説明

アルカンジスルホン酸バリウムの製造方法およびアルカンジスルホン酸の製造方法

【課題】高い収率で高純度のアルカンジスルホン酸バリウムの製造方法の提供。
【解決手段】ジハロアルカン化合物と亜硫酸ナトリウムおよび/または亜硫酸カリウムとを反応溶媒中で反応させ、式2で表されるアルカンジスルホン酸塩を含有する反応液を得る工程1と、該反応液に酸を加えた後、バリウム塩を加えて反応させる工程2とを有する式3で表されるアルカンジスルホン酸バリウムの製造方法。


式2中、RおよびRは、H、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のフルオロアルキル基、または、炭素数1〜5のポリフルオロアルキル基を示す。nは1〜6の整数を示し、nが2〜6である場合、n個のRおよびn個のRは、それぞれ互いに同一でもよく異なっていてもよい。MはNaまたはKを示す。


式3中、RおよびR、nは、式2と同じ基、同じ値を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い収率で高純度のアルカンジスルホン酸バリウムを製造する方法に関する。また、本発明は、該アルカンジスルホン酸バリウムの製造方法により製造されたアルカンジスルホン酸バリウムを用いるアルカンジスルホン酸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メタンジスルホン酸を得る方法として、特許文献1には、硫酸第二水銀を用いて、メタンを三酸化硫黄と共に5.8MPa、260℃、1.5時間オートクレーブで処理する方法が開示されている。しかしながら、この方法は、有毒な水銀を用いることや液体温度範囲が非常に狭い(凝固点17℃、沸点44.8℃)三酸化硫黄を使用するため、工業的に行うことが困難であり、非常に高温高圧の反応であるという問題があった。
【0003】
特許文献2には、メタンスルホン酸と三酸化硫黄とを反応させることでメタンジスルホン酸を得る方法が開示されている。しかしながら、この方法では、多くの副生成物が生じるため、純度の高いメタンジスルホン酸を取り出すことが困難であるという問題があった。また、特許文献2に開示された方法でも、特許文献1に開示された方法と同様に取り扱いの困難な三酸化硫黄を使用していることから、工業的に行うことが困難である。
【0004】
特許文献3には、活性炭を触媒とし、メタンスルホン酸とクロロスルホン酸とを無水条件で、100〜160℃の範囲に加熱することでメタンジスルホン酸を得る方法が開示されている。しかしながら、この方法では、転化率が30〜40%と低いために、原料であるクロロスルホン酸やメタンスルホン酸が残存するという問題があった。また、副生成物であるクロロスルホニルクロライドが生成するために、メタンジスルホン酸の取出しが非常に困難となるという問題があった。
【0005】
特許文献4には、亜硫酸ナトリウムと塩化メチレンとを高圧下で反応させた後、塩化バリウムと反応させ、濾過することでメタンジスルホン酸バリウムを作製し、得られたメタンジスルホン酸バリウムを更に反応させ、水溶性のメタンジスルホン酸の亜鉛塩やアルミニウム塩を得る方法が開示されている。
この方法では、濾過によりメタンジスルホン酸バリウムを得ているが、得られたメタンジスルホン酸バリウムは、副生成物である硫酸バリウムや亜硫酸バリウムを含有する。
硫酸バリウムや亜硫酸バリウムの結晶は非常に微細であるため、濾過時間に長時間を要し、工業的規模で実施する際には、大型の濾過機が必要となる。
また、得られるメタンジスルホン酸バリウムは不純物を多く含むため、純度が非常に低いものとなるという問題があった。
【0006】
特許文献5には、ジブロモメタンと亜硫酸カリウムまたは亜硫酸ナトリウムとを、テトラブチルアンモニウムブロマイドおよびヨウ化カリウムを触媒として反応させることで、大気圧下でメタンスルホン酸カリウムまたはメタンスルホン酸ナトリウムを作製し、残存する亜硫酸カリウムや亜硫酸ナトリウムを、塩化バリウムで硫酸バリウムに転換し濾過により除去し、得られたメタンジスルホン酸カリウムやメタンスルホン酸ナトリウムをイオン交換樹脂でイオン交換し、メタンジスルホン酸を得る方法が開示されている。
この方法では、大気圧下での反応が可能となるが、触媒が不純物として残存することや大量のイオン交換樹脂を必要とすることから、工業的規模で実施することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許2493038号明細書
【特許文献2】米国特許2842589号明細書
【特許文献3】特開平01−045355号公報
【特許文献4】中国特許CN1054371C号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開2006/0155142号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、高い収率で高純度のアルカンジスルホン酸バリウムを製造する方法を提供することを目的とする。また、本発明は、該アルカンジスルホン酸バリウムの製造方法により製造されたアルカンジスルホン酸バリウムを用いるアルカンジスルホン酸の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、一般式(1)で表されるジハロアルカン化合物と亜硫酸ナトリウムおよび/または亜硫酸カリウムとを反応溶媒中で反応させ、一般式(2)で表されるアルカンジスルホン酸塩を含有する反応液を得る工程1と、工程1で得られた反応液に酸を加えた後、バリウム塩を加えて反応させる工程2とを有する一般式(3)で表されるアルカンジスルホン酸バリウムの製造方法である。
【0010】
【化1】

【0011】
式(1)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜5のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜5のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜5のフルオロアルキル基、または、炭素数1〜5のポリフルオロアルキル基を示す。Xはハロゲンを示す。nは1〜6の整数を示し、nが2〜6である場合、n個のRおよびn個のRは、それぞれ互いに同一でもよく異なっていてもよい。
【0012】
【化2】

【0013】
式(2)中、RおよびRは、式(1)におけるRおよびRと同じ基を示し、nは式(1)におけるnと同じ値を示し、Mはナトリウムまたはカリウムを示す。
【0014】
【化3】

【0015】
式(3)中、RおよびRは、式(1)におけるRおよびRと同じ基を示し、nは式(1)におけるnと同じ値を示す。
以下に本発明を詳述する。
【0016】
本発明者らは、特定のジハロアルカン化合物と亜硫酸ナトリウムまたは亜硫酸カリウムとを反応溶媒中で反応させて得られるアルカンジスルホン酸塩の反応液を調製し、得られた反応液を酸で処理し、さらにバリウム塩を加えて反応させることにより、高い収率で高純度のアルカンジスルホン酸バリウムを製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
このようにして得られたアルカンジスルホン酸バリウムを用いることにより、メッキ用途等に広く用いられる高純度のアルカンジスルホン酸を容易に製造することができる。
【0017】
本発明のアルカンジスルホン酸バリウムの製造方法は、上記一般式(1)で表されるジハロアルカン化合物と亜硫酸ナトリウムおよび/または亜硫酸カリウム(以下、単に亜硫酸塩ともいう)とを反応溶媒中で反応させ、上記一般式(2)で表されるアルカンジスルホン酸塩を含有する反応液を得る工程1を有する。
【0018】
上記式(1)におけるRおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜5のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜5のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜5のフルオロアルキル基、または、炭素数1〜5のポリフルオロアルキル基を示す。なかでも、経済的な観点から上記Rおよび上記Rは水素原子であることが好ましい。
【0019】
上記Rおよび上記Rが水素原子以外である場合、上記置換または無置換の炭素数1〜5のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などが挙げられる。なかでも、メチル基であることが好ましい。
上記置換または無置換の炭素数1〜5のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピオキシ基、イソプロピオキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基などが挙げられる。
上記置換または無置換の炭素数1〜5のフルオロアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基などが挙げられる。
【0020】
上記式(1)におけるXは、ハロゲンを示す。
上記ハロゲンとしては、例えば、塩素、臭素、ヨウ素原子などが挙げられる。なかでも、塩素または臭素であることが好ましい。
【0021】
上記式(1)におけるnは、1〜6の整数である。
【0022】
上記亜硫酸塩の使用量は、上記ジハロアルカン化合物1モルに対して1.8〜10モルであることが好ましい。上記亜硫酸塩の使用量が上記ジハロアルカン化合物1モルに対して1.8モル未満であると、ジハロアルカン化合物と充分に反応させることができないことがある。上記亜硫酸塩の使用量が上記ジハロアルカン化合物1モルに対して10モルを超えても、使用割合に見合う効果がなく経済的でない。上記亜硫酸塩の使用量は、上記ジハロアルカン化合物1モルに対して2.0〜2.5モルであることがより好ましい。
【0023】
上記工程1において使用する反応溶媒としては、水、または、水および水と混和する溶媒を混合した混合溶媒を用いることができ、水と混和する溶媒としては、メタノール、エタノール、エチレングリコールなどのアルコール類や、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。なかでも、経済性の観点から、水単独で用いることが好ましい。
【0024】
上記工程1において使用する反応溶媒の使用量は、上記ジハロアルカン化合物100重量部に対して200〜5000重量部であることが好ましい。上記工程1において使用する反応溶媒の使用量が上記ジハロアルカン化合物100重量部に対して200重量部未満であると、攪拌が困難となり、収率が低下するおそれがある。上記工程1において使用する反応溶媒の使用量が上記ジハロアルカン化合物100重量部に対して5000重量部を超えると、廃液量が大幅に増加するため経済的でなくなる。上記工程1において使用する反応溶媒の使用量は、上記ジハロアルカン化合物100重量部に対して400〜2000重量部であることがより好ましい。
【0025】
上記工程1における反応温度は、100〜200℃であることが好ましい。上記反応溶媒として水を用いる場合、この温度範囲において水の蒸気圧により圧力が0.2〜1.0MPaとなる。上記工程1における反応温度は、150〜200℃であることがより好ましい。
上記工程1における反応時間は、反応温度により異なるが、通常1〜30時間程度である。
【0026】
上記工程1において得られる反応液は、上記一般式(2)で表されるアルカンジスルホン酸塩、並びに、少量の亜硫酸塩を含有する。
【0027】
本発明のアルカンジスルホン酸バリウムの製造方法は、上記工程1で得られた反応液に酸を加えた後、バリウム塩を加えて反応させる工程2を有する。
【0028】
上記反応液に酸を加えることにより、残存する亜硫酸塩を分解し、二酸化硫黄として系外へ排出することができる。
上記工程2において反応液に加える酸としては、有機酸を用いてもよいし、無機酸を用いてもよい。
上記有機酸としては、例えば、メタンスルホン酸、シュウ酸、クエン酸などが挙げられる。
上記無機酸としては、塩酸、硝酸、リン酸などが挙げられる。
これらの酸の中でも、塩酸が好適に用いられる。
【0029】
上記工程2において反応液に加える酸の使用量は、上記ジハロアルカン1モルに対して0.05〜5.0モルであることが好ましい。上記工程2において反応液に加える酸が上記ジハロアルカン1モルに対して0.05モル未満であると、酸による効果が充分に発揮されないことがある。上記工程2において反応液に加える酸が上記ジハロアルカン1モルに対して5.0モルを超えると、廃液量が大幅に増加するため経済的でなくなる。上記工程2において反応液に加える酸の使用量は、上記ジハロアルカン1モルに対して0.05〜2.0モルであることがより好ましい。
【0030】
上記反応液に酸を加えることにより、残存する亜硫酸塩を分解する反応の反応温度は、0〜100℃であることが好ましく、50〜100℃であることがより好ましい。
上記反応液に酸を加えることにより、残存する亜硫酸塩を分解する反応の反応時間は、反応温度により異なるが、通常10時間以下である。
【0031】
上記酸で処理した後の反応液にバリウム塩を加えて反応させることにより、上記一般式(2)で表されるアルカンジスルホン酸ジナトリウムおよびアルカンジスルホン酸ジカリウムを、上記一般式(3)で表されるアルカンジスルホン酸バリウムに変換することができる。
【0032】
上記工程2で使用するバリウム塩としては、例えば、塩化バリウム、フッ化バリウム、炭酸バリウム、水酸化バリウム、硝酸バリウムなどが挙げられる。なかでも、塩化バリウム、フッ化バリウムであることが好ましい。
【0033】
上記工程2で使用するバリウム塩の使用量は、上記ジハロアルカン1モルに対して0.5〜10.0モルであることが好ましい。上記工程2で使用するバリウム塩の使用量が上記ジハロアルカン1モルに対して0.5モル未満であっても反応は進行するが、未反応のアルカンジスルホン酸が残存し、収率が低下する。上記工程2で使用するバリウム塩の使用量が上記ジハロアルカン1モルに対して10モル超えても、使用割合に見合う効果がなく経済的でない。上記工程2で使用するバリウム塩の使用量は、上記ジハロアルカン1モルに対して0.8〜3.0であることがより好ましく、1.0〜1.2モルであることがさらに好ましい。
【0034】
上記工程2において、バリウム塩はそのまま添加してもよいし、水溶液として添加してもよい。上記工程2において、バリウム塩を水溶液として添加する場合、水の使用量は、上記バリウム塩100重量部に対して200〜1000重量部であることが好ましい。上記水の使用量が上記バリウム塩100重量部に対して200重量部未満であると、上記バリウム塩を充分に溶解させることができないことがある。上記水の使用量が上記バリウム塩100重量部に対して1000重量部を超えると、廃液量が増加し経済的でなくなる。上記水の使用量は、上記バリウム塩100重量部に対して200〜400重量部であることがより好ましい。
【0035】
上記酸で処理した後の反応液にバリウム塩を加えて反応させる反応の反応温度は、0〜100℃であることが好ましく、50〜100℃であることがより好ましい。
上記酸で処理した後の反応液にバリウム塩を加えて反応させる反応の反応時間は、反応温度により異なるが、通常0.5〜5時間程度である。
【0036】
上記バリウム塩との反応終了後、濾過、水での洗浄により濾別することにより、原料の亜硫酸塩由来の硫酸バリウム等の不純物をほとんど含まない高純度のアルカンジスルホン酸バリウムが得られる。硫酸バリウムの結晶は非常に細かいために濾過性を悪化させるが、本発明のアルカンジスルホン酸バリウムの製造方法で得られたアルカンジスルホン酸バリウムは、不純物として硫酸バリウムをほとんど含まないために濾過性が良好であり、鱗片状の結晶として得られることが特徴として挙げられる。
鱗片状の結晶は、粉末状の結晶と比較して、濾過時間の短縮が可能である。
得られたアルカンジスルホン酸バリウムは、含水品として用いてもよいし、乾燥して用いてもよい。
【0037】
本発明のアルカンジスルホン酸バリウムの製造方法で得られる、上記一般式(3)で表されるアルカンジスルホン酸バリウムとしては、具体例には例えば、メタンジスルホン酸バリウム、エタンジスルホン酸バリウムなどが挙げられる。
【0038】
アルカンジスルホン酸バリウムと酸とを反応させることにより、アルカンジスルホン酸を製造することができる。
本発明のアルカンジスルホン酸バリウムの製造方法により製造されたアルカンジスルホン酸バリウムと酸とを反応溶媒中で反応させる工程(以下、工程3ともいう)を有する下記一般式(4)で表されるアルカンジスルホン酸の製造方法もまた、本発明の1つである。
【0039】
【化4】

【0040】
上記工程3において、アルカンジスルホン酸バリウムと反応させる酸は、硫酸、硝酸、フッ化水素酸、タングステン酸などが挙げられる。なかでも、入手性、経済性の観点から、硫酸であることが好ましい。
【0041】
上記工程3において、アルカンジスルホン酸バリウムと酸とを反応させると硫酸バリウム等のバリウム塩が生成するが、該バリウム塩を濾別することで、高純度のアルカンジスルホン酸の水溶液が得られる
【0042】
上記工程3において使用する酸の使用量は、アルカンジスルホン酸バリウム1モルに対して0.5〜2.0モルであることが好ましい。上記工程3において使用する酸が上記アルカンジスルホン酸バリウム1モルに対して0.5モル未満であると、反応が充分に進行できないことがある。上記工程3において使用する酸が上記アルカンジスルホン酸バリウム1モルに対して2.0モルを超えると、未反応の酸がアルカンジスルホン酸水溶液中に残存するため好ましくない。上記工程3において使用する酸の使用量は、アルカンジスルホン酸バリウム1モルに対して0.8〜1.1モルであることがより好ましい。
【0043】
上記工程3において使用する反応溶媒としては、水、または、水および水と混和する溶媒を混合した混合溶媒を用いることができ、水と混和する溶媒としては、メタノール、エタノール、エチレングリコール等のアルコール類や、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。なかでも、経済性の観点から、水単独で用いることが好ましい。
【0044】
上記工程3において使用する反応溶媒の使用量は、上記アルカンジスルホン酸バリウム100重量部に対して100〜1000重量部であることが好ましい。上記工程3において使用する反応溶媒の使用量が上記アルカンジスルホン酸バリウム100重量部に対して100重量部未満であると、結晶量が多いために攪拌が充分に行えず、反応が完全に進行しないことがある。上記工程3において使用する反応溶媒の使用量が上記アルカンジスルホン酸バリウム100重量部に対して1000重量部を超えると、廃液量が大幅に増加するため経済的でなくなる。上記工程3において使用する反応溶媒の使用量は、上記アルカンジスルホン酸バリウム100重量部に対して100〜300重量部であることがより好ましい。
【0045】
上記工程3における反応の反応温度は、0〜110℃(還流温度)であることが好ましく、50〜110℃(還流温度)であることがより好ましい。
上記工程3における反応の反応温度は、反応温度により異なるが、通常1〜5時間程度である。
【0046】
上記アルカンジスルホン酸バリウムと上記酸との反応終了後、反応溶媒を留去により除去することにより、不純物をほとんど含まない高純度のアルカンジスルホン酸が得られる。
【0047】
本発明のアルカンジスルホン酸の製造方法で得られる、上記一般式(4)で表されるアルカンジスルホン酸としては、具体的には例えば、メタンジスルホン酸、エタンジスルホン酸などが挙げられる。
【発明の効果】
【0048】
本発明によれば、高い収率で高純度のアルカンジスルホン酸バリウムを製造する方法を提供することができる。また、本発明は、該の製造方法により製造されたアルカンジスルホン酸バリウムを用いるアルカンジスルホン酸の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0050】
(実施例1)
(アルカンジスルホン酸バリウムの作製)
攪拌機および温度計を備え付けたオートクレーブに、亜硫酸ナトリウム265g(2.1モル)、塩化メチレン85g(1.0モル)、および、水1500gを仕込み、180℃まで昇温し、攪拌した。8時間後反応液を冷却し、100℃以下にて35%の塩酸31g(0.3モル)を添加して1時間反応させ、次いで、塩化バリウム水溶液900g(塩化バリウム1.0モル)を反応液に滴下した。滴下終了(1時間)後、反応液を冷却して濾過したところ、5分程度で濾過が完了した。濾過後、乾燥することで、メタンジスルホン酸バリウム・二水和物330g(0.95モル、純度99.2%)を得た。得られたメタンジスルホン酸バリウム・二水和物は中心粒径が100〜200μmの鱗片状の結晶であった。
【0051】
(アルカンジスルホン酸の作製)
攪拌機、温度計、冷却管を備え付けた四つ口フラスコに、得られたメタンジスルホン酸バリウム・二水和物174g(0.5モル)、および、水150gを仕込み、90℃まで昇温した。次いで、98%の硫酸50g(0.5モル)を添加し、3時間保温した。その後、副生成物である硫酸バリウムを濾別し、水洗することで、無色透明のメタンジスルホン酸水溶液322gを得た。水溶液中のメタンジスルホン酸は86g(0.49モル、純度99.9%)であり、収率は、メタンジスルホン酸バリウム・二水和物に対して98%、塩化メチレンに対して93%であった。
【0052】
(実施例2)
亜硫酸ナトリウム265g(2.1モル)に代えて亜硫酸カリウム332.3g(2.1モル)を用い、オートクレーブを昇温する温度を150℃に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で実施することにより、メタンジスルホン酸バリウム・二水和物327g(0.94モル、純度99.0%)を得た。得られたメタンジスルホン酸バリウム・二水和物は中心粒径が100〜200μmの鱗片状の結晶であった。
得られたメタンジスルホン酸バリウム・二水和物を用い、実施例1と同様の方法で実施することにより、メタンジスルホン酸水溶液を得た。水溶液中のメタンジスルホン酸は86g(0.49モル、純度99.9%)であり、収率は、メタンジスルホン酸バリウム・二水和物に対して98%、塩化メチレンに対して93%であった。
【0053】
(実施例3)
塩化バリウム水溶液900g(塩化バリウム1.0モル)をフッ化バリウム水溶液900g(フッ化バリウム1.0モル)に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で実施することにより、メタンジスルホン酸バリウム・二水和物306g(0.88モル、純度99.1%)を得た。得られたメタンジスルホン酸バリウム・二水和物は中心粒径が100〜200μmの鱗片状の結晶であった。
得られたメタンジスルホン酸バリウム・二水和物を用い、実施例1と同様の方法で実施することにより、メタンジスルホン酸水溶液を得た。水溶液中のメタンジスルホン酸は86g(0.49モル、純度99.8%)であり、収率は、メタンジスルホン酸バリウム・二水和物に対して98%、塩化メチレンに対して93%であった。
【0054】
(実施例4)
塩化メチレン85g(1.0モル)に代えて1,1−ジクロロエタン99g(1.0モル)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で実施することにより、エタン−1,1−ジスルホン酸バリウム・二水和物304g(0.84モル、純度99%)を得た。得られたエタン−1,1−ジスルホン酸バリウム・二水和物は中心粒径が100〜200μmの鱗片状の結晶であった。
得られたエタン−1,1−ジスルホン酸バリウム・二水和物を用い、実施例1と同様の方法で実施することにより、エタン−1,2−ジスルホン酸水溶液を得た。水溶液中のエタン−1,1−ジスルホン酸は92g(0.48モル、純度99.7%)であり、収率は、エタン−1,1−ジスルホン酸バリウム・二水和物に対して96%、1,1−ジクロロエタンに対して81%であった。
【0055】
(実施例5)
塩化メチレン85g(1.0モル)に代えて1,2−ジクロロエタン99g(1.0モル)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で実施することにより、エタン−1,2−ジスルホン酸バリウム・二水和物275g(0.76モル、純度99%)を得た。得られたエタン−1,2−ジスルホン酸バリウム・二水和物は中心粒径が100〜200μmの鱗片状の結晶であった。
得られたエタン−1,2−ジスルホン酸バリウム・二水和物を用い、実施例1と同様の方法で実施することにより、エタン−1,2−ジスルホン酸水溶液を得た。水溶液中のエタン−1,2−ジスルホン酸は92g(0.48モル)であり、収率はエタン−1,2−ジスルホン酸バリウム・二水和物に対して96%、1,2−ジクロロエタンに対して73%であった。
【0056】
(比較例1)
攪拌機、温度計を備え付けたオートクレーブに、亜硫酸ナトリウム265g(2.1モル)、塩化メチレン85g(1.0モル)、および、水1500gを仕込み、180℃まで昇温し、攪拌した。8時間後反応液を冷却し、予め調整した塩化バリウム水溶液900g(1.0モル)を100℃以下となった反応液に滴下した。滴下終了(1時間)後、反応液を冷却して濾過したところ濾過性が非常に悪く濾過に1時間以上要した。濾過後、乾燥することで、メタンジスルホン酸バリウム・二水和物359g(0.90モル、純度90%)を得た。得られたメタンジスルホン酸バリウム・二水和物は中心粒径が20〜70μmの細かい粉末状の結晶であり、乾燥時に塊状物を形成した。
得られたメタンジスルホン酸バリウム・二水和物を用い、実施例1と同様の方法で実施することにより、メタンジスルホン酸水溶液を得た。水溶液中のメタンジスルホン酸は84g(0.47モル、純度94%)であり、収率は、メタンジスルホン酸バリウム・二水和物に対して95%、塩化メチレンに対して86%であった。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明によれば、高い収率で高純度のアルカンジスルホン酸バリウムを製造する方法を提供することができる。また、本発明によれば、該アルカンジスルホン酸バリウムの製造方法により製造されたアルカンジスルホン酸バリウムを用いるアルカンジスルホン酸の製造方法を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるジハロアルカン化合物と亜硫酸ナトリウムおよび/または亜硫酸カリウムとを反応溶媒中で反応させ、下記一般式(2)で表されるアルカンジスルホン酸塩を含有する反応液を得る工程1と、
工程1で得られたアルカンジスルホン酸塩を含有する反応液に酸を加えた後、バリウム塩を加えて反応させる工程2とを有する
ことを特徴とする下記一般式(3)で表されるアルカンジスルホン酸バリウムの製造方法。
【化1】

式(1)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜5のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜5のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜5のフルオロアルキル基、または、炭素数1〜5のポリフルオロアルキル基を示す。Xはハロゲンを示す。nは1〜6の整数を示し、nが2〜6である場合、n個のRおよびn個のRは、それぞれ互いに同一でもよく異なっていてもよい。
【化2】

式(2)中、RおよびRは、式(1)におけるRおよびRと同じ基を示し、nは式(1)におけるnと同じ値を示し、Mはナトリウムまたはカリウムを示す。
【化3】

式(3)中、RおよびRは、式(1)におけるRおよびRと同じ基を示し、nは式(1)におけるnと同じ値を示す。
【請求項2】
式(1)におけるXは、塩素または臭素であることを特徴とする請求項1記載のアルカンジスルホン酸バリウムの製造方法。
【請求項3】
工程2において、酸は、塩酸であることを特徴とする請求項1または2記載のアルカンジスルホン酸バリウムの製造方法。
【請求項4】
工程2において、バリウム塩は、ハロゲン化バリウムであることを特徴とする請求項1、2または3記載のアルカンジスルホン酸バリウムの製造方法。
【請求項5】
ハロゲン化バリウムは、塩化バリウムであることを特徴とする請求項4記載のアルカンジスルホン酸バリウムの製造方法。
【請求項6】
式(1)、式(2)、および、式(3)におけるRおよびRは、水素原子であることを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載のアルカンジスルホン酸バリウムの製造方法。
【請求項7】
式(1)、式(2)、および、式(3)におけるnは、1であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5または6記載のアルカンジスルホン酸バリウムの製造方法。
【請求項8】
請求項1、2、3、4、5、6または7記載のアルカンジスルホン酸バリウムの製造方法で得られたアルカンジスルホン酸バリウムと酸とを反応溶媒中で反応させる工程を有することを特徴とする下記一般式(4)で表されるアルカンジスルホン酸の製造方法。
【化4】

式(4)中、RおよびRは、式(1)におけるRおよびRと同じ基を示し、nは式(1)におけるnと同じ値を示す。
【請求項9】
アルカンジスルホン酸バリウムと反応させる酸は、硫酸であることを特徴とする請求項8記載のアルカンジスルホン酸の製造方法。

【公開番号】特開2012−211092(P2012−211092A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76402(P2011−76402)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000195661)住友精化株式会社 (352)
【Fターム(参考)】