説明

アルカリ飛灰の処理方法およびその装置

【課題】 アルカリ飛灰に含まれる重金属に対して、排ガス中の炭酸ガスを利用して重金属固定剤の作用が効果的に発揮できるように、アルカリ飛灰のpHを調整し、重金属の溶出防止効果を高める方法およびその装置を提供する。
【解決手段】 アルカリ飛灰に対して水および重金属固定剤を添加・混練させる工程と、一般ごみや産業廃棄物の焼却炉または溶融炉と連通する集塵機14下流の誘引ファン15から排出される排ガスの一部を熱交換器8で冷却し、冷却後の排ガスをミキサー4内の混練物に貫流させることにより混練物のpHを調整する工程とを含む方法と、この方法を実施するのに適した装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般ごみや産業廃棄物の焼却炉あるいは溶融炉などから排出されるアルカリ飛灰の処理方法とこの方法を実施するのに適した装置とに関し、特に該飛灰中の重金属を重金属固定剤により溶出防止処理するに際し、前記焼却炉あるいは溶融炉から排出される排ガス中の炭酸ガスを利用してアルカリ飛灰のpHを調整して、重金属固定剤による効果を高める方法と、この方法を実施するのに適した装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
一般ごみや産業廃棄物を、焼却炉で焼却処理する過程、あるいは溶融炉で溶融処理する過程において、これらの焼却炉や溶融炉と連通する集塵機では、アルカリ粉末を添加して酸性ガスを中和する処理や、煤塵を除去する処理が行われている。
このような処理がなされている集塵機から排出されるダストは、未反応のアルカリ成分を含むため強アルカリ性を示すものが多く、いわゆるアルカリ飛灰となっている場合が多い。
また、このアルカリ飛灰は、鉛、カドミウムなどの人体に有害な重金属を含むため、重金属固定剤による溶出防止処理を行った後、埋立処分に付されている。
【0003】
しかし、アルカリ飛灰に含まれる重金属は、飛灰のアルカリ度合いが高いほど溶出し易くなる傾向があり、アルカリ度合いの高い飛灰では、重金属固定剤の添加量が増大し、処理費の高騰を招いている。
【0004】
このような問題に対し、本発明者らは、特開2002−263609公報において、工業的生産ベースに対応できるアルカリ飛灰の処理技術を提案している。すなわち、この技術は、一般ごみや産業廃棄物を焼却する焼却炉と連通する集塵機から排出される排ガスを所要温度に冷却することによって生じる結露水の一部をアルカリ飛灰に添加してアルカリ飛灰と結露水とを混合するとともに、前記所要温度に冷却した排ガスの一部を前記アルカリ飛灰と結露水との混合物に貫流させ、さらに前記アルカリ飛灰と結露水との混合物に重金属固定剤を添加して混練することによりアルカリ飛灰を処理する技術である。
【0005】
しかし、この技術では、焼却炉からの排ガスは集塵機の後(上流)側から集塵機内に導入するため、集塵機の下流に設置する誘引ファンの吸引圧は大きく、排ガスをアルカリ飛灰に貫流させるためのブロワーは、この吸引圧に対抗できる仕様能力の大きいものを必要とし、またブロワー停止時には、誘引ファンの吸引により排ガスの流れが逆流する懸念もある。
【0006】
また、この技術では、排ガスを冷却して生じる結露水をアルカリ飛灰に添加し、この混合物中に重金属固定剤を添加して排ガス中の重金属を固定するが、この結露水のみでは、重金属固定剤をアルカリ飛灰と混練するための水量として不十分な場合がある。
具体的には、例えば、アルカリ飛灰を200kg/hrで処理する設備においては、6.0m/minの排ガスならびに飛灰量に対して、25〜35重量部(50〜70L/hr)の水量が必要であることが本発明者等により確認されており、6.0m/minの排ガスから発生する結露水量は約40L/hrとなり、10〜30L/hr量の水が不足する。
【0007】
さらに、集塵機から排出されるアルカリ飛灰は、スクリューフィーダによって搬送し、貯留ホッパを経由して、結露水と混合するためのミキサーへ投入するが、集塵機からの該飛灰の排出量に変動があったり、貯留槽内でアルカリ飛灰の棚吊り現象が発生したりなどにより、該ミキサーへの1バッチ毎の正確な量での投入が困難となることがある。
【特許文献1】特開2002−263609公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような先提案の技術における懸念を解決し、アルカリ飛灰の重金属溶出防止処理を、工業的規模で可能とする方法と、この方法を実施するのに適した装置とを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明のアルカリ飛灰の処理方法は、アルカリ飛灰を、該飛灰に含まれる重金属を重金属固定剤により溶出防止して処理する方法であって、
アルカリ飛灰を、該飛灰の貯留槽から切出し計量してミキサー内に投入し、該ミキサー内に水および重金属固定剤を添加し、混練する工程と、
一般ごみおよび/または産業廃棄物の焼却炉および/または溶融炉と連通する集塵機の下流に設置される誘引ファンから排出される排ガスの一部を熱交換器で冷却し、該冷却排ガスを前記ミキサー内の混練物に貫流させて該混練物のpHを調整する工程と
を含んでなることを特徴とし、
前記ミキサー内に添加する水として、熱交換器による排ガスの冷却時に該排ガスから得られる結露水または、該結露水と工業用水とを使用することをも特徴とする。
【0010】
また、本発明のアルカリ飛灰の処理装置は、一般ごみおよび/または産業廃棄物の焼却炉および/または溶融炉と連通する集塵機から排出されるアルカリ飛灰を処理する装置であって、
前記アルカリ飛灰を貯留する貯留槽と、
前記貯留槽からアルカリ飛灰を切出し計量する装置と、
計量されたアルカリ飛灰と水と重金属固定剤とを混練するミキサーと、
前記水を前記ミキサーに供給する水注入装置と、
前記ミキサーに前記重金属固定剤を供給する薬剤注入装置と、
前記集塵機の下流に設置された誘引ファンから排出される排ガスの一部を冷却するための熱交換器と、
冷却後の排ガスをミキサー内の混練物に貫流するためのブロワーと、
前記排ガスの風量を検知するための流量計と、
前記ミキサー上・下流の排ガスの炭酸ガス濃度を検知するためのCO2計と、
排ガスの風量およびミキサー前後のCO2濃度を検知して前記ブロワーおよび前記ミキサーの運転を制御する装置と
を具備することを特徴とし、
前記ミキサーの排出シュート部の4面にエアーパージ機構を装備することをも特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、ミキサー内の混練物に貫流するための集塵機からの排ガスを、該集塵機の下流に設置した誘引ファンの出口から吸引することにより、該排ガスを該混練物に貫流するためのブロワーとして先提案の技術よりも低い仕様能力のブロワーを使用することで充分である。
また、ミキサーの上流側で、アルカリ飛灰の貯留槽と、切出し計量装置とを組合せて使用することにより、集塵機から排出されるアルカリ飛灰量の変動や、貯留槽内でのアルカリ飛灰の棚吊り現象の発生などによる、該飛灰のミキサーへの供給量不足に対して、安定した飛灰の供給が実現できる。
さらに、結露水が不足する際には、工業用水を補水することにより、必要量の水を安定して供給することができる。
【0012】
以上の効果によって、本発明では、先提案の技術に比べて、より簡素化したシステムとなり、しかもアルカリ飛灰に含まれる重金属の溶出防止を工業的生産ベースでより安定して処理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を適応したアルカリ飛灰の処理設備の一実施例について、図1に基づき詳細に説明する。
本処理設備は、大きくは、重金属固定剤によるアルカリ飛灰の重金属溶出防止工程と、排ガスによるアルカリ飛灰のpH調整工程とから構成される。
【0014】
このうち、アルカリ飛灰の重金属溶出防止工程は、図1に示すように、焼却炉または溶融炉(図示省略)と連通する集塵機14から排出されるアルカリ飛灰を搬送する搬送コンベヤ1と、コンベヤ1で搬送される飛灰を貯留する貯留槽2と、貯留槽2からアルカリ飛灰をバッチで切出し計量する装置31,3と、計量されたアルカリ飛灰と水と重金属固定剤とを混合するミキサー4と、ミキサー4に水を供給する水注入装置5および重金属固定剤を供給する薬剤注入装置6と、ミキサー4で得られた混練物を貯留する固化物バンカ7から構成される。
【0015】
上記の搬送コンベヤ1は、ケースコンベヤ、空気輸送装置などを用いることができ。
このコンベヤ1によりアルカリ飛灰を搬送する途上で発生した粉塵は、貯留槽2上部に設置されているベントフィルタによって捕集される。
貯留槽2に貯留されたアルカリ飛灰は、該槽2下部に設置されているスクリューフィーダ31により切出され計量装置3へ投入される。
アルカリ飛灰は、付着性、吸湿性を持つ場合が多いことから、計量装置3としては粉体流量計などの連続式計量器を好ましく用いることができる。
【0016】
ミキサー4は、アルカリ飛灰と重金属固定剤との混練造粒効率、ならびに混練物と排ガスとの接触効率が高いものが好ましく、例えば本発明者が提案した特許第3508641号で開示したアルカリ飛灰処理装置を用いることが好ましい。
ミキサー4の原料投入口のすぐ上部にはバタフライバルブが装着されており、ミキサー混練中の水分などが原料配管の方へ行くのを防ぎ、アルカリ飛灰の投入ラインへの付着防止を図っている。
【0017】
本発明では、ミキサー4の排出シュート部の4面にエアーパージ機構が装着されており、これらのエアーパージ機構は、ミキサー排出ゲートの開口時に、ミキサー排出ゲートおよびミキサーケーシングに向かってエアーを噴射し、排出シュート内の付着物の除去を行う。
【0018】
水注入装置5は、熱交換器8で生じた結露水をミキサー4に供給するが、この結露水が不足した場合には、工業用水を補水するようになっている。
結露水は、吸引する排ガスの性状によってpHが酸性となる場合があることから、水注入装置5に使用する材質はステンレスや、PVC、PP、FRPなどの耐酸性樹脂を使用することが好ましい。
【0019】
重金属固定剤を供給する薬剤注入装置6は、重金属固定剤による腐食があることから、上記の水注入装置5と同様のステンレスや、PVC、PP、FRPなどの耐酸性樹脂を使用することが好ましい。
【0020】
ミキサー4から排出される混練物は、造粒物となっていることから、養生する必要がなく、直接、固化物バンカー7へ投入される。
【0021】
一方、前記した排ガスによるアルカリ飛灰のpH調整工程は、誘引ファン15から排出される排ガスの一部を抜き出し、この排ガスを冷却するための熱交換器8と、冷却後の排ガスを送風するための送風ブロワー9と、送風ブロワー9の流量を検知するための流量計10と、ミキサー4上・下流の排ガスの炭酸ガス濃度を検知するためのCO2計11,12と、制御盤13とから構成される。
【0022】
排ガスは、誘引ファン15の出口から一部が抜き出され、熱交換器8に導かれ、冷却される。
熱交換器8での排ガスの冷却時に発生する結露水は、水注入装置5へ送られ、ミキサー4でのアルカリ飛灰との混練に使用される。
【0023】
実際の排ガス風量は、排ガスのミキサー4内貫流時とバイパス(すなわち、ミキサー4内貫流を行わない)時とで変動することから、送風ブロワー9は、該ブロワー9の下流側に設置された流量計10によって風量を連続的に検知し、制御盤13からの制御信号によって常に一定量の排ガスがミキサー4内に供給されような運転が行われる。
【0024】
また、前記したミキサー4への排ガス流入(上流)側と、ミキサー4からの排ガス流出(下流)側に設置されたCO2計11,12は、ミキサー4の上・下流の排ガスの炭酸ガス濃度差を検知し、得られた信号を元に制御盤13がミキサー4の運転時間を制御し、アルカリ飛灰のpHが調整される。
ミキサー4で使用された後の排ガスは、集塵機14上流の煙道へ戻される。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の方法および装置は、一般ごみや産業廃棄物の焼却炉あるいは溶融炉などから排出されるアルカリ飛灰(酸性ガスを中和するために添加されるアルカリ粉末によりアルカリ性を帯びた飛灰となっている)中の重金属を重金属固定剤により溶出防止処理する際に有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の方法を実施するために適した本発明の装置の一実施態様例を説明するための概要図である。
【符号の説明】
【0027】
1 搬送コンベヤ
2 貯留槽
3 計量装置
4 ミキサー
5 水注入装置
6 薬剤注入装置
7 固化物バンカ
8 熱交換器
9 送風ブロワ
10 ガス流量計
11,12 CO2計
13 御盤盤
14 集塵機
15 誘引ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ飛灰を、該飛灰に含まれる重金属を重金属固定剤により溶出防止して処理する方法であって、
アルカリ飛灰を、該飛灰の貯留槽から切出し計量してミキサー内に投入し、該ミキサー内に水および重金属固定剤を添加し、混練する工程と、
一般ごみおよび/または産業廃棄物の焼却炉および/または溶融炉と連通する集塵機の下流に設置される誘引ファンから排出される排ガスの一部を熱交換器で冷却し、該冷却排ガスを前記ミキサー内の混練物に貫流させて該混練物のpHを調整する工程と
を含んでなることを特徴とするアルカリ飛灰の処理方法。
【請求項2】
ミキサー内に添加する水が、熱交換器による排ガスの冷却時に該排ガスから得られる結露水または、該結露水と工業用水であることを特徴とする請求項1に記載のアルカリ飛灰の処理方法。
【請求項3】
一般ごみおよび/または産業廃棄物の焼却炉および/または溶融炉と連通する集塵機から排出されるアルカリ飛灰を処理する装置であって、
前記アルカリ飛灰を貯留する貯留槽と、
前記貯留槽からアルカリ飛灰を切出し計量する装置と、
計量されたアルカリ飛灰と水と重金属固定剤とを混練するミキサーと、
前記水を前記ミキサーに供給する水注入装置と、
前記ミキサーに前記重金属固定剤を供給する薬剤注入装置と、
前記集塵機の下流に設置された誘引ファンから排出される排ガスの一部を冷却するための熱交換器と、
冷却後の排ガスをミキサー内の混練物に貫流するためのブロワーと、
前記排ガスの風量を検知するための流量計と、
前記ミキサー上・下流の排ガスの炭酸ガス濃度濃度を検知するためのCO2計と、
排ガスの風量およびミキサー前後のCO2濃度を検知して前記ブロワーおよび前記ミキサーの運転を制御する装置と
を具備することを特徴とするアルカリ飛灰の処理装置
【請求項4】
ミキサーの排出シュート部の4面にエアーパージ機構を装備することを特徴とする請求項3に記載のアルカリ飛灰の処理装置。


【図1】
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【公開番号】特開2006−51456(P2006−51456A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−235761(P2004−235761)
【出願日】平成16年8月13日(2004.8.13)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【出願人】(000191009)新東工業株式会社 (474)
【Fターム(参考)】