説明

アルコール蒸散用具、帯状のアルコール蒸散用具の製造方法およびアルコール蒸散用具の製造方法

【課題】裁断位置がずれてしまってもアルコール保持材が漏れ出ることがない上に、高い生産性で得られるアルコール蒸散用具を提供する。
【解決手段】本発明のアルコール蒸散用具1は、表面シート20およびアルコール含浸シートを積層した積層体1aが、アルコール含浸シートが内側になるように折り返され、折り返された部分以外の縁部Bがヒートシールされたものであって、表面シート20は、気体状アルコールを透過するシートであり、アルコール含浸シートは、熱溶着性を有する多孔性シート10にアルコールLが含浸されたシートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコールを蒸散するアルコール蒸散用具、帯状のアルコール蒸散用具の製造方法およびアルコール蒸散用具の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品などを保存する際に、菌等の繁殖の抑制を目的として、エチルアルコール等のアルコールを保持させたアルコール保持材を、気体状アルコールを透過する包装体で包装したアルコール蒸散用具を用いることがある。
例えば、特許文献1には、アルコール蒸散用具として、カルボキシビニルポリマーおよびエチルアルコールを含むゲル(すなわち、アルコール保持材)が、気体状エチルアルコールを透過する収納体に収納されたアルコール蒸散用具が記載されている。
特許文献2には、エタノールを粉体に担持させたアルコール保持材が、気体状エチルアルコールを透過する収納体に収納されたアルコール蒸散用具が記載されている。
特許文献1,2に記載のアルコール蒸散用具を製造する方法としては、例えば、一般的な液体充填包装装置を用いて、横ヒートシール部で区切りながら、ノズルによりアルコール保持材を充填して、帯状のアルコール蒸散用具を得る方法が適用される。
通常、この帯状のアルコール蒸散用具は巻き取りまたはつづら折りにされて、食品加工会社等に運搬される。食品加工会社等では、帯状のアルコール蒸散用具の巻き取りを繰り出し、横ヒートシール部にて裁断して個別のアルコール蒸散用具を得て、これを包装袋内に食品と共に充填し、密封することにより使用している。
【0003】
また、特許文献3には、不織布等にアルコールを吸着させた吸着体を、該吸着体より大きく、アルコールを透過しないフィルムで覆い、そのフィルムの端部の一部を接着して、アルコール揮散用開口を設けたアルコール蒸散用具が開示されている。このアルコール蒸散用具を製造するためには、不織布等にアルコールを含浸させて吸着体を作製し、その吸着体をフィルムで挟んだ後、フィルムの端部の一部を接着する方法が採られる。
【特許文献1】特開2004−121053号公報
【特許文献2】特公昭55−2273号公報
【特許文献3】特許第3159691号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
帯状のアルコール蒸散用具の裁断では裁断位置がずれてしまうことがあるが、特許文献1,2に記載のアルコール蒸散用具において裁断位置がずれて横ヒートシール部以外の部分を裁断してしまうと、アルコール保持材が漏れ出てしまい、包装袋内の食品を汚染してしまうことがあった。また、消費者が誤ってアルコール蒸散用具をハサミやナイフで切断した際に、アルコール保持材が漏れ出てしまうことがあった。
また、特許文献1に記載のアルコール蒸散用具の製造では、ゲルをあらかじめ調製しなければならない上に、所定の粘度になるように調製することは容易ではなかった。しかも、粘性の高いゲルをノズルにより充填するのは時間を要するため、生産性が低かった。
【0005】
一方、特許文献3に記載のアルコール蒸散用具では、裁断位置がずれて横ヒートシール部以外の部分を裁断してしまっても、ゲルが漏れ出ることはないし、製造時にゲルを充填させる必要もない。
しかし、特許文献3に記載のアルコール蒸散用具を製造するためには、吸着体を1つずつあらかじめ作製しなければならない上に、その吸着体をフィルムで挟んで接着する作業も一つずつ行わなければならない。そのため、手間が多く、生産性が低かった。
本発明は、前記事情を鑑みてなされたものであり、裁断位置がずれてしまった際にあるいは消費者が誤って切断した際にもアルコール保持材が漏れ出ることがない上に、高い生産性で得られるアルコール蒸散用具を提供することを目的とする。
また、そのようなアルコール蒸散用具を製造できる帯状のアルコール蒸散用具の製造方法およびアルコール蒸散用具の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は、以下の態様を包含する。
[1] 表面シートおよびアルコール含浸シートを積層した積層体が、アルコール含浸シートが内側になるように折り返され、折り返された部分以外の縁部がヒートシールされたアルコール蒸散用具であって、
表面シートは、気体状アルコールを透過するシートであり、
アルコール含浸シートは、熱溶着性を有する多孔性シートにアルコールが含浸されたシートであることを特徴とするアルコール蒸散用具。
[2] 表面シートおよびアルコール含浸シートを積層した一対の積層体が、アルコール含浸シートが内側になるように重ねられ、縁部がヒートシールされたアルコール蒸散用具であって、
少なくとも一方の積層体の表面シートは、気体状アルコールを透過するシートであり、
アルコール含浸シートは、熱溶着性を有する多孔性シートにアルコールが含浸されたシートであることを特徴とするアルコール蒸散用具。
[3] 表面シートが折り返され、その折り返された表面シートの内側にアルコール含浸シートが挟まれ、折り返された部分以外の縁部がヒートシールされたアルコール蒸散用具であって、
表面シートは、気体状アルコールを透過するシートであり、
アルコール含浸シートは、熱溶着性を有する多孔性シートにアルコールが含浸されたシートであることを特徴とするアルコール蒸散用具。
[4] アルコール含浸シートが一対の表面シートで挟まれ、縁部がヒートシールされたアルコール蒸散用具であって、
少なくとも一方の表面シートは、気体状アルコールを透過シートであり、
アルコール含浸シートは、熱溶着性を有する多孔性シートにアルコールが含浸されたシートであることを特徴とするアルコール蒸散用具。
【0007】
[5] 表面シートが、液体状アルコールを透過しないシートである[1]〜[4]のいずれかに記載のアルコール蒸散用具。
[6] 表面シートが、透気孔が多数形成された非熱溶着性の透気層と、非透液透気層とを備え、透気層が表面側に配置されている[5]に記載のアルコール蒸散用具。
[7] 多孔性シートが熱溶着性樹脂を含む[1]〜[6]のいずれかに記載のアルコール蒸散用具。
[8] 多孔性シートがアルコール吸収性樹脂を含む[1]〜[7]のいずれかに記載のアルコール蒸散用具。
[9] 熱溶着性樹脂およびアルコール吸収性樹脂が共に繊維状である[8]に記載のアルコール蒸散用具。
[10] アルコール吸収性樹脂がポリアクリル酸塩である[8]または[9]に記載のアルコール蒸散用具。
【0008】
[11] 気体状アルコールを透過する表面シートおよび熱溶着性を有する多孔性シートを積層した帯状の積層体を、多孔性シートが内側になるように長手方向に沿って折り返す折り返し工程と、
折り返した帯状の積層体の内側にアルコールを供給しながら、帯状の積層体の折り返し部分に対して平行な縁部を連続的に縦ヒートシールすると共に、所定の間隔で幅方向に沿って横ヒートシールして、アルコールを封入する封入工程とを有することを特徴とする帯状のアルコール蒸散用具の製造方法。
[12] [11]に記載の帯状のアルコール蒸散用具の製造方法により得た帯状のアルコール蒸散用具を、幅方向に沿って横ヒートシールした部分にて裁断することを特徴とするアルコール蒸散用具の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明のアルコール蒸散用具は、裁断位置がずれてしまった際にあるいは消費者が誤って切断した際にも、アルコール保持材が漏れ出ることがない上に、高い生産性で得られる。
本発明の帯状のアルコール蒸散用具の製造方法およびアルコール蒸散用具の製造方法によれば、裁断位置がずれてしまった際にあるいは消費者が誤って切断した際にも、アルコール保持材が漏れ出ることがないアルコール蒸散用具を高い生産性で得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
<第1の実施形態>
本発明のアルコール蒸散用具の第1の実施形態について説明する。
図1および図2に、第1の実施形態のアルコール蒸散用具を示す。本実施形態のアルコール蒸散用具1では、アルコール含浸シートと表面シート20とが一体状に積層された積層体1aが、アルコール含浸シートが内側になるように折り返され、折り返された部分A以外の三方の縁部Bがヒートシールされている。
【0011】
(アルコール含浸シート)
アルコール含浸シートは、内部に空隙を持った多孔性シート10にアルコールLが含浸したシートである。
本実施形態における多孔性シート10は、繊維状のアルコール吸収性樹脂と繊維状の熱溶着性樹脂とを含む不織布である。この不織布は、繊維状の熱溶着性樹脂を含んでいるため、熱溶着性を有している。ここで、熱溶着性とは、公知のヒートシール方法における加熱温度(例えば80〜150℃)にて軟化して、同じ材質の部材同士で接着可能であることを意味する。
【0012】
[アルコール吸収性樹脂]
多孔性シート10に含まれるアルコール吸収性樹脂は、カルボキシ基またはスルホ基を有して、アルコールLを吸収する樹脂である。
アルコール吸収性樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸塩、ポリスルホン酸塩などが挙げられる。ポリアクリル酸塩、ポリスルホン酸塩には、その架橋体も含まれる。
アルコール吸収性樹脂の中でも、アルコールLの吸収性に優れることから、アクリル酸塩が好ましい。
【0013】
[熱溶着性樹脂]
熱溶着性樹脂は、ヒートシールの温度より軟化点が低い樹脂である。熱溶着性樹脂の具体例としては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−α・オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体などが挙げられる。これらの中でも、熱溶着性に優れることから、低密度ポリエチレンが好ましい。
【0014】
[不織布]
不織布の目付けは10〜250g/mであることが好ましく、30〜100g/mであることがより好ましい。目付けが10g/m以上であれば、アルコールLを充分に含浸させることができ、250g/m以下であれば、アルコール含浸シートを薄くできる。
【0015】
[アルコール]
多孔性シート10に含浸されるアルコールLとしては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、s−ブタノール、t−ブタノールなどが挙げられる。
これらの中でも、食品衛生上安全性が高いことから、エタノールが好ましい。
また、アルコールは、水と適宜混合することが好ましい。
【0016】
(表面シート)
本実施形態における表面シート20は、透気孔21a,21a・・・が多数形成された透気層21と、非透液透気層22とを備え、透気層21が表面側に配置されているシートである。
このように、透気孔21aが形成された透気層21と非透液透気層22とを備える表面シート20は、気体状アルコールを透過し、かつ、液体状アルコールを透過しないシートである。
【0017】
[透気層]
透気層21は非熱溶着性である。すなわち、ヒートシールする際の加熱温度でも軟化しないものである。具体的には、透気層21は、ヒートシールの温度より軟化点が高い樹脂で構成され、そのような軟化点を持つ樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニリデンなどが挙げられる。
このような透気層21を備えることにより、ヒートシールの際に使用するヒートシールロールに表面シート20が付着することを防止でき、また、破断強度を高くできるようになっている。
【0018】
透気層21における透気孔21aの開孔率は0.1〜2.0%であることが好ましい。ここで、透気孔21aの開孔率とは、[(全透気孔21aの開口部の総面積)/(透気層21の片面の面積)]×100%のことである。開孔率が0.1%以上であれば、気体状アルコールを充分に透過させることができ、2.0%以下であれば、気体状アルコールの過度の透過を防ぐことができる。
このような開孔率にするためには、透気孔21aの孔径が200〜500μmであり、かつ、透気孔21aの形成個数が2〜17個/cmであることが好ましい。
透気孔21aの形成方法としては、例えば、孔が形成されていない非熱溶着性シートを、針を用いて穿孔する方法などが挙げられる。
【0019】
[非透液透気層]
非透液透気層22は、気体状エタノールの透過度が20g/(m・24時間)以上で、液体状エタノールを透過しない層である。ここで、気体状エタノールの透過度は、水蒸気透過量を測定するJIS Z 0208において、水蒸気の代わりにエタノールを用い、温度40℃、相対湿度50%の環境下で測定した値である。
本実施形態における非透液透気層22はオレフィン系樹脂材料からなる。ここで、オレフィン系樹脂材料とは、オレフィン系樹脂を50質量%以上含有する樹脂材料のことである。オレフィン系樹脂材料は気体状アルコールを透過するが、液体状アルコールは透過しない性質を有する。
オレフィン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−α・オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体などが挙げられる。
ポリオレフィン系樹脂材料には、オレフィン系樹脂以外の樹脂、可塑剤、安定剤などが含まれてもよい。
非透液透気層22はオレフィン系樹脂材料からなるため、熱溶着性も有している。
【0020】
また、非透液透気層22は無孔層、または、気体は透過するが液体は透過しない孔が多数形成された多孔質層である。アルコール蒸散性の点からは、非透液透気層22は、気体は透過するが液体は透過しない孔が多数形成された多孔質層であることが好ましい。
【0021】
非透液透気層22の厚さは10〜50μmであることが好ましい。非透液透気層22の厚さが10μm以上であれば、液体状アルコールの透過を確実に防止でき、50μm以下であれば、気体状アルコールの透過性がより高くなる。
【0022】
(製造方法)
本実施形態のアルコール蒸散用具1は、例えば、以下の製造方法により製造される。
本例の製造方法では、図3に示すような液体充填包装機50aを用いる。液体充填包装機50aは、帯状の積層体1aを折り返すための支持具51と、折り返した帯状の積層体1aの内側にアルコールLを供給するノズル52と、折り返し部分に対して平行な縁部を挟んでヒートシールする第1のヒートシールロール53,53と、第1のヒートシールロール53より下流側に設けられ、帯状の積層体1aを幅方向に沿って挟んでヒートシールする第2のヒートシールロール54,54とを具備するものである。
第1のヒートシールロール53は回転可能な円盤状のものであり、2つの第1のヒートシールロール53,53は互いに反対方向に回転するようになっている。
第2のヒートシールロール54は、円筒ロールの周面に軸方向と平行な突起54aが設けられたものである。2つの第2のヒートシールロール54,54は互いに反対方向に、かつ、同じ回転数で回転するようになっており、突起54a,54a同士が対向した際に積層体1aを挟んでヒートシールするようになっている。この第2のヒートシールロール54では、一回転する毎にヒートシールするため、一定間隔でヒートシールするようになっている。なお、一般に、横ヒートシールする第2のヒートシールロールでは、周面に突起が複数設けられているが、本実施形態では、説明を簡略化するために、第2のヒートシールロール54は突起を1つ設けられたものとした。
【0023】
本例では、まず、透気層21の片面に非透液透気層22を、例えばドライラミネート、ウェットラミネート等の接着剤を用いた積層方法、押し出しラミネートなどにより積層して帯状の表面シート20を得る。ここで、接着剤によって気体状アルコールの透過性を損ねないようにする。具体的には、接着剤を、透気性を損なわない範囲の厚さで塗布する。あるいは、接着剤として、気体状アルコールを透過するもの(例えば、エチレン−アクリル酸共重合体等)を用いる。
次いで、帯状の多孔性シート10と帯状の表面シート20とを積層して帯状の積層体1aを形成する。その際、例えばドライラミネート、ウェットラミネート等の接着剤を用いた積層方法、熱ラミネートなどを適用することができる。この積層においても、接着剤によって気体状アルコールの透過性を損ねないようにする。
【0024】
次いで、前記帯状の積層体1aを液体充填包装機50aに移送し、支持具51を用いて、多孔性シート10が内側になるように長手方向に沿って折り返す。
次いで、ノズル52により、折り返した帯状の積層体1aの内側にアルコールLを連続的に供給して帯状の多孔性シート10に含浸させる。
それと共に、帯状の積層体1aの折り返し部分に対して平行な縁部Bを、回転する第1のヒートシールロール53,53で挟んで、連続的に縦ヒートシールする。また、所定の間隔で、帯状の積層体1aを、回転する第2のヒートシールロール54,54で幅方向に沿って挟んで横ヒートシールして、横ヒートシール部Bを形成する。これにより、対向した積層体1a,1a同士のヒートシール部分に囲まれた領域にアルコールLが封入された帯状のアルコール蒸散用具1bが得られる。
その後、帯状のアルコール蒸散用具1bを、各横ヒートシール部Bにて裁断して、個別のアルコール蒸散用具1を得る。
【0025】
また、上述したアルコール蒸散用具1は、上記製造方法以外の他の製造方法でも製造できる。例えば、図4に示すような、帯状の積層体1aを水平に移動させながらヒートシール及び液体の充填を行う液体充填包装機60を用いて製造することもできる。
液体充填包装機60は、積層体1aの移動に同期して水平に移動すると共に積層体1aを幅方向に沿って挟んでヒートシールする一対のヒートシールバー62,62と、折り返した帯状の積層体1aの内側にアルコールをヒートシールされていない縁部から供給するノズル63と、折り返し部分に対して平行な縁部を挟んでヒートシールするヒートシールロール64,64とを具備するものである。
一対のヒートシールバー62,62は複数設置されており、各対は所定の間隔でヒートシールできるようになっている。また、一対のヒートシールバー62は、帯状の積層体1aのヒートシールが完了した後に、帯状の積層体1aから離れて、再び帯状の積層体1aをヒートシールするように戻るようになっている。
ノズル63は、折り返した積層体1aの内側に挿入可能で、積層体1aの移動に同期して移動するようになっている。
ヒートシールロール64は回転可能な円盤状のものであり、2つのヒートシールロール64,64は互いに反対方向に回転するようになっている。
【0026】
液体充填包装機60を用いた製造方法では、まず、上記製造方法と同様にして得た帯状の積層体1aを、多孔性シート10が内側になるように長手方向に沿って折り返す。このとき、折り返し部が底部になるように折り返し、折り返した積層体1aを水平に移動させる。
次いで、帯状の積層体1aの移動に同期して移動するヒートシールバー62,62によって、積層体1aを幅方向に沿ってヒートシールする。次いで、折り返した帯状の積層体1aの内側にノズル63を挿入し、帯状の積層体1aの移動に同期して移動させながらアルコールを供給して帯状の多孔性シート10に含浸させる。
次いで、帯状の積層体1aの折り返し部分に対して平行な縁部を、回転するヒートシールロール64,64で挟んで、連続的にヒートシールする。これにより、対向した積層体1a,1a同士のヒートシール部分に囲まれた領域にアルコールが封入された帯状のアルコール蒸散用具1bが得られる。
その後、帯状のアルコール蒸散用具1bを、ヒートシール62によりヒートシールした部分にて裁断して、個別のアルコール蒸散用具1を得る。
【0027】
<第2の実施形態>
本発明のアルコール蒸散用具の第2の実施形態について説明する。
図5および図6に、第2の実施形態のアルコール蒸散用具を示す。本実施形態のアルコール蒸散用具2では、アルコール含浸シートと表面シート20とが一体状に積層された一対の積層体2aが、アルコール含浸シートが内側になるように重ねられ、四方の縁部Bがヒートシールされている。
なお、本実施形態におけるアルコール含浸シートおよび表面シート20は、第1の実施形態と同様であり、説明は省略する。
【0028】
(製造方法)
本実施形態のアルコール蒸散用具2は、例えば、以下の製造方法により製造される。
本例の製造方法では、図7に示すような液体充填包装機50bを用いる。液体充填包装機50bは、一対の帯状の積層体2a,2aの間にアルコールLを供給するノズル52と、積層体2aの幅方向の両側の縁部を挟んでヒートシールする第1のヒートシールロール55,55と、第1のヒートシールロール55より下流側に設けられ、帯状の積層体2aを幅方向に沿って挟んでヒートシールする第2のヒートシールロール54,54とを具備するものである。第1のヒートシールロール55は回転可能な円盤が両端に備えられたものであり、2つの第1のヒートシールロール55,55は互いに反対方向に回転するようになっている。なお、この液体充填包装機50bにおけるノズル52、第2のヒートシールロール54は第1の実施形態における液体充填包装機50aのノズル52、第2のヒートシールロール54と同様である。
【0029】
本例では、まず、第1の実施形態と同様にして得た一対の帯状の積層体2a,2aを液体充填包装機50bに移送し、多孔性シート10が内側になるように重ねる。
次いで、ノズル52により、一対の帯状の積層体2a,2aの間にアルコールLを連続的に供給して帯状の多孔性シート10に含浸させる。
それと共に、一対の帯状の積層体2a,2aを重ねた状態で、幅方向の両側の縁部B,Bを、回転する第1のヒートシールロール55,55で挟んで、連続的に縦ヒートシールする。また、所定の間隔で、帯状の積層体2aを、回転する第2のヒートシールロール54,54で幅方向に沿って挟んで横ヒートシールして、横ヒートシール部Bを形成する。これにより、対向した積層体2a,2a同士のヒートシール部分に囲まれた領域にアルコールLが封入された帯状のアルコール蒸散用具2bが得られる。
その後、帯状のアルコール蒸散用具2bを、各横ヒートシール部Bにて裁断して、個別のアルコール蒸散用具2を得る。
【0030】
また、上述したアルコール蒸散用具2は、上記製造方法以外の他の製造方法でも製造できる。例えば、図8に示すような、積層体2aを複数の箇所で縦ヒートシールし、液体を充填する液体充填包装機70を用いて製造することもできる。
液体充填包装機70は、一対の積層体2a,2aの間にアルコールを供給するノズル72と、積層体2aの長手方向をヒートシールする第1のヒートシールロール73,73と、第1のヒートシールロール73より下流側に設けられ、帯状の積層体2aを幅方向に沿って挟んでヒートシールする第2のヒートシールロール74,74とを具備するものである。
第1のヒートシールロール73は、回転軸73aと、回転軸73aに所定の間隔で取り付けられた4個の円盤73b,73b・・・とが備えられたものであり、2つの第1のヒートシールロール73,73は互いに反対方向に回転するようになっている。
第2のヒートシールロール74は、円筒ロールの周面に軸方向と平行な突起54aが設けられたものである。
この液体充填包装機70では、第1のヒートシールロール73によって、積層体2aに長手方向に沿って3列の筒ができるように縦ヒートシールし、それぞれの筒にノズル72からアルコールを充填するようになっている。したがって、液体充填包装機70では、積層体2aから3列のアルコール蒸散用具2を形成できるようになっている。
【0031】
液体充填包装機70を用いた製造方法では、まず、第1の実施形態と同様にして得た一対の積層体2a,2aを液体充填包装機70に移送し、多孔性シート10が内側になるように重ねる。
次いで、ノズル72により、一対の積層体2a,2aの間にアルコールを連続的に供給して多孔性シート10に含浸させる。
それと共に、一対の帯状の積層体2a,2aを重ねた状態で、これらを、回転する第1のヒートシールロール73,73により所定の間隔で挟んで連続的に縦ヒートシールして、縦ヒートシール部Bを形成する。また、所定の間隔で、帯状の積層体2aを、回転する第2のヒートシールロール74,74で幅方向に沿って挟んで横ヒートシールして、横ヒートシール部Bを形成する。これにより、対向した積層体2a,2a同士のヒートシール部分に囲まれた領域にアルコールが封入された帯状のアルコール蒸散用具2bが得られる。
その後、帯状のアルコール蒸散用具2bを、各縦ヒートシール部Bおよび各横ヒートシール部Bにて裁断して、個別のアルコール蒸散用具2を得る。
【0032】
<第3の実施形態>
本発明のアルコール蒸散用具の第3の実施形態について説明する。
図1および図9に、第3の実施形態のアルコール蒸散用具を示す。本実施形態のアルコール蒸散用具3では、アルコール含浸シートと表面シート20とが一体状に積層された積層体3aが、アルコール含浸シートが内側になるように折り返され、折り返された部分A以外の三方の縁部Bがヒートシールされている。
なお、本実施形態における表面シート20は、第1の実施形態と同様であり、説明は省略する。
【0033】
本実施形態におけるアルコール含浸シートは、内部に空隙を持った多孔性シート30にアルコールLが含浸したシートである。
本実施形態における多孔性シート30は、繊維状のアルコール吸収性樹脂を含む不織布11と、透液孔12aが多数形成された熱溶着性樹脂製の熱溶着層12とを備えるものである。この多孔性シート30は、熱溶着層12が内側になるように折り返されている。
熱溶着層12を構成する熱溶着性樹脂は、第1の実施形態における多孔性シート10を構成する熱溶着性樹脂と同様である。
【0034】
熱溶着層12の厚さは5〜20μmであることが好ましい。熱溶着層12の厚さが5μm以上であれば、充分な熱溶着性を確保できる。ただし、熱溶着層12の厚さを20μmより厚くしても、厚さに応じた熱溶着性の向上が認められず、無益である。
【0035】
熱溶着層12における透液孔12aの開孔率は0.2〜2.0%であることが好ましい。ここで、透液孔12aの開孔率とは、[(全透液孔12aの開口部の総面積)/(熱溶着層12の片面の面積)]×100%のことである。開孔率が0.2%以上であれば、アルコール蒸散用具製造時に熱溶着層12の内側にアルコールLを充填した際に、液体状アルコールを透過させて、不織布11にアルコールLを充分に含浸させることができる。一方、開孔率が2.0%以下であれば、充分な熱溶着性を確保できる。
このような開孔率にするためには、透液孔12aの孔径が200〜500μmであり、かつ、透液孔12aの形成個数が4〜15個/cmであることが好ましい。
このような熱溶着層12を有することにより、アルコール蒸散用具3を製造する際の熱溶着性が高くなり、加工性が向上する。
【0036】
(製造方法)
本実施形態のアルコール蒸散用具3は、例えば、以下のようにして製造することができる。
本例では、不織布11と熱溶着層12とを別途作製し、これらを、接着剤を用いた積層方法、熱ラミネート等により積層して帯状の多孔性シート30を得る。積層の際には、接着剤によって液体状アルコールの透過性を損ねないようにする。具体的には、透液孔を塞がないように接着剤を塗布する。
この帯状の多孔性シート30と第1の実施形態と同様にして得た前記帯状の表面シート20とを積層して帯状の積層体3aを形成する。
【0037】
次いで、帯状の積層体3aを、図3に示す液体充填包装機50aに移送し、支持具51を用いて、多孔性シート30が内側になるように長手方向に沿って折り返す。
次いで、ノズル52により、折り返した帯状の積層体3aの内側にアルコールLを連続的に供給する。供給されたアルコールLは、熱溶着層12の透液孔12aを通って、不織布11に供給されて含浸される。
それと共に、帯状の積層体3aの折り返し部分に対して平行な縁部Bを、回転する第1のヒートシールロール53,53で挟んで、連続的に縦ヒートシールする。また、所定の間隔で、帯状の積層体3aを、回転する第2のヒートシールロール54,54で幅方向に沿って挟んで横ヒートシールして、横ヒートシール部Bを形成する。これにより、対向した積層体3a,3a同士のヒートシール部分に囲まれた領域にアルコールLが封入された帯状のアルコール蒸散用具3bが得られる。
その後、帯状のアルコール蒸散用具3bを、各横ヒートシール部Bにて裁断して、個別のアルコール蒸散用具3を得る。
【0038】
なお、アルコール蒸散用具3は上記の製造例以外の方法で製造してもよく、例えば、上述した液体充填包装機60を用いて製造してもよい。その場合には、積層体1aを積層体3aに置き換えた以外は第1の実施形態における液体充填包装機60を用いた製造方法と同様にすることで、帯状のアルコール蒸散用具3bを得ることができる。
【0039】
<第4の実施形態>
本発明のアルコール蒸散用具の第4の実施形態について説明する。
図5および図10に、第4の実施形態のアルコール蒸散用具を示す。本実施形態のアルコール蒸散用具4では、アルコール含浸シートと表面シート20とが一体状に積層された一対の積層体4a,4aが、アルコール含浸シートが内側になるように重ねられ、四方の縁部Bがヒートシールされている。
なお、本実施形態における表面シート20は第1の実施形態と同様であり、アルコール含浸シートは第3の実施形態と同様であり、説明は省略する。
【0040】
(製造方法)
本実施形態のアルコール蒸散用具4は、例えば、以下の製造方法により製造される。なお、アルコール蒸散用具4の製造方法は以下の例に限定されるものではない。
本例では、第3の実施形態と同様にして得た一対の帯状の積層体4a,4aを、図7に示す液体充填包装機50bに移送し、多孔性シート30が内側になるように重ねる。
次いで、ノズル52により、一対の帯状の積層体4a,4aの内側にアルコールLを連続的に供給する。供給されたアルコールLは、熱溶着層12の透液孔12aを通って、不織布11に供給されて含浸される。
それと共に、一対の帯状の積層体4a,4aを重ねた状態で、幅方向の両側の縁部B,Bを、回転する第1のヒートシールロール55,55で挟んで、連続的に縦ヒートシールする。また、所定の間隔で、帯状の積層体4aを、回転する第2のヒートシールロール54,54で幅方向に沿って挟んで横ヒートシールして、横ヒートシール部Bを形成する。これにより、対向した積層体4a,4a同士のヒートシール部分に囲まれた領域にアルコールLが封入された帯状のアルコール蒸散用具4bが得られる。
その後、帯状のアルコール蒸散用具4bを、各横ヒートシール部Bにて裁断して、個別のアルコール蒸散用具4を得る。
【0041】
なお、アルコール蒸散用具4は上記の製造例以外の方法で製造してもよく、例えば、上述した液体充填包装機70を用いて製造してもよい。その場合には、積層体2aを積層体4aに置き換えた以外は第2の実施形態における液体充填包装機70を用いた製造方法と同様にすることで、帯状のアルコール蒸散用具4bを得ることができる。
【0042】
<第5の実施形態>
本発明のアルコール蒸散用具の第5の実施形態について説明する。
図1および図11に、第5の実施形態のアルコール蒸散用具を示す。本実施形態のアルコール蒸散用具5では、表面シート20が折り返され、その折り返された表面シート20の間にアルコール含浸シートが挟まれ、折り返された部分A以外の三方の縁部Bがヒートシールされている。
なお、本実施形態におけるアルコール含浸シートおよび表面シート20は、第1の実施形態と同様であり、説明は省略する。
【0043】
(製造方法)
本実施形態のアルコール蒸散用具5は、例えば、以下のようにして製造することができる。なお、アルコール蒸散用具5の製造方法は以下の例に限定されるものではない。
本例の製造方法では、図12に示すような液体充填包装機50cを用いる。液体充填包装機50cは、帯状の表面シート20を折り返すための支持具51と、折り返した帯状の表面シート20の間の帯状の多孔性シート10にアルコールLを供給するノズル52と、帯状の表面シート20の折り返し部分に対して平行な縁部を挟んでヒートシールする第1のヒートシールロール53,53と、第1のヒートシールロール53より下流側に設けられ、帯状の多孔性シート10および帯状の表面シート20を幅方向に沿って挟んでヒートシールする第2のヒートシールロール54,54とを具備するものである。なお、この液体充填包装機50cにおける支持具51、ノズル52、第1のヒートシールロール53および第2のヒートシールロール54は第1の実施形態における液体充填包装機50aの支持具51、ノズル52、第1のヒートシールロール53および第2のヒートシールロール54と同様である。
【0044】
本例では、第1の実施形態と同様にして得た帯状の表面シート20を、図12に示す液体充填包装機50cに移送し、支持具51を用いて、非透液透気層22が内側になるように長手方向に沿って連続的に折り返す。また、折り返した帯状の表面シート20の間に、該表面シート20の略半分の幅の帯状の多孔性シート10を連続的に供給して、帯状の表面シート20の間に帯状の多孔性シート10を挟み込む。
次いで、ノズル52により、折り返した帯状の表面シート20の間にアルコールLを連続的に供給して帯状の多孔性シート10に含浸させる。
それと共に、帯状の表面シート20の折り返し部分に対して平行な縁部Bを、第1のヒートシールロール53,53で挟んで連続的に縦ヒートシールする。また、所定の間隔で、帯状の多孔性シート10と帯状の表面シート20とを、回転する第2のヒートシールロール54,54で幅方向に沿って挟んで横ヒートシールして、横ヒートシール部Bを形成する。ここで、ポリオレフィン系樹脂材料からなる表面シート20の非透液透気層22は熱溶着性も有するため、多孔性シート10とヒートシール可能である。これにより、帯状の多孔性シート10と帯状の表面シート20のヒートシール部分に囲まれた領域にアルコールLが封入された帯状のアルコール蒸散用具5bが得られる。
その後、帯状のアルコール蒸散用具5bを、各横ヒートシール部Bにて裁断して、個別のアルコール蒸散用具5を得る。
【0045】
<第6の実施形態>
本発明のアルコール蒸散用具の第6の実施形態について説明する。
図5および図13に、第6の実施形態のアルコール蒸散用具を示す。本実施形態のアルコール蒸散用具6では、アルコール含浸シートが一対の表面シート20で挟まれ、四方の縁部Bがヒートシールされている。
なお、本実施形態におけるアルコール含浸シートおよび表面シート20は、第1の実施形態と同様であり、説明は省略する。
【0046】
(製造方法)
本実施形態のアルコール蒸散用具6は、例えば、以下のようにして製造することができる。なお、アルコール蒸散用具6の製造方法は以下の例に限定されるものではない。
本例の製造方法では、図14に示すような液体充填包装機50dを用いる。液体充填包装機50dは、帯状の表面シート20の間の帯状の多孔性シート10にアルコールLを供給するノズル52と、幅方向の両側の縁部を挟んでヒートシールする第1のヒートシールロール55,55と、第1のヒートシールロール55より下流側に設けられ、帯状の多孔性シート10および帯状の表面シート20を幅方向に沿って挟んでヒートシールする第2のヒートシールロール54,54とを具備するものである。なお、この液体充填包装機50dにおけるノズル52、第2のヒートシールロール54は第1の実施形態における液体充填包装機50aのノズル52、第2のヒートシールロール54と同様である。また、第1のヒートシールロール55は第2の実施形態における液体充填包装機50bの第1のヒートシールロール55と同様である。
【0047】
本例では、第1の実施形態と同様にして得た一対の帯状の表面シート20,20を、図14に示す液体充填包装機50dに、非透液透気層22が内側になるように連続的に移送し、また、一対の帯状の表面シート20,20の間に、該表面シート20の略半分の幅の帯状の多孔性シート10を連続的に供給して、帯状の表面シート20の間に帯状の多孔性シート10を挟み込む。
次いで、ノズル52により、一対の帯状の表面シート20,20の間の帯状の多孔性シート10にアルコールLを連続的に供給して含浸させる。
それと共に、帯状の多孔性シート10および帯状の表面シート20を重ねた状態で、幅方向の両側の縁部B,Bを、回転する第1のヒートシールロール55,55で挟んで連続的に縦ヒートシールする。また、所定の間隔で、帯状の多孔性シート10と帯状の表面シート20とを、回転する第2のヒートシールロール54,54で幅方向に沿って挟んで横ヒートシールして、横ヒートシール部Bを形成する。ここで、ポリオレフィン系樹脂材料からなる表面シート20の非透液透気層22は熱溶着性も有するため、多孔性シート10とヒートシール可能である。これにより、帯状の多孔性シート10と帯状の表面シート20のヒートシール部分に囲まれた領域にアルコールLが封入された帯状のアルコール蒸散用具6bが得られる。
その後、帯状のアルコール蒸散用具6bを、各横ヒートシール部Bにて裁断して、個別のアルコール蒸散用具6を得る。
【0048】
以上説明した第1〜第6の実施形態のアルコール蒸散用具1〜6では、アルコールLを保持する部材が多孔性シート10,30であるため、帯状のアルコール蒸散用具1b〜6bを裁断する際に裁断位置がずれてしまっても、アルコール保持材が漏れ出ることがない。また、消費者が誤って切断した際にも、アルコール保持材が漏れ出ることがない。
また、上記アルコール蒸散用具1〜6を製造する際には、ゲル等をあらかじめ調製する必要がない。その上、熱溶着性の多孔性シート10,30を用いるアルコール蒸散用具1〜6は、公知の液体充填包装機を用いて、アルコールLを多孔性シート10,30に連続的に供給して吸収させると共に、連続的にヒートシールするため、高速包装が可能である。したがって、アルコール蒸散用具1〜6は、高い生産性で得られる。
【0049】
さらに、上記アルコール蒸散用具1〜6では、多孔性シート10,30がアルコール吸収性樹脂を含んでいるため、アルコールLの吸収量を多くできる。
また、上記アルコール蒸散用具1〜6では、多孔性シート10,30のアルコール吸収性樹脂がアルコールLを強く保持する上に、表面シート20が非透液透気層22を備えているため、運搬または保管時にアルコール蒸散用具1〜6が押圧されても、アルコールLがアルコール蒸散用具1〜6の外側に染み出しにくい。したがって、アルコール含有量が均一になりやすく、また、アルコール蒸散用具の外側がアルコールで濡れてべとつくことを防止できるため、取り扱い性に優れる。
【0050】
なお、本発明のアルコール蒸散用具は、上述した実施形態に限定されない。
例えば、第1,第2,第5,第6の実施形態における多孔性シート10は、繊維状のアルコール吸収性樹脂を含む不織布でなくてもよく、ポリエチレンの不織布、ポリプロピレンの不織布であってもよい。
また、第3,第4の実施形態における、繊維状のアルコール吸収性樹脂を含む不織布の代わりに、繊維状のアルコール吸収性樹脂を含まない不織布(例えば、ポリエチレンの不織布、ポリプロピレンの不織布、ポリエステルの不織布等)、綿を用いてもよい。しかし、アルコール吸収性樹脂を含まない場合には、アルコール吸収量が少なくなる傾向にある。
多孔性シート10がアルコール吸収性樹脂を含む場合には、アルコール吸収性樹脂は繊維状でなくてもよく、例えば、粒子状であってもよい。
また、多孔性シート10の形態としては、不織布に限定されず、例えば、織布、発泡体等の多孔質体などであってもよい。
【0051】
表面シート20における非透液透気層22は、ポリオレフィン系樹脂材料以外の樹脂材料からなってもよく、例えば、フッ素樹脂(例えば、ポリ四フッ化エチレン等)、ポリスルホン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタンからなる有孔シートであってもよい。これら樹脂材料は熱溶着性を有していないが、アルコール含浸シートが熱溶着性を有することでシール可能である。
また、表面シートは、透気孔21aが形成された透気層21と、オレフィン系樹脂材料からなる非透液透気層22とを備えるシートでなくてもよく、例えば、非透液透気層22のみであってもよいし、透気層21のみであってもよい。
また、アルコール蒸散用具の用途によっては、表面シートが、液体状アルコールを透過するシートであっても差し支えない。
また、第2の実施形態のアルコール蒸散用具では、一方の積層体2aの表面シートが非透気性シート、例えば、アルミ蒸着シートなどであってもよい。同様に、第4の実施形態のアルコール蒸散用具では、一方の表面シートが、アルミ蒸着シートであってもよい。
【0052】
本発明のアルコール蒸散用具は、例えば、パン類、菓子類、各種加工食品、乾物、穀物などを包装した包装袋内に収納されて使用される。具体的には、前記食品等を包装する包装袋内にアルコール蒸散用具を収納し、そのアルコール蒸散用具から蒸散したアルコールガスを食品に接触させて、カビなどの微生物の繁殖を抑制したり、食品の老化を防止する。
また、アルコール蒸散用具は、例えば、各種手術用具や包帯などの医療用具、各種衣類、食品包装材、精密機器などの被包装物品を密封包装する際の包装袋内に収納されて使用される。具体的には、前記被包装物品等を包装する包装袋内にアルコール蒸散用具を収納し、そのアルコール蒸散用具から蒸散したアルコールガスを被包装物品に接触させて、被包装物品におけるカビ、細菌などの微生物の繁殖を抑制したり、老化を防止したり、昆虫の幼虫や卵を死滅させたりする。
また、アルコール蒸散用具は、アルコールガスの殺菌、静菌効果を利用して靴箱等の防臭剤として利用することもできる。
さらに、アルコール蒸散用具は、例えば、カキ等の果実の脱渋、果実の甘み増加、野菜等の鮮度維持等にも使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明のアルコール蒸散用具の第1,第3,第5の実施形態を示す斜視図である。
【図2】第1の実施形態のアルコール蒸散用具のI−I’断面図である。
【図3】第1および第3の実施形態のアルコール蒸散用具を製造する際に使用する液体充填包装機の一例を示す模式図である。
【図4】第1および第3の実施形態のアルコール蒸散用具を製造する際に使用する液体充填包装機の他の例を示す模式図である。
【図5】本発明のアルコール蒸散用具の第2,第4,第6の実施形態を示す斜視図である。
【図6】第2の実施形態のII−II’断面図である。
【図7】第2および第4の実施形態のアルコール蒸散用具を製造する際に使用する液体充填包装機の一例を示す模式図である。
【図8】第2および第4の実施形態のアルコール蒸散用具を製造する際に使用する液体充填包装機の他の例を示す模式図である。
【図9】第3の実施形態のアルコール蒸散用具のI−I’断面図である。
【図10】第4の実施形態のアルコール蒸散用具のII−II’断面図である。
【図11】第5の実施形態のアルコール蒸散用具のI−I’断面図である。
【図12】第5の実施形態のアルコール蒸散用具を製造する際に使用する液体充填包装機を示す模式図である。
【図13】第6の実施形態のアルコール蒸散用具のII−II’断面図である。
【図14】第6の実施形態のアルコール蒸散用具を製造する際に使用する液体充填包装機を示す模式図である。
【符号の説明】
【0054】
1,2,3,4,5,6 アルコール蒸散用具
1b,2b,3b,4b,5b,6b 帯状のアルコール蒸散用具
1a,2a,3a,4a 積層体
10,30 多孔性シート
11 不織布
12 熱溶着層
12a 透液孔
20 表面シート
21 透気層
21a 透気孔
22 非透液透気層
50a,50b,50c,50d,60,70 液体充填包装機
51 支持具
52,63,72 ノズル
53,55,73 第1のヒートシールロール
54,74 第2のヒートシールロール
54a 突起
A 折り返された部分
B 縁部
折り返し部分に対して平行な縁部
横ヒートシール部
幅方向の両側の縁部
縦ヒートシール部
L アルコール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面シートおよびアルコール含浸シートを積層した積層体が、アルコール含浸シートが内側になるように折り返され、折り返された部分以外の縁部がヒートシールされたアルコール蒸散用具であって、
表面シートは、気体状アルコールを透過するシートであり、
アルコール含浸シートは、熱溶着性を有する多孔性シートにアルコールが含浸されたシートであることを特徴とするアルコール蒸散用具。
【請求項2】
表面シートおよびアルコール含浸シートを積層した一対の積層体が、アルコール含浸シートが内側になるように重ねられ、縁部がヒートシールされたアルコール蒸散用具であって、
少なくとも一方の積層体の表面シートは、気体状アルコールを透過するシートであり、
アルコール含浸シートは、熱溶着性を有する多孔性シートにアルコールが含浸されたシートであることを特徴とするアルコール蒸散用具。
【請求項3】
表面シートが折り返され、その折り返された表面シートの内側にアルコール含浸シートが挟まれ、折り返された部分以外の縁部がヒートシールされたアルコール蒸散用具であって、
表面シートは、気体状アルコールを透過するシートであり、
アルコール含浸シートは、熱溶着性を有する多孔性シートにアルコールが含浸されたシートであることを特徴とするアルコール蒸散用具。
【請求項4】
アルコール含浸シートが一対の表面シートで挟まれ、縁部がヒートシールされたアルコール蒸散用具であって、
少なくとも一方の表面シートは、気体状アルコールを透過するシートであり、
アルコール含浸シートは、熱溶着性を有する多孔性シートにアルコールが含浸されたシートであることを特徴とするアルコール蒸散用具。
【請求項5】
表面シートが、液体状アルコールを透過しないシートである請求項1〜4のいずれかに記載のアルコール蒸散用具。
【請求項6】
表面シートが、透気孔が多数形成された非熱溶着性の透気層と、非透液透気層とを備え、透気層が表面側に配置されている請求項5に記載のアルコール蒸散用具。
【請求項7】
多孔性シートが熱溶着性樹脂を含む請求項1〜6のいずれかに記載のアルコール蒸散用具。
【請求項8】
多孔性シートがアルコール吸収性樹脂を含む請求項1〜7のいずれかに記載のアルコール蒸散用具。
【請求項9】
熱溶着性樹脂およびアルコール吸収性樹脂が共に繊維状である請求項8に記載のアルコール蒸散用具。
【請求項10】
アルコール吸収性樹脂がポリアクリル酸塩である請求項8または9に記載のアルコール蒸散用具。
【請求項11】
気体状アルコールを透過する表面シートおよび熱溶着性を有する多孔性シートを積層した帯状の積層体を、多孔性シートが内側になるように長手方向に沿って折り返す折り返し工程と、
折り返した帯状の積層体の内側にアルコールを供給しながら、帯状の積層体の折り返し部分に対して平行な縁部を連続的に縦ヒートシールすると共に、所定の間隔で幅方向に沿って横ヒートシールして、アルコールを封入する封入工程とを有することを特徴とする帯状のアルコール蒸散用具の製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の帯状のアルコール蒸散用具の製造方法により得た帯状のアルコール蒸散用具を、幅方向に沿って横ヒートシールした部分にて裁断することを特徴とするアルコール蒸散用具の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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