説明

アルケンのオリゴマー化法

【課題】四置換された2重結合を有するオクテンオリゴマーが、オクテンオリゴマーの全量の10乃至15モル%に相当する、オクテン組成物。
【解決手段】a)x個の炭素原子を有する1種以上のアルケン、及びb)所望により、y個の炭素原子を有する1種以上のアルケン(x及びyは異なる)を含む供給原料を、あるオリゴマーを主に含むオリゴマー生成物を選択的に得るための条件下、MFS構造型のゼオライトを含む触媒と接触させることを含む、3乃至6個の炭素原子を有するアルケンをオリゴマー化する方法。前記方法は、供給原料が3個の炭素原子を有するアルケンのみを含む場合は、125乃至175℃の温度で、供給原料が4個以上の炭素原子を含む、1以上のアルケンを有する場合は、140乃至240℃、好ましくは140乃至200℃の間で行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3乃至6個の炭素原子を有するアルケンの特定のオリゴマーへの選択的オリゴマー化に対する方法に関する。また、本発明は、当該方法により得られた生成物に関する。
【背景技術】
【0002】
高級アルケン類は、脂肪族溶剤、高級アルコール類、アルデヒド類、及び酸類の製造における中間体生成物である。高級アルケン類は、2乃至12個の炭素原子を有するアルケンを含有する供給物流れにオリゴマー化触媒を接触させることにより、当該供給物流れをオリゴマー化することによって一般的に生産される。固体燐酸(SPA)は、当該目的のために幅広く用いられている。しかし、SPAは、大量の望ましくない分解生成物を生成し、SPAを再生させることが不可能で、その活性がもはや満足できないとき、廃棄しなければならない。
【0003】
種々のゼオライトが、オリゴマー化触媒としてのSPAに代わるものとして提案されてきた。例えば、米国特許第4,517,399号は、オレフィンを含む供給原料がZSM−5ゼオライト触媒によるオレフィンのオリゴマー化法を報告している。報告されている典型的な条件は、177℃乃至343℃の温度、100乃至5000psig(約0.7MPa乃至34.5MPa)、及び0.1乃至10重量/重量・時の毎時重量空間速度(WHSV)である。米国特許第5,571,768号、米国特許第5,612,270号、米国特許第5,552,357号、米国特許第5,625,104号、及び米国特許第5,610,112号は、同一条件下、オレフィンのオリゴマー化においてZSM−5の選択された形態の使用、及び1乃至12の拘束指数を有する他のゼオライト、即ち、ZSM−11,ZSM−12、ZSM−22、ZSM−23、ZSM−35、ZSM−48、ZSM−50、ZSM−57の使用を示している。
【0004】
国際公開93/16020は、供給供給原料中の炭化水素含有量に基づいて、0.05乃至0.25モル%の含水量を有するアルケンの供給原料を用いるアルケンオリゴマー化法を開示する。この水分含有供給原料は、TON(H−ZSM−22、H−ISI−1、H−Theta−1、H−Nu−10、KZ−2)、MTT(H−ZSM−23、KZ−1)、MFI(H−ZSM−5)、MEL(H−ZSM−11)、MTW(H−ZSM−12)又はEUO(EU−1)構造型、H−ZSM−57、フェリエライト(ferrierite)構造群ゼオライト、オフレタイト(offretites)、H−ZSM−4、H−ZSM−18、ゼオライト−ベータ、フォージャサイト類(faujasites)、ゼオライト L、モルデナイト類(mordenites)、エリオナイト類(errionites)及びチャバザイト類(chabazites)のゼオライトから選ばれるゼオライト触媒と接触させる。供給原料の水和は、非水和アルケンの供給原料を用いる方法と比較して、オリゴマー化収率及び触媒ライフの寿命を向上する。適切な運転温度は、180乃至255℃である。
【0005】
国際公開93/16020の実施例は、H−ZSM−5、H−ZSM−12及びH−ZSM−22でのプロペン、及びH−ZSM−22でのn−ブテンのオリゴマー化について教示している。プロペンに対して、170乃至250℃の典型的な温度、7MPaの圧力、及び1.19乃至2.40重量/重量・時のWHSVが用いられる。n−ブテンに対して、205乃至255℃の反応温度、7MPaの圧力、1.75乃至2.40重量/重量・時のWHSVが用いられる。
【0006】
オレフィンのオリゴマー化に対し、前記の公表された提案はすべて、各々、利点及び欠点を有し、欠点は、オリゴマー化の程度を制御する能力が不十分であることを含む。例えば、プロペンのオリゴマー化において、オリゴマー生成物は、2量体、3量体、4量体及び5量体を含む。しかし、8乃至12の炭素原子を有し、特にノネンを有するアルケンを過半量で含む高級アルケン生成物に対する商業的必要性が増加している。このように、特定のオリゴマーに対して高選択性であるアルケンオリゴマー化法を有することがとても有利となる。
【0007】
国際公開95/22516は、あるオリゴマーに対し改善された選択性を有するオレフィンオリゴマー化法を開示している。当該方法は、10以上の厳選された(refined)拘束指数を有する1以上つの分子篩、及び2乃至10の範囲内にある厳選された拘束指数を有する1以上つの分子篩を含む触媒で実行される。10以上の厳選された拘束指数を有する分子篩の例としては、ZSM−22、ZSM−23及びある種のフェリエライト類(ferrierites)を含む。2乃至10の範囲内にある拘束指数を有する分子篩の例は、ZSM−5、11,12,35,38,48及び57、SAPO−11,MCM−22及びエリオナイト(erionite)を含む。オリゴマー化条件は、170℃乃至300℃、より好ましくは170℃乃至260℃、最も好ましくは180℃乃至260℃の温度、5乃至10MPa、好ましくは6乃至8MPaの範囲の圧力、0.1乃至20重量/重量・時、好ましくは1乃至10重量/重量・時、最も好ましくは1.5乃至7.5重量/重量・時の範囲のオレフィンWHSVである。供給物は、ゼオライトに接触する前に水和され得る。国際公開95/22516の実施例では、195乃至245℃の範囲にある温度及び85乃至95%の転化率で、ZMS−22及びZSM−5及びZSM−22及びZSM−57の混合物でプロペンのオリゴマー化を開示している。分子篩の混合物で得られた生成物の選択性は、各個別の分子篩を用いて同一条件下で得られたものと比較される。その結果は、分子篩混合物は、各分子篩を単独で用いた場合よりも、ノネンに対するより高い選択性を与えることを示す。報告されているノネンの最高の選択性は、ZSM−22及びZSM−5が50対50の混合物の場合に達成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者等は今回、あるオリゴマー種を高い割合で含むオリゴマー生成物を与える、他のアルケンオリゴマー化条件を、予想に反して見出した。更に、供給原料が炭素原子数の異なるアルケン類を含む場合、あるオリゴマー型に対する選択性も達成された。
【課題を解決するための手段】
【0009】
それゆえ、本発明は、a)x個の炭素原子を有する1種以上のアルケン類、及びb)所望により、y個の炭素原子を有する1種以上のアルケン類(x個の及びy個のは異なる)
を含む供給原料を、オリゴマー生成物を選択的に得るための条件下、MFS構造型のゼオライトを含む触媒と接触させることを含む、3乃至6の炭素原子を有するアルケンをオリゴマー化する方法であって、当該条件は、i)供給原料が、x個の炭素原子を有するアルケンのみを含む場合、前記オリゴマー生成物は、2x個の及び3x個の炭素原子を有するオリゴマーを少なくとも60重量%含み、又はii)供給原料が、x個の炭素原子を有するアルケン及びy個の炭素原子を有するアルケンを含む場合、前記オリゴマー生成物が、(x+y)個の炭素原子を有するオリゴマー及び2x個又は3x個の炭素原子を有するオリゴマーを過半量として含むオリゴマー混合物を含有し、前記重量%は、供給原料中のアルケンの全重量に基づいて表わされ、当該方法は、供給原料が3個の炭素原子を有するアルケンのみを含む場合、125乃至175℃の温度で、供給原料が4個以上の炭素原子を含む、1以上のアルケンを有する場合は、140乃至240℃、好ましくは140乃至200℃の間で行われる、該方法に関する。
【0010】
本発明は、特定のゼオライト構造型及び特定の反応温度範囲(この種の反応において典型的に用いられる温度よりも低い)の選択に基づく。これらの特定の条件下、あるオリゴマーに対して高選択性が達成され得る。選択されたゼオライトは、MFS構造型を有し、その構造型はIZA構造委員会により定義され、W.M.Meierらによる“Atlas of Zeolite Structure Ty個のpes”4th revised Ed.Elsevier,London (1996)において公表されている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、2つの特定の態様で記述され得る。第1の態様において、アルケン含有供給原料は、x個の炭素原子を有する1乃至数個のアルケンを含む。この場合、2量体、又は3量体は、高転化率及び高選択性で生成する。2量体又は3量体は、供給中のアルケンを基準として、生成物の少なくとも60重量%を占め得る。例えば、プロペンは、ノネンに選択的に転化され、ブテンは、オクタンに選択的に転化される。これは、当該アルケンについて以前に報告された温度より低温で達成され得る。より低温にもかかわらず、非常に高い選択性とともに、非常に高い転化率が達成され得る。以前報告され、典型的に実施された温度よりも低温で、選択性及び転化率において同時に増加することを予期する者はいないであろう。
【0012】
第2の態様として、供給原料は、x個の炭素原子を有する1以上のアルケン及びy個の炭素原子を有する1以上のアルケン(y個のはx個のとは異なる)を含む。この場合、当該方法は、x個の炭素原子を有するアルケンの2量体又は3量体及び(x+y)個の炭素原子を有するコオリゴマーを主に生成する。例えば、ブテン及びペンテンの混合物を含む供給原料は、過半量のノネン((x+y)個の炭素原子を有するコオリゴマー)及びオクテン(ブテン2量体)を主に生産し得る。“過半量”とは、(x+y)個の炭素原子からなるコオリゴマー又はホモオリゴマーの一方が、オリゴマー生成物の少なくとも25重量%に相当し、他方の、より多いオリゴマー型が、オリゴマー生成物の少なくとも20重量%に相当し、その結果、両方の主オリゴマーの合計は、供給原料中のアルケンの全重量を基準として、少なくとも45重量%、好ましくは50重量%、最も好ましくは55重量%のオリゴマー生成物に相当する事を意味するとして本明細書中で定義される。第1の態様において、このような選択性は、比較的低温で及び高いアルケン転化率で達成され得る。更に、選択性は、供給物中のアルケンの異性体分布により影響されない。
【0013】
当該態様において、y個の炭素原子を有するアルケンに対するx個の炭素原子を有するアルケンのモル比は、好ましくは10:90乃至90:10、より好ましくは25:75乃至75:25、最も好ましくは45:55乃至55:45である。
【0014】
供給原料中のアルケンは、プロペン(プロピレンとも言う)及び4乃至6の炭素原子を有する線状及び/又は分岐したアルケンから選ばれる。供給原料は、1種類のアルケン型、同一炭素数を有する線状及び/又は分岐したアルケンの混合物又は異なる炭素数を有する線状及び/又は分岐したアルケン混合物を含み得る。例えば、適切なC及びCのオレフィンの供給物は、石油の精製、分解(接触分解又は蒸気分解)及び/又は修飾において得られたC炭化水素原子の混合物を含み、石油の熱分解によりエチレンの製造において形成されるC副生成物の留分(このような留分は、数重量%のイソブチレンから30乃至40重量%のイソブテンを有する、n−ブテン及びイソブチレンの混合物を含む)、又はn−ブタン及びイソブタンを含む炭化水素混合物を脱水素することにより得られたC炭化水素からブタジエンを取り除くことにより得られたブタン−ブテン留分を含み得る。
【0015】
アルケンを含む供給原料において、本発明の特定の態様は、イソブチレンが、供給原料の全重量の12乃至34の重量%、好ましくは12乃至20重量%に相当する供給原料を用いる方法に関する。このような供給原料において、当該方法は、オリゴマー生成物におけるオクテンの全重量に関して8乃至25重量%のトリメチルペンテン、好ましくは8乃至16重量%のトリメチルペンテンを含むオリゴマー生成物を与える。
【0016】
このような方法により、四置換されたニ重結合を有するオクテンオリゴマーの量は、オクテンオリゴマーの全重量の10乃至15モル%の間に相当する、オクテン組成物を得ることができる。また、オクテンの平均分岐度は、1.60乃至1.85の範囲にある。オクテン組成物がヒドロホルミル化を受ける場合、オクテン組成物のこれらの特徴は、改善された反応性に関連がある。
【0017】
供給原料は、供給原料の全炭化水素含有量を基準として、0.05乃至0.25のモル%の水分、より好ましくは0.06乃至0.20のモル%の水分、最も好ましくは0.10乃至0.20モル%の水分も含み得る。必要ならば、供給原料中の含水量は、いずれかの適切な方法により増加させ得る。例えば、供給原料は、恒温飽和水器に通過させ得る。アルケン供給原料を完全に浸して得られる水分量は、供給原料の温度及び組成に依存するので、含水量の制御は、供給原料の温度の適切な制御により達成され得る。
【0018】
供給原料は、不活性希釈剤も含み得る。希釈剤が、3乃至6の炭素原子を有するアルケン、例えば、飽和炭化水素ガスのようなもの以外の炭化水素ガスであるならば、他の炭化水素は、含水量の計算のために炭化水素含有量に含まれ得る。供給原料は、エチレン及び/又は7以上の炭素原子を有するアルケンをも含み得る。この場合、他のアルケンは、含水量を計算するために炭化水素含有量に含まれ得る。
【0019】
触媒は、欧州特許174121、米国特許第4,873,067号、及び米国特許第4,973,781号(引用により本明細書中に組み込まれる)に開示された、ZSM−57のようなMFS構造型のゼオライトを含む。MFS結晶化構造として本質的に同様であるが化学組成において幾分異なる結晶構造を有するゼオライト触媒も用いられ得る。当該触媒としては、多くのアルミニウム原子を取り除くことにより、又はゼオライトを蒸熱することにより得られるゼオライト触媒、又は異なる元素を付加する、例えば、含浸又はカチオン交換又はゼオライト合成中に取り込むことにより得られるゼオライト触媒のようなものがある。
【0020】
ZSM−57の結晶は、いずれかの適切な方法、例えば、酸化珪素源および酸化アルミニウム源を含む反応混合物を熱することにより調製され得る。それから、当該結晶は、500℃を超える温度、例えば510℃又は550℃で、例えば10乃至20時間、空気又は酸素中で、一般に焼成される。焼成された物質は、好ましくは、アンモニウムイオン(NH)と交換され、アンモニウムイオンが分解し、アンモニア及びプロトンが形成され、これによりZSM−57の酸性型を生成する条件にさらされる。当該ゼオライトは、十分にプロトン化され、つまり概ね全ての酸性位が、プロトン化され得る。他方、ゼオライトは、部分的にプロトン化され得る。酸性型はまた、例えば、塩酸との酸交換により得られ得る。
【0021】
修飾されたZSM−57も用いられ得る。“修飾された(modified)”という用語は、有機物質(有機促進剤又はテンプレート)が、所望とするMFS構造型を有するアルミノ珪酸結晶(ゼオライト先駆結晶物)の形成を促進するために用いられる方法により形成されたZSM−57を意味する。未焼成のゼオライト先駆結晶物は、アンモニウムイオン又はプロトンと交換され、それから結晶は、有機促進剤の一部又はそれ由来の分解生成物の一部が結晶の細孔内に残存するような条件下で焼成される。
【0022】
ZSM−57又は触媒を含む修飾されたZSM−57の調製を開示する以下の文献が参照される。米国特許第4,873,067号、米国特許第4,973,781号、欧州特許−B1−174,121、欧州特許−A−625132、同様にしてErnst及びWeitkampらによる、“Zeolite ZSM−57:Sy個のnthesis,Characterization and Shape Selsctive Properties”、Ed.G.Ohlmannらによる“Cataly個のsis and Adsorption Zeolites”Elsvier Science Publishers、B.V.Amsterdam、これら全ては引用により本明細書中に組み込まれる。
【0023】
ある場合に、ゼオライト触媒は、他のゼオライト構造型又は石英型のような他の微量の結晶質物質を含み得る。MFS構造型ゼオライトは、粉末の形状(単一結晶の全体又は一部からなる粉末を含んでいる)中に用いられ得る。ゼオライトの結晶は、形状凝集物中に、例えば、錠剤、押出物又は球体(これらは、オリゴマー化法において用いられる条件下、大体において不活性である結合剤とゼオライトを結合することにより得られ得る)中に、代わりに取り込まれ得る。ゼオライト触媒は、ゼオライト及び結合剤を合わせた重量に基づき1乃至99重量%の量で存在し得る。結合剤として、いずれかの適切な物質が用いられ得る。例えば、シリカ、金属酸化物、又はモンモリロナイト、ベントナイト及びカオリンクレーのようなクレーが用いられ得る。当該クレーは用いるに先立ち、所望により焼成され又は化学的に修飾される。更に、適切なマトリックス材料の例としては、シリカーアルミナ、シルカ−ベリリア、シリカ−マグネシア、シリカ−トリア、シリカ−チタニア、シリカ−アルミナ−マグネシア、シリカ−アルミナ−トリア、シリカ−アルミナ−ジルコニア、及びシリカ−マグネシア−ジルコニアを含む。MFSゼオライト結晶は、例えば、米国特許第5,993,642号、米国特許第6,039,864号、欧州特許B−568,566、欧州特許B−793,634、及び欧州特許B−808,298(これら全ては、引用により本明細書中に取り込まれる)において開示されている、別のゼオライトとも結合され得る。
【0024】
アルケン含有供給原料は、供給原料中に存在するアルケンに依存する特定の温度で、上記で規定されたMFS類のゼオライトを含む触媒と接触させられる。供給原料は、プロペン(プロピレン)のみ含むのなら、反応器の温度は、125乃至175℃の間、好ましくは125乃至150℃の間にある。供給原料が、4乃至6の炭素原子を有する1以上のアルケンを含むとき、反応器温度は、140乃至240℃の間、好ましくは140乃至200℃の間、最も好ましくは140乃至175℃の間である。
【0025】
圧力は、好ましくは5乃至10MPa、より好ましくは6乃至8MPaの範囲にあり、アルケン毎時重量空間速度は、0.1乃至20、より好ましくは1乃至10、及び最も好ましくは1.1乃至7.5重量/重量・時の範囲である。
【0026】
所望の転化率水準は、反応温度を最初に選択することにより、及びやがて触媒が不活性化することを補うために当該反応温度を規則的に調製することにより、一般に得られる。本発明の方法は、95重量%の高い転化率で高選択的であり、典型的には65及び95重量%の間、好ましくは85乃至95重量%の間にある。
【0027】
当該方法は、以下に示す工程のいずれか1以上により、さらに変換し得るオリゴマー生成物を含む生成物を与える。工程は、分留、水素化、ヒドロホルミル化、酸化、カルボニル化、エーテル化、エポキシ化、水和がある。従って、本発明は、オリゴマー生成物のヒドロホルミル化及び水素化により得られる高級アルコールにも関する。当該方法は、オリゴマー生成物由来の高級アルコールが、ポリカルボン酸エステルを生成するに適した条件下、ポリカルボン酸と反応するポリカルボン酸エステルの調製法も包含する。好ましいエステルは、フタル酸又はアジピン酸エステルである。本発明の図示的態様は、以下の図に言及されている。
【実施例】
【0028】
以下の実施例において、転化率及び選択性は、K.Weisssermel及びH.−J.Harpeらによる“Industrielle Organische Chemie”第3版、VCH(1988)に開示されている方法に従って計算される。
【0029】
従って、転化率をガスクロマトグラフのピーク面積に基づき計算した。尚、供給物中、パラフィンの総合計を内部標準として用い、以下の式を用いた。
【0030】
[式1]

式中、A=生成物分析におけるクロマトグラフのピーク面積(重量%)、 A=供給物分析におけるクロマトグラフのピーク面積(重量%)である。
【0031】
選択性は、反応生成物流れの水素化の後、以下の式に従ってクロマトグラフのピーク面積で決定する。
【0032】
[式2]

式中、ACn=炭素数nを有する全異性体のクロマトグラフのピーク面積、 ACi=炭素数n以外の全異性体のクロマトグラフのピーク面積である。
【0033】
実施例1− H−ZSM−57結晶の調製 組成A(150.02gのLudox個の HS40(40重量%SiO水溶液として販売されているデュポン社製のコロイドシリカ溶液)及び400.21g脱イオン水を含む)を、家庭用ミキサーのビーカー中で混合した。溶液C(43.3gのN,N,N,N’,N’,N’−ヘキサエチルペンタンジアンモニウム ブロミド(Hex個のaethy個のl−Diquat−5(ブロミド塩)としても知られ、以下Rと略す)及び97.36gの脱イオン化水を含む)を、溶液Aに11.53gの洗浄水とともに加えた。得られた混合物を5分間、室温で混合した。組成B(11.14gのAl(SO・18HO、16.25gのNaOH(Baker 98.6重量%)及び99.97gの脱イオン交換水を含む)を、12.10gを超える洗浄水とともに加えた。得られた混合物を5分間さらに混合し、モル組成2NaO/R/0.17Al/10SiO/400HOのゲルを得た。
【0034】
537gのゲルは、撹拌機を有する1リットルのステンレス鋼のオートクレーブに移した。混合物を120rpmの速度で撹拌する間、オートクレーブを6時間以上かけて160℃まで熱した。160℃での加熱及び撹拌を144時間(6日間)継続した。
【0035】
オートクレーブの内容物を、1リットルの遠心容器に移し、上澄みをデカントし、脱イオン水中で沈澱物を再分散することで洗浄した。この洗浄を、上澄みのpHが10.5になるまで繰り返した。洗浄した生成物を、120℃で一晩中乾燥した。この結果、SiO/Alのモル比が41である純粋なH−ZSM−57の結晶を得た。
【0036】
実施例2−プロピレンのオリゴマー化 実施例1に記載したように合成したH−ZSM−57の触媒を、510℃で16時間、空気中で焼成し、塩化アンモニウム水溶液と交換し、空気中で16時間、510℃で再び焼成した。それから結晶を、1.1乃至2mmの大きさを有する粒子中に圧縮することにより粒状化した。
【0037】
供給原料(炭化水素基準で、50重量%のプロピレン、40重量%のn−ブタン及び10重量%のイソ−ブタンを含む)を、反応器に誘導する前に、25及び40℃の間に有する温度で恒温飽和水器に通すことにより水和する。飽和水器に誘導する前の供給原料の含水量は、約0.02モル%であり、飽和器から取り出される時、約0.10乃至0.15モル%(正確な水和温度に依存する)であった。尚、モル%は、各々の場合、供給原料の全炭化水素含有量に基づく。それから水和された供給原料を、触媒粒子に通過させた。反応器の流出液を、オレフィンの転化率及び生成物選択性を決定するためにガスクロマトグラフィー(GC)により、一定の間隔で分析した。反応器を、88日間継続して運転した。最初に、反応温度を125℃にセットし、172℃まで徐々に昇温すると、80重量%を超えるアルケン転化率を維持した。反応器の圧力を7MPaで維持した。
【0038】
表1は、代表的な操作条件及び生成物の分析を示す。図1は、反応器の運転におけるプロピレンの転化率の関数として、ヘキセン、ノネン、ドデセンに対する選択性を示す。これらの結果は、ノネンの製造において高い選択性を示す。83乃至95重量%のプロペンの転化率は、135乃至170℃の範囲の温度で達成された。
【0039】
生成混合物の組成を、キャリアーガスとして水素を用いたガスクロマトグラフィー(GC)により決定した。インジェクターライナーを、水素化触媒(酸化アルミニウム上の0.5%の白金を0.03g)で満たした。その結果、その場の(in−situ)水素化により、全ての成分は、パラフィンと認められた。全般的に、ノネンは、9.47重量%の3重分岐した異性体、84.53重量%の2重分岐した異性体、5.58重量%の1重分岐した異性体、0.42重量%の線状異性体から構成された。全般的に、ノネン生成物は2.03の平均分岐度を有した。表2は、水素化後のCアルケン生成物の詳細な生成物組成を提供する。
【0040】
プロピレンの転化率を、その場で(in situ)水素化せずに、GC分析により決定した。その際、生成混合物のGC分析を同一条件下で供給原料のGC分析と比較した。供給原料は、反応条件下で不活性であるブタン及びイソブタンを含んでいる。このように、ブタン及びイソブタンを、転化率を算出するための内部標準として用いた。
【0041】
【表1】


実施例3−ブテンのオリゴマー化 供給原料(炭化水素含有量に基づき、49.5重量%のプロパン及び50.5重量%のブテン−1を含み、炭化水素の含有量に基づき、約0.02モル%の初期含水量を有する)を、実施例2で記載したように25℃乃至40℃の温度で水和して、0.1乃至0.15モル%の水を含む水和した供給原料を得た。当該水和した供給原料を、実施例1のように調製したH−ZSM−57上に通過させ、510℃で焼成し、実施例2のように粒状化した。生成物を、オレフィンの転化率及び生成物の選択性を決定するために、一定の間隔で、GCにより測定した。反応器を、43日間、継続して運転した。最初に、反応器の温度を125℃に設定し、240℃まで徐々に昇温すると、70重量%を超えるアルケン転化率を維持した。反応器の圧力を7MPaで維持した。
【0042】
表3は、代表的な操作条件及び生成物の分析を示す。図2は、反応器の運転におけるブテン転化率の関数として、オクテン及びドデセンの選択性を示す。これらの結果は、オクテンの製造において高い選択性を示す。
【0043】
生成混合物の組成を、キャリアーガスとして水素を用いたガスクロマトグラフィー(GC)により決定した。インジェクターライナーを、水素化触媒(酸化アルミニウム上の0.5%の白金を0.03g)で満たした。その結果、その場の(in−situ)水素化により、全ての成分は、パラフィンと認められた。Cアルケン生成物は、1.58重量%の三重分岐した異性体、71.44重量%の二重分岐した異性体、25.46重量%の1重分岐した異性体及び1.52重量%の線状の異性体を有した。全般的に、オクテン生成物は、1.73の平均分岐度を有した。表2bは、水素化後、Cアルケン生成物の詳細な生成物組成を提供する。
【0044】
ブテン−1の転化率を、生成混合物のGC分析を同一条件下で、供給原料のGC分析と比較することにより、決定した。その際、内部標準を用いた。
【0045】
プロトンNMR分析を、生成物のオクテン(Cのオリゴマー)及びドデセン(C12のオリゴマー)の部分のオレフィン型を同定するために用いた。オレフィン型は、次のように定義した。
【0046】
−1型:1置換2重結合:R−CH=CH2 −2型:2置換2重結合:R−CH=CH−R' −3型:2置換2重結合:RR'C=CH2 −4型:3置換2重結合:RR'C=CH−R" −5型:4置換2重結合:RR'C=CR"R'''各R、R'、R"、及びR'''は、アルキル基を示す。
【0047】
生成物のオクテン留分は、1.4モル%の1型、15.8モル%の2型、10.7モル%の3型、60.9モル%の4型及び11.2モル%の5型の生成物を含有した。生成物のドデセン留分は、1.0モル%の1型、11.8モル%の2型、6.6モル%の3型、53モル%の4型及び27.6モル%の5型の生成物を含有した。
【0048】
生成物のドデセン部分の平均分岐度は、NMRにより2.8と決定した。
【0049】
【表2】


実施例4−ブテン及びペンテンを含む供給原料のオリゴマー化 当該実施例において、ブテン及びペンテンを含む供給原料を用いた。供給原料を実施例2で記載したように、反応器に入れる前に、水和し、水和の温度は、33乃至40℃の間とした。水和した供給原料を、実施例1で記載したように調製したH−ZSM−57上に通過し、550℃で焼成し、実施例2で記載したように粒状化した。
【0050】
表3aで同定した3つの供給原料を、本実施例で用いた。実験の間中、反応器圧を7MPaに維持した。反応器の流出液を、GCにより一定の間隔で分析した。反応温度を、最初に202℃にし、234℃まで徐々に昇温して、65重量%を超えるアルケン転化率を維持した。
【0051】
表3bは、代表的な操作条件及び生成物分析を示す。図3は、反応器の運転を通じた、ブテン及びペンテンの転化率の関数として、ヘキセン、オクテン、ノネン及びドデセンに対する選択性を示す。当該結果は、供給原料に存在するペンテンの異性体の種類に関わらず、オクテン及びノネンの生成に対し高い選択性を示す。
【0052】
【表3】


実施例5−線状及び分岐したブテンの混合物を含むC供給原料のオリゴマー化 本実施例において、n−ブテン及びイソブテンの混合物を含むC供給原料を用いた。供給原料を実施例2で記載したように反応器に入れる前に、水和し、水和の温度は、33乃至40℃の間とした。水和した供給原料を、触媒に通過させた。本実施例において、用いた触媒は、H−ZSM−57(触媒粒子として配合し、押出された実施例1で記載したように調製した)から構成されていた。当該触媒粒子は、用いる前に510℃で焼成した。
【0053】
表4中で同定された6つの供給原料を、本実施例で用いた。実験の間中、反応器圧を、7MPaに維持した。反応器の流出液を、GCにより一定の間隔で分析した。反応温度を、最初に175℃にし、95%を超える全アルケン転化率を維持するために調整した。
【0054】
生成混合物の組成を、キャリアーガスとして水素を用いたガスクロマトグラフィー(GC)にて決定した。インジェクターライナーを、水素化触媒(酸化アルミニウム上の0.5%の白金を0.03g)で満たした。その結果、その場の(in−situ)水素化により、全ての成分は、パラフィンと認められた。
【0055】
ブテン/イソブテンの転化率は、生成混合物のGC分析を同一条件下で、供給原料のGC分析と比較することにより決定した。供給原料は、反応条件下で不活性であるブタン及びイソブタンを含む。ブタン及びイソブタンを、転化率を計算するための内部標準として用いた。
【0056】
表4は、n−ブテン及びイソブチレンの転化率、オクテン、トリメチルペンテンに対する選択性、及び生成した全オリゴマー(オリゴマー生成物)の総重量パーセントとして表したトリメチルペンテンの重量を示す。
【0057】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】図1は、プロピレンオリゴマー化おける選択性対転化率である。
【図2】図2は、n−ブタンオリゴマー化における選択性対転化率である。
【図3】図3は、ブテン及びペンテンを含む供給原料のオリゴマー化における選択性対転化率である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
四置換された2重結合を有するオクテンオリゴマーが、オクテンオリゴマーの全量の10乃至15モル%に相当する、オクテン組成物。
【請求項2】
前記オクテンオリゴマーの平均分枝度が、最大1.85である、請求項1に記載のオクテン組成物。
【請求項3】
前記オクテンオリゴマーの平均分岐度が、1.60乃至1.85の間にある、請求項1又は2に記載のオクテン組成物。
【請求項4】
高級アルコールの生成における、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のオクテン組成物の使用。
【請求項5】
ポリカルボン酸エステルの生成における、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のオクテン組成物の使用。
【請求項6】
前記ポリカルボン酸エステルが、フタル酸エステル又はアジピン酸エステルである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のオクテン組成物がヒドロホルミル化を受ける、高級アルコールの生成方法。
【請求項8】
前記高級アルコールを、ポリカルボン酸エステルの生成に適した条件下で更にポリカルボン酸と反応させる、請求項7に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−229233(P2012−229233A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−143980(P2012−143980)
【出願日】平成24年6月27日(2012.6.27)
【分割の表示】特願2001−580842(P2001−580842)の分割
【原出願日】平成13年4月20日(2001.4.20)
【出願人】(599134676)エクソンモービル・ケミカル・パテンツ・インク (301)
【Fターム(参考)】