説明

アルコールの改良又はアルコールに関連する改良

共役不飽和カルボニル化合物の存在は、酸条件下のアルコールの色の悪化をもたらす。不飽和カルボニル化合物は、アルコールの製造で用いられるオレフィンのオリゴマー化、ヒドロホルミル化及び水素化反応における副反応によって形成される傾向があり、色の安定性が改善されたアルコールは、オレフィン及び/又はアルコールから共役不飽和カルボニル化合物を除去することによって得られる。共役不飽和カルボニル化合物を測定するための改良された方法を提供する。本方法は、特にカルボニル化合物を測定するための同様に改良された方法と併用して、アルコールの製造方法を改良するために適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、エステルの製造で使われるアルコール、特にC4〜C15アルコールに関する。本発明はさらに、これらのアルコールから誘導されるエステル、及び該エステルの可塑剤又は潤滑剤エステルとしての使用に関する。本発明のより高い炭素数のアルコールは、エトキシラート、スルファート、又はエトキシスルファートのような界面活性剤誘導体でも使用され得る。
本発明は、アルコールの製造方法にも関する。本発明は、本発明のアルコールの製造で出発物質として有用な高級オレフィン、特にC5〜C15オレフィンにも関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
アルコール製エステルの多くの最終使用者は、エステルが低色を有すること、好ましくは無色透明であることを要求する。多くのエステルは、集中的にポリ塩化ビニル(PVC)用の可塑剤として使用される。酢酸エステルは溶媒又は芳香成分として使用されることが多い。アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルは、コーティング、ペイント、接着剤の製造において、又は建築材料のコーキングにおいて、又はラッカー、紙若しくは織物用のバインダーとしてそのまま又はそれらのポリマーとして使用される。可塑剤、溶媒及び芳香成分は低色を有するべきであり、かつ許容できる臭いを有するべきでもある。可塑剤は、太陽光にさらされる物品で使用されることが多いので、紫外線にも耐性でなければならない。可塑剤は、その加工中及びその最終用途の両方で低い臭いレベルを有するように、最小量の揮発性成分又はライトエンド(light end)のみを含むべきである。
【0003】
可塑剤及び潤滑剤エステルは、典型的にC6〜C15アルコールの、酸又は酸無水物、例えばフタル酸の種々の異性体、主に(オルト-)無水フタル酸、シクロヘキサンモノカルボン酸若しくはジカルボン酸又は無水物、アジピン酸、トリメリット酸及びその無水物、又はピロメリット酸の種々の異性体若しくはそれらの無水物等とのエステル化によって作られる。酢酸エステル、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルは、典型的にC4〜C10アルコールで作られる。アルコール自体は、多くの場合、オレフィンのヒドロホルミル化を利用して作られ;該アルコールは、オキソアルコールとしても知られている。オキソアルコールは一級アルコールであり、典型的に分岐アルキル鎖を有する。それらが直鎖一級アルコールを含むか、又は主に直鎖一級アルコールであることもある。このような場合、それらは、典型的に炭素数が偶数の直鎖αオレフィン(LAO)から作られる。炭素数が偶数のLAOからヒドロホルミル化(LAOに1つの炭素原子を加える)によって誘導されたアルコールは、1分子当たり奇数の炭素原子を有する。炭素数が偶数の直鎖(normal)アルコール又はほとんど直鎖のアルコールもヒドロホルミル化によって作られる。
【0004】
オキソアルコールの製造のため2つの主合成法がある。1つの方法は、ヒドロホルミル化及び水素化を含み、場合によりヒドロホルミル化の供給原料として、より高い炭素数を有するオレフィン(高級オレフィンと呼ばれることが多い)を生成するためのオレフィンのオリゴマー化が先行する。別の主合成法は、オレフィンのヒドロホルミル化後のアルドール縮合と水素化を含む。全てのこれらの方法の出発物質はオレフィンであり、単一のオレフィンであってよく、或いはさらに一般的には、オレフィンの混合物であり得る。オリゴマー化、ヒドロホルミル化、水素化及び縮合反応は、すべて触媒され、いくつかの異なる反応を含む傾向がある。従って、両方法の多くの工程では、複雑な反応混合物が形成される傾向がある。それゆえに最終アルコールは、未反応原材料、望ましくない副生物及び触媒残渣を除去するための広範な精製を必要とする。精製は、典型的に洗浄、さらなる水素化又はヒドロ化仕上げ、及び分別蒸留を含む。しかしながら、厳密な精製にもかかわらず、精製されたオキソ-アルコールは必ず小量の不純物を含有する。
【0005】
エステルは、適切なアルコールと酸又は酸無水物の反応によって製造される。可塑剤エステルの製造において、最も一般的に使われる酸無水物は、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水マレイン酸である。頻用の酸として、アジピン酸、トリメリット酸、シクロヘキサン一塩基酸若しくは二塩基酸、安息香酸、クエン酸などが挙げられる。酢酸エステルは、アルコールと酢酸又はその無水物との反応によって製造される。アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルは、典型的にアクリル酸又はメタクリル酸との反応によって製造される。
アルコールのエステル化は、典型的に触媒反応でもあり、多くの場合、酸触媒反応である。酸触媒の例として、ブレンステッド酸、例えば硫酸、メタンスルホン酸及びパラトルエンスルホン酸、及びルイス酸、例えばスズ及びチタンをベースにした有機金属触媒が挙げられる。エステル化反応には典型的に熱が供給され、高いエステル化温度はエステル化プロセスの効率を改善することが分かっている。
アルコールは、従来より厳しくなった現代のエステル化条件下で安定していることが重要である。アルコールに関連する1つの問題は、アルコールはエステル化条件下で望ましくない色を発生させ得るので、形成されるエステルに望ましくない色をもたらし、従って、役立たないか、又は許容できるレベルまで色を減じるためのさらなる処理を要することである。今や我々は、アルコール中に小量の共役不飽和カルボニル含有化合物が存在する場合に、酸触媒を用いたエステル化中に発色が起こり得ることを見い出した。共役とは、化合物が同一分子内でカルボニル基と共役しているエチレン性不飽和を含むことを意味する。我々は、共役不飽和アルデヒドが共役不飽和ケトンより重大な色ジェネレーターであることをも見い出した。
【0006】
如何なる理論にも拘束されることを望むものではないが、我々は、アルコール中の共役不飽和カルボニル化合物の存在は、例えば高級オレフィンを生成するためのオリゴマー化工程、ヒドロホルミル化工程、2つのアルデヒドのアルドール縮合、又は水素化工程のようなアルコール製造プロセスの工程の1つの間の副反応、特に脱水によってこれらの化合物の製造から生じると考える。我々は、これらの化合物は、オリゴマー化又はヒドロホルミル化反応で使われるオレフィン供給原料中の不純物の存在にも起因し得ることも見い出した。例えば、供給原料中に存在するジエンは水和されてから脱水素され得る。驚くべきことに、ヒドロホルミル化へのオレフィン供給原料中に存在する共役不飽和カルボニル化合物には、商業的なアルコール製造で用いられる典型的な蒸留及び水素化技法に影響されないと思われるものがあり、ヒドロホルミル化及び水素化の間中、有意な量が存在したままであることが分かった。従って、それらはアルコール中に、かつアルコールが酸条件にさらされると色に悪影響を与えるのに十分な量で存在し得る。我々は、ケトンとアルデヒドが両方とも形成され得るが、アルデヒドよりケトンの方がオリゴマー化で同時に形成され得ることをも見い出した。
【0007】
米国特許第3,232,848号は、合成的に製造されたアルコールの精製方法、並びに合成アルコール及びそれらの化学的誘導体の色質を改善する方法に関する。米国特許第3,232,848号は、合成アルコール中に存在する不純物は性質が極端に複雑であり、一般的にアルコールの製造法によってアルコールに導入される汚染量のアルデヒド及び不飽和化合物であると考えられると述べている。米国特許第3,232,848号で色について用いた試験は硫酸試験ASTM D 1209-54と同様であり、この試験は、この文書でさらに詳細に後述する試験ASTM E 852-94aに取って代わられた。米国特許第3,232,848号は、三価のリンを含む酸の存在下でのストリッピング及び蒸留を含むアルコールの後処理によって、色質が改善されたアルコールを提供し得ることを示唆している。
英国特許第1336776号は、強酸触媒を使用する無色エステルの製造に関し、エステルの製造で用いられるアルコール中の微量のカルボニル基及びエチレン基の存在がエステルを着色することになると述べている。エステル反応は135℃で3時間続く。エステル化中に不純物も発生し得ると述べられており、この文書は、エステル化反応の間中、水素化条件が有効であるように、水素化触媒の存在下にて水素化媒体中でエステル化反応を行なうことによって、この問題を克服できると示唆している。
英国特許第923464号は、アルミニウムアルキルを用いたエチレン成長法であるチーグラー法で製造されたアルコールの精製に関する。アルデヒド、エステル及びアルドール縮合生成物などの混入物の存在がアルコールに色を与え得ると述べている。
米国特許公開第2006/0105465号は、オキソ法で得られた合成C4〜C15アルコールを含むサンプル中のカルボニル官能、すなわちアルデヒド及び/又はケトンの定量分析用の測色技法を開示している。この技法は、酸を用いてヒドラゾンを形成するためのカルボニル官能と2,4-ジニトロフェニルヒドラジンの反応を含み、この反応は硫酸の存在下で非常に速い。引き続き、ヒドラゾンが水酸化カリウムと反応して着色種を形成し得る。次に、好ましくはASTM E-313に準拠する黄色指標を用いて分光光度法で、着色種の濃度を決定し得る。ほんの数分間で結果が得られるので、該分野で適用するのにも適している。この技法は、区別なく、全てのカルボニル官能について分析することが分かっている。US 2006/0105465は、オキソ法で製造した一連のアルコールのカルボニル数を決定したことを開示している。
【0008】
DE1148221及び関連するUS3,373,211は、オキソアルコール中及び酸化後のアルミニウムアルキルの加水分解によって調製されたアルコール中の飽和若しくは不飽和のカルボニル化合物の存在、並びにそれらのフタル酸エステル誘導体の色に及ぼす効果に関する。これらの文書は、該C6〜C16アルコールは広範な分別後でさえ、一般的に0.01〜1.0wt.%のカルボニル化合物を含むことを開示している。0.01wt%のC6カルボニル化合物の濃度は、1meq/kgのカルボニルの存在に相当し、かつ0.056mg KOH/gのカルボニル数と等価である。最終分別前なので、オキソボトム(oxo bottom)と呼ばれることもある高分子量の二量体及び三量体を含む未精製の揮散デシルアルコール蒸気は、0.02wt%レベルのカルボニル化合物を含有すると開示されている。該文書は、これらのカルボニルが最終分別中にどのレベルまで濃縮されるか、或いは例えば真空塔内で酸化的脱水素を引き起こす酸素侵入、水素化触媒微粒子のエントレインメントのため、又はゲルベ(Guerbet)アルコール縮合反応(そのメカニズムは不飽和中間体を経て進むと考えられている)等の副反応を引き起こす他の微量化合物のため、該最終分別中にどれだけ余分の飽和又は不飽和のカルボニルが形成され得るかを開示していない。該アルコールの純度要求は1960年代以来進展しており、今日では、さらにいっそう厳密になってきた。GB1252678の開示に関しても同様のことが言える。
今までのところ、ASTM E 852-94a又はASTM D5398等の熱硫酸色試験(Hot Sulphuric Acid Colour test)における色形成の原因は明らかにされていない。熱硫酸色形成はアルデヒドの存在の指標であり得る。該試験では、アルデヒドがアルドール化(aldolise)及び脱水して色形成体を形成し得る。我々は、より大量のアルデヒドの存在が熱硫酸色試験において、より強い色の結果につながり得ることをも見い出した。従って、エステル化を意図したアルコールは、US2006/0105465(その開示は、参照によって本明細書に包含される)に記載の試験のような既知のカルボニル試験によって測定した場合に一定レベル以上のカルボニル官能を含むべきでない。従って、市販のアルコールは、典型的に製品仕様として最大カルボニル数を示して提供される。時には、熱硫酸色試験のPt/Coスケールについての最大色示度をも規定される。しかしながら、アルコールについての該仕様にどの混入物が関係するのか、又はそれのどのレベルが許容できないのか不明である。従って、熱硫酸色試験は便利な指標となるツールであるが、その結果から導かれ得る結論、特に定量的結論は制限される。従って、アルコールの製造では、好ましくは産業環境、好ましくはアットライン(at-line)又はオンラインの分析法のような分野で使うのに適した技法である、共役不飽和カルボニル官能の高感度かつ特異的な測定法が要望されている。このような方法は、好ましくはアットライン法として又はオンライン法としてさえも、全カルボニルを測定するための便利なカルボニル試験によっても補完され得る。そして、両方法が一緒にアルコール製造プロセスの、該プロセスの主に水素化工程のもっと綿密な品質のモニタリング、より低い操作温度及び圧力、より長い触媒寿命、より低い水素要求を可能にし、かつ処分すべきオフガス及び消耗触媒を少なくできるであろう。それらは、不飽和共役カルボニル化合物が少ないアルコールを製造する能力をも提供する。
【0009】
本文脈では、アットライン法は、サンプルを取る場所の近くにある野外実験室でオペレーターによって実行される分析法を意味する。サンプルは典型的にオペレーターによって手で収集される。分析法自体は自動化されていてもいなくてもよい。利点は分析結果を即座にオペレーターが入手できることである。オンライン分析法は、そのサンプルをオンラインで取る方法を意味し、すなわち典型的に完全に自動化され、オペレーターの介入なしで作動する。オンライン法の分析手順も通常は完全に自動化されているので、結果を生成するために普通は人が必要ない。オンライン分析法の結果も普通は自動的に、例えば電子的手段によって、遠隔観察者、例えば集中管理室内のパネルオペレーターに伝達される。
本発明は、低レベルの共役不飽和カルボニル化合物を含むアルコール組成物に関する。本発明が関係する望ましくない共役不飽和カルボニル化合物は、種々の理由でアルコール中に存在し得る。例えば、ヒドロホルミル化へのオレフィン供給原料の性質及び起源によっては、それらがオレフィン供給原料中に存在することがあり、或いはオレフィン供給原料の加工中に発生することもある。例えばC9アルコール製造のためのC8オレフィンは、ブテンの二量化によって製造される。或いは、ブテン供給原料をヒドロホルミル化してC5アルデヒドを生成し、それがアルドール反応を受け、水素化されてC10アルコールを生成する。従って両反応がブテン供給原料を利用する。石油起源の供給原料がブテン源として利用されることが多く、これらの供給原料は小量のブタジエンを含有し得る。さらに、二量化反応及びヒドロホルミル化反応中に、場合により水和及びさらなる脱水素によって、及び/又は水素移動と相まって起こり得る脱水素及び異性化副反応によって、小量のブタジエンが生成され得る。従って、ブタジエンが存在することがあり、ブタジエンは不飽和カルボニル化合物の前駆体であり、その一部が共役され得る。同様に、小量の他のジエンが他のオレフィン供給原料中に存在することがあり、及び/又はヒドロホルミル化用の供給原料を製造するためのそのオリゴマー化中に生成されることもある。ヒドロホルミル化反応において、例えばアルドール縮合によって生成され得るヒドロキシ又はジヒドロキシアルデヒドの脱水によって共役不飽和カルボニル化合物が生成されることもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
(発明の概要)
我々は、UV分光光度法が、アルコールの品質及びアルコール製造プロセスのモニタリングのため、特にアルコール製品及び他のプロセスストリーム中の不飽和共役カルボニル化合物の量を、かつこれを非常に低レベルに至るまで定量するために非常に適していることを見い出した。従って、本発明は、アルコールの製造プロセス又はアルコールの消費プロセスに関連してアルコールの品質をモニターするためのUV分光光度分析法の使用を提供する。
我々は、本発明のUV分光光度法が、アルコール及び他の含酸素物(oxyganate)を含有するサンプル中の共役不飽和カルボニル化合物の濃度を0.02meq/kgのレベル(同サンプル中で測定されるカルボニル数に約0.001mg KOH/gしか寄与しないであろう濃度である)に至るまで定量することができることを見い出した。本発明のUV分光光度法は、特定のプロセス及びプロセスストリームに合わせて正確に較正すると、使いやすく、かつ速い応答を与えるで、野外での用途、例えばアットライン又はオンラインでさえ非常に適するようになる。
我々は、さらに、US2006/0105465に開示されているように、アットライン測定又はオンライン測定さえにも適しているカルボニル定量法を利用することによって、このモニタリングをさらに改善できることをも見い出した。従って、本発明は、本明細書で詳述するUV分光光度法と組み合わせたこのカルボニル定量法の使用を提供する。
別の実施形態では、本発明は、アルコールの製造方法であって、好ましくは後述するカルボニル定量法と組み合わせて、本発明のUV分光光度試験法によって、水素化反応をモニターする方法を提供する。
我々は、共役不飽和カルボニル化合物、特に共役不飽和アルデヒドが実質的にないアルコールは、特に酸触媒、特にブレンステッド酸触媒を使用するエステル化プロセスでエステルを製造すると、着色が少ないエステルを製造することを見い出した。我々は、該アルコールを熱硫酸色試験に供すると、それらは色を形成する傾向が低減していることをも見い出した。従って、エステル化生成物のさらなる精製を単純化し、少ない化学薬品及び/又は光熱費しか消費せず、かつ廃棄吸着剤のような廃棄物資の量を減らすことができる。エステル化プロセスで使用すると、該アルコールは着色の少ないエステルをもたらす。
我々は、アルコールの製造で用いられるヒドロホルミル化反応へのオレフィン供給原料が共役不飽和カルボニル化合物、特に共役不飽和アルデヒドを実質的に含まない場合、これらのオレフィン供給原料からヒドロホルミル化反応によって製造されるアルコールは、熱硫酸色試験に供したときに色を形成する傾向が低く、本明細書で先に説明したのと同じ利点を伴うことをも見い出した。
【課題を解決するための手段】
【0011】
従って、本発明は、最大で1.78meq/kgの共役不飽和カルボニル化合物を含むC4〜C15アルコール組成物であって、
(i)アルコール混合物の名目上の平均炭素数が6の場合、前記混合物は最大で0.99meq/kgの共役不飽和カルボニル化合物を含み、
(ii)アルコール混合物の名目上の平均炭素数が7又は8の場合、前記混合物は最大で0.17meq/kgの共役不飽和カルボニル化合物を含み、
(iii)アルコール混合物の名目上の平均炭素数が9又は13の場合、前記混合物は最大で0.88meq/kgの共役不飽和カルボニル化合物を含み、かつ
(iv)アルコール混合物の名目上の平均炭素数が10の場合、前記混合物は最大で1.05meq/kgの共役不飽和カルボニル化合物を含む、
アルコール組成物をも提供する。
共役不飽和カルボニル化合物は、少なくとも1つの共役不飽和アルデヒドを含み得る。アルデヒドが共役不飽和カルボニル化合物の過半数又は全てに相当してよい。
本発明は、さらにC6〜C15アルコールの製造に有用であり、かつ最大で13.5meq/kgの共役不飽和カルボニル化合物を含むC5〜C14オレフィンを提供する。
本発明のオレフィン中の共役不飽和カルボニル化合物は、共役不飽和アルデヒド及び/又は共役不飽和ケトンであってよい。
【0012】
本発明は、さらに、ヒドロホルミル化工程、水素化工程及び前記水素化生成物から生成されたアルコールを蒸留するための工程を含む、C4〜C15オキソ-アルコールの製造方法であって、
(a)前記ヒドロホルミル化工程でC3〜C14オレフィンをヒドロホルミル化し、かつ前記水素化工程でヒドロホルミル化の生成物を水素化してC4〜C15オキソ-アルコールを形成すること、及び
(b)前記ヒドロホルミル化工程でC2〜C4オレフィンをヒドロホルミル化してC3〜C5アルデヒドを形成し、少なくとも1つのアルドール工程で前記C3〜C5アルデヒドをその二量体、三量体又は四量体(分岐C6〜C15アルデヒドである)にアルドール化し、かつ前記水素化工程で前記分岐C6〜C15アルデヒドをC6〜C15アルコールに水素化すること
から選択される方法であって、
前記C4〜C15アルコール中の共役不飽和カルボニル化合物の含量を、以下の工程
(i)(a)のヒドロホルミル化工程へのオレフィン供給原料がC6〜C14オレフィンの場合、この(a)のヒドロホルミル化工程へのC6〜C14オレフィン供給原料を処理して、その共役不飽和カルボニル化合物の含量を13.5meq/kg未満に減少させる工程、
(ii)(a)又は(b)の水素化工程の生成物を処理して、その共役不飽和カルボニル化合物の含量を13.5meq/kg未満に減少させる工程、及び
(iii)前記方法の蒸留工程からの生成物アルコールを処理して、その共役不飽和カルボニル化合物の含量を1.78meq/kg未満に減少させる工程
から選択される少なくとも1つの工程で減少させる、前記方法を提供する。
本発明はさらに、本発明のアルコールから誘導されたエステルを提供する。このエステルは色が少なく、本発明のエステルの多くの最終用途に有利である。
本発明はさらに、本発明のエステルの、ポリ塩化ビニル用可塑剤として、及び合成潤滑剤としての使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】共役不飽和アルデヒドを添加した(spiked)イソノニルアルコールサンプルの紫外スペクトルである。
【図2】共役不飽和ケトンを添加したイソノニルアルコールサンプルの紫外スペクトルである。
【図3】オクテン混合物からシリカゲル上に吸着させた後にエタノールで溶出することによって得られた生成物の紫外スペクトルであり、220〜230nmの吸収ピークによって共役不飽和化合物の存在を示している。
【図4】共役不飽和カルボニル化合物、アルデヒド又は非共役不飽和カルボニル化合物を含むアルコールを熱硫酸色試験に供したときに得られたPt/Co色示度を示すグラフであり、横軸の不純物の濃度はカルボニル数としてmg KOH/gの単位で表されている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(詳細な説明)
本発明のアルコール組成物は直鎖又は分岐鎖であってよい。本発明のアルコール組成物はアルコールの混合物であってよい。混合物は異なる炭素数及び/又は異なるアルキル基を有するアルコールを含んでよい。混合物は分岐アルコール及び/又はノルマル若しくは直鎖アルコール(線形アルコールと呼ばれることもある)を含んでよい。本発明のアルコール組成物は、好ましくはオキソアルコール組成物又はチーグラーアルコール組成物である。これらのアルコールをもたらすプロセス、特にヒドロホルミル化及びアルドール化(aldolisation)工程は、いずれの蒸留工程でさえ、共役不飽和カルボニル化合物を導入することが知られており、これらの化合物は、通常の精製技法では高品質のアルコール誘導体の製造に必要な非常に低いレベルに至るまで除去されないことについては本明細書で上述した。
本発明のアルコールは、その分子内に、4〜15の範囲内のいずれかの数、好ましくは5、6、7、8、9、10、11、12、13又は14の炭素原子を含有し得る。アルコールがアルコールの混合物を構成する場合、混合物は異なる炭素数のアルコールを含んでよい。従って、平均炭素数が指定範囲内であるという条件で、アルコール混合物中の一部のアルコールが指定範囲外の炭素数を有してもよい。アルコール混合物の平均炭素数は、好ましくは最も近い整数に四捨五入され、その結果をアルコール又はアルコール混合物の名目上の平均炭素数と称する。従って、本発明のアルコールの名目上の平均炭素数は指定範囲内である。
技術上周知の方法で容易に本発明のアルコールの炭素数分布を決定し得る。例えば、我々は、適切な連続した一連の直鎖アルコールで較正した沸点ガスクロマトグラフィー(GC)法がこの目的に適していることを見い出した。該方法では、GCスペクトルは典型的に、2つの連続した直鎖アルコールの保持時間の間の保持時間で溶出するGCピークをその2つの区切られる直鎖アルコールの最も高い炭素数に割り当てることによって個々の炭素数に分裂する。
【0015】
本発明のアルコールは、最大で1.78meq/kgの共役不飽和カルボニル化合物を含む。好ましくはアルコールは、最大で1.50meq/kg、さらに好ましくは最大で1.20meq/kg、なおさらに好ましくは最大で1.05meq/kg、なおさらに好ましくは最大で0.99meq/kg、なおさらに好ましくは最大で0.98meq/kg又は0.95meq/kg、なおさらに好ましくは最大で0.88meq/kg、再びさらに好ましくは最大で0.50meq/kg、なおさらに好ましくは最大で0.41meq/kg、なおさらに好ましくは最大で0.35meq/kg又は0.20meq/kg、なおさらに好ましくは最大で0.17meq/kgの共役不飽和カルボニル化合物を含む。特にアルコールの名目上の平均炭素数が8の場合、最も好ましくはアルコールは最大で0.087meq/kgの共役不飽和カルボニル化合物を含む。アルコールの名目上の平均炭素数が10の場合、我々は、本発明のアルコールが最大で0.71meq/kgの共役不飽和カルボニル化合物を含むことを最も好む。
本発明の分岐アルコールは単一の異性体アルコールであってよい。適切な例は、プロピレンから得られる2-エチルヘキサノール、エチレンから得られる2,4-ジメチルヘプタノール、及びn-ブテン又は1-ブテンから得られる2-プロピルヘプタノールであり、技術上周知のヒドロホルミル化、アルドール化及び水素化工程の組合せを利用する。本発明のアルコールは、1分子当たり1、2、3又は4つの分岐を有してよい。我々は、アルコールが1分子当たり3つだけ、好ましくは2つだけ、さらに好ましくは1つだけ分岐を有することを好む。1分子当たりの分岐が少ないほど、低い粘度を有するエステル誘導体を製造することができる。ポリ塩化ビニル(PVC)用の可塑剤として用いられるフタル酸エステル又はアジピン酸エステルの場合、低粘度エステル製のPVCプラスチゾルも低い粘度を有し、特にプラスチゾル用途で加工しやすいだろう。
【0016】
本発明の分岐アルコールは、異なる分岐アルキル鎖を有するアルコールの混合物であってよい。1分子当たりの分岐の数は混合物中の全てのアルコールで同一であってよい。アルコールは、1分子当たりの分岐の数が異なるアルコールの混合物であってもよく、この場合、1分子当たりの分岐の平均数を決定し得る。我々は、1H-NMRを用いて平均分岐度(branchiness)を決定することを好む。この技法、及びそれがどのようにしてアルコールの平均分岐度をもたらし得るかは、WO2006/012989にイソノニルアルコールについて詳述されており;我々は、この方法が他の炭素数にも適していることを見い出した。我々は、本発明のアルコールが1分子当たり0.1〜4.0、好ましくは0.3〜3.1、さらに好ましくは0.35〜2.7、なおさらに好ましくは0.4〜2.2、なおさらに好ましくは0.45〜2.1、なおさらに好ましくは0.5〜1.5、最も好ましくは0.55〜1.2の範囲の平均分岐度を有することを好む。
本発明の分岐アルコールは1つだけの分岐を有してよく、かつこの分岐は常にアルコールのOH官能に対して2番目の炭素位置にあってよい。適切なアルコールは2-エチルヘキサノール及び2-プロピルヘプタノールであり得る。ゲルベ反応を利用して他の低分子量アルコールから分岐アルコールを製造してもよい。この反応では、2つのアルコール分子が縮合して二量体一級アルコール分子になり、OH官能に対して2番目の炭素位置に分岐がある。ゲルベ反応の出発アルコールが直鎖アルコールの場合、誘導されるゲルベアルコールは1つだけ分岐を有し、かつ分岐の100%がアルコール又はOH官能に対して2番目の炭素位置にあるであろう。
本発明の分岐アルコールは異なる構造を有するアルコール分子の混合物であってよい。本発明の一実施形態では、アルコール分子の最大で80モル%がアルコール又はOH官能に対して2番目の炭素位置にそれらの第1の分岐を有する。適切なアルコールは、より高級オレフィンのヒドロホルミル化によって得られるオキソ-アルコールである。アルコール又はOH官能に対して2番目の炭素位置にそれらの第1の分岐を有するアルコール分子の部分は、当該分野で既知の技法で決定され得る。例えば、WO2006/012989(その開示は、参照によって本明細書に完全に組み込まれる)にも詳述されているように、13C-NMR法を使用し得る。
【0017】
本発明は、本発明のアルコールの製造に有用なオレフィンであって、最大で13.5meq/kgの共役不飽和カルボニル化合物を含有するC5〜C14オレフィンをも提供する。オレフィンは高級オレフィンであってよい。我々は、オレフィンが最大で12.5meq/kg、好ましくは最大で10meq/kg、さらに好ましくは最大で8meq/kg、なおさらに好ましくは最大で5.0meq/kg、なおさらに好ましくは最大で3.00meq/kg、再びさらに好ましくは最大で2.00meq/kgの共役不飽和カルボニル化合物を含むことを好む。
本発明のオレフィンは、より低量、例えば最大で1.78meq/kg、好ましくは最大で1.50meq/kg、さらに好ましくは最大で1.20meq/kg、なおさらに好ましくは最大で1.05meq/kg、なおさらに好ましくは最大で0.88meq/kg、再びさらに好ましくは最大で0.50meq/kg、なおさらに好ましくは最大で0.35meq/kg又はさらに0.20meq/kg、なおさらに好ましくは最大で0.17meq/kgの共役不飽和カルボニル化合物を含んでもよい。最も好ましくは本発明の高級オレフィンは、最大で0.087meq/kgの共役不飽和カルボニル化合物を含む。共役不飽和カルボニル化合物は、共役不飽和アルデヒドであってよく、或いは共役不飽和ケトンであってよい。本発明のオレフィン中に存在する共役不飽和カルボニル化合物のレベルが低いほど、除去する必要がある該化合物の量が少ない。
本発明のオレフィンは、より高量の共役不飽和カルボニル化合物、例えば最大で50meq/kg、好ましくは最大で30meq/kg、さらに好ましくは最大で20meq/kg、なおさらに好ましくは最大で15meq/kgの共役不飽和カルボニル化合物を含んでもよい。
好ましくは、本発明のオレフィンは主に分岐されている。一実施形態では、オレフィンは、好ましくは少なくとも1つの分岐オレフィンを含むが、場合により線形又は不分岐オレフィンをも含有するオレフィンの混合物である。
【0018】
本発明のオレフィンは、その分子内に5〜14の範囲のいずれかの数、好ましくは6、7、8、9、10、11、12又は13の炭素原子を含んでよい。オレフィンがオレフィンの混合物を構成する場合、混合物は異なる炭素数を有するオレフィンを含んでよい。従って、平均炭素数が指定範囲内であることを条件に、オレフィン混合物中の一部のオレフィンが指定範囲外の炭素数を有してもよい。オレフィン混合物の平均炭素数は、好ましくは最も近い整数に四捨五入され、その結果はオレフィン又はオレフィン混合物の名目上の平均炭素数と呼ばれる。従って、本発明のオレフィンの名目上の平均炭素数は指定範囲内である。
技術上周知の方法で容易に本発明のオレフィンの炭素数組成を決定することができる。例えば、適切な連続した一連の直鎖パラフィンで較正された沸点水素化ガスクロマトグラフィー(ヒドロ-GC)法がこの目的に適している。該方法では、GCカラムに入る前にオレフィンがアルコールに水素化され、かつGCスペクトルは典型的に、問題の保持時間の前後に現れる2つの連続した直鎖パラフィンの2つの保持時間に対して特定の保持時間で溶出する各GCピークに炭素数を割り当てることよって、個々の炭素数に分裂する。従って、2つの区切られる直鎖パラフィンの最高の炭素数は、決定しているピークに起因する。
好ましくは、本発明のオレフィンは、6〜12、好ましくは7〜11、さらに好ましくは8〜10の範囲、なおさらに好ましくは9の名目上の平均炭素数を有するオレフィン混合物を構成する。本発明の非常に好ましいオレフィンは、ブテンの二量化から得られたオクテン混合物である。
【0019】
本発明の分岐オレフィンは、異なる分岐度の構造を有するオレフィンの混合物であってよい。1分子当たりの分岐の数は混合物中のオレフィンの全てで同一であってよい。1分子当たりの分岐の数が異なるオレフィンの混合物であってもよく、この場合は1分子当たりの分岐の平均数が決定され得る。典型的にノネンまでかつノネン混合物を含めた多くの軽量オレフィン混合物では、沸点GC、又はヒドロ-GCにおける個々の異性体ピークを同定することができ、GCスペクトル又はヒドロ-GCスペクトルから平均分岐度を決定することができる。9を超える炭素数を含む当該オレフィン混合物を含め、平均炭素数が分かっていれば、1H-NMRを用いてオレフィン混合物の平均分岐度を決定することもできる。好ましくは本発明のオレフィンは、0.1〜0.4、好ましくは0.3〜1.3、さらに好ましくは0.35〜2.7、なおさらに好ましくは0.4〜2.2、なおさらに好ましくは0.45〜2.1、なおさらに好ましくは0.5〜1.5、最も好ましくは0.55〜1.2の範囲内である1分子当たりの平均分岐度を有する。
例えば、適切なオレフィンは主にC3及びC4オレフィン並びにその混合物のリン酸又はゼオライト触媒オリゴマー化によって得られたC5〜C12オレフィンの混合物であり得る。オリゴマー化中に微量のエチレンのみならず、C5オレフィンも存在し得る。ヒドロホルミル化用の供給原料としてオレフィン混合物を使用する場合、それらを分別して、大部分が所望の炭素数のアルデヒド及びアルコールの製造に適したは炭素数の相対的に狭いボイリングカット(boiling cut)混合物を得ることができる。或いは他のオリゴマー化技法でオレフィンを得ることができる。このような技法としてOctol(登録商標)法又は米国特許第6,437,170号に記載されている方法のようなニッケルをベースとした触媒又は酸化ニッケル触媒を使用するブテンの二量化又は三量化が挙げられる。他の技法として、Dimersol(登録商標)法の範囲のような、ニッケル塩を使用し、かつジアルキルアルミニウムハライドを必要とする、エチレン、プロピレン、ペンテン及び/又はブテン、好ましくは単一の炭素数の供給原料、さらに好ましくは不分岐オレフィン、なおさらに好ましくは末端オレフィン、例えばブテン-1のオリゴマー化法が挙げられる。さらに他の方法は、プロピレン及び/又はブテン及び/又はペンテンのオリゴマー化のためゼオライト又は分子ふるいオリゴマー化触媒を利用する。これらの方法のオレフィン生成物は典型的に分岐され、かつ相対的に低い量、典型的に10wt%未満の線形オレフィン異性体を含む。
【0020】
SHOP又はチーグラー法のようなエチレン成長法からオレフィンを得てもよい。この場合、オレフィンは直鎖、好ましくは末端オレフィンであることが多く、線形αオレフィン又はノルマルαオレフィンと呼ばれる。SHOP法は、メタセシス工程を含むことがあり、この場合、不均等な炭素数も生成され得る。エチレン成長から得られるオレフィンは、6、8、10若しくは12、又はさらに高い炭素数、例えば14、16、18まで又は20でさえの炭素数を有し得る。オレフィンは、合成ガスの炭化水素への変換のためのフィッシャー・トロプシュ(Fisher-Tropsch)法から得られた混合物であってもよい。この方法は、主に末端オレフィンを含む一連の炭素数のオレフィンを発生させるが、それらの最長アルキル鎖に沿っていくつかの側枝を示すことがあり、かついくつかの内部オレフィン、線形及び分岐オレフィンを含むこともある。この場合、高炭素数も有用な出発液体であり得る。ヒドロホルミル化に適したフィッシャー・トロプシュオレフィンはEP835234に開示されているが、この分野の多くの他の開示が容易に見つけられる。フィッシャー・トロプシュ法のための合成ガスはいずれの炭素含有源からも得られ、炭素含有源としては天然ガス、LPG、ナフサ、原油又はそれから誘導されるいずれもの液体、石炭が挙げられるが、バイオマス又はプラスチック廃棄物でもよい。石炭は、その豊富さのため特に適している。バイオマス及びプラスチック廃棄物は、特定環境下ではネガティブでさえあり得るそれらの低い代替価値のため特に適している。
上記オレフィンオリゴマー化法のためのみならず、アルドール縮合に適したアルデヒドを製造するためのオレフィンのヒドロホルミル化のためでもある出発物質は、流動接触分解(fluid catalytic cracking)(FCC)から、エタン及びプロパン等のガス、液化石油ガス(LPG)等の液体、ナフサ、ガスオイル若しくは重質留分、又は全原油でさえの蒸気分解若しくは熱分解から得られる。出発物質は、オレフィンに酸素添加する(oxygenate-to-olefin)方法由来、またパラフィン脱水素法由来であってもよい。
【0021】
我々は、オリゴマー化からのオレフィン中の共役不飽和カルボニル化合物の含量は、オリゴマー化供給原料のジエン含量を減らすことによって減少させ得ることを見い出した。我々は、オリゴマー化からのオレフィン中の共役不飽和カルボニル化合物の含量の減少は、オリゴマー化への供給原料中の酸素含有化合物の量を減らすことによっても達成され得ることを見い出した。この文脈では、我々はオリゴマー化条件下で水が化学反応に関与し得ることを見い出したので、水を酸素含有化合物と見なし得る。
本発明の方法の一実施形態では、オリゴマー化法の供給原料として使用するオレフィンは、低いジエン含量、例えばオリゴマー化法へのオレフィン供給原料の総質量に対して最大で3000wtppm、好ましくは最大で2000wtppm、さらに好ましくは最大で1000wtppm、最も好ましくは最大で500wtppmのジエンを有する。我々は、オリゴマー化供給原料のジエン含量を減少させると、オリゴマー化から得られる高級オレフィン中の共役不飽和カルボニル化合物の存在が減少し得ることを見い出した。
本発明の方法の別の実施形態では、オリゴマー化法で供給原料として使用するオレフィンは、低含量の酸素含有化合物、例えばオリゴマー化法へのオレフィン供給原料の総質量に基づいて最大で1000質量ppm、好ましくは最大で600質量ppm、さらに好ましくは最大で300質量ppm、なおさらに好ましくは最大で100質量ppm、なおさらに好ましくは最大で40質量ppm、なおさらに好ましくは最大で25質量ppm、最も好ましくは最大で20質量ppmの含量を有する。便宜上、オリゴマー化法への新鮮な供給原料中に存在する酸素含有化合物の総量に水を含める。
【0022】
一実施形態では、本発明は、C4〜C15オキソ-アルコールの製造方法であって、C3〜C14オレフィンのヒドロホルミル化工程、ヒドロホルミル化の生成物を水素化してC4〜C15オキソ-アルコールを形成する工程、及び水素化生成物から生成物アルコールを蒸留する工程を含む方法に関する。別の実施形態では、C4〜C15オキソ-アルコールは、C2〜C4オレフィンをヒドロホルミル化してC3〜C5アルデヒドを形成する工程、少なくとも1つのアルドール工程でC3〜C5アルデヒドをその二量体、三量体又は四量体(分岐C6〜C15アルデヒドである)にアルドール化する工程、分岐C6〜C15アルデヒドを分岐C6〜C15アルコールに水素化する工程及び水素化生成物から生成物アルコールを蒸留する工程を含む方法によって製造される。この最後の実施形態では、出発オレフィンはC2〜C4オレフィンであり、それらのヒドロホルミル化生成物は典型的にオレフィン供給原料中の共役不飽和カルボニル化合物の存在によって影響されない。該方法からのアルコール生成物の品質は、ヒドロホルミル化中に作られ、アルドール縮合中に生成し、かつ水素化工程中にさらに生成され、又は水素化工程後に残存し得る共役不飽和カルボニル化合物に影響され得る。このような共役不飽和カルボニル化合物を分離、例えば水素化の下流の蒸留工程によって除去するのは困難である。
本発明が関係している共役不飽和カルボニル含有化合物の化学的性質は、オレフィン供給原料の性質及びオレフィン供給原料がオリゴマー化、ヒドロホルミル化及びアルドール縮合中にさらされる条件によって決まる。しかしながら、我々は、強い悪影響を有し、かつ酸条件下でアルコールに色形成をもたらす物質は、下記式のもの、特にR1が水素である場合であることを見い出した。
【0023】
【化1】

【0024】
この式中、R1、R2、R3及びR4は、R1、R2、R3及びR4が合わせて2〜7個の炭素原子を含むことを条件として、水素及びC1〜C7炭化水素基、特に分岐炭化水素基から個々に選択され得る。不飽和カルボニル含有化合物は、普通はアルデヒドとケトンの混合物である。R1がC1〜C7炭化水素基であるケトンは優勢な傾向があるが、R1が水素であるアルデヒドは、色形成に最大の悪影響を及ぼす傾向がある。基R1、R2、R3及びR4が一緒に特定の環状構造を形成してもよい。
オレフィンとアルコールの両方におけるこれらの共役不飽和カルボニル化合物の存在は、ガスクロマトグラフィー質量分析(GCMS)によって検出され得る。アルコール中の共役不飽和カルボニル化合物の存在及び含量は紫外分光光度法によっても測定され、この場合、共役不飽和アルデヒドは220〜240nmの範囲の波長で強く吸収し、共役不飽和ケトンは約200〜220nmで吸収する。オレフィン中の共役不飽和カルボニル化合物の存在及び含量は、シリカゲル上にオレフィンからこれらの化合物を吸着させ、吸着物質を極性溶媒でシリカゲルから溶出し、極性溶媒中の共役不飽和カルボニル化合物の存在を、例えばGCMSによるか又は上記と同一の波長範囲における紫外分光光度法で溶出物質の吸収を測定することによって決定することで決定され得る。この発明の目的では、オレフィンに関する測定は、ヒドロホルミル化反応器に供給される生成物について行なうべきであり、アルコールに関する測定は、エステル化のために用意し、かつ典型的に利用されるどんな仕上げ操作でもその後に得られた生成物について行なうべきである。
アルコール中の微量の共役不飽和アルデヒド及び/又はケトンを定量するためUV分光光度法が非常に適した技法であることが分かった。我々は、UV分光光度法が如何なる他の利用可能な技法よりずっと感度が高く、かつ特異的であることを見い出した。この技法によって、他の利用可能な技法を用いるよりずっと低レベルのこれらの化合物を定量することができる。非常に低レベルに至るまで定量結果を与えるために較正しやすいことが分かった。この技法は、応用しやすく、かつ速い応答時間を有するので、化学的方法のアットライン用途にとって、又はオンライン用途にとってさえ適している。サンプルの質量単位当たりのミリ当量で容易に結果を表すことができるので、結果をUS2006/0105465に開示されているような方法(不飽和共役アルデヒド及び/又はケトン並びにカルボニル官能を含む他の化合物の独立したモニタリングを可能にする)のカルボニル数の結果と容易に比較することができる。
【0025】
これらの共役不飽和アルデヒド及びケトンの含量は、前述したUV範囲内の波長周辺のそれらのピーク最大におけるそれらの吸光度に正比例することが分かった。我々は、この関係がランベルト・ベールの法則(Beer-Lambert's law)に従うことを見い出した:
A=ε×p×C
ここで、Aは吸光度であり、
εは消衰係数であり、
pは光路長(pathlength)であり、かつ
Cは濃度である。
光路長が分かれば、合成によって調製した既知濃度のブレンドの吸光度を調べることから消衰係数を決定し得る。濃度に対して吸光度をプロットすると、これが直線を示すことが分かった。従って、線形回帰を用いて容易に計算されるその勾配は、ε×pに等しい。この積から、既知の光路長で除すことによって消衰係数が決まる。広い濃度範囲を網羅するため、種々の光路長を使用してよく、光路長が長いほど低い濃度を測定することができる。我々は、名目上の光路長が1cm、0.1cm、0.02cm及び0.001cmのセルを用いて、アルコールと同一炭素数を有する不飽和化合物の約2質量ppmのレベルに至るまで(C9アルコールでは、0.02meq/kg又は0.00002meq/gの共役不飽和カルボニル官能の濃度に相当し、0.4mg KOH/kg又は0.0004mg KOH/gのカルボニル数への寄与に相当するであろう)の優れた関係、及び有用な結果を得ることができた。セルの光路長は典型的に「名目上の(nominal)」光路長として知られ、実際には、この数値からいくらから逸脱し得る。この逸脱が、計算される消衰係数に影響を与えることがあるので、結果として得られる消衰係数は好ましくはそれが決定される特定のセルについてのみ使用し、既知の合成ブレンドを用いて各セルを個々に較正することが好ましい。消衰係数が分かっている既知濃度の化合物を含む既知の高純度標準物質を用いた較正によってのような、さらに高度な正確さで光路長を決定することもできる。
【0026】
便宜上、この技法は好ましくは官能性において、例えば1グラム又は1キログラムのサンプルに対してミリ当量で(meq/g又はmeq/kg)、或いは測定された官能性におけるカルボニル官能に関して(meq/g又はmeq/kgで表してもよいが、なおさらに伝統的には1グラム当たりのmg KOHで表される)較正される。該較正は、示度に寄与するカルボニル含有化合物が未知数の炭素原子又は分子量を有する場合に、より正確な示度を与える。従って、典型的に並行して行なわれる全カルボニルについての試験結果と該示度を直接比較することもできる。ミリ当量で表されたカルボニル官能性は、KOHの分子量を用いてミリ当量で表した値(典型的に56.1g/モルの値が使われる)を乗じることによって、mg KOHで表されたカルボニル数に変換され得る。
我々は、この技法は、有意量の炭素-炭素二重結合を含むストリーム中の微量の共役不飽和アルデヒド及び/又はケトンを測定するためにはあまり適していないことを見い出した。これは、C=C結合は180nmの波長周辺で吸収し、この吸収ピークが大きい場合は、それはオレフィン性が高いストリーム内にあり得るので、オレフィン吸収ピークの肩が相対的に広くなり、共役不飽和アルデヒド及び/又は特にケトンのいずれの小さいピーク(それぞれ約230及び210nmの波長で予想される)をも見えなくし得るからである。
【0027】
我々は、ヒドロホルミル化供給原料又は他のオレフィンストリーム中の共役不飽和カルボニル化合物を定量する際のこの困難を以下の間接定量法で克服できることを見い出した:
(i)まず、共役不飽和カルボニル化合物を吸着するのに十分な体積の、極性化合物に適した吸着剤、例えばシリカゲル上をサンプルを通過させ;
(ii)次に吸着剤上に残存しているいずれのオレフィンをも、分析技法の後のことを妨害しないように適宜選択される非極性洗浄液(n-ヘプタン等のアルケンであってよい)で洗い流し;
(iii)吸着した共役不飽和カルボニル化合物を次に、この場合もやはり測定を妨害しないように適宜選択される適切な極性溶出液、例えばエタノールで吸着剤から溶出し;
(iV)次に溶出液中の共役不飽和アルデヒド及びケトンの濃度を前記UV法で決定し;
(v)出発サンプル及び溶出液の既知量を用いて、溶出液中で測定した共役不飽和アルデヒド及びケトンの濃度をオレフィンストリーム中の濃度に容易に逆算することができる。
適切な長さの光路長の吸収セルを選択する共に、この間接法で使用する出発サンプル、吸着剤、極性溶出液を適宜選択して、2位の有効桁まで正確な示度を与え、かつこの間接法にとっても、0.02meq/kgの検出限界を与えることができる。我々は、1cmのセルが所望能力をもたらし得ることを見い出した。
我々は、工程(ii)のための非極性洗浄液をそのままUV法で試験して、それが妨害化合物の可能性がないことを確証することを好む。我々は、工程(iii)の溶媒として非常に純粋な極性溶出液、例えばエタノールプロアナライズ(pro-analyse)を使用するのが好ましいことをも見い出した。我々は、同じ溶出液又は溶媒自体のいずれのUVシグナルもバックグラウンドシグナルから除去されるように、該極性溶出液又は溶媒をUV測定のブランクとして使用することを好む。
我々は、本発明のUV分光光度法ではサンプル中に存在する共役ジエンが約225〜230nmの波長にUV吸収を有するので、共役不飽和カルボニル化合物、特に共役不飽和アルデヒドの測定を妨害し得ることを見い出した。我々は、共役ジエンがいくらかの極性を示し、かつシリカのような強極性吸着剤上にも少なくとも部分的に吸着する傾向があることをも見い出した。しかしながら、我々は、工程(i)で極性吸着剤上に吸着した共役ジエンは、一般的にはオレフィンが吸着剤から洗浄された後にもかかわらず、工程(ii)で非極性洗浄液によって再び洗い流され得ることをも見い出した。共役不飽和アルデヒド及びケトンの測定の妨害を避けるように、吸着剤から如何なる共役ジエンをも除去するために必要な非極性洗浄液の量は、当業者によって容易に決定される。共役不飽和カルボニル化合物に対して選択性の高い吸着剤を適切に選択することで、例えばさらに適切な極性、好ましくはより低い極性を有する分子ふるい又はゼオライトを選択することによって、妨害のリスクをさらに減らすことができる。
共役ジエン又は高濃度のオレフィンは、アルコールサンプル中ではあまり見られない。従って、この間接法をアルコールサンプルに適用し得るが、このような余分の努力は通常省いてよい。
【0028】
我々は、極性化合物に親和性の吸着剤の上に、特に分子ふるい、ゼオライト、活性炭、活性アルミナ、シリカ上に、特にシリカゲル上に吸着させることによって、オレフィン中の共役不飽和カルボニル化合物の含量を減少させ得ることを見い出した。オレフィン供給ストリームを吸着床を押し出すか、又はそれを重力によって流動させて吸着床を通すことによって吸着を達成し得る。供給ストリームは好ましくは液体であり、かつ吸着剤上における微量化合物の吸着には低い温度が好ましい。上記分析法で測定する場合、飛躍的進歩が起これば、吸着床は好ましくは操業中止される。用いた吸着剤は処分するか又は再生し得る。吸着された極性化合物を極性溶媒、例えばエステル、ケトン又はアルコール、特にエタノール、好ましくはメタノールを用いて(しかし、アセトン又はメチルエチルケトン(MEK)を使用してもよい)吸着剤から溶出又は洗浄することによって適切な再生を行ない得る。我々は、本発明のUV測定を妨害しない溶媒を使用することを好む。適切な溶媒は、アルコール製造法からの重質オキソ化留分(heavy oxonation fraction )(HOF)であってよい。吸着剤上に残った微量のこの溶媒は、ヒドロホルミル化工程へのオレフィンと共に通して、アルコール蒸留の最終塔の底におけるような下流の蒸留工程で回収できるので、除去する必要がないという利点をもたらす。メタノールは、その低コスト、及び吸着剤からのその蒸発のしやすさのため溶媒として好ましい。溶出された極性化合物から極性溶媒を分離し、蒸留などの手段で回収することができる。メタノールは、好ましくは回収及びさらなる吸着剤を再生するためのその再利用を含め、抽出された共役不飽和カルボニル化合物からのその分離のしやすさのためにも好ましい。温かい若しくは熱いガス又は蒸気で洗い流すことによって、吸着剤上に残存する極性溶媒を除去することができ、乾燥した吸着剤を吸着サービスで再利用するために整えることができる。
【0029】
我々は、オリゴマー化プロセスに酸素含有成分をあまり供給しなければ、オレフィン中の共役不飽和カルボニル化合物の含量を減少させ得ることをも見い出した。我々は、オリゴマー化供給原料中に存在する酸素含有化合物、例えば水、アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール及び種々のブタノールのみならず、エーテル、例えばジイソプロピルエーテル等が、固体リン酸及び/又は分子ふるい若しくはゼオライト触媒を利用するプロセスのようなオリゴマー化プロセスでオリゴマー化生成物における他の含酸素物(oxyganate)の形成をもたらし得ることを観察した。我々は、形成されたこれらの含酸素物の一部が共役不飽和カルボニル化合物、さらに典型的には共役不飽和ケトンであり得ることを見い出した。我々は、オリゴマー化プロセスからの生成物中の該共役不飽和カルボニル化合物の濃度は、オリゴマー化プロセスに入る酸素含有化合物の量を減らすことによって低減され得ることを見い出した。
アルコール中の共役不飽和カルボニル化合物の含量も、水素化生成物を吸着処理に供することによって減少させ得る。US2006/0129004は、ヒドロホルミル化反応から得られたアルデヒド含有有機相の処理並びにその処理後にコバルトヒドロホルミル化触媒の水溶性コバルト(II)塩への変換及び二酸化ケイ素などの吸着剤によるその分離のための処理を含む方法を開示している。吸着剤がアルデヒド含有有機相から微量のコバルト(それらの金属塩形では、該吸着剤に高い親和性を有する非常に極性の化合物である)を吸着すると主張している。処理されるストリームは、相対的に極性でもあるアルデヒドに非常に富んでおり、かつやはり極性である溶存水を含む。我々は、US2006/0129004に開示されている吸着処理では、共役不飽和カルボニル化合物は、そのように豊富な他の極性の高い化合物が存在するストリームマトリックス内で、好ましくは該吸着剤上に吸着されるためには不十分な極性の差異を有すると考える。この理由のため、我々は、アルコールマトリックスはアルデヒドより低い極性を有し、かついずれのコバルト化合物も典型的な固定床接触水素化工程を通過しないと考えられるので、水素化の生成物を処理することを提案する。我々は、アルコールの非常に精細な蒸留によって、アルコールの共役不飽和カルボニル含量を減少させ得ることをも見い出した。我々は、軽質オキソ化(又は「オキソ」)留分(LOF)がアルコールから分離されるときのように、アルコールから軽質副生物留分を蒸留することによって、水素化からの生成物中に存在する共役不飽和カルボニル化合物の大部分を除去できることを見い出した。理論上の分別段階数及び許容できる分離を得るのに必要な還流比は、指針として本発明のUV法を利用することによって、当業者により容易に決定される。我々は、LOF副生物がリファイナリーモーターガソリンプール用の成分として容易に許容できるように、該LOF留分への含酸素物の総量を最大で2wt%、好ましくは最大で1.5wt%、さらに好ましくは最大で1.0wt%、最も好ましくは最大で0.5wt%に制限することを好む。
【0030】
アルコールから軽質副生物留分を蒸留して除くことによって、水素化からの生成物中に存在する共役不飽和カルボニル化合物の大部分を除去することができる。残存共役不飽和カルボニル化合物の除去は、便宜上、軽質副生物の分離、かつ好ましくは重質副生物の分離後に、水素化の生成物から蒸留されるアルコールストリーム上の吸着によって達成され得る。これは、生成物全体を処理する場合より被処理ストリームの量が少ないこと、及びほとんどの共役不飽和カルボニル化合物が既に軽質副生物留分と共に蒸留、典型的には最初の蒸留塔で除去されているので、吸着プロセスの効率が高いことを含め、いくつかの利点をもたらす。
別の実施形態では、共役不飽和カルボニル化合物のレベルを水素化で減少させ得る。この水素化工程は、好ましくは追加のヒドロ仕上げ工程として、好ましくは上記蒸留によって軽質オキソ化留分及び重質オキソ化留分を分離した後、又は水素化工程の直後に行なわれる。我々は、Calsicat 475RS等のニッケル含有触媒は、これらの化合物を非常に低レベルに至るまで水素化することができ、それらの含量を本発明の許容レベルまで下げることを見い出した。好ましいヒドロ仕上げ条件は、40〜70barg、典型的には約55bargの水素分圧、及び60〜120℃、さらに好ましくは80〜110℃の範囲の温度である。好ましくは、この方法は、3〜4の重量毎時液空間速度(weight hourly liquid space velocity)(WHSV)(例えば触媒1kg当たりの液体供給量kgで表される)、及び1m3の液体供給量当たり2Nm3の水素供給量を使用する。
【0031】
我々は、Pd含有触媒、例えば炭素上Pdが共役不飽和カルボニル化合物中のC=C二重結合を選択的に水素化して、該化合物を共役不飽和二重結合のない対応カルボニル化合物に変換できることをも見い出した。担持されたPd触媒上の該水素化工程は、有利には、穏和な条件、例えば6bargの水素圧及び110〜120℃の温度で実施し得る。この選択的水素化工程(追加のヒドロ仕上げ工程の少なくとも一部として、又は水素化工程の最後、例えばニッケルをベースとした水素化処理の下流で操作され得る)は、分子内の両二重結合を飽和する工程に比べて発熱が少ないという利点を少なくとも有する。この工程は脱水を少なくし、かつ副生物を減少させるので、既に蒸留したアルコールの処理に非常に適している。
共役不飽和カルボニル化合物はアルコール製造プロセス全体を通して種々の副反応から誘導され、それらの性質は、使用する技術によって左右される。例えば、2-エチルヘキサノール、2,4-ジメチルヘプタノール又は2-プロピルヘプタノールの製造のために利用される「低圧」プロセスでは、一般的にロジウム触媒を用いて低級オレフィン(エチレン、プロピレン及び/又はブテン)をヒドロホルミル化して対応するアルデヒドにする。これは、アクロレインとして知られる共役不飽和カルボニル化合物を生じさせる副反応をもたらし得る。これらのアクロレインは、アルデヒドの水素化によって誘導されるアルコール、例えばn-プロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、n-ペンタノール又は2-メチルブタノールの品質に影響を与え得る。このプロセスでは、ヒドロホルミル化プロセスで生成されるアルデヒドが後で少なくとも1回のアルドール縮合を受け、共役不飽和カルボニル化合物を生成する。アルドール縮合の生成物は次に、エチレン性不飽和とカルボニル基の両方を除去するため、水素化を受け得る。しかしながら、該水素化は、全ての不飽和の除去には成功しないかもしれない。従って、低圧技術では、このプロセスのC3以上の炭素数のアルコール(アルドール化工程を実施しない場合は典型的にC4、C5アルコール、プロセスがアルドール化工程を含む場合は典型的にC8、C9又はC10アルコール)中には、ヒドロホルミル化における副反応の結果として及び/又は不完全な水素化のため、共役不飽和カルボニル化合物が存在し得る。
【0032】
典型的にC6〜C15アルコール混合物の製造のために用いられる高圧オキソ技術では、まず低級オレフィンをオリゴマー化して高級オレフィンを得ることができる。その後、オリゴマー化の生成物を高圧ヒドロホルミル化(通常はコバルト又はロジウム触媒を用いる)に供し、ヒドロホルミル化の生成物を水素化し、典型的にはアルコール前駆体の少なくとも大部分をアルコールに変換する。次に水素化生成物を分別蒸留で軽質留分(軽質オキソ化留分又はLOFとしても知られる)に分離され、典型的に炭化水素、所望のアルコール生成物、及び重質留分(重質オキソ化留分又はHOFとしても知られる)で構成される。次に蒸留アルコールを任意に、上述したように、ヒドロ仕上げ処理に供してよい。このヒドロ仕上げ処理の主目的は、全カルボニル含量を減少させることであり得るが、第2の目的は生成物アルコール中の共役不飽和カルボニル化合物の含量を減らすことであってもよい。我々は、ほとんど乃至全く副生物が形成されないように、かつ該軽質又は重質副生物を分離するための余分の分離工程を含める必要がないように、該ヒドロ仕上げ工程を操作できることを見い出した。しかしながら、アルコール貯蔵タンク及び積み荷内での爆発のリスク及び他の安全性の問題を回避できるように、溶存水素をヒドロ仕上げ生成物から除去することが好ましい。従って、好ましくは貯蔵又は船積みする前に、ヒドロ仕上げしたアルコールを窒素などの不活性ガスで放散する。このプロセスでは、元のオレフィン供給原料中に共役不飽和カルボニル化合物が存在する可能性があり;オリゴマー化プロセス中に副反応(例えば酸化又は他の上記反応)によっても共役不飽和カルボニル化合物が形成される可能性があり;オレフィン供給原料中に存在し得るか又はオリゴマー化中に形成され得るジエン等の不純物から共役不飽和カルボニル化合物が形成される可能性があり;ヒドロホルミル化中及び/又はヒドロホルミル化触媒の除去中に共役不飽和カルボニル化合物が形成される可能性があり(アクロレイン形成、アルドール化、クラッキング、酸化又は何らかの残存未オリゴマー化オレフィンの反応などの副反応が起こり得る);或いは反応及び/又は分離工程で実施される高温によって共役不飽和カルボニル化合物が生じることもある。アルコール製造からの重質副生物を、活性アルミナ触媒上300℃以上の温度でのHOFの処理によってのような分解処理(追加の有用な生成物又は前駆体の回収のため、及び場合によりこれらの追加の有用な分子をアルコール製造プロセス、好ましくは水素化工程に再循環させるために行なわれる、いわゆるHOF「クラッキング」)に供したときに共役不飽和カルボニル化合物が形成されることもある。
【0033】
本発明は、主に共役不飽和カルボニル化合物、特に共役不飽和アルデヒドのレベルが減少したアルコール及びオレフィンに関するが、アルコールとオレフィンの両方の全体的なカルボニル含量が10meq/kg(約0.5mg KOH/g)、好ましくは7.0meq/kg、さらに好ましくは5.0meq/kg、最も好ましくは3.57meq/kg(0.2mg KOH/g)を超えないことも重要であり得る。従って、本発明はさらに最大で10meq/kgの全体的なカルボニル含量及び既に指定したレベルに従う共役不飽和カルボニル化合物のレベルを有するアルコールを提供する。
本発明は、他のカルボニル化合物とは異なり、エステル化プロセスで特に強力な色寄与因子(contributor)であることが分かった共役不飽和カルボニル化合物に非常に特異的なので、本発明のアルコールは、下流使用では許容できる他のカルボニル化合物を測定可能レベル含んでよい。これらの他のカルボニル化合物は、例えば少なくとも0.17meq/kg、好ましくは少なくとも0.20meq/kg又は0.35meq/kg、さらに好ましくは少なくとも0.50meq/kg又は0.88meq/kg、なおさらに好ましくは少なくとも1.05meq/kg又は1.20 meq/kg、なおさらに好ましくは少なくとも1.50meq/kgのレベルで存在してよい。それでもこれらのアルコールは、前述した利点を少なくとも提供するが、本明細書で指定したレベル未満のカルボニル含量を達成するために必要とされる精製プロセスの数と選択を必要としない。
【0034】
ヒドロホルミル化は周知のプロセスであり、このプロセスでは、触媒の存在下でオレフィンを一酸化炭素及び水素と反応させて、オレフィン供給原料より1つ炭素原子を多く含むアルデヒド及びアルコールを形成する。このプロセスは長年、商業的に作動されており、使用される2つの原則技術群があった。
第1の技術群は、低圧オキソプロセス群として知られ、10〜100barゲージ、典型的に15〜50barゲージの圧力で作動し、一般的に、低圧で必要な触媒の安定性を与えるため、ロジウムと有機リン配位子の有機金属錯体の触媒としての使用を含む。第2のプロセス群は、高圧又は中圧プロセス群として知られ、一般的に、コバルト又はロジウムをベースとした触媒の使用を含み、かつ典型的に100〜350barゲージ、好ましくは150〜320barゲージの圧力で作動する。適切な高圧ヒドロホルミル化プロセスはWO2005058787、PCT/EP2008/053718及びPCT/EP2008/053783(その内容は参照によって本明細書に組み込まれる)に記載されている。一般的に低圧プロセスは、不分岐及び末端の主に低級オレフィン、例えばエチレン、プロピレン及びn-ブテン等のヒドロホルミル化のために使用されるが、n-ヘキセン-1及びn-オクテン、並びにさらに最近では、EP835234(その内容は参照によって本明細書に組み込まれる)で説明されているようなフィッシャー・トロプシュ法から得られたわずかに分岐しているが、主に末端オレフィンの混合物のヒドロホルミル化にも利用される。他方で、高圧又は中圧プロセスは主に5個以上の炭素原子を含むオレフィンのような線形及び分岐した主に内部オレフィンの混合物のヒドロホルミル化のために利用される。両プロセスは、C6〜C15の範囲、特にC9〜C13の範囲内の「高級アルコール」又はアルデヒド又は酸として知られるものを製造するために広く使用される。
【0035】
ヒドロホルミル化生成物の水素化及び/又はヒドロホルミル化から作られたアルデヒドのアルドール化からの生成物の水素化のための適切な水素化技法は、WO2005058782(その内容は、参照によって本明細書に組み込まれる)に記載されている。
我々は、アルコール中の共役不飽和カルボニル化合物の含量を0.18meq/kg未満に減少させると、Lovibond PFX 990/P Petrochemical Tintometerで測定した場合、ASTM D E 852-94aに準拠する白金-コバルト色スケール(Hazen色又はAPHA色と呼ばれることもある)で25未満の熱硫酸色(Hot Hot Sulphuric Acid Colour)を有するアルコールが得られることを見い出した。この試験に等価なものは、分光光度計機器、E 313を使用するASTM D5368、及びカラーチューブを用いるASTM 1209、及びBRCP 4273である。特に、我々は上記Pt/Co色スケールで7〜20、さらに特に8〜15、なおさらに特に9〜14の範囲の熱硫酸色を有する生成物が得られることをさらに見い出した。これは、強酸触媒を用いるエステル化のため、特に可塑剤エステル及び合成潤滑剤の製造のために使用する予定のC6〜C15アルコールで特に有用である。
従って、本発明はさらに、25未満、特に20未満及び7〜20の範囲のASTM E 852-94aの熱硫酸Pt/Co色を有する分岐C6〜C15アルコール(それによって、(i)該アルコールが名目上の平均炭素数9を有する混合物の場合、該アルコールは20未満のASTM E 852-94aの熱硫酸色を有し、かつ(ii)該アルコールが名目上の平均炭素数10を有する混合物の場合、該アルコールは14未満のASTM E 852-94aの熱硫酸色を有する)を提供する。
好ましくは本発明の全ての分岐アルコールは20未満、さらに好ましくは14未満のASTM E 852-94aの熱硫酸色を有する。
さらなる実施形態では、本発明は、カルボン酸と、25未満、特に7〜20の範囲のASTM E 852-94aの熱硫酸Pt/Co色を有する分岐C6〜C15アルコール(それによって、(i)該アルコールが名目上の平均炭素数9を有する混合物の場合、該アルコールは20未満のASTM E 852-94a熱硫酸色を有し、かつ(ii)該アルコールが名目上の平均炭素数10を有する混合物の場合、該アルコールは14未満のASTM E 852-94aの熱硫酸色を有する)とのエステルを提供する。好ましくはエステルは、25未満、好ましくは20未満、さらに好ましくは14未満のASTM E 852-94aの熱硫酸Pt/Co色を有する分岐アルコールのエステルである。
【0036】
本発明が適用できるアルコールの例として、飽和一価脂肪族アルコール、例えばノルマル-及びイソ-ヘキサノール、ノルマル-及びイソ-ヘプタノール、ノルマル-及びイソ-オクタノール、2-エチルヘキサノール、ノルマル-及びイソ-ノニルアルコール、2,4-ジメチルヘプタノール、ノルマル-及びイソ-デカノール、2-プロピルヘプタノール、ノルマル-及びイソ-ウンデカノール又はドデカノール並びノルマル-及びイソ-トリデカノールが挙げられる。
本発明のアルコールからのエステルの製造で利用する酸又は酸無水物は、好ましくは有機酸である。エステル化反応で使用し得る有機酸又は酸無水物の例として、芳香族モノカルボン酸、例えば安息香酸;多塩基性芳香族カルボン酸又はその無水物、例えばフタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメシン酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸及び無水ピロメリット酸;一塩基性カルボン酸、例えば酢酸、ピバル酸、シクロヘキサン酸、アクリル酸及びメタクリル酸、多塩基性(シクロ)脂肪族カルボン酸、例えばアジピン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、セバシン酸及びアゼライン酸及びクエン酸;多塩基性不飽和脂肪族カルボン酸、例えばマレイン酸及びフマル酸;並びに脂肪族モノカルボン酸、例えばオレイン酸及びステアリン酸が挙げられる。種々のフタル酸又は無水フタル酸が好ましい。エステル化で使用するアルコールは、必要に応じて単独又は組み合わせて使用し得る。好ましくはC6〜C13アルコールを用いて可塑剤エステルを作り、かつ可塑剤エステルの製造では、C9〜C11アルコール、特にC10アルコール及びC11アルコールが特に好ましい。
エステル化反応は、好ましくは有機金属化合物触媒を利用する。該触媒の例としては、エステル化反応温度で触媒活性を示すチタン酸アルキル、例えばチタン酸テトライソプロピル、チタン酸テトラ-n-ブチル、ブチル及びイソプロピル基の混合物を有するチタナート、又はチタン酸テトライソオクチル、或いは有機スズ化合物、例えばシュウ酸スズ、オクタン酸スズ又はマレイン酸スズが挙げられる。適切なエステル化プロセスはWO2005021482、WO2006125670、PCT/EP2008/001837及びPCT/EP2008/001838に記載されている。
【0037】
このプロセスの一実施形態では、アルコールを有機酸又はその無水物に添加し、該混合物を典型的には140〜230℃の範囲の温度であるが、エステル色を改善するため触媒として硫酸又はパラトルエンスルホン酸(pTSA)を使用する場合は、おそらくさらに低温、例えば120℃に下げて反応させることによって、エステル化反応を行なう。チタナート触媒を使用する場合、好ましくは150℃〜230℃、さらに好ましくは160℃、170℃又は180℃以上、なおさらに好ましくは少なくとも185℃でエステル化を行なう。有機金属触媒を使用する場合、好ましくは不活性ガス雰囲気内で、生じる水を除去しながら1〜4時間エステル化を行なう。反応時間は、さらに好ましくは該範囲の下端、例えば1.5〜2時間、最適には1.5時間未満でさえある。エステル化後、結果として生じた反応溶液に、典型的には塩基及び水を、好ましくは水性塩基の形で添加して如何なる未反応酸及び/又はモノエステル及び/又は触媒をも中和し、かつ触媒が有機金属の場合は触媒を加水分解する。粗製エステルを塩基で処理した後でろ過の前に、特に処理を水性塩基で行なった場合は、如何なる遊離水をも除去することも好ましい。好ましい塩基としては、アルカリ金属塩、特にナトリウム塩、例えば炭酸ナトリウム、及び水酸化ナトリウムのようなアルカリ金属の水酸化物、例えば水酸化ナトリウム水溶液が挙げられる。いずれの過剰のアルコールをも典型的にストリッピングによって回収し(有利には、アルコール、水及び他の軽質物質を除去する)、結果として生じたエステル生成物を次に精製して可塑剤を得る。
エステル化後、粗製エステルは典型的に混入物を含むので精製が必要である。これらの混入物は、酸残渣、未反応アルコール、触媒残渣、水及び供給アルコール原料中に既に存在していた混入物の群に属し得るが、これらの大部分はいわゆる単量体成分であり、WO2005021482(その内容は参照によって本明細書に組み込まれる)で論じられているように、可塑剤ガスクロマトグラム又はGC-スペクトルの、未反応アルコール周辺のいわゆる「ライトエンド(light-end)」領域で溶出される。粗製エステルは、副生物、例えばアルコール(ジアルキル)エーテル、安息香酸エステル、二塩基酸由来のモノエステル、アルコールオキソ酸エステル、ヘミアセタール及びビニルエーテル(これらはいわゆる二量体成分であり、それらは可塑剤ガスクロマトグラム又はGC-スペクトルで単量体ライトエンドと「三量体」ジエステルの間で溶出されるため、まとめて「エーテル」又は「中間体」と呼ばれることが多い)をも含有し得る。これらの二量体物質、並びに「三量体」化合物であるアセタールの多くは、該プロセスにおいて後の段階中に加水分解されて、臭い形成体、例えばアルデヒド及び/又は他のライトエンドを形成し得る。エステルの精製処理に適した方法はWO2005021482及びWO2006125670(その内容は参照によって本明細書に組み込まれる)に記載されている。
以下のように材料を調製して試験した添付実施例を参照して本発明を説明する。
【実施例】
【0038】
(実験セクション)
1.方法
a)紫外分光光度計試験
この試験の目的は、光スペクトルの紫外(UV)範囲内の希釈又は無希釈サンプルの光吸収スペクトルを記録することである。Hewlett Packardモデル8452A型のUV/VIS記録分光光度計を使用した。この装置は、190〜340nmの範囲の測定用の重水素ランプと、吸収又は回折されずに、サンプルを直進する光を測定するための直接光サンプル区画とを装備していた。
石英フロースルー(flow through)セル(Hellmaから入手可能)を、前述したランベルト・ベールの法則においてAで表されるピークレベルで測定される吸光度が0.1〜1.5であるように、予想される濃度範囲に合わせて選択した光路長で使用した。0.01mm、0.2mm、1mm及び1cmの名目上の光路長を有するセルの範囲が、この技法によって広範な濃度を網羅するのに有用であることが分かった。測定すべきサンプルを例えばカルボニルフリーアルコール(例えばメタノール又はエタノール)又は炭化水素(例えばヘキサン)等、サンプルの極性によって決まる希釈剤で、例えば10又は100倍に希釈することによって、分析範囲をより高濃度に拡張することができる。
分析を開始する前に、ランプを30分間ウォームアップさせた。中間のスキャン速度及び2.0mmのスリット幅を用いて直接光測定用に分光光度計を設定した。ブランクに対して各サンプル分析を行なった。無希釈極性サンプルでは、ブランクとしてアルコールを使用し;オレフィンサンプルからの共役不飽和カルボニル化合物の吸着後に溶出液として得られたエタノール抽出液のサンプルのためにはブランクとして分析グレードのエタノールを使用し;本発明の炭素数を有するアルコールのサンプルでは、この試験のブランクとして同一アルコールの精製バージョンを使用した。これは、イソノニルアルコールサンプルをエタノールブランクを用いて試験する場合のような、サンプル対ブランクの余分なUV吸収ピークの生成を回避する。
【0039】
分析を行なう前に、極性サンプルのためには分析グレードのメタノール又はイソプロパノールを用いて、また非極性サンプルのためにはヘキサンを用いて空のキュベットを徹底的に洗浄した。次に乾燥圧縮空気を用いてキュベットを送風乾燥した。サンプル分析の前後に毎回キュベットが厳密に洗浄されたことを検証するため、空のキュベットの吸光度を測定した。ブランクを含むときの洗浄済みキュベットについて得た吸収示度が予想されるベースラインシグナル値±5%に相当しない場合は洗浄手順を繰り返すべきである。キュベットが関連領域内に高いUV吸収のあるサンプルを含む場合は、ブランクのさらなる読みを行なって、該セル内に以前のサンプル由来の残存混入物がないことを検証した。
望ましい場合、本明細書で前に説明したように、各セルについて、並びに共役不飽和アルデヒド及びケトンについて別々に較正曲線を容易に決定することができる。セルの正確な光路長は、必要ならば、消衰係数が正確に分かっている既知濃度の化合物を含む既知サンプルを試験することによって決定し得る。
共役不飽和アルデヒドの量は、220〜240nmの範囲、典型的に約230nmのピークの高さによって与えられ、共役不飽和ケトンの量は、200〜220nmの範囲、典型的に約210nmのピークの高さによって与えられる。UVスペクトルにおいて共役不飽和カルボニル化合物のピークが生じる波長は、被験サンプル中に存在する他のカルボニル官能の影響下でわずかに移動し得ることを認識すべきである。従って、ピークは、常に同一波長で正確に現れるわけではない。
【0040】
図1は、共役不飽和アルデヒドである微量の2,4-ジメチル-2-ヘプテナールが添加された(spiked)イソノニルアルコールのサンプルで得られた180〜300nmの反長範囲のUV吸収スペクトルを示す。0.0573mg KOH/gのカルボニル数含量まで2,4-ジメチル-2-ヘプテナールをサンプルに添加した。この試験では、光路長が0.2mmのセルを使用した。共役不飽和アルデヒドは、220〜230nmの範囲に明瞭なピークを示す。この試験では、ブランクとしてエタノールを使用し、エタノールブランクに対するイソノニルアルコールのシグナルは190nm周辺に現れる。
図2は、共役不飽和ケトンである微量のメチルビニルケトンを添加したイソノニルアルコールのサンプルの図1と同一波長のUVスペクトルを示す。0.0514mg KOH/gのカルボニル数含量までメチルビニルケトンをサンプルに添加した。光路長が0.2mmのセルを使用した。共役不飽和ケトンは、205〜210nmの範囲に明瞭なピークを示す。この試験では、ブランクとして純粋な(ケトンを添加しない)イソノニルアルコールを使用し、それは190nm周辺で吸収シグナルを生じ、バックグラウンドシグナルの中に姿を消した。
図3は、実施例4で後述するように試験したエタノール溶出液の280〜250nmの波長のUVスペクトルを示す。このスペクトルは、共役不飽和アルデヒドに起因すると考えられる範囲220〜230nm内の吸収ピークを示す。190nm周辺の吸収ピークは、ヘプタン洗浄後にシリカゲル上に残存していたオレフィンに起因すると考えられる。
【0041】
b)カルボニル含量の決定
全カルボニル含量は、US2006/0105465(その内容は、参照によって本明細書に組み込まれる)で開示されている反応法のような通常のカルボニル数技法によって与えられる。例えば、サンプルを2,4-ジニトロフェニルヒドラジンと反応させた後、水酸化カリウムを添加し、この文書で論じたように、結果として生じた混合物を比色定量法で分析することによって、カルボニル含量を決定することができる。
【0042】
c)ASTM E 852-94aに基づいた熱硫酸色試験
この試験は、米国特許第3,232,848号で色について用いたASTM D 1209-54試験と同様である。ASTM D 1209試験は、今やASTM E 852-94a、及び分光光度計を使用するASTM E 852-94aの変形であるASTM D5368に取って代わられた。
以下のように熱硫酸色試験を実施した:50グラムの被験物質を100mlのエルレンマイヤーフラスコに入れた。このサンプルを氷浴内で30分間約+2℃に冷却した後、1分かけてビュレットから5.00mlの濃硫酸を導入した。次にエルレンマイヤーフラスコを油浴内に入れて100℃で1時間維持してから、即座に氷浴内に置き換えてその温度を室温まで冷ました。
室温に到達後10分以内にLovibond PFX 9901 P Petrochemical Tintometreで10cmのキュベットを使用し、ASTM D 1209に準拠するPlatinum-Cobalt Scaleを利用してサンプルの色を測定し、かつ全可視光吸収測定を行なった。我々は、再現性のある測定値を得るためには、サンプルが室温に到達してから短時間でサンプルを測定することが重要であることを見い出した。我々は、H2SO4が長時間光と空気にさらされると、測定値が逸脱しやすいことから、良い再現性のためには相対的に新鮮な分析グレードの硫酸が必要であることをも見い出した。我々は、光の非存在下、最も好ましくは日光の非存在下でサンプルを貯蔵するのが好ましいことをも見い出した。この方法を同一アルコールのサンプルで12回繰り返し、示度は、Pt/Coスケールに基づいて20、22、23、25、23、23、23、24、22、23、23及び23であり、この方法の優れた再現性を実証した。
下記実施例は、この熱硫酸試験では飽和カルボニル化合物も色形成を引き起こすことを示す。この試験では熱硫酸にサンプルをさらすため、サンプル中に存在するカルボニル化合物の一部がアルドール化し、引き続き脱水して共役不飽和化合物を形成すると考えられる。我々はさらに、これらの共役化合物が、被験アルコール中に既に存在するいずれもの共役不飽和化合物と共に、色を形成する原因となり得ると考える。その結果、色標準物質と比較して色を測定する。従って、この試験法で形成された色は、飽和又は不飽和、共役又は非共役のカルボニル化合物、アルデヒド又はケトンの存在の指標となり得る。
【0043】
d)シリカ吸着
物質をシリカ上の吸着に供する場合、少しの既知量の物質(例えば32.8gのオクテン)を少しの既知量(例えば4.5g)の吸着剤上でパーコレートした。我々は、Silicagel Kieselgel fia fein 0.071〜0.16mm、100〜200メッシュDIN 51791−ASTM D1319-58Tを使用した。パーコレーションのため、フリットディスク(Alltech part # 211408)を8.0mlの8.0ml抽出液-クリーンレザバー(Alltech part # 210208)内に取り付け、吸着剤をフリットディスク上に置いた。出発物質が有意量のオレフィン(及び/又は場合によりジエン)を含有する場合、シリカゲルをn-ヘプタンで洗浄することによって、パーコレーション後にシリカゲル上に残存するオレフィン(又はジエン)を選択的に洗い流した。我々は、150mlのようなアンプル量のヘプタンを使用した場合でさえ、ヘプタン洗浄によってはアルコール又はケトン等の極性化合物は有意な程度には除去されず、これらの極性化合物はシリカゲル上にほとんど定量的に吸着されたままであることを見い出した。我々は、オクテン等のオレフィン性炭化水素化合物は本発明のUV法を妨害しないレベルに至るまでシリカゲルからうまく除去し得ることをも見い出した。分析すべきサンプル中に妨害量の共役ジエンが存在する場合、共役ジエンについても同じことを達成し得る。小量(例えば12グラム)のエタノールによる溶出/パーコレーションによって、シリカ上に吸着した極性生成物をシリカから除去した。我々は、この小量のエタノールは、99%以上のモデル極性化合物、例えばアルコール又はケトンをシリカゲル吸着剤から除去するのに大いに十分であることを見い出した。我々は、溶出後のエタノール中のオレフィンの濃度が最大で1%wtである場合(このレベルは、存在する共役不飽和カルボニル化合物のレベルによって決まるが)、オレフィンはUV吸収測定ではもはや邪魔にならないことを見い出した。
極性成分を含有する溶出エタノールを、酸素含有種の仮同定を可能にするため極性カラムを利用するGCMSに供した。GCMSによって、いくつかのピークをさらなる不飽和を含有するカルボニル成分に割り当てることができた。
【0044】
2.実施例
(実施例1)
C9アルコールのサンプルに様々な量の(i)Acrosから得た実験室グレードの純粋なオクテン-1、(ii)市販のオクテンA及びB(両方ともC9アルコールの製造で使われる)、及び(iii)市販のオクテンBから製造されたC9アルコールの分別蒸留で得た軽質オキソ留分(LOF)を添加した(spiked)。純粋な(無添加)アルコールは、0.0004のヨウ素価(IV)及びPt/Coスケールで23の熱硫酸色を有し、添加量を選択して指定目標レベルに達した。ASTM D5768に準拠して全ての添加サンプルのヨウ素価(IV、サンプル1g当たりのヨウ素のmgで表される)を決定して、添加混合物のオレフィン含量の尺度を与えた。次に、前述した方法に従って添加混合物の熱硫酸色を測定した。結果を以下に示す。
【0045】

【0046】
これらの結果は、エチレン性不飽和自体(ヨウ素価の増加によって示される)は、必ずしもアルコールサンプルの熱硫酸色の悪化を引き起こさないことを示す。市販のオクテンの量を増やして添加すると悪化が観察され、市販のオクテン中には、アルコールサンプルで観察された熱硫酸色の増加に寄与する別の官能性が存在することを示唆している。最後のカラムでは、市販のC9アルコール生成物から蒸留で分離され、アルコールのヒドロホルミル化前の軽質副生物であるLOFの同レベルの添加を行なった。理論に拘束されることを望むものではないが、我々は、アルコールプロセスへのオクテン供給原料中に存在するが、該プロセスでは未変化のままである未反応化合物は、それらの沸点が変化しないため、主にこのLOF内で濃縮すると考える。しかしながら、より少ない微量のこれらの化合物が、水素化生成物の次のより重い蒸留フラクションである(から導かれる)アルコール生成物になることは排除されない。LOFを添加すると、他の添加実験と同レベルのエチレン性不飽和(IV)について熱硫酸色にずっと強力な影響が観察される。これは、熱硫酸試験でアルコール誘導体生成物が色を発生させるときの寄与因子であり得る、オクテン供給原料中の化合物が、ヒドロホルミル化及び水素化工程を生き延びて、アルコール誘導体のLOF副生物内で濃縮レベルにて回収されることを示唆している。
【0047】
(実施例2)
実施例1で用いたLOFをシリカゲル床を通して上記手順でパーコレートして極性化合物を吸着させ、結果として生じた液体を、実施例1で用いたC9アルコールと、指定IV値をもたらすレベルで混合し、ASTM 1209に準拠して再び熱硫酸色試験を行なった。結果を以下に示す。
【0048】

【0049】
この実施例は、実施例1でLOFを使用した場合に118まで色の悪化を引き起こした相当量の物質が、この実施例ではシリカゲル上の吸着によって除去されたことを示しており、これらの色形成化合物が極性化合物であることを支持している。20mlのヘキサンを用いてパーコレーションによってシリカゲルを洗浄し、10mlの分析グレードのエタノールを用いてパーコレーションによって極性化合物を溶出した。
【0050】
(実施例3)
また、実施例1で用いた32.8グラムの市販のオクテンBを実施例2のように、4.5グラムのシリカゲル上でパーコレートした。同様のIV値までの、実施例2と同様の添加実験によって、処理したオクテンには、熱硫酸色(Pt/Coスケール)悪化への寄与因子が残存していないことを決定した。
【0051】
(実施例4)
実施例3で市販のオクテンBからシリカゲル上に吸着した極性物質を5mlのエタノールを用いて3回シリカゲルからのパーコレーションによって溶出し、最初の洗浄後、30mlのヘプタンを用いて5回パーコレーション処理で残存オレフィンをシリカゲルから溶出した。エタノール溶出液混合物と合わせて15ml(12g)のサンプルを紫外分光光度分析に供した。そのスペクトルは、225〜30nmの波長領域内に0.4526のピーク高さを有する明瞭な吸収ピークを示した。このUVスペクトルを図3に示す。約190nmの吸収ピークは、残存オレフィンに起因すると考えられるが、サンプル中に存在するオレフィンの量は、約225nmのピークを隠すには弱すぎた。共役不飽和アルデヒドのモデル化合物として約0.08%の2-メチル-2-ペンテナールが添加されたエタノールは、正確に同じ波長領域内に強くかつ明瞭な吸収ピークを示した。225〜230nmの特有の波長範囲内で吸収する成分が2-メチル-2-ペンテナールであると仮定すると、その吸収ピーク高さは、上記外部標準から比例して、エタノール溶出液内では0.367%wtの濃度に、又はオクテン供給原料内では0.134%wtの濃度に変換するであろう。後者は、オクテン中の共役不飽和アルデヒドの13.7meq/kgの濃度に相当する。
【0052】
(実施例5)
次に、実施例2でLOFからの極性化合物の抽出によって得られたエタノール溶出液を、実施例1で用いたC9アルコール中に種々のレベルで混合した。結果として生じた混合物の熱硫酸色を決定した。結果を以下に示す。
【0053】

【0054】
この実施例の抽出実験から得られたエタノール溶出液を、極性GCカラムを用いるGCMSに供した。GCMSスペクトル中のいくつかの成分を不飽和ケトン又は不飽和アルデヒドとして仮同定すると、両スペクトルは、該成分に起因すると考え得る有意な数のピークを示した。
実験2及び3は、アルコール及び/又はアルコール製造プロセスへのオレフィン供給原料からのLOF副生物中に存在する、アルコールの熱硫酸色への可能性のある寄与因子は、シリカゲル等の極性吸着剤上の吸着によってうまく除去され得ることを示す。実験4及び5はさらに、エタノール等の極性溶媒による処理によってこれらの寄与因子をシリカゲルからうまく回収できることを示す。本実験は、熱硫酸色の示度への可能性のある寄与因子が不飽和カルボニル化合物であり得るもとをも示唆している。
【0055】
(実施例6)
メチルエチルケトン(MVK)とも呼ばれ、かつ共役不飽和を有する2-ブテノン、及び不飽和ケトン化合物であり、該不飽和が共役していない5-ヘキセン-2-オン(本明細書では5Hx2Oと表示する)の種々の量を、実施例1で用いたC9アルコールに添加した。その混合物のカルボニル濃度と熱硫酸色を測定した。結果を以下に示す。
【0056】

【0057】
この実施例は、驚くべきことに、共役不飽和カルボニル化合物が、熱硫酸色への寄与因子として非共役不飽和カルボニル物質よりずっと強い可能性があることを示している。非共役不飽和カルボニル物質の影響は、後述するように、同一カルボニル含量では、アルデヒド等の飽和カルボニル化合物の作用に非常に類似していることが分かった。
【0058】
(実施例7)
ゼロカルボニル化合物を示すレベルまで蒸留したC9アルコールに種々の量のカルボニル含有化合物を添加し、その生成物を硫酸色試験に供した。図4のグラフに示した結果は、共役不飽和アルデヒド2-メチル-2-ペンタナールが色形成に最も有害な影響を及ぼし、共役不飽和ケトンMVK又は2-ブテノンが次に有害であるが、非共役不飽和ケトン5-ヘキセン-2-オン及び飽和C9アルデヒドは、熱硫酸色形成にほとんど影響を及ぼさないことを示している。
【0059】
(実施例8)
この実施例では、UV分光光度法を較正する。米国特許第6,090,986号(その内容は、参照によって本明細書に組み込まれる)に記載の方法でモデル化合物(2,4-ジメチル-2-ヘプテナール、共役不飽和アルデヒド、及び2,4-ジメチルヘプタノール)を調製した。基本的に2,4-ジメチルヘプタノールから成るサンプル中に、種々の低レベル濃度のモデル共役不飽和アルデヒドである2,4-ジメチル-2-ヘプテナールを含む、一連の組成を有するサンプルを調製した。ガス液体クロマトグラフィー(GLC)で2,4-ジメチル-2-ヘプテナールの濃度を確認した。前述したように既知組成物をUV分光光度計試験に委ねることによって、範囲0.15〜2.0で吸光度の読みを与えるようにセルを選択した。210〜230nm周辺の吸収ピークで測定した吸光度(A)の値を、組成物中に存在する2,4-ジメチル-2-ヘプテナールのwt ppmと共にセルの光路長p(cm)で除し、1kgの組成物当たりの共役不飽和カルボニル化合物のミリ当量に変換すると、以下のとおりだった。
【0060】

【0061】
測定は、較正曲線を展開できるように、試験した全範囲にわたって、測定したA/p値と濃度の線形応答を実証するので、UV測定がアルコール組成物中の共役不飽和カルボニル化合物の含量の定量的決定に適し得ることを実証する。データは、この技法が0.02meq/kg以下に至るまでの濃度を決定するために容易に適合し得ることをも実証する。
以上、この発明を完全に説明したが、当業者にとっては当然のことながら、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、請求した範囲内の広範なパラメーター内で本発明を実施することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
最大で1.78meq/kgの共役不飽和カルボニル化合物を含むC4〜C15アルコール組成物であって、
(i)アルコール混合物の名目上の平均炭素数が6の場合、前記混合物は最大で0.99meq/kgの共役不飽和カルボニル化合物を含み、
(ii)アルコール混合物の名目上の平均炭素数が7又は8の場合、前記混合物は最大で0.17meq/kgの共役不飽和カルボニル化合物を含み、
(iii)アルコール混合物の名目上の平均炭素数が9又は13の場合、前記混合物は最大で0.88meq/kgの共役不飽和カルボニル化合物を含み、かつ
(iv)アルコール混合物の名目上の平均炭素数が10の場合、前記混合物は最大で1.05meq/kgの共役不飽和カルボニル化合物を含む、
アルコール組成物。
【請求項2】
1分子当たり0.1〜4.0の範囲の平均分岐度を有する、請求項1に記載のアルコール組成物。
【請求項3】
最大で90モル%の前記アルコール分子が、OH-官能に対して2番目の炭素位置にそれらの第1の分岐を有する、請求項1又は2に記載のアルコール組成物。
【請求項4】
最大で13.5meq/kgの共役不飽和カルボニル化合物を含む、C6〜C15アルコールの製造に有用なC5〜C14オレフィン。
【請求項5】
少なくとも1つの分岐オレフィンを含む、請求項4に記載のオレフィン。
【請求項6】
6〜12の範囲の名目上の平均炭素数を有するオレフィンの混合物を含む、請求項4又は5に記載のオレフィン。
【請求項7】
8の名目上の平均炭素数を有するオレフィンの混合物を含む、請求項6に記載のオレフィン。
【請求項8】
ヒドロホルミル化工程、水素化工程及び前記水素化工程生成物から生成物アルコールを蒸留するための工程を含む、C4〜C15オキソ-アルコールの製造方法であって、
(a)前記ヒドロホルミル化工程でC3〜C14オレフィンをヒドロホルミル化し、かつ前記水素化工程で前記ヒドロホルミル化の生成物を水素化してC4〜C15オキソ-アルコールを形成すること、及び
(b)前記ヒドロホルミル化工程でC2〜C4オレフィンをヒドロホルミル化してC3〜C5アルデヒドを形成し、少なくとも1つのアルドール工程で前記C3〜C5アルデヒドをその二量体、三量体又は四量体(分岐C6〜C15アルデヒドである)にアルドール化し、かつ前記水素化工程で前記分岐C6〜C15アルデヒドをC6〜C15アルコールに水素化すること
から選択される方法であって、
前記C4〜C15アルコール中の共役不飽和カルボニル化合物の含量を、以下の工程
(i)(a)のヒドロホルミル化工程へのオレフィン供給原料がC6〜C14オレフィンの場合、(a)のヒドロホルミル化工程へのC6〜C14オレフィン供給原料を処理して、その共役不飽和カルボニル化合物の含量を13.5meq/kg未満に減少させる工程、
(ii)(a)又は(b)の水素化工程の生成物を処理して、その共役不飽和カルボニル化合物の含量を13.5meq/kg未満に減少させる工程、及び
(iii)前記方法の蒸留工程からの生成物アルコールを処理して、その共役不飽和カルボニル化合物の含量を1.78meq/kg未満に減少させる工程
から選択される少なくとも1つの工程によって減少させる、前記方法。
【請求項9】
前記オレフィン及び/又はアルコール中の前記共役不飽和カルボニル化合物の含量を吸着によって減少させる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
(ii)の水素化生成物又は工程(iii)の蒸留生成物アルコール中の前記前記共役不飽和カルボニル化合物の含量を追加のヒドロ仕上げ工程によって減少させる、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
(a)のヒドロホルミル化への供給原料が、オレフィンのオリゴマー化によって製造されるC6〜C14オレフィンである、請求項8〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のC4〜C15アルコールから誘導されたエステル。
【請求項13】
前記アルコールと、安息香酸、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、シクロヘキサンモノカルボン酸、シクロヘキサン1,2、1,3又は1,4ジカルボン酸、及びそれらのいずれかの無水物から成る群より選択される酸とのエステルである、請求項12に記載のエステル。
【請求項14】
請求項12又は13に記載のエステルの、ポリ塩化ビニル用可塑剤としての使用。
【請求項15】
請求項12又は13に記載のエステルの合成潤滑剤としての使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−514617(P2012−514617A)
【公表日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−544821(P2011−544821)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際出願番号】PCT/EP2009/066289
【国際公開番号】WO2010/079018
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(599134676)エクソンモービル・ケミカル・パテンツ・インク (301)
【Fターム(参考)】