼ、特に好ましくはアリールアセトニトリラーゼをコードしている。
【0066】
一の実施形態において、本ポリペプチドは、
(a)配列番号2又は4で示されるポリペプチドをコードする核酸分子、
(b)少なくとも配列番号1又は3に記載のコード配列のポリヌクレオチドを含む核酸分子、
(c)遺伝コードの縮重のため、(a)又は(b)に記載の核酸分子にコードされるポリペプチド配列から誘導し得る配列を有する核酸分子、
(d)(a)又は(b)に記載の核酸分子にコードされたポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも60%相同な配列を有するポリペプチドをコードする核酸分子、
(e)アリールアセトニトリラーゼポリペプチドに由来し、配列番号2又は4と比べて、最大15%のアミノ酸残基が欠失、挿入、置換又はそれらの組み合わせによって改変されており、かつ配列番号2又は4の酵素活性の少なくとも30%をなお保持しているポリペプチドをコードする核酸分子、及び
(f)(a)〜(c)に記載のいずれかの核酸分子によりコードされるアリールアセトニトリラーゼの断片又はエピトープをコードする核酸分子、
からなる群より選択される核酸分子、又は前記各核酸分子に相補的な配列を含む核酸分子にコードされている。
【0067】
一の実施形態において、ポリペプチドは、配列番号2及び/又は4に記載の配列を有さない。一の実施形態において、ポリペプチドは、Eur. J. Biochem. 182, 349-156, 1989に記載のニトリラーゼの配列も有さない。一の実施形態において、ポリペプチドは、データベース登録番号AY885240の配列も有さない。
【0068】
一の実施形態において、本発明のポリペプチドは、基質高濃度下であっても、すなわち、培地中に化合物Iが高濃度に存在していても、高パーセンテージで化合物II、特にノルボルネン酸を作り出す性質をもつ。ポリペプチドは、20mM、好ましくは50mM、70mM、100mM、150mM、200mM、250mM、300mM、400mM、500mM、700mM、1000mM、2000mM若しくはそれ以上の濃度の5-ノルボルネン-2-エンド-カルボニトリル下において、少なくとも50%、好ましくは60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%若しくはそれ以上の基質を変換し、化合物IIを生じさせることができることが好ましい。前記基質、すなわち化合物Iは、特にR-5-ノルボルネン-2-エンド-カルボニトリル、S-5-ノルボルネン-2-エンド-カルボニトリル、R-5-ノルボルネン-2-エキソ-カルボニトリル、及び/又はS-5-ノルボルネン-2-エキソ-カルボニトリルである。特に好ましくは、少なくとも150mMの基質濃度において40℃にて24時間以内で少なくとも65%の基質を変換するポリペプチドである。
【0069】
それ故、本発明は、本発明のポリペプチドをコードする核酸分子にも関連する。本発明は、さらに、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む核酸分子に関連する。一の実施形態において、核酸分子は、配列番号1の配列を有さない。一の実施形態において、核酸分子は、Eur. J. Biochem. 182, 349-156, 1989のニトリラーゼをコードしない。一の実施形態で、核酸分子は、データベース登録番号AY885240の配列も有さない。
【0070】
本発明は、特に、本発明の活性を有する酵素をコードする、又は本発明の製造方法に使用することのできる核酸配列(例えば、cDNA及びmRNAのような一本鎖及び二本鎖DNA及びRNA配列)に関連する。核酸配列が、例えば配列番号2若しくは4に記載のアミノ酸配列又はそれらの特有な部分配列をコードする核酸配列、或いは配列番号1若しくは3に記載の核酸配列又はそれらの特有な部分配列を含む核酸配列であることが好ましい。
【0071】
本明細書に記載の全ての核酸配列は、それ自体公知の方法で、ヌクレオチド構成成分から化学合成によって(例えば、個々の重複する、二重らせんの相補的な核酸構成成分のフラグメント縮合によって)調製することができる。オリゴヌクレオチドの化学合成は、例えば、ホスホロアミダイト法による公知の方法(Voet, Voet, 2nd edition, Wiley Press New York, pages 896-897)で行うことができる。DNAポリメラーゼのKlenowフラグメントとライゲーション反応を用いた合成オリゴヌクレオチドの付加及びギャップのフィリング、並びに一般的なクローニング方法は、Sambrook et al. (1989), Molecular Cloning: A laboratory manual, Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載されている。
【0072】
本発明はまた、上記ポリペプチドのいずれかをコードする核酸配列(例えば、cDNA及びmRNAのような一本鎖及び二本鎖DNA及びRNA配列)及びそれらの機能的に同等なものであって使用に際し入手可能なもの(例えば、人工ヌクレオチド類似体)にも関する。
【0073】
一の実施形態において、本発明の核酸配列は、少なくとも1塩基が配列番号1又は3の配列とは異なる。一の実施形態において、核酸分子はまた、Eur. J. Biochem. 182, 349-156, 1989に記載されたニトリラーゼの配列を持たない。一の実施形態において、核酸分子はまた、データベース登録番号AY885240の配列も持たない。
【0074】
本発明は、本発明のポリペプチド若しくはタンパク質又はそれらの生物活性部分をコードする単離された核酸分子、及び、本発明のコード核酸を同定又は増幅するために使用できる核酸断片(例えば、ハイブリダイゼーションプローブ又はプライマーとして用いるためのもの)の双方に関する。
【0075】
本発明の核酸分子は、さらにコード遺伝子領域の3’及び/又は5’末端に由来する非翻訳配列を含んでいてもよい。
【0076】
本発明は、さらに、具体的に記載したヌクレオチド配列又はその部分に相補的な核酸分子を含む。
【0077】
本発明のヌクレオチド配列により、プローブ及びプライマーを作製することができる。これらは、他の細胞タイプ及び生物における相同な配列を同定及び/又はクローニングするのに使用することができる。この種のプローブ及びプライマーは、一般的に、「ストリンジェント」な条件(下記、参照)下で、本発明の核酸配列におけるセンス鎖の又は対応するアンチセンス鎖の少なくとも約12、好ましくは少なくとも約25(例えば、約40、50、又は75等)の連続したヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド配列領域を含む。
【0078】
「単離された」核酸分子とは、天然の核酸源中に存在する他の核酸分子群から取り出されるものであって、さらに、組換え技術で調製された場合には他の細胞物質や培地を実質的に含まないようにすることができ、又は化学的に合成された場合には化学的前駆体若しくは他の化学物質を実質的に含まないようにすることができる。
【0079】
本発明の核酸分子は、標準的な分子生物学技術及び本発明により提供される配列情報によって単離することができる。例えば、cDNAは、適当なcDNAライブラリーから、具体的に開示された完全長の配列又はその部分配列の一つをハイブリダイゼーションプローブとして使用し、かつ標準的なハイブリダイゼーション技術(例えば、Sambrook, J., Fritsch, E.F. and Maniatis, T. Molecular Cloning: A Laboratory Manual. 2nd edition, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989に記載されているような技術)を用いることによって単離することができる。さらに、開示された配列、又はその部分配列のいずれかを含む核酸分子は、ポリメラーゼ連鎖反応により、この配列に基づいて構築されたオリゴヌクレオチドプライマーを用いて単離することができる。この方法で増幅された核酸は、適当なベクター内でクローン化することができ、またDNAシークエンス解析によって特徴解析することができる。本発明のオリゴヌクレオチドは、標準的な合成工程(例えば、自動DNA合成機を用いた工程)によって調製することもできる。
【0080】
本発明の核酸配列は、原則として、あらゆる生物由来のものを同定し、かつあらゆる生物から分離することができる。有利なことに、本発明の核酸配列又はそのホモログは、菌類、酵母、古細菌又は細菌から分離することができる。細菌であれば、グラム陰性及びグラム陽性細菌が挙げられる。本発明の核酸は、好ましくはグラム陰性細菌から、有利にはα‐プロテオバクテリア、β‐プロテオバクテリア又はγ‐プロテオバクテリアから、特に好ましくはバークホルデリア(Burkholderiales)目、ヒドロゲノフィルス(Hydrogenophilales)目、メチロフィルス(Methylophilales)目、ネイッセリア(Neisseriales)目、ニトロソモナス(Nitrosomonadales)目、プロカバクター(Procabacteriales)目又はロドシクルス(Rhodocyclales)目の細菌から分離される。より一層好ましいのは、ロドシクルス科の細菌から分離される。
【0081】
特に好ましいのは、シュードモナス属に由来のアリールアセトニトリラーゼを用いることである。
【0082】
本発明の核酸配列は、例えば、他の生物から一般的なハイブリダイゼーション工程又はPCR技術を用いることによって、例えば、ゲノム又はcDNAライブラリーから分離することができる。これらのDNA配列は、本発明の配列と標準的条件下でハイブリダイズする。ハイブリダイゼーションには、保存領域(例えば、活性部位由来)における短いオリゴヌクレオチドを用いるのが有利である。保存領域は、当業者に公知の方法で、本発明のニトリラーゼ、特にアリールアセトニトリラーゼとの比較によって同定することができる。一方、本発明の核酸の、より長い断片又は完全配列をハイブリダイゼーションに使用することもできる。前記標準的条件は、使用する核酸(オリゴヌクレオチド、より長い断片、又は完全配列)によって、又はいずれの核酸のタイプ(DNA、又はRNA)をハイブリダイゼーションに使用するかによって変わってくる。したがって、例えば、DNA:DNAハイブリッドの融解温度は、同じ長さのDNA:RNAハイブリッドのそれよりもおよそ10℃低い。
【0083】
本発明はまた、具体的に開示された又は誘導可能な核酸配列の誘導体に関連する。
【0084】
したがって、本発明のさらなる核酸配列は、配列番号1又は3から誘導することができ、かつ、単一若しくは二以上のヌクレオチドの付加、置換、挿入、又は欠失によって、それらの配列とは相違するが、まだなお所望の特性プロファイルを有しているポリペプチドをコードしていてもよい。
【0085】
また、本発明は、天然の変異体(例えば、スプライス変異体又はアレル変異体等)のみならず、特定の生物源又は宿主生物源のコドン利用に従って、具体的に記載した配列と比較した際に「サイレントな」変異を含んだ核酸配列、又は変異した核酸配列も含む。
【0086】
また、本発明は、保存性のヌクレオチド置換によって得られる(すなわち、問題となるアミノ酸が同一の電荷、サイズ、極性、及び/又は溶解度を有するアミノ酸と置換されている)配列にも関連する。
【0087】
また、本発明は、配列多型として具体的に開示された核酸から誘導される分子にも関連する。これらの遺伝的多型は、自然変異の結果として集団中の個体間に存在し得る。これらの自然変異は、一般的に遺伝子のヌクレオチド配列において1〜5%の変化を生じる。
【0088】
本発明の核酸配列の誘導体は、例えば、アレル変異体を意味する。アレル変異体は、推定されるアミノ酸レベルで少なくとも50%の相同性を、好ましくは少なくとも75%の相同性を、非常に好ましくは少なくとも80、85、90、93、95、98又は99%の相同性を全配列領域にわたって有する(アミノ酸レベルにおける相同性については、ポリペプチドにおける上記コメントを参照されたい)。有利には、相同性は、前記配列の小領域にわたってより高い値であってもよい。
【0089】
さらに、誘導体は、本発明の核酸配列のホモログ(例えば、菌類又は細菌のホモログ)、トランケートされた配列、一本鎖DNA、又はコード及び非コードDNA配列のRNAも意味する。したがって、例えば、DNAレベルで、少なくとも50%、好ましくは75%以上、特に好ましくは80%、一層好ましくは90%、最も好ましくは95%以上(特に98%以上)の相同性を、表示された全DNA領域にわたって有している。
【0090】
本発明によれば、「ホモログ」又は「実質的な配列ホモログ」は、通常、DNA分子の核酸配列又はタンパク質のアミノ酸配列が、少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%、さらに好ましくは少なくとも60%、同様に好ましくは少なくとも70%、特に好ましくは少なくとも90%、とりわけ好ましくは少なくとも95%、また最も好ましくは少なくとも98%、アリールアセトニトリラーゼ(特に、配列番号1、2、3若しくは4、又はそれらと機能的に同等な部分)の核酸若しくはアミノ酸配列と同一であることを意味する。相同性は、アリールアセトニトリラーゼの配列(特に、配列番号1、2、3又は4)の全長にわたって測定されることが好ましい。
【0091】
「2つのタンパク質間の同一性」とは、特定のタンパク質領域にわたる、好ましくはタンパク質の全長にわたるアミノ酸の同一性、特にDNA Star Inc.社(Madison, Wisconsin, USA)のLaser geneソフトウェアを用いて、比較目的で算出された同一性を意味する。本ソフトウェアは、CLUSTAL法 (Higgins et al., 1989, Comput. Appl. Biosci., 5 (2), 151)を応用している。相同性も同様に、CLUSTAL法 (Higgins et al., 1989, Comput. Appl. Biosci., 5 (2), 151)を応用したDNA Star Inc.( Madison, Wisconsin, USA)のLaser geneソフトウェアを用いて算出することができる。配列比較は、図2で示したように、以下のURLのページにあるプリセットパラメータを用いて実行することができる。http://www.ebi.ac.uk/clustalw/。最新更新日時: 10/17/2005 11:27:35。以下のプログラムを使用する。 FTP DIRECTORY: ftp://ftp.ebi.ac.uk/pub/software/unix/clustalw/
ParClustal0.1.tar.gz [Nov 28 2001] 823975
ParClustal0.2.tar.gz [Jun 27 2002] 2652452
README [Jun 13 2003] 673
clustalw1.8.UNIX.tar.gz [Jul 4 1999] 4725425
clustalw1.8.mp.tar.gz [May 2 2000] 174859
clustalw1.81.UNIX.tar.gz [Jun 7 2000] 555655
clustalw1.82.UNIX.tar.gz [Feb 6 2001] 606683
clustalw1.82.mac-osx.tar.gz [Oct 15 2002] 669021
clustalw1.83.UNIX.tar.gz [Jan 30 2003] 166863
このように、相同性は、好ましくはアミノ酸配列又は核酸配列の全領域にわたって算出される。上記プログラムとは別に、さらに当業者が利用できる様々な配列比較用の他のプログラムがある。それらのプログラムは、特に信頼性の高い結果が得られるMeedlemanとWunsch、又はSmithとWatermanによるアルゴリズムを用いた様々なアルゴリズムに基づいている。配列比較は、Pile Aupaプログラム(J. Mol. Evolution. (1987), 25, 351 - 360; Higgins et al., (1989) Cabgos, 5, 151-53)、又は、例えば、Genetics Computer Group (575 Science Drive, Madison, Wisconsin, USA 53711)のGCGソフトウェアパッケージの一部であるGapプログラム及びBest Fitプログラム(Needleman and Wunsch, (1970), J. Mol. Biol., 48, 443 - 453 and Smith and Waterman (1981), Adv., Appl. Math., 2, 482 - 489) を用いて実行することもできる。本発明のさらにとりわけ好ましい実施形態では、cDNAの全長配列にわたる相同性が、Gapプログラムを用いて決定される。本発明のさらにとりわけ好ましい実施形態では、全ゲノム配列にわたる相同性が、Gapプログラムを用いて決定される。本発明の非常に好ましい実施形態では、コード配列の全長にわたる相同性が、Gapプログラムを用いて決定される。
【0092】
さらに、誘導体とは、例えば、プロモーターとの融合体を意味する。表示されたヌクレオチド配列の上流に位置するプロモーターは、そのプロモーターの機能性及び効果を損なうことのない一以上のヌクレオチドの置換、挿入、逆位、及び/又は欠失によって変異していてもよい。さらに、前記プロモーターの効果は、それらの配列を変えることにより、増大することができる。あるいは、プロモーターをより活性のあるプロモーター(他種生物に由来するプロモーターを含む)で完全に置換することができる。
【0093】
また、誘導体は、開始コドンの−1〜−1000塩基上流の領域、又は終止コドンの0〜1000塩基下流の領域のヌクレオチド配列が、遺伝子発現及び/又はタンパク質発現を変えるように、好ましくは増大するように変化した変異体も意味する。
【0094】
さらに、本発明は、上述したコード配列と「ストリンジェントな条件」下でハイブリダイズする核酸配列を含む。それ故、「ストリンジェントな条件」とは、その下では核酸配列が標的配列と優先的に結合するが、他の配列とは結合しないか、又は少なくとも実質的に減少した形で結合するような条件を言う。
【0095】
これらのポリペプチドは、ゲノム又はcDNAライブラリーをスクリーニングすることによって見つけることができ、また、適切であれば、例えば、適当なプライマーを用いたPCRによってそれらを増幅し、その後、適当なプローブを用いて単離することができる。さらに、本発明のポリヌクレオチドは、化学的に合成してもよい。この特性は、ストリンジェントな条件の下で実質的に相補的な配列と結合するポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドの能力を意味する。その一方で、これらの条件下では、非相補的パートナー間の非特異的な結合は形成されない。このため、前記配列は、70〜100%、好ましくは90〜100%相補的でなければならない。お互いが特異的に結合することのできる相補的配列の特性は、例えば、ノザン若しくはサザンブロット技術において、又はPCR若しくはRT-PCRのプライマー結合に利用される。少なくとも30塩基対の長さを有するオリゴヌクレオチドが、通常、この目的に使用される。
【0096】
核酸にもよるが、標準的条件は、例えば、温度が42〜58℃で、水性バッファ溶液が0.1〜5×SSCの濃度(1×SSC=0.15M NaCl, 15mMクエン酸ナトリウム, pH7.2)、又は、さらに50%ホルムアミドを加えた溶液であることを意味する。例えば、42℃で5×SSC、50%ホルムアミドの条件のような条件である。DNA:DNAハイブリッドのハイブリダイゼーション条件は、有利には、0.1×SSCで、温度が約20℃〜45℃、好ましくは約30℃〜45℃である。DNA:RNAハイブリッドについては、ハイブリダイゼーション条件は、有利には、0.1×SSCで、温度が約30℃〜55℃、好ましくは約45℃〜55℃である。ハイブリダイゼーション用に示した温度は、融解温度の値であって、この値は、ホルムアミド非存在下で約100ヌクレオチド長で、かつ50%のG+C量を有する核酸を例として算出されたものである。DNAハイブリダイゼーションの実験条件は、例えば、Sambrook et al., “Molecular Cloning”, Cold Spring Harbor Laboratory, 1989のような遺伝学の専門書に記載されており、また、当業者に公知の公式を用いて、例えば、核酸の長さ、ハイブリッドの型、又はG+C量に応じて、算出することができる。当業者は、ハイブリダイゼーションに関するさらなる情報を以下の教科書(すなわち、Ausubel et al. (eds), 1985, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York;Hames and Higgins (eds), 1985, Nucleic Acids Hybridization:A Practical Approach, IRL Press at Oxford University Press, Oxford;Brown (ed), 1991, Essential Molecular Biology: A Practical Approach, IRL Press at Oxford University Press, Oxford)から入手できる。
【0097】
ノザンブロット技術でストリンジェントな条件とは、例えば、非特異的にハイブリダイズしたcDNAプローブ又はオリゴヌクレオチドを洗い流すための、50〜70℃、好ましくは60 〜65℃の、例えば、0.1% SDSを含む0.1×SSCバッファ(20×SSC=3M NaCl, 0.3M クエン酸ナトリウム,pH7.0)の使用を意味する。上述したように、この条件でお互いに結合したまま残る核酸のみが、非常に高い相補性を有している。ストリンジェントな条件の樹立は、当業者にとっては公知であり、例えば、Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N.Y. (1989), 6.3.1-6.3.6の中に記載されている。
【0098】
「相補性」とは、核酸分子が他の核酸分子と相補的な塩基間で水素結合に基づいてハイブリダイズする能力を表す。当業者であれば、2つの核酸分子がお互いにハイブリダイズできるためには100%の相補性を有する必要はないことは知っている。核酸配列は、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、特に好ましくは少なくとも80%、同様に特に好ましくは少なくとも90%、とりわけ好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%若しくは100%相補的な他の核酸配列にハイブリダイズすることが好ましい。
【0099】
相同性、相補性、及び同一性の度合いは、タンパク質又は核酸の全長にわたって決定されることが好ましい。
【0100】
核酸分子どうしが同一の5'〜3'方向において同一のヌクレオチドを有するのであれば、それらは同一である。
【0101】
また、本発明は、ベクター又は発現構築物を調製するための製造方法に関連する。本製造方法は、本発明の核酸分子をベクター又は発現構築物内に挿入することを含む。
【0102】
また、本発明は、本発明の核酸分子若しくは本発明の製造方法で調製された核酸分子を含む、又は本発明の製造方法での使用に適した核酸構築物を含む、核酸構築物若しくはベクターに関連する。
【0103】
本発明は、制御核酸配列の遺伝的制御下で、本発明のポリペプチドをコードする核酸配列を含む発現構築物、またこのような発現構築物の少なくとも一つを含むベクターに関連する。
【0104】
本発明の前記構築物は、特定のコード配列の5’側上流のプロモーター、及び3’側下流のターミネーター配列を、また適切な場合には、さらに通常の制御エレメントを含むことが好ましい。いずれの場合にも、これらは動作し得るようにコード配列に連結されている。
【0105】
「動作的連結」とは、プロモーター、コード配列、ターミネーター、及び適切な場合には、さらなる制御エレメントが、コード配列の発現で必要とされるそれらの機能を果たすことのできる空間的配置を意味する。動作し得るように連結できる配列の例としては、標的配列、さらにエンハンサー、ポリアデニレーションシグナル等が挙げられる。他の制御エレメントは、選択可能なマーカー、増幅シグナル、複製起点等を含む。適切な制御エレメントは、例えば、Goeddel, Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, CA (1990)に記載されている。
【0106】
本発明の核酸構築物とは、特に本発明の転換に関する遺伝子が、遺伝子の発現を制御する(例えば、増加する)ため、動作可能なように又は機能的に一以上の制御シグナルとその構築物中で連結されているものを意味する。
【0107】
これらの調節配列に加えて、これらの配列の自然制御が、実際の構造遺伝子の上流に存在していてもよい。また、適切な場合には、その自然制御をスイッチオフして、遺伝子の発現が増加するように遺伝的に変えることもできる。一方、核酸構築物は、より簡単な構造を有することもできる。すなわち、そのような構築物では、付加的な制御シグナルがコード配列の上流に挿入されておらず、また、天然のプロモーターは、その制御共々取り除かれている。代わりに自然調節配列は、もはやいかなる制御もできないように変異しており、前記遺伝子の発現が増加する。
【0108】
また、好ましい核酸構築物は、有利なことに、プロモーターに機能的に連結され、増加させるべき核酸配列の発現を可能にする一以上の前述したエンハンサー配列も含む。さらなる制御エレメント又はターミネーターのような、追加の有利な配列をDNA配列の3’末端に挿入することもできる。本発明の核酸は、構築物中に一以上のコピーで存在していてもよい。構築物は、適当な場合、前記構築物を選択するために抗生物質抵抗性遺伝子又は栄養要求補完遺伝子のような付加的なマーカーを含むこともできる。
【0109】
本発明の製造方法に都合の良い調節配列は、例えば、cos、tac、trp、tet、trp-tet、lpp、lac、lpp-lac、lacIq、T7、T5、T3、gal、trc、ara、rhaP (rhaPBAD)SP6、lambda-PR又はlambda-PL プロモーターのようなプロモーター中に存在する。これらのプロモーターは、グラム陰性菌で使用されるのが有利である。さらに好都合な調節配列は、例えば、グラム陽性プロモーターであるamy及びSPO2、酵母及び菌類のプロモーターであるADC1、MFalpha、AC、P-60、CYC1、GAPDH、TEF、rp28、ADH中に存在する。これに関連して、例えば、酵母Hansenula由来のピルビン酸デカルボキシラーゼ及びメタノールオキシダーゼのプロモーターも、好都合である。制御用人工プロモーターを使用することも可能である。
【0110】
宿主生物での発現のために、核酸構築物は、例えば、プラスミド又はファージのような、宿主内で遺伝子が最適に発現可能にするベクター内に挿入されるのが有利である。プラスミドやファージに加えてベクターとは、当業者に公知の他のいかなるベクターをも意味する。すなわち、例えば、SV40、CMV、バキュロウイルス及びアデノウイルスのようなウイルス、トランスポゾン、ISエレメント、ファスミド(phasmid)、コスミド、並びに直鎖状又は環状DNAが挙げられる。これらのベクターは、宿主生物内で自発的に複製され、或いは染色体に置き換えられて複製し得る。これらのベクターは、本発明のさらなる実施形態を構成する。適切なプラスミドの例としては、大腸菌のpLG338、pACYC184、pBR322、pUC18、pUC19、pKC30、pRep4、pHS1、pKK223-3、pDHE19.2、pHS2、pPLc236、pMBL24、pLG200、pUR290、pIN-III113-B1、lgt11若しくはpBdCI、Streptomyces属のpIJ101、pIJ364、pIJ702若しくはpIJ361、Bacillus属のpUB110、pC194若しくはpBD214、Corynebacterium属のpSA77若しくはpAJ667、菌類のpALS1、pIL2若しくはpBB116、酵母の2alphaM、pAG-1、YEp6、YEp13若しくはpEMBLYe23、又は、植物のpLGV23、pGHlac+、 pBIN19、pAK2004若しくはpDH51が挙げられる。前記プラスミドは、可能なプラスミドの一部に過ぎない。他のプラスミドは、当業者には公知であり、例えば、Cloning Vectors (Eds. Pouwels P. H. et al. Elsevier, Amsterdam-New York-Oxford, 1985, ISBN 0 444 904018)中に見出すことができる。
【0111】
存在する他の遺伝子を発現する目的で、核酸構築物は、発現を増加させるために、主として3’末端、及び/又は5’末端調節配列を含む。これらの配列は、選択された宿主生物及び遺伝子に基づいて、最適な発現となるように選択される。
【0112】
これらの調節配列は、遺伝子発現及びタンパク質の特異的発現を可能にすることを目的としている。宿主生物によって、これは、例えば、遺伝子が誘導後のみに発現又は過剰発現すること、或いは遺伝子が直ちに発現及び/又は過剰発現することを意味し得る。
【0113】
前記調節配列又は制御因子は、好ましくはポジティブに影響を及ぼし、それによって導入した遺伝子の発現を増加することができる。したがって、制御エレメントは、プロモーター及び/又はエンハンサーのような強力な転写シグナルを用いることによって、転写レベルで有利に増強することができる。一方、これに加えて、例えば、mRNAの安定性を改善することによって翻訳を増強することも可能である。
【0114】
ベクターのさらなる実施形態において、本発明の核酸構築物又は本発明の核酸を含むベクターは、有利なことに微生物内部に直鎖状DNAの形態で導入され、宿主生物のゲノム内に非相同的組換え若しくは相同的組換えによって組み込むことができる。この直鎖状DNAは、直鎖化したプラスミド等のベクター又は本発明の核酸構築物若しくは核酸のみから成っていてもよい。
【0115】
異種遺伝子を生物内において最適な状態で発現可能にするために、核酸配列をその生物で用いられる特定のコドン使用に従って変更するのが都合良い。コドン使用は、問題の生物に由来する他の公知の遺伝子のコンピュータ解析を用いて容易に決定することができる。
【0116】
本発明の発現カセットは、適切なプロモーターを適当なコードヌクレオチド配列、及びターミネーターシグナル又はポリアデニレーションシグナルと融合することによって調製される。例えば、T. Maniatis, E.F. Fritsch and J. Sambrook, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY (1989)、そしてまたT.J. Silhavy, M.L. Berman and L.W. Enquist, Experiments with Gene Fusions, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY (1984)に、及びAusubel, F.M. et al., Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Assoc. and Wiley Interscience (1987)に記載されている通常の組換え技術、及びクローニング技術が、本目的のために使用される。
【0117】
適当な宿主生物内での発現を達成するために、組換え核酸構築物又は遺伝子構築物は、宿主内において遺伝子の最適な発現を可能にする宿主特異的ベクター中に挿入されるのが有利である。ベクターは、当業者に公知であり、例えば、「Cloning Vectors」(Pouwels P. H. et al., Eds., Elsevier, Amsterdam-New York-Oxford, 1985)に記載されている。
【0118】
それ故、本発明は、本発明のベクターで若しくは本発明のポリヌクレオチドで安定的に若しくは一過的に形質転換された又はトランスフェクトされた宿主細胞、或いは本発明のポリヌクレオチド若しくは本発明の製造方法に適したポリヌクレオチドが上記のように発現される、又は前記ポリヌクレオチドが野生型と比べて増加したレベルで発現される宿主細胞にも関連する。
【0119】
本発明のベクター又は構築物を用いて、組換え微生物(例えば、少なくとも本発明の一のベクターで形質転換された組換え微生物、及び本発明のポリペプチドを作り出すのに使用できる組換え微生物)を調製することができる。有利には、本発明の上記組換え構築物は、適当な宿主システム中に導入された後、発現される。例えば、共沈、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、レトロウイルストランスフェクション等のような当業者に公知の通常のクローニング法及びトランスフェクション法を、特定の発現システムの中で前記核酸を発現させるために使用するのが好ましい。適当なシステムは、例えば、Current Protocols in Molecular Biology, F. Ausubel et al., Eds., Wiley Interscience, New York 1997、又はSambrook et al. Molecular Cloning: A Laboratory Manual. 2nd edition, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989に記載されている。
【0120】
本発明によれば、相同的に組換えられた微生物を調製することも可能である。この目的に関して、本発明の遺伝子又は適当であれば、少なくとも一のアミノ酸欠失、アミノ酸付加、又はアミノ酸置換が本発明の配列を改変する(例えば、機能的に破壊する)ために導入されたコード配列の少なくとも一部分を含むベクター(ノックアウトベクター)が調製される。導入される配列は、関連する微生物由来のホモログであってもよく、又は、例えば、哺乳動物、酵母、若しくは昆虫起源に由来していてもよい。あるいは、相同組換えに使用されるベクターは、相同的組換えの場合において、内在性遺伝子が変異しているか、さもなくば改変されているが、まだなお機能的なタンパク質をコードするように設計されていてもよい(例えば、上流制御領域を改変し、それによって内在性タンパク質の発現を変えてもよい)。本発明の遺伝子の変化部は、相同的組換えベクター中にある。相同的組換えに適切なベクターの構築は、例えば、Thomas, K.R. and Capecchi, M.R. (1987) Cell 51:503に記載されている。
【0121】
本発明の核酸又は核酸構築物に適した組換え宿主生物は、原則として、あらゆる原核生物又は真核生物である。細菌、菌類、又は酵母のような微生物を宿主生物として使用するのが有利である。グラム陽性菌又はグラム陰性菌、好ましくは腸内細菌(Enterobacteriaceae)科、シュードモナス(Pseudomonadaceae)科、リゾビウム(Rhizobiaceae)科、ストレプトミセス(Streptomycetaceae)科又はノカルジア(Nocardiaceae)科の細菌、特に好ましくは、エシェリキア(Escherichia)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、ストレプトミセス(Streptomyces)属、ノカルジア(Nocardia)属、バークホルデリア(Burkholderia)属、サルモネラ(Salmonella)属、アグロバクテリウム(Agrobacterium)属又はロドコッカス(Rhodococcus)属の細菌が、有利に用いられる。とりわけ好ましい属種は、大腸菌(Escherichia coli)である。さらに、好都合な細菌は、アルファプロテオバクテリア群、ベータプロテオバクテリア群又はガンマプロテオバクテリア群中に見出すことができる。
【0122】
これに関連して、本発明の宿主生物は、本発明に記載され、かつ化合物Iを変換して化合物IIを生じさせる本発明の活性をもつ酵素をコードする、少なくとも一の核酸配列、核酸構築物、又はベクターを含むことが好ましい。
【0123】
本発明の製造方法で使用される生物は、宿主生物に応じて、当業者に公知の方法で育成又は培養される。微生物は、通常、炭素源(通常は糖形態で)、窒素源(通常はイーストエクストラクトのような有機窒素源の形態で)、又は硫酸アンモニウムのような塩、鉄塩、マンガン塩、マグネシウム塩のような微量元素、及び適当であればビタミンを含んだ液体培地中で、0℃〜100℃、好ましくは10℃〜60℃の温度で、酸素ガスを供給しながら育てられる。これに関連して、液体栄養素のpHは、固定値で保持してもよいし、保持せずともよい。つまり、培養期間中、pHを制御することもできるし、しないこともできる。培養は、バッチ式で、半バッチ式で、又は連続的に行うことができる。栄養素は、発酵開始時に加えることもできるし、その後に半連続的若しくは連続的方法で供給することもできる。ケトンは、直接、培地に加えてもよいし、又は有利には培養後に加えてもよい。酵素は、前記生物から実施例に記載した方法を使用することによって分離することもできるし、又はクルードな抽出物として反応に使用することもできる。
【0124】
さらに、本発明は、本発明のポリペプチド又は機能的で生物学的活性のあるその断片を組換え技術によって調製する方法に関し、ポリペプチドを生産する微生物を培養し、適切な場合にはポリペプチドの発現を誘導し、前記ポリペプチドを培地から分離する。ポリペプチドは、所望であれば、このようにして工業規模で生産することもできる。
【0125】
組換え微生物は、公知の方法で培養及び発酵することができる。例えば、細菌は、TB培地又はLB培地中において20〜40℃の温度においてpH6〜9で繁殖させることができる。適切な培養条件は、例えば、T. Maniatis, E.F. Fritsch and J. Sambrook, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY (1989)に詳細に記載されている。
【0126】
前記ポリペプチドが培養培地中に分泌されないのであれば、細胞を破壊して、産物を溶解物から公知のタンパク質分離工程によって得る。細胞は、高周波超音波によって、高圧(例えば、フレンチプレス細胞のように)によって、浸透圧溶解、界面活性剤、溶解酵素若しくは有機溶剤の働きにより、ホモジナイザーを使用することによって、又は前記列挙した二以上の方法の組み合わせによって、望み通りに破壊することができる。
【0127】
ポリペプチドは、分子ふるいクロマトグラフィー(ゲル濾過)、例えば、Qセファロースクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、及び疎水クロマトグラフィーのような公知のクロマトグラフィー法を用いて、また、限外濾過、結晶化、塩析、透析、及び天然ゲル電気泳動のような他の日常的な方法を用いて精製することができる。適当な工程は、例えば、Cooper, F. G., Biochemische Arbeitsmethoden, Verlag Walter de Gruyter, Berlin, New York or in Scopes, R., Protein Purification, Springer Verlag, New York, Heidelberg, Berlinに記載されている。
【0128】
組換えタンパク質は、特定のヌクレオチド配列でcDNAを伸長し、それによって、例えば、精製を容易にするのに用いられる変化したポリペプチド又は融合タンパク質をコードするオリゴヌクレオチド又はベクターシステムを用いることによって単離されるのが、都合が良い。この種の適当な修飾の例としては、ヘキサヒスチジンアンカーとして知られる修飾のようなアンカーとして機能する「タグ」、又は抗体により抗原と認識され得るエピトープがある(例えば、Harlow, E. and Lane, D., 1988, Antibodies: A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor (N.Y.) Pressに記載されている)。これらのアンカーは、タンパク質を、例えば、クロマトグラフィーカラム内に充填することのできる固相支持体(例えば、ポリマーマトリクスのような支持体)に付けるのに使用できる。或いはマイクロタイタープレート若しくは他の支持体上で使用することもできる。
【0129】
同時に、これらのアンカーは、タンパク質を同定するのに使用することもできる。タンパク質は、蛍光色素、基質との反応後に検出可能な反応産物を形成する酵素マーカー、又は放射能マーカーのような通常のマーカーをそのままで、あるいはタンパク質を誘導体化するための前記アンカーと組み合わせて使用することによって同定してもよい。
【0130】
本発明の製造方法では、アセトニトリラーゼ活性が増大している又は本発明のポリペプチドの活性が野生型と比べて高レベルにある生物、特に微生物を使用することもできる。このような増加は、例えば、適当な核酸構築物(例えば、本発明の核酸構築物若しくはベクター等)を導入することによって、又は前記生物の特異的若しくは非特異的突然変異誘発によって達成することができる。選択した微生物は、本発明により突然変異誘発される。突然変異誘発とは、突然変異を特異的に又は非特異的に遺伝情報内、すなわち前記微生物のゲノム内に導入することを意味する。特異的、又は非特異的突然変異により、遺伝情報の一以上の部分が改変される。すなわち、微生物が遺伝的に改変される。この改変の結果、通常、その影響を受けた遺伝子に欠陥又は非発現がもたらされ、そのため遺伝子産物の活性が減少又は阻害される。
【0131】
特異的突然変異は、特定の遺伝子を変化させ、又はその活性を抑制し、低減し、若しくは改変する。非特異的突然変異は、ランダムに一以上の遺伝子を変化させ、又はその活性を抑制し、低減し、若しくは改変する。
【0132】
多数の微生物に特異的突然変異を行うために、集団を、例えば、統計学的観点から一の、好ましくは同定可能なDNA断片が微生物の各遺伝子内に組み込まれるように、様々な遺伝子の可能な限り多くを、最も好ましくは全てを抑制するのに適当なDNA集団又はライブラリーで形質転換することができる。ノックアウト遺伝子は、組み込み部位を解析することにより同定することができる。
【0133】
非特異的突然変異の場合、多数の微生物を突然変異誘発剤で処理する。試薬量又は処理強度は、統計学的観点から遺伝子あたり一つの変異が生じるように選択される。微生物の突然変異誘発に関する方法及び試薬は、当業者には周知の事項である。種々の方法の実施については、多くの出版物に(例えば、A.M.van Harten (1998), "Mutation breeding: theory and practical applications", Cambridge University Press, Cambridge,UK;E Friedberg, G Walker, W Siede (1995), “DNA Repair and Mutagenesis”, Blackwell Publishing;K.Sankaranarayanan, J. M. Gentile, L. R. Ferguson (2000) “Protocols in Mutagenesis”, Elsevier Health Sciencesにも)記載されている。当業者であれば、細胞内の自然発生的変異率が非常に低いこと、また、突然変異を誘発する非常に多くの化学的、物理学的、及び生物学的作用物質が存在することを知っている。これらの物質は、突然変異誘発剤と呼ばれ、生物学的、物理学的、及び化学的突然変異誘発剤に分類される。
【0134】
作用様式の異なる様々なクラスの化学的突然変異誘発剤が存在する。例えば、塩基類似体(例えば、5-ブロモウラシル、2-アミノプリンのような)、DNAと反応する化学物質(例えば、亜硝酸、ヒドロキシルアミンのような)、又はアルキル化剤(単官能性剤(例えば、メタンスルホン酸エチル、硫酸ジメチル、メタンスルホン酸メチル)、二官能性剤(例えば、窒素マスタードガス、マイトマイシン、ニトロソグアニジン−ジアルキルニトロソアミン類、N-ニトロソウレア誘導体、N-アルキル-N-ニトロ-N-ニトロソグアニジン類等)、インターカレート色素(例えば、アクリジン、エチジウムブロマイド)のような)である。
【0135】
物理学的突然変異誘発は、例えば、生物の照射によって行われる。照射のいくつかの形態は、強い突然変異誘発となる。2つのクラス、すなわち非電離放射線(例えば、UV)及び電離放射線(例えばX線)が区別されている。
【0136】
また、突然変異は、生物学的工程によって誘導することもできる。標準的な方法は、トランスポゾン突然変異誘発である。この方法は、遺伝子内部若しくはその近辺に転移因子が挿入される結果、遺伝子活性の改変(通常は、喪失)をもたらす。トランスポゾンの挿入部位を同定することで、その活性が変化した遺伝子を単離することができる。
【0137】
突然変異誘発は、一以上の遺伝子産物の細胞活性を変えることができる。本明細書に記載されたアリールアセトニトリラーゼの、特に好ましくは本明細書に記載されたそのポリペプチドの細胞活性が、増加することが好ましい。
【0138】
好ましくは、本発明に従って、非トランスジェニック生物、特に内在性アリールアセトニトリラーゼの発現調節及び/又は結合挙動により区別され、かつ「TILLING(Targeting Induced Local Lesion in Genomes)」法によって病原体に対して永続的、又は一過的抵抗性を有する微生物、植物及び植物細胞を、調製できる。この方法は、Colbert et al. 2001, Plant Physiology, 126, 480 - 484、McCallum et al. 2000, Nat. Biotechnol., 18, 455 - 457及びMcCallum et al. 2000, Plant Physiology, 123, 439 - 442に詳細に記載されている。前記文献は、「TILLING」法に関してその開示内容を本明細書に援用する。
【0139】
TILLING法は、「リバースジェネティクス(逆遺伝学)」的戦略であり、微生物又は植物の突然変異誘発処理(例えば、メタンスルホン酸エチル(EMS)を用いた化学的突然変異誘発による処理)した集団における点突然変異の高密度生成と、標的配列における突然変異の迅速な系統的同定とを組み合わせた方法である。標的配列は、まず、PCRによって突然変異誘発処理したM2集団のDNAプールに増幅される。ヘテロアレルPCR産物の変性及びアニーリング反応により、一方のDNA鎖は変異PCR産物に由来し、他方は野性型PCR産物に由来するヘテロ二本鎖が形成される。点突然変異の部位では「ミスマッチ」が生じ、これは、変性HPLC(denaturing HPLC)(DHPLC, McCallum et al., 2000, Plant Physiol., 123, 439-442)又はCelIミスマッチ検出システム(Oleykowsky et al., 1998, Nucl. Acids Res. 26, 4597-4602)のいずれかによって同定することができる。CelIは、ヘテロ二本鎖DNA中のミスマッチを認識し、その部位でDNAを特異的に切断するエンドヌクレアーゼである。切断産物は、その後、分画され、自動シークエンスゲル電気泳動によって検出することができる(Colbert et al., 2001、上記参照)。プール中の標的遺伝子特異的突然変異の同定後、個々のDNAサンプルが、突然変異を含む微生物又は植物を単離するために適切に解析される。このようにして、本発明の微生物、植物及び植物細胞の場合、突然変異誘発された集団がアリールアセトニトリラーゼに特異的なプライマー配列を用いて生成された後、突然変異誘発処理された植物細胞又は植物が同定される。TILLING法は、通常、あらゆる微生物、並びに植物及び植物細胞に適用できる。
【0140】
一の実施形態において、本発明はまた、実質的にR-及び/又はS-5-ノルボルネン-2-エンド-カルボニトリルを含む組成物、並びに60%、70%、80%、90%、95%、99%以上のR-及び/又はS-5-ノルボルネン-2-エンド-カルボン酸を含み、並びに/或いは40%、30%、20%、10%、5%、1%未満のR-及び/又はS-5-ノルボルネン-2-エキソ-カルボン酸率を含む組成物にも関連する。このような組成物は、先行技術ではこれまで調製されていない。ノルボルネン酸の化学調製では、5-ノルボルネン-2-エンド-カルボン酸と5-ノルボルネン-2-エキソ-カルボン酸の比率が約0.6:約0.4となる光学異性体の混合物が、常に生じる。
【0141】
また、本発明は、実質的にR-及び/又はS-5-ノルボルネン-2-エキソ-カルボニトリルを含む組成物、及びR-及び/又はS-5-ノルボルネン-2-エンド-カルボン酸をR-及び/又はS-5-ノルボルネン-2-エキソ-カルボン酸に対して0.6未満対0.4超の比で含む組成物にも関連する。このような組成物は、先行技術ではこれまで調製されていない。ノルボルネン酸の化学的調製では、5-ノルボルネン-2-エンド-カルボン酸と5-ノルボルネン-2-エキソ-カルボン酸の比率が約0.6:約0.4となる光学異性体の混合物が、常に生じる。
【0142】
それ故、本発明は、本発明の製造方法にしたがって調製することのできる組成物にも関連する。一の実施形態で、本発明は、本発明の製造方法にしたがって調製された組成物に関連する。
【0143】
さらなる実施形態において、本発明は、化合物IIの一の異性体を化合物Iの異性体の混合物から富化する酵素の、特にニトリラーゼの、好ましくはアリールアセトニトリラーゼの、特に好ましくは配列番号2若しくは4で示される配列を有する本発明のポリペプチド又はそのホモログ若しくは機能的断片の使用に関連する。
【0144】
さらなる実施形態において、本発明は、R-及び/又はS-5-ノルボルネン-2-エンド-カルボン酸をR-及び/若しくはS-5-ノルボルネン-2-エンド-カルボニトリル並びにR-及び/若しくはS-5-ノルボルネン-2-エキソ-カルボニトリルを含む混合物から富化する酵素の、特にニトリラーゼの、好ましくはアリールアセトニトリラーゼの、特に好ましくは配列番号2若しくは4で示される配列を有する本発明のポリペプチド又はそのホモログ若しくは機能的断片の使用に関連する。
【0145】
本発明は、さらに、R-及び/若しくはS-5-ノルボルネン-2-エンド-カルボニトリル並びに/又はR-及び/若しくはS-5-ノルボルネン-2-エキソ-カルボニトリルを変換して、R-及び/若しくはS-ノルボルネン-2-エンド-カルボン酸及び/又はR-及び/又はS-ノルボルネン-2-エキソ-カルボン酸を生じさせるためのアリールアセトニトリラーゼの使用に関連する。
【0146】
本発明は、さらに、R-及び/若しくはS-5-ノルボルネン-2-エンド-カルボニトリル並びに/又はR-及び/若しくはS-5-ノルボルネン-2-エキソ-カルボニトリルを転換して、R-及び/若しくはS-エンド-並びに/又はR-及び/若しくはS-ノルボルネン-2-エキソ-カルボン酸を生じさせるためのアリールアセトニトリラーゼの使用に関する。
【0147】
本発明は、さらに、R-及び/又はS-5-ノルボルネン-2-エンド-カルボニトリルを高基質濃度で転換して異性体的に純粋なR-及び/又はS-5-ノルボルネン-2-エンド-カルボン酸をもたらす酵素の、特にニトリラーゼの、好ましくはアリールアセトニトリラーゼの、特に好ましくは配列番号2若しくは4で示される配列を有する本発明のポリペプチド、又はそのホモログ若しくは機能的断片の使用に関する。
【0148】
さらなる実施形態において、本発明は、酵素の、特にニトリラーゼの、好ましくはアリールアセトニトリラーゼの、特に好ましくは本発明のポリペプチドの使用に関連する。ここで、ポリペプチドは、
(a)配列番号2又は4で示されるポリペプチドをコードする核酸分子、
(b)少なくとも配列番号1又は3に記載のコード配列のポリヌクレオチドを含む核酸分子、
(c)遺伝コードの縮重のため、(a)又は(b)に記載の核酸分子にコードされるポリペプチド配列から誘導され得る核酸分子、
(d)(a)又は(b)に記載の核酸分子にコードされたポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも60%相同な配列を有するポリペプチドをコードする核酸分子、
(e)アリールアセトニトリラーゼポリペプチドに由来し、配列番号2又は4と比べて、最大25%のアミノ酸残基が欠失、挿入、置換又はそれらの組み合わせによって改変されており、かつ配列番号2又は4の酵素活性の少なくとも30%をなお保持しているポリペプチドをコードする核酸分子、及び
(f)(a)〜(c)に記載のいずれかの核酸分子によりコードされるアリールアセトニトリラーゼの断片又はエピトープをコードする核酸分子、
からなる群より選択される核酸分子、或いは前記各核酸分子に相補的な配列を含む核酸分子にコードされているポリペプチドが使用される。
【0149】
一の実施形態において、ポリペプチドは、配列番号2又は4に記載の配列を有さない。一の実施形態において、ポリペプチドは、Eur. J. Biochem. 182, 349-156, 1989に記載されたニトリラーゼの配列も有さない。一の実施形態において、ポリペプチドはデータベース登録番号AY885240の配列も有さない。
【0150】
最後に、本発明は、酵素的に式Iの化合物を転換することによって化学式IIの化合物を調製するためのポリペプチドの使用に関連する。ここで、ポリペプチドは、
(a)配列番号2又は4で示されるポリペプチドをコードする核酸分子、
(b)少なくとも配列番号1又は3に記載のコード配列のポリヌクレオチドを含む核酸分子、
(c)遺伝コードの縮重のため、(a)又は(b)に記載の核酸分子にコードされるポリペプチド配列から誘導され得る核酸分子、
(d)(a)又は(b)に記載の核酸分子にコードされたポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも60%相同な配列を有するポリペプチドをコードする核酸分子、
(e)アリールアセトニトリラーゼポリペプチドに由来し、配列番号2又は4と比べて、最大25%のアミノ酸残基が欠失、挿入、置換又はそれらの組み合わせによって改変されており、かつ配列番号2又は4の酵素活性の少なくとも30%をなお保持しているポリペプチドをコードする核酸分子、及び
(f)(a)〜(c)に記載のいずれかの核酸分子によりコードされるアリールアセトニトリラーゼの断片又はエピトープをコードする核酸分子、
からなる群より選択される核酸分子、或いは前記各核酸分子に相補的な配列を含む核酸分子にコードされている。
【0151】
一の実施形態において、ポリペプチドは、配列番号2又は4に記載の配列を有さない。一の実施形態に置いて、ポリペプチドは、Eur. J. Biochem. 182, 349-156, 1989に記載されたニトリラーゼの配列も有さない。一の実施形態に置いて、ポリペプチドはデータベース登録番号AY885240の配列も有さない。
【0152】
上記記載及び下記実施例は、本発明を説明するために供されているに過ぎない。当業者には明らかな多数の可能性のある改変も同様に、本発明に含まれる。
【実施例1】
【0153】
種々のニトリラーゼを用いた5-ノルボルネン-2-エンド/エキソ-カルボニトリルの変換
Biocatalytics社のニトリラーゼ(“Nit101-108”)をBTMとして2mg/mlで用いた。BASF社のニトリラーゼを組換え全細胞生体触媒(GroELSシャペロンを用いたE. coli TG10pDHEシステム、PCT/EP第03/13367号参照)として使用し、本目的のためにアンピシリン(100μg/ml)、スペクチノマイシン(100μg/ml)、クロラムフェニコール(20μg/ml)、IPTG(0.1mM)及びラムノース一水和物(0.5g/L)を含む30mlのLB中で100mlの三角フラスコにて37℃で一晩培養した。細胞を30mlの10mM Pipes(pH7.0)で1回洗浄し、3mlのバッファで回収した。適切な場合には、‐20℃で保存した。使用したニトリルは、Aldrich社の異性体混合物である。
【0154】
(アッセイ)
10〜200μlの細胞(10倍濃度)
100μl(メタノールに溶解した100mMのニトリル)
10mM Pipes (pH 7.0)で1000μlに調整
40℃で3〜21時間振とう
サンプルを遠心し、上清をRP-HPLCを通して5-ノルボルネン-エンド/エキソ-カルボン酸について解析した。
【0155】
結果を図1に示す。
【実施例2】
【0156】
ニトリラーゼ338を用いた 5-ノルボルネン-2-エンド-カルボニトリルの変換と単離
30mlのニトリルと1〜20 g/L のTG10+pDHE338細胞を0.5Lの10mM NaH2PO4 (pH7.5)中でガラス反応器において250rpmにて40℃で攪拌した。7〜24時間後、5-ノルボルネン-2-エンド-カルボン酸への転換をHPLCを通して解析し、ほぼ完全に転換されたことがわかった。(<3mM ニトリル)。
【0157】
細胞を除去した後、クルードな5-ノルボルネン-2-カルボン酸をロータリーエバポレーターで濃縮した(約2M)。その後、等量のヘプタンで酸性条件下(硫酸でpH2に)にて抽出した。溶媒の蒸発、そして乾燥後、5-ノルボルネン-2-エンド-カルボン酸を固体(融点46度)として99%超の純度(H-NMR, HPLC)で得た。
【実施例3】
【0158】
ニトリラーゼ338を用いた5-ノルボルネン-2-エキソ-カルボニトリルの変換と単離
30mlのニトリルと1〜20 g/L のTG10+pDHE338細胞を0.5Lの10mM NaH2PO4 (pH7.5)中でガラス反応器において250rpmにて40℃で攪拌した。1〜7日後、5-ノルボルネン-2-エンド-カルボン酸への転換をHPLCを通して解析し、ほぼ完全に転換されたことが判明した(<3mM ニトリル)。
【0159】
細胞を除去した後、クルードな5-ノルボルネン-2-カルボン酸をロータリーエバポレーターで濃縮した(約2M)。その後、等量のヘプタンで酸性条件下(硫酸でpH2に)にて抽出した。溶媒の蒸発、そして乾燥後、5-ノルボルネン-2-エンド-カルボン酸を固体(融点42度)として99%以上の純度(H-NMR, HPLC)で得た。
【実施例4】
【0160】
Rhodococcus rhodochrous J1-ニトリラーゼの比較実施例:クローニングと発現
Rhodococcus rhodochrous J1(FERM BP-1478)のニトリラーゼをクローン化するために、プライマーMke638及びMke639を配列D11425 (J.Biol. Chem. 267 (29), 20746-20751 (1992))に基づいて選択し、ニトリラーゼ遺伝子をPCRによって前記株の単一コロニーから増幅した。
【表2】

【表3】

【0161】
PCRは、Stratagene社の標準プロトコルに従い、Pfu ultrapolymerase (Stratagene)を用いて、95℃で5分間;95℃で45秒間、50℃で45秒間及び72℃で1分30秒間を30サイクル;72℃で10分間;使用まで10℃保存の温度プログラムで行った。PCR産物(1.2kb)をアガロースゲル電気泳動(1.2% E-Gel, Invitrogen)及びカラムクロマトグラフィー(GFX kit, Amersham)で分離した。続いて、NdeI/HindIIIで切断し、同様に切断したpDHE19.2ベクター(pJOE誘導体、DE19848129)の中にクローン化した。ライゲーション混合液でE.coli TG10 pAgro4 pHSG575 (TG10:E. coli TG1 (Stratagene)のRhaA-誘導体; pAgro4:Takeshita, S;Sato, M;Toba, M;Masahashi, W;Hashimoto-Gotoh, T (1987) Gene 61, 63-74; pHSG575:T. Tomoyasu et al (2001), Mol. Microbiol. 40(2), 397-413)を形質転換した。6つの形質転換体を選択し、解析した。それら6つの形質転換体を30mlのLBAmp/Spec/Cm 0.1mM IPTG/0.5g/Lラムノース中で100mL三角フラスコ(バッフル付)にて37℃で18時間培養し、5000g/10分で遠心した後、10mMのKH2PO4 (pH8.0)で1回洗浄し、同バッファ3mlに再懸濁した。それらを10mM KH2PO4 (pH8.0)と6mMのベンゾニトリルで1:10に希釈し、それらの活性を測定した。サンプルを遠心し、上清について、RP-HPLCを通して安息香酸とベンゾニトリルを測定した。4つのクローンに活性が見られ、15分後には既に完全な安息香酸への転換を示した。これら4つのクローンの配列決定により、得られたプラスミドpDHErrhJ1の挿入がR. rhodochrous J1ニトリラーゼの核酸配列であり、かつD11245で示されることが判明した。
【実施例5】
【0162】
種々のニトリラーゼを用いた5-ノルボルネン-2-エンド/エキソ-カルボニトリルの変換
Rhodococcus rhodochrous J1 (FERM BP-1478)を文献(Nagasawa et al., Arch. Microbiol. 1988: 150, 89-94)に記載されているように培養し、回収した。細胞のベンゾニトリラーゼ活性を実施例4のようにして解析した。15分後には完全な転換が見られた。BASFニトリラーゼ株及びE. coli TG10+pDHE9632J1(実施例4)を培養し、実施例1のように回収した。続いて、乾燥バイオマスを測定した(R. rhodochrous J1:3.5g/L、E. coli株: 0.8g/L)。
【0163】
(アッセイ)
xμlの細胞懸濁液(6g/L BTM)
200〜1000mMのニトリル
0〜0.5mM DTT
20 mMのKH2PO4(pH8.0)で1000μlに調整
0.3〜6日40℃にて振とう。
【0164】
変換をモニターするために、サンプルを取り出して、遠心した後、上清を5-ノルボルネン-2-エンド/エキソ-カルボン酸及びその酸アミドについてRP-HPLCを通して解析した。
【表4】

【表5】

【表6】

【表7】

【0165】
比較配列の概説
1)a) AY885240由来のPseudomonas fluorescens EBC191 (DSM7155)におけるNitAニトリラーゼのポリペプチド配列
2)ADI64602 (WO2003097810-A2 Seq. ID175)のNitニトリラーゼのポリペプチド配列
3)ADG93882 (WO2003097810-A2 Seq. ID349)のNitニトリラーゼのポリペプチド配列
【図面の簡単な説明】
【0166】
【図1】本発明の活性を有する酵素を示す。異性体的に純粋なエキソ-ノルボルネンニトリルを用いたときに、高い活性が観察された。高活性は、高濃度のニトリルにおいても見られた。
【図2】ClustalWアラインメントプログラム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化合物Iからアリールアセトニトリラーゼを用いて下記化合物IIを酵素により製造する方法。
【化1】

(式中、R1〜R9は、お互いに独立して、H、直鎖又は分岐した1〜6個の炭素を有するアルキル基、2〜6個の炭素を有するシクロアルキル基、非置換の、又はアミノ基、ヒドロキシ基若しくはハロ基で置換された3〜10個の炭素を有するアリール基であることができ、
R5及びR7、また同様にR8及びR9は、3〜6個の炭素を有するシクロアルキル基、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、又はシクロヘキシル基を形成することもでき、
R8及びR9、また同様にR5及びR7は、環外二重結合及び任意の置換基を担持することもでき、
R3及びR4は、環(4,5,6)を形成することができるか、又はアニールされた芳香族化合物の一部となることができる。)
【化2】

(式中、R1〜R9は、上記の通り)
【請求項2】
化合物Iの酵素的変換が、ポリペプチド又はポリペプチドを含む媒体とのインキュベーションを介して行われ、前記ポリペプチドが
(a)配列番号2又は4で示されるポリペプチドをコードする核酸分子、
(b)少なくとも配列番号1又は3に記載のコード配列のポリヌクレオチドを含む核酸分子、
(c)遺伝コードの縮重により、(a)又は(b)に記載の核酸分子にコードされるポリペプチド配列から誘導され得る核酸分子、
(d)(a)又は(b)に記載の核酸分子にコードされたポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも60%相同な配列を有するポリペプチドをコードする核酸分子、
(e)アリールアセトニトリラーゼポリペプチドから誘導され、配列番号2と比べて最大25%のアミノ酸残基が欠失、挿入、置換又はそれらの組み合わせによって改変されており、かつ配列番号2の酵素活性の少なくとも30%をなお保持しているポリペプチドをコードする核酸分子、及び
(f)(a)〜(c)に記載のいずれかの核酸分子によりコードされるアリールアセトニトリラーゼの断片又はエピトープをコードする核酸分子
からなる群より選択される核酸分子、或いは前記各核酸分子に相補的な配列を含む核酸分子にコードされており、
任意で、前記形成された産物を単離する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
化合物IがR-5-ノルボルネン-2-エンド-カルボニトリル、S-5-ノルボルネン-2-エンド-カルボニトリル、R-5-ノルボルネン-2-エキソ-カルボニトリル、及び/又はS-5-ノルボルネン-2-エキソ-カルボニトリルからなる群より選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
化合物IがR,S-5-ノルボルネン-2-エンド-カルボニトリル又はR,S-5-ノルボルネン-2-エキソ-カルボニトリルである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
R-5-ノルボルネン-2-エンド-カルボニトリル、S-5-ノルボルネン-2-エンド-カルボニトリル、R-5-ノルボルネン-2-エキソ-カルボニトリル、及び/又はS-5-ノルボルネン-2-エキソ-カルボニトリルを加水分解して、それぞれ対応するS-5-ノルボルネン-2-エキソ-カルボン酸、S-5-ノルボルネン-2-エンド-カルボン酸、R-5-ノルボルネン-2-エキソ-カルボン酸、及び/又はR-5-ノルボルネン-2-エンド-カルボン酸を得る、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
実質的に鏡像異性的に純粋な基質を変換する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
実質的に鏡像異性的に純粋な産物を得る、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
基質濃度が少なくとも20mM以上の化合物Iを用いて、50%以上の基質を変換して化合物IIを得る、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
使用する前記基質が化合物Iの異性体の混合物であり、一の異性体が産物中で富化される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
化合物IIを得るために化合物Iを酵素的に加水分解するのに適したポリペプチドであって、前記ポリペプチドが、
(a)配列番号2で示されるポリペプチドをコードする核酸分子、
(b)少なくとも配列番号1に記載のコード配列のポリヌクレオチドを含む核酸分子、
(c)遺伝コードの縮重により、(a)又は(b)に記載の核酸分子にコードされるポリペプチド配列から誘導され得る核酸分子、
(d)(a)又は(b)に記載の核酸分子にコードされたポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも60%相同な配列を有するポリペプチドをコードする核酸分子、
(e)アリールアセトニトリラーゼポリペプチドから誘導され、配列番号2と比べて最大15%のアミノ酸残基が欠失、挿入、置換又はそれらの組み合わせによって改変されており、かつ配列番号2の酵素活性の少なくとも30%をなお保持しているポリペプチドをコードする核酸分子、及び
(f)(a)〜(c)に記載のいずれかの核酸分子によりコードされるアリールアセトニトリラーゼの断片又はエピトープをコードする核酸分子
からなる群より選択される核酸分子、或いは前記各核酸分子に相補的な配列を含む核酸分子にコードされており、
かつ前記ポリペプチドが配列番号2に記載の配列を有さない、前記ポリペプチド。
【請求項11】
アリールアセトニトリラーゼである、請求項10に記載のポリペプチド。
【請求項12】
200mM以上の濃度の5-ノルボルネン-2-エンド-カルボニトリルを含む組成物において50%以上の化合物Iを変換する、請求項10又は11に記載のポリペプチド。
【請求項13】
200mM以上の濃度の5-ノルボルネン-2-エキソ-カルボニトリルを含む組成物において50%以上の化合物Iを変換する、請求項10〜12のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項14】
配列番号1又は3の配列を有さない、請求項10〜13のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む核酸分子。
【請求項15】
請求項14に記載の核酸分子をベクター内又は発現構築物内に挿入することを含む、ベクター又は発現構築物を調製する方法。
【請求項16】
請求項14に記載の核酸分子を含むか、又は請求項15に記載の方法によって調製されたベクター又は発現構築物。
【請求項17】
核酸分子が原核生物宿主又は真核生物宿主内での発現を可能にする調節配列と機能的に連結されている、請求項16に記載のベクター。
【請求項18】
安定的に又は一過的に請求項16若しくは17に記載のベクター又は請求項14に記載の核酸分子で形質転換されたか又はトランスフェクトされ、或いは請求項14に記載の核酸分子又は請求項10〜13のいずれか1項に記載のポリペプチドを発現する宿主細胞。
【請求項19】
実質的に、5-ノルボルネン-2-エンド-カルボニトリル及び、≧0.6:≦0.4の比率でエンド-ノルボルネン酸とエキソ-ノルボルネン酸を含んでなる含む組成物。
【請求項20】
実質的に、5-ノルボルネン-2-エキソ-カルボニトリル及び、<0.6:>0.4の比率でエンド-ノルボルネン酸とエキソ-ノルボルネン酸を含んでなる組成物。
【請求項21】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法によって調製され得る組成物。
【請求項22】
化合物Iの異性体の混合物から化合物IIの異性体の一つを富化するための酵素の使用。
【請求項23】
R-及び/又はS-5-ノルボルネン-2-エンド-カルボニトリル、並びにR-及び/又はS-5-ノルボルネン-2-エキソ-カルボニトリルを含む混合物から、R-及び/又はS-5-ノルボルネン-2-エンド-カルボン酸を富化するための請求項22に記載の使用。
【請求項24】
S-5-ノルボルネン-2-エンド-カルボニトリル、R-5-ノルボルネン-2-エンド-カルボニトリル、R-5-ノルボルネン-2-エキソ-カルボニトリル及び/又はS-5-ノルボルネン-2-エキソ-カルボニトリルを変換して、それぞれR-ノルボルネン-2-エンド-カルボン酸、S-ノルボルネン-2-エンド-カルボン酸、R-ノルボルネン-2-エキソ-カルボン酸及び/又はS-ノルボルネン-2-エキソ-カルボン酸を得るためのアリールアセトニトリラーゼの使用。
【請求項25】
R,S-5-ノルボルネン-2-エンド-カルボニトリル又はR,S-5-ノルボルネン-2-エキソ-カルボニトリルを変換して、R,S-ノルボルネン-2-エンド-カルボン酸又はR,S-ノルボルネン-2-エキソ-カルボン酸を得るためのアリールアセトニトリラーゼの使用。
【請求項26】
5-ノルボルネン-2-エンド-カルボニトリルを高基質濃度で実質的に異性体的に純粋なエンド-ノルボルネン酸に変換するためのニトリラーゼの使用。
【請求項27】
(a)配列番号2又は4で示されるポリペプチドをコードする核酸分子、
(b)少なくとも配列番号1又は3に記載のコード配列のポリヌクレオチドを含む核酸分子、
(c)遺伝コードの縮重により、(a)又は(b)に記載の核酸分子にコードされるポリペプチド配列から誘導され得る核酸分子、
(d)(a)又は(b)に記載の核酸分子にコードされたポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも60%相同な配列を有するポリペプチドをコードする核酸分子、
(e)アリールアセトニトリラーゼポリペプチドから誘導され、配列番号2又は4と比べて最大25%のアミノ酸残基が欠失、挿入、置換又はそれらの組み合わせによって改変されており、かつ配列番号2又は4の酵素活性の少なくとも30%をなお保持しているポリペプチドをコードする核酸分子、及び
(f)(a)〜(c)に記載のいずれかの核酸分子によりコードされるアリールアセトニトリラーゼの断片又はエピトープをコードする核酸分子
からなる群より選択される核酸分子、或いは前記各核酸分子に相補的な配列を含む核酸分子にコードされているポリペプチドを使用する、請求項22〜26のいずれか1項に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−519724(P2009−519724A)
【公表日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546361(P2008−546361)
【出願日】平成18年12月11日(2006.12.11)
【国際出願番号】PCT/EP2006/069511
【国際公開番号】WO2007/071578
【国際公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】