アルカリガスの放出量を低減したコンクリート構造物及びコンクリート構造物からのアルカリガスの放出量の低減方法
【課題】コンクリートの屋内側の表面にアルカリガス捕捉作用を有する弱酸溶液を塗布することで、アルカリガス捕捉層を形成した、コンクリートからのアルカリガスの放出量を確実に低減する構造物を提案する。
【解決手段】コンクリートの屋内側の表面にアルカリガス捕捉作用を有する弱酸溶液を塗布し、この溶液がコンクリートの表面に染み込むことでコンクリートの表層部分にアルカリガス捕捉層を形成している。
【解決手段】コンクリートの屋内側の表面にアルカリガス捕捉作用を有する弱酸溶液を塗布し、この溶液がコンクリートの表面に染み込むことでコンクリートの表層部分にアルカリガス捕捉層を形成している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリガスの放出量を低減したコンクリート構造物及びコンクリート構造物からのアルカリガスの放出量の低減方法に関する。これらの方法及び構造物は、特に美術館などへの適用に適している。
【背景技術】
【0002】
硬化したコンクリートの表面からは、アンモニアを代表成分とするアルカリガスが発生することが知られており、このアルカリガスが油絵に含まれるアマニ油と反応して油絵が変色したり、工芸品を腐食させるなどの悪影響を及ぼす。
【0003】
コンクリート中で生成されるアンモニウムイオンは、コンクリート中に含まれる水分に溶け込んでおり、図10に示すように、水分がコンクリート表面からの乾燥とともに表面へ移動し、この水分がコンクリート表面で蒸発するときに気化してアンモニアガスとなる。コンクリートの水分は、コンクリートが硬化してから1年から2年かけて蒸発が鈍化するので、アンモニアガスの発生の低減にも同程度の時間を要する。図11に新築後の美術館中でのアンモニアの室内濃度の変移を示す。許容されるアンモニア濃度を30ppb程度とすると、美術品を収蔵する美術館などを新築する際には、アンモニアガスの発生の低減を待つ枯らし期間を1〜2年程度みておく必要がある。従って工事竣工後すぐに開館できないという問題点があった。
【0004】
これに対して、アンモニアなどのアルカリガスの発生を低減又は抑制するために、近年さまざまな方法が提案されている。
【0005】
例えばアンモニアを発生する添加物の少ないセメント(例えば早強ポルトランドセメント)や窒素酸化物の付着の少ない骨材をコンクリートの素材として選択したり、或いは窒素酸化物を除去するために骨材を加熱する方法が知られている(特許文献1)。
【0006】
また天然骨材に代えて、人工骨材を用いてコンクリートからのガス放出量を少なくすることも提案されている(特許文献2)。
【0007】
また活性炭・シリカ・ケイ酸カルシウムなどのアンモニア吸着物質を粒状にしてモルタル・コンクリートに添加する方法(特許文献3)も知られている。
【0008】
さらにコンクリート壁の表面に、二酸化珪素・四価金属の水不溶性リン酸塩および二価金属の水酸化物を含むアンモニア捕捉物質を含有する仕上げ材を貼着することも行われている(特許文献4)。
【特許文献1】特開平10−287462号
【特許文献2】特開2006−36555号
【特許文献3】特開2005−074405号
【特許文献4】特開平11−159024号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1から特許文献3のように建物に使用するコンクリートに対して、特別なコンクリートを用いたり、骨材を加熱処理したり、アンモニア吸着物質を添加する方法では、材料費が増大したり、製造工程が複雑となるため、コスト高となり、一般には用いられていない。これに対して、特許文献4のようにアンモニア捕捉作用を有する仕上げ材を用いるときには、コンクリート自体は普通のコンクリートでよい。しかし、美術館のように見た目の雰囲気を大切にする建物では、打ち放しのコンクリートが好まれる場合があり、仕上げ材を使用したのでは、コンクリートの表面を露出させることができない。
【0010】
本出願人は、こうした仕上げ材に代えて打ち放しのコンクリート表面を残しながらアルカリガスを遮断するため、アルカリガスを捕捉する成分を有する弱酸溶液を上記表面に塗布するということを検討した。こうした溶液を塗布するとしても、さまざまな検討事項がある。例えば塗布する時期である。図11に示すようにガスの発生は初期段階ほど活発であるので、時期を失して塗布をしてもアンモニアなどのアルカリガスが建物内に拡散してしまうので、意味がない。さらに一定のアルカリガス遮蔽効果を得るためには、アルカリガス捕捉成分の塗布量や溶液の濃度にも注意を払う必要がある。
【0011】
本発明の第1の目的は、コンクリートの屋内側の表面にアルカリガス捕捉作用を有する弱酸溶液を塗布することで、アルカリガス捕捉層を形成した、コンクリートからのアルカリガスの放出量を確実に低減する構造物を提案することである。
【0012】
本発明の第2の目的は、建物の内部へのアルカリガスの放出を最も友好に抑制できるタイミングで上記弱酸を塗布する手順を含む、アルカリガスの放出量を低減する方法を提案することである。
【0013】
本発明の第3の目的は、上記弱酸を可能な限り均等にかつ効率的に塗布するために適した手順を含む、アルカリガスの放出量を低減する方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の手段は、アルカリガスの放出量を低減したコンクリート構造物であり、
コンクリートの屋内側の表面にアルカリガス捕捉作用を有する弱酸溶液を塗布し、この溶液がコンクリートの表面に染み込むことでコンクリートの表層部分にアルカリガス捕捉層を形成したことを特徴としている。
【0015】
本手段は、コンクリート構造物の屋内側の表面にアルカリガス捕捉層を形成することを提案する。屋内にアルカリガスが蓄積することで事物、特に美術品などの表面を傷めるからである。
【0016】
「アルカリガス捕捉作用を有する弱酸溶液」とは、アルカリガスがアンモニアである場合には、例えばリン酸溶液(好適にはリン酸水溶液)であって、アルカリガスの成分と化学反応する。反応物はコンクリート内に留まるので、アルカリガスの放出が低減される。
【0017】
「アルカリガス捕捉層」は、上記弱酸溶液がコンクリートの表層部分に含浸することで形成される。単にアルカリガスと反応する層がコンクリート表面を覆っているだけでもよいように思えるが、液状のガス捕捉成分の塗布層がコンクリート表面で垂れを生ずると、その塗布層に濃い箇所と薄い箇所とができ、一定のアルカリガス遮蔽効果が得られない。また、アルカリガス捕捉層がコンクリート表層部分に染み込むので、コンクリート表面からアルカリガス捕捉層が剥離するような不都合を生じにくい。
【0018】
「コンクリート構造物のコンクリート」は、アルカリガス捕捉作用を有する弱酸溶液が含浸可能なものとする。圧縮応力が80N/mm2以下の一般的なコンクリートは、表面にミクロンオーダーの微細な空隙を有しており、弱酸溶液が染み込むという上述の条件を満たす。
第2の手段は、第1の手段を有し、かつ
上記アルカリガスをアンモニアとし、弱酸溶液をリン酸溶液とするとともに、
塗布されたリン酸の量を、単位面積当たり7g/m2から20g/m2とし、
アルカリガス捕捉層の厚さを1mmから5mmとしている。
【0019】
本手段では、アルカリガス捕捉層の好適な形態を提案している。アルカリガスの典型はアンモニアであり、アンモニア捕捉成分の典型はリン酸である。
【0020】
リン酸の濃度は、図9に示す通り少なすぎると、アンモニア放散量を抑制できず、多すぎると、表面にリン酸カルシウムが吹き出して白化する。一度塗りの場合の好適なリン酸濃度は10〜25wt%程度(図9に2本の実線で示す範囲)であり、これを単位面積のリン酸の量に換算すると、7g/m2から20g/m2となる(図9参照)。なお、「アルカリガスの捕捉」といっても、主として層内で発生するアルカリガスと反応するだけの捕捉成分を含浸させればよい。コンクリート構造物内で発生し得るアンモニアの全てと反応するだけのリン酸を表層部分に含浸させる必要はないし、それは不可能である。コンクリート内でアルカリガスが拡散する速度は非常に小さいので、アルカリガス捕捉層の厚さを十分に確保すれば、アンモニアなどのアルカリガスの放出量を目標値に低減することが可能である。
【0021】
アルカリガス捕捉層の厚さは、コンクリートのアルカリガスの発生傾向に応じて、1〜5mmの範囲で選択すればよい。より好適には2〜3mmである。
【0022】
第3の手段は、コンクリート構造物からのアルカリガスの放出量の低減方法であり、
コンクリートが打設された後であって少なくともコンクリートの養生期間が終了するまでに、当該コンクリート構造物の屋内側の表面にアルカリガス捕捉作用を有する弱酸溶液を塗布することを特徴としている。
【0023】
本手段では、アルカリガス捕捉作用を有する弱酸溶液を塗布する方法を提案している。この弱酸はコンクリートの表層部分に滲み込み、アルカリガスの遮蔽層を作る。これによりアルカリガスを遮蔽しながら打ち放しのコンクリート表面を実現することができる。
【0024】
弱酸溶液を塗布する作業は、少なくとも養生期間が終了するまで(例えばコンクリートの硬化開始後28日まで)の間に行う。コンクリートは硬度を生ずるまで湿潤に保つ必要があるために、養生期間においては水分とともにアルカリガスが放出され易く、その後徐々にガスの放出量は低減する。従って少なくとも養生期間が終わるまで、好ましくは養生期間の初期に塗布作業を行うことが望ましい。しかしながら、型枠の解体では所定の在置期間をとる必要があり、また解体したパーツなどの片付けも必要である。そのため、解体に着手してから塗布を開始するまでにある程度の時間(2日程度)がかかることが通常である。
【0025】
アルカリガス捕捉溶液を塗布することでガス遮蔽層を形成するときには塗りムラなく均一に塗ることが望ましい。塗りが不十分な箇所があると、その箇所からアルカリガスが放出され、美術品などの保管物を傷めるからである。そのためには一つの屋内空間に面するコンクリート構造物の表面部分についてはほぼ均等かつ同濃度の溶液を塗布することが望ましい。「ほぼ均等」というのは、手作業で塗布を行うときには、最初に塗った箇所と次に塗った箇所とが多少重なる程度のことは避けられないからである。
【0026】
第4の手段は、第3の手段を有し、かつ上記弱酸溶液をリン酸溶液とし、リン酸溶液の重量濃度を5%から25%としている。
本手段では、典型的なアンモニア捕捉物質であるリン酸を用いて均一にかつ効率的に溶液を塗布するための方法・手順を提案している。前述の特許文献4の如くリン酸を含む仕上げ材をコンクリート表面に貼着する方法では、単位面積当りのリン酸の量を定量とすることは容易である。工場の生産過程として管理できるからである。しかし、弱酸溶液を塗布することは手作業で行われるから、どのように塗りムラを少なくするかが問題となる。本発明の弱酸溶液を塗布する作業は、ある程度以上の濃度の溶液を用いて一度塗りすることが望ましい。薄い溶液を何度も塗り重ねる方法は、塗り厚にバラつきを生じやすいために好ましくない。リン酸溶液の重量濃度を5%以上としているのは、そうした理由である。他方、溶液の濃度が濃すぎると、コンクリートの表層部分へ染み込みにくく、液垂れを生じたり、ムラができる可能性がある。そうした不都合を避けるために、リン酸溶液の重量濃度を25%以下としている(図9に2本の点線で示す範囲)。
【0027】
第5の手段は、第4の手段を有し、かつ
上記リン酸溶液をリン酸水溶液としたことを特徴としている。
本発明の弱酸溶液に限らず液剤をコンクリート表面に塗ると、その後しばらくは、塗った表面部分が濡れた状態となり、見た目で乾燥した部分と区別することができる。従って本願図4Bに示すように広いコンクリート表面を複数列に分けて順々に塗布することが可能である。例えばアルコールを溶媒とする場合には、揮発が速いので、コンクリート表面のある列の最後まで塗布し終わったときには、同列の最初の部分が乾いてしまう。これでは既に塗った箇所と塗っていない箇所とを確認することができない。その結果として、次の列の塗布をする際に、前の列と大きく重なって2度塗りをすることになったり、さらに困ることは、前の列と隙間を残して塗り残しを生ずる可能性がある。こうした不都合を排除するために、本手段では、リン酸水溶液を用いている。
【発明の効果】
【0028】
第1の手段及び第3の手段に係る発明によれば、次の効果を奏する。
○コンクリートの屋内側の表面にアンモニアなどのアルカリガス捕捉作用を有する弱酸溶液を塗布したから、コンクリートの表層部分にアルカリガス捕捉層を容易に形成することができる。
○コンクリート全体に処理を施すのではないから、低コストでアンモニアガスの遮蔽効果が得られる。
○コンクリートの打ち放しの表面を仕上げ材で隠す必要がないので、デザイン上の自由度が向上する。
第2の手段に係る発明によれば、次の効果を生ずる
○リン酸の量を単位面積当たり7g/m2以上としたから、アルカリガス捕捉層内でアンモニアを十分に吸着することができる。
○リン酸の量を単位面積当たり20g/m2以下としたからコンクリート表面の過剰な白化を抑制することができる。
○アルカリガス捕捉層の厚さを1mmから5mmとしたから、アルカリガス捕捉層の内側のコンクリート部分からのアンモニアガスの拡散を十分に抑制できる。
【0029】
第4の手段に係る発明によれば、弱酸溶液をリン酸溶液とし、リン酸溶液の重量濃度を5%から25%としたから、一度塗りが可能であるとともに、液垂れを生じない。
【0030】
第5の手段に係る発明によれば、揮発の遅い水溶液を使用するから、塗布した場所と塗布していない場所とが明確になり、塗り残しを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
図1は、本発明に係るアルカリガスの発生を抑制したコンクリート造の建物の例を示している。
【0032】
図面中、1は、コンクリート造の建物である。簡単のために、建物の壁4、天井6、及び床8を構成するコンクリート構造物2は、一体のものとして表している。本発明では、このコンクリート構造物2のうち屋内に臨む表層部分をアルカリガス捕捉層10としている。
【0033】
コンクリート構造物2は、現場打ちで形成されたものである。このコンクリート構造物2は、圧縮応力が80N/mm2以下の通常のコンクリートで形成されている。この程度の圧縮応力であると、表面に微細な空隙があるので、後述のリン酸溶液を含浸させることが可能である。それ以上の圧縮応力を有するコンクリート(超高強度コンクリート)では、本発明を適用しにくいということになるが、この種のものは圧縮強度が高いためにアルカリガスの放出も少ないので、本発明を適用する意味があまりない。少なくとも建物の各室を形成するコンクリート構造物2を、一定の圧縮強度を有するコンクリートで形成すると、アルカリガスの遮蔽効果を一定に維持する上で有利である。
【0034】
アルカリガス捕捉層10は、コンクリートの隙間にリン酸を含浸させた層である。コンクリートの性状は、この層以外のコンクリート部分とほぼ同じである。アルカリガス捕捉層の厚さは1〜5mm程度である。
【0035】
上記構成によれば、コンクリート構造物2のうち表層部分がアルカリガス捕捉層10となっている。この層内で新たに発生したアンモニウムイオンは、アルカリガス捕捉層のリン酸と反応するので、屋内空間には放出されない。アルカリガス捕捉層より内部でもアンモニウムイオンが発生するが、アルカリガス捕捉層内のリン酸が使い尽されない限りは、同様にアルカリガス捕捉層内で捕捉される。アルカリガス捕捉層は建物の全てのコンクリートから発生するアルカリガスと反応するだけのリン酸を含有している訳ではない。それだけの量のリン酸を薄い表層部分に包含させることは困難であると同時に、仮に可能であっても、それではコンクリート全体にアンモニアガス吸着物資を含有させる特許文献3と比較して、吸着物質を節減できるという本願のメリットが失われるからである。しかしながら、コンクリートの内部のアンモニウムイオンが表層まで拡散していくのには非常にゆっくりであるため、アルカリガス捕捉層の厚さを所定巾以上とすれば、室内へのアンモニアガスの放出量を目標値以下に低減することが可能である。
【0036】
次にコンクリートからのアルカリガスの発生を低減する方法の手順を説明する。
【0037】
第1に、コンクリート構造物2の設計段階では、弱酸溶液が十分にコンクリート表層へ染み込むようにコンクリートの圧縮強度を設計する。
【0038】
第2に、工事現場で図4Aの如く型枠12内にコンクリートを打設しコンクリート構造物2を構築する。コンクリートが固まったら、コンクリートを養生させながら、型枠を解体する。型枠を解体し、塗布作業が可能となるまでに通常2日程度かかる。
【0039】
第3に、リン酸水溶液の調合を行う。リン酸水溶液の重量濃度は5%から25%の範囲で行う。この範囲の中でもアンモニアガスの放散量が特に少なく、好適な範囲は17%から25%である。
【0040】
第4に、図4Bの如く、コンクリートの屋内側の表面にリン酸水溶液を塗布する。塗布のための治具として、ローラー型の塗布具14を用いる。これはローラー部分が、水溶液をよく吸い込むスポンジなどの含浸体でできていて、一定の巾に一定厚の塗布膜16を形成するのに好適である。刷毛やスプレーなどを用いることも可能であるが、ローラー式塗布具に比べると、塗りムラができやすい。塗布作業の途中では、コンクリートの表面において、塗布具を数回に亘って平行に走向させ、その走向操作毎にできる塗布膜16の帯体の間に隙間ができないようにする。手作業では、走向操作毎の塗布膜の帯体の間に重なり部分ができてしまう可能性があるが、それはやむを得ない。重なりを作らないことよりも塗り残しをなくすことが重要である。図2に示すコンクリート表面上のリン酸水溶液の塗布膜16は、図3のようにコンクリート表層部分に染み込んでアルカリガス捕捉層10を形成する。
【実験例】
【0041】
実験1:弱酸の種類とアンモニアガス発生量との比較を行う。
(1−1)実験条件の組合せ
実験を行った組み合わせを、表1に○で示した。すなわち、リン酸と酢酸とを濃度を変えて濃度を変更して実験した。
【0042】
【表1】
【0043】
(1−2) コンクリートの使用材料
実験に使用する材料を以下に示す。セメントは、窒化物の含有が多くアンモニアガス発生量が多いとされる高炉セメントを用いた。
1) セメント:太平洋セメント製 高炉セメントB種(BB) 密度3.04
2) 細骨材 :君津産山砂 密度2.63 吸水率1.59%
3) 粗骨材 :八王子産砂岩砕石 密度2.67 吸水率0.75%
4) 混和剤 :竹本油脂製 AE減水剤 EX−20
:竹本油脂製 AE助剤 AE−300
(1−3) コンクリートの配合
コンクリートの配合は次の表2の通りである。
【0044】
【表2】
【0045】
(1−4) 試験体の概要と試験体作成方法
アンモニアガス発生量測定用の試験体22の作製には、直径150mm×高さ80mmのプラスチック製容器24を用い(図5参照)、容器は事前に超純水で洗浄しておいた。
コンクリト試料を2層に分けてほぼ等しい量で投入し、1層ごとにつき棒を用いて25回一様に突き固めた。2層目まで充填後、型枠の上端のコンクリートを取り除き、金鏝を用いて表面を均した。試験体は、1因子水準につき3体作製することとし、金鏝による成形の終わった試験体はラップにより上面を覆った上で蒸気養生槽に移し、60℃で5時間の蒸気養生を行なった。
【0046】
蒸気養生後はラップにて試験体を養生した状態で20℃−70%R.Hの恒温高湿槽にて材齢7日まで静置した。材齢7日目にコンクリート試験体を取り出し、所定の表面処理を実施した。
【0047】
(1−5) コンクリート表面への処理実施手順
各酸性溶液は、刷毛を用いてコンクリート表面に塗布する。塗布回数は2回とし、塗布1回目ではコンクリート試験体を電子天秤に載せて質量増加量を測定し、コンクリート表面の濡れ色が無くなったことを確認したら、2回目の塗布を1回目と同じように実施する。その後、20℃−60%R.Hに調整した恒温室槽内にて材齢8日目まで保管し、アンモニア放散量を測定する。10重量%水溶液の場合、1回あたりの塗布量の目安は、直径150mmの円の面積に対してリン酸を含む水溶液の質量を1.6g(75g/m2)とすることが好適である。
(1−6) コンクリート試験体のアンモニアガス測定方法
コンクリート試験体22をデシケーター28に設置して、アクティブ法による発生ガス捕集方法を図6に示す。ここでアクティブ法とは、発生ガスを運ぶ役目をする無反応ガスである。また、キャリアガスとは発生ガスを運ぶ役目をする無反応ガスであり、図示しないキャリアガス供給手段から流量計26を介してデシケータ内に供給される。デシケーター28から排出されたガスはポンプまでの間に設置したインピンジャー30の吸収液(純水)に溶解させてアンモニウムイオンを6時間で捕集した。アンモニウムイオンが溶解された吸収液は、イオンクロマトグラフィー(図示せず)で定量分析し、アンモニア発生量を算出した。
(1−7) アンモニアガス発生量測定結果
各試験におけるコンクリートからのアンモニア放散量を表3に示す。この実験では、試料としてリン酸の他に比較対象として酢酸を用いた。信頼性確保のため同じ濃度で2度試験を行い、試験1及び試験2の結果をそれぞれ番号1及び番号2として結果を記載した。同表中の酢酸では10〜50%の濃度範囲でアンモニアの放出量は殆ど変わっていないのに対して、リン酸では10%の場合に比べて50%の場合ではアンモニアの放出量が著しく減少した。同表を、塗布した酸性溶液の濃度とアンモニア放散量の関係を表すグラフにしたものが図8である。表3の試験1及び試験2の平均値を同図にプロットしてある。実験を行った濃度が10%と50%の2値である。しかしながら、50%の濃度について2度実験を繰り返していることから、このデータだけでも、リン酸水溶液を塗布することでアンモニア発生抑制効果があることが十分に確認されたと考える。
【0048】
試験体の表面にリン酸50%溶液を塗布した場合においてアンモニア放散量が大きく低減されることが確認された。しかしこの場合、試験体の表面に白い皮膜が発生し、塗布時の異臭も生じた。酢酸の場合には濃度50%までの範囲では、水溶液濃度によらずアンモニア放散量は変わらず、また試験体の表面は黄変した。
【0049】
【表3】
【0050】
実験2:リン酸水溶液の濃度とアンモニアガス発生量とを比較した。
(2−1) 実験因子の水準
実験因子の水準を次の表4に示す。
【0051】
【表4】
【0052】
実験因子
水準
リン酸水溶液濃度
0%,8.5%,12.8%,17%,21.3%, 25.5%,30%,34%
(2−2) コンクリートの使用材料
実験に使用する材料を以下に示す。セメントは、高炉セメントに比べてアンモニアガス放散量が一般的に少ない、普通ポルトランドセメントを用いた。
1) セメント:住友大阪セメント製 普通ポルトランドセメント(N) 密度3.16
2) 細骨材 :山梨県桂川産川砂 密度2.63 吸水率%
大月産砕砂 密度2.63 吸水率3.67%(粒度調整のため20%混合)
3) 粗骨材 :大月産砕石 密度2.67 吸水率0.75%
4) 混和剤 :竹本油脂製 AE減水剤 EX−20
:竹本油脂製 AE助剤 AE−300
(2−3) コンクリートの配合
コンクリートの配合を表5に示す。なお、細骨材には粒度調整のため大月産砕砂を20%混合した。
【0053】
【表5】
【0054】
(2−4) 試験体の概要と試験体作成方法
(1−4)に記載した試験体及び試験体作成方法の記載を援用する。
(2−5) コンクリート表面への処理実施手順
リン酸水溶液は、刷毛を用いてコンクリート表面に塗布した。塗布回数は2回とし、塗布1回目ではコンクリート試験体を電子天秤に載せて質量増加量を測定し、コンクリート表面の濡れ色が無くなったことを確認したら、2回目の塗布を1回目と同じように実施した。その後、20℃−60%R.Hに調整した恒温恒室槽内にて材齢8日目まで保管し、アンモニア放散量を測定した。溶液の1回あたりの塗布量は、1.6g(75g/m2)を目安とした。
【0055】
(2−6) コンクリート試験体のアンモニアガス測定方法
実験1の(1−6)に記載した測定方法の説明を援用する。
【0056】
(2−7) コンクリート表面の析出物質(リン酸カルシウム)の定量
リン酸塗布時にコンクリート表面に生じる発生物質をワイヤーブラシ等で擦り落とし、擂粉木にて粉末状にした後にX線回折により解析した。それぞれ採取した粉末(0.1g程度)を30ccの超純水に溶かし、上澄み液のみをイオンクロマトグラフにより定量分析し、カルシウムの含有量を測定し、リン酸カルシウム量を算定した。
【0057】
(2−8) アンモニアガス発生量測定結果およびリン酸カルシウム生成量定量結果
各リン酸溶液濃度の水溶液を塗布した試験体において、アンモニアガス発生量とリン酸カルシウム生成量を定量した結果を以下の表6に示す。また、リン酸水溶液濃度とアンモニアガス発生量およびリン酸カルシウム生成量の関係をまとめたものを図9に示す。図9よりアンモニアガス発生量はリン酸水溶液濃度が高いほど低減されることがわかった。また、リン酸カルシウム量は、リン酸水溶液の濃度が高いほど多くなることがわかった。アンモニアガス発生量は、リン酸水溶液濃度が10%以上であれば無処理に比べて半分以下の発生量となることから、リン酸水溶液濃度は10%以上が適当と考えられる。一方、リン酸カルシウムはコンクリート表面を白く覆ってしまい、外観上の不具合や仕上げ材料の接着に影響を及ぼすと考えられるため少量とする必要がある。この点から、リン酸濃度は25%以下とするのが適当と考えられる。
【0058】
【表6】
【0059】
なお、上記実施形態は好適な一例であり、本発明の技術的意義に照らして適宜変更できることはいうまでもない。特に実施形態の中で述べた各部材の寸法・材質などは本発明の技術的理解を容易にするために挙げており、なんらそれに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施形態に係る中性化を利用してアルカリガスの発生を抑制したコンクリート構造物の全体構成図である。
【図2】リン酸水溶液が染み込む前のコンクリート構造物の一部拡大縦断面図である。
【図3】リン酸水溶液が染み込んだ後のコンクリート構造物の縦断面図である。
【図4】図1のコンクリート構造物にアルカリガス捕捉層を形成する方法の工程を示す図である。
【図5】同方法に使用する試験体の斜視図である。
【図6】図1のコンクリート構造物に適用するアルカリガスの発生抑制方法に使用する装置の概略図である。
【図7】同実験の試験データを示す図である。
【図8】同実験の他の試験データを示す図である。
【図9】アンモニア放散量とリン酸濃度との関係を示す実験データである。
【図10】従来の施工法でのアンモニアの放散過程を示す図である。
【図11】従来の施工法での枯らし期間の説明図である。
【符号の説明】
【0061】
1…建物 2…コンクリート構造物 4…壁 6…天井 8…床
10…アルカリガス捕捉層 12…型枠 14…塗布具
22…試験体 24…容器 26…流量計 28…デシケーター
30…インピンジャー 34…窓
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリガスの放出量を低減したコンクリート構造物及びコンクリート構造物からのアルカリガスの放出量の低減方法に関する。これらの方法及び構造物は、特に美術館などへの適用に適している。
【背景技術】
【0002】
硬化したコンクリートの表面からは、アンモニアを代表成分とするアルカリガスが発生することが知られており、このアルカリガスが油絵に含まれるアマニ油と反応して油絵が変色したり、工芸品を腐食させるなどの悪影響を及ぼす。
【0003】
コンクリート中で生成されるアンモニウムイオンは、コンクリート中に含まれる水分に溶け込んでおり、図10に示すように、水分がコンクリート表面からの乾燥とともに表面へ移動し、この水分がコンクリート表面で蒸発するときに気化してアンモニアガスとなる。コンクリートの水分は、コンクリートが硬化してから1年から2年かけて蒸発が鈍化するので、アンモニアガスの発生の低減にも同程度の時間を要する。図11に新築後の美術館中でのアンモニアの室内濃度の変移を示す。許容されるアンモニア濃度を30ppb程度とすると、美術品を収蔵する美術館などを新築する際には、アンモニアガスの発生の低減を待つ枯らし期間を1〜2年程度みておく必要がある。従って工事竣工後すぐに開館できないという問題点があった。
【0004】
これに対して、アンモニアなどのアルカリガスの発生を低減又は抑制するために、近年さまざまな方法が提案されている。
【0005】
例えばアンモニアを発生する添加物の少ないセメント(例えば早強ポルトランドセメント)や窒素酸化物の付着の少ない骨材をコンクリートの素材として選択したり、或いは窒素酸化物を除去するために骨材を加熱する方法が知られている(特許文献1)。
【0006】
また天然骨材に代えて、人工骨材を用いてコンクリートからのガス放出量を少なくすることも提案されている(特許文献2)。
【0007】
また活性炭・シリカ・ケイ酸カルシウムなどのアンモニア吸着物質を粒状にしてモルタル・コンクリートに添加する方法(特許文献3)も知られている。
【0008】
さらにコンクリート壁の表面に、二酸化珪素・四価金属の水不溶性リン酸塩および二価金属の水酸化物を含むアンモニア捕捉物質を含有する仕上げ材を貼着することも行われている(特許文献4)。
【特許文献1】特開平10−287462号
【特許文献2】特開2006−36555号
【特許文献3】特開2005−074405号
【特許文献4】特開平11−159024号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1から特許文献3のように建物に使用するコンクリートに対して、特別なコンクリートを用いたり、骨材を加熱処理したり、アンモニア吸着物質を添加する方法では、材料費が増大したり、製造工程が複雑となるため、コスト高となり、一般には用いられていない。これに対して、特許文献4のようにアンモニア捕捉作用を有する仕上げ材を用いるときには、コンクリート自体は普通のコンクリートでよい。しかし、美術館のように見た目の雰囲気を大切にする建物では、打ち放しのコンクリートが好まれる場合があり、仕上げ材を使用したのでは、コンクリートの表面を露出させることができない。
【0010】
本出願人は、こうした仕上げ材に代えて打ち放しのコンクリート表面を残しながらアルカリガスを遮断するため、アルカリガスを捕捉する成分を有する弱酸溶液を上記表面に塗布するということを検討した。こうした溶液を塗布するとしても、さまざまな検討事項がある。例えば塗布する時期である。図11に示すようにガスの発生は初期段階ほど活発であるので、時期を失して塗布をしてもアンモニアなどのアルカリガスが建物内に拡散してしまうので、意味がない。さらに一定のアルカリガス遮蔽効果を得るためには、アルカリガス捕捉成分の塗布量や溶液の濃度にも注意を払う必要がある。
【0011】
本発明の第1の目的は、コンクリートの屋内側の表面にアルカリガス捕捉作用を有する弱酸溶液を塗布することで、アルカリガス捕捉層を形成した、コンクリートからのアルカリガスの放出量を確実に低減する構造物を提案することである。
【0012】
本発明の第2の目的は、建物の内部へのアルカリガスの放出を最も友好に抑制できるタイミングで上記弱酸を塗布する手順を含む、アルカリガスの放出量を低減する方法を提案することである。
【0013】
本発明の第3の目的は、上記弱酸を可能な限り均等にかつ効率的に塗布するために適した手順を含む、アルカリガスの放出量を低減する方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の手段は、アルカリガスの放出量を低減したコンクリート構造物であり、
コンクリートの屋内側の表面にアルカリガス捕捉作用を有する弱酸溶液を塗布し、この溶液がコンクリートの表面に染み込むことでコンクリートの表層部分にアルカリガス捕捉層を形成したことを特徴としている。
【0015】
本手段は、コンクリート構造物の屋内側の表面にアルカリガス捕捉層を形成することを提案する。屋内にアルカリガスが蓄積することで事物、特に美術品などの表面を傷めるからである。
【0016】
「アルカリガス捕捉作用を有する弱酸溶液」とは、アルカリガスがアンモニアである場合には、例えばリン酸溶液(好適にはリン酸水溶液)であって、アルカリガスの成分と化学反応する。反応物はコンクリート内に留まるので、アルカリガスの放出が低減される。
【0017】
「アルカリガス捕捉層」は、上記弱酸溶液がコンクリートの表層部分に含浸することで形成される。単にアルカリガスと反応する層がコンクリート表面を覆っているだけでもよいように思えるが、液状のガス捕捉成分の塗布層がコンクリート表面で垂れを生ずると、その塗布層に濃い箇所と薄い箇所とができ、一定のアルカリガス遮蔽効果が得られない。また、アルカリガス捕捉層がコンクリート表層部分に染み込むので、コンクリート表面からアルカリガス捕捉層が剥離するような不都合を生じにくい。
【0018】
「コンクリート構造物のコンクリート」は、アルカリガス捕捉作用を有する弱酸溶液が含浸可能なものとする。圧縮応力が80N/mm2以下の一般的なコンクリートは、表面にミクロンオーダーの微細な空隙を有しており、弱酸溶液が染み込むという上述の条件を満たす。
第2の手段は、第1の手段を有し、かつ
上記アルカリガスをアンモニアとし、弱酸溶液をリン酸溶液とするとともに、
塗布されたリン酸の量を、単位面積当たり7g/m2から20g/m2とし、
アルカリガス捕捉層の厚さを1mmから5mmとしている。
【0019】
本手段では、アルカリガス捕捉層の好適な形態を提案している。アルカリガスの典型はアンモニアであり、アンモニア捕捉成分の典型はリン酸である。
【0020】
リン酸の濃度は、図9に示す通り少なすぎると、アンモニア放散量を抑制できず、多すぎると、表面にリン酸カルシウムが吹き出して白化する。一度塗りの場合の好適なリン酸濃度は10〜25wt%程度(図9に2本の実線で示す範囲)であり、これを単位面積のリン酸の量に換算すると、7g/m2から20g/m2となる(図9参照)。なお、「アルカリガスの捕捉」といっても、主として層内で発生するアルカリガスと反応するだけの捕捉成分を含浸させればよい。コンクリート構造物内で発生し得るアンモニアの全てと反応するだけのリン酸を表層部分に含浸させる必要はないし、それは不可能である。コンクリート内でアルカリガスが拡散する速度は非常に小さいので、アルカリガス捕捉層の厚さを十分に確保すれば、アンモニアなどのアルカリガスの放出量を目標値に低減することが可能である。
【0021】
アルカリガス捕捉層の厚さは、コンクリートのアルカリガスの発生傾向に応じて、1〜5mmの範囲で選択すればよい。より好適には2〜3mmである。
【0022】
第3の手段は、コンクリート構造物からのアルカリガスの放出量の低減方法であり、
コンクリートが打設された後であって少なくともコンクリートの養生期間が終了するまでに、当該コンクリート構造物の屋内側の表面にアルカリガス捕捉作用を有する弱酸溶液を塗布することを特徴としている。
【0023】
本手段では、アルカリガス捕捉作用を有する弱酸溶液を塗布する方法を提案している。この弱酸はコンクリートの表層部分に滲み込み、アルカリガスの遮蔽層を作る。これによりアルカリガスを遮蔽しながら打ち放しのコンクリート表面を実現することができる。
【0024】
弱酸溶液を塗布する作業は、少なくとも養生期間が終了するまで(例えばコンクリートの硬化開始後28日まで)の間に行う。コンクリートは硬度を生ずるまで湿潤に保つ必要があるために、養生期間においては水分とともにアルカリガスが放出され易く、その後徐々にガスの放出量は低減する。従って少なくとも養生期間が終わるまで、好ましくは養生期間の初期に塗布作業を行うことが望ましい。しかしながら、型枠の解体では所定の在置期間をとる必要があり、また解体したパーツなどの片付けも必要である。そのため、解体に着手してから塗布を開始するまでにある程度の時間(2日程度)がかかることが通常である。
【0025】
アルカリガス捕捉溶液を塗布することでガス遮蔽層を形成するときには塗りムラなく均一に塗ることが望ましい。塗りが不十分な箇所があると、その箇所からアルカリガスが放出され、美術品などの保管物を傷めるからである。そのためには一つの屋内空間に面するコンクリート構造物の表面部分についてはほぼ均等かつ同濃度の溶液を塗布することが望ましい。「ほぼ均等」というのは、手作業で塗布を行うときには、最初に塗った箇所と次に塗った箇所とが多少重なる程度のことは避けられないからである。
【0026】
第4の手段は、第3の手段を有し、かつ上記弱酸溶液をリン酸溶液とし、リン酸溶液の重量濃度を5%から25%としている。
本手段では、典型的なアンモニア捕捉物質であるリン酸を用いて均一にかつ効率的に溶液を塗布するための方法・手順を提案している。前述の特許文献4の如くリン酸を含む仕上げ材をコンクリート表面に貼着する方法では、単位面積当りのリン酸の量を定量とすることは容易である。工場の生産過程として管理できるからである。しかし、弱酸溶液を塗布することは手作業で行われるから、どのように塗りムラを少なくするかが問題となる。本発明の弱酸溶液を塗布する作業は、ある程度以上の濃度の溶液を用いて一度塗りすることが望ましい。薄い溶液を何度も塗り重ねる方法は、塗り厚にバラつきを生じやすいために好ましくない。リン酸溶液の重量濃度を5%以上としているのは、そうした理由である。他方、溶液の濃度が濃すぎると、コンクリートの表層部分へ染み込みにくく、液垂れを生じたり、ムラができる可能性がある。そうした不都合を避けるために、リン酸溶液の重量濃度を25%以下としている(図9に2本の点線で示す範囲)。
【0027】
第5の手段は、第4の手段を有し、かつ
上記リン酸溶液をリン酸水溶液としたことを特徴としている。
本発明の弱酸溶液に限らず液剤をコンクリート表面に塗ると、その後しばらくは、塗った表面部分が濡れた状態となり、見た目で乾燥した部分と区別することができる。従って本願図4Bに示すように広いコンクリート表面を複数列に分けて順々に塗布することが可能である。例えばアルコールを溶媒とする場合には、揮発が速いので、コンクリート表面のある列の最後まで塗布し終わったときには、同列の最初の部分が乾いてしまう。これでは既に塗った箇所と塗っていない箇所とを確認することができない。その結果として、次の列の塗布をする際に、前の列と大きく重なって2度塗りをすることになったり、さらに困ることは、前の列と隙間を残して塗り残しを生ずる可能性がある。こうした不都合を排除するために、本手段では、リン酸水溶液を用いている。
【発明の効果】
【0028】
第1の手段及び第3の手段に係る発明によれば、次の効果を奏する。
○コンクリートの屋内側の表面にアンモニアなどのアルカリガス捕捉作用を有する弱酸溶液を塗布したから、コンクリートの表層部分にアルカリガス捕捉層を容易に形成することができる。
○コンクリート全体に処理を施すのではないから、低コストでアンモニアガスの遮蔽効果が得られる。
○コンクリートの打ち放しの表面を仕上げ材で隠す必要がないので、デザイン上の自由度が向上する。
第2の手段に係る発明によれば、次の効果を生ずる
○リン酸の量を単位面積当たり7g/m2以上としたから、アルカリガス捕捉層内でアンモニアを十分に吸着することができる。
○リン酸の量を単位面積当たり20g/m2以下としたからコンクリート表面の過剰な白化を抑制することができる。
○アルカリガス捕捉層の厚さを1mmから5mmとしたから、アルカリガス捕捉層の内側のコンクリート部分からのアンモニアガスの拡散を十分に抑制できる。
【0029】
第4の手段に係る発明によれば、弱酸溶液をリン酸溶液とし、リン酸溶液の重量濃度を5%から25%としたから、一度塗りが可能であるとともに、液垂れを生じない。
【0030】
第5の手段に係る発明によれば、揮発の遅い水溶液を使用するから、塗布した場所と塗布していない場所とが明確になり、塗り残しを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
図1は、本発明に係るアルカリガスの発生を抑制したコンクリート造の建物の例を示している。
【0032】
図面中、1は、コンクリート造の建物である。簡単のために、建物の壁4、天井6、及び床8を構成するコンクリート構造物2は、一体のものとして表している。本発明では、このコンクリート構造物2のうち屋内に臨む表層部分をアルカリガス捕捉層10としている。
【0033】
コンクリート構造物2は、現場打ちで形成されたものである。このコンクリート構造物2は、圧縮応力が80N/mm2以下の通常のコンクリートで形成されている。この程度の圧縮応力であると、表面に微細な空隙があるので、後述のリン酸溶液を含浸させることが可能である。それ以上の圧縮応力を有するコンクリート(超高強度コンクリート)では、本発明を適用しにくいということになるが、この種のものは圧縮強度が高いためにアルカリガスの放出も少ないので、本発明を適用する意味があまりない。少なくとも建物の各室を形成するコンクリート構造物2を、一定の圧縮強度を有するコンクリートで形成すると、アルカリガスの遮蔽効果を一定に維持する上で有利である。
【0034】
アルカリガス捕捉層10は、コンクリートの隙間にリン酸を含浸させた層である。コンクリートの性状は、この層以外のコンクリート部分とほぼ同じである。アルカリガス捕捉層の厚さは1〜5mm程度である。
【0035】
上記構成によれば、コンクリート構造物2のうち表層部分がアルカリガス捕捉層10となっている。この層内で新たに発生したアンモニウムイオンは、アルカリガス捕捉層のリン酸と反応するので、屋内空間には放出されない。アルカリガス捕捉層より内部でもアンモニウムイオンが発生するが、アルカリガス捕捉層内のリン酸が使い尽されない限りは、同様にアルカリガス捕捉層内で捕捉される。アルカリガス捕捉層は建物の全てのコンクリートから発生するアルカリガスと反応するだけのリン酸を含有している訳ではない。それだけの量のリン酸を薄い表層部分に包含させることは困難であると同時に、仮に可能であっても、それではコンクリート全体にアンモニアガス吸着物資を含有させる特許文献3と比較して、吸着物質を節減できるという本願のメリットが失われるからである。しかしながら、コンクリートの内部のアンモニウムイオンが表層まで拡散していくのには非常にゆっくりであるため、アルカリガス捕捉層の厚さを所定巾以上とすれば、室内へのアンモニアガスの放出量を目標値以下に低減することが可能である。
【0036】
次にコンクリートからのアルカリガスの発生を低減する方法の手順を説明する。
【0037】
第1に、コンクリート構造物2の設計段階では、弱酸溶液が十分にコンクリート表層へ染み込むようにコンクリートの圧縮強度を設計する。
【0038】
第2に、工事現場で図4Aの如く型枠12内にコンクリートを打設しコンクリート構造物2を構築する。コンクリートが固まったら、コンクリートを養生させながら、型枠を解体する。型枠を解体し、塗布作業が可能となるまでに通常2日程度かかる。
【0039】
第3に、リン酸水溶液の調合を行う。リン酸水溶液の重量濃度は5%から25%の範囲で行う。この範囲の中でもアンモニアガスの放散量が特に少なく、好適な範囲は17%から25%である。
【0040】
第4に、図4Bの如く、コンクリートの屋内側の表面にリン酸水溶液を塗布する。塗布のための治具として、ローラー型の塗布具14を用いる。これはローラー部分が、水溶液をよく吸い込むスポンジなどの含浸体でできていて、一定の巾に一定厚の塗布膜16を形成するのに好適である。刷毛やスプレーなどを用いることも可能であるが、ローラー式塗布具に比べると、塗りムラができやすい。塗布作業の途中では、コンクリートの表面において、塗布具を数回に亘って平行に走向させ、その走向操作毎にできる塗布膜16の帯体の間に隙間ができないようにする。手作業では、走向操作毎の塗布膜の帯体の間に重なり部分ができてしまう可能性があるが、それはやむを得ない。重なりを作らないことよりも塗り残しをなくすことが重要である。図2に示すコンクリート表面上のリン酸水溶液の塗布膜16は、図3のようにコンクリート表層部分に染み込んでアルカリガス捕捉層10を形成する。
【実験例】
【0041】
実験1:弱酸の種類とアンモニアガス発生量との比較を行う。
(1−1)実験条件の組合せ
実験を行った組み合わせを、表1に○で示した。すなわち、リン酸と酢酸とを濃度を変えて濃度を変更して実験した。
【0042】
【表1】
【0043】
(1−2) コンクリートの使用材料
実験に使用する材料を以下に示す。セメントは、窒化物の含有が多くアンモニアガス発生量が多いとされる高炉セメントを用いた。
1) セメント:太平洋セメント製 高炉セメントB種(BB) 密度3.04
2) 細骨材 :君津産山砂 密度2.63 吸水率1.59%
3) 粗骨材 :八王子産砂岩砕石 密度2.67 吸水率0.75%
4) 混和剤 :竹本油脂製 AE減水剤 EX−20
:竹本油脂製 AE助剤 AE−300
(1−3) コンクリートの配合
コンクリートの配合は次の表2の通りである。
【0044】
【表2】
【0045】
(1−4) 試験体の概要と試験体作成方法
アンモニアガス発生量測定用の試験体22の作製には、直径150mm×高さ80mmのプラスチック製容器24を用い(図5参照)、容器は事前に超純水で洗浄しておいた。
コンクリト試料を2層に分けてほぼ等しい量で投入し、1層ごとにつき棒を用いて25回一様に突き固めた。2層目まで充填後、型枠の上端のコンクリートを取り除き、金鏝を用いて表面を均した。試験体は、1因子水準につき3体作製することとし、金鏝による成形の終わった試験体はラップにより上面を覆った上で蒸気養生槽に移し、60℃で5時間の蒸気養生を行なった。
【0046】
蒸気養生後はラップにて試験体を養生した状態で20℃−70%R.Hの恒温高湿槽にて材齢7日まで静置した。材齢7日目にコンクリート試験体を取り出し、所定の表面処理を実施した。
【0047】
(1−5) コンクリート表面への処理実施手順
各酸性溶液は、刷毛を用いてコンクリート表面に塗布する。塗布回数は2回とし、塗布1回目ではコンクリート試験体を電子天秤に載せて質量増加量を測定し、コンクリート表面の濡れ色が無くなったことを確認したら、2回目の塗布を1回目と同じように実施する。その後、20℃−60%R.Hに調整した恒温室槽内にて材齢8日目まで保管し、アンモニア放散量を測定する。10重量%水溶液の場合、1回あたりの塗布量の目安は、直径150mmの円の面積に対してリン酸を含む水溶液の質量を1.6g(75g/m2)とすることが好適である。
(1−6) コンクリート試験体のアンモニアガス測定方法
コンクリート試験体22をデシケーター28に設置して、アクティブ法による発生ガス捕集方法を図6に示す。ここでアクティブ法とは、発生ガスを運ぶ役目をする無反応ガスである。また、キャリアガスとは発生ガスを運ぶ役目をする無反応ガスであり、図示しないキャリアガス供給手段から流量計26を介してデシケータ内に供給される。デシケーター28から排出されたガスはポンプまでの間に設置したインピンジャー30の吸収液(純水)に溶解させてアンモニウムイオンを6時間で捕集した。アンモニウムイオンが溶解された吸収液は、イオンクロマトグラフィー(図示せず)で定量分析し、アンモニア発生量を算出した。
(1−7) アンモニアガス発生量測定結果
各試験におけるコンクリートからのアンモニア放散量を表3に示す。この実験では、試料としてリン酸の他に比較対象として酢酸を用いた。信頼性確保のため同じ濃度で2度試験を行い、試験1及び試験2の結果をそれぞれ番号1及び番号2として結果を記載した。同表中の酢酸では10〜50%の濃度範囲でアンモニアの放出量は殆ど変わっていないのに対して、リン酸では10%の場合に比べて50%の場合ではアンモニアの放出量が著しく減少した。同表を、塗布した酸性溶液の濃度とアンモニア放散量の関係を表すグラフにしたものが図8である。表3の試験1及び試験2の平均値を同図にプロットしてある。実験を行った濃度が10%と50%の2値である。しかしながら、50%の濃度について2度実験を繰り返していることから、このデータだけでも、リン酸水溶液を塗布することでアンモニア発生抑制効果があることが十分に確認されたと考える。
【0048】
試験体の表面にリン酸50%溶液を塗布した場合においてアンモニア放散量が大きく低減されることが確認された。しかしこの場合、試験体の表面に白い皮膜が発生し、塗布時の異臭も生じた。酢酸の場合には濃度50%までの範囲では、水溶液濃度によらずアンモニア放散量は変わらず、また試験体の表面は黄変した。
【0049】
【表3】
【0050】
実験2:リン酸水溶液の濃度とアンモニアガス発生量とを比較した。
(2−1) 実験因子の水準
実験因子の水準を次の表4に示す。
【0051】
【表4】
【0052】
実験因子
水準
リン酸水溶液濃度
0%,8.5%,12.8%,17%,21.3%, 25.5%,30%,34%
(2−2) コンクリートの使用材料
実験に使用する材料を以下に示す。セメントは、高炉セメントに比べてアンモニアガス放散量が一般的に少ない、普通ポルトランドセメントを用いた。
1) セメント:住友大阪セメント製 普通ポルトランドセメント(N) 密度3.16
2) 細骨材 :山梨県桂川産川砂 密度2.63 吸水率%
大月産砕砂 密度2.63 吸水率3.67%(粒度調整のため20%混合)
3) 粗骨材 :大月産砕石 密度2.67 吸水率0.75%
4) 混和剤 :竹本油脂製 AE減水剤 EX−20
:竹本油脂製 AE助剤 AE−300
(2−3) コンクリートの配合
コンクリートの配合を表5に示す。なお、細骨材には粒度調整のため大月産砕砂を20%混合した。
【0053】
【表5】
【0054】
(2−4) 試験体の概要と試験体作成方法
(1−4)に記載した試験体及び試験体作成方法の記載を援用する。
(2−5) コンクリート表面への処理実施手順
リン酸水溶液は、刷毛を用いてコンクリート表面に塗布した。塗布回数は2回とし、塗布1回目ではコンクリート試験体を電子天秤に載せて質量増加量を測定し、コンクリート表面の濡れ色が無くなったことを確認したら、2回目の塗布を1回目と同じように実施した。その後、20℃−60%R.Hに調整した恒温恒室槽内にて材齢8日目まで保管し、アンモニア放散量を測定した。溶液の1回あたりの塗布量は、1.6g(75g/m2)を目安とした。
【0055】
(2−6) コンクリート試験体のアンモニアガス測定方法
実験1の(1−6)に記載した測定方法の説明を援用する。
【0056】
(2−7) コンクリート表面の析出物質(リン酸カルシウム)の定量
リン酸塗布時にコンクリート表面に生じる発生物質をワイヤーブラシ等で擦り落とし、擂粉木にて粉末状にした後にX線回折により解析した。それぞれ採取した粉末(0.1g程度)を30ccの超純水に溶かし、上澄み液のみをイオンクロマトグラフにより定量分析し、カルシウムの含有量を測定し、リン酸カルシウム量を算定した。
【0057】
(2−8) アンモニアガス発生量測定結果およびリン酸カルシウム生成量定量結果
各リン酸溶液濃度の水溶液を塗布した試験体において、アンモニアガス発生量とリン酸カルシウム生成量を定量した結果を以下の表6に示す。また、リン酸水溶液濃度とアンモニアガス発生量およびリン酸カルシウム生成量の関係をまとめたものを図9に示す。図9よりアンモニアガス発生量はリン酸水溶液濃度が高いほど低減されることがわかった。また、リン酸カルシウム量は、リン酸水溶液の濃度が高いほど多くなることがわかった。アンモニアガス発生量は、リン酸水溶液濃度が10%以上であれば無処理に比べて半分以下の発生量となることから、リン酸水溶液濃度は10%以上が適当と考えられる。一方、リン酸カルシウムはコンクリート表面を白く覆ってしまい、外観上の不具合や仕上げ材料の接着に影響を及ぼすと考えられるため少量とする必要がある。この点から、リン酸濃度は25%以下とするのが適当と考えられる。
【0058】
【表6】
【0059】
なお、上記実施形態は好適な一例であり、本発明の技術的意義に照らして適宜変更できることはいうまでもない。特に実施形態の中で述べた各部材の寸法・材質などは本発明の技術的理解を容易にするために挙げており、なんらそれに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施形態に係る中性化を利用してアルカリガスの発生を抑制したコンクリート構造物の全体構成図である。
【図2】リン酸水溶液が染み込む前のコンクリート構造物の一部拡大縦断面図である。
【図3】リン酸水溶液が染み込んだ後のコンクリート構造物の縦断面図である。
【図4】図1のコンクリート構造物にアルカリガス捕捉層を形成する方法の工程を示す図である。
【図5】同方法に使用する試験体の斜視図である。
【図6】図1のコンクリート構造物に適用するアルカリガスの発生抑制方法に使用する装置の概略図である。
【図7】同実験の試験データを示す図である。
【図8】同実験の他の試験データを示す図である。
【図9】アンモニア放散量とリン酸濃度との関係を示す実験データである。
【図10】従来の施工法でのアンモニアの放散過程を示す図である。
【図11】従来の施工法での枯らし期間の説明図である。
【符号の説明】
【0061】
1…建物 2…コンクリート構造物 4…壁 6…天井 8…床
10…アルカリガス捕捉層 12…型枠 14…塗布具
22…試験体 24…容器 26…流量計 28…デシケーター
30…インピンジャー 34…窓
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートの屋内側の表面にアルカリガス捕捉作用を有する弱酸溶液を塗布し、この溶液がコンクリートの表面に染み込むことでコンクリートの表層部分にアルカリガス捕捉層を形成したことを特徴とする、アルカリガスの放出量を低減したコンクリート構造物。
【請求項2】
上記アルカリガスをアンモニアとし、弱酸溶液をリン酸溶液とするとともに、
塗布されたリン酸の量を、単位面積当たり7g/m2から20g/m2とし、
アルカリガス捕捉層の厚さを1mmから5mmとしたことを特徴とする、請求項1記載のアルカリガスの放出量を低減したコンクリート構造物。
【請求項3】
コンクリート構造物にコンクリートが打設された後であって少なくともコンクリートの養生期間が終了するまでに、当該コンクリート構造物の屋内側の表面にアルカリガス捕捉作用を有する弱酸溶液を塗布することを特徴とする、
コンクリート構造物からのアルカリガスの放出量の低減方法。
【請求項4】
上記弱酸溶液をリン酸溶液とし、リン酸溶液の重量濃度を5%から25%としたことを特徴とする、請求項3記載のコンクリート構造物からのアルカリガスの放出量の低減方法。
【請求項5】
上記リン酸溶液をリン酸水溶液としたことを特徴とする、請求項4記載のコンクリート構造物からのアルカリガスの放出量の低減方法。
【請求項1】
コンクリートの屋内側の表面にアルカリガス捕捉作用を有する弱酸溶液を塗布し、この溶液がコンクリートの表面に染み込むことでコンクリートの表層部分にアルカリガス捕捉層を形成したことを特徴とする、アルカリガスの放出量を低減したコンクリート構造物。
【請求項2】
上記アルカリガスをアンモニアとし、弱酸溶液をリン酸溶液とするとともに、
塗布されたリン酸の量を、単位面積当たり7g/m2から20g/m2とし、
アルカリガス捕捉層の厚さを1mmから5mmとしたことを特徴とする、請求項1記載のアルカリガスの放出量を低減したコンクリート構造物。
【請求項3】
コンクリート構造物にコンクリートが打設された後であって少なくともコンクリートの養生期間が終了するまでに、当該コンクリート構造物の屋内側の表面にアルカリガス捕捉作用を有する弱酸溶液を塗布することを特徴とする、
コンクリート構造物からのアルカリガスの放出量の低減方法。
【請求項4】
上記弱酸溶液をリン酸溶液とし、リン酸溶液の重量濃度を5%から25%としたことを特徴とする、請求項3記載のコンクリート構造物からのアルカリガスの放出量の低減方法。
【請求項5】
上記リン酸溶液をリン酸水溶液としたことを特徴とする、請求項4記載のコンクリート構造物からのアルカリガスの放出量の低減方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−101020(P2010−101020A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−271217(P2008−271217)
【出願日】平成20年10月21日(2008.10.21)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月21日(2008.10.21)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]