説明

アルカリ蓄電池

【課題】ニッケル正極内部でのNi23Hの生成を抑制して充放電サイクルを繰り返した後の容量低下を防止する。
【解決手段】本発明のアルカリ蓄電池10は、ニッケル正極11の長さをXとし、高さをYとした場合、X/Yが15以上で、電流密度が100It/m2を超えない範囲の電流値条件で電池の充電量を電池容量に対し満充電を行わない目標SOCまでの充電、および/または完全放電を行わない目標SOCまでの放電を行う充放電条件にて、総放電電気量が10kAhになるまで充放電を繰り返した後、内部抵抗が初期に対して114%以下で、かつニッケル正極表面にはNi23Hが存在しないとともに、ニッケル正極内のNi23Hの存在比率が40%以下になるように規制している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド自動車(HEV)、電気自動車(PEV)などの車両用途に好適なアルカリ蓄電池に係り、特に、水素吸蔵合金を負極活物質とする水素吸蔵合金負極と、焼結基板に水酸化ニッケルを主成分とする正極活物質が充填されたニッケル正極と、セパレータとからなる電極群をアルカリ電解液とともに電池容器内に収納されて密閉されたアルカリ蓄電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二次電池の用途は、例えば、携帯電話、パーソナルコンピュータ、電動工具、ハイブリッド自動車(HEV)、電気自動車(PEV)など多岐に亘るようになり、これらの用途にアルカリ蓄電池が用いられるようになった。これらのうち、特に、携帯電話やパーソナルコンピュータや電動工具などのような民生用の用途に用いられるアルカリ蓄電池においては、高容量の観点から、焼結基板に代えてパンチングメタルや発泡メタルなどの金属基板を備えた非焼結式ニッケル正極が用いられるようになった。一方、ハイブリッド自動車(HEV)や電気自動車(PEV)などの車両用の用途に用いられるアルカリ蓄電池においては、長寿命化を実現しやすいといった使い方の観点から、焼結基板を備えた焼結式ニッケル正極が用いられるようになった。
【0003】
この場合、長寿命化を実現するための焼結式ニッケル正極を備えたアルカリ蓄電池においては、さらなる高寿命化、高信頼性に対する市場の要望が一層高まっている。なお、非焼結式ニッケル正極においては、自己放電を防止するために正極集電体(金属基板)と正極活物質層との間にNi23Hの層を配置することが、例えば、特許文献1(特開2000−323139号公報)にて提案されている。また、活物質利用率を向上させるために、正極活物質層にNi23Hを添加することが、例えば、特許文献2(特開2004−311144号公報)にて提案されている。しかしながら、非焼結式ニッケル正極を備えたアルカリ蓄電池においては、高容量である反面、長寿命化を達成できないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−323139号公報
【特許文献2】特開2004−311144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、長寿命化を目的とした焼結式ニッケル正極を備えたアルカリ蓄電池においては、所定の充放電サイクルを繰り返した後においては、電池の内部抵抗が上昇して電池容量が低下するという問題があった。特に、この種の焼結式ニッケル正極を備えたアルカリ蓄電池を大電流にて充電して過充電状態にした場合においては、内部抵抗が格段に上昇し易いという問題があった。そこで、内部抵抗上昇の要因を分析したところ、焼結式ニッケル正極の内部でNi23Hが生成されていることが原因であることが分かった。
【0006】
ここで、粉末X線回折装置(XRD:X-Ray Diffractometer)を用いて焼結式ニッケル正極の表面解析を行ったところ、Ni23Hの回折ピークが出現することはないことが明らかになった。このことから、Ni23Hの生成は焼結式ニッケル正極の表面ではなく、その内部であることが確認された。これにより、焼結式ニッケル正極の内部でのNi23Hの生成が抵抗増加の要因となって、内部での抵抗増加に起因して実質的に取り出せる容量が低下し、耐久性能が低下することが明らかになった。
【0007】
また、この種の長寿命化を目的とした焼結式ニッケル正極を備えたアルカリ蓄電池市場の成長に伴い、長寿命化に加えて小型、軽量化に対する要望が増大するようになった。この場合、アルカリ蓄電池を小型化するために、正・負極の高さ(幅)を短くする必要があるが、焼結式ニッケル正極の高さ(幅)を短くすると、厚み方向での電流密度がより高密度になる。これにより、焼結式ニッケル正極の内部でのNi23Hの生成に起因する抵抗増加がより顕著になり、所定の充放電サイクルを繰り返した後に十分な容量が得られなくなるという問題を生じた。
【0008】
そこで、本発明は、長寿命化に加えて小型、軽量化したアルカリ蓄電池において、ニッケル正極内部でのNi23Hの生成を抑制できるようにして、所定の充放電サイクルを繰り返した後の容量低下を防止することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明のアルカリ蓄電池においては、ニッケル正極の長さをXとし、高さ(幅)をYとした場合、高さ(幅)に対する長さの比(X/Y)が15以上(X/Y≧15)であるとともに、ニッケル正極に対する電流密度が100It/m2を超えない範囲の電流値条件で電池の充電量を電池容量に対し満充電を行わない目標SOCまでの充電、および/または完全放電を行わない目標SOCまでの放電を行う充放電条件にて、総放電電気量で10kAhまで充放電を繰り返した後の内部抵抗が初期の内部抵抗に対して114%以下で、ニッケル正極内のNi23Hがニッケル正極表面から0.01mmの範囲内には存在しておらず、かつCu−Kαを用いた粉末X線回折において、Ni23Hの(120)面でのピーク強度がNi(OH)2の(001)面でのピーク強度に対して40%以下になるように規制している。
【0010】
ここで、電池を小型化するためには、電極の高さ(幅)を短くする必要が、電極の高さ(幅)を短くすると反応表面積が減少するため、電極の高さ(幅)を短くした分だけ、その長さを長くして反応表面積を確保する必要がある。この場合、ニッケル正極の長さをXとし、高さ(幅)をYとした場合、高さ(幅)に対する長さの比(X/Y)が15より小さいと、長さに対して高さ(幅)が相対的に大きくなって電池の小型化を達成することが困難になる。このため、電池の小型化を達成するためには、高さ(幅)に対する長さの比(X/Y)を15以上(X/Y≧15)にする必要がある。
【0011】
なお、高さ(幅)に対する長さの比(X/Y)が大きくなればなるほど、この電極に流れる電流密度が大きくなって、ニッケル正極内部でのNi23Hが生成し易くなって、抵抗増加が生じ、容量低下が惹起されて容量が低下し、耐久性性能が低下することとなる。この場合、高さ(幅)に対する長さの比(X/Y)が27以下であれば、ニッケル正極内部でのNi23Hの生成比率がそれほど大きくないことが分かった。このことからすると、ニッケル正極の高さ(幅)に対する長さの比(X/Y)は27以下であるのが望ましいということができる。結局、ニッケル正極の高さ(幅)に対する長さの比(X/Y)は15以上で27以下(15≦X/Y≦27)が好ましいこととなる。
【0012】
また、セパレータを介して正・負極を対向させた電極群を渦巻状に巻回して同じ直径の渦巻状電極群を作製する場合、厚みを薄くしてその分長さを長くした電極を用いた方が、厚みを厚くしてその分長さを短くした電極を用いたよりも、反応表面積が増大して大容量の電池が得られることとなる。この場合、所定の充放電を繰り返した後の内部抵抗が初期の内部抵抗に対して114%以下になるのが望ましい。
【0013】
ここで、所定の充放電条件にて総放電電気量で10kAhまで充放電を繰り返した後、Ni23Hがニッケル正極内での存在比率が40%より多く存在するとニッケル正極の抵抗が大きく増加するようになって、電池容量が大きく低下し、耐久性が著しく低下する要因となる。このため、ニッケル正極表面(この場合、ニッケル正極表面は表面から0.01mmまでの範囲を意味する)にはNi23Hが存在しておらず、かつニッケル正極内でのNi23Hの存在比率が40%以下になるように規制する必要がある。この場合、Ni23Hの存在比率は、Cu−Kαを用いた粉末X線回折において、Ni23Hの(120)面でのピーク強度とNi(OH)2の(001)面でのピーク強度との比率を意味する。
【0014】
なお、所定の充放電条件とは、ニッケル正極に対する電流密度が100It/m2を超えない範囲の電流値条件で、電池の充電量を電池容量に対し満充電を行わない目標SOCまでの充電、および/または完全放電を行わない目標SOCまでの放電を行わせて、総放電電気量が10kAhになるまで充放電を繰り返して行うものである。この場合、所定の充放電条件にて総放電電気量で10kAhまで充放電を繰り返した後、ニッケル正極内でのNi23Hの存在比率が10%以下になるように規制すると、ニッケル正極の抵抗増加を更に抑制できて、電池容量の低下も更に抑制できるようになるので好ましい。そして、満充電を行わない目標SOCは電池容量に対して90%以下であり、完全放電を行わない目標SOCは電池容量に対して20%以上であることを意味する。
【発明の効果】
【0015】
本発明においては、充放電を繰り返した後においてもニッケル正極内部でのNi23Hの存在比率を抑制することができるので、所定の充放電を繰り返した後のニッケル正極の抵抗増加による容量低下を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のアルカリ蓄電池の一実施例となるニッケル−水素蓄電池を模式的に示す断面図である。
【図2】Ni23Hの存在比率(%)に対する容量比率(%)の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ついで、本発明の実施の形態を以下に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものでなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0018】
1.ニッケル正極
(1)焼結基板
ニッケル焼結基板は以下のようにして作製したものを用いている。例えば、ニッケル粉末に、増粘剤となるメチルセルロース(MC)と高分子中空微小球体(例えば、孔径が60μmのもの)と水とを混合、混練してニッケルスラリーを作製した。ついで、ニッケルめっき鋼板からなるパンチングメタルの両面にニッケルスラリーを所定の厚みになるように塗着した後、還元性雰囲気中で1000℃で加熱して、増粘剤や高分子中空微小球体を消失させるとともにニッケル粉末同士を焼結させることにより作製した。ここで、焼結後の厚みが0.35mmになるように作製されたものをニッケル焼結基板αとし、焼結後の厚みが0.40mmになるように作製されたものをニッケル焼結基板βとした。
【0019】
(2)焼結式ニッケル正極
焼結式ニッケル正極11は、上述のようにして作製されたニッケル焼結基板α,βの多孔内に水酸化ニッケルと水酸化コバルトと水酸化亜鉛とが所定の充填量になるように充填して作製した。この場合、得られたニッケル焼結基板α,βに以下のような含浸液を含浸する含浸処理と、アルカリ処理液によるアルカリ処理とを所定回数繰り返すことにより、ニッケル焼結基板の多孔内に所定量の水酸化ニッケルと水酸化コバルトと水酸化亜鉛とを充填した後、所定の寸法に裁断することにより、正極活物質が充填された焼結式ニッケル正極11(a,b)を作製した。
【0020】
この場合、含浸液としては、硝酸ニッケルと硝酸コバルトと硝酸亜鉛を所定のモル比(例えば、100:5:5)となるように調製した混合水溶液を用い、アルカリ処理液としては、比重が1.3の水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液を用いた。そして、ニッケル焼結基板を含浸液に浸漬して、ニッケル焼結基板の細孔内に含浸液を含浸させた後、乾燥させ、ついで、アルカリ処理液に浸漬してアルカリ処理を行った。これにより、ニッケル塩や亜鉛塩を水酸化ニッケルや水酸化亜鉛に転換させた。この後、充分に水洗してアルカリ溶液を除去した後、乾燥させた。このような、含浸液の含浸、乾燥、アルカリ処理液への浸漬、水洗、および乾燥という一連の正極活物質の充填操作を6回繰り返すことにより、所定量の正極活物質をニッケル焼結基板α,βに充填させた。
【0021】
なお、ニッケル焼結基板α(厚みが0.35mmのもの)を用い、長さ(X)が950mmで高さ(幅:Y)が50mm(X/Y=19.0)の寸法になるように裁断して作製されたものを焼結式ニッケル正極aとした。また、ニッケル焼結基板β(厚みが0.40mmのもの)を用い、長さ(X)が750mmで高さ(幅:Y)が50mm(X/Y=15.0)の寸法になるように裁断して作製されたものを焼結式ニッケル正極bとした。
【0022】
(3)非焼結式ニッケル正極
非焼結式ニッケル正極11は、発泡ニッケルからなる正極基板に活物質スラリー(ニッケルスラリー)を充填して作製した。この場合、活物質スラリーは以下のようにして調製した。即ち、活物質としてニッケル:コバルト:亜鉛のモル比が100:5:5となるように、硫酸ニッケルと硫酸コバルトと硫酸亜鉛からなる混合水溶液を撹拌しながら、水酸化ナトリウム水溶液を徐々に添加し、反応液中のpHを13〜14に安定させて、複合粒子からなる水酸化ニッケルを溶出させた。この後、得られた複合粒子からなる水酸化ニッケルに対して、10倍量の純水で3回洗浄した後、脱水、乾燥させることにより、水酸化ニッケル活物質を調製した。
【0023】
ついで、得られた水酸化ニッケル活物質に40質量%のHPCディスパージョン液を混合して、活物質スラリーを調製した。さらに、得られた活物質スラリーの所定量を発泡ニッケル(例えば、多孔度が95%で、平均孔径が200μmのもの)からなる正極基板に所定の充填密度になるように充填し、乾燥後、所定の厚みになるように圧延し、所定の寸法になるように切断して、非焼結式ニッケル正極11xとした。なお、この場合は、厚みが0.40mmになるようにし、かつ、長さ(X)が750mmで高さ(幅:Y)が50mm(X/Y=15.0)になるように作製し、非焼結式ニッケル正極cとした。
【0024】
2.水素吸蔵合金負極
水素吸蔵合金負極12はパンチングメタルからなる負極芯体に水素吸蔵合金スラリーを塗布して作製した。この場合、例えば、水素吸蔵合金の塊(インゴット)をアルゴンガス雰囲気で熱処理を行ってインゴットにおける結晶構造を調整した後、不活性雰囲気中で機械的に粉砕して水素吸蔵合金粉末とした。この後、得られた水素吸蔵合金粉末100質量部に対し、非水溶性高分子結着剤としてのSBR(スチレンブタジエンラテックス)を0.5質量部と、増粘剤としてCMC(カルボキシメチルセルロース)を0.03質量部と、適量の純水を加えて混練して、水素吸蔵合金スラリーを調製した。そして、得られた水素吸蔵合金スラリーをパンチングメタル(ニッケルメッキ鋼板製)からなる負極芯体の両面に塗着した後、乾燥させ、所定の充填密度になるように圧延した後、所定の寸法に裁断して水素吸蔵合金負極12(x,y)を作製した。
【0025】
なお、一般式がLa0.6Sm0.4Mg0.1Ni3.6Al0.05と表される水素吸蔵合金(A成分(LaとMgのモル比)に対するB成分(NiとAlのモル比)の量論比は3.3(AB3.3))を用い、長さが100mmで、高さ(幅)が50mmで、厚みが0.20mmになるように作製したものを水素吸蔵合金負極xとした。また、一般式がMmNi4.0Co0.6Al0.5Mn0.2と表される水素吸蔵合金(A成分(Mmのモル比)に対するB成分(NiとCoとAlのMnのモル比)の量論比は5.3(AB5.3))を用い、長さが850mmで、高さ(幅)が50mmで、厚みが0.25mmになるように作製したものを水素吸蔵合金負極yとした。
【0026】
3.ニッケル−水素蓄電池
ついで、上述のようにして作製したニッケル正極11(a,b,c)と、水素吸蔵合金負極12(x,y)とを用い、これらの間に、ポリオレフィン製不織布からなるセパレータ13を介在させて渦巻状に巻回して渦巻状電極群を作製した。なお、このようにして作製された渦巻状電極群の上部にはニッケル正極11の芯体露出部11cが露出しており、その下部には水素吸蔵合金電極12の芯体露出部12cが露出している。ついで、得られた渦巻状電極群の下端面に露出する芯体露出部12cに負極集電体14を溶接するとともに、渦巻状電極群の上端面に露出するニッケル電極11の芯体露出部11cの上に正極集電体15を溶接して、電極体とした。
【0027】
ついで、得られた電極体を鉄にニッケルメッキを施した有底筒状の外装缶(底面の外面は負極外部端子となる)17内に収納した後、負極集電体14を外装缶17の内底面に溶接した。一方、正極集電体15より延出する集電リード部15aを正極端子を兼ねるとともに外周部に絶縁ガスケット19が装着された封口体18の底部に溶接した。なお、封口体18には正極キャップ18aが設けられていて、この正極キャップ18a内に所定の圧力になると変形する弁体18bとスプリング18cよりなる圧力弁(図示せず)が配置されている。
【0028】
ついで、外装缶17の上部外周部に環状溝部17aを形成した後、アルカリ電解液を注液し、外装缶17の上部に形成された環状溝部17aの上に封口体18の外周部に装着された絶縁ガスケット19を載置した。この後、外装缶17の開口端縁17bをかしめることにより、公称容量は6Ah(直径が32mmで、高さが60mm)のニッケル−水素蓄電池10(A,B,C)を作製した。
【0029】
ここで、焼結式ニッケル正極aと水素吸蔵合金負極xとを用いたものを電池Aとした。また、焼結式ニッケル正極bと水素吸蔵合金負極yとを用いたものを電池Bとし、非焼結式ニッケル正極cと水素吸蔵合金負極yとを用いたものを電池Cとした。なお、これらの電池A,B,Cの内部抵抗値を測定した結果、電池Aは1.51mΩで、電池Bは1.28mΩで、電池Cは2.33mΩであることが分かった。
【0030】
4.電池試験
(1)部分充放電サイクル後のニッケル正極でのNi23Hの存在比率の測定
これらの各電池A,B,Cを用い、25℃の温度雰囲において、1Itの充電電流(電流密度は電池Aにおいては21.0It/m2となり、電池B,Cにおいては26.7It/m2となる)にて、初期容量に対するSOC(State Of Charge:充電深度)が90%となる電圧まで充電した後、1Itの放電電流(電流密度は電池Aにおいては21.0It/m2となり、電池B,Cにおいては26.7It/m2となる)にてSOCが20%となる電圧まで放電させるというサイクルを繰り返す部分充放電サイクル試験を行った。そして、このような部分充放電サイクルを総放電電気量が10kAhとなるまで繰り返した。
【0031】
ついで、上述のような部分充放電サイクル後のニッケル−水素蓄電池を解体して、焼結式ニッケル正極a,bおよび非焼結式ニッケル正極cを取り出した。この後、粉末X線回折装置(XRD:X-Ray Diffractometer)を用いて、取り出した焼結式ニッケル正極a,bおよび非焼結式ニッケル正極cの各表面でのX線回折による解析を行ったところ、各ニッケル正極の表面(ニッケル正極表面から0.01mmの範囲内を意味する)でのNi23Hによる回折ピークは認められなかった。
【0032】
また、これらのニッケル正極a,b,cから活物質を脱落させた後、Cu−Kαを用いた粉末X線回折を行った結果、Ni23Hに起因する回折ピークが認められ、このときニッケル正極aのNi23H:(120)面のピーク強度はNi(OH)2:(001)面のピーク強度に対して8%であった。また、ニッケル正極bのNi23H:(120)面のピーク強度はNi(OH)2:(001)面のピーク強度に対して52%であった。一方、ニッケル正極cにおいてはNi23Hは存在していないことが分かった。
【0033】
(2)容量比率の測定
上述のように部分充放電サイクルを総放電電気量が10kAhとなるまで繰り返した各ニッケル−水素蓄電池A,B,Cにおいて、1Itの充電々流ににてSOCの100%まで充電を行った後、1時間休止させた。ついで、1Itの放電々流にて電池電圧が0.9Vになるまで放電させて、放電時間から部分充放電サイクル後の各電池A,B,Cの容量(Ah)を測定した。この後、部分充放電サイクル行っていない電池Aの容量(Ah)を100として、これとの比を容量比率(%)として求めると、下記の表1に示すような結果が得られた。
【表1】

【0034】
上記表1の結果から明らかなように、非焼結式ニッケル正極を用いた電池Cにおいては、内部抵抗値が2.33mΩと大きな値を示すとともに、部分充放電サイクル後の容量比率が31%と大きく低下していることが分かる。これは、電池Cにおいては非焼結式ニッケル正極を用いていることから、内部抵抗値が大きくなり、かつ非焼結式ニッケル正極内でのNi23Hの存在比率に関係なく、部分充放電サイクルを繰り返した場合においては、水酸化ニッケル(Ni(OH)2)の固溶成分であるコバルト(Co)の電解液中への溶出量が多くなるため、容量比率が大きく低下したと考えられる。
【0035】
また、焼結式ニッケル正極を用いた電池Bにおいては、電池Aに比較して、内部抵抗値が1.51mΩと大きな値を示すとともに、容量比率も58%で低下が大きいことが分かる。これは、焼結式ニッケル正極を用いた電池Bにおいては、詳細なメカニズムは不明ではあるが、内部抵抗値が1.51mΩと大きめであるため、部分充放電サイクルを繰り返した後のニッケル正極内のNi23Hの存在比率が52%に増大するため、部分充放電サイクル後の内部抵抗がさらに増大して容量比率が大きく低下したと考えられる。
【0036】
これらに対して、焼結式ニッケル正極を用いた電池Aにおいては、内部抵抗値が1.28mΩと小さく、かつ容量比率も95%で容量の低下が極めて小さいことが分かる。これは、焼結式ニッケル正極を用いた電池Aにおいては、詳細なメカニズムは不明ではあるが、内部抵抗値が1.28mΩと小さく、部分充放電サイクルを繰り返した後のニッケル正極内のNi23Hの存在比率も8%と小さいため、部分充放電サイクル後においても内部抵抗が増大することはなく、容量比率の低下が殆ど生じなかっためと考えられる。
以上のことから、焼結式ニッケル正極を用い、かつ内部抵抗値が小さくなるように構成して、部分充放電サイクルを繰り返した後のニッケル正極内のNi23Hの存在比率が小さくなるようにすれば、部分充放電サイクル後の容量比率の低下が生じないニッケル−水素蓄電池を得ることが可能となることが分かる。
【0037】
5.充放電条件の検討
ついで、上述のように作製されたニッケル−水素蓄電池Aを用いて、充放電条件について検討した。ここで、電池容量の20〜80%のSOC(State of Charge:充電深度)範囲で充放電サイクル(電流値は1Itで、電流密度は21.0It/m2となる)を総放電電気量が10kAhになるまで繰り返した後のニッケル−水素蓄電池を電池A2とした。同様に、電池容量の20〜100%のSOC(State of Charge:充電深度)範囲で充放電サイクル(電流値は1Itで、電流密度は21.0It/m2となる)を総放電電気量が10kAhになるまで繰り返した後のニッケル−水素蓄電池を電池A3とし、電池容量の20〜110%のSOC(State of Charge:充電深度)範囲で充放電サイクル(電流値は1Itで、電流密度は21.0It/m2となる)を総放電電気量が10kAhになるまで繰り返した後のニッケル−水素蓄電池を電池A4とした。
【0038】
また、電池容量の20〜80%のSOC(State of Charge:充電深度)範囲で充放電サイクル(電流値は10Itで、電流密度は210.5It/m2となる)を総放電電気量が10kAhになるまで繰り返した後のニッケル−水素蓄電池を電池A5とした。同様に、電池容量の20〜90%のSOC(State of Charge:充電深度)範囲で充放電サイクル(電流値は10Itで、電流密度は210.5It/m2となる)を総放電電気量が10kAhになるまで繰り返した後のニッケル−水素蓄電池を電池A6とし、電池容量の20〜100%のSOC(State of Charge:充電深度)範囲で充放電サイクル(電流値は10Itで、電流密度は210.5It/m2となる)を総放電電気量が10kAhになるまで繰り返した後のニッケル−水素蓄電池を電池A7とし、電池容量の20〜110%のSOC(State of Charge:充電深度)範囲で充放電サイクル(電流値は10Itで、電流密度は210.5It/m2となる)を総放電電気量が10kAhになるまで繰り返した後のニッケル−水素蓄電池を電池A8とした。
なお、部分充放電サイクル後のこれらの電池A2〜A8の内部抵抗値を測定し、部分充放電サイクル前の電池Aの内部抵抗値に対する比率を内部抵抗初期比(%)として求めると、下記の表2に示すような結果となった。
【0039】
ついで、上述のような部分充放電サイクル後の電池A2〜A8を解体して、焼結式ニッケル正極aを取り出した。この後、粉末X線回折装置(XRD:X-Ray Diffractometer)を用いて、取り出した焼結式ニッケル正極aの各表面でのX線回折による解析を行ったところ、各ニッケル正極の表面(ニッケル正極表面から0.01mmの範囲内を意味する)でのNi23Hによる回折ピークは認められなかった。そして、これらのニッケル正極aから活物質を脱落させた後、Cu−Kαを用いた粉末X線回折を行った結果、Ni23Hに起因する回折ピークが認められ、このとき各電池A2〜A8に備えられたニッケル正極aのNi(OH)2の(001)面でのピーク強度に対するNi23Hの(120)面でのピーク強度の比率(%)をNi23Hの存在比率(%)として求めると、下記の表2に示すような結果となった。
【0040】
また、上述のような部分充放電サイクル後の各電池A2〜A8の容量(Ah)を測定した後、部分充放電サイクル行っていない電池Aの容量(Ah)を100として、これとの比を容量比率(%)として求めると、下記の表2に示すような結果が得られた。なお、下記の表2においては電池Aの結果を併せて示している。さらに、下記の表2の結果に基づき、Ni23Hの存在比率(%)を横軸(X軸)にプロットし、容量比率(%)を縦軸(Y軸)にプロットしてグラフにすると、図2に示すような結果となった。
【表2】

【0041】
上記表2および図2の結果から明らかなように、ニッケル正極内のNi23Hの存在比率が40%を超え、かつ内部抵抗初期比が130%を超えた電池A7および電池A8においては、容量比率が50%以下と小さく、部分充放電サイクルを繰り返すことにより大きな容量低下が生じていることが分かる。これは、部分充放電サイクル試験の条件を、高電流値(高電流密度)で行うとともにSOCの範囲を100%以上の高い条件で行ったことにより、充電過多の状態となったことからニッケル正極内でのNi23Hの存在比率が高くなって内部抵抗も上昇して、その結果、容量低下が大きくなったと考えられる。
【0042】
このことから、ニッケル正極内でのNi23Hの存在比率が40%以下、即ち、Cu−Kαを用いた粉末X線回折においてNi23Hの(120)面でのピーク強度がNi(OH)2の(001)面でのピーク強度に対して40%以下で、かつ内部抵抗初期比が130%以下であるのが望ましいということができる。この場合、電池A5〜A8のように、電流密度が210.5It/m2と電池A2,A,A3〜A4の10倍も大きくなると、ニッケル正極内でのNi23Hの存在比率が4倍程度も増大することから、電流密度は210.5It/m2のように大きくするのは好ましくないことが分かる。
【0043】
ここで、内部抵抗初期比に関しては、容量比率が80%を超える電池A4の内部抵抗初期比である113と、容量比率が80%未満となる電池A5の内部抵抗初期比である115との間の値で決定するのが望ましいこととなり、その値は、113%と115%の中間の114%にするのが望ましいということができる。なお、ニッケル正極内でのNi23Hの存在比率が10%より多くなると、容量比率が90%よりも小さくなって、容量の低下傾向が認められるようになる。このことから、ニッケル正極内でのNi23Hの存在比率は10%以下になるように抑制することが効果的であることが分かる。
【0044】
6.充放電時の電流密度の検討
ついで、上述のように作製されたニッケル−水素蓄電池Aを用いて、充放電時の電流密度について検討した。ここで、電池容量の20〜90%のSOC(State of Charge:充電深度)範囲で充放電サイクル(電流値は2Itで、電流密度は42.1It/m2となる)を総放電電気量が10kAhになるまで繰り返した後のニッケル−水素蓄電池を電池A9とした。同様に、電池容量の20〜90%のSOC(State of Charge:充電深度)範囲で充放電サイクル(電流値は5Itで、電流密度は105.3It/m2となる)を総放電電気量が10kAhになるまで繰り返した後のニッケル−水素蓄電池を電池A10とした。
【0045】
ついで、上述のような部分充放電サイクル後の電池A9,A10を解体して、焼結式ニッケル正極aを取り出した。この後、粉末X線回折装置(XRD:X-Ray Diffractometer)を用いて、取り出した焼結式ニッケル正極aの各表面でのX線回折による解析を行ったところ、各ニッケル正極の表面(ニッケル正極表面から0.01mmの範囲内を意味する)でのNi23Hによる回折ピークは認められなかった。そして、これらのニッケル正極aから活物質を脱落させた後、Cu−Kαを用いた粉末X線回折を行った結果、Ni23Hに起因する回折ピークが認められ、このとき各電池A9,A10に備えられたニッケル正極aのNi(OH)2の(001)面でのピーク強度に対するNi23Hの(120)面でのピーク強度の比率(%)をNi23Hの存在比率(%)として求めると、下記の表3に示すような結果となった。
【0046】
また、上述のような部分充放電サイクル後の各電池A9,A10の容量(Ah)を測定した後、部分充放電サイクル行っていない電池Aの容量(Ah)を100として、これとの比を容量比率(%)として求めると、下記の表3に示すような結果が得られた。なお、下記の表3においては電池Aの結果を併せて示している。
【表3】

【0047】
上記表3の結果から明らかなように、電池A10のように、電流密度を105.3It/m2として部分充放電サイクルを繰り返すと、所定の部分充放電サイクル後の電池Aに対する容量比率が80%未満となって、容量が低下することが分かる。一方、電池A9のように、電流密度を42.1It/m2として部分充放電サイクルを繰り返すと、所定の部分充放電サイクル後の電池Aに対する容量比率が80%以上が維持でき、容量がそれほど低下しないことが分かる。このことから、部分充放電サイクルにおける電流値条件において、電流密度は100It/m2を超えないように規制するのが望ましいということができる。
【0048】
7.ニッケル正極の高さ(幅:Y)に対する長さ(X)の比(X/Y)の検討
ついで、上述のように作製されたニッケル焼結基板αを用いて、ニッケル正極の(X/Y)の容量比率に及ぼす影響についての検討を行った。そこで、ニッケル焼結基板α(厚みが0.35mmのもの)を用いて、上述のように活物質を含有する含浸液への含浸、乾燥、アルカリ処理液への浸漬、水洗、および乾燥という一連の正極活物質の充填操作を6回繰り返すことにより、所定量の正極活物質をニッケル焼結基板αに充填させた。
【0049】
ここで、長さ(X)が950mmで高さ(幅:Y)が37mm(X/Yは25.7)の寸法になるように裁断されたものをニッケル正極a2とした。また、長さ(X)が950mmで高さ(幅:Y)が35mm(X/Yは27.1)の寸法になるように裁断されたものをニッケル正極a3とし、長さ(X)が950mmで高さ(幅:Y)が30mm(X/Yは31.7)の寸法になるように裁断されたものをニッケル正極a4とした。そして、これらのニッケル正極a2,a3,a4と、上述した水素吸蔵合金負極xとセパレータ13とを用いて渦巻状電極群を作製し、上述と同様にして公称容量が6Ah(直径が32mmで、高さが47〜40mm)のニッケル−水素蓄電池10(A11,A12,A13)を作製した。
【0050】
この場合、ニッケル正極a2を用いて高さが47mmなるように作製したニッケル−水素蓄電池を電池A11とした。また、ニッケル正極a3を用いて高さが45mmなるように作製したニッケル−水素蓄電池を電池A12とした。さらに、ニッケル正極a4を用いて高さが40mmなるように作製したニッケル−水素蓄電池を電池A13とした。
【0051】
ついで、これらの各電池A11〜A13を用い、25℃の温度雰囲において、1Itの充電電流(電流密度は、電池A11においては28.4It/m2となり、電池A12においては30.1It/m2となり、電池A13においては35.1It/m2となる)にて、初期容量に対するSOC(State Of Charge:充電深度)が90%となる電圧まで充電した後、1Itの放電電流(電流密度は電池A11においては28.4It/m2となり、電池A12においては30.1It/m2となり、電池A13においては35.1It/m2となる)にてSOCが20%となる電圧まで放電させるというサイクルを繰り返す部分充放電サイクル試験を行った。そして、このような部分充放電サイクルを総放電電気量が10kAhとなるまで繰り返した。なお、部分充放電サイクル後のこれらの電池A11〜A13の内部抵抗値を測定し、部分充放電サイクル前の電池Aの内部抵抗値に対する比率を内部抵抗初期比(%)として求めると、下記の表4に示すような結果となった。
【0052】
ついで、上述のような部分充放電サイクル後の電池A11〜A13を解体して、焼結式ニッケル正極a2,a3,a4を取り出した。この後、粉末X線回折装置(XRD:X-Ray Diffractometer)を用いて、取り出した焼結式ニッケル正極a2,a3,a4の各表面でのX線回折による解析を行ったところ、各ニッケル正極の表面(ニッケル正極表面から0.01mmの範囲内を意味する)でのNi23Hによる回折ピークは認められなかった。そして、これらのニッケル正極a2,a3,a4から活物質を脱落させた後、Cu−Kαを用いた粉末X線回折を行った結果、Ni23Hに起因する回折ピークが認められ、このとき各電池A11〜A13に備えられたニッケル正極a2,a3,a4のNi(OH)2の(001)面でのピーク強度に対するNi23Hの(120)面でのピーク強度の比率(%)をNi23Hの存在比率(%)として求めると、下記の表4に示すような結果となった。
【0053】
また、上述のような部分充放電サイクル後の各電池A11〜A13の容量(Ah)を測定した後、部分充放電サイクル行っていない電池Aの容量(Ah)を100として、これとの比を容量比率(%)として求めると、下記の表4に示すような結果が得られた。なお、下記の表4においては電池Aの結果を併せて示している。
【表4】

【0054】
上記表4の結果から明らかなように、ニッケル正極の高さ(幅:Y)に対する長さ(X)の比(X/Y)が27以上であるニッケル正極a3,a4を備えた電池A12,A13においては、同条件にて部分充放電サイクル試験を行った場合に電流密度が大きくなって、ニッケル正極a3,a4内にNi23Hが生成しやすくなることから容量低下が生じることが分かる。このことより、ニッケル正極の高さ(幅:Y)に対する長さ(X)の比(X/Y)が27より小であることが好ましいことが分かる。
【0055】
一方、電池を小型化するためには、ニッケル正極の高さ(幅:Y)に対する長さ(X)の比(X/Y)を小さくする必要が、ニッケル正極の高さを小さくすると反応表面積が減少するため、ニッケル正極の高さを短くした分だけ、その長さを長くして反応表面積を確保する必要がある。しかしながら、ニッケル正極の長さをXとし、高さ(幅)をYとした場合、高さ(幅)に対する長さの比(X/Y)が15より小さいと、長さに対して高さ(幅)が相対的に大きくなって電池の小型化を達成することが困難になる。このため、電池の小型化を達成するためには、高さ(幅)に対する長さの比(X/Y)を15以上(X/Y≧15)にする必要がある。結局、ニッケル正極の高さ(幅)に対する長さの比(X/Y)は15以上で27以下(15≦X/Y≦27)が好ましいこととなる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
なお、一般的な部分充放電制御の条件としては、複数の電池を組み合わせた組電池とした場合に各電池間にバラツキが生じない電圧(この場合は、充電深度(SOC)が10%相当の電圧)に達すると放電を停止して充電を開始させ、酸素過電圧に到達する前の電圧(この場合は、充電深度(SOC)が95%相当の電圧)に達すると充電を停止して放電を開始させると定義することができる。
ただし、実用的には、充電深度(SOC)が10%相当の電圧に達すると放電を停止して充電を開始し、充電深度(SOC)が90%相当の電圧に達すると充電を停止して放電を開始するように部分充放電制御がなされるのが望ましく、好ましくは、充電深度(SOC)が20%相当の電圧に達すると放電を停止して充電を開始し、充電深度(SOC)が80%相当の電圧に達すると充電を停止して放電を開始するように部分充放電制御がなされるのがよい。
【符号の説明】
【0057】
11・ニッケル電極、11c・芯体露出部、12・水素吸蔵合金電極、12c・芯体露出部、13・セパレータ、14・負極集電体、15・正極集電体、15a・集電リード部、17・外装缶、17a・環状溝部、17b・開口端縁、18・封口体、18a・正極キャップ、18b・弁板、18c・スプリング、19・絶縁ガスケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素吸蔵合金を負極活物質とする水素吸蔵合金負極と、焼結基板に水酸化ニッケルを主成分とする正極活物質が充填されたニッケル正極と、セパレータとからなる電極群をアルカリ電解液とともに電池容器内に収納されて密閉されたアルカリ蓄電池であって、
前記ニッケル正極の長さをXとし、高さ(幅)をYとした場合、高さ(幅)に対する長さの比(X/Y)が15以上(15≦X/Y)であるとともに、
前記ニッケル正極に対する電流密度が100It/m2を超えない範囲の電流値条件で電池の充電量を電池容量に対し満充電を行わない目標SOCまでの充電、および/または完全放電を行わない目標SOCまでの放電を行う充放電条件にて、総放電電気量で10kAhまで充放電を繰り返した後の内部抵抗が初期の内部抵抗に対して114%以下で、ニッケル正極内のNi23Hがニッケル正極表面から0.01mmの範囲内には存在しておらず、かつCu−Kαを用いた粉末X線回折において、Ni23Hの(120)面でのピーク強度がNi(OH)2の(001)面でのピーク強度に対して40%以下であることを特徴とするアルカリ蓄電池。
【請求項2】
前記総放電電気量で10kAhまで充放電を繰り返した後のアルカリ蓄電池に用いられた前記ニッケル正極は、Cu−Kαを用いた粉末X線回折において、Ni23Hの(120)面でのピーク強度がNi(OH)2の(001)面でのピーク強度に対して10%以下であることを特徴とする前記請求項1に記載のアルカリ蓄電池。
【請求項3】
前記満充電を行わない目標SOCは電池容量に対して80%以下であり、前記完全放電を行わない目標SOCは電池容量に対して20%以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアルカリ蓄電池。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−233423(P2011−233423A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−104006(P2010−104006)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】