説明

アルコキシル化亜リン酸エステルおよびその方法

組成物および、該組成物を製造するための方法が開示されている。組成物は、式(HO[{CH(R)}O](式中、各Rは、同一であっても異なっていてもよく、独立して水素、またはアルキル基、またはこれらの2つ以上組み合わせであってもよく;mは2〜約20の数;およびnは約2〜約20の数である)を有するアルコキシル化亜リン酸エステルを含む。方法は、亜リン酸トリアルキルをアルキレングリコールまたはポリアルキレングリコールと接触させて混合物を製造する工程と、これに続く混合物の加熱工程とを含む。また、カルボニル化合物を、組成物の存在下において、アルコールと接触させる工程を含む、組成物を用いる方法も開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコキシル化亜リン酸エステルを含む組成物、このエステルを製造するための方法、およびこの組成物を用いるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートなどのポリエステルが、重要な工業用ポリマーの一分類である。これらは、熱可塑性繊維、フィルム、および成形用途に広く用いられている。
【0003】
ポリエステルは、ジアルキルテレフタレートエステルとグリコールとのエステル交換とこれに続く重縮合とによって、またはテレフタル酸と選択されたグリコールとの直接的なエステル化とこれに続く重縮合によって製造することができる。
【0004】
テトライソプロピルおよびテトラn−ブチルチタネートなどの有機チタネートは、ポリエステルを製造するための効果的な触媒として知られており、多くの場合に選択される触媒である。しかしながら、これらの触媒は、ポリエステル化触媒として用いられたときに、著しい量の黄色い変色を引き起こす傾向にある。
【0005】
【特許文献1】米国特許第6,066,714号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、ポリエステルのための安定剤として用いることが可能であり、およびポリエステルの発色を低減する新規の組成物の開発に対する必要性が高まっている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
組成物は、式(HO[{CH(R)}O]P(式中、各Rは、同一であっても異なっていてもよく、独立して水素、アルキル基、またはそれらの組み合わせであってもよく、mは2〜約20の数であり、nは1〜約20の数である)を有するアルコキシル化亜リン酸エステル(またはポリアルキレングリコール亜リン酸エステル)を含む。
【0008】
方法は、亜リン酸エステルをグリコールまたはポリアルキレングリコールと、アルコキシル化亜リン酸エステルを製造するのに効果的な条件下で接触させる工程を含む。
【0009】
方法は、ポリエステルの製造に用いることができ、カルボニル化合物をアルコールと、組成物の存在下において接触させてポリエステルを製造する工程を含む。
【0010】
ポリエステルの製造に用いることができる方法もまた、提供される。この方法は、カルボニル化合物を、任意選択により触媒の存在下において、アルコールと接触させてオリゴマーを含む生成物を製造する工程と、この生成物をアルコキシル化亜リン酸エステルと接触させる工程(触媒が任意のエステル化またはエステル交換または重縮合触媒であることができる)とを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の組成物は、例えば、水、アルコール、またはそれらの組み合わせなどの溶剤に、実質的にまたは完全に可溶性でまたは安定な溶液であり得る。用語「実質的に」とは、自明である以上を意味する。しかしながら、組成物の相当な部分が溶剤中に懸濁または分散していてもよい。用語「安定な溶液」とは、室温(約25℃)で少なくとも約1日間、または5日間、または10日間でさえも、溶質の実質的な沈殿または懸濁または分散がない溶液のまま維持される溶液を意味する。
【0012】
組成物は、式(HO[{CH(R)}O]P(式中、各Rは同一であっても異なっていてもよく、独立して水素、各基当たり1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、またはそれらの組み合わせであってもよく、mは2〜約20または2〜10の数、nは1〜約20または1〜約10の数である)を有するアルコキシル化亜リン酸エステルである、またはそれを含み得る、またはそれから実質的に構成され得る、またはそれから構成され得る。
【0013】
アルコキシル化亜リン酸エステルの例としては、限定されないが、亜リン酸トリ−(エチレングリコール)、亜リン酸トリ−(プロピレングリコール)、亜リン酸トリ(イソプロピレングリコール)、亜リン酸トリ−(ブチレングリコール)、亜リン酸トリ−(イソブチレングリコール)、亜リン酸トリ−(ペンチレングリコール)、亜リン酸トリ−(ヘキシレングリコール)、亜リン酸トリ−(ノニレングリコール)、亜リン酸トリ−(ジエチレングリコール)、亜リン酸トリ−(トリエチレングリコール)、亜リン酸トリ−(ポリエチレングリコール)、亜リン酸トリ−(ポリプロピレングリコール)、亜リン酸トリ−(ポリブチレングリコール)またはこれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。
【0014】
組成物は、亜リン酸トリアルキルを、アルキレングリコールまたはポリアルキレングリコールと、アルコキシル化ホスファイトを含む生成物を製造するために効果的な条件下で接触させることにより製造することができる。
【0015】
式(R’O)P(式中、R’は第2のアルキル基またはアリール基と置換可能なアルキル基である)を有する亜リン酸トリアルキル。亜リン酸トリアルキルの例としては、限定されないが、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリプロピル、亜リン酸トリブチル、亜リン酸トリイソブチル、亜リン酸トリアミル、亜リン酸トリヘキシル、亜リン酸トリノニル、またはこれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。
【0016】
グリコールまたはポリアルキレングリコールは、式(HO[{CH(R)}O]H(式中、R、m、およびnは、上記のものと同一である(ポリアルキレングリコールである場合、mおよびnがそれぞれ少なくとも2である))を有することができる。アルキレングリコールの例としては、限定されないが、エチレングリコール、プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンチレングリコール、1,6−ヘキシレングリコール、1,8−オクチレングリコール、1,9−ノニレングリコール、またはこれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。ポリアルキレングリコールの例としては、限定されないが、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、またはこれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。
【0017】
条件として、圧力下にある約30℃〜約250℃、または約50℃〜約200℃、または約75℃〜約150℃の範囲の温度を挙げることができ、この温度を約0.01〜約10、または0.1〜約5、または0.1〜約3時間の期間に調節することができる。このような条件下で接触させることにより、アルコキシル化ホスファイトを含む生成物が製造される。
【0018】
この方法は、亜リン酸トリアルキルの約0.0001〜約5重量%の量の触媒の存在下で実施することができる。触媒は、亜リン酸およびグリコールの反応を触媒するためのいずれの公知の触媒であってもよい。触媒の例は、チタンテトラヒドロカルビルオキシドとも言われるテトラアルキルチタネートである。好適なテトラアルキルチタネートの例としては、一般式Ti(OR)(式中、各Rは個々に、基当たり1〜約30個、好ましくは2〜約18個、および最も好ましくは2〜12個の炭素原子を含有する、アルキル基、シクロアルキル基、アルカリール基、ヒドロカルビル基から選択され、各Rは同一であっても異なっていてもよい)を有するものが挙げられる。テトラアルキルチタネートであって、そのヒドロカルボキシル基が基当たり2〜約12個の炭素原子(線状または側鎖状アルキル基である)を含有するテトラアルキルチタネートは、比較的安価であり、容易に入手可能であり、また、溶液の形成に効果的である。好適なテトラアルキルチタネートとしては、限定されないが、チタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラ−n−ブトキシド、チタンテトラヘキソキシド、チタンテトラ2−エチルヘキソキシド、チタンテトラオクトキシド、およびこれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。
【0019】
好適なテトラアルキルチタネートは、例えば、その全開示を本願明細書において参照により援用する米国特許公報(特許文献1)において開示されているものなどの当業者に公知の任意の方法により製造することができる。市販されているテトラアルキルチタネートの例としては、限定されないが、本願特許出願人から入手可能であるタイゾール(TYZOR)(登録商標)TPTおよびタイゾール(TYZOR)(登録商標)TBT(それぞれテトライソプロピルチタネートおよびテトラn−ブチルチタネート)が挙げられる。
【0020】
その後、アルコキシル化ホスファイトを含む生成物は、当業者に公知の任意の方法でさらに処理することにより、アルコキシル化ホスファイトを精製することができ、または回収し、または単離することができる。この方法としては、当業者に公知である、例えば減圧下での蒸留(減圧蒸留)などの任意の公知の蒸留技術が挙げられる。この蒸留は、圧力下にある約0℃〜約250℃、または約30℃〜約200℃、または約50℃〜約150℃の範囲の温度を含む条件下で実施することができ、この温度を約0.01〜約10、または0.1〜約5、または0.1〜約3時間の期間に調節することができる。
【0021】
アルコキシル化ホスファイトを含む組成物はまた、チタンまたは、例えば有機チタン化合物などのチタン化合物を含むことができ、またはこれらから製造することができる。有機チタン化合物の例は、上記したようなテトラアルキルチタネートであり得る。
【0022】
テトラアルキルチタネートはまた、ジルコニウム化合物と組み合わせて、テトラアルキルチタネートおよびジルコニウムテトラヒドロカルビルオキシドを含む混合物を製造することができる。ジルコニウム化合物の例としては、限定されないが、ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトラプロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド、ジルコニウムテトラヘキソキシド、ジルコニウムテトラ2−エチルヘキソキシド、ジルコニウムテトラオクトキシド、およびこれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。Ti/Zrのモル比は、約0.001:1〜約10:1の範囲であることができる。
【0023】
組成物は、ヒドロキシカルボン酸、アルカノールアミン、およびアミノカルボン酸の1種または複数であり得る錯化剤をさらに含むことができる。例えば、錯化剤は、α−ヒドロキシカルボン酸、アルカノールアミン、またはα−アミノカルボン酸(そのヒドロカルビル基またはアルキル基が1つの基当たり1〜約15、好ましくは1〜10個の炭素原子を有する)およびこれらの2つ以上の組み合わせであることができる。好適な錯化剤の例としては、限定されないが、乳酸、グリコール酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラヒドロキシイソプロピルエチレンジアミン、グリシン、ビス−ヒドロキシエチルグリシン、ヒドロキシエチルグリシン、およびこれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。
【0024】
チタン化合物はまた、共に上述したテトラアルキルチタネートおよび錯化剤を含みまたはこれらから製造される、チタンキレートであり得る。チタンキレートは、当業者に十分に公知である任意の方法により製造することが可能であり、または市販されている。市販されているチタンキレートの例としては、例えば、タイゾール(TYZOR)(登録商標)LA(チタンビス−乳酸アンモニウム)、タイゾール(TYZOR)(登録商標)AA(ビス−アセチルアセトネートチタネート)、タイゾール(TYZOR)(登録商標)DC(ビス−エチルアセトアセテートチタネート)、タイゾール(TYZOR)(登録商標)TE(ビス−トリエタノールアミンチタネート)、またはこれらの2つ以上の組み合わせなどの本願特許出願人から入手可能なものが挙げられる。
【0025】
組成物は、式HPOM(式中Mは水素、アンモニウムイオン、金属イオン、またはこれらの2つ以上の組み合わせであり、リン原子は二つの水素原子に結合している)を有する次亜リン酸またはその塩をさらに含み得る。金属イオンは、アルカリ金属イオンなどの任意の金属イオンであり得る。次亜リン酸または、次亜リン酸ナトリウムなどのその金属塩は水溶液として市販され得る。
【0026】
溶剤の例は、水または式R(OH)を有するアルコール、上記のものを包含し得るアルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、または式RO[CHCH(R)O]Hを有するアルコキシル化アルコール、あるいはこれらの2つ以上の組み合わせ(式中、各Rは同一であっても異なっていてもよく、基当たり1〜約10個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり;Rはアルキル基であってもよく;Aは分子当たり2〜約10個の炭素原子を有するアルキレン基であってもよく;および、各pは同一であっても異なっていてもよく、独立して約1〜約10の範囲の数である)である。溶剤の例としては、限定されないが、水、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、ブチレングリコール、1−メチルプロピレングリコール、ペンチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、2−エチルヘキサノール、およびこれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。
【0027】
あるいは、溶剤は、テトラアルキルチタネートと錯化剤との反応において生成される、例えば、テトライソプロピルチタネートからのイソプロピルアルコール、またはテトラn−ブチルチタネートからのn−ブチルアルコールなどのものであることができる。
【0028】
錯化剤対テトラアルキルチタネートのモル比は、溶剤の存在下においてチタン化合物の沈殿を実質的に防止することができる、任意の有効な比であることができる。一般的には、比は、約1:1〜約10:1、または約1:1〜約7:1、または1:1〜4:1の範囲であり得る。次亜リン酸またはその塩対チタン化合物のモル比(P:Ti)は、組成物が触媒として用いられてポリエステルを製造するとき、ポリエステルの黄色度を低減することができる例えば、約0.1:1〜約10:1、または約0.5:1〜約7:1、または1:1〜4:1の範囲などの任意の比であることができる。トリス−亜リン酸エステルまたはジホスホナイトエステル対チタン化合物のモル比(P:Ti)は、組成物が触媒として用いられてポリエステルを製造するとき、ポリエステルの黄色度を低減することができる例えば、約0.1:1〜約50:1、または約0.5:1〜約20:1、または1:1〜10:1の範囲などの任意の比であることができる。
【0029】
組成物は、アルミニウム、コバルト、ジルコニウム(上記の通り)、亜鉛、またはこれらの金属の1種または複数を含む化合物、およびこれらの2つ以上の組み合わせなどの助触媒をさらに含むことができる。例えば、酢酸亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酢酸アルミニウム、ヒドロキシ塩化アルミニウム、酢酸コバルト四水和物、硝酸第一コバルト、塩化コバルト、コバルトアセチルアセトナート、ナフテン酸コバルト、水酸化コバルト、サリチルサリチル酸コバルト、およびこれらの2種以上の組み合わせが、助触媒として用いられ得る。
【0030】
触媒組成物は、例えば、上記の米国特許公報(特許文献1)などに開示されているものなどの当業者に公知の任意の方法によって製造することができる。
【0031】
例えばエステルまたはポリエステルの製造において用いることができる方法が提供される。この方法は、触媒の存在下において、カルボニル化合物をアルコールと接触させる工程を含む。触媒は、チタンまたはチタン化合物および上記のアルコキシル化ホスファイトを含むことができ、またはこれらから製造することができる。
【0032】
アルコールと組合わされた場合に、エステルまたはポリエステルを製造することができる任意のカルボニル化合物を用いることができる。一般的には、このようなカルボニル化合物としては、限定されないが、酸、エステル、アミド、酸無水物、酸ハロゲン化物、またはカルボン酸オリゴマーの塩、または酸から誘導される繰り返し単位を有するポリマーの塩、あるいはこれらの2種以上の組み合わせが挙げられる。酸の例は、カルボン酸などの有機酸あるいはその塩またはエステルである。
【0033】
エステルまたはポリエステルの製造に好ましい方法は、反応媒質を、上記の本発明の第一の実施形態において記載された組成物と接触させる工程を含むか、該工程から実質的に構成されるか、または該工程から構成される。反応媒質は、アルコールと(1)有機酸、その塩、そのエステル、またはそれらの組み合わせ、あるいは(2)有機酸またはエステルから誘導される繰り返し単位を有するオリゴマー、のいずれかとを含むか、それらから本質的に構成されるか、またはそれらから構成されることができる。
【0034】
有機酸またはそのエステルは、式RCOOR(式中、各Rは独立して(1)水素、(2)カルボン酸基を末端に有するヒドロカルボキシル基、または(3)その各基が、基当たり1〜約30個の炭素原子を有し、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルカリール基、アラルキル基またはこれらの2つ以上の組み合わせであり得るヒドロカルビル基、または(4)これらの2つ以上の組み合わせであることができる)を有することができる。例えば、有機酸は、式HOCACOH(式中Aはアルキレン基、アリレーン基、アルケニレン基、またはこれらの2つ以上の組み合わせである)を有することができる。各Aは、基当たり約2〜約30、または約3〜約25、または約4〜約20、または4〜15個の炭素原子を有する。好適な有機酸の例としては、限定されないが、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタル酸、コハク酸、アジピン酸、フタル酸、グルタル酸、アクリル酸、シュウ酸、安息香酸、マレイン酸、プロペン酸、およびこれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。好適なエステルの例としては、限定されないが、ジメチルアジペート、ジメチルフタレート、ジメチルテレフタレート、安息香酸メチル、ジメチルグルタレート、およびこれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。
【0035】
カルボン酸金属塩またはそのエステルの例としては、式(RC)ArS(O)OM(式中、各Rは、同一であっても異なっていてもよく、水素または1〜約6個、または2個の炭素原子を包含するアルキル基である)を有する5−スルホイソフタレート金属塩およびそのエステルが挙げられる。Arはフェニレン基である。Mはナトリウムなどのアルカリ金属イオンである。エステルの例は、5−スルホイソフタレートナトリウム塩のビス−グリコール酸エステルである。
【0036】
酸をエステル化してエステルまたはポリエステルを製造することができる任意のアルコールを、本発明において用いることができる。好適なアルコールの例としては、限定されないが、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、ブチレングリコール、1−メチルプロピレングリコール、ペンチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、2−エチルヘキサノール、およびこれらの2つ以上の組み合わせを挙げることができる。
【0037】
カルボニル化合物が上記の5−スルホイソフタレート金属塩またはそのエステルを含む場合には、アルコールはエチレングリコール、プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、ブチレングリコール、1−メチルプロピレングリコール、ペンチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,6−ヘキシレングリコール、シクロヘキシル−1,4−ビスメタノール、およびこれらの2種以上の組み合わせであり得る。5−スルホ−イソフタレート金属塩またはそのエステルをグリコールと接触させることにより5−スルホイソフタレート金属塩のビス−グリコール酸エステルが製造される。
【0038】
カルボニル化合物とアルコールとの接触工程は、任意の好適な方法により実施され得る。例えば、カルボニル化合物およびアルコールは、触媒と接触される前に組み合わされてもよい。例えば、触媒は、機械的な混合または攪拌などの任意の好適な方法によりアルコール中に分散されて、分散系を形成してもよく、次いで、この分散系が(1)カルボニル化合物および(2)アルコールに、エステルまたはポリエステルの製造に十分に有効な条件下で組み合わされる。
【0039】
オリゴマーは、カルボニル化合物およびアルコールに由来する、合計で約1〜約100、または約2〜約10の繰り返し単位を有することができる。
【0040】
エステルまたはポリエステルの製造に有効な任意の好適な条件として挙げられるのは、約0.2〜約20、好ましくは約0.3〜約15、および最も好ましくは0.5〜10時間の期間の、約0.001〜約1気圧の範囲の圧力下にある、約150℃〜約500℃、好ましくは約200℃〜約400℃、および最も好ましくは250℃〜300℃の範囲の温度である。
【0041】
アルコール対カルボニル化合物のモル比は、エステルまたはポリエステルの製造に有効であり得る比である限り、任意の比であり得る。一般的には、比は、約1:1〜約10:1、または約1:1〜約5:1、または1:1〜4:1の範囲内であり得る。
【0042】
Tiとして示される触媒は、カルボニル化合物およびアルコールを含む媒体の約0.0001〜約50,000、または約0.001〜約10,000、または0.001〜1000ppmw重量百万分率(ppmw)の範囲で存在し得る。上記の助触媒もまた、用いられる場合、同一の範囲(Zr、Zn、Al、またはCoとしても示される)で存在し得る。従来のエステル化ならびにエステル交換触媒(例えばマンガン)および触媒の安定性または性能を増強するものなどのその他の成分が、本願明細書において開示された組成物の導入と同時にまたはこれに引き続いて製造方法に導入されてもよい。
【0043】
ポリエステルの色の形成を低減させるために用いられることができる方法もまた開示されている。この方法は、カルボニル化合物を、任意選択により触媒の存在下において、アルコールと接触させてオリゴマーを製造することを含むことができ、およびこのオリゴマーをアルコキシル化亜リン酸エステルと接触させることを含むことができる。カルボニル化合物、アルコール、オリゴマー、およびアルコキシル化亜リン酸エステルは上記のものと同一であり得る。エステル化またはエステル交換または重縮合を触媒することで知られている任意の触媒が、この方法において用いられ得る。このような触媒の例としては、アンチモニー、マンガン、コバルト、チタン、ジルコニウム、亜鉛、アルミニウムまたはこれらの組み合わせが挙げられる。一般的には、アルコキシル化亜リン酸エステルは、オリゴマーが製造された後の、重縮合段階中などの処理で、ポリエステルに導入することができる。オリゴマーおよびポリエステルの製造に係る方法は当業者に十分に公知であるため、その説明は、本願明細書においては、簡潔さのために省略する。
【0044】
下記の実施例は本発明をさらに例示するために提供され、本発明の範囲を不当に限定するよう解釈されるべきではない。全てのタイゾール(TYZOR)(登録商標)生成物は、上記の本願特許出願人から得られた。
【実施例】
【0045】
(実施例1)
亜リン酸トリ−(エチレングリコール)溶液(TEGP)を、25gの亜リン酸トリブチルを、225gのエチレングリコールに添加して混合物を製造することにより、製造した。タイゾール(Tyzor)(登録商標)TPT(1g)を、触媒として添加し、ならびに混合物を115℃に加熱すると共に1時間維持した。30mmHg(4kPa)の減圧を適用し、および22.7gのn−ブタノールを減圧蒸留により除去した。得られた溶液は、約9.4%の亜リン酸トリ−(エチレングリコール)および約1.36%のリン(P)を包含していた。このようにして調製したTEGP溶液を用いて、表1に示す触媒2および3を製造した。
【0046】
【表1】

【0047】
(実施例2)
実施例1において調製した触媒溶液を、ジッフィミキサ(Jiffy Mixer)40rpmで回転する攪拌機、熱電対、コンデンサおよび窒素スイープを備えた1−リットル樹脂ケトル中で用いた。この触媒、115gのエチレングリコール、および400gのテレフタル酸オリゴマー(米国特許公報(特許文献1)、8段、5〜22行で開示されている方法により製造されたTPAオリゴマー、この米国特許公報の開示は、本願明細書において参照により援用する)。攪拌機を作動させて、約2.5時間の間にわたって温度を275℃まで昇温させた。内容物を、攪拌下に275℃ならびに圧力120mmHg(16kPa)で20分間保持し、および280℃ならびに圧力30mmHg(4kPa)でさらに20分間保持することにより重合した。内容物を、次いで285℃、1〜2mmHg(0.27kPa)の圧力での攪拌下において、エレクトロ−クラフトモトマチック(Electro−Craft Motomatic)トルクコントローラによる計測値で15オンス−インチ(0.106ニュートン−メートル)トルクとなるのに十分な時間保持した。この工程に係る時間を終了時間として記録し、これは用いられる触媒によって変化した。次いで、ポリマー溶融物を、この溶融物を固化させるために水浴中に注ぎ入れ、得られた個体を150℃で12時間アニールし、および前述した記載された分光光度計を用いることによって色調を計測するために、2mmのフィルターを通過するよう粉砕した。分光光度的に計測された色調を比較した結果は、以下の表2に示した。
【0048】
得られたポリマーの色調は、L−値ならびにb−値、およびa−値の観点から、SP−78分光光度計などの測定器を用いて計測した。L−値は輝度であり、より大きい数値がより高い(望ましい)輝度を表す。78以上の値が良好であるとされるであろう。b−値は黄色度の度合いを表し、より高い数値がより高い(望ましくない)黄色度の度合いを表す。一般的には7未満のb値が良好とされ得る。a−値は、赤色度の度合いを意味し、より高い正のa−値がより赤く、より低い負がより緑である。
【0049】
表2は、亜リン酸安定剤(触媒2および3を用いて)を用いて製造されたポリエステル生成物は、一貫的に、リン酸(触媒1および4)を着色安定剤として用いたものより、より低いb−値を有していたことを示す。
【0050】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(HO[{CH(R)}O]P(式中、各Rは、独立して水素、アルキル基、またはこれらの2つ以上の組み合わせであり;mは2〜約20の数;およびnは約1〜約20の数である)を有するアルコキシル化ホスファイトを含むことを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記組成物は前記アルコキシル化ホスファイトであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物は、亜リン酸トリ−(エチレングリコール)、亜リン酸トリ(プロピレングリコール);亜リン酸トリ(イソプロピレングリコール);亜リン酸トリ(1,4−ブチレングリコール);亜リン酸トリ(−イソブチレングリコール);亜リン酸トリ(ペンチレングリコール);亜リン酸トリ(ヘキシレングリコール);亜リン酸トリ(オクチレングリコール)、亜リン酸トリ(ノニレングリコール)、亜リン酸トリ(ジエチレングリコール)、亜リン酸トリ(トリエチレングリコール)、亜リン酸トリ(ポリエチレングリコール)、亜リン酸トリ(ポリプロピレングリコール)、亜リン酸トリ(ポリブチレングリコール);またはこれらの2つ以上の組み合せであることを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物は亜リン酸トリ−(エチレングリコール)であることを特徴とする請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物は、チタンまたはチタン化合物をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物は、ヒドロキシカルボン酸、アルカノールアミン、アミノカルボン酸、またはこれらの2つ以上の組み合わせである錯化剤をさらに含むことを特徴とする請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物は、次亜リン酸、その塩、または両方をさらに含むことを特徴とする請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記チタンまたはチタン化合物は、テトライソプロピルチタネート、テトラn−ブチルチタネート、またはそれらの組み合わせであることを特徴とする請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
前記チタンまたはチタン化合物は、テトライソプロピルチタネート、テトラn−ブチルチタネート、またはそれらの組み合わせであることを特徴とする請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
前記チタンまたはチタン化合物は、テトラアルキルチタネートおよび前記錯化剤を含むまたはこれらから製造されるチタンキレートであることを特徴とする請求項6に記載の組成物。
【請求項11】
前記チタンまたはチタン化合物は、テトライソプロピルチタネート、テトラn−ブチルチタネート、またはそれらの組み合わせであることを特徴とする請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物、さらに次亜リン酸ナトリウムことを特徴とする請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記チタンまたはチタン化合物は、タイゾール(TYZOR)(登録商標)LA(チタンビス−乳酸アンモニウム)であることを特徴とする請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物は、亜リン酸トリ−(エチレングリコール)であることを特徴とする請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物は、チタンまたはチタン化合物をさらに含むことを特徴とする請求項3に記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物は、ヒドロキシカルボン酸、アルカノールアミン、アミノカルボン酸、またはこれらの2つ以上の組み合わせである錯化剤をさらに含むことを特徴とする請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物は、次亜リン酸、その塩、または両方をさらに含むことを特徴とする請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記チタンまたはチタン化合物は、テトライソプロピルチタネート、テトラn−ブチルチタネート、またはそれらの組み合わせであることを特徴とする請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記チタンまたはチタン化合物は、テトラアルキルチタネートおよび前記錯化剤を含むまたはこれらから製造されるチタンキレートであることを特徴とする請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記次亜リン酸、その塩、または両方は、次亜リン酸ナトリウムであることを特徴とする請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記チタンまたはチタン化合物は、タイゾール(TYZOR)(登録商標)LA(チタンビス−乳酸アンモニウム)であることを特徴とする請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記組成物は、亜リン酸トリ−(エチレングリコール)であることを特徴とする請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
任意選択により触媒の存在下において、亜リン酸トリアルキルをアルキレングリコールまたはポリアルキレングリコールと、式(HO[{CH(R)}O]P(式中、各Rは、独立して水素、アルキル基、またはこれらの2つ以上の組み合わせであり;mは2〜約20の数;およびnは1〜約20の数である)を有するアルコキシル化ホスファイトを製造するのに十分な条件下で接触させる工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項24】
前記亜リン酸トリアルキルは、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリプロピル、亜リン酸トリブチル、亜リン酸トリイソブチル、亜リン酸トリアミル、亜リン酸トリヘキシル、亜リン酸トリノニル、またはこれらの2つ以上の組み合わせであることを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記アルキレングリコールまたはポリアルキレングリコールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンチレングリコール、1,6−ヘキシレングリコール、1,8−オクチレングリコール、1,9−ノニレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、またはこれらの2つ以上の組み合わせであることを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記亜リン酸トリアルキルは、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリプロピル、亜リン酸トリブチル、亜リン酸トリイソブチル、亜リン酸トリアミル、亜リン酸トリヘキシル、亜リン酸トリノニル、またはこれらの2つ以上の組み合わせであることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記方法は、タイゾール(TYZOR)(登録商標)TPT(テトライソプロピルチタネート)である触媒の存在下で実施されることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
アルコキシル化ホスファイトを含む組成物の存在下で、カルボニル化合物をアルコールと接触させる工程を含む方法であって、前記アルコキシル化ホスファイトは、式(HO[{CH(R)}O]P(式中、各Rは、独立して水素、アルキル基、またはこれらの2つ以上の組み合わせであり;mは2〜約20の数;およびnは1〜約20の数である)を有することを特徴とする方法。
【請求項29】
前記組成物は、亜リン酸トリ−(エチレングリコール)、亜リン酸トリ(プロピレングリコール);亜リン酸トリ(イソプロピレングリコール);亜リン酸トリ(1,4−ブチレングリコール);亜リン酸トリ(−イソブチレングリコール);亜リン酸トリ(ペンチレングリコール);亜リン酸トリ(ヘキシレングリコール);亜リン酸トリ(オクチレングリコール)、亜リン酸トリ(ノニレングリコール)、亜リン酸トリ(ジエチレングリコール)、亜リン酸トリ(トリエチレングリコール)、亜リン酸トリ(ポリエチレングリコール)、亜リン酸トリ(ポリプロピレングリコール)、亜リン酸トリ(ポリブチレングリコール);またはこれらの2つ以上の組み合わせであることを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記組成物は、亜リン酸トリ−(エチレングリコール)であることを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記組成物は、チタンまたはチタン化合物をさらに含むことを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記組成物は、ヒドロキシカルボン酸、アルカノールアミン、アミノカルボン酸、またはこれらの2つ以上の組み合わせである錯化剤をさらに含むことを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記組成物は、次亜リン酸、その塩、または両方をさらに含むことを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記チタンまたはチタン化合物は、テトライソプロピルチタネート、テトラn−ブチルチタネート、またはそれらの組み合わせであることを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記チタンまたはチタン化合物は、テトライソプロピルチタネート、テトラn−ブチルチタネート、またはそれらの組み合わせであることを特徴とする請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記チタンまたはチタン化合物は、テトラアルキルチタネートおよび前記錯化剤を含むまたはこれらから製造されるチタンキレートであることを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項37】
前記チタンまたはチタン化合物は、テトライソプロピルチタネート、テトラn−ブチルチタネート、またはそれらの組み合わせであることを特徴とする請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記組成物、さらに次亜リン酸ナトリウムことを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記チタンまたはチタン化合物は、タイゾール(TYZOR)(登録商標)LA(チタンビス−乳酸アンモニウム)であることを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記組成物は、亜リン酸トリ−(エチレングリコール)であることを特徴とする請求項39に記載の方法。

【公表番号】特表2007−530547(P2007−530547A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−505051(P2007−505051)
【出願日】平成17年3月21日(2005.3.21)
【国際出願番号】PCT/US2005/009289
【国際公開番号】WO2005/097810
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】