アルカリ金属発生材、および、これを用いたアルカリ金属発生器、光電子放出面、光電子増倍管
【課題】 製造工程における管理負担が軽減されるとともに、高感度の光電面を形成することを可能とするアルカリ金属発生材、さらには、このアルカリ金属発生材を用いたアルカリ金属発生器、それにより形成される光電面、それを用いた光電子増倍管を提供する。
【解決手段】 クロム酸セシウム(Cs2CrO4)とモリブデン酸セシウム(Cs2MoO4)を混合して酸化剤としたアルカリ金属発生材を用いて活性化することにより光電面を製造する。ここで、モリブデン酸セシウムの比率を10〜45%とすると、良品率、感度の点から好ましく、さらに、この比率を20〜50%とすると、特に良好な感度が得られて好ましい。
【解決手段】 クロム酸セシウム(Cs2CrO4)とモリブデン酸セシウム(Cs2MoO4)を混合して酸化剤としたアルカリ金属発生材を用いて活性化することにより光電面を製造する。ここで、モリブデン酸セシウムの比率を10〜45%とすると、良品率、感度の点から好ましく、さらに、この比率を20〜50%とすると、特に良好な感度が得られて好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射光に対応して光電子を放出する光電子放出面の形成に用いられるアルカリ金属発生材、および、形成時に用いられるアルカリ金属発生器、このアルカリ金属発生材を用いて製造される光電子放出面、さらには、この光電子放出面を備える光電子増倍管に関する。
【背景技術】
【0002】
光電子増倍管、光電管、イメージインテンシファイア、ストリーク管等の主要部品として入射光に対応して電子(光電子)を放出する光電子放出面(光電面)がある。光電面としては、透明基板上に形成される、いわゆる透過型光電面や、金属基板上に形成される、いわゆる反射型光電面が知られている。現在、実用化されている光電面の多くは、基板上にアルカリ金属を含む光電子放出材料を形成したものであり、光電子放出材料としては、例えば、CsやSbの金属間化合物や化合物半導体を用いている。
【0003】
こうした光電子放出材料は、所定の真空度(10−7〜10−2Pa程度)と温度に保持した雰囲気中で、アルカリ金属蒸気を発生させ、予め基板上に形成されている部材と反応させることで形成する手法が知られている。例えば、基板上にSbの蒸着膜を形成し、Cs蒸気を発生させて、蒸着膜のSbと反応させることにより、金属間化合物層を形成する手法が知られている。
【0004】
アルカリ金属自体は大気中では非常に不安定な物質であるため、アルカリ金属蒸気を発生させるために、酸化還元反応によってアルカリ金属を生成可能な酸化剤と還元剤を組み合わせた材料をアルカリ金属の供給源として用いている。この供給源をアルカリ金属発生材と称している。
【0005】
特許文献1に記載の技術はこの種のアルカリ金属発生材に関するものであり、モリブデン酸塩をアルカリ金属発生材として用いる技術が開示されている。モリブデン酸塩は、従来から用いられているクロム酸塩に比べて酸化力が弱いため、クロム酸塩を用いた場合に比べて還元剤との酸化還元反応が緩やかに進行する。このため、進行が急速に進むことがなく、還元温度を管理することで反応速度を制御するのが容易になる、と記載されている。
【特許文献1】国際公開第2004/066338号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、モリブデン酸塩のうちでもアルカリ金属発生材として良好な性質を有するモリブデン酸セシウムは単体では潮解性が高いため、製造工程における管理が煩雑になるという問題点がある。また、モリブデン酸塩をアルカリ金属発生材として形成した光電面においては、クロム酸塩を用いて形成した光電面に比較してその感度が若干低くなるという問題点がある。
【0007】
そこで本発明は、製造工程における管理負担が軽減されるとともに、高感度の光電面を形成することを可能とするアルカリ金属発生材、さらには、このアルカリ金属発生材を用いたアルカリ金属発生器、それにより形成される光電面、それを用いた光電子増倍管を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明にかかるアルカリ金属発生材は、入射光に対応して光電子を放出する光電子放出面の形成に使用されるアルカリ金属の供給源となるアルカリ金属発生材であって、モリブデン酸セシウムとクロム酸セシウムとを混合してなることを特徴とするものである。
【0009】
本発明者らは、最適なアルカリ金属源について調査を行う過程で、モリブデン酸セシウムとクロム酸セシウムを混合することで、モリブデン酸セシウムを単体で利用する場合に問題となる潮解性による管理上の問題を克服できるとともに、クロム酸セシウムを単体で利用する場合に問題となる還元温度の上昇と反応速度の制御の困難性という問題を克服できる上、それぞれを単体で使用する場合に比較して光電感度の点でも向上が見込まれることを見出した。本発明は、この知見に基づくものである。
【0010】
ここで、クロム酸セシウムに対するモリブデン酸セシウムの混合比は好ましくは10%〜45%、より好ましくは20%〜40%であるとよい。混合比が10%〜45%の場合には、それぞれを単体で使用する場合よりも十分に高い光電感度を実現することができる。20%〜40%とすると、特に良好な光電感度を実現できる。
【0011】
また、本発明にかかるアルカリ金属発生器は、入射光に対応して光電子を放出する光電子放出面の形成に使用されるアルカリ金属を発生させるアルカリ金属発生器であって、内部に収容空間を備え、収容空間と外部とを連通する放出口を備えるケースを有し、上述した本発明にかかるアルカリ金属発生材をこの収容空間内に収容して、アルカリ金属発生材から発生したアルカリ蒸気を放出口を通じて放出することを特徴とするものである。
【0012】
そして、本発明にかかる光電子放出面は、入射光に対応して光電子を放出する光電子放出面であって、上述した本発明にかかるアルカリ金属発生材から発生したアルカリ蒸気により活性されていることを特徴とするものである。
【0013】
一方、本発明にかかる光電子増倍管は、上述した本発明にかかる光電子放出面を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかるアルカリ金属発生器において本発明にかかるアルカリ金属発生材を用いれば、光電感度に優れた本発明にかかる光電子放出面を製造できるとともに、この光電子放出面を備えた優れた特性の光電子増倍管を得ることができる。この際、アルカリ金属発生材の管理が容易であるとともに、製造時の制御が容易であるため、製品製造時の歩留りが向上するという効果も得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の参照番号を附し、重複する説明は省略する。
【0016】
図1に本発明にかかるアルカリ金属発生材の一実施形態の斜視図を示す。このアルカリ金属発生材1は、後述する本発明にかかる光電面の形成に用いられるアルカリ金属の供給源となる。アルカリ金属発生材1は、図に示されるように円盤状のペレットに成型されている。このようなペレットとすることにより、アルカリ金属発生材1の取り扱い性が向上し、後述する本発明にかかるアルカリ金属発生器に収容して光電面等を製造する際の作業が容易になる。
【0017】
このアルカリ金属発生材1は、少なくとも酸化剤と還元剤を含有している。酸化剤には、アルカリ金属イオンをカウンターカチオンとするアルカリ金属塩が用いられる。本発明においては、クロム酸セシウム(Cs2CrO4)とモリブデン酸セシウム(Cs2MoO4)を所定の割合で混合している。ここで、クロム酸セシウムとモリブデン酸セシウムの総質量に対するモリブデン酸セシウムの重量、つまり混合比は10%〜45%であることが好ましく、より好ましくは、20%〜40%であることが好ましい。
【0018】
モリブデン酸セシウムは、潮解性が高く、単体では水分を吸収して劣化しやすい。これをクロム酸セシウムと混合することで、その保存性、取扱性を向上させ、製品の劣化を抑制する。また、後述するように、両者を上述の混合比で混合することにより、単体で用いる場合に比較して良好な性能を有する光電面を作成することができる。
【0019】
アルカリ金属発生材1の還元剤としては、所定温度において上述の酸化剤と酸化還元反応を開始し、アルカリ金属イオンを還元する性質の化合物が用いられる。この種の化合物としては公知の各種化合物を用いることが可能であるが、Si、Zr、Al、W、Tiを含む群から1種ないし複数種を任意に組み合わせて使用するとよい。以下の説明では、Siを還元剤として使用した場合を例に説明する。Siは還元剤として使用した場合に、約900℃でアルカリ発生量が飽和する特性を有する。このため、他の還元剤に比べて加熱温度に対するアルカリ発生量のコントロールが容易であり、短時間での反応が可能となるため、量産化に適している。また、細かい温度コントロールが難しい高周波加熱反応方式を利用する場合の還元剤としても適している。
【0020】
アルカリ金属発生材1中の酸化剤と還元剤を反応させるためには、所定の真空度に調節された雰囲気(雰囲気中の残留気体の分圧が10−6Pa〜10−1Pa、より好ましくは10−6Pa〜10−3Paである雰囲気)中で所定の温度まで加熱することで反応を実行させる。
【0021】
次に、このアルカリ金属発生材1の製造方法について説明する。図2は、製造工程を説明するフローチャートである。最初に、酸化剤となるモリブデン酸セシウムとクロム酸セシウム、還元剤となるSiをそれぞれ準備する(ステップS1〜S3)。各化合物はそれぞれ99.9%以上の高純度の化合物を用い、それを微粒子に粉砕しておく。予め粉砕したものを保管庫に保管しておいてもよい。
【0022】
次に、各化合物を精密電子秤等を用いて計量する(ステップS4〜S6)。計量後、各化合物を攪拌機へ投入して十分に攪拌する(ステップS7)。攪拌後製造する光電面の形状に応じた必要量を計量する。計量した後に圧縮ペレット成形機に導入し、直径2〜5mm、厚さ1〜3mmの圧縮ペレットを作成する(ステップS8)。ペレットの大きさは、製造する光電面の性状、つまり、必要なアルカリ金属量に応じて設定される。このようにして図1に示されるアルカリ金属発生材1を製造することができる。
【0023】
なお、本発明にかかるアルカリ金属発生材1は、上述したような円盤状のペレットではなく、他の形状(例えば、細長い円柱状や角柱状、平板状)のペレットとして形成してもよい。また、一旦ペレット状に形成したものを砕いて粒状の状態で用いてもよく、攪拌後の粉末をそのまま用いることも可能である。ただし、ペレットの場合は、粉末や粒体の場合に比較して取扱が容易で、使用時に計量を行う手間が省けるという利点を有している。以下の説明では、ペレットの場合に限って説明を行うが、粉末や粒体を使用する場合にも応用可能である。
【0024】
図3は、このアルカリ金属発生材1を用いるアルカリ金属発生器を示す斜視図であり、図4は、そのIV−IV線断面図である。このアルカリ金属発生器2は、金属製(例えば、ニッケル等)のケース20内にペレットまたは粉末状のアルカリ金属発生材1を収容したものである。
【0025】
ケース20は、凹部21が中央に設けられ、その上端の周囲に環状のフランジ部分を有する収容部材22と、収容部材22のフランジ部分にその縁部分が溶接される円板状の蓋部材24とからなる。この溶接は、例えば、通電による抵抗加熱によって行えばよい。蓋部材24と収容部材22によって囲まれた凹部21がアルカリ金属発生材1のペレットを収容する収容空間となる。この収容空間はペレットを収容すべく、ペレットよりも若干大きく形成されており、好ましくは、その内形状がペレットの外形状と略相似形であるとよい。これにより、収容したアルカリ金属発生材1が外へ漏れ出るのを防いでいる。
【0026】
なお、収容部材22のフランジ部と蓋部材24の縁部分には、一部未溶接部分が存在し、この未溶接部分が収容空間と外部とを連通して、アルカリ金属発生材1から放出されるアルカリ金属をアルカリ金属発生器2の外部へと放出する放出口23として機能する。
【0027】
このアルカリ金属発生器2は、加熱装置を備えており、当該加熱装置は、ケース20を光電子増倍管7内に組み入れられた状態の時、光電子増倍管外より高周波コイル25と、このコイル25に高周波電流を供給する高周波電源26からなる装置により高周波電磁波を照射しケース20内に渦電流を発生させる事により、加熱することができる。コイル25に周波数が1MHzから300MHzの高周波電流を供給することで、その高周波電流により、コイル25により導電体(アルカリ金属発生器)に渦電流を流す。この場合には、アルカリ金属発生器2およびその内部のアルカリ金属発生材1を直接電磁波の照射により加熱する。更にアルカリ金属発生器2のケース20は環状のフランジ部分を有する収容部材22と円板状の蓋部材24の一対から成る金属ケースであるため、高周波コイル25から発生した高周波磁波を効率よく吸収し、金属ケース内に渦電流を発生させる直接加熱であり、導入線等の熱損失が少なく、加熱効率が高いことなどから、特に上述したような低圧状態及び真空状態での加熱に適している。
【0028】
次に、このアルカリ金属発生器2の製造方法を説明する。図5は、このアルカリ金属発生器の製造工程を示すフローチャートである。最初に、真空材料用ニッケル金属を用意し、これを定められた形状にプレス加工することで、凹部21を収容する収容部材22と蓋部材24とを製造する(ステップS11)。次に、加工した両部材を溶剤により洗浄して脱脂・洗浄処理を行う(ステップS12)。ステップS11、S12と並行して所定形状のペレット状のアルカリ金属発生材1を準備する(ステップS13)。そして、準備したアルカリ金属発生材1を収容部材22の凹部21内に納め、蓋部材24で覆う(ステップS14)。次に、必要個所を溶接する(ステップS15)ことで、図3、図4に示されるアルカリ金属発生器2が得られる。
【0029】
続いて、本発明にかかる光電子増倍管について説明する。図6は、本発明にかかる光電子増倍管の一実施形態の断面図である。この光電子増倍管7は、透過型光電面を有するヘッドオン型の光電子増倍管である。より、具体的には、ラインフォーカス型の電子増倍部を有している。光電子増倍管7は、主要構成要素である光電面C7と、電子増倍部D7と、集束電極E7と、陽極A7とアルカリ発生器2がガラス側管72内に収容された構成を有する。
【0030】
光電面C7は、ガラス等の光透過性の基板(面板)C71上に、入射光L1に対応して光電子e1を放出する膜状の光電子放出材料(例えば、金属間化合物や化合物半導体)からなる光電子放出材料層C72を設けたものである。
【0031】
この光電子放出材料層C72には、上述したアルカリ金属発生材1から発せられたアルカリ金属が含まれている。つまり、光電子放出材料層C72としては、例えば、Sb−Cs,Sb−Rb−Cs、Sb−K−Cs、Sb−Na−K−Cs、GaAs(Cs)、InGaAs(Cs)、InP/InGaAs(Cs)、InP/InGaAsP(Cs)等が挙げられる。ここで、上記表記における(Cs)とは、Csによって活性化された材料であることを示している。
【0032】
この光電子放出材料層C72は、後述するようにアンチモンや化合物半導体などのアルカリ金属と反応する光電子放出材料の構成材料を基板C71の裏面(光電子増倍管7へ搭載した際に管内へ向く側の面)FC72上に形成し、続いて、アルカリ金属の蒸気と反応させることで得られる。
【0033】
側管72は、例えば、コバールガラス、UVガラスなどからなる円筒状の側管である。ここでは、ガラス製としたが、コバール金属、ステンレス等の金属製材料を用いてもよい。上述した光電面C7は、側管72の一方(図では上側)の開口部72aに受光面FC71を外側へと向けて融着固定されている。
【0034】
側管72の他方の開口部72bには、ガラス製(例えば、コバールガラス、UVガラスなど)のステム板78が溶接固定されている。このステム板78も側管72と同様にコバール金属やステンレス等の金属材料で形成してもよい。側管72と光電面C7とステム板78によって密封容器が形成されている。
【0035】
ステム板78の中央には側管72と反対側へ伸びる筒状の排気管73が固定されている。この排気管73は、光電子増倍管7の製造工程において、側管72と光電面C7とステム板78によって構成される密封容器内部の空気を真空ポンプによって排出し、真空状態とする工程で使用され、その後封止されることで光電子増倍管7内は真空状態が維持される。
【0036】
電子増倍部D7は、それぞれが複数の板状のダイノードを有する第1ダイノードD71〜第9ダイノードD79から構成されている。第1ダイノードD71〜第9ダイノードD79のそれぞれは、基板と、その上に配置されており、入射した光電子e1を利用して二次電子e2を放出する二次電子放出面FD7を有する膜状の二次電子放出材料からなる層とから構成されている。以下、二次電子放出材料からなる層を二次電子放出材料層と称する。
【0037】
これらの第1ダイノードD71〜第9ダイノードD79のそれぞれは、例えば、密封容器を貫通するように設けられた金属製(例えば、コバール金属製)のステムピン75によって密封容器内に支持されており、各ステムピン75の当該支持側の先端は、対応する第1ダイノードD71〜第9ダイノードD79のそれぞれと電気的に接続されている(管内におけるステムピン75の図示は省略している)。他端は、ステム板78に設けられたピン孔を貫通して管外に露出している。各ピン孔はハーメチックシールとして利用されるタブレット(例えば、コバールガラス製)が充填されることで、各ステムピン75は、タブレットを介してステム板78に固定される。各ダイノードD71〜D79の二次電子放出材料層としては、上述した光電面の光電子放出材料層と同様の素材を用いることができる。
【0038】
電子増倍部D7とステム板78との間には、専用のステムピン75に支持された陽極A7が配置されている。一方、電子増倍部D7と光電面C7との間には集束電極E7が配置されている。この集束電極E7の中央には、集束された光電子e1流を電子増倍部に向けて導くための開口部が形成されている。
【0039】
各ステムピン75は、光電子増倍管7の外側へ露出した部分で電圧印加部に電気的に接続されることにより、第1ダイノードD71〜第9ダイノードD79と陽極A7には所定の電圧が供給される。また、光電面C7と集束電極E7にもそれぞれ所定の電圧が供給されている。具体的には、光電面C7と集束電極E7は同じ電位に設定されており、第1ダイノードD71〜第9ダイノードD79と陽極A7は、図で上段から順に高電位となるよう、つまり、光電面C7および集束電極E7に近いほど高電位となるように設定されている。
【0040】
このように電圧を設定することで、光電面C7の受光面FC71に光L1が入射すると、反対面FC72から光電子e1が放出される。放出された光電子e1は、集束電極E7により、電子増倍部D7へと導かれ、第1ダイノードD71〜第9ダイノードD79により多段増倍されて、陽極A7へと入射し、光電子e1の数、つまり、光L1の光強度に応じた電流が出力されることになる。
【0041】
次に、この光電子増倍管7の製造方法について説明する。この製造方法は、本発明にかかるアルカリ金属発生材、アルカリ金属発生器を用いて本発明にかかる光電面C7および第1ダイノードD71〜第9ダイノードD79を製造すること以外の条件および手順は特に以下の記載に限定されるものではなく、公知の技術により製造することが可能である。
【0042】
図7は、この光電子増倍管7の製造工程を示すフローチャートである。最初に側管72となるガラス管と、基板C71となるガラス基板を用意する(ステップS21)。このとき、基板C71上の光電子放出材料層C72は、アルカリ活性化が行われていない未完成な状態にある。次に、両者を加熱して一体化する(ステップS22)。
【0043】
続いて、ステム板78のピン孔にステムピン75を貫通させてタブレットにより固定する(ステップS23)。ここで、ステム板78の中央には、筒状の排気管73が接続されている。排気管73は、両端が開放された状態にある。そして、対応するステムピン75上に、陽極A7、集束電極E7、第1ダイノードD71〜第9ダイノードD79のそれぞれを組み付けることで、陽極A7、集束電極E7と電子増倍部D7の組立を行う。さらに高周波電磁波の吸収しやすい位置に予め前工程で製作されたアルカリ金属発生器2を配置して固定する(ステップS24)。例えば、ステムピン75等に溶接して固定するとよい。この段階では、各ダイノードD71〜D79を形成する基板上の二次電子面はアルカリ活性化が行われていない未完成な状態にある。組み立てられた電子増倍部D7等(組立体)を側管72の開口部72b側から挿入し(ステップS25)、ステム板78と側管72とを加熱一体化することで密封容器を形成する(ステップS26)。ただし、上述した排気管73のみを通じて管内外は連通している。
【0044】
なお、光電子増倍管7の光電面C7および第1ダイノードD71〜第9ダイノードD79の形成に用いるアルカリ金属発生器2は図4と同様である。ステップS26を終了した光電子増倍管7は、排気管73を介して、図示していない真空ポンプに接続されたガラス管へと接続される(ステップS27)。このとき、真空ポンプに接続された系全体が気密状態とされる。
【0045】
最初に、排気系を加熱して十分な脱ガスを行い高真空になった後、光電子増倍管7自体も加熱することで、加熱脱ガスを行う(ステップS28)。排気系が十分な高真空になった後、光電子増倍管7を一旦室温まで冷却する(ステップS29)。そして、系内に配置した図示していないマンガンコイルに通電することで、窓材にマンガンを蒸着する(ステップS30)。
【0046】
蒸着後、系内に高純度酸素を導入する(ステップS31)。このときの酸素ガスの圧力は、数Pa〜数十Pa程度とする。この状態で光電面C7に所定の直流または交流電圧を印加することで、蒸着されたマンガンを酸化して透明化する(ステップS32)。透明化後、真空ポンプを作動させることで、系内の酸素ガスを排出して、系内を再び高真空化する(ステップS33)。
【0047】
所定の真空度に到達したら系内に配置した図示していないアンチモンコイルに通電することで、酸化マンガン上にアンチモンを蒸着する(ステップS34)。次に、光電子増倍管7を電気炉等により150℃〜200℃に加熱する(ステップS35)。その後、光電子増倍管7内に配置されているアルカリ金属発生器4を高周波加熱する(ステップS36)。内部のペレット1Aが十分に加熱されると、酸化剤であるCs2CrO4、Cs2MoO4と還元剤であるSiとの間で以下の酸化還元反応が進行する。
4Cs2CrO4+5Si→5SiO2+8Cs+2Cr2O3 …(1)
4Cs2MoO4+5Si→5SiO2+8Cs+2Mo2O3 …(2)
【0048】
このとき、同じCs+をカウンターカチオンとしていてもCs2MoO4のほうがCs2CrO4よりも酸化力が弱いので、還元剤との酸化還元反応は反応(2)のほうが反応(1)よりも緩やかに進行する。このため、酸化剤としてCs2CrO4を単体で用いる(反応(1)のみの)場合に比べてペレット全体の反応速度を制御することが容易になり、アルカリ金属蒸気を安定的に発生させることができる。
【0049】
アルカリ金属の還元が十分に行われた(十分な量のアルカリ金属蒸気が発生した)ところで、高周波加熱を停止し(ステップS37)、光電子増倍管7を電気炉等によって120℃〜180℃に加熱して、30分〜2時間焼成する(ステップS38)。焼成後、光電子増倍管7を室温に戻した(ステップS39)後、排気管73を封止、切断することにより、ガラス管76から取り外す(ステップS40)。その後、性能試験を実施し(ステップS41)、性能を満たしている物を合格品として出荷する。
【0050】
ここでは、ヘッドオン型の光電子増倍管を例に説明したが、図11に示されるサイドオン型の光電子増倍管の場合にも本発明は好適に適用できる。また、増倍部を有しない光電管や増倍部としてマイクロチャネルプレートを有するイメージインテンシファイアやストリーク管においても同様の光電面を有する構成が適用できる。
【0051】
発明者らは、クロム酸セシウムとモリブデン酸セシウムの混合比の異なる種々のアルカリ金属発生材を用いて光電面を作成し、その性能を評価する比較実験を行ったので、その結果について報告する。
【0052】
なお、還元剤としてはSiを用い、酸化剤と還元剤の比率は2:1〜4:1とし、又高温多湿環境下の作業環境を想定して、温度30℃、湿度80%の恒温槽に24時間保管されたアルカリ金属発生剤を用いて製造した光電子増倍管の性能評価を行った。
【0053】
評価結果を表1、表2および図8〜10に示す。表1には、カソード感度(Sk:μA/μL)、カソード青感度(Skb:μA)、アノード感度(SP:μA/μL)、2種類の暗電流(Idb:nA)を示している。なお、各欄の上段は平均値、下段は標準偏差である。また、表2は、これらの特性と面ムラの状態から基準に合格したもののみを良品として求めた良品率を示している。図8、図9には、同じ混合比のサンプルについて陽極(アノード)感度をヒストグラムとして示した。図10は、混合比に対して陰極(カソード)感度の平均値をプロットしたグラフである。
【表1】
【表2】
【0054】
これらの結果から酸化剤中のモリブデン酸セシウムの比率が10%〜45%の場合に良品率が100%であり、良好な特性が得られることが確認された。さらに、酸化剤中のモリブデン酸セシウムの比率を20%〜40%とすると、感度の点でさらに有利であり、好ましいことが確認された。また、上記の比率範囲では、陰極感度Skが増大する反面、暗電流Idb1、Idb2は低下しており、S/N比の点でも有利である。また、製品によるばらつきも少なく安定した性能の製品が得られる。
【0055】
このように、クロム酸セシウム単体の場合に比べてモリブデン酸セシウムを混合した場合のほうが良好な製品が得られる理由については、以下のように考えられる。単体アルカリ塩を酸化剤とした場合、高周波加熱によってアルカリ源を収容した金属容器が加熱され、その熱がペレットへ伝わることで、ペレットは金属容器に接触する周辺部から中心に向かって加熱されるので、還元温度まで加熱されて反応を進行させるためには、過剰な加熱が必要となる。
【0056】
しかし、本発明のアルカリ金属発生材においては、金属容器が加熱された際に、還元温度の低いモリブデン酸セシウムの反応が先に進行し、ペレット内部より発生する反応熱により、ペレットは内部からも加熱されるため、外部より過剰な熱を供給することなくアルカリペレット全体を効率良く加熱して酸化還元反応を進行させることができる。その結果、過剰な加熱により放出される不要ガスの発生が抑制されるため高真空状態を維持することができる。また高周波加熱時の漏れ高周波によるダイノード電極の加熱による二次電子面形成材料の酸化、蒸発が防止されるなど、良好なアルカリ金属発生材としての機能を実現することができる。
【0057】
本発明の効果は、クロム酸セシウムの高い還元温度とモリブデン酸セシウムの低い還元温度の組み合わせ効果で有る。同様の効果は、他のセシウム酸化材においても考えられる。例えばクロム酸セシウムと、それより低い還元温度のタングステン酸セシウムとの組み合わせにおいても同様な効果があると類推できる。
【0058】
他方、モリブデン酸セシウムの混合比が高くなると光電面感度が低下する点については、モリブデン酸セシウムが潮解性を持ち、多量の水分を吸着していた場合、この水分が還元時の加熱によりペレット内部より放出され、還元されたアルカリ金属や光電面形成材料であるSb等の酸化を引き起こすためと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明にかかるアルカリ金属発生材の一実施形態の斜視図である。
【図2】図1のアルカリ金属発生材の製造工程を示すフローチャートである。
【図3】図1のアルカリ金属発生材を用いるアルカリ金属発生器を示す斜視図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】図3、図4のアルカリ金属発生器の製造工程を示すフローチャートである。
【図6】本発明にかかる光電子増倍管の一実施形態の断面図である。
【図7】図6の光電子増倍管の製造工程を示すフローチャートである。
【図8】同一混合比のアルカリ金属発生材を用いた場合に製作される光電面サンプルの陽極感度についてのヒストグラムである。
【図9】同一混合比のアルカリ金属発生材を用いた場合に製作される光電面サンプルの陽極感度についての別のヒストグラムである。
【図10】混合比に対する陰極感度(平均値)を示したグラフである。
【図11】本発明にかかる光電子増倍管の別の実施形態の断面図である。
【符号の説明】
【0060】
1、1A…アルカリ金属発生材、2、4…アルカリ金属発生器、7…光電子増倍管、20、20A…ケース、21…凹部、22…収容部材、23…放出口、24…蓋部材、25…高周波コイル、26…高周波電源、72…ガラス側管、72a、72b…開口部、73…排気管、75…ステムピン、76、77…ガラス管、78…ステム板、A7…陽極、C7…光電面、C71…基板、C72…光電子放出材料層、D7…電子増倍部、D71〜D79…ダイノード、e1…光電子、e2…二次電子、E7…集束電極、FC71…受光面、FC72…反対面、FD7…二次電子放出面、L1…光。
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射光に対応して光電子を放出する光電子放出面の形成に用いられるアルカリ金属発生材、および、形成時に用いられるアルカリ金属発生器、このアルカリ金属発生材を用いて製造される光電子放出面、さらには、この光電子放出面を備える光電子増倍管に関する。
【背景技術】
【0002】
光電子増倍管、光電管、イメージインテンシファイア、ストリーク管等の主要部品として入射光に対応して電子(光電子)を放出する光電子放出面(光電面)がある。光電面としては、透明基板上に形成される、いわゆる透過型光電面や、金属基板上に形成される、いわゆる反射型光電面が知られている。現在、実用化されている光電面の多くは、基板上にアルカリ金属を含む光電子放出材料を形成したものであり、光電子放出材料としては、例えば、CsやSbの金属間化合物や化合物半導体を用いている。
【0003】
こうした光電子放出材料は、所定の真空度(10−7〜10−2Pa程度)と温度に保持した雰囲気中で、アルカリ金属蒸気を発生させ、予め基板上に形成されている部材と反応させることで形成する手法が知られている。例えば、基板上にSbの蒸着膜を形成し、Cs蒸気を発生させて、蒸着膜のSbと反応させることにより、金属間化合物層を形成する手法が知られている。
【0004】
アルカリ金属自体は大気中では非常に不安定な物質であるため、アルカリ金属蒸気を発生させるために、酸化還元反応によってアルカリ金属を生成可能な酸化剤と還元剤を組み合わせた材料をアルカリ金属の供給源として用いている。この供給源をアルカリ金属発生材と称している。
【0005】
特許文献1に記載の技術はこの種のアルカリ金属発生材に関するものであり、モリブデン酸塩をアルカリ金属発生材として用いる技術が開示されている。モリブデン酸塩は、従来から用いられているクロム酸塩に比べて酸化力が弱いため、クロム酸塩を用いた場合に比べて還元剤との酸化還元反応が緩やかに進行する。このため、進行が急速に進むことがなく、還元温度を管理することで反応速度を制御するのが容易になる、と記載されている。
【特許文献1】国際公開第2004/066338号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、モリブデン酸塩のうちでもアルカリ金属発生材として良好な性質を有するモリブデン酸セシウムは単体では潮解性が高いため、製造工程における管理が煩雑になるという問題点がある。また、モリブデン酸塩をアルカリ金属発生材として形成した光電面においては、クロム酸塩を用いて形成した光電面に比較してその感度が若干低くなるという問題点がある。
【0007】
そこで本発明は、製造工程における管理負担が軽減されるとともに、高感度の光電面を形成することを可能とするアルカリ金属発生材、さらには、このアルカリ金属発生材を用いたアルカリ金属発生器、それにより形成される光電面、それを用いた光電子増倍管を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明にかかるアルカリ金属発生材は、入射光に対応して光電子を放出する光電子放出面の形成に使用されるアルカリ金属の供給源となるアルカリ金属発生材であって、モリブデン酸セシウムとクロム酸セシウムとを混合してなることを特徴とするものである。
【0009】
本発明者らは、最適なアルカリ金属源について調査を行う過程で、モリブデン酸セシウムとクロム酸セシウムを混合することで、モリブデン酸セシウムを単体で利用する場合に問題となる潮解性による管理上の問題を克服できるとともに、クロム酸セシウムを単体で利用する場合に問題となる還元温度の上昇と反応速度の制御の困難性という問題を克服できる上、それぞれを単体で使用する場合に比較して光電感度の点でも向上が見込まれることを見出した。本発明は、この知見に基づくものである。
【0010】
ここで、クロム酸セシウムに対するモリブデン酸セシウムの混合比は好ましくは10%〜45%、より好ましくは20%〜40%であるとよい。混合比が10%〜45%の場合には、それぞれを単体で使用する場合よりも十分に高い光電感度を実現することができる。20%〜40%とすると、特に良好な光電感度を実現できる。
【0011】
また、本発明にかかるアルカリ金属発生器は、入射光に対応して光電子を放出する光電子放出面の形成に使用されるアルカリ金属を発生させるアルカリ金属発生器であって、内部に収容空間を備え、収容空間と外部とを連通する放出口を備えるケースを有し、上述した本発明にかかるアルカリ金属発生材をこの収容空間内に収容して、アルカリ金属発生材から発生したアルカリ蒸気を放出口を通じて放出することを特徴とするものである。
【0012】
そして、本発明にかかる光電子放出面は、入射光に対応して光電子を放出する光電子放出面であって、上述した本発明にかかるアルカリ金属発生材から発生したアルカリ蒸気により活性されていることを特徴とするものである。
【0013】
一方、本発明にかかる光電子増倍管は、上述した本発明にかかる光電子放出面を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかるアルカリ金属発生器において本発明にかかるアルカリ金属発生材を用いれば、光電感度に優れた本発明にかかる光電子放出面を製造できるとともに、この光電子放出面を備えた優れた特性の光電子増倍管を得ることができる。この際、アルカリ金属発生材の管理が容易であるとともに、製造時の制御が容易であるため、製品製造時の歩留りが向上するという効果も得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の参照番号を附し、重複する説明は省略する。
【0016】
図1に本発明にかかるアルカリ金属発生材の一実施形態の斜視図を示す。このアルカリ金属発生材1は、後述する本発明にかかる光電面の形成に用いられるアルカリ金属の供給源となる。アルカリ金属発生材1は、図に示されるように円盤状のペレットに成型されている。このようなペレットとすることにより、アルカリ金属発生材1の取り扱い性が向上し、後述する本発明にかかるアルカリ金属発生器に収容して光電面等を製造する際の作業が容易になる。
【0017】
このアルカリ金属発生材1は、少なくとも酸化剤と還元剤を含有している。酸化剤には、アルカリ金属イオンをカウンターカチオンとするアルカリ金属塩が用いられる。本発明においては、クロム酸セシウム(Cs2CrO4)とモリブデン酸セシウム(Cs2MoO4)を所定の割合で混合している。ここで、クロム酸セシウムとモリブデン酸セシウムの総質量に対するモリブデン酸セシウムの重量、つまり混合比は10%〜45%であることが好ましく、より好ましくは、20%〜40%であることが好ましい。
【0018】
モリブデン酸セシウムは、潮解性が高く、単体では水分を吸収して劣化しやすい。これをクロム酸セシウムと混合することで、その保存性、取扱性を向上させ、製品の劣化を抑制する。また、後述するように、両者を上述の混合比で混合することにより、単体で用いる場合に比較して良好な性能を有する光電面を作成することができる。
【0019】
アルカリ金属発生材1の還元剤としては、所定温度において上述の酸化剤と酸化還元反応を開始し、アルカリ金属イオンを還元する性質の化合物が用いられる。この種の化合物としては公知の各種化合物を用いることが可能であるが、Si、Zr、Al、W、Tiを含む群から1種ないし複数種を任意に組み合わせて使用するとよい。以下の説明では、Siを還元剤として使用した場合を例に説明する。Siは還元剤として使用した場合に、約900℃でアルカリ発生量が飽和する特性を有する。このため、他の還元剤に比べて加熱温度に対するアルカリ発生量のコントロールが容易であり、短時間での反応が可能となるため、量産化に適している。また、細かい温度コントロールが難しい高周波加熱反応方式を利用する場合の還元剤としても適している。
【0020】
アルカリ金属発生材1中の酸化剤と還元剤を反応させるためには、所定の真空度に調節された雰囲気(雰囲気中の残留気体の分圧が10−6Pa〜10−1Pa、より好ましくは10−6Pa〜10−3Paである雰囲気)中で所定の温度まで加熱することで反応を実行させる。
【0021】
次に、このアルカリ金属発生材1の製造方法について説明する。図2は、製造工程を説明するフローチャートである。最初に、酸化剤となるモリブデン酸セシウムとクロム酸セシウム、還元剤となるSiをそれぞれ準備する(ステップS1〜S3)。各化合物はそれぞれ99.9%以上の高純度の化合物を用い、それを微粒子に粉砕しておく。予め粉砕したものを保管庫に保管しておいてもよい。
【0022】
次に、各化合物を精密電子秤等を用いて計量する(ステップS4〜S6)。計量後、各化合物を攪拌機へ投入して十分に攪拌する(ステップS7)。攪拌後製造する光電面の形状に応じた必要量を計量する。計量した後に圧縮ペレット成形機に導入し、直径2〜5mm、厚さ1〜3mmの圧縮ペレットを作成する(ステップS8)。ペレットの大きさは、製造する光電面の性状、つまり、必要なアルカリ金属量に応じて設定される。このようにして図1に示されるアルカリ金属発生材1を製造することができる。
【0023】
なお、本発明にかかるアルカリ金属発生材1は、上述したような円盤状のペレットではなく、他の形状(例えば、細長い円柱状や角柱状、平板状)のペレットとして形成してもよい。また、一旦ペレット状に形成したものを砕いて粒状の状態で用いてもよく、攪拌後の粉末をそのまま用いることも可能である。ただし、ペレットの場合は、粉末や粒体の場合に比較して取扱が容易で、使用時に計量を行う手間が省けるという利点を有している。以下の説明では、ペレットの場合に限って説明を行うが、粉末や粒体を使用する場合にも応用可能である。
【0024】
図3は、このアルカリ金属発生材1を用いるアルカリ金属発生器を示す斜視図であり、図4は、そのIV−IV線断面図である。このアルカリ金属発生器2は、金属製(例えば、ニッケル等)のケース20内にペレットまたは粉末状のアルカリ金属発生材1を収容したものである。
【0025】
ケース20は、凹部21が中央に設けられ、その上端の周囲に環状のフランジ部分を有する収容部材22と、収容部材22のフランジ部分にその縁部分が溶接される円板状の蓋部材24とからなる。この溶接は、例えば、通電による抵抗加熱によって行えばよい。蓋部材24と収容部材22によって囲まれた凹部21がアルカリ金属発生材1のペレットを収容する収容空間となる。この収容空間はペレットを収容すべく、ペレットよりも若干大きく形成されており、好ましくは、その内形状がペレットの外形状と略相似形であるとよい。これにより、収容したアルカリ金属発生材1が外へ漏れ出るのを防いでいる。
【0026】
なお、収容部材22のフランジ部と蓋部材24の縁部分には、一部未溶接部分が存在し、この未溶接部分が収容空間と外部とを連通して、アルカリ金属発生材1から放出されるアルカリ金属をアルカリ金属発生器2の外部へと放出する放出口23として機能する。
【0027】
このアルカリ金属発生器2は、加熱装置を備えており、当該加熱装置は、ケース20を光電子増倍管7内に組み入れられた状態の時、光電子増倍管外より高周波コイル25と、このコイル25に高周波電流を供給する高周波電源26からなる装置により高周波電磁波を照射しケース20内に渦電流を発生させる事により、加熱することができる。コイル25に周波数が1MHzから300MHzの高周波電流を供給することで、その高周波電流により、コイル25により導電体(アルカリ金属発生器)に渦電流を流す。この場合には、アルカリ金属発生器2およびその内部のアルカリ金属発生材1を直接電磁波の照射により加熱する。更にアルカリ金属発生器2のケース20は環状のフランジ部分を有する収容部材22と円板状の蓋部材24の一対から成る金属ケースであるため、高周波コイル25から発生した高周波磁波を効率よく吸収し、金属ケース内に渦電流を発生させる直接加熱であり、導入線等の熱損失が少なく、加熱効率が高いことなどから、特に上述したような低圧状態及び真空状態での加熱に適している。
【0028】
次に、このアルカリ金属発生器2の製造方法を説明する。図5は、このアルカリ金属発生器の製造工程を示すフローチャートである。最初に、真空材料用ニッケル金属を用意し、これを定められた形状にプレス加工することで、凹部21を収容する収容部材22と蓋部材24とを製造する(ステップS11)。次に、加工した両部材を溶剤により洗浄して脱脂・洗浄処理を行う(ステップS12)。ステップS11、S12と並行して所定形状のペレット状のアルカリ金属発生材1を準備する(ステップS13)。そして、準備したアルカリ金属発生材1を収容部材22の凹部21内に納め、蓋部材24で覆う(ステップS14)。次に、必要個所を溶接する(ステップS15)ことで、図3、図4に示されるアルカリ金属発生器2が得られる。
【0029】
続いて、本発明にかかる光電子増倍管について説明する。図6は、本発明にかかる光電子増倍管の一実施形態の断面図である。この光電子増倍管7は、透過型光電面を有するヘッドオン型の光電子増倍管である。より、具体的には、ラインフォーカス型の電子増倍部を有している。光電子増倍管7は、主要構成要素である光電面C7と、電子増倍部D7と、集束電極E7と、陽極A7とアルカリ発生器2がガラス側管72内に収容された構成を有する。
【0030】
光電面C7は、ガラス等の光透過性の基板(面板)C71上に、入射光L1に対応して光電子e1を放出する膜状の光電子放出材料(例えば、金属間化合物や化合物半導体)からなる光電子放出材料層C72を設けたものである。
【0031】
この光電子放出材料層C72には、上述したアルカリ金属発生材1から発せられたアルカリ金属が含まれている。つまり、光電子放出材料層C72としては、例えば、Sb−Cs,Sb−Rb−Cs、Sb−K−Cs、Sb−Na−K−Cs、GaAs(Cs)、InGaAs(Cs)、InP/InGaAs(Cs)、InP/InGaAsP(Cs)等が挙げられる。ここで、上記表記における(Cs)とは、Csによって活性化された材料であることを示している。
【0032】
この光電子放出材料層C72は、後述するようにアンチモンや化合物半導体などのアルカリ金属と反応する光電子放出材料の構成材料を基板C71の裏面(光電子増倍管7へ搭載した際に管内へ向く側の面)FC72上に形成し、続いて、アルカリ金属の蒸気と反応させることで得られる。
【0033】
側管72は、例えば、コバールガラス、UVガラスなどからなる円筒状の側管である。ここでは、ガラス製としたが、コバール金属、ステンレス等の金属製材料を用いてもよい。上述した光電面C7は、側管72の一方(図では上側)の開口部72aに受光面FC71を外側へと向けて融着固定されている。
【0034】
側管72の他方の開口部72bには、ガラス製(例えば、コバールガラス、UVガラスなど)のステム板78が溶接固定されている。このステム板78も側管72と同様にコバール金属やステンレス等の金属材料で形成してもよい。側管72と光電面C7とステム板78によって密封容器が形成されている。
【0035】
ステム板78の中央には側管72と反対側へ伸びる筒状の排気管73が固定されている。この排気管73は、光電子増倍管7の製造工程において、側管72と光電面C7とステム板78によって構成される密封容器内部の空気を真空ポンプによって排出し、真空状態とする工程で使用され、その後封止されることで光電子増倍管7内は真空状態が維持される。
【0036】
電子増倍部D7は、それぞれが複数の板状のダイノードを有する第1ダイノードD71〜第9ダイノードD79から構成されている。第1ダイノードD71〜第9ダイノードD79のそれぞれは、基板と、その上に配置されており、入射した光電子e1を利用して二次電子e2を放出する二次電子放出面FD7を有する膜状の二次電子放出材料からなる層とから構成されている。以下、二次電子放出材料からなる層を二次電子放出材料層と称する。
【0037】
これらの第1ダイノードD71〜第9ダイノードD79のそれぞれは、例えば、密封容器を貫通するように設けられた金属製(例えば、コバール金属製)のステムピン75によって密封容器内に支持されており、各ステムピン75の当該支持側の先端は、対応する第1ダイノードD71〜第9ダイノードD79のそれぞれと電気的に接続されている(管内におけるステムピン75の図示は省略している)。他端は、ステム板78に設けられたピン孔を貫通して管外に露出している。各ピン孔はハーメチックシールとして利用されるタブレット(例えば、コバールガラス製)が充填されることで、各ステムピン75は、タブレットを介してステム板78に固定される。各ダイノードD71〜D79の二次電子放出材料層としては、上述した光電面の光電子放出材料層と同様の素材を用いることができる。
【0038】
電子増倍部D7とステム板78との間には、専用のステムピン75に支持された陽極A7が配置されている。一方、電子増倍部D7と光電面C7との間には集束電極E7が配置されている。この集束電極E7の中央には、集束された光電子e1流を電子増倍部に向けて導くための開口部が形成されている。
【0039】
各ステムピン75は、光電子増倍管7の外側へ露出した部分で電圧印加部に電気的に接続されることにより、第1ダイノードD71〜第9ダイノードD79と陽極A7には所定の電圧が供給される。また、光電面C7と集束電極E7にもそれぞれ所定の電圧が供給されている。具体的には、光電面C7と集束電極E7は同じ電位に設定されており、第1ダイノードD71〜第9ダイノードD79と陽極A7は、図で上段から順に高電位となるよう、つまり、光電面C7および集束電極E7に近いほど高電位となるように設定されている。
【0040】
このように電圧を設定することで、光電面C7の受光面FC71に光L1が入射すると、反対面FC72から光電子e1が放出される。放出された光電子e1は、集束電極E7により、電子増倍部D7へと導かれ、第1ダイノードD71〜第9ダイノードD79により多段増倍されて、陽極A7へと入射し、光電子e1の数、つまり、光L1の光強度に応じた電流が出力されることになる。
【0041】
次に、この光電子増倍管7の製造方法について説明する。この製造方法は、本発明にかかるアルカリ金属発生材、アルカリ金属発生器を用いて本発明にかかる光電面C7および第1ダイノードD71〜第9ダイノードD79を製造すること以外の条件および手順は特に以下の記載に限定されるものではなく、公知の技術により製造することが可能である。
【0042】
図7は、この光電子増倍管7の製造工程を示すフローチャートである。最初に側管72となるガラス管と、基板C71となるガラス基板を用意する(ステップS21)。このとき、基板C71上の光電子放出材料層C72は、アルカリ活性化が行われていない未完成な状態にある。次に、両者を加熱して一体化する(ステップS22)。
【0043】
続いて、ステム板78のピン孔にステムピン75を貫通させてタブレットにより固定する(ステップS23)。ここで、ステム板78の中央には、筒状の排気管73が接続されている。排気管73は、両端が開放された状態にある。そして、対応するステムピン75上に、陽極A7、集束電極E7、第1ダイノードD71〜第9ダイノードD79のそれぞれを組み付けることで、陽極A7、集束電極E7と電子増倍部D7の組立を行う。さらに高周波電磁波の吸収しやすい位置に予め前工程で製作されたアルカリ金属発生器2を配置して固定する(ステップS24)。例えば、ステムピン75等に溶接して固定するとよい。この段階では、各ダイノードD71〜D79を形成する基板上の二次電子面はアルカリ活性化が行われていない未完成な状態にある。組み立てられた電子増倍部D7等(組立体)を側管72の開口部72b側から挿入し(ステップS25)、ステム板78と側管72とを加熱一体化することで密封容器を形成する(ステップS26)。ただし、上述した排気管73のみを通じて管内外は連通している。
【0044】
なお、光電子増倍管7の光電面C7および第1ダイノードD71〜第9ダイノードD79の形成に用いるアルカリ金属発生器2は図4と同様である。ステップS26を終了した光電子増倍管7は、排気管73を介して、図示していない真空ポンプに接続されたガラス管へと接続される(ステップS27)。このとき、真空ポンプに接続された系全体が気密状態とされる。
【0045】
最初に、排気系を加熱して十分な脱ガスを行い高真空になった後、光電子増倍管7自体も加熱することで、加熱脱ガスを行う(ステップS28)。排気系が十分な高真空になった後、光電子増倍管7を一旦室温まで冷却する(ステップS29)。そして、系内に配置した図示していないマンガンコイルに通電することで、窓材にマンガンを蒸着する(ステップS30)。
【0046】
蒸着後、系内に高純度酸素を導入する(ステップS31)。このときの酸素ガスの圧力は、数Pa〜数十Pa程度とする。この状態で光電面C7に所定の直流または交流電圧を印加することで、蒸着されたマンガンを酸化して透明化する(ステップS32)。透明化後、真空ポンプを作動させることで、系内の酸素ガスを排出して、系内を再び高真空化する(ステップS33)。
【0047】
所定の真空度に到達したら系内に配置した図示していないアンチモンコイルに通電することで、酸化マンガン上にアンチモンを蒸着する(ステップS34)。次に、光電子増倍管7を電気炉等により150℃〜200℃に加熱する(ステップS35)。その後、光電子増倍管7内に配置されているアルカリ金属発生器4を高周波加熱する(ステップS36)。内部のペレット1Aが十分に加熱されると、酸化剤であるCs2CrO4、Cs2MoO4と還元剤であるSiとの間で以下の酸化還元反応が進行する。
4Cs2CrO4+5Si→5SiO2+8Cs+2Cr2O3 …(1)
4Cs2MoO4+5Si→5SiO2+8Cs+2Mo2O3 …(2)
【0048】
このとき、同じCs+をカウンターカチオンとしていてもCs2MoO4のほうがCs2CrO4よりも酸化力が弱いので、還元剤との酸化還元反応は反応(2)のほうが反応(1)よりも緩やかに進行する。このため、酸化剤としてCs2CrO4を単体で用いる(反応(1)のみの)場合に比べてペレット全体の反応速度を制御することが容易になり、アルカリ金属蒸気を安定的に発生させることができる。
【0049】
アルカリ金属の還元が十分に行われた(十分な量のアルカリ金属蒸気が発生した)ところで、高周波加熱を停止し(ステップS37)、光電子増倍管7を電気炉等によって120℃〜180℃に加熱して、30分〜2時間焼成する(ステップS38)。焼成後、光電子増倍管7を室温に戻した(ステップS39)後、排気管73を封止、切断することにより、ガラス管76から取り外す(ステップS40)。その後、性能試験を実施し(ステップS41)、性能を満たしている物を合格品として出荷する。
【0050】
ここでは、ヘッドオン型の光電子増倍管を例に説明したが、図11に示されるサイドオン型の光電子増倍管の場合にも本発明は好適に適用できる。また、増倍部を有しない光電管や増倍部としてマイクロチャネルプレートを有するイメージインテンシファイアやストリーク管においても同様の光電面を有する構成が適用できる。
【0051】
発明者らは、クロム酸セシウムとモリブデン酸セシウムの混合比の異なる種々のアルカリ金属発生材を用いて光電面を作成し、その性能を評価する比較実験を行ったので、その結果について報告する。
【0052】
なお、還元剤としてはSiを用い、酸化剤と還元剤の比率は2:1〜4:1とし、又高温多湿環境下の作業環境を想定して、温度30℃、湿度80%の恒温槽に24時間保管されたアルカリ金属発生剤を用いて製造した光電子増倍管の性能評価を行った。
【0053】
評価結果を表1、表2および図8〜10に示す。表1には、カソード感度(Sk:μA/μL)、カソード青感度(Skb:μA)、アノード感度(SP:μA/μL)、2種類の暗電流(Idb:nA)を示している。なお、各欄の上段は平均値、下段は標準偏差である。また、表2は、これらの特性と面ムラの状態から基準に合格したもののみを良品として求めた良品率を示している。図8、図9には、同じ混合比のサンプルについて陽極(アノード)感度をヒストグラムとして示した。図10は、混合比に対して陰極(カソード)感度の平均値をプロットしたグラフである。
【表1】
【表2】
【0054】
これらの結果から酸化剤中のモリブデン酸セシウムの比率が10%〜45%の場合に良品率が100%であり、良好な特性が得られることが確認された。さらに、酸化剤中のモリブデン酸セシウムの比率を20%〜40%とすると、感度の点でさらに有利であり、好ましいことが確認された。また、上記の比率範囲では、陰極感度Skが増大する反面、暗電流Idb1、Idb2は低下しており、S/N比の点でも有利である。また、製品によるばらつきも少なく安定した性能の製品が得られる。
【0055】
このように、クロム酸セシウム単体の場合に比べてモリブデン酸セシウムを混合した場合のほうが良好な製品が得られる理由については、以下のように考えられる。単体アルカリ塩を酸化剤とした場合、高周波加熱によってアルカリ源を収容した金属容器が加熱され、その熱がペレットへ伝わることで、ペレットは金属容器に接触する周辺部から中心に向かって加熱されるので、還元温度まで加熱されて反応を進行させるためには、過剰な加熱が必要となる。
【0056】
しかし、本発明のアルカリ金属発生材においては、金属容器が加熱された際に、還元温度の低いモリブデン酸セシウムの反応が先に進行し、ペレット内部より発生する反応熱により、ペレットは内部からも加熱されるため、外部より過剰な熱を供給することなくアルカリペレット全体を効率良く加熱して酸化還元反応を進行させることができる。その結果、過剰な加熱により放出される不要ガスの発生が抑制されるため高真空状態を維持することができる。また高周波加熱時の漏れ高周波によるダイノード電極の加熱による二次電子面形成材料の酸化、蒸発が防止されるなど、良好なアルカリ金属発生材としての機能を実現することができる。
【0057】
本発明の効果は、クロム酸セシウムの高い還元温度とモリブデン酸セシウムの低い還元温度の組み合わせ効果で有る。同様の効果は、他のセシウム酸化材においても考えられる。例えばクロム酸セシウムと、それより低い還元温度のタングステン酸セシウムとの組み合わせにおいても同様な効果があると類推できる。
【0058】
他方、モリブデン酸セシウムの混合比が高くなると光電面感度が低下する点については、モリブデン酸セシウムが潮解性を持ち、多量の水分を吸着していた場合、この水分が還元時の加熱によりペレット内部より放出され、還元されたアルカリ金属や光電面形成材料であるSb等の酸化を引き起こすためと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明にかかるアルカリ金属発生材の一実施形態の斜視図である。
【図2】図1のアルカリ金属発生材の製造工程を示すフローチャートである。
【図3】図1のアルカリ金属発生材を用いるアルカリ金属発生器を示す斜視図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】図3、図4のアルカリ金属発生器の製造工程を示すフローチャートである。
【図6】本発明にかかる光電子増倍管の一実施形態の断面図である。
【図7】図6の光電子増倍管の製造工程を示すフローチャートである。
【図8】同一混合比のアルカリ金属発生材を用いた場合に製作される光電面サンプルの陽極感度についてのヒストグラムである。
【図9】同一混合比のアルカリ金属発生材を用いた場合に製作される光電面サンプルの陽極感度についての別のヒストグラムである。
【図10】混合比に対する陰極感度(平均値)を示したグラフである。
【図11】本発明にかかる光電子増倍管の別の実施形態の断面図である。
【符号の説明】
【0060】
1、1A…アルカリ金属発生材、2、4…アルカリ金属発生器、7…光電子増倍管、20、20A…ケース、21…凹部、22…収容部材、23…放出口、24…蓋部材、25…高周波コイル、26…高周波電源、72…ガラス側管、72a、72b…開口部、73…排気管、75…ステムピン、76、77…ガラス管、78…ステム板、A7…陽極、C7…光電面、C71…基板、C72…光電子放出材料層、D7…電子増倍部、D71〜D79…ダイノード、e1…光電子、e2…二次電子、E7…集束電極、FC71…受光面、FC72…反対面、FD7…二次電子放出面、L1…光。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光に対応して光電子を放出する光電子放出面の形成に使用されるアルカリ金属の供給源となるアルカリ金属発生材であって、
モリブデン酸セシウムとクロム酸セシウムとを混合した酸化剤を用いていることを特徴とするアルカリ金属発生材。
【請求項2】
前記酸化剤中のモリブデン酸セシウムの混合比は10%〜45%であることを特徴とする請求項1記載のアルカリ金属発生材。
【請求項3】
前記酸化剤中のモリブデン酸セシウムの混合比は20%〜40%であることを特徴とする請求項2記載のアルカリ金属発生材。
【請求項4】
入射光に対応して光電子を放出する光電子放出面の形成に使用されるアルカリ金属を発生させるアルカリ金属発生器であって、
内部に収容空間を備え、前記収容空間と外部とを連通する放出口を備えるケースを有し、
請求項1〜3のいずれか1項に記載のアルカリ金属発生材を前記収容空間内に収容して、前記アルカリ金属発生材から発生したアルカリ蒸気を前記放出口を通じて放出することを特徴とするアルカリ金属発生器。
【請求項5】
入射光に対応して光電子を放出する光電子放出面であって、
請求項1〜4のいずれか1項に記載のアルカリ金属発生材から発生したアルカリ蒸気により活性されていることを特徴とする光電子放出面。
【請求項6】
請求項5記載の光電子放出面を備えることを特徴とする光電子増倍管。
【請求項1】
入射光に対応して光電子を放出する光電子放出面の形成に使用されるアルカリ金属の供給源となるアルカリ金属発生材であって、
モリブデン酸セシウムとクロム酸セシウムとを混合した酸化剤を用いていることを特徴とするアルカリ金属発生材。
【請求項2】
前記酸化剤中のモリブデン酸セシウムの混合比は10%〜45%であることを特徴とする請求項1記載のアルカリ金属発生材。
【請求項3】
前記酸化剤中のモリブデン酸セシウムの混合比は20%〜40%であることを特徴とする請求項2記載のアルカリ金属発生材。
【請求項4】
入射光に対応して光電子を放出する光電子放出面の形成に使用されるアルカリ金属を発生させるアルカリ金属発生器であって、
内部に収容空間を備え、前記収容空間と外部とを連通する放出口を備えるケースを有し、
請求項1〜3のいずれか1項に記載のアルカリ金属発生材を前記収容空間内に収容して、前記アルカリ金属発生材から発生したアルカリ蒸気を前記放出口を通じて放出することを特徴とするアルカリ金属発生器。
【請求項5】
入射光に対応して光電子を放出する光電子放出面であって、
請求項1〜4のいずれか1項に記載のアルカリ金属発生材から発生したアルカリ蒸気により活性されていることを特徴とする光電子放出面。
【請求項6】
請求項5記載の光電子放出面を備えることを特徴とする光電子増倍管。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−234428(P2007−234428A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−55377(P2006−55377)
【出願日】平成18年3月1日(2006.3.1)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月1日(2006.3.1)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
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