説明

アルコキシル化用触媒、該触媒の製造方法及び該触媒を用いるアルコキシレートの製造方法

【構成】マグネシウムと、亜族方式による周期律表の第2B族、4A族、4B族、5B族及び6A族から選ばれる金属の少なくとも一種以上とを含有し、pKaが9〜25の塩基性点と、NH3ガス吸着量が50μmol/gから 500μmol/g である酸性点を同時に有する金属酸化物からなるアルコキシル化用触媒、この触媒の製造方法及びこの触媒を用いたアルコキシレートの製造方法。
【効果】 付加モル数分布が狭く、反応生成物中に未反応原料、及び副生物の少ないアルコキシレートを製造することができ、反応物から触媒の除去が容易となり、産業上極めて大きな価値がある。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、アルコキシル化用触媒、該触媒の製造方法及び該触媒を用いるアルコキシレートの製造方法に関する。更に詳しくは、特定の物性あるいは組成を有する金属酸化物からなるアルコキシル化用触媒、該触媒の製造方法並びに該触媒を用いて行う副反応が少なく、かつ付加モル数分布が非常に狭いアルコキシレートの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】活性水素原子含有化合物である高級アルコール、アルキルフェノール、アルキル第1級又は2級アミン、脂肪酸等のアルキレンオキサイド付加物は、シャンプー、食器洗浄剤、住居用洗剤等に配合される各種界面活性剤や、さらに硫酸エステル化やカルボキシメチル化を行い対応するアニオン活性剤を製造する中間体やその他工業用製品の中間体として有用である。これらの活性水素原子含有化合物とアルキレンオキサイドの付加反応は、通常、酸又は塩基触媒の存在下で行われる。ここで酸触媒としては、ホウ素、スズ、アンチモン、鉄、アルミニウム等のハロゲン化物、リン酸、硫酸等の鉱酸塩、酢酸、蓚酸、炭酸等のカルボン酸の金属塩等が用いられ、塩基性触媒としては、アルカリ金属の水酸化物やアルコキシド、またジエチルアミン、トリエチルアミン等の低級アミン類が一般に用いられている。
【0003】しかし、これらの塩基性触媒を用いてアルキレンオキサイド付加物を製造する場合は付加分布の広いものしか得られず、原料である活性水素原子含有化合物の残留による匂いの問題があり、またアルキレンオキサイドの高モル付加物の含有量が多いため、親水性が強くなりすぎ界面活性剤としての性能の低下等の問題を有する。また、上記のような通常の酸触媒では、反応生成物中の原料の活性水素原子含有化合物の残留量は減少するが、ジオキサン、ポリアルキレングリコールなどの品質上好ましくない副生物が多く生成し、また金属腐食性に起因し、対応する設備が重装備となる問題を有する。
【0004】活性水素原子含有化合物とエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドとの付加反応物に関し、ある種の触媒においては、そのアルキレンオキサイドの付加分布が狭く(Narrow range)なることも開示されている。例えば、バリウムの酸化物、水酸化物(特開昭54−75187号公報)、ストロンチウムの酸化物、水酸化物(特公昭63−32055号公報)、カルシウム化合物(特開平2−134336号、同2−135144号、同2−135145号、同2−135146号各公報)、マグネシウムとアルミニウムを主成分とする焼成ハイドロタルク石(特開平2−71841号公報)、Al、Ga、Ca、Sc等を添加した酸化マグネシウム(特開平1−164437号公報)等の触媒が提案されている。これらの触媒を用いて得られるアルキレンオキサイドの付加分布範囲が狭い反応生成物は、流動点、水溶性、臭気等の物性、品質面での界面活性剤の利用上の有効点も知られている(JAOCS,第63巻, 619〜695, HAPPI 52-54,1986)。
【0005】しかし、これらの触媒では分布が酸触媒と同等で、未反応原料の少ないアルキレンオキサイド付加物が得られるものの、酸触媒と類似の触媒特性を有するため、ポリアルキレングリコール等の副反応物が多く生成する。また、工業的に重要な因子である触媒の除去(濾過除去)が困難である欠点をも有する。本発明の目的は、これらの従来の触媒の持つ課題を解決し、高品質で、アルキレンオキサイド付加分布も狭く、かつ工業的に使用できる触媒、該触媒の製造方法及び該触媒を用いるアルコキシレートの製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、活性水素原子含有化合物にアルキレンオキサイドを付加し、高品質なアルコキシレートを製造するに適したアルコキシル化用触媒について鋭意検討した結果、特定の塩基性点と酸性点を併せもつ触媒、具体的には、マグネシウムを主成分とする特定の金属酸化物を用いれば、従来公知の触媒を用いては得ることの出来なかった、付加モル数分布が狭く、未反応原料、副生物の極めて少ないアルコキシレートを高い反応速度で製造できると共に、反応物からの触媒の除去が極めて容易であることを見出し、本発明を完成した。
【0007】即ち本発明は、pKaが9〜25の塩基性点と、NH3ガス吸着量が50μmol/gから 500μmol/g である酸性点を同時に有する金属酸化物からなるアルコキシル化用触媒、特に、マグネシウムと、亜族方式による周期律表の第2B族、4A族、4B族、5B族及び6A族から選ばれる金属の少なくとも一種以上とを含有する金属酸化物からなるアルコキシル化用触媒を提供するものである。
【0008】また、本発明は、マグネシウム化合物と、亜族方式による周期律表の第2B族、4A族、4B族、5B族及び6A族から選ばれる少なくとも一種の金属の化合物を含む混合水溶液又は水分散液を沈澱剤により共沈澱させ、得られる沈澱物を水洗・乾燥・焼成することを特徴とする、上記アルコキシル化用触媒の製造方法を提供するものである。
【0009】更に、本発明は、活性水素原子含有化合物にアルキレンオキサイドを付加し、アルコキシレートを製造するに際し、上記触媒を用いることを特徴とするアルコキシレートの製造方法を提供するものである。
【0010】以下、本発明について詳細に説明する。本発明の触媒の第1の特徴は、活性水素原子含有化合物を活性化させるための塩基性とアルキレンオキサイドを活性化させるための酸性を同時に有することにあり、この両者は適度にバランス化されていることで、反応活性も高く、アルキレンオキサイドの付加モル数分布も狭く、かつ副反応物も少ない特徴が得られる。塩基強度が低すぎると活性は低く、逆に高すぎるとアルキレンオキサイドの付加モル数の分布は広くなる。この課題を解決する最適な塩基強度はpKa値で9〜25であり、好ましくは9〜18、特に好ましくは 9.3〜15.0の範囲である。また、酸性度が少なすぎるとやはり活性が発現されず、逆に多すぎるとジオキサン、ポリエチレングリコール等の副生物が増大する。この課題を解決する酸性度としては、NH3 ガス吸着法による触媒1g当たりのNH3 ガス吸着量が50〜500μmol であり、好ましくは50〜 250μmol 、特に好ましくは60〜 200μmolの範囲である。
【0011】なお、金属酸化物の塩基性をpKa値で示したが、これは触媒表面の塩基点が酸からプロトンを受け取る能力あるいは電子対を与える能力を示す数値であり、具体的にはpKa値の知れた種々の指示薬を使うことにより金属酸化物の塩基強度を測定することができる。すなわち、pKaの大きい指示薬を塩基性色に変色させるものほどその塩基強度は大きいといえる。具体的には下記実施例に示す測定方法により測定される。また、金属酸化物の酸性度をNH3 ガス吸着量で示したが、これは気相でアンモニアを触媒表面に吸着させ、その吸着量を単位重量(g)あたりに換算した数値であり、具体的には下記実施例に示す測定方法により測定される。
【0012】本発明に用いられる上記のような塩基性点と酸性点を同時に有する金属酸化物としては、マグネシウムを主成分とし、亜族方式による周期律表の第2B族、4A族、4B族、5B族及び6A族から選ばれた金属の1種又はそれ以上が添加された金属酸化物が挙げられる。マグネシウムに添加される周期律表の第2B族、4A族、4B族、5B族及び6A族から選ばれる金属の具体例としては、亜鉛、チタン、ジルコニウム、スズ、アンチモン、ビスマス、モリブデン、タングステン等があげられる。活性、選択性、濾過性の点より、好ましくは亜鉛、アンチモン、スズ、チタン、ジルコニウムが、特に好ましいものとしてはアンチモンが挙げられる。
【0013】本発明の触媒中におけるマグネシウムと、周期律表の第2B族、4A族、4B族、5B族及び6A族から選ばれる金属との配合割合は、主成分であるマグネシウム1原子に対し、周期律表の第2B族、4A族、4B族、5B族及び6A族の金属量が 0.005〜0.4 原子となる割合が好ましく、0.01〜0.3 原子となる割合が特に好ましい。なお、本発明の触媒中には本発明の効果を害しない範囲で微量の第3成分が添加されてもよい。
【0014】本発明の触媒の製造法は特に限定されず、公知の方法により調製される。例えば、それぞれの金属の硝酸塩、硫酸塩、塩化物、水酸化物、炭酸塩、酸化物等の化合物を含む混合水溶液又は水分散液に沈澱剤を添加するか、微粉末担体の存在下、担体成分以外の触媒成分となり得る金属化合物の水溶液又は水分散液に沈澱剤を添加する共沈澱法により得られる沈澱物を水洗・乾燥・焼成する方法、あるいは微粉末担体上に担体成分以外の触媒成分となり得る金属化合物を水溶液又は水分散液の状態から含浸担持させた後、乾燥・焼成する方法等により調製される。共沈澱法あるいは含浸法により調製する場合、使用される金属化合物は水溶性のもの又は水分散性のものであるなら全て可能である。また、用いられる担体としては、ケイソウ土、ゼオライト、モルデナイト、モンモリロナイト、酸化スズ、酸化チタン、活性炭等が挙げられ、担体に保持される活性金属酸化物の量は10〜80重量%が望ましい。
【0015】本発明の触媒の調製に用いられる共沈澱法の具体例としては、例えば、マグネシウムの硝酸塩、硫酸塩、塩化物、水酸化物、炭酸塩及び酸化物より選ばれるマグネシウム化合物と、亜族方式による周期律表の第2B族、4A族、4B族、5B族及び6A族から選ばれる少なくとも一種の金属の硝酸塩、硫酸塩、塩化物、水酸化物、炭酸塩及び酸化物より選ばれる金属化合物とを含む混合物水溶液又は水分散液、好ましくは硝酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム又は水酸化マグネシウムと、亜族方式による周期律表の第2B族、4A族、4B族、5B族及び6A族から選ばれる少なくとも一種の金属の炭酸塩、水酸化物又は酸化物とを含む混合物水溶液又は水分散液、更に好ましくは硝酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム又は水酸化マグネシウムと、酸化アンチモンとを含む混合物水溶液又は水分散液に、アンモニア又はアルカリ金属の水酸化物もしくは炭酸塩、好ましくはアルカリ金属水酸化物から選ばれたアルカリ剤水溶液を金属化合物に対し 0.8ないし 1.2当量倍で添加してpHを6〜11、好ましくは7〜10に調整し、沈澱反応により、金属水酸化物、炭酸塩又は酸化物、又はそれらの混合物とし、水溶性塩を水洗除去後乾燥し、かつ 500〜900 ℃、好ましくは 600〜800 ℃の範囲内で、好ましくは窒素雰囲気下で焼成する方法等が挙げられる。また、本発明の触媒の調製に用いられる含浸法の具体例としては、担体と、マグネシウムの炭酸塩、水酸化物又は酸化物、及び亜族方式による周期律表の第2B族、4A族、4B族、5B族及び6A族から選ばれる少なくとも一種の金属の炭酸塩、水酸化物又は酸化物を、水媒体中、混練し、乾燥後、500 〜900 ℃、好ましくは 600〜800 ℃の範囲で、好ましくは窒素雰囲気下で焼成する方法等が挙げられる。また、それぞれの金属酸化物を別々に調製し、これらを必要な割合に混合して用いることもできる。これらの触媒の調製法の中では、共沈澱法が特に好ましい。
【0016】本発明のアルコキシレートの製造に用いられる活性水素原子含有化合物としては、アルコキシル化されるものならよく、特に限定されるものではなく、アルコール類、フェノール類、ポリオール類、チオール類、カルボン酸類、アミン類、アルカノールアミド類及びそれらの混合物等が挙げられる。
【0017】アルコール類としては、n−オクタノール、n−デカノール、n−ドデカノール、n−テトラデカノール、n−ヘキサデカノール、n−オクタデカノール、オレイルアルコール、エイコサノール、ベヘノール、ノナノール、ウンデカノール、トリデカノール等の炭素数8〜22の飽和又は不飽和の直鎖アルキル基を有する高級脂肪族第1級アルコール、また、2−エチルヘキサノール、炭素数16〜36のゲルベ型アルコールなどの分岐鎖アルキル第1級アルコール、及び2−オクタノール、2−デカノール、2−ドデカノール等の第2級アルコール、さらにベンジルアルコール等のアリールアルキルアルコールなどがあげられる。フェノール類としては、フェノール、p−オクチルフェノール、p−ノニルフェノールなどが挙げられる。
【0018】ポリオール類としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ソルビトール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。チオール類としては、1−ブタンチオール、1−ヘキサンチオール、1−オクタンチオール、1−デカンチオール、1−ドデカンチオール、2−プロパンチオール、2−ブタンチオール等の第1級又は2級チオールが挙げられる。
【0019】カルボン酸類としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、オクタン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、2−エチルヘキサン酸、イソステアリン酸等の脂肪族直鎖又は分岐の飽和又は不飽和アルキル基を有するカルボン酸、N−アシルアミノ酸等のカルボン酸などが挙げられる。
【0020】アミン類としては、オクチルアミン、ジオクチルアミン、ラウリルアミン、ジラウリルアミン、ステアリルアミン、ジステアリルアミン等の炭素数8〜36の飽和又は不飽和アルキル基を有する第1級又は2級アミン、また、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等のポリアミンなどが挙げられる。アルカノールアミド類としては、ラウリルモノエタノールアミド、ラウリルジエタノールアミド等が挙げられる。
【0021】これらの活性水素原子含有化合物の中では酸性度の弱いアルコール類、好ましくは炭素数8〜22の直鎖又は分岐の飽和又は不飽和のアルコール、特に好ましくは炭素数10〜18の直鎖又は分岐の飽和のアルコールを用いた場合、本発明の効果が顕著であり好ましい。
【0022】本発明で用いられるアルキレンオキサイドは活性水素原子含有化合物と反応して、アルコキシレートを生成し得るものであればどのようなものでもよいが、オキシラン環をもつエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド、又は両者の混合物が好ましく、特にエチレンオキサイドが好ましい。
【0023】本発明のアルコキシレートの製造方法の好ましい具体例としては、要すればオートクレーブ等の反応器中、活性水素原子含有化合物に、活性水素原子含有化合物に対し0.01〜20重量%、好ましくは 0.1〜10重量%の量の本発明の触媒存在下、アルキレンオキサイドを80〜 230℃、好ましくは 120〜 180℃で1〜10時間反応させる方法が挙げられる。反応温度が80℃より低い温度では、十分な反応速度が得られず、 230℃よりも高いと生成物の分解が生じる。
【0024】用途によっては本反応生成物をそのまま使用することも可能だが、触媒が懸濁しており、通常、濾過、遠心分離等の方法により触媒を除去する。なお、本発明の触媒を用いた場合、この濾過性が顕著に優れているという特徴も見られる。触媒の濾過性に影響する因子としては、副生する高分子量ポリアルキレングリコールの濾紙や濾布の目づまりが主因であり、この副生ポリアルキレングリコールは、本発明触媒の塩基性強度の範囲及び酸性度の範囲内でそれぞれの強度を同時に有する場合、このポリアルキレングリコールの副生を極めて抑制することができ、その結果、濾過除去性に優れるため、反応終了物から吸着、凝集処理等の煩雑な操作はなく、容易な濾過で完全に触媒を除去できる特徴を有するものである。また、副生ポリアルキレングリコールは触媒金属表面への吸着性が高く、回収した触媒の活性を著しく低下させる。しかしながら、本発明触媒では、ポリアルキレングリコールの副生が極めて少ないため、この課題も解決し、簡単な濾過操作による回収ができる上に再使用も可能であり、工業的にも優れた特性を有するものである。
【0025】
【発明の効果】本発明の触媒を用いたアルコキシレートの製造方法により、付加モル数分布が狭く、反応生成物中に未反応原料、及び副生物の少ないアルコキシレートを製造することができ、反応物から触媒の除去が容易となり、産業上極めて大きな価値がある。
【0026】
【実施例】以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、例中の%は特記しない限り重量基準である。
【0027】実施例1硝酸マグネシウム6水和物128.21g(0.5モル)、硝酸亜鉛6水和物7.44g(0.025モル)、及び脱イオン水258.75gを仕込み、90℃で2時間にわたり20%炭酸ナトリウム水溶液258.75g(0.525モル)を滴下し、その後、90℃で1時間熟成した。母液を濾過で除き、沈澱を1リットルの脱イオン水で5回洗浄した。90℃で1日乾燥後、窒素雰囲気下 600℃で2時間焼成して、MgO−ZnO触媒(Mg:Zn(原子比)=1:0.05)を得た。
【0028】実施例2硝酸マグネシウム6水和物217.95g(0.85モル)、酸化第一スズ5.72g(0.0425モル)、及び脱イオン水435.16gを仕込み、90℃で2時間にわたり20%炭酸ナトリウム水溶液450.46g(0.85モル)を滴下し、その後、90℃で1時間熟成した。母液を濾過で除き、沈澱を1リットルの脱イオン水で5回洗浄した。80℃で2日間乾燥後、窒素雰囲気下 500℃で2時間焼成して、MgO−SnO触媒(Mg:Sn(原子比)=1:0.05)を得た。
【0029】実施例3硫酸マグネシウム6水和物128.21g(0.5モル)、30%硫酸チタン水溶液20.0g(0.025モル) 、及び脱イオン水252.59gを仕込み、20%炭酸ナトリウム水溶液291.47g(0.55モル)を用い、実施例2と同様にしてMgO−TiO2 触媒(Mg:Ti(原子比)=1:0.05)を得た。
【0030】実施例4硝酸マグネシウム6水和物205.13g(0.8モル)、三酸化二アンチモン5.83g(0.02モル)、及び脱イオン水411.35gを仕込み、90℃で2時間にわたり20%炭酸ナトリウム水溶液423.96g(0.8モル)を滴下し、その後、90℃で1時間熟成した。母液を濾過で除き、沈澱を1リットルの脱イオン水で5回洗浄した。90℃で1日乾燥後、窒素雰囲気下 800℃で2時間焼成して、MgO−Sb23 触媒(Mg:Sb(原子比)=1:0.05)を得た。
【0031】実施例5硝酸マグネシウム6水和物217.95g(0.85モル)、酸化ジルコニウム5.24g(0.0425モル)、及び脱イオン水411.35gを仕込み、90℃で2時間にわたり20%炭酸ナトリウム水溶液450.46g(0.85モル)を滴下し、その後、90℃で1時間熟成した。母液を濾過で除き、沈澱を1リットルの脱イオン水で5回洗浄した。80℃で2日間乾燥後、窒素雰囲気下 600℃で2時間焼成して、MgO−ZrO2 触媒(Mg:Zr(原子比)=1:0.05)を得た。
【0032】実施例6硝酸マグネシウム6水和物76.92g(0.3モル)、硝酸亜鉛6水和物4.46g(0.015モル)、ケイソウ土53.24g、脱イオン水155.26g及び20%炭酸ナトリウム水溶液166.93g(0.315 モル)を用いた他は、実施例5と同様にしてケイソウ土上に20重量%担持されたMgO−ZnO−ケイソウ土触媒(Mg:Zn(原子比)=1:0.05)を得た。
【0033】比較例1硝酸マグネシウム6水和物205.13g(0.8モル) 、脱イオン水411.35gを仕込み、90℃で2時間にわたり20%炭酸ナトリウム水溶液423.96g(0.8モル)を滴下し、その後、90℃で1時間熟成した。母液を濾過で除き、沈澱を1リットルの脱イオン水で5回洗浄した。90℃で1日乾燥後、窒素雰囲気下 800℃で2時間焼成して、MgO触媒を得た。
【0034】比較例2硝酸マグネシウムの代わりに硝酸バリウムを用い、比較例1と同様の方法でBaO触媒を得た。
【0035】比較例3硝酸マグネシウムと硝酸バリウムとを用い、比較例1と同様の方法でMgO−BaO触媒(Mg:Ba(原子比)=1:0.05)を得た。
【0036】比較例4硝酸マグネシウム6水和物128.21g(0.5モル)、硝酸アルミニウム9水和物9.38g(0.025モル)、脱イオン水259.76gを仕込み、90℃で2時間にわたり20%炭酸ナトリウム水溶液284.85g(0.5375モル) を滴下し、その後、90℃で1時間熟成した。母液を濾過で除き、沈澱を1リットルの脱イオン水で5回洗浄した。80℃で1日乾燥後、窒素雰囲気下 600℃で2時間焼成し、MgO−Al23触媒(Mg:Al(原子比)=1:0.05)を得た。
【0037】比較例5協和化学工業製複合金属塩である、キョーワード2000を 500℃で2時間焼成してMgO(59.2%) −Al23(33%)触媒を得た。
【0038】実施例1〜6及び比較例1〜5で得られた触媒のpKa値及びNH3 ガス吸着量を以下に示す方法により測定した。結果を表1に示す。
〈pKa値測定法〉触媒 0.1gとモレキュラシーブで脱水したトルエン5mlに 0.1%の指示薬トルエン溶液を加え、色の変化を見る。指示薬としてはフェノールフタレイン(pKa 9.3) 、2,4,6−トリニトロアニリン(pKa 12.2)、2,4−ジニトロアニリン(pKa 15.0)、4−クロロ−2−ニトロアニリン(pKa 17.2)、4−ニトロアニリン(pKa 18.4)等のpKa3〜25を判定する指示薬を用いた。
〈NH3 ガス吸着量測定法〉触媒サンプル 0.5gをU字形のカラムにつめ、室温で真空にしたあと、気体のアンモニアを100Torr になるまで導入し、数分間吸着させ、再び真空にした後、60℃から 400℃まで昇温し、この間脱離したアンモニアによる圧力上昇から酸性点の量をNH3 ガス吸着量として計算した。
【0039】反応実施例1〜6及び反応比較例1〜52リットルのオートクレーブにラウリルアルコール188g(1モル) と実施例1〜6及び比較例1〜5で得られた触媒を金属酸化物として2重量%仕込み、 165℃まで昇温し、同温度でエチレンオキサイド132g(3モル)を圧力3〜5kg/cm2Gに保ちながら導入し、反応を行った。同温度で1〜3時間熟成した後、80℃に冷却し、触媒濾過を東洋濾紙製 No.2を用い、内径5cmの加圧濾過器で窒素圧3kg/cm2Gで行った。下記の方法で測定したエチレンオキサイド付加反応速度、下記基準で評価した触媒濾過性、及び副生するポリエチレングリコールの含量をGPC分析による分取、重量測定により求めた副生物量を表1に示す。
〈エチレンオキサイド付加反応速度測定法〉オートクレーブ中にエチレンオキサイドを仕込み、圧力が3kg/cm2 になった時をベースとし、これにさらにエチレンオキサイドを仕込み5kg/cm2 にする。その時の仕込エチレンオキサイド重量を測定し、次いで圧力が3kg/cm2 になるまで反応させ、その間の時間を測定する。この操作を繰り返し、目的量のエチレンオキサイドを付加させる。この仕込量と反応時間より、1時間当たりのエチレンオキサイド反応量(モル数)を計算した。
【0040】〈触媒濾過性評価基準〉A:濾過時間1時間以内B:濾過時間2〜5時間C:濾過時間5時間以上又は濾過除去不可
【0041】
【表1】


【0042】反応比較例6触媒としてKOH触媒(対アルコール1モル%)を用い、反応実施例1と同様の反応を行った。エチレンオキサイドの付加反応速度は0.3mol/Hr 以上であった。
【0043】上記反応実施例1〜6及び反応比較例2, 6で得られた反応濾液をトリメチルシリル化してガスクロマトグラフィーによりエチレンオキサイド付加モル数分布を測定した。結果を図1に示す。
【0044】上記の結果から、本発明の触媒(実施例1〜6の触媒)は反応速度、触媒濾過性に優れ、副生物の生成も少ない優れた特性を有することが判明した。また、エチレンオキサイド付加モル数分布も図1に示すように、比較の触媒に比べ、非常にシャープな分布を示した。
【0045】実施例7〜8及び比較例6実施例1において、マグネシウムと亜鉛の原子比Mg:Znが1:0.01、1:0.30及び1:0.50となるように硝酸マグネシウム6水和物と硝酸亜鉛6水和物の配合割合を変えた以外は実施例1と同様にして触媒を調製し、同様にpKa値及びNH3 ガス吸着量を測定した。結果を表2に示す。
【0046】反応実施例7〜8及び反応比較例7実施例7〜8及び比較例6で得られた触媒を用い、反応実施例1と同様の反応を行った。エチレンオキサイド付加反応速度、触媒濾過性を評価した結果を表2に示す。尚、エチレンオキサイド付加反応速度は下記の基準で評価し、触媒濾過性は反応実施例1と同様な基準で評価した。
【0047】
〈エチレンオキサイド付加反応速度評価基準〉○:エチレンオキサイド付加反応速度0.3mol/Hr 以上×:エチレンオキサイド付加反応速度0.1mol/Hr 以下
【0048】
【表2】


【0049】反応実施例9実施例4の触媒を用い、エチレンオキサイド300 g(7モル)を用いる以外は反応実施例1の方法と同様の反応を行った。反応実施例1と同様にエチレンオキサイド付加反応速度、触媒濾過性、及び副生物量を評価した。結果を表3に示す。
【0050】反応比較例8比較例5の触媒を用いる以外は反応実施例9と同様に反応を行い、同様に評価した。結果を表3に示す。
【0051】
【表3】


【0052】表3の結果から、本発明触媒は高モルのエチレンオキサイド付加物の製造にも優れた触媒であることが判明した。
【0053】実施例9〜10実施例4において、20%炭酸ナトリウム水溶液423.96g(0.8モル)の代わりに、それぞれ27.5%NH3 水148.63g(2.40 モル) 、20%NaOH水溶液320.00g(1.6モル) を用いた以外は実施例4と同様の操作を行って触媒を調製し、同様にpKa値及びNH3 ガス吸着量を測定した。結果を表4に示す。
【0054】実施例11実施例4において、20%炭酸ナトリウム水溶液423.96g(0.8モル)の代わりに、20%NaOH水溶液320.00g(1.6モル)を用い、硝酸マグネシウム6水和物205.13g(0.8モル)の代わりに塩化マグネシウム6水和物162.64g(0.8モル)を用いた以外は実施例4と同様の操作を行って触媒を調製し、同様にpKa値及びNH3ガス吸着量を測定した。結果を表4に示す。
【0055】実施例12水酸化マグネシウム 46.66g(0.8モル)、三酸化二アンチモン5.83g(0.02 モル)及び脱イオン水 754gを仕込み、90℃で1時間攪拌後、濾過により水を除き、90℃で一夜乾燥した。これを窒素雰囲気下 800℃で2時間焼成して、MgO−Sb23触媒を得た。このpKa値及びNH3 ガス吸着量を測定した。結果を表4に示す。
【0056】実施例13実施例11において、焼成を空気雰囲気下で行った以外は実施例11と同様の操作を行って触媒を調製し、同様にpKa値及びNH3 ガス吸着量を測定した。結果を表4に示す。
【0057】反応実施例10〜14実施例9〜13で得られた触媒を用い、反応実施例1と同様に反応を行った。反応実施例1と同様にエチレンオキサイド付加反応速度、触媒濾過性、及び副生物量を評価した。結果を表4に示す。
【0058】
【表4】


【0059】表4の結果から明らかなように、触媒原料を変えても、本発明触媒は高活性及び良好な濾過性を示すことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 反応実施例1〜6及び反応比較例2, 6で得られた反応生成物のエチレンオキサイド付加モル数分布を示す図である。
【図2】 反応実施例10〜14で得られた反応生成物のエチレンオキサイド付加モル数分布を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 pKaが9〜25の塩基性点と、NH3ガス吸着量が50μmol/gから 500μmol/g である酸性点を同時に有する金属酸化物からなるアルコキシル化用触媒。
【請求項2】 マグネシウムと、亜族方式による周期律表の第2B族、4A族、4B族、5B族及び6A族から選ばれる金属の少なくとも一種以上とを含有する金属酸化物からなる請求項1記載のアルコキシル化用触媒。
【請求項3】 マグネシウム以外の金属が、亜鉛、アンチモン、スズ、チタン又はジルコニウムである請求項2記載のアルコキシル化用触媒。
【請求項4】 マグネシウム以外の金属がアンチモンである請求項2記載のアルコキシル化用触媒。
【請求項5】 マグネシウム1原子に対し、その他の金属を 0.005〜 0.4原子含有する請求項2〜4のいずれか一項に記載のアルコキシル化用触媒。
【請求項6】 マグネシウム化合物と、亜族方式による周期律表の第2B族、4A族、4B族、5B族及び6A族から選ばれる少なくとも一種の金属の化合物を含む混合水溶液又は水分散液を沈澱剤により共沈澱させ、得られる沈澱物を水洗・乾燥・焼成することを特徴とする請求項2記載のアルコキシル化用触媒の製造方法。
【請求項7】 マグネシウム化合物が硝酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム又は水酸化マグネシウムであり、亜族方式による周期律表の第2B族、4A族、4B族、5B族及び6A族から選ばれる少なくとも一種の金属の化合物が酸化アンチモンである請求項6記載のアルコキシル化用触媒の製造方法。
【請求項8】 沈澱剤がアンモニア水、又はアルカリ金属の水酸化物もしくは炭酸塩である請求項6又は7記載のアルコキシル化用触媒の製造方法。
【請求項9】 沈澱剤がアルカリ金属の水酸化物である請求項8記載のアルコキシル化用触媒の製造方法。
【請求項10】 活性水素原子含有化合物にアルキレンオキサイドを付加し、アルコキシレートを製造するに際し、請求項1〜5のいずれか一項に記載の触媒を用いることを特徴とするアルコキシレートの製造方法。
【請求項11】 活性水素原子含有化合物が、炭素数8〜22の直鎖又は分岐の飽和又は不飽和のアルコールである請求項10記載のアルコキシレートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開平7−227540
【公開日】平成7年(1995)8月29日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−269434
【出願日】平成6年(1994)11月2日
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)