説明

アルカンジオールおよびジアルキルカーボネートの調製方法

アルカンジオールおよびジアルキルカーボネートは、(a)エステル交換条件下の反応ゾーン内で、アルキレンカーボネートおよびアルカノールの供給原料を反応させることによって、ジアルキルカーボネート、未反応アルカノール、アルカンジオールおよび未反応アルキレンカーボネートの生成混合物を得ること、(b)ジアルキルカーボネートおよび未反応アルカノールを、生成混合物から分離することによって、アルカンジオールおよび未反応アルキレンカーボネートを含有する底部生成物流を得ること、(c)ジアルキルカーボネートを回収すること、および(d)アルカンジオールを底部生成物流から分離することによって、未反応アルキレンカーボネートを含む再循環流を残すことを含む方法で調製され、未反応アルキレンカーボネートを含む再循環流が少なくとも2つの部分に分割され、少なくとも1つの部分が、反応ゾーンに再循環され、別の部分が加水分解を施されることによって、アルカンジオールおよび二酸化炭素が生成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカンジオールおよびジアルキルカーボネートを調製するための方法に関する。より詳細には、本発明は、このような化合物をアルキレンカーボネートおよびアルカノールから調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このような方法は、例えば米国特許第5359118号から知られている。この文献は、ジ(C−Cアルキル)カーボネートが、C−Cアルカノールを用いてアルキレンカーボネートのエステル交換により調製される方法を開示している。これに加えて、アルキレンカーボネートおよびアルカノールの供給原料は、触媒を用いて、カラム内で向流的に反応させる。この触媒は通常均一系ではあるが、不均一系触媒の使用もまた提案されている。アルキレンカーボネートは、カラムの上部に導入され、上から下へ落ちる。純粋なアルカノール、ならびにアルカノールおよびジアルキルカーボネートを含む流れを含むアルカノール供給原料は、カラムの下部に供給される。このアルカノールは、上向きに流れ、アルキレンカーボネートと向流的に反応することによって、ジアルキルカーボネートを未反応アルカノールと共に頂部排出液として、およびアルカンジオールを、取り込まれたあらゆるアルカノールと共に底部排出液として得る。頂部排出液に対し蒸留を施すことにより、アルカノールおよび少量のジアルキルカーボネートを含む、アルカノールが豊富な流れを得る。この流れをアルカノール供給原料の一部としてカラムに供給する。底部流を後処理し、アルキレングリコール流および触媒含有濃縮物を生じる。
【0003】
この方法は、ポリグリコールなど高沸点の副生成物の生成を開示している。既知の方法において、このような高沸点の副生成物は、触媒含有濃縮物に含有される。濃縮物の一部分は、エステル交換に再循環され、別の部分は廃棄される。
【0004】
既知の方法は、ポリグリコールの生成を開示しているが、このようなポリグリコール、特にジグリコールの除去の問題については対処していない。さらに従来技術の文献は、アルキレンカーボネート供給原料中にポリグリコールが存在し得ることを認識していない。さらに、この既知の方法では、未反応のまま反応器から出るアルキレンカーボネートはないと想定している。実際には、ジアルキルカーボネートに対するエステル交換は、100%ではない。したがって、既知の方法の底部生成物は、米国特許第5359118号に示唆されているように、ポリグリコールだけではなく、いくらかの未反応アルキレンカーボネートも含有していることになる。これらの沸点を考えると、ポリグリコール、特にジアルキレングリコールを対応するアルキレンカーボネートから分離するのは、極めて困難である。これは、米国特許第5359118号による方法では、認識されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5359118号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
さらに高沸点の副生成物の発生は、アルキレンカーボネートおよびポリグリコールを含有する流れの一部に対し加水分解工程を施すことにより防止でき、これによって、アルキレングリコール、すなわち高価値な化合物を得られることがここに見い出された。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本発明は、
(a)エステル交換条件下の反応ゾーン内で、アルキレンカーボネートおよびアルカノールの供給原料を反応させることによって、ジアルキルカーボネート、未反応アルカノール、アルカンジオールおよび未反応アルキレンカーボネートの生成混合物を得ること、
(b)ジアルキルカーボネートおよびアルカノールを、生成混合物から分離することによって、アルカンジオールおよび未反応アルキレンカーボネートを含有する底部生成物流を得ること、
(c)ジアルキルカーボネートを回収すること、および
(d)アルカンジオールを底部生成物流から分離することによって、未反応アルキレンカーボネートを含む再循環流を残すことを含み、
未反応アルキレンカーボネートを含む再循環流が、少なくとも2つの部分に分割され、少なくとも1つの部分が、反応ゾーンに再循環され、別の部分が加水分解を施されることによって、アルカンジオールおよび二酸化炭素が生成される、アルカンジオールおよびジアルキルカーボネートを調製するための方法を提供する。
【0008】
本方法は、再循環流中のアルキレンカーボネートの一部に対し、エステル交換を再び施すことにより、目的のジアルキルカーボネートに変換することができるという利点を伴っている。さらに、加水分解を施す部分中のアルキレンカーボネートは、完全に損失したわけではない。なぜならアルキレンカーボネートは、二酸化炭素およびアルカンジオールに変換されるので、目的生成物の少なくとも1つは得られるからである。さらに、本方法は、反応系内の再循環流中に存在し得るポリグリコールの発生を防止する。さらに、加水分解を施す再循環流の部分に存在するポリグリコールはどれも、ポリグリコールおよびアルカンジオールを含む流れに含有されていることになり、この流れにはアルキレンカーボネートが含まれていない。したがって、アルキレンカーボネートも含む混合物からのポリグリコールの分離とは対照的に、この混合物からポリグリコールを分離することは比較的容易である。後者の混合物において、分離は非常に厄介である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図は、本発明による方法のフロースキームを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明における反応ゾーンは、米国特許第5359118号に記載されているような反応蒸留ゾーンであってよい。これは向流的に反応が実施されることを伴うことになる。エステル交換反応は、蒸留カラムのような、内容物を備えたカラム内で行うのが有利である。それ故、カラムは、バブルキャップ付のトレー、ふるい分け用トレーまたはRaschigリングを含有し得る。当業者であれば、いくつかの種類の充填物およびトレーの構成が可能であることを理解している。適切なカラムは、例えば、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry、5th ed.Vol.B4、321頁以降、1992年に記載されている。アルキレンカーボネートは、このようなカラムの上部に供給され、下へ流れることになる。アルキレンカーボネートは、アルカノールよりもさらに高沸点を一般的に有する。エチレンおよびプロピレンカーボネートの場合、大気での沸点は、240℃を超える。アルキレンカーボネートは、トレーまたはリングを通過して下に流れ、上向きに流れるアルカノールと接触することになる。
【0011】
好ましい実施形態において、反応は、並流の方法で行われる。適切な作動方法は、かけ流し方式で反応を実施することで、この方法では、蒸気相および液相の中の反応部分は、不均一系触媒上へ液滴で落ちる。本発明の方法を作動するための、より好ましいやり方は、液体充填反応器内である。この種類の適切な反応ゾーンは、パイプ型の反応ゾーンであり、この中で反応は、栓流の方式で行われる。この方法により、反応が事実上完了するまで反応を実行することが可能となる。さらなる可能性は、連続撹拌槽反応器(CSTR)内で、反応を行うことである。後者の場合、CSTRからの排出液は、反応が事実上完了するまで実行されるように栓流反応器内で後反応を施すことが好ましい。
【0012】
本発明の方法は、アルカノールを用いたアルキレンカーボネートのエステル交換を含む。米国特許第5359118号より明らかなように、このエステル交換反応は既知である。エステル交換の出発物質は、C−CアルキレンカーボネートおよびC−Cアルカノールから選択されるのが好ましい。出発物質は、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートおよびメタノール、エタノールまたはイソプロパノールであるのがより好ましい。
【0013】
エステル交換条件は、触媒の存在を含むのが適切である。適切な均一系触媒は、米国特許第5359118号に記載されており、アルカリ金属すなわち、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムの水素化物、酸化物、水酸化物、アルコラート、アミドまたは塩を含む。好ましい触媒は、カリウムまたはナトリウムの水酸化物またはアルコラートである。供給原料として使用されているアルカノールのアルコラートを使用するのが有利である。このようなアルコラートは、このまま加えることもできるし、またはその場で生成することもできる。
【0014】
他の適切な触媒は、アルカリ金属塩、例えば酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩または炭酸塩である。さらに適切な触媒は、米国特許第5359118号、および例えばEP−A 274953、米国特許第3803201号、EP−A 001082およびEP−A 180387などに参照として記載されている。
【0015】
米国特許第5359118号において示されているように、不均一性触媒を使用することも可能である。現在の方法において、エステル交換反応に不均一系触媒を使用することが好ましい。適切な不均一系触媒は、官能基を含有するイオン交換樹脂を含む。適切な官能基は、第三級アミン基および第四級アンモニウム基、さらにスルホン酸基およびカルボン酸基を含む。さらに適切な触媒は、アルカリケイ酸塩およびアルカリ土類ケイ酸塩を含む。適切な触媒は、米国特許第4062884号および米国特許第4691041号において開示されている。不均一系触媒は、ポリスチレンマトリクスおよび第三級アミン官能基とを含むイオン交換樹脂から選択されるのが好ましい。一例として、N,N−ジメチルアミン基が結合しているポリスチレンマトリクスを含むAmberlyst A−21(Rohm & Haas製)がある。第三級アミン基および第四級アンモニウム基を有するイオン交換樹脂を含めた、エステル交換触媒の8つの種類が、J F Kniftonら、J.Mol.Catal、67(1991)389ffで開示されている。
【0016】
エステル交換条件は当分野で知られており、40から200℃の温度および50から5000kPaの圧力(0.5から50bar)を含むのが適切である。アルカノールがメタノールである場合、圧力は、大気に近いことが好ましい。温度は、アルカノール供給原料および使用した圧力、ならびに使用した反応器に依存する。逆流モードにおいて温度は、アルカノール沸点の付近およびその上、例えば沸点よりも5℃まで高い温度になるように維持される。メタノールおよび大気圧の場合、温度は、65℃付近およびこれよりも高く、例えば65と70℃の間である。並流での作動の場合、アルカノールは、液体のままでよい。並流での作動において、圧力は、適切には0.5から50bar、好ましくは2から20barの範囲であり、温度は、40から200℃、好ましくは80から160℃の範囲である。
【0017】
エステル交換触媒が、アルカリ金属アルコラートなどの均一系である場合、および反応性の蒸留が使用される場合、均一系触媒は、反応ゾーンの上部に導入してもよい。次いでアルカノール供給原料を下部の箇所に導入する。供給原料は、完全に蒸気であってよい。しかし、カラムに供給原料を一部液相で導入することも可能である。液相は、カラムの下部のアルカノール濃度の増加を確実にし、全体のエステル交換に有利な効果をもたらすと考えられている。液相は、入口およびカラムの内容物を介して、カラムの幅全体に分布する。アルカノール供給原料の蒸気部分と液体部分の間の比は、広範囲に渡り異なってもよい。この蒸気/液体の重量比は、1:1から10:1wt/wtであるのが適切である。
【0018】
不均一系触媒ベッドが使用される場合および反応蒸留が使用される場合、アルキレンカーボネートを触媒ベッドの上に導入し、アルカノールを触媒ベッドの下に導入するのが適切である。並流で作動する反応器が使用される場合、これらの反応体は、事前に混合しておく、または触媒ベッドの反応器上流に別に導入してもよい。当業者であれば、エステル交換が平衡反応であることを知っている。したがって、当業者は、過剰なアルカノールを適切に使用することができる。アルカノールとアルキレンカーボネートのモル比は、適切には1.01:1から25:1、好ましくは2:1から15:1、より好ましくは3:1から7:1である。明らかに、触媒量をさらに少量にすることができる。均一系触媒を使用する場合、このような触媒の適切な量は、アルキレンカーボネートに対して、0.1から5.0%wt、好ましくは0.2から2%wtを含む。重量毎時空間速度は、適切には、0.1から100kg/kg.hrの範囲であってよい。
【0019】
ジアルキルカーボネート、未反応アルカノール、アルカンジオールおよび未反応アルキレンカーボネートの混合物は、反応ゾーンから取り出される。反応蒸留などの逆流方法の場合、アルカノールおよびジアルキルカーボネートの第1混合物は、反応蒸留カラムの先端部で取り出され、未反応アルキレンカーボネートおよびアルカンジオールを含む第2混合物は、底面で取り出される。並流で作動する場合、上記4つの化合物を含む生成混合物を得る。
【0020】
反応蒸留ゾーンでエステル交換を行う場合、未反応アルカノールおよびジアルキルカーボネートは一緒に、反応蒸留カラムの上部を介して、反応蒸留ゾーン内で共に分離される。アルカンジオールおよび未反応アルキレンカーボネートは、下部で反応蒸留カラムから取り除かれる。他の実施形態において、4つの化合物は、同時に取り出される。一実施形態において、未反応アルカノールおよびジアルキルカーボネートは、蒸留により単一の留分へと分離される。適切な蒸留条件は、圧力0.1から1.0bar、温度40から300℃である。これにより、未反応アルカノールおよびジアルキルカーボネートを含む頂部留分と、未反応アルキレンカーボネートおよびアルカンジオールを含む底部留分との分離が達成される。頂部留分に対し、未反応アルカノールからジアルキルカーボネートを分離するために別の蒸留を施すことが好ましい。このような蒸留は、適切には、減圧から過圧におよぶ範囲での圧力で達成することもできる。適切には、圧力は、0.1から45barまで変化させてもよい。温度は、選択された圧力に応じて変化させることができる。温度は、35から300℃であってよい。より好ましくは、蒸留における条件は、0.1から0.5barの範囲の圧力および35から150℃の範囲の温度を含む。ジアルキルカーボネートおよびアルカノールが共沸混合物を形成する場合、ジアルキルカーボネートとアルカノールの分離を促進するための抽出剤を用いた抽出蒸留を使用するのが有利となり得る。抽出剤は、多くの化合物、特にフェノールなどのアルコール、またはアニソールから選択することができる。しかし、アルキレンカーボネートを抽出剤として使用することが好ましい。結果として生じるアルカンジオールの出発物質として使用したアルキレンカーボネートの存在下で、分離を得ることが最も有利である。
【0021】
別の実施形態において、生成物流に対して、未反応アルカノールが頂部留分として主に分離されるように蒸留を施す。このような蒸留は、適切には圧力0.1から45barで実施されてもよい。温度は、選択された圧力に応じて変化させることができる。温度は、35から300℃であってよい。圧力が0.5から1.5barであり、温度が60から200℃の範囲であることがより好ましい。さらなる蒸留において、残りの化合物は、頂部留分としてジアルキルカーボネートを分離し、アルカンジオールおよび未反応アルキレンカーボネートを含む底部留分を分離することができる。この蒸留条件は、圧力0.1から0.5barおよび温度60から190℃を含むのが有利である。
【0022】
実施形態で回収したジアルキルカーボネートは、場合によってさらに精製することもできる。このさらなる精製は、米国特許第5455368号に記載されているように、さらなる蒸留工程またはイオン交換工程を含んでもよい。
【0023】
逆流および並流の両実施形態において、アルカンジオールおよび未反応アルキレンカーボネートを含む底部生成物が得られる。アルカンジオールをこの底部流から分離するために、底部流に対し、適切には圧力0.01から0.4barおよび温度100から200℃で、さらなる蒸留工程を施すことが好ましい。この蒸留により、アルカンジオールと未反応アルキレンカーボネートを含む再循環流の分離が達成される。この蒸留において頂部留分として回収した、回収アルカンジオールは、分離切断の鋭さに応じて、未反応アルキレンカーボネートなど他の化合物を含み得る。
【0024】
再循環流は、少なくとも2つの部分に分割するが、通常2つで十分である。少なくとも1つの部分は、反応ゾーンに再循環し、これにより、いずれの未反応アルキレンカーボネートもさらに反応させることができる。別の部分に対しては加水分解を施すことにより、プロセス中にポリグリコールなどの重い副生成物が発生するのが防止され、同時に、生成物として回収できるアルカンジオールが形成される。場合により、この流れは、3つ以上の部分に分割され、追加部分をプロレスから流出させることもできる。一般的に流出流は、可能な限り少量にし、好ましくは、プロセス中に流出流を使用しないことが好ましいことが理解されている。
【0025】
これら2つの部分の間の重量比は、最も効果的な点に到達するように当業者が選択することができる。再循環される部分と加水分解を施す部分の間の重量比が、0.1:1から200:1、好ましくは10:1から150:1、より好ましくは20:1から100:1となるように、再循環流を分割するのが有利である。これにより重い化合物の発生を効果的に防止することが可能となり、未反応アルキレンカーボネートの満足のゆく追加的使用が得られる。
【0026】
アルキレンカーボネートを水で加水分解することは、当分野で知られている。例えば、米国特許第5847189号を参照する。加水分解は通常、触媒の存在下で行われる。触媒は、均一系触媒、例えば硝酸、硫酸または塩酸などの鉱酸、アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物または炭酸塩などの塩基性化合物、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミンもしくはベンジルジエチルアミンなどの第三級アミン、第四級のホスホニウムもしくはアンモニウム塩、アルカリ金属アルカノレートおよび米国特許第5847189号に記載の他の触媒であってよい。あるいは、触媒は不均一系である。例は、国際公開第2004/085375号に記載されており、アルミナ、シリカアルミナ、シリカマグネシア、ケイ酸ガリウム、ゼオライト、金属交換ゼオライト、アンモニウム交換ゼオライト、担体上の酸化亜鉛または水酸化亜鉛、担体上の酸化ランタン、酸化アルミニウムおよび酸化マグネシウムまたは水酸化アルミニウムおよび水酸化マグネシウムの混合物およびイオン交換樹脂を含む。触媒は、米国特許第6953864号に開示の酸化アルミニウムおよび酸化マグネシウムの混合物、米国特許第6835858号に記載の担持された亜鉛触媒、および米国特許第6768020号に詳しく述べられている、担体上に担持されたランタンからなる群から選択されるのが好ましい。触媒は、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の水酸化物および炭酸塩からなる群から選択されるのがより好ましい。炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムが最も好ましい。
【0027】
加水分解は、好ましくは50から300℃、より好ましくは100から200℃の範囲の温度で実施される。圧力は、広く異なってもよい。
【0028】
圧力は、適切には0.5から100bar、より好ましくは1から50、最も好ましくは1から30barである。
【0029】
代替の実施形態において、加水分解は、反応蒸留で実施される。この実施形態において、水は、加水分解装置の下部に供給される。未反応アルキレンカーボネートを含む再循環流の部分は、この上部の入口を介して加水分解装置へ送られる。均一系触媒がこのまま使用される場合には、この均一系触媒も、加水分解装置の上部に、好ましくはアルキレンカーボネートを含有する流れと共に供給される。次いで、反応体との接触がトレー、Raschigリングおよび/または加水分解装置内に備わっている、他の種類の充填物の上で起きる。加水分解装置が、不均一系触媒の床を含む場合、水とアルキレンカーボネートの接触は、この床上で起こる。水は蒸発し、水蒸気は加水分解装置を上向きに流れる。アルキレンカーボネートは、液体の形態で下向きに流れ、加水分解装置内の充填物のところで、または触媒床を介してのいずれかによって水蒸気と接触する。この反応により、アルカンジオールおよび二酸化炭素が生じる。二酸化炭素およびあらゆる未反応の水蒸気は、加水分解装置の先端部でこの装置から取り出される。アルカンジオールおよびポリグリコールを含めた他のあらゆる高沸点材料、さらに少しでもあるとすれば、未反応のアルキレンカーボネート、および存在するならば触媒を、装置の底部から放出する。
【0030】
好ましい実施形態における条件は、120から300℃の範囲の温度および0.1から25barの圧力である。
【0031】
アルカンジオールおよび未反応アルキレンカーボネートを含む底部流の分離の有効性に応じて、アルカンジオール生成物流は、少量のアルキレンカーボネートを含むことがある。このような量は、アルカンジオールおよびアルキレンカーボネートの総重量に対して、0から10%wtの範囲であってよい。この流れに対して加水分解を施すことにより、未反応アルキレンカーボネートをアルカンジオールに変換し、これによってアルカンジオールの収量を増やすことが有利である。底部流から回収したアルカンジオールおよび再循環流の一部分が、同じ加水分解装置内で、同じ加水分解を施されることがより好ましい。
【0032】
加水分解装置において生成された二酸化炭素は、放出してもよい。しかし、経済的および環境の立場からこのような放出は望ましくない。二酸化炭素を再使用することが好ましい。アルキレンカーボネートは、アルキレンオキシドおよび二酸化炭素から調製されるので、アルキレンカーボネートの調製、より好ましくは本発明の方法に使用されるアルキレンカーボネートの調製に二酸化炭素を使用するのが好ましい。二酸化炭素およびアルキレンオキシドからアルキレンカーボネートを調製することは知られている。調製は、触媒の存在下で実施される。適切な触媒は、例えば、国際公開第2005/003113号に開示されている、テトラアルキルホスホニウムハロゲン化物を含む。優れた例は、テトラブチルホスホニウムブロミドである。このような調製において、アンモニウムハロゲン化物を触媒として使用することが、米国特許第6156160号に開示されている。例として、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムブロミドおよびベンジルトリエチルアンモニウムブロミドが挙げられる。
【0033】
加水分解により回収したアルカンジオールは、分画することによって、精製されたアルカンジオール流ならびにポリグリコールと、存在する場合には触媒と、さらに高沸点の他の混入物とを含む底部流を得ることが有利である。未反応アルキレンカーボネート含有の底部流から分離したアルカンジオールが、再循環流の関連部分と混合され、加水分解へ送られた場合、精製されたアルカンジオール流が生成物として生じる。
【0034】
本発明の方法は、様々な供給原料に対して使用することができる。本方法は、エチレングリコール(1,2−エタンジオール)、プロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)、ジメチルカーボネートおよび/またはジエチルカーボネートおよび/またはジイソプロピルカーボネートの調製に非常に適している。本方法は、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートおよびエタノールまたはイソプロパノールからの、エチレングリコールまたはプロピレングリコールおよびジエチルカーボネートまたはジイソプロピルカーボネートの生成に最も有利に使用される。
【0035】
図には、本発明による方法のためのフロースキームが示されている。方法は、適切なアルコールとしてエタノール、およびアルキレンカーボネートとしてエチレンカーボネートを使用した場合を記述することになるが、当業者であれば、他のアルカノールおよびアルキレンカーボネートを同様に使用できることは理解されよう。
【0036】
ライン1を介してエタノールを反応器2へと送る。反応器2は、適切には栓流反応器とすることができる。ライン3を介して、エチレンカーボネートも反応器2へ供給する。エステル交換触媒が存在してもよいし、またはこれを反応器内に持続的に供給してもよい。触媒は、反応体の1つと混合してもよいし、または別のラインを介して(図にはない)反応器へ供給してもよい。ジエチルカーボネートと、未反応エタノールと、エチレングリコールと、未反応エチレンカーボネートとの混合物を含む生成物を、ライン4を介して反応器2から取り出す。ライン4を介してこの混合物を蒸留カラム5へ送り、この蒸留カラム5内で、この生成物を、ジエチルカーボネート、およびライン6を介して取り出したエタノールを含む頂部留分と、エチレングリコール、およびライン7を介して取り出したエチレンカーボネートを含む底部留分とに分ける。ジエチルカーボネートおよびライン6のエタノールを含む混合物を、蒸留カラム8へ送り、この蒸留カラム8内で混合物を、エタノールとジエチルカーボネートとに分ける。ジエチルカーボネートを、ライン9を介して放出し、場合によってさらなる精製の後で、これを生成物として回収する。エタノールを、ライン10を介して回収し、ライン1を介して反応器2に再循環する。
【0037】
ライン7における底部流に対し蒸留カラム11内で蒸留を施す。蒸留カラム11においていくらかのエチレンカーボネートが混入したエチレングリコールを含む頂部生成物を、ライン12を介して回収する。ライン13を介して取り出した蒸留カラム11の底部生成物は、ポリエチレングリコール、特にジエチレングリコール、およびエチレンカーボネートを含む。ライン13の流れを分割する。一つの部分は、ライン14およびライン3を介して反応器2に再循環する。第2の部分は、ライン15を介して取り出し、ライン12内のいくらかのエチレンカーボネートが混入したエチレングリコールを含む蒸留カラム11の頂部生成物と混合する。ライン16を介して水を反応器17に供給し、ライン12および15からの混合した留分もこの加水分解反応器17に導入する。反応器17は、連続撹拌槽反応器(CSTR)として示されているが、当業者は、反応蒸留カラムを使用することもできる。CSTRの場合、生成物は、好ましくは、ライン18を介して取り出し、図の中で19として示されている栓流パイプ型反応器へと送り、反応を完了させる。反応器17および19での加水分解の最終生成物を、ライン20を介して蒸留カラム21に送る。ライン22を介して水および二酸化炭素を頂部留分として取り出す。エチレングリコールおよびポリグリコールを含む底部留分を、ライン23を介して追加の蒸留カラム24へ送る。重いポリグリコールを含む底部生成物を、ライン25を介して放出する。エチレングリコールを含む頂部生成物を取り出し、ライン26を介して回収する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカンジオールおよびジアルキルカーボネートの調製方法であって、
(a)エステル交換条件下の反応ゾーン内で、アルキレンカーボネートおよびアルカノールの供給原料を反応させることによって、ジアルキルカーボネート、未反応アルカノール、アルカンジオールおよび未反応アルキレンカーボネートの生成混合物を得ること、
(b)ジアルキルカーボネートおよび未反応アルカノールを、生成混合物から分離することによって、アルカンジオールおよび未反応アルキレンカーボネートを含有する底部生成物流を得ること、
(c)ジアルキルカーボネートを回収すること、および
(d)アルカンジオールを、底部生成物流から分離することによって、未反応アルキレンカーボネートを含む再循環流を残すことを含み、
未反応アルキレンカーボネートを含む再循環流は、少なくとも2つの部分に分割され、少なくとも1つの部分は、反応ゾーンに再循環され、ならびに別の部分が加水分解を施されることによって、アルカンジオールおよび二酸化炭素が生成される、方法。
【請求項2】
反応が、並流の方式で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
反応が、栓流の方式で行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
不均一系触媒が、エステル交換反応において使用される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
反応ゾーン内の温度が、40から200℃であり、ならびに圧力が、0.5から50barである、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
未反応アルカノールおよびジアルキルカーボネートが、蒸留により一つの留分へと分離される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
底部流が、さらなる蒸留を施されることにより、アルカンジオールと、未反応アルキレンカーボネートを含む再循環流との分離が達成される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
分離したアルカンジオールが、未反応アルキレンカーボネートを含有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
再循環される部分と、加水分解を施される部分との重量比が0.1:1から200:1の範囲となるように、再循環流が分割される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
加水分解が、50から300℃、より好ましくは100から200℃の範囲の温度で、および0.5から100bar、より好ましくは1から50bar、最も好ましくは1から30barの圧力で実施される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
加水分解が、反応蒸留として実施される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
底部流から回収したアルカンジオールおよび再循環流の一部分が、同じ加水分解を施される、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
加水分解において生成された二酸化炭素が、アルキレンカーボネートの調製において使用される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
アルキレンカーボネートが、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートであり、ならびにアルカノールがエタノールまたはイソプロパノールである、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2010−516729(P2010−516729A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−546726(P2009−546726)
【出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【国際出願番号】PCT/EP2008/050607
【国際公開番号】WO2008/090108
【国際公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(590002105)シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエー (301)
【Fターム(参考)】