説明

アルキルベンゼンの生成方法

アルキルフェニルアルコールからのアルキルベンゼンの生成方法であって、(a)アルキルフェニルを含んでいる供給原料ストリームを、反応蒸留帯域を有する反応器へ供給する工程;および(b)この反応器において並行して(i)アルキルフェニルアルコールを含んでいる供給原料ストリームと水素とを、反応蒸留帯域において接触させ、第VIII族または第IB族金属を含んでいる触媒上で、アルキルフェニルアルコールをアルキルベンゼンへ転化する工程、および(ii)分別蒸留によって反応混合物からアルキルベンゼンを分離し、蒸留塔反応器からの供給原料ストリームよりも減少した濃度のアルキルフェニルアルコールを有するアルキルベンゼンを含んでいるオーバーヘッドストリームを生成する工程を含む方法。アルキルフェニルアルコールの例には、クミルアルコール、フェニルエチルアルコール、またはジ(2−ヒドロキシル−2−プロピル)ベンゼンが含まれ、アルキルベンゼンの例には、クメンおよびジエチルベンゼン、またはジ(2−ヒドロキシル−2−プロピル)ベンゼンが含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、アルキルアリールアルコールからのアルキルベンゼンの調製方法に関する。特に、本発明はクミルアルコールからのクメンの調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
アルキルベンゼンは、脱水および水素添加分解を包含する方法によって、アルキルアリールアルコールから発生させることができることは公知である。通常かなり多量の望ましくない副生物が、この方法の間、アルキルベンゼンのさらなる反応から発生する。
【0003】
クメンは、多工程方法によってクミルアルコール(2−フェニル−2−プロパノールとしても知られている)から発生させることができることも公知である。この方法は、α−メチルスチレンへの脱水、ついで水素添加分解固定床反応によるクメンへの水素化、およびクメンを回収するためのこの後の分別蒸留工程を包含する。かなり多量のi−プロピルシクロヘキサンおよびクメンダイマーが、望ましくない副生物として生成されるが、この理由は、アルファ−メチルスチレン(「AMS」)およびクメンが、これらが生成された後に水素化床上に留まることがあり、(触媒床を出る前に)結果として、これらのさらなる水素化または二量化が生じるからである。
【0004】
シェル・オイル・カンパニー(Shell Oil Company)に譲渡された米国特許第6,455,712号、第WO02/48126号、第WO02/48125号、および第WO02/48127号は、例えばクメンまたはジアルキルアリールから得られたアルキルアリールヒドロペルオキシドとオレフィンとを反応させて、オキシラン化合物およびアルキルアリールヒドロキシル化合物、例えばクミルアルコール(2−フェニル−2−プロパノールとしても知られている)またはp−ジ−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ベンゼンまたは2−プロピル−3(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ベンゼンを含んでいる生成物ストリームを得る方法を開示している。アルキルアリールヒドロキシル化合物が脱水および水素化され、アルキルアリールが生成され、ついで分別蒸留を行なって、アルキルアリール、例えばクメンまたはジアルキルアリールを回収する。0.1から10重量%のi−プロピルシクロヘキサンが、望ましくない副生物として生成される。これらの沸点の近接性によって、分別蒸留によってクメンからこの不純物を分離することは難しい。
【0005】
住友(Sumitomo)に譲渡された第WO01/70714号は、クメンを酸化して、酸化プロピレンおよびクミルアルコールを生成するためのプロピレンのエポキシド化のための酸素キャリヤーとしてのイソプロピルベンゼンペルオキシドを得ることに関連した方法について記載している。クミルアルコールは、脱水され、水素添加分解工程を介してクメンへ水素化され、反復使用のために再循環される。水素添加分解工程の間、クメンの5重量%までが二量化され、望ましくない副生物であるクメンダイマーを生成する。
【0006】
したがって、多工程方法をより少ない工程として組合わせるが、より少量の望ましくない副生物しかともなわずに、より純粋なクメン生成物を選択的に生成する、より効率的な方法を開発することが望ましい。
【発明の開示】
【0007】
(発明の概要)
本発明は、構造RC(Ph)OHを有するアルキルフェニルアルコール(アルキルアリールアルコールとしても知られている)からの、RCH(Ph)の構造を有するアルキルベンゼンの生成方法であって、式中、RおよびRは各々、水素であるか、または1から10個の炭素原子を有する炭化水素基であり、RおよびRの少なくとも1つは水素ではない方法であって、
(a)構造RC(Ph)OHを有するアルキルフェニルアルコールを含んでいる供給原料ストリームを、反応蒸留帯域を有する反応器へ供給する工程;
(b)この反応器において並行して:
(i)RC(Ph)OHを含んでいる供給原料ストリームと水素とを、反応蒸留帯域において接触させ、第VIII族または第IB族金属を含んでいる触媒上で、RC(Ph)OHをRC(Ph)Hへ転化する工程、および
(ii)分別蒸留によって反応混合物(i)からRC(Ph)Hを分離し、反応蒸留帯域よりも上の位置において、オーバーヘッドとして蒸留塔反応器からの供給原料ストリームよりも減少した濃度のRC(Ph)OHを有するRC(Ph)Hを含んでいるストリームを生成する工程
を含む方法に関する。
【0008】
アルキルアリールアルコールの非限定的な例証例には、クミルアルコール、フェニルエチルアルコール、およびオルト、メタ、またはパラ−ジ(2−ヒドロキシル−2−プロピル)ベンゼンが含まれ、アルキルベンゼンの例には、クメン、ジエチルベンゼン、およびメタ、オルト、またはパラ−ジ(イソプロピル)ベンゼンが含まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(発明の詳細な説明)
本発明は、アルキルフェニルアルコールをアルキルベンゼンへ転化するための改良方法に関する。図1は、反応蒸留反応実施態様の概略図における単純化フロー図を示している。この方法は、アルキルフェニルアルコール含有供給原料ストリーム101を、反応蒸留反応器の供給帯域に供給する工程、アルキルアリールアルコール含有供給原料ストリームと固定床触媒充填物106とを接触させ、一工程の脱水−水素化反応を並行して実施、アルキルシクロヘキサン、またはアルキルフェニルアルコールの二量体へ転化する前に、反応蒸留帯域において生成された比較的低い沸点のアルキルベンゼンを蒸留によって分別および除去し、一方で、未転化アルキルアリールアルコールまたはアルキルアリールアルコールは、これらがアルキルベンゼンへ転化されるまで、触媒を含んでいる反応蒸留帯域105へ還流され続ける工程を包含する。蒸留反応に必要な熱を供給するために、加熱媒質104を有する加熱装置を用いることができる。
【0010】
反応蒸留操作モードは、反応蒸留反応器における分別蒸留を通して、生成物のアルキルベンゼンを連続的に除去することによって、アルキルベンゼン、例えばクメンへのこの反応の選択率を向上させるという利点を提供する。連続反応蒸留操作は、並行した接触反応および生成物の分別をともなって、アルキルフェノールアルコールの大部分の沸点が、対応生成物であるアルキルベンゼンについての沸点よりも高いという事実から利益を得る。本発明は、多重の脱水および接触水素添加分解反応操作、ならびに、付随する熱交換装置および制御をともなう別個の水素化反応器を用いない単一反応器における分別工程を通して、必要とされる資本支出を低減させることによって、さらなる利点を提供する。反応蒸留と特別な接触水素化反応との組合わせは、芳香族結合の水素化をともなわずに、アルキルアリールアルコールの脱水から生成された、アルケニル鎖の飽和へのより良好な選択率を結果として生じる。
【0011】
本発明の範囲を制限しないが、このアルキルアリールアルコールは、RC(Ph)OHの配合を有し、生成されたアルキルベンゼンは、RC(Ph)H(式中、RおよびRは各々、水素であるか、または1から10個の炭素原子を有する炭化水素基であり、RおよびRの少なくとも1つは水素ではない)の構造を有する。
【0012】
本発明の特定の実施態様として、アルキルアリールアルコールは、クミルアルコールであり、生成されたアルキルベンゼンは、クメンである。下の表1は、クメンが、クミルアルコールおよび2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンおよび2−メチル−2,4−ジフェニルペンタンなどクメンダイマーの両方よりも低い沸点を有することを示している。したがって、生成されたクメンは、オーバーヘッド102、または反応蒸留帯域よりも上の触媒床105の上のサイドドローから回収され、反応のための触媒床105に未転化クミルアルコールを残す。最高沸点を有するあらゆるクメンダイマーは、反応器の底部セクションに留まり、反応器の頂部から蒸留されて出て行かないであろう。クメンダイマーを含有しうる、反応器の底部103における混合物は、底部ストリーム107として抜き出すことができる。
【0013】
【表1】

【0014】
本発明のもう1つの特定の実施態様において、アルキルアリールアルコールは、クミルアルコールであり、生成されたアルキルベンゼンはクメンである。アルキルアリールアルコールはまた、エチルフェニルアルコール(1−ヒドロキシル−1−フェニルエタンまたはヒドロキシエチルベンゼンとしても知られている)であってもよく、生成されたアルキルベンゼンは、エチルベンゼンである。本発明のさらにもう1つの特定の実施態様において、アルキルアリールアルコールは、オルト、メタ、パラ−ジ−(2−ヒドロキシル−2−プロピル)ベンゼン、4−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)クメン、3−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)クメン、2−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)クメン、またはこれらの混合物であり、結果として、アルキルベンゼン類、メタ、オルト、パラ−ジ−(イソプロピル)ベンゼン、またはこれらの混合物を生じる。特に、アルキルアリールアルコールは、パラ−ジ−(2−ヒドロキシル−2−プロピル)ベンゼンであり、アルキルベンゼンはパラ−ジ−(イソプロピル)ベンゼンである。
【0015】
本発明の特別な実施態様として、生成されたアルキルベンゼンの約1.0重量%未満、特に約0.5重量%未満、さらに特には約0.2重量%未満が、アルキルシクロヘキサン(RCH(シクロヘキサン))へ転化され、生成されたアルキルベンゼンの約0.1重量%未満、特に約0.05重量%未満、さらに特には0.01重量%未満が、アルキルベンゼンの二量体またはポリマーの形態で副生物へ転化される。
【0016】
特別な実施態様として、アルキルベンゼンおよびアルキルアリールアルコールよりも高い沸点を有する、反応蒸留において製造されたアルキルベンゼンの重質二量体またはポリマー、例えばクメンダイマーはいずれも、反応蒸留反応器の底部103に落下する。反応器の底部103にある二量体またはオリゴマーは、底部ストリーム107の一部として抜き出すことができ、場合によりこの後、例えば固定床モードで水素化分解され、より多くのアルキルベンゼン、例えばクメンを生成しうる。場合により、底部ストリームは分別蒸留され、アルキルフェニルアルコール、アルケニルベンゼン、および/またはアルキルベンゼンが除去される。これらは場合により、水素化分解される前に、反応蒸留反応器へ再循環して戻される。場合により、二量体またはオリゴマーは、反応器の底部で水素化/水素化分解することができる。クメンの二量化から製造された副生物の二量体の非限定的な例証例には、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンおよび2−メチル−2,4−ジフェニルペンタンが含まれる。アルキルベンゼンの二量体をアルキルベンゼンへ転化するため、例えば2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンおよび2−メチル−2,4−ジフェニルペンタンをクメンへ転化するための適切な水素化または水素化分解の例証的及び非限定的な例には、担体上に第VIII族金属または第IB族金属を含んでいる触媒、特に銅、パラジウム、白金、およびニッケルを担体上に含んでいる触媒が含まれる。担体の非限定的な例証例には、シリカ、シリカ−アルミナ、およびゼオライト、例えばモルデナイト、Na/H−モルデナイト、H−モルデナイト、ベータ−ゼオライト、H−ベータ−ゼオライト、Y−ゼオライト、H−Y−ゼオライトなどが含まれる。本発明の1つの特別な実施態様において、これらの触媒は、触媒の総重量を基準にした金属の重量として計算した場合、単独でまたは助触媒および変性剤、例えばパラジウム/金、パラジウム/銀、コバルト/ジルコニウム、ニッケルとともに、好ましくはac担体上に担持された、好ましくは酸性水素形態の担体上に担持された、主要触媒成分としての第VIII族金属または第VIII族金属化合物を約0.1から約5重量%、特に約0.2から2重量%含有する。「酸性水素形態」という用語は、イオン交換性カチオンの50%またはそれ以上が水素(+)イオン(「H」または「プロトン」としても知られている)であることを意味する。第IB族金属含有触媒は好ましくは、触媒の総重量を基準にした酸化物の重量として、特に酸性担体上、さらに特には酸性水素形態の担体上の第IB族金属を、約10から約80%、特に約30から70%、さらに特には約50から約60%含有する。このような触媒の特定の非限定例には、銅、ラネー銅、銅/クロム、銅/亜鉛、銅/亜鉛/クロム、銅/亜鉛/ジルコニウム、銅/シリカ、銅/亜鉛/アルミニウム、銅/アルミナ、パラジウム/カーボン、パラジウム/H−モルデナイトを含んでいる触媒、およびほかの銅ベースの触媒系が含まれる。アルキルベンゼンの二量体の約86.0から約100.0重量%、特に約90.0から約100.0重量%、さらに特には約94.0から約100.0重量%、よりさらに特には97.5から約100.0重量%、よりさらに特には約98.0から約100.0重量%が、約140℃から約300℃、特に約185℃から約235℃、さらに特には約185℃から約225℃の温度でアルキルベンゼンへ転化される。
【0017】
非限定的な例証例として、反応蒸留床(所用触媒を有する反応蒸留帯域としても知られている)105、すなわち図1の斜線部分は、反応蒸留反応器中の中央で、頂部110(アルキルベンゼンがオーバーヘッドとして回収される場所)、またはアルキルベンゼン生成物ストリームのサイドドローの下の地点に配置され、供給原料ストリームおよび水素含有ストリーム108は、反応蒸留床105の下で反応器の中に供給される。この構成によって、供給原料ストリームおよび水素が、上に移動してこの床の中に入り、側鎖を水素化するための本明細書に記載されている条件下に触媒と接触することが可能になる。代替方法において、供給原料ストリームは、反応蒸留反応器105の中の反応蒸留床105の上のところに供給され、下に移動して反応蒸留床105の中に入り、反応蒸留床105の下から供給された水素と接触する。さらにもう1つの代替方法として、供給原料ストリームは、反応蒸留帯域105のところで反応器に入る。本発明の範囲を制限する意図はないが、反応器への供給原料ストリーム101の流入点を、供給原料ストリームの濃度にしたがって設計することもできる。例えば供給原料ストリーム中のアルキルフェニルアルコールの濃度が高くなればなるほど、供給原料ストリーム101の流入点は高くなるであろう。適切な反応蒸留反応器の非限定的な例証例は、約0.01メートルから約20メートル、特に約0.5メートルから約10メートルの外径、および約0.2メートルから約200メートル、特に約1メートルから約100メートルの高さを有する。
【0018】
反応蒸留帯域/床105は、分離に対して十分な制限を与えるために、どのような方法で充填されてもよい。非限定的な例証例は、床105中の触媒材料に加えて、構造化充填物を添加する工程を含む。触媒材料は、分別蒸留のための従来の充填塔によって達成された方法で、したがって触媒および蒸留充填物の両方として機能する方法で、改良された効率を与えるように造形およびサイズ決定することができる。触媒充填物は、蒸気が反応蒸留床を通って流れるのを可能にするが、触媒接触のために十分な表面積を与えうるような性質を有するものである。
【0019】
非限定的な例証例として、これらの触媒は、複数のトレーに充填され、反応器中の液体が、これらのトレーを通って下の次のトレーへ落ちて行くような溢れた状態に維持することができる。この材料はついで、従来の分留塔においてのように、より低いトレー上で分別される。場合により、触媒をともなわない追加トレー/充填物112が、反応蒸留床105の下で用いられる。これらのトレー/充填物は、水素含有供給原料ストリーム108の流入点の下、および/または供給原料ストリーム101の流入点の下であってもよく、反応体および生成物間、特にアルキルフェニルアルコールとアルキルベンゼンダイマー/オリゴマーとの間の分離を改良するように設計され、このようにして反応器の底部103におけるアルキルフェニルアルコール含量を減少させる。より高い沸点の反応体であるアルキルアリールアルコール、例えばクミルアルコールを含有する供給原料ストリーム101は、反応蒸留反応帯域105中の触媒床に装入された触媒と連続的に接触させられ、並行して、結果として生じた反応混合物が、固定床触媒中で分留される。比較的低い沸騰の生成物であるアルキルベンゼン、例えばクメンは、触媒床を通って上方へ行き、オーバーヘッドまたは触媒床の上のサイドドローの一部(通常は大部分)として回収されうる。水素化反応(脱水と組合わされた)および分留は、固定触媒床上で並行して行なわれ、この触媒床は、触媒、および反応蒸留反応器中の蒸留充填物の両方として役立つ。未反応アルキルフェニルアルコールおよびアルケニルベンゼンは、触媒床中に残され、アルキルベンゼンへの転化用触媒と接触している。アルキルアリールアルコールの大部分は脱水されてアルケニルベンゼンを形成し、これらは一時的に出て行くだけであり、触媒床においてアルキルベンゼンへ直ちに水素化される。場合により、追加の充填物/トレー114が、反応蒸留帯域の上で用いられ、アルキルベンゼンのさらなる精製を与える。オーバーヘッド102または触媒床の上のサイドドローは場合により、水素および/または水分離工程に付され、水素が回収され、および/または濃密水が除去され、場合により乾燥剤、例えば分子篩で乾燥され、回収されたアルキルベンゼンは、再使用のために再循環することができる。またはこれは、さらなる精製のための環流ストリーム111として、反応蒸留帯域の上の地点において蒸留塔へ戻すこともできる。場合により水および水素が除去されている、脱水されたオーバーヘッドまたはサイドドローは、アルキルベンゼン約90から約100重量%、特に約98から約100重量%、さらに特には約99.5から約100重量%;アルキルアリールアルコール約0から約10重量%、特に約0から約5重量%、さらに特には約0から約1重量%;アルケニルベンゼン約5重量%未満、特に約1重量%未満、さらに特には約0.1重量%未満;アルキルベンゼンの二量体またはオリゴマー約5重量%未満、特に約1重量%未満、さらに特には約0.1重量%未満;アルキルシクロヘキサン約5重量%未満、特に約1重量%未満、さらに特には約0.2重量%未満を含んでいる。
【0020】
クミルアルコールを含んでいる供給原料ストリームが、反応蒸留反応器へ供給される場合、オーバーヘッド102または触媒床の上のサイドドローは、水および/または水素の除去後、クメン約90から約100重量%、特に約98から約100重量%、さらに特には約99.5から約100重量%;クミルアルコール約0から約10重量%、特に約0から約5重量%、さらに特には約0から約1重量%;アルファ−メチルスチレン約5重量%未満、特に約1重量%未満、さらに特には約0.1重量%未満;クメンの二量体またはオリゴマー約5重量%未満、特に約1重量%未満、さらに特には約0.1重量%未満;イソプロピルシクロヘキサン約5重量%未満、特に約1重量%未満、さらに特には約0.2重量%未満を含んでいる。
【0021】
本発明の範囲を制限しないが、本発明の有効性を生じるメカニズムは、反応系におけるアルキルフェニルアルコールまたはアルケニルベンゼン含有蒸気の一部分の凝縮であることが提案される。これは、触媒の存在下、水素とアルケニルベンゼン、例えばアルファ−メチルスチレンとの間の不可欠な均質接触を得るのに十分な水素を、凝縮液体中で吸蔵させ、結果としてアルケニルベンゼンの側鎖の水素化を生じる。
【0022】
特別な実施態様として、還流凝縮器が、この系の中に含まれる。還流比は、1から20:1の率にわたって様々であってもよいであろう。実際、短い触媒床を補うために、比較的高い比が用いられてもよい。商用サイズの単位装置において、触媒床には普通、より低い還流比が与えられ、したがってより高い単位装置生産率が通常得られる。
【0023】
この反応器における温度は、あらゆる所定の圧力においてアルキルベンゼンの沸点によって決定される。蒸留反応器は、反応混合物が、触媒床において沸騰するような圧力で操作される。一般に、0psigから400psig、特に約0psigから140psig(または約1から10バール)の範囲の圧力が用いられてもよい。
【0024】
クミルアルコール含有供給原料ストリームの転化のために、圧力は、約0psigから400psig、特に約5psigから300psig、さらに特には約0psigから140psig(または約1から10バール)の範囲であってもよい。クメンは、約152から154℃、約0psig(1バール)で沸騰し、より高い圧力ではクメンの沸点は上昇するであろうと理解される。例証的な非限定例として、本発明の方法は、50psig以下のオーバーヘッド圧力で操作される。好ましくは反応器は、温度を低下させるために低い圧力で操作され、このようにして望まれない重合を防ぎ、より良好な選択率を達成する。約0psig(大気圧)で、反応器の底部における温度は、約200℃よりも高く、頂部において約155℃に近く、反応蒸留帯域において約150から210℃である。
【0025】
供給原料の重量毎時空間速度(WHSV)は、この他の条件限界内で、非常に広い範囲にわたって様々であってもよく、約0.1hr−1から約10hr−1、特に約0.2hr−1から約2hr−1であってもよい。本明細書において用いられているWHSVは、反応器中の触媒1単位重量あたり、反応蒸留反応器に入る、1時間あたりの供給原料の単位重量を意味する。
【0026】
例証例として、この供給原料ストリームは、アルキルアリールアルコール約1から約100重量%、特に約5から約75重量%、さらに特には約10から約40重量%;アルキルベンゼン約0から約99重量%、特に約25から約95重量%、さらに特には約60から約90重量%;アルケニルベンゼン約0から約20重量%、特に約0から約5重量%、さらに特には約0から約1重量%;およびアルキルベンゼンヒドロペルオキシド約0から約25重量%、特に約0から約10重量%、さらに特には約0から約5重量%を含有する。本発明の特別な実施態様の特定の例証例として、供給原料ストリームは、クミルアルコール約1から約100重量%、特に約5から約75重量%、さらに特には約10から約40重量%;クメン約0から約99重量%、特に約25から約95重量%、さらに特には約60から約90重量%;アルファ−メチルスチレン約0から約20重量%、特に約0から約5重量%、さらに特には約0から約1重量%;エチルベンゼン約0から約5重量%;ジ−、トリ−イソプロピルベンゼン、エチルベンゼン、プロピル−ベンゼン、エチル−イソプロピルベンゼンなど、またはこれらの混合物約0から約5重量%;およびクメンペルオキシド約0から約25重量%、特に約0から約10重量%、さらに特には約0から約5重量%を含有する。
【0027】
供給原料ストリームがジ−イソプロピルベンゼン(DIPB)を含んでいる場合、これは、クメン、トリ−イソプロピルベンゼン、エチルベンゼン、プロピル−ベンゼン、エチル−イソプロピルベンゼンなど、またはこれらの混合物を少量、例えば5重量%未満含有することになろう。このことはまた、副反応によって、ペルオキシド、エポキシド化、水素化反応器へ循環されるストリームにもあてはまる。
【0028】
水素化率は、水素化反応を支持し、及び触媒から失われる水素に取って替わるのに十分なように調節されるべきである。(アルキルベンゼンへ転化される前に一時的に生成された)アルケニルベンゼンに対する水素の少なくとも化学量論量が、反応のために利用可能になるように、この系中に存在すべきである。非限定例として、小過剰の水素流が、液体中へ水素を吸収させ、この反応を気体と液体との間の状態に合わせるために供給される。
【0029】
反応蒸留のための反応器において実施される水素化には、この型のストリームの先行技術による液相方法において必要とされる水素分圧の一部分しか必要としないが、同一またはより良好な結果を生じる。したがって、本発明の水素化方法のための資本投資および操業費用は、先行技術の方法よりも実質的により低い。より低い水素分圧によって、生成物の芳香族部分を不当に水素化することなく、より低い温度でより活性な触媒の使用が可能になる。
【0030】
本発明の反応蒸留反応はまた、蒸留と並行して行なわれる反応を有することからも利益が得られ、当初反応生成物およびほかのストリーム成分は、できるだけ迅速に反応帯域から除去され、副反応の可能性を減少させる。さらには、すべての成分が沸騰しているので、反応温度は、系圧力において混合物の沸点によって制御される。反応熱は、単により多くの煮沸(boil−up)を生じるだけであって、所定の圧力における温度増加を生じない。この結果、反応速度および生成物分布に対する大きい制御が、系圧力を調節することによって達成しうる。同様に、処理量(throughput)の調節は、生成物分布のさらなる制御、およびある程度まで、副反応、例えば二量化およびオリゴマー化の制御を与える。この反応が反応蒸留から得ることができるさらなる利点は、内部還流が触媒へ与える洗浄効果であり、これによってポリマーの蓄積、および触媒のコークス化を減少させる。内部還流は、0.2から20L/D(触媒床のすぐ下の液体/重量/留出物重量)の範囲にわたって様々であってもよい。
【0031】
水素化プロセスにおいて用いられる触媒材料はまた、蒸留充填物としても役立つ。すなわちこれは、触媒および蒸留充填物の両方として機能する蒸留系の一構成要素である。この微粒子触媒材料は、合理的な反応速度を可能にするのに十分な表面積を与えるあらゆる形態、構造、サイズにあってもよい。これは、粉末、小さい不規則塊もしくは断片、小さいビーズなど、およびこれらの組成物であってもよい。反応蒸留床の構造の非限定例は、触媒を含有させ、及びワイヤメッシュ構造、例えばワイヤメッシュ管状構造またはこの他のあらゆる同様な構造の形態の蒸留表面を提供するために、多孔質プレートまたはスクリーンの中に微粒子触媒材料を付着させる工程を含む。これはまた、微粒子触媒材料で満たされた、柔軟性のある半剛性の目の粗いメッシュの管状材料、例えばステンレス鋼ワイヤメッシュであってもよい。触媒構造の特定の例は、米国特許第5,266,546号、第4,242,530号、第4,443,559号、および第5,348,710号に見ることができる。これらは、この全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0032】
あらゆる適切な水素化触媒を用いることができる。例証的な非限定例として、元素周期表の第VIII族金属が、単独で、または助触媒および変性剤、例えばパラジウム/金、パラジウム/銀、コバルト/ジルコニウム、ニッケルとともに、好ましくは担体、例えばゼオライト、アルミナ、耐火レンガ、軽石、カーボン、シリカ、熱安定性樹脂などの上に担持されて、主要触媒成分として用いられる。これらの触媒は、触媒の総重量を基準にした金属の重量として計算された場合、キャリヤー、特にゼオライト上に担持された第VIII族金属または第VIII族金属化合物を約0.1から約5重量%、特に約0.2から2重量%含有する。適切な触媒材料の1つの例証例は、適切な担体媒質、例えばアルミナ、カーボン、ゼオライト(例えばモルデナイト)、またはシリカ上に担持された、酸化パラジウムまたはパラジウムを、好ましくは0.1から5.0重量%含んでいる。米国特許第4,822,936号に開示されている、ガンマアルミナ担持された銅ベースの触媒も、許容しうる。
【0033】
本発明のほかの特別な実施態様として、元素周期表の第IB族金属、例えば銅が、単独で、または助触媒および変性剤、例えばクロム、亜鉛、ジルコニウム、第VIII族金属などとともに、主要触媒成分として用いられる。第IB族金属含有触媒は好ましくは、触媒の総重量をベースとした酸化物重量として、特に担体上の第IB族金属を約10から約80%、特に約30から約70%、さらに特には約50から約60%含有する。いくつかの特定の例証例には、市販されているシリカ上の銅触媒上、すなわちジュッド・ヘミー(Sud Chemie)から入手しうるT−366(プレス押出し物または成形押出し物として、シリカ上の銅約54重量%を有する);銅クロマイト触媒、すなわちジュッド・ヘミーから入手しうるG−22/2;および米国特許第5,475,159号の実施例3にしたがって調製されたCu/Zn/Zr触媒などが含まれる。これらの触媒の組合わせも用いることができる。これらの触媒は好ましくは、使用前に、窒素中の希釈水素で還元される。
【0034】
触媒は続いて、水素によって還元される。反応蒸留帯域における触媒床は、次の非限定的な例証的手順によって調製され、予め活性化することができる。触媒は圧潰され、適切なサイズ、例えば6から20メッシュ粒子のサイズにされる。触媒は、不活性希釈剤、例えばSiCと混合され、ステンレス鋼反応器管内部の、20メッシュSiCの床間の中心に配置され、これは、触媒を定位置に保持するためにグラスウールで仕切られている。触媒粒子を1分あたり約1から約10℃、特に約1.5から約5℃の率で、例えば約150から250℃の温度まで加熱し、一方で、約0.001から約0.1重量%、特に約0.02から0.10重量%の窒素中水素を、1から200、特に2から30L/時で流すことによって、触媒はゆっくりと還元される。触媒は、150から250℃で1から10時間還元させられ、ついで窒素中の水素含量は、気体が窒素中水素1から10重量%、特に2から5重量%になるまで1から5時間毎に2倍にされる。触媒は、最後の1から5時間の間還元され、ついで気体流を維持しつつ冷却される。冷却後、反応器は、空気を入れないようにフタをされ、気体流が停止される。反応器は、窒素充満環境において開かれ、触媒と炭化ケイ素とは、スクリーン篩によって分離される。
【0035】
前記手順によって調製された還元触媒の6から20メッシュ粒子が、窒素充満環境において蒸留反応器中の多孔質プレートまたはスクリーンからできている床支持体上に装入される。グラスウールも、触媒粒子を支持するために用いることができる。水素ガスが、圧力を0から450psig(約1から32バール)(典型的には0から150psig(約1から11バール))に維持するために、調節器を介して装置へ添加される。流量は、反応化学量論に必要とされる水素の量の2倍に維持するために調節される。アルキルアルコールを含有する供給原料ストリーム、例えば2−フェニル−2−プロパノール(クミルアルコール)(例えば10から40重量%)を含有するストリームが、触媒床の下から蒸留反応器の中に供給される。蒸留反応器の底部セクションは、ヒーターの中まで下降させられ、ついで温度は、液体が、触媒を含む蒸留反応帯域において還流するまで上昇される。より低い沸点のアルキルベンゼン、例えばクメン、および水は、塔の頂部から蒸留して出される。アルキルベンゼン、例えばクメンへ転化され、蒸留されるアルキルアルコール、例えばクミルアルコールの量に替わる追加のアルキルアルコール、例えばクミルアルコール含有ストリームが、わずかなモル過剰の水素とともに連続的に添加される。アルキルベンゼン、例えばクメン生成物は、より濃密な水相から容易に分離する。これは場合により、分子篩またはほかの適切な乾燥剤を用いてさらに乾燥される。生成されたアルキルベンゼン、例えばクメンは、98重量%超、好ましくは99重量%超の純度を有する。測定可能なアルキルアルコール、例えばクミルアルコールは、アルキルベンゼン、例えばクメン生成物中に見られない(<0.01重量%)。所望の場合、塔底物(bottoms)は、除去することができ、場合によりクメンで希釈し、固定床水素化反応器へ送り、追加のアルキルベンゼン、例えばクメンを製造することができる。
【0036】
本発明は、次の例証的実施態様によって例証される。これらは、例証のみを目的として示され、本発明の範囲を制限するものではない。
【実施例】
【0037】
例証的および比較実施態様
I.例証的実施態様 − クミルアルコールのクメンへの反応蒸留
IA.触媒T−366の調製および還元
ジュッド・ヘミーから入手しうる、市販されているシリカ上銅触媒T−366を、反応蒸留モード実験のために次の手順を用いてさらに処理する。
【0038】
ジュッド・ヘミーのT−366シリカ上銅触媒5グラム(3mmタブレット)を、圧潰し、6から20メッシュ粒子のサイズにした。この触媒を、80メッシュ炭化ケイ素45グラムと混合し、69cm長さのステンレス鋼反応器管の内部の、20メッシュSiCの床とグラスウールとの間の中心に配置した。反応器管は、1.5cmの内径を有していた。触媒粒子を1分あたり3℃の率で20℃から180℃へ加熱する一方で、10L/時の率で窒素中水素0.05重量%を流すことによって、触媒をゆっくりと還元した。触媒を、180℃で2時間還元させておき、ついで窒素中の水素含量を、気体が窒素中水素3.2重量%になるまで、2時間毎に2倍にした。触媒を最後の2時間の間還元し、ついで気体流を維持しつつ冷却した。冷却後、反応器を、空気を入れないようにフタをし、気体流を停止した。反応器は、窒素充満グローブボックス中において開かれ、触媒と炭化ケイ素とを、スクリーン篩によって分離した。
【0039】
IB.T−366触媒を用いた反応蒸留
例証的実施態様Iの手順によって調製された、還元T−366触媒の6から20メッシュ粒子を、窒素充満グローブボックスの内部にある間、内径1.5cmを有する厚壁の31cm長さのビグルー(Vigreux)塔の還流帯域中に装入した。グラスウールの小片を用いて、触媒粒子を支持した。塔を、厚壁の250ml丸底フラスコへ取付けた。これは、反応蒸留のための反応器の底部セグメントとして機能する。水素ガスを、調節器を介して装置に添加し、圧力を1から10バールに維持した。流量を、反応化学量論に必要とされる水素の量の2倍に維持するように調節した。アバカド・ケミカル(Avacado Chemical)からの2−フェニル−2−プロパノール(クミルアルコール)50グラムを、磁気攪拌棒を含む250mLのフラスコへ添加した。クミルアルコールが入っているフラスコを、ヒーターの中まで下降させ、液体が、触媒が入っているビグルー塔内で還流するまで温度を上昇させた。より低い沸点のクメンおよび水が、塔の頂部から留出した。追加のクミルアルコールを、わずかなモル過剰の水素とともに連続的に添加し、クミルアルコールの量と取って替わらせ、これを、クメンへ転化し、蒸留した。クメン生成物は、より濃密な水相から容易に分離した。これを場合により、3Å分子篩でさらに乾燥した。これらの結果を下の表2に示す。示されているように、生成された頂部生成物(水の除去後)は、>99.5重量%のクメンの純度を有していた。測定可能なクミルアルコールは、クメン生成物中に見られない(<0.01重量%)。所望の場合、塔底物を除去することができ、場合によりクメンで希釈し、固定床水素化反応器へ送り、追加のクメンを製造することができる。
【0040】
【表2】

【0041】
IC.Pd−モルデナイト触媒の調製
ナトリウムモルデナイト(次の特性を有するもの:1グラムあたり430平方メートルの表面積;約1ミクロンの平均晶子サイズ;7.6cc/gのシクロヘキサン吸着取り込み;および11.1のシリカ対アルミナモル比)1,500グラム、硝酸アンモニウム9,000グラム、および1.5M硝酸15リットルの混合物を、50℃に加熱し、5時間攪拌した。固体材料を濾去し、脱イオン水25リットルで洗浄した。硝酸中の硝酸アンモニウムでのモルデナイトのこの処理を、毎回新鮮な硝酸アンモニウムおよび硝酸を用いて2回繰り返した。各処理後、固体材料を濾去し、水で洗浄し、120℃で一晩乾燥した。パラジウムを、次のような水溶液での処理によって、0.35重量%のレベルになるまでゼオライトに添加した。この水溶液は、脱イオン水308グラム中に硝酸テトラアミンパラジウム6.55グラムを溶解し、この溶液へ硝酸アンモニウム4.92グラムを添加することによって調製された、硝酸テトラアミンパラジウムおよび過剰の硝酸アンモニウムを含有する。ついでこのパラジウム溶液を、10.6%のLOI(750℃で2時間の強熱減量)を有する脱アルミニウム(dealuminated)モルデナイト1,083グラムとともに混練した(co−mull)。パラジウム含有モルデナイトを均一混合し、ついで28.4%のLOIを有する擬似ベーマイトアルミナ(ビスタ・ケミカル・カンパニー(Vista Chemical Company)から市販されているカタパル(Catapal)B)338グラムを添加し、混合した。この混合物を押出し、1.6mmの押出し物を、125℃で16時間空中で乾燥し、ついで500℃で2時間、空気流中で焼成した。触媒を圧潰し、6から20メッシュ粒子のサイズにし、ついで反応蒸留モード実験について上のIAに記載されている手順を用いてさらに水素化した。
【0042】
ID.Pd−モルデナイト触媒を用いた反応蒸留
上の例証的実施態様ICの手順によって調製された、還元Pd−モルデナイト触媒を、窒素充満グローブボックスの内部にある間、内径1.5cmを有する厚い壁の31cm長さのビグルー塔の還流帯域中に装入した。反応蒸留操作の構成および操作については、上のIBに記載されているのと同じ手順にしたがった。結果を下の表3に示す。示されているように、水の除去後に生成された頂部生成物は、>99.5重量%のクメンの純度を有していた。測定可能なクミルアルコールは、クメン生成物中に見られない(<0.01重量)。所望の場合、塔底物を除去することができ、場合によりクメンで希釈し、固定床水素化反応器へ送り、追加のクメンを製造することができる。
【0043】
【表3】

【0044】
II.比較実施態様 − クメンの固定床調製
IIA.銅、亜鉛、およびジルコニウムを含有する触媒
触媒を、米国特許第5,475,159号の実施例3にしたがって調製した。
【0045】
IIB.IIAに記載された触媒を用いた、クミルアルコールのクメンへの固定床転化
IIAからの上記Cu/Zn/Zr触媒20.0ccを圧潰し、6から20メッシュ粒子のサイズにした。この触媒を、80メッシュ炭化ケイ素45グラムと混合し、69cm長さのステンレス鋼反応器管の内部の、20メッシュSiCの床とグラスウールとの間の中心に配置した。反応器管は、1.5cmの内径を有していた。触媒粒子を1分あたり3℃の率で20℃から180℃へ加熱する一方で、10L/時の率で窒素中水素0.05重量%を流すことによって、触媒をゆっくりと還元した。触媒を、180℃で2時間還元させておき、ついで窒素中の水素含量を、気体が窒素中水素3.2重量%になるまで、2時間毎に2倍にした。触媒を最後の2時間の間還元し、この後気体を99.999%水素へ切り替え、反応器を290psig(20バール)のゲージ圧へ水素で加圧する一方で、触媒床を180℃に維持した。水素流量を2L/時に調節した。2−フェニル−2−プロパノール(アボカド・ケミカル(Avocado Chemical)から得られた)約25.5重量%およびクメン(オルドリッチ・ケミカル・カンパニー(Aldrich Chemical Company)から得られた)74.5%を含有する混合物を、33.5g/時の供給率で反応器に供給し、一方で、水素流量および180℃の床温度を維持した。1週間の操作後、反応器生成物のサンプルを収集し、水を乾燥し、ガスクロマトグラフィーによって分析した。この生成物は、8.1重量%の2−フェニル−2−プロパノール、91.2重量%のクメン、0.1重量%のアルファ−メチルスチレン、0.1重量%のi−プロピルシクロヘキサン、および0.5重量%のクメンダイマーを含有していた。
【0046】
IIC.シリカ上の銅触媒を用いた、クミルアルコールのクメンへの固定床転化
ジュッド・ヘミーから得られた、実施例IBに記載されているシリカ上の銅触媒(T−366)を用いて、IIBの実験を繰り返した。触媒20ccを用いた。還元T−366触媒のより高い活性によって、テストは、150℃の温度で実施した。200時間の操作後、乾燥された生成物は、9.7重量%の2−フェニル−2−プロパノール、88.4重量%のクメン、0.1重量%のアルファ−メチルスチレン、0.1重量%のi−プロピルシクロヘキサン、および1.7重量%のクメンダイマーを含有していた。180℃で操作した時、生成物は、5重量%未満の2−フェニル−2−プロパノールを含有していた。
【0047】
IID.比較実施態様IIEのための触媒の調製
銅クロマイト触媒(ジュッド・ヘミーG−22/2)33.5グラム(20cc)を、圧潰し、6から20メッシュ粒子のサイズにした。前述のように、この触媒を、80メッシュ炭化ケイ素45グラムと混合し、69cm長さのステンレス鋼反応器管の内部の、20メッシュSiCの床とグラスウールとの間の中心に配置した。反応器管は、1.5cmの内径を有していた。触媒粒子を1分あたり3℃の率で20℃から180℃へ加熱する一方で、10L/時の率で窒素中水素0.05重量%を流すことによって、触媒をゆっくりと還元した。触媒を、180℃で2時間還元させておき、ついで窒素中の水素含量を、気体が窒素中水素3.2重量%になるまで、2時間毎に2倍にした。触媒を最後の2時間の間還元した。窒素中の3.2重量%水素を、水素(>99.999%)と取り替えた。2時間後、反応器を290psig(20バール)のゲージ圧へ水素で加圧する一方で、触媒床を180℃に維持した。水素流量を2L/時に調節した。
【0048】
IIE.銅クロマイト触媒を用いた、クミルアルコールのクメンへの固定床転化
75重量%クメン(>99%純度、オルドリッチ・ケミカルから得られた)中の約25重量%クミルアルコール(>98%純度、アボカドケミカルから得られた)を含有する供給原料を、ブレンドによって製造した。水素添加分解反応を、下の表4に示されている条件下に実施した。テストの間、2つの水素流量、すなわち2L/時または4/時を用いた。このテストの結果を、表5および表6に示す。示されているように、この固定床方法は、副生物として未転化クミルアルコール7.9重量%、クメンダイマー0.6重量%、およびイソプロピルシクロヘキサン0.1重量%を有する、約91重量%純度のクメン生成物ストリームを生成する。
【0049】
【表4】

【0050】
【表5】

【0051】
【表6】

【0052】
本明細書および特許請求の範囲に示されている範囲および制限は、本発明を特別に指摘し、明確に特許請求すると考えられているものである。しかしながら、同じかまたは実質的に同じ結果を得るための、実質的に同じ方法で実質的に同じ機能を果たすほかの範囲および制限は、本明細書および特許請求の範囲によって規定されている本発明の範囲内にあるものとすると理解される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1は、本発明の実施態様の概略形態におけるフロー図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造RC(Ph)OHを有するアルキルフェニルアルコールからの、RC(Ph)の構造を有するアルキルベンゼンの生成方法であって、
(a)構造RC(Ph)OHを有するアルキルフェニルアルコールを含んでいる供給原料ストリームを、反応蒸留帯域を有する反応器へ供給する工程;
(b)前記反応器において並行して:
(i)RC(Ph)OHを含んでいる供給原料ストリームと水素とを、前記反応蒸留帯域において接触させ、RC(Ph)OHをRCH(Ph)へ転化し、反応混合物を形成する工程、および
(ii)分別蒸留によってRCH(Ph)を前記反応混合物から分離し、前記反応蒸留帯域よりも上の位置において、前記接触反応帯域よりも上の位置における反応器からの供給原料ストリームよりも減少した濃度のRC(Ph)OHを有するRCH(Ph)を含んでいるストリームを生成する工程であって、
式中、RおよびRは各々、水素であるか、または1から10個の炭素原子を有する炭化水素基であり、RおよびRの少なくとも1つは水素ではない工程
を含む、前記方法。
【請求項2】
供給原料ストリーム中のRC(Ph)OHの1.0重量%未満が、RCHへ転化される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アルキルフェニルアルコールが、エチルフェニルアルコール、p−ジ(2−ヒドロキシル−2−プロピル)ベンゼン、m−ジ(2−ヒドロキシル−2−プロピル)ベンゼン、o−ジ(2−ヒドロキシル−2−プロピル)ベンゼン、4−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)クメン、3−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)クメン、2−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)クメン、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
工程(b)において、供給原料ストリームが、反応蒸留帯域において、元素周期表の第VIII族金属または第IB族金属、好ましくはパラジウムまたは銅、を含んでいる触媒と接触している、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
2−フェニル−2−プロパノールからのクメンの生成方法であって、
(a)2−フェニル−2−プロパノールを含んでいる供給原料ストリームを、反応蒸留帯域を有する反応器へ供給する工程;および
(b)前記蒸留反応器において並行して:
(i)2−フェニル−2−プロパノールを含んでいる供給原料ストリームと水素とを、前記反応蒸留帯域において接触させ、2−フェニル−2−プロパノールをクメンへ転化し、反応混合物を形成する工程、および
(ii)分別蒸留によって(i)からの反応混合物からクメンを分離し、前記反応蒸留帯域よりも上の位置において、クメンを含み、及び前記供給原料ストリームよりも低い濃度の2−フェニル−2−プロパノールを有するストリームを生成する工程
を含む、前記方法。
【請求項6】
供給原料ストリーム中の2−フェニル−2−プロパノールの0.5重量%未満が、i−プロピルシクロヘキサンへ転化される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
工程(i)において生成されたクメンの約0.05重量%未満が、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンまたは2−メチル−2,4−ジフェニルペンタンへ転化される、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
工程(b)において、供給原料ストリームが、反応蒸留帯域において第IB族金属または第VIII族金属、好ましくはパラジウムまたは銅を含んでいる触媒の存在下にある、請求項5から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
2−フェニル−2−プロパノールからのクメンの生成方法であって、
a.2−フェニル−2−プロパノールを含んでいる供給原料ストリームを、蒸留反応帯域を含んでいる反応器へ供給する工程;および
b.前記反応器において並行して:
(i)2−フェニル−2−プロパノールを含んでいる供給原料ストリームと水素とを、蒸留反応帯域において第VIII族金属または第IB族金属を含んでいる触媒の存在下に接触させ、供給原料ストリーム中の2−フェニル−2−プロパノールをクメンへ転化し、クメンを含んでいる反応混合物を形成する工程;
(ii)分別蒸留によって反応混合物からクメンを分離する工程であって、好ましくは2−フェニル−2−プロパノールの約0.5重量%未満が、i−プロピルシクロヘキサンへ転化される工程;および
(iii)反応蒸留帯域よりも高い位置において、クメン約98から約99.9重量%を含み、及び蒸留塔反応器からの供給原料ストリームよりも低い濃度の2−フェニル−2−プロパノールを有するストリームを抜き出す工程;
c.反応蒸留帯域よりも低い位置から、2−メチル−2,4−ジフェニルペンタンおよびジメチル−2,3−ジフェニルブタンを含んでいる底部ストリームを反応器から抜き出す工程;および
d.(c)からの底部ストリーム中の2−メチル−2,4−ジフェニルペンタンおよびジメチル−2,3−ジフェニルブタンをクメンへ転化する工程
を含む、前記方法。
【請求項10】
工程(b)(i)において生成されたクメンの約0.05重量%未満が、2−メチル−2,4−ジフェニルペンタンおよびジメチル−2,3−ジフェニルブタンへ転化される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程(b)(i)において、供給原料ストリームが、前記蒸留反応帯域において、パラジウムまたは銅を含んでいる触媒と接触している、請求項9または10に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2007−521298(P2007−521298A)
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518706(P2006−518706)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【国際出願番号】PCT/US2004/020811
【国際公開番号】WO2005/005350
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(590002105)シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエー (301)
【Fターム(参考)】