アルテリウイルスのためのLAMP増幅用核酸プライマーセット、これを用いる前記ウイルスを増幅および/または検出する方法
【課題】アルテリウイルス由来の核酸を特異的に且つ迅速に増幅するためのプライマーセット、これを用いる前記ウイルスを増幅および/または検出する方法の提供。
【解決手段】アルテリウイルス由来の核酸を特異的に増幅するためのLAMP増幅用核酸プライマーセットであって、FIPプライマー、BIPプライマー、F3プライマー、B3プライマーによりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなる群より少なくとも1選択されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット。更に、アルテリウイルスの存在の有無の判定が、前記LAMP増幅により生じた反応産物と基体に固定されている特定のプローブ群を使用する方法。
【解決手段】アルテリウイルス由来の核酸を特異的に増幅するためのLAMP増幅用核酸プライマーセットであって、FIPプライマー、BIPプライマー、F3プライマー、B3プライマーによりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなる群より少なくとも1選択されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット。更に、アルテリウイルスの存在の有無の判定が、前記LAMP増幅により生じた反応産物と基体に固定されている特定のプローブ群を使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルテリウイルス(Arterivirus)由来の核酸を増幅および/または検出する手段に関する。
【背景技術】
【0002】
アルテリウイルスは、ニドウイルス目(Order Nidovirales)アルテリウイルス科(Family Arteriviridae)に属するウイルスグループである。またアルテリウイルス科に分類される属(genus)はアルテリウイルス属(genus Arterivirus)のみである。そのビリオンはエンベロープを有する球形粒子(45−60nm)であり、内部にあるヌクレオカプシドは径35nmの正二十面体である。約13、000ヌクレオチドの大きさの直鎖一本鎖(+)RNAをゲノムとして持つ。なお、5’および3’末端には、それぞれ真核細胞メッセンジャーRNAと類似のキャップ構造とpolyAがある。本ウイルスの増殖は細胞質内で行われ、小胞体やゴルジ装置から出芽する。主に脊椎動物に感染し、さまざまな疾病を引き起こすことが知られている。
【0003】
特に、経済動物等に対する重大な疾病を引き起こすアルテリウイルス属ウイルスとして、家畜伝染病予防法における届出伝染病に指定されている「馬ウイルス性動脈炎」を引き起こすウマ動脈炎ウイルス(Equine arteritis virus)、豚および猪の届出伝染病であるブタ繁殖・呼吸障害症候群を引き起こすブタ繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(Porcine reproductive and respiratory syndrome virus)、サルの病原ウイルスとして知られるサル出血熱ウイルス(Simian hemorrhagic fever virus)が知られており、注目を集めている。一方、マウスなどの動物実験は、今日の生命科学研究には必要不可欠であるが、再現性の高い動物実験を行うためには、病原微生物等を対象とした定期的な微生物モニタリングによる品質管理が必須である。実験動物並びにその組織/細胞等の微生物モニタリングにおいて、最も重要な病原微生物の1つである乳酸デヒドロゲナーゼ上昇ウイルス(Lactate dehydrogenase-elevating virus)も、Arterivirus属ウイルスの代表例として挙げられる。このウイルスの感受性動物はマウスであり、感染動物は持続的なウイルス血症と血清中の乳酸脱水素酵素量の上昇を特徴とする。また、通常は血液、唾液を介して伝播すると考えられるが、マウスで継代された腫瘍を介しての伝播や、マウス組織・細胞由来製品、例えば、様々な細胞のIn vitro分化および/または維持に有用な基底膜成分(Basement Membrane Extract、BME)など、を介した伝播が知られており、わが国の研究施設でも汚染が散見されている事から、本ウイルスを対象とした微生物モニタリングが定期的に実施されている。
【0004】
これまでの検査手法は、主に「血清抗体の検査」が用いられてきたが、感染初期の動物では十分な抗体上昇がなく、早期検出が難しかった。また、実験動物分野では、免疫不全動物を使用するケースや、腫瘍組織・細胞などを使う事が多くなってきたが、感染の有無を血清学的に検査する事が出来ないため、汚染を見逃す危険がある。これら抗体検査が無効な動物や、動物実験に関連した組織・細胞及び配偶子などの汚染検査にはウイルス自体を検出する検査手法が求められている。
【0005】
以上のようなことから、問題となるウイルスに特徴的な遺伝子配列の存在の検知と迅速な同定を行うことの出来る方法が臨床診断現場や微生物モニタリング、疫学研究、その他様々な分野において求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、アルテリウイルス由来の核酸を特異的に且つ迅速に増幅するためのプライマーセット、これを用いる前記ウイルスを増幅および/または検出する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための手段は、
(1)アルテリウイルス由来の核酸を特異的に増幅するためのLAMP増幅用核酸プライマーセットであって、前記LAMP増幅用核酸プライマーセットは、FIPプライマー、BIPプライマー、F3プライマー、B3プライマーを含み、
当該FIPプライマーは配列番号1、配列番号7、配列番号11、配列番号17、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号29、配列番号33、配列番号35および配列番号39並びにその相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなる群より少なくとも1選択されるポリヌクレオチドを含み、
当該BIPプライマーは配列番号2、配列番号5、配列番号8、配列番号12、配列番号15、配列番号18、配列番号27、配列番号30および配列番号36並びにそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなる群より少なくとも1選択されるポリヌクレオチドを含み、
当該F3プライマーは配列番号3、配列番号9、配列番号13、配列番号19、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号31、配列番号34、配列番号37および配列番号40並びにそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなる群より少なくとも1選択されるポリヌクレオチドを含み、および
当該B3プライマーは配列番号4、配列番号6、配列番号10、配列番号14、配列番号16、配列番号20、配列番号28、配列番号32および配列番号38並びにそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなる群より少なくとも1選択されるポリヌクレオチドを含む
プライマーセット;
(2) アルテリウイルスの検出するためのアッセイキットであって、
請求項1〜3の何れか1項に記載のプライマーセットと、
前記プライマーセットを用いて得られた増幅産物からアルテリウイルスを特異的に検出するためのプローブであり、それぞれ配列番号81、配列番号82、配列番号83、配列番号84、配列番号85、配列番号95、配列番号96、配列番号97、配列番号98、配列番号99、配列番号114、配列番号115、配列番号116、配列番号117、配列番号118、配列番号124、配列番号125、配列番号131、配列番号132、配列番号138、配列番号139、配列番号145および配列番号146並びにその相補配列で示されるポリヌクレオチドを含むプローブからなる群より少なくとも1選択されたプローブと、
を含むことを特徴とするアッセイキット;
(3) アルテリウイルスに由来する核酸を特異的に増幅する方法であって、試料に含まれる核酸を前記(1)のプライマーセットを用いて試料をLAMP増幅することを具備する方法;
(4) 試料に含まれる核酸を前記(1)のプライマーセットを用いてLAMP増幅すること、および
前記LAMP増幅により生じた増幅産物の有無に基づいて、前記試料中のアルテリウイルスの存在の有無を判定すること
を具備するアルテリウイルスを検出する方法;
である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、アルテリウイルス由来の核酸を特異的に増幅するためのプライマーセット、前記微生物を検知および/または分類するための方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】従来のLAMP法による増幅方法を説明するための模式図。
【図2】従来のLAMP法を用いて得られる増幅産物を説明するための模式図。
【図3】本発明の測定用核酸の製造における増幅方法を説明するための模式図。
【図4】本発明の測定用核酸を説明するための模式図。
【図5】アルテリウイルス属に分類される微生物遺伝子型判定用核酸チップ。
【図6】アルテリウイルス属に分類される微生物遺伝子型判定用核酸チップ。
【図7】LAMP増幅の電気泳動写真の一例を示す図。
【図8】電流検知型核酸チップによる検知結果の一例を示す図。
【図9】電流検知型核酸チップによる検知結果の一例を示す図。
【図10】電流検知型核酸チップによる検知結果の一例を示す図。
【図11】電流検知型核酸チップによる検知結果の一例を示す図。
【図12】電流検知型核酸チップによる検知結果の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.プライマー
本発明の1態様に従うと、アルテリウイルス由来の核酸を特異的に増幅するためのLAMP増幅用核酸プライマーセットが提供される。
【0011】
ここにおける「LAMP法」は、それ自身公知の何れのLAMP法をも含むが、好ましくはRT−LAMP法である。RT−LAMP法は、等温遺伝子増幅法であるLAMP法の1種で、逆転写反応とLAMP反応を同時に行うことによりRNAを鋳型にLAMP増幅できる方法である。「LAMP増幅」および「RT−LAMP増幅」とは、LAMP法またはRT−LAMP法により行われる増幅または増幅工程を指す。
【0012】
一般的にLAMP法は2種若しくは4領域または4種若しくは6領域のプライマーを用いる点がPCR法とは異なる。LAMP法は、PCRを用いた方法に比べ増幅効率が優れていると共に、サンプル中の不純物の影響も受けにくい。そのため、簡便なサンプルの前処理で微量なアルテリウイルス属に分類される微生物を検知することが可能である。
【0013】
LAMP法におけるプライマー設計および得られる増幅産物について、図1および図2を参照して説明する。
【0014】
図1は、検知されるべき二本鎖DNAと、合計4種類のプライマー配列、即ち、FIPプライマー、F3プライマー、BIPプライマー、B3プライマーを示す。FIPプライマーおよびBIPプライマーは、各々二つの領域を含む。即ち、FIPはF1cとF2を含み、BIPはB2とB1cを含む。F3プライマーはF3領域を含んでいる。B3プライマーはB3領域を含む。
【0015】
ここで、F3、F2、F1、B1c、B2c、B3c領域は、前記二本鎖DNAのうちの一本鎖DNAの5'→3'方向にかけてこの順で設定された領域である。またB3、B2、B1、F1c、F2c、F3c領域は、その相補鎖の一本鎖DNAの5'→3'方向にかけてこの順で設定された領域である。このときB3とB3c、B2とB2c、B1とB1c、F1cとF1、F2cとF2、F3cとF3は相補鎖である。
【0016】
このようなFIPプライマー、F3プライマー、BIPプライマーおよびB3プライマーを用いてLAMP増幅を行なうと、図1の二本鎖DNAの夫々の鎖から、図2に示すようなダンベル型のステム・アンド・ループ構造の増幅産物が得られる。その増幅機構については、例えば特開2002−186781号公報を参照することが可能である。また、この4種のプライマーのほかにループプライマーを併せて用いてもよい。
【0017】
RT−LAMP法が使用される場合、前記LAMP法反応液に逆転写活性を持つ酵素を添加して、逆転写反応を行いながらLAMP増幅法を行えばよい。LAMP法であっても、RT−LAMP法であっても、同じ配列のプライマーを等しく使用することが可能である。
【0018】
検出しようとする配列であるターゲット配列は、一本鎖のループ部分またはステム部分の何れに対しても設定することが可能である。好ましくはループ部分に設定される。ターゲット配列とは、所望の増幅が行われた後に得られる増幅産物を検出する際に使用される配列である。ターゲット配列の有無の検出は、例えば、ターゲット配列に相補的なプローブとのハイブリダイゼーションの有無を検出することにより行えばよい。
【0019】
次に、一本鎖ループ部分にターゲット配列が位置するようにプライマーを設計する場合について説明する。図3を参照されたい。ターゲット配列(図3では、FPc、FP、BPおよびBPcの何れかとして理解されたい)が、領域F1とF2との間(この領域はF2領域を含んでもよい)、領域F2cとF1cとの間(この領域はF2c領域を含んでもよい)、領域B1とB2との間(この領域はB2領域を含んでもよい)、および/または領域B2cとB1cとの間(この領域はB2c領域を含んでもよい)の何れかに対応する位置するように、6つのプライマー領域を設定する。ターゲット配列は、上記それぞれの領域間に形成される一本鎖のループ部分の何れの部位に位置するように設計されてよい。ここで、プライマー領域F1とF2との間のループ部分には、F2領域自体も含まれてよい。こうして設定された6つのプライマー領域に基づいて4種類のプライマーを作製し、これらプライマーを用いてLAMP増幅を行なう。それにより、図4に示すようなLAMP増幅産物の一部が得られる。このLAMP増幅産物中においては、ターゲット配列FPc、FP、BP、BPcが増幅産物のダンベル構造における一本鎖ループの中に位置する。
【0020】
一方、プライマー領域F1cとF1、およびB1cとB1は、もともと相補的な配列を有しているので、相互に自己ハイブリダイゼーションを生じて二本鎖を形成する。
【0021】
このように増幅産物中に含まれるターゲット配列は、図4に示すような一本鎖の状態のものが存在する。その部分を利用すれば、変性操作を行なうことなく、各ターゲット配列に対して相補的なプローブ核酸(即ち、FP、FPc、BP、BPc)との特異的ハイブリダイゼーションが行える。これを利用することにより、ハイブリダイゼーションの有無により増幅の鋳型となる検出対象の有無を判定することが可能である。
【0022】
特異的ハイブリダイゼーションとは、一塩基多型(Single Nucleotide PolymorpHisms:SNPs)または変異が存在する場合、その僅かの違いも検知することが可能であることを意味している。
【0023】
上述したとおり、本発明に従う好ましいプライマーセットの例において、当該LAMP増幅用核酸プライマーセットは、F1、F2、F3、B1c、B2cおよびB3c領域を元に設計される。
【0024】
それぞれの領域の例を表1に示す。
【表1−1】
【0025】
以下で詳しく述べるが、表1−2には、表1−1の領域がプライマーにおいてどのように具体的に利用されているか、その例を示した。各プライマーには、F1、F2、F3、B1c、B2cおよびB3c領域として選択された表1−1に示した配列の相同配列および/または相補配列が含まれている。
【表1−2】
【0026】
表1の領域が、アルテリウイルスのゲノムにおいてどのような位置に対応する配列であるのかを表2−1および表2−2に複数の株についてのアライメントを示した。
【表2−1】
【0027】
【表2−2】
【0028】
表2−1および表2−2は、複数のアルテリウイルス株のゲノムについてのアラインメントである。最下段には塩基について全ての種が共通する塩基を有する位置には「*」を示し、種により変異のある位置には「.」を記した。更に表2−1および表2−2には、アルテリウイルスプライマーとして選択した領域を示す。この領域は、アルテリウイルス属において高度に保存された領域である。また、当該プライマーにより増幅される領域は、アルテリウイルスを特定するために特徴的な領域である。
【0029】
好ましいプライマーセットにおいて、当該F1領域は配列番号86またはその相補配列により示されるポリヌクレオチドからなっても、当該ポリヌクレオチドを含んでいてもよい。また、当該F1領域は、配列番号86またはその相補配列で示されるポリヌクレオチドの何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが置換、欠失および/または挿入を有していてもよい。そのようなポリヌクレオチドの例は、表2−1および表2−2に示されたアラインメント上の同領域の他の配列を参照されたい。このような配列は何れもその何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが、混合ヌクレオチドとして調製されてもよく、また、その何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが、ユニバーサルなヌクレオチドであってもよい。
【0030】
ここで、ユニバーサルなヌクレオチドの例は、これらに限定するものではないが、デオキシイノシン(deoxyinosine;dI)や、Gren Research社の3−ニトロピロール(Nitropyrrole)、5-ニトロインドール(Nitroindole)、デオキシリボルラノシル(deoxyribofuranosyl ;dP)、デオキシ-5'-ジメトキシトリチル-D-リボフラノシル(deoxy-5'-dimethoxytrityl-D-ribofuranosyl ;dK)が含まれる。
【0031】
またここで、プライマーの各配列間またはその末端側には、1〜100ヌクレオチド、好ましくは2〜30ヌクレオチド程度の配列(例えば、スペーサーとして使用される配列)が含まれていてもよい。当該プライマーの長さは30〜200ヌクレオチド程度であってよく、好ましくは35〜100ヌクレオチド、更に好ましくは43〜60ヌクレオチドであってよい。
【0032】
好ましいプライマーセットにおいて、当該F2領域は、配列番号87および配列番号88並びにそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなる群より少なくとも1選択されるポリヌクレオチドからなっても、当該ポリヌクレオチドを含んでもよい。このようなF2領域に好ましい各配列は、その何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが置換、欠失および/または挿入を有していてもよい。表2−1および表2−2に示されたアラインメント上の同領域の他の配列を参照されたい。また、このような配列は何れも何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが混合ヌクレオチドまたはユニバーサルなヌクレオチドであってもよい。
【0033】
好ましいプライマーセットにおいて、当該F3領域は配列番号89またはその相補配列により示されるポリヌクレオチドからなっても、当該ポリヌクレオチドを含んでもよい。このようなF3領域に好ましい各配列は、その何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが置換、欠失および/または挿入を有していてもよい。そのようなポリヌクレオチドの例は、表2−1および表2−2に示されたアラインメント上の同領域の他の配列を参照されたい。また、これらの何れの配列もその何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが混合ヌクレオチドまたはユニバーサルなヌクレオチドであってもよい。
【0034】
好ましいプライマーセットにおいて、当該B1c領域は配列番号90および91並びにその相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなっても、当該ポリヌクレオチドを含んでもよい。このようなB1c領域に好ましい各配列はその何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが置換、欠失および/または挿入を有していてもよい。そのようなポリヌクレオチドの例は、表2−1および表2−2に示されたアラインメント上の同領域の他の配列を参照されたい。また、このような配列の何れもその何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが混合ヌクレオチドまたはユニバーサルなヌクレオチドであってもよい。
【0035】
好ましいプライマーセットにおいて、当該B2c領域は配列番号92およびその相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなっても、当該ポリヌクレオチドを含んでもよい。このようなB2c領域に好ましい各配列はその何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが置換、欠失および/または挿入を有していてもよい。そのようなポリヌクレオチドの例は、表2−1および表2−2に示されたアラインメント上の同領域の他の配列を参照されたい。また、このような配列の何れもその何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが混合ヌクレオチドまたはユニバーサルなヌクレオチドであってもよい。
【0036】
好ましいプライマーセットにおいて、当該B3c領域は配列番号93およびその相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなっても、当該ポリヌクレオチドを含んでもよい。このようなB3c領域に好ましい各配列はその何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが置換、欠失および/または挿入を有していてもよい。そのようなポリヌクレオチドの例は、表2−1および表2−2に示されたアラインメント上の同領域の他の配列を参照されたい。また、このような配列の何れもその何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが混合ヌクレオチドまたはユニバーサルなヌクレオチドであってもよい。
【0037】
上記のような領域を使用したプライマーを用いて、アルテリウイルス属に分類される微生物あるいはその遺伝子を含有する検体試料に対してLAMP法による増幅を行うと、図4で説明したようにステム・アンド・ループ構造が形成され、一本鎖のループ構造内に含まれるアルテリウイルス属に分類される微生物由来のターゲット配列が得られる。
【0038】
これらを基にアルテリウイルスを検出するための好ましいプライマーを表3に示す。
【表3−1】
【0039】
【表3−2】
【0040】
また、プライマーセットは、FIPプライマーとF3プライマーとBIPプライマーとB3プライマーを含んでよく、そのようなプライマーセットの例は、以下の通りである:
当該FIPプライマーが、配列番号1、配列番号7、配列番号11、配列番号17、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号29、配列番号33、配列番号35、配列番号39、配列番号109、配列番号120、配列番号127、配列番号134および配列番号141並びにその相補配列によりそれぞれに示されるポリヌクレオチドからなる群より少なくとも1選択されるポリヌクレオチドまたはアルテリウイルス由来の核酸を特異的に増幅可能な範囲で変異を含む前記ポリヌクレオチドを含む少なくとも1種類のFIPプライマーであり、
当該BIPプライマーが、配列番号2、配列番号5、配列番号8、配列番号12、配列番号15、配列番号18、配列番号27、配列番号30、配列番号36、配列番号110、配列番号121、配列番号128、配列番号135および配列番号142並びにそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなる群より少なくとも1選択されるポリヌクレオチドまたはアルテリウイルス由来の核酸を特異的に増幅可能な範囲で変異を含む前記ポリヌクレオチドを含む少なくとも1種類のBIPプライマーであり、
当該F3プライマーが、配列番号3、配列番号9、配列番号13、配列番号19、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号31、配列番号34、配列番号37、配列番号40、配列番号111、配列番号119、配列番号126、配列番号133および配列番号140並びにそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなる群より少なくとも1選択されるポリヌクレオチドまたはアルテリウイルス由来の核酸を特異的に増幅可能な範囲で変異を含む前記ポリヌクレオチドを含む少なくとも1種類のF3プライマーであり、および
当該B3プライマーが、配列番号4、配列番号6、配列番号10、配列番号14、配列番号16、配列番号20、配列番号28、配列番号32、配列番号38、配列番号112、配列番号122、配列番号129、配列番号136および配列番号143並びにそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなる群より少なくとも1選択されるポリヌクレオチドまたはアルテリウイルス由来の核酸を特異的に増幅可能な範囲で変異を含む前記ポリヌクレオチドを含む少なくとも1種類のB3プライマーである。
【0041】
これらのプライマーのいずれか、または全ての配列について、その何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが置換、欠失および/または挿入を有していてもよい。また、FIP、BIP、F3およびB3のの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含んでもよい。
【0042】
プライマーセットにおいて使用されるFIPプライマー、BIPプライマー、F3プライマーおよびB3プライマーの組み合わせの例は、以下の(1)〜(20)よりなる群から少なくとも1選択された組み合わせであってよい。これらの組み合わせは、(1)〜(20)に示される他のプライマーやそれ自身公知の何れのプライマーと同時に使用されてもよい。1つの組み合わせに含まれる配列の並びは、FIPプライマー、BIPプライマー、F3プライマーおよびB3プライマーの順である:
(1)それぞれ配列番号1、配列番号2、配列番号3および配列番号4で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(2)それぞれ配列番号1、配列番号5、配列番号3および配列番号6で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(3)それぞれ配列番号7、配列番号8、配列番号9および配列番号10で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(4)それぞれ配列番号11、配列番号12、配列番号13および配列番号14で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(5)それぞれ配列番号1、配列番号15、配列番号3および配列番号16で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(6)それぞれ配列番号17、配列番号18、配列番号19および配列番号20で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(7)それぞれ配列番号21、配列番号5、配列番号22および配列番号6で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(8)それぞれ配列番号21、配列番号18、配列番号22および配列番号20で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(9)それぞれ配列番号23、配列番号15、配列番号24および配列番号16で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(10)それぞれ配列番号25、配列番号8、配列番号26および配列番号10で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(11)それぞれ配列番号25、配列番号27、配列番号26および配列番号28で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(12)それぞれ配列番号29、配列番号30、配列番号31および配列番号32で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(13)それぞれ配列番号33、配列番号30、配列番号34および配列番号32で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(14)それぞれ配列番号35、配列番号36、配列番号37および配列番号38で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(15)それぞれ配列番号39、配列番号27、配列番号40および配列番号28で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(16)それぞれ配列番号109、配列番号110、配列番号111および配列番号112で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(17)それぞれ配列番号120、配列番号121、配列番号119および配列番号122で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(18)それぞれ配列番号127、配列番号128、配列番号126および配列番号129で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(19)それぞれ配列番号134、配列番号135、配列番号133および配列番号136で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(20)それぞれ配列番号141、配列番号142、配列番号140および配列番号143で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット。
【0043】
ここで、(1)〜(20)にそれぞれ記載の組み合わせは、ユニバーサルにウイルスを増幅することも、種特異的に増幅することもが可能なプライマーセットであり、目的に応じて選択してよく、それのプライマーセットを更に組み合わせて使用してもよい。
【0044】
より確実に包括的にウイルスを増幅するためには、少なくとも変異部位に関してユニバーサルヌクレオチドまたはミックス塩基となるようにプライマーを設計および使用することが好ましい。そのような組み合わせは、例えば、(16)〜(20)の組み合わせのプライマーセットであってもよく、それらのプライマーセットを更に組み合わせたものであってもよく、それらのプライマーの1以上の何れかの塩基をミックス塩基として含むものであってもよい。また、そのような組み合わせは、例えば、(1)〜(20)の組み合わせのプライマーセットの少なくとも2以上を選択して含む組み合わせであってもよく、それらのプライマーセットを更に組み合わせたものであってもよく、それらのプライマーの1以上の何れかの塩基をミックス塩基として含むものであってもよい。上記のプライマーにおいて、配列中に複数の塩基を示す1塩基表示による記号を含むものもある。それらの記号の示す塩基の意味は通常当該技術分野において一般的に使用される意味である。即ち、「r」はグアニンまたはアデニン、「y」はチミンまたはシトシン、「m」はアデニンまたはシトシン、「k」はグアニンまたはチミン、「s」はグアニンまたはシトシン、「w」はアデニンまたはチミン、「b」はグアニンまたはシトシンまたはチミン、「d」はアデニンまたはグアニンまたはチミン、「h」はアデニンまたはシトシンまたはチミン、「v」はアデニンまたはグアニンまたはシトシン、「n」はアデニンまたはグアニンまたはシトシンまたはチミンである。本明細書においてもこの通りに意味する。(8)の組み合わせのプライマーセットをミックス塩基で使用することは、ユニバーサルにウイルスを増幅するためにより効果的である。また、そこにおいて、少なくとも1つのプライマーの一部にアルテリウイルス由来の核酸を特異的に増幅可能な範囲で変異を含んでもよい。特異的に増幅可能な範囲とは、分類学的にアルテリウイルスと同定されるために必ずしも必要ではない範囲内で変異が存在する範囲である。
【0045】
種特異的または特定の遺伝子型について増幅を行う場合には、目的とする種や遺伝子型に特異的なヌクレオチドを含むように設計すればよい。
【0046】
プライマーセットは、上述のプライマーの組み合わせに加えて、更にループプライマーを使用してもよい。ループプライマーを使用することにより更に効率よく増幅を行なうことが可能である。例えば、LPfは、配列番号70、配列番号72、配列番号73、配列番号74、配列番号94、配列番号113、配列番号123、配列番号130、配列番号137、配列番号144およびその相補配列並びにアルテリウイルス由来の核酸を特異的に増幅可能な範囲で変異を含む前記ポリヌクレオチドからなる群より少なくとも1選択されるポリヌクレオチドを含むプライマーであればよい。例えば、LPbは、配列番号19、配列番号71、配列番号73、配列番号75および配列番号76並びにその相補配列並びにその相補配列により示されるポリヌクレオチドまたはアルテリウイルス由来の核酸を特異的に増幅可能な範囲で変異を含む前記ポリヌクレオチドからなる群より少なくとも1選択されるポリヌクレオチドを含むプライマーであればよい。プライマーセットにおいて使用される場合、LPfとLPbが同時に使用されてもよく、何れか一方が使用されてもよく、複数の種類のLPfおよび/またはLPbが同時に使用されてもよい。
【0047】
上記のようなプライマーセットをアルテリウイルス属に分類される微生物に対して適用すれば、アルテリウイルス属に特徴的な遺伝子型を反映する核酸が増幅される。得られる増幅産物の存在を検知することにより、アルテリウイルスを検知することが可能である。従って、試料におけるアルテリウイルスの検知は、検出対象である試料について、当該プライマーセットを用いて増幅反応を行えばよい。
【0048】
増幅反応の条件は、それ自身公知の何れかの条件を利用すればよい。また、当該増幅反応を行った結果を基に当該試料はアルテリウイルスが含まれている、または含まれていないと判定すればよい。そのような判定により試料中のアルテリウイルスを検知することが可能である。
【0049】
例えば、上記増幅反応は、例えば、1チューブ当たり1プライマーセットで行ってもよく、あるいは1チューブに各種遺伝子型に対応した複数のプライマーセットを用いて行ってもよい。複数の遺伝子型を特定する必要がある場合は、後者の方法で行う方が効率的である。ここではチューブを例に挙げたが、増幅反応はそれ自身公知の何れの容器または反応場で行うことが可能である。
【0050】
また、上記増幅反応は、これに限定するものではないが、例えば、以下に示すような組成のバッファー中で行ってよい:
RT−LAMP法の反応液組成
20mM Tris−HCL(pH8.8)
10mM KCL
8mM MgSO4
10mM (NH4)2SO4
0.1% Tween20
0.8M Betaine
1.4mM dNTPs
16 U Bst DNA polymerase
0.625U AMV Reverse transcriptase。
【0051】
このような組成の反応液で、総量25μLで反応を行う際には、下記の濃度でそれぞれのプライマーを持ち込んでもよい;
プライマー添加量
FIPプライマー 40pmoL
BIPプライマー 40pmoL
F3プライマー 5pmoL
B3プライマー 5pmoL。
【0052】
ここで「試料」は「検体」または「検体試料」とも称してよく、例えば、ヒト、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、フェレット、オナガザル、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、アザラシ、ネズミイルカなどの哺乳類、鳥類などの体液、組織、細胞、並びに水、湖水、川水、海水および土壌などの環境に存在する何れかの物質であってもよい。例えば、血液、血清、白血球、尿、精液、唾液、組織、バイオプシー、口腔内粘膜、培養細胞、喀痰等であってもよい。また、当該試料は、コロナウイルス属に分類される微生物あるいはその遺伝子が含まれている可能性の疑われる物質であってよい。そのような物質をそれ自身公知の手段により、核酸の増幅に適した状態に前処理したものであってもよく、何れの前処理もなされなくてもよい。例えば、そのような前処理の例は、変性、濾過、核酸抽出、不純物除去などを含む。
【0053】
以上のようなプライマーセットを用いて核酸の増幅を行うことにより、簡便、安価、高速に、特異的にアルテリウイルスを増幅することが可能である。これを利用して、試料に含まれる核酸を当該プライマーまたはプライマーセットを用いるLAMP増幅反応に供し、増幅反応の結果生じた増幅産物の有無を判定することにより、当該試料にアルテリウイルスを特異的に検出することが可能である。
【0054】
従来の方法では、特異性を配列検出の際の特異性は、一般的にPCR法で増幅した目的遺伝子産物をDNAチップにより検出している。この場合、PCRにより生成される産物は2本鎖であるため、プローブとハイブリダイゼーション反応させると、相補鎖がプローブに対するコンペティターとなりハイブリ効率が低く検出感度が悪い。そのような方法において、また従来では、ターゲットを1本鎖にするために、相補鎖を分解する、または分離するといった方法も取られている。これらの場合、酵素の使用、磁気ビーズの使用などによる高価な価格となったり、操作が煩雑性になったりする。また、アルテリウイルス属に分類される微生物は、培養が難しく、適切な培養条件を整えたとしても、時間がかかる。このような問題も本発明を用いることにより解決される。
【0055】
これまで、迅速診断法としては特異的な抗体を使って抗原−抗体反応を介して検出する方法や、DNA配列中の特徴的な配列を含む領域をポリメラーゼチェインリアクション(PCR)で増幅し、電気泳動法により検出する方法などが知られていた。しかしながら、前者の方法では近縁株等との区別が難しいことや、感染初期には抗体が検出できないことが知られている。また、後者のPCRを利用する方法は、サーマルサイクラーのような複雑な温度制御装置が必要なことや簡便性に課題があるなどの不利点がある。またPCR法では、万が一誤って相補鎖合成が行われてしまった場合にはその生成物が鋳型となり増幅してしまい、誤った判定をしてしまう可能性がある。実際に、プライマーの末端の1塩基相違のみでは特異的な増幅を制御することは困難である。このような問題も本発明を用いることにより解決される。
【0056】
ここで、本明細書に記載される核酸に関する情報を表4−1〜表4−8に纏めて示す。
【表4−1】
【0057】
【表4−2】
【0058】
【表4−3】
【0059】
【表4−4】
【0060】
【表4−5】
【0061】
【表4−6】
【0062】
【表4−7】
【0063】
【表4−8】
【0064】
2.プローブ
本発明は更に、上述のプライマーセットにより増幅されたアルテリウイルスに由来する核酸を検知および/または分類するためのプローブおよびプローブセットを提供する。
【0065】
プローブは、所望の種または特定の遺伝子型を特異的に検出するためのプローブであってもよく、また、幾つかの種または遺伝子型を特異的に検出するためのプローブであってもよい。このようなプローブは、例えば、上述のプライマーにより増幅されたステム・アンド・ループ構造を有するポリヌクレオチドの一本鎖のループ部分の領域に対して結合するように設定してもよく、ステム部分に対して結合するように設定してもよいが、好ましくはループ部分に設定される。また、当該プローブは好ましくは、約10〜60塩基長、約12〜40塩基長などであればよい。
【0066】
当該増幅産物を検出するためのプローブは、検出する細ウイルス株の保持する遺伝的多型や変異などに応じて変化させてもよい。上述したプローブは、何れも各表に示した配列の任意の位置の塩基が1つまたは数個置換あるいは欠失あるいは塩基を挿入された配列からなってもよい。また、核酸プローブの構造も特に限定されるものではなく、DNA、RNA、PNA、LNA、メチルホスホネート骨格の核酸、その他の人工核酸鎖を用いることが可能である。また、これらのキメラ核酸でもよい。また、プローブに含まれる1つまたは数個置換あるいは欠失あるいは塩基を挿入された配列は、アルテリウイルス由来の核酸を特異的に検出可能な範囲な範囲であればよい。
【0067】
例えば、好ましいプローブは、図3に示すようなステム・アンド・ループ構造のプライマー領域F1とF2との間(この領域はF2領域を含んでもよい)、プライマー領域F2cとF1cとの間(この領域はF2c領域を含んでもよい)、プライマー領域B1とB2との間(この領域はB2領域を含んでもよい)、および/またはプライマー領域B2cとB1cとの間(この領域はB2c領域を含んでもよい)の何れかの位置に対応するように選択されてよい。この選択は検出しようとするウイルス種に特異的な配列が適宜選択されるように行えばよい。或いは複数種を同時且つ特異的に、または広い範囲のウイルス種に亘り包括的、即ち、ユニバーサルに検出を行ってもよい。
【0068】
本発明に従うプローブの例は、それぞれ配列番号81、配列番号82、配列番号83、配列番号84、配列番号85、配列番号95、配列番号96、配列番号97、配列番号98、配列番号99、配列番号114、配列番号115、配列番号116、配列番号117、配列番号118、配列番号124、配列番号125、配列番号131、配列番号132、配列番号138、配列番号139、配列番号145および配列番号146並びにその相補配列で示されるポリヌクレオチドを含むプローブからなる群より少なくとも1選択されればよい。これらのプローブは、アルテリウイルス由来の核酸を特異的に検出可能な範囲で変異を含む前記ポリヌクレオチドによりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプローブ群から選択される少なくとも1であってもよい。
【0069】
これらのプローブは2以上選択されて組み合わされて使用されてもよく、および/またはその塩基にミックス塩基および/またはユニバーサルヌクレオチドが含まれてもよい。ミックス塩基やユニバーサルヌクレオチドを含む場合、ユニバーサルプローブとして使用されてもよい。それらのミックス塩基を含むプローブを、他のミックス塩基を含むまたは含まないプローブと組み合わせて使用してもよく、単独でミックス塩基のみが異なる配列からなるプローブセットとして使用してもよい。ミックス塩基および/またはユニバーサル塩基を使用することは、包括的にアルテリウイルスを検出するために有利である。
【0070】
このようなユニバーサルプローブの非限定的な例を表5に示した。
【表5−1】
【0071】
【表5−2】
【0072】
表5に示すように、アルテリウイルス属をユニバーサルに検出可能なプローブの例は、配列番号114、配列番号115、配列番号116、配列番号117、配列番号118、配列番号145および配列番号146並びにそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプローブ群より少なくとも1選択されてもよい。或いは、これらのプローブから選択された2種以上のプローブが組み合わされて選択されてもよく、それぞれの配列からなる全てのプローブが一緒に使用されてもよい。また、これらの配列を構成する何れか1以上の塩基として、ミックス塩基またはユニバーサルヌクレオチドが使用されてもよい。ここで、「ミックス塩基」とは、ミックス塩基としたい所望の箇所の塩基を「アデニン」、「チミン」、「シトシン」および「グアニン」からなる群より少なくとも2選択して設計したプローブを2以上または全て混合して使用するプローブセットをいう。また、複数種類の塩基に対して対合可能な修飾塩基で置換するように設計されてもよい。
【0073】
また、当該プライマーは好ましくは、約10〜約60塩基長、約12〜約40塩基長などであってよい。
【0074】
例えば、Equine arteritis virus、Lactate dehydrogenase-elevating virus、Porcine reproductive and respiratory syndrome virusおよびSimian hemorrhagic fever virusを、それぞれ種特異的に検出するためのプローブの例を表6−1〜表6−3に示す。
【表6−1】
【0075】
【表6−2】
【0076】
【表6−3】
【0077】
また、何れのプローブも、同一種内での配列変異が明らかになっているなどの場合には、同一種内の配列変異に対応するために異なる配列からなるプローブを複数使用してよい。
【0078】
また、検知したいウイルス種のためのプローブを所望に応じて表6から選択し、それらを組み合わせて、プローブセットとして使用してもよい。
【0079】
上述した何れのプローブも、2種以上で選択され組み合わされて使用されてもよく、それぞれの配列からなる全てのプローブが一緒に使用されてもよい。および/または、これらの配列を構成する何れかの1以上の塩基がミックス塩基に設計されてもよい。また、複数種類の塩基に対して対合可能な修飾塩基で置換するように設計されてもよい。
【0080】
当該プローブは、所望の種を特異的に検出するためのプローブであってもよく、また、幾つかの種を特異的に検出するためのプローブであってもよい。このようなプローブは、例えば、上述のプライマーにより増幅されたステム・アンド・ループ構造を有するポリヌクレオチドの一本鎖のループ部分の領域に対して結合するように設定されればよい。また、当該プライマーは好ましくは、約10〜60塩基長、約12〜40塩基長などであればよい。
【0081】
何れのプローブおよびプローブセットも、上述した増幅産物を所望に応じて検出するために使用されてよい。当該プローブは、固相基体表面に固定化されたものであってもよく、典型的にはDNAチップとして構成されたものが用いられてよく、また他のマイクロアレイを構成するプローブとして用いられてもよい。当該増幅産物を検出するためのプローブは、検知する細ウイルス株の保持する遺伝的多型や変異などに応じて変化させてもよい。
【0082】
上述したプローブは、何れも各表に示した配列の任意の位置の塩基が1つまたは数個置換あるいは欠失あるいは塩基を挿入された配列からなってもよい。
【0083】
また、核酸プローブの構造も特に限定されるものではなく、DNA、RNA、PNA、LNA、メチルホスホネート骨格の核酸、その他の人工核酸鎖を用いることが可能である。また、これらのキメラ核酸でもよい。
【0084】
核酸プローブを固相に固定化する場合は、末端にアミノ基、チオール基、ビオチン、などの官能基を導入してもよく、更に、官能基とヌクレオチドの間にスペーサーを導入してもよい。ここで用いられるスペーサーの種類は特に限定されないが、例えばアルカン骨格、エチレングリコール骨格などを用いてよい。また、一部の塩基がユニバーサルなヌクレオチドに置換されてもよい。本発明使用可能なユニバーサルなヌクレオチドの例は、deoxyinosine(dI)や、Gren Research社の3-Nitropyrrole、5-Nitroindole、deoxyribofuranosyl (dP)、deoxy-5'-dimethoxytrityl-D-ribofuranosyl (dK)などを含む。
【0085】
本発明で使用する検出法は、これらに特に限定されるものではないが、濁度、可視光、蛍光、化学発光、電気化学発光、化学蛍光、蛍光エネルギー転移法、ESRなどの光学的な手法や、電流、電圧、周波数、伝導度、抵抗などの電気的な性質を利用することも可能である。
【0086】
基体に核酸プローブが固相されたDNAチップの例を以下に説明する。図5のDNAチップは、非限定的な1例である微生物遺伝子型判定用核酸チップである。DNAチップ1は、基体2に固定化領域3を具備する。核酸プローブ4は該固定化領域3に固定化される。このようなDNAチップ1は、当該分野で周知の方法によって製造することができる。基体2に配置される固定化領域3の数及びその配置は、当業者が必要に応じて適宜設計変更することが可能である。このようなDNAチップは、蛍光を用いた検出方法のために好適に用いられてよい。1つの固定化領域には、独立した1つの信号として得ることが必要な情報を得るために必要な1種類または1種類以上の核酸プローブまたはプローブセットが固定化される。
【0087】
図6のDNAチップは、非限定的な1例である微生物遺伝子型判定用核酸チップである。図6のDNAチップ11は、基体12に電極13を具備する。核酸プローブ14は電極13に固定化される。電極13は、パット15に接続される。電極13からの電気的情報はパット15を介して取得される。このようなDNAチップ11は、当該分野で周知の方法によって製造することができる。基体12に配置される電極13の数及びその配置は、当業者が必要に応じて適宜設計変更することが可能である。さらに、本例のDNAチップは、必要に応じて、参照電極及び対極を具備してもよい。1つの固定化領域には、独立した1つの信号として得ることが必要な情報を得るために必要な1種類または1種類以上の核酸プローブまたはプローブセットが固定化される。
【0088】
本発明で用いるプローブを固定化するための表面は、特に限定されるものではないが、樹脂ビーズ、磁気ビーズ、金属微粒子、マイクロタイタープート、ガラス基板、シリコン基板、樹脂製基板、電極基板などを用いることができる。
【0089】
本発明で使用する基体の材料は、特に限定されるものではない。例えば、ガラス、石英ガラス、アルミナ、サファイア、フォルステライト、炭化珪素、酸化珪素、窒化珪素、等の無機絶縁材料を使用できる。また、ポリエチレン、エチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、不飽和ポリエステル、含フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、アセタール樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、フェノール樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、スチレン・アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、シリコーン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリスルホン等の有機材料を用いることができる。
【0090】
例えば、電気的な性質を利用する場合、電極を基体に配置することが好ましい。電極は特に限定されるものではないが、例えば、金、金の合金、銀、プラチナ、水銀、ニッケル、パラジウム、シリコン、ゲルマニウム、ガリウム、タングステン等の金属単体及びそれらの合金、あるいはグラファイト、グラシーカーボン等の炭素等、またはこれらの酸化物、化合物であってよい。更に、酸化珪素等の半導体化合物や、CCD、FET、CMOSなど各種半導体デバイスを用いてもよい。
【0091】
抽出方法は特に限定される物ではなく、フェノール−クロロホルム法等の液−液抽出法や担体を用いる固液抽出法を用いることができる。また、市販の核酸抽出方法QIAamp(QIAGEN社製)、(社製)等を利用することも可能である。次に、抽出した核酸成分を鋳型にRT-LAMP増幅を行った後、遺伝子検出用電極とでハイブリダイゼーション反応を行う。反応溶液は、イオン強度0.01〜5の範囲で、pH5〜10の範囲の緩衝液中で行う。この溶液中にはハイブリダイゼーション促進剤である硫酸デキストランや、サケ精子DNA、牛胸腺DNA、EDTA、界面活性剤などを添加することが可能である。ここに抽出・増幅した核酸成分を添加の上、核酸プローブとのハイブリダイゼーション反応に供与する。反応中は、撹拌、あるいは振とうなどの操作で反応速度を高めることもできる。反応温度は10℃〜90℃の範囲で、また反応時間は1分以上1晩程度行う。ハイブリダイゼーション反応後の洗浄には、イオン強度0.01〜5の範囲で、pH5〜10の範囲の緩衝液を用いる。
【0092】
抽出・増幅したサンプル核酸は、あらかじめFITCやCy3、Cy5、ローダミンなどの蛍光色素やビオチン、ハプテン、オキシダーゼやポスファターゼ等の酵素や、フェロセンやキノン類等の電気化学的に活性な物質で標識するか、あるいは前述した物質で標識したセカンドプローブを用いることで検出が可能になる。
【0093】
電気化学的に活性な核酸結合物質を用いた検出を行う場合は、以下のような手順で検出を行う。基体を洗浄後、電極表面に形成した二本鎖部分に選択的に結合する核酸結合物質を作用させ、電気化学的な測定を行ってよい。ここで用いられる核酸結合物質は特に限定される物ではないが、例えば、ヘキスト33258、アクリジンオレンジ、キナクリン、ドウノマイシン、メタロインターカレーター、ビスアクリジン等のビスインターカレーター、トリスインターカレーター、ポリインターカレーター等を用いることが可能である。更に、これらのインターカレーターを電気化学的に活性な金属錯体、例えば、フェロセン、ビオロゲン等で修飾しておくことも可能である。核酸結合物質の濃度は、その種類によって異なるが、一般的には1ng/ml〜1mg/mlの範囲で使用する。この際、イオン強度0.001〜5の範囲で、pH5〜10の範囲の緩衝液を用いる。電極を核酸結合物質と反応させた後、電気化学的な測定を行う。電気化学的な測定は、3電極タイプ、すなわち参照電極、対極、作用極、あるいは2電極タイプ、すなわち対極、作用極で行う。測定では、核酸結合物質が電気化学的に反応する電位以上の電位を印加し、核酸結合物質に由来する反応電流値を測定する。この際、電位は定速で掃引するか、あるいはパルスで印加するか、あるいは、定電位を印加することができる。測定には、ポテンショスタット、デジタルマルチメーター、ファンクションジェネレーター等の装置を用いて電流、電圧を制御する。得られた電流値を基に、検量線から標的遺伝子の濃度を算出する。遺伝子検出用電極を用いた遺伝子検出装置は、遺伝子抽出部、遺伝子反応部、核酸結合物質反応部、電気化学測定部、洗浄部等から構成される。
【0094】
3.アッセイキット
本発明に従うと、アルテリウイルスの検出および/または分類するためのアッセイキットが提供されてもよい。そのようなアッセイキットは、上述のプライマーまたはプライマーセットとプローブまたはプローブセットとを含めばよい。当該アッセイキットは、当該プライマーまたはプライマーセットおよびプローブまたはプローブセットに加えて、LAMP増幅に必要なバッファーを含んでもよく、ハイブリダイゼーションに必要なバッファー、並びにそこにおいて当該増幅および/またはハイブリダイゼーションを行うための容器を具備してもよい。また、アッセイキットに含まれるプローブは基体に固定化されていてもよい。その場合の基体は上述した何れかの基体であればよい。
【0095】
4.アルテリウイルス属の分類方法
本発明に従うと、更に、アルテリウイルスを検知する方法が提供される。当該検知方法は、上記したプライマー、プローブおよび増幅方法を利用することによって、更に、アルテリウイルス属に分類される微生物の検知および属レベルまたは種レベルで遺伝子型分類を行う方法である。
【0096】
そのような方法は、試料に含まれる核酸を上述の何れかのプライマーセットを用いてRT-LAMP増幅する工程と、前記LAMP増幅により生じた増幅産物と上述の何れかのプローブとを反応することと、前記反応の結果から試料に存在するアルテリウイルスを検知および/または分類することを具備すればよい。
【0097】
また、上述の何れかのプライマーセットを用いて、試料についてRT-LAMP増幅反応を行うことと、当該増幅反応により生じた増幅産物と、上述の何れかのプローブとを反応し、それにより生じるハイブリダイズの有無を検出することにより試料におけるアルテリウイルスの存在の有無を判定する、および/または試料におけるアルテリウイルスを分類することを具備する方法であってもよい。
【0098】
また、例えば、そのようなアルテリウイルス属に分類される微生物の感染や存在を検知する方法は、
本発明に従うプライマーから任意に選択される少なくとも1つのプライマーを含む複数のプライマーを使用して、LAMP反応により試料について核酸鎖増幅反応を行う工程と、
前記増幅反応後に増幅産物の有無を検知する工程と、
を具備すればよい。当該試料は、予め核酸を抽出する工程に供されてもよい。
【0099】
ここにおける「RT-LAMP増幅」とは、逆転写を行いながらLAMP反応により増幅対象の核酸を増幅することをいう。当該RT-LAMP増幅は、上述の何れかのプライマーを用いて増幅対象の核酸を増幅可能なそれ自身公知の何れの条件で行ってよい。
【0100】
当該増幅産物と当該プローブとの反応は、上述の何れかのプローブを用いてハイブリダイズが可能なそれ自身公知の何れかの条件で行ってよい。
【0101】
LAMP産物に特徴的な複雑な高次構造が、ハイブリダイゼーション反応時においてプローブが結合した基体と物理的な障害を起こす要因となり、その結果ハイブリダイゼーション効率に悪影響を及ぼすことが見出されている(たとえば、特開2005-95043を参照されたい)。そのような悪影響を受けないようにするために、本発明に従うプローブは、従来のターゲット配列の位置とは異なり、一本鎖のループ部分にアルテリウイルス属に分類される微生物由来のターゲット配列が位置するようにプライマーを設計している。
【0102】
本発明によれば、簡便、安価、高速にアルテリウイルス属に分類される微生物の検知および属レベルまたは種レベルで遺伝子型を分類する方法が提供される。
【0103】
また、上述したとおり、これまで、迅速診断法としてはウイルスRNAから逆転写酵素によりDNAを作成した上、前記DNA配列中の特徴的な配列を含む領域をポリメラーゼチェインリアクション(PCR)で増幅し、電気泳動法により検知する方法(RT-PCR法)などが知られている。しかしながら、PCRを利用する方法は、サーマルサイクラーのような複雑な温度制御装置が必要なことや簡便性に課題があるなどの不利点がある。またPCR法では、万が一誤って相補鎖合成が行われてしまった場合にはその生成物が鋳型となり増幅してしまい、誤った判定をしてしまう可能性がある。実際に、プライマーの末端の1塩基相違のみでは特異的な増幅を制御することは困難である。特異性を配列検知の際の特異性を挙げる方法としては、一般的にPCR法で増幅した目的遺伝子産物をDNAチップにより検知する手法が挙げられるが、PCRにて生成される産物が2本鎖であるため、プローブとハイブリダイゼーション反応させる場合に、相補鎖がプローブに対するコンペティターとなりハイブリ効率が低く検知感度が悪いのが問題である。本発明に従うと、このようなPCR法による問題も解決することが可能である。
【0104】
また、ターゲットを1本鎖にするために、相補鎖を分解する、または分離するといった従来の方法もあるが、これらの方法は、いずれも、酵素の使用、磁気ビーズの使用などによる高価格化、操作における煩雑性が問題である。このような問題も本発明により解決することが可能である。
【0105】
[例]
以下に、本発明による核酸検知方法について例を用いて具体的に説明する。
【0106】
今回検知方法の対象としたアルテリウイルスを構成するウイルス種では、ウイルスゲノム解析の結果non-glycosylated envelope protein、(membrane protein M、non-glycosylated envelope protein、unglycosylated membrane protein M)をコードする遺伝子配列」と「nucleocapsid protein、(nucleocapsid protein N、capsid protein)をコードする遺伝子配列」に跨る遺伝子配列の一部領域が、ウイルス種毎にユニークな配列を保持しながら高度に保存されていることを見出した。そこで、先ず、アルテリウイルスの代表列としてLDVを用い、前記遺伝子領域において検知に最適なプライマーおよび/またはプローブ設計遺伝子配列を検討(例1−例6)。選定されてきたPrimer/Probeを用いて様々な検体を検出した結果、望ましい検出特性(検出信号量および、検出特異性)が得られることを確認した。その後、他のアルテリウイルス(Equine arteritis virus、Porcine reproductive and respiratory syndrome virus、Simian hemorrhagic fever virus)についても、前記で「LDVを代表として選定した最適なPrimer/Probe設計」に対応する遺伝子配列領域にPrimer/Probeを設計。それぞれの核酸検知特性を確認し、望ましい検出特性が得られることを確認した。詳細を以下に記す。
【0107】
例1
<プライマーセットの選択>
LDV(Lactate dehydrogenase-elevating virus、アクセション番号 NC_001639, AB001875, AF092282, AF092283, U15146, L13298, L06811, M55296)配列からアライメントを作成し、変異のない、または変異頻度の少ない領域を選んでプライマーを設計した。LDVの一部をクローニングしたプラスミド(103copies/reaction)をテンプレートにして、以下の組成にて63℃90分Realoop−30(モリテックス社製)を用いてLAMP増幅を行った。プライマーの組み合わせと増幅結果(濁度立上がり時間)を合わせて表1に示す。濁度立上がり時間50分未満が3種得られた。50−90分で立ち上がるものも12種得られた。結果を表7に示す。
【表7】
【0108】
LAMP反応液組成(1×)
FIP 40 pmol
BIP 40 pmol
F3 5 pmol
B3 5 pmol
(Lfc/Lb 20 pmol)
2×Reaction Mixture 12.5 μl
8 U/μl Bst DNA polymerase 1μl
Template 1μl
Distilled Water Up to 25μl。
【0109】
Reaction Mixture(反応時濃度)
Tris-HCl (pH8.8) 20 mM
KCL 10 mM
MgSO4 8 mM
(NH4)SO4 10 mM
Tween-20 0.1 %
Betaine 0.8 M
dNTPs 1.4 mM each
<ループプライマーの選択>
50分以内で濁度が立上がった3種のプライマーセットに対し、定法に従ってループプライマーを設計して合成した。上述の反応組成に20pmolのループプライマーを追加して同様にLAMP増幅を行った。テンプレートは添加前に95℃5分処理したものを使用した。プライマーの組合せと増幅結果を合わせて表8に示す。この実験から各プライマーセットに対する良好なループプライマーを選択することができた。Fループ、Bループいずれかにループプライマーを用いれば、濁度立上がり時間20分程度の速い増幅系となることが示された。
【表8】
【0110】
例2
<変異株用プライマーの設計>
プライマーセット5-1について、プライマー領域にある変異箇所を調べたところ、F2領域およびB1領域に頻度の高い変異があることがわかった。そこで、これら変異株も良好に増幅できるよう、表6のプライマーを新たに追加して増幅を行った。対応するプライマーの混合量は等量とした。その結果、この混合プライマーは変異のない基準株、変異株のいずれも配列でも濁度立上がり時間30分未満で増幅可能であることが示された。
【0111】
例3
<RT-LAMP>
プライマーセット5-1および変異対応追加プライマーを混合したLAMP増幅液(例1記載の組成)に、0.625UのAMV transcriptase を添加し、実際のLDVウイルス(譲渡された基準株)のRT-LAMP(63℃60分)を行った。その結果、抽出検体の段階希釈液において良好な増幅であった。
【表A】
【0112】
例4
<プローブ配列設計>
前記プライマーセットにて増幅されたLAMP産物検出用プローブを選定するため、LAMP産物の1本鎖核酸領域にハイブリダイゼーションが可能な設計にて複数の候補配列を選定した。3’末端チオール修飾を持つ合成核酸として以下のような候補プローブを準備した。
【0113】
プローブ名 配列
候補Probe1 AGGAGCGGTTAACCTTTTGAAATATGTCTCAAAAT
候補Probe2 GCGGTTAACCTTTTGAAATATGTCTCAAAATAAGAAGAA
候補Probe3 TATGTCTCAAAATAAGAAGAAGGGCGGCCAGA
候補Probe4 TGCCCGTTCACAAGGGTACTACCTGGCTTCC
候補Probe5 TGCCCGTTTACAAGGGTACTACCTGGCTTCC。
【0114】
例5
<プローブ選定>
図6に示すような核酸プローブ固定化電極を作製した。基板12に配置された金電極13に対して、プローブ候補となる配列の合成核酸(3’末端がチオール修飾されている)をスポットすることにより配列毎に固定化した。また、同様にネガティブコントロールプローブもスポットした。その後、超純水で洗浄し、風乾し、電流検知型の核酸チップを作製した。作製した核酸チップを2×SSCの塩を添加したLAMP産物に浸漬し、35℃で60分間静置することによってハイブリダイゼーション反応を行った。LAMP産物は、標準株配列を持つプラスミドをテンプレートに増幅したものを用いた。更に、この電極を挿入剤であるヘキスト33258溶液を50μM含むリン酸緩衝液中に15分間浸漬した後、ヘキスト33258分子の酸化電流応答を測定した。電流測定の結果を表9に示す。電極に固定化したプローブは、領域中に存在する変異をあらかじめ考慮したものを複数用意した。30nA以上の増加量を示す最適なプローブ、20−30nAの増加量を示す良好なプローブが得られ、LDV検出用核酸チップに搭載するプローブ配列を選択することができた。
【表9】
【0115】
例6
検出対象である、LDVはRNAウイルスであることから、ゲノム配列には多様な変異(バリエーション)が存在する。そこで、公表されている全てのLDVゲノム配列情報を元に、例1−例5にて選定されてきた最適なプライマーおよびプローブ領域の変異発生状況を確認した。それぞれの変異に対応する鋳型配列を合成遺伝子により作成したと伴に、全パターンについて変異対応プライマーおよびプローブを準備した(表6−1、表6−2)。配列変異を含むウイルス配列検知を試みた。その結果、何れの組み合わせにおいてもプライマーおよびプローブ配列と検体がフルマッチであれば、30nA以上の電流増加量にて検出が可能であることを確認した(表6−3)。なお、近縁ウイルスであるEquine arteritis virus、Porcine reproductive and respiratory syndrome virus、Simian hemorrhagic fever virus等の配列を持つ鋳型核酸を検体として適用した場合では、何れのプライマー/プローブの組み合わせにおいても、優位な電流値増加(20nA以上)は認められなかった。
【0116】
以上の事から、LDVにおいては、例1−例5にて選定されたプライマーおよびプローオブ領域を用いることで、望ましい検出特性(即ち、検出信号量および、検出特異性)が得られること、必要に応じてプライマーおよび/またはプローブの配列を一部改変することにより、ウイルス配列変異に対して検出特性を損なうことなく対応可能であることが確認できた(表6−1〜表6−3を参照されたい)。
【0117】
図7にLDVのLAMP増幅産物を電気泳動した。レーン2〜5は、LDVのLAMP増幅産物である。レーン1および6はマーカー100bpラダーである(図7)。
【0118】
図8および9に電流検地型核酸チップによる検出例を示した。陰性の検体を使用した結果を図8に、LDV陽性検体を使用した結果を図9に示した(図8および9)
例7
他のアルテリウイルス(Equine arteritis virus DQ846750、Porcine reproductive and respiratory syndrome virus AY150312、Simian hemorrhagic fever virus NC_003092)についても、例1−例6で示された「LDVを代表として選定した最適なプライマーおよびプローブ設計」に対応する遺伝子領域を特定した。それぞれのウイルス種に対応したプライマーおよびプローブを構築した(表10)。LDVを含めたアルテリウイルスに対する検出特性を確認した。
【表10】
【0119】
その結果、構築したプローブおよびプライマーにて、アルテリウイルスに分類されるウイルス種を特異的かつ十分な信号量にて検知できることが確認できた(表11)。
【表11】
【0120】
例9
検出対象である、アルテリウイルスはRNAウイルスである事から、ゲノム配列には多様な変異(バリエーション)が存在する。そこで、例6同様、公表されている全てのEquine arteritis virus DQ846750、Porcine reproductive and respiratory syndrome virus のゲノム配列情報を基に、前記実施例にて選定されてきた最適プライマーおよびプローブ領域の変異発生状況を確認。それぞれの変異に対応する鋳型配列を合成遺伝子により作成したと伴に、全パターンについて変異対応プライマーおよびプローブを準備した(表12)。
【表12−1】
【0121】
【表12−2】
【0122】
配列変異を含むウイルス配列検知を試みた。その結果、何れの組み合わせにおいてもプライマーおよびプローブ配列と検体がフルマッチであれば、30nA以上の電流増加量にて検出が可能であることを確認した。代表的な検出結果例を図10〜12に示す。図10は陰性検体を用いた場合の結果であり、図11はEquine arteritis virus陽性検体を当てた場合の結果である(図10および図11)。また、図12は、Porcine reproductive and respiratory syndrome virus陽性検体を当てた場合の結果である(図12)。
【0123】
なお、変異対応を行なったプライマーおよびプローブを使用した場合であっても、表11に示したのと同様、近縁ウイルス間での交差反応による20nA以上の優位な電流値増加は全く認められなかった。この事は、配列の更に異なる他のウイルス属・ウイルス種や、他の微生物との交差反応を生じないことを示唆する。
【0124】
以上の事から、本発明にて選定されたプライマーおよびプローブ領域を用いることで、アルテリウイルスの検知ならびに種判別およびタイピングを望ましい検出特性(検出信号量および、検出特異性)にて行な得ることが示された。また必要に応じてプライマーおよびプローブの配列を一部改変する事で、アルテリウイルスを構成するウイルス種及びウイルス配列変異に対して、検出特性を損なうことなく対応可能である事が確認できた。
【符号の説明】
【0125】
1・・・プローブ、2・・・プローブ、3・・・プローブ、4・・・プローブ、5・・・プローブ、6・・・スライドガラス、10・・・基板、11・・・金電極、12・・・接続部、13・・・プローブ、14・・・プローブ、15・・・プローブ、16・・・プローブ、17・・・プローブ、18・・・核酸プローブ固定化電極
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルテリウイルス(Arterivirus)由来の核酸を増幅および/または検出する手段に関する。
【背景技術】
【0002】
アルテリウイルスは、ニドウイルス目(Order Nidovirales)アルテリウイルス科(Family Arteriviridae)に属するウイルスグループである。またアルテリウイルス科に分類される属(genus)はアルテリウイルス属(genus Arterivirus)のみである。そのビリオンはエンベロープを有する球形粒子(45−60nm)であり、内部にあるヌクレオカプシドは径35nmの正二十面体である。約13、000ヌクレオチドの大きさの直鎖一本鎖(+)RNAをゲノムとして持つ。なお、5’および3’末端には、それぞれ真核細胞メッセンジャーRNAと類似のキャップ構造とpolyAがある。本ウイルスの増殖は細胞質内で行われ、小胞体やゴルジ装置から出芽する。主に脊椎動物に感染し、さまざまな疾病を引き起こすことが知られている。
【0003】
特に、経済動物等に対する重大な疾病を引き起こすアルテリウイルス属ウイルスとして、家畜伝染病予防法における届出伝染病に指定されている「馬ウイルス性動脈炎」を引き起こすウマ動脈炎ウイルス(Equine arteritis virus)、豚および猪の届出伝染病であるブタ繁殖・呼吸障害症候群を引き起こすブタ繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(Porcine reproductive and respiratory syndrome virus)、サルの病原ウイルスとして知られるサル出血熱ウイルス(Simian hemorrhagic fever virus)が知られており、注目を集めている。一方、マウスなどの動物実験は、今日の生命科学研究には必要不可欠であるが、再現性の高い動物実験を行うためには、病原微生物等を対象とした定期的な微生物モニタリングによる品質管理が必須である。実験動物並びにその組織/細胞等の微生物モニタリングにおいて、最も重要な病原微生物の1つである乳酸デヒドロゲナーゼ上昇ウイルス(Lactate dehydrogenase-elevating virus)も、Arterivirus属ウイルスの代表例として挙げられる。このウイルスの感受性動物はマウスであり、感染動物は持続的なウイルス血症と血清中の乳酸脱水素酵素量の上昇を特徴とする。また、通常は血液、唾液を介して伝播すると考えられるが、マウスで継代された腫瘍を介しての伝播や、マウス組織・細胞由来製品、例えば、様々な細胞のIn vitro分化および/または維持に有用な基底膜成分(Basement Membrane Extract、BME)など、を介した伝播が知られており、わが国の研究施設でも汚染が散見されている事から、本ウイルスを対象とした微生物モニタリングが定期的に実施されている。
【0004】
これまでの検査手法は、主に「血清抗体の検査」が用いられてきたが、感染初期の動物では十分な抗体上昇がなく、早期検出が難しかった。また、実験動物分野では、免疫不全動物を使用するケースや、腫瘍組織・細胞などを使う事が多くなってきたが、感染の有無を血清学的に検査する事が出来ないため、汚染を見逃す危険がある。これら抗体検査が無効な動物や、動物実験に関連した組織・細胞及び配偶子などの汚染検査にはウイルス自体を検出する検査手法が求められている。
【0005】
以上のようなことから、問題となるウイルスに特徴的な遺伝子配列の存在の検知と迅速な同定を行うことの出来る方法が臨床診断現場や微生物モニタリング、疫学研究、その他様々な分野において求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、アルテリウイルス由来の核酸を特異的に且つ迅速に増幅するためのプライマーセット、これを用いる前記ウイルスを増幅および/または検出する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための手段は、
(1)アルテリウイルス由来の核酸を特異的に増幅するためのLAMP増幅用核酸プライマーセットであって、前記LAMP増幅用核酸プライマーセットは、FIPプライマー、BIPプライマー、F3プライマー、B3プライマーを含み、
当該FIPプライマーは配列番号1、配列番号7、配列番号11、配列番号17、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号29、配列番号33、配列番号35および配列番号39並びにその相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなる群より少なくとも1選択されるポリヌクレオチドを含み、
当該BIPプライマーは配列番号2、配列番号5、配列番号8、配列番号12、配列番号15、配列番号18、配列番号27、配列番号30および配列番号36並びにそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなる群より少なくとも1選択されるポリヌクレオチドを含み、
当該F3プライマーは配列番号3、配列番号9、配列番号13、配列番号19、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号31、配列番号34、配列番号37および配列番号40並びにそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなる群より少なくとも1選択されるポリヌクレオチドを含み、および
当該B3プライマーは配列番号4、配列番号6、配列番号10、配列番号14、配列番号16、配列番号20、配列番号28、配列番号32および配列番号38並びにそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなる群より少なくとも1選択されるポリヌクレオチドを含む
プライマーセット;
(2) アルテリウイルスの検出するためのアッセイキットであって、
請求項1〜3の何れか1項に記載のプライマーセットと、
前記プライマーセットを用いて得られた増幅産物からアルテリウイルスを特異的に検出するためのプローブであり、それぞれ配列番号81、配列番号82、配列番号83、配列番号84、配列番号85、配列番号95、配列番号96、配列番号97、配列番号98、配列番号99、配列番号114、配列番号115、配列番号116、配列番号117、配列番号118、配列番号124、配列番号125、配列番号131、配列番号132、配列番号138、配列番号139、配列番号145および配列番号146並びにその相補配列で示されるポリヌクレオチドを含むプローブからなる群より少なくとも1選択されたプローブと、
を含むことを特徴とするアッセイキット;
(3) アルテリウイルスに由来する核酸を特異的に増幅する方法であって、試料に含まれる核酸を前記(1)のプライマーセットを用いて試料をLAMP増幅することを具備する方法;
(4) 試料に含まれる核酸を前記(1)のプライマーセットを用いてLAMP増幅すること、および
前記LAMP増幅により生じた増幅産物の有無に基づいて、前記試料中のアルテリウイルスの存在の有無を判定すること
を具備するアルテリウイルスを検出する方法;
である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、アルテリウイルス由来の核酸を特異的に増幅するためのプライマーセット、前記微生物を検知および/または分類するための方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】従来のLAMP法による増幅方法を説明するための模式図。
【図2】従来のLAMP法を用いて得られる増幅産物を説明するための模式図。
【図3】本発明の測定用核酸の製造における増幅方法を説明するための模式図。
【図4】本発明の測定用核酸を説明するための模式図。
【図5】アルテリウイルス属に分類される微生物遺伝子型判定用核酸チップ。
【図6】アルテリウイルス属に分類される微生物遺伝子型判定用核酸チップ。
【図7】LAMP増幅の電気泳動写真の一例を示す図。
【図8】電流検知型核酸チップによる検知結果の一例を示す図。
【図9】電流検知型核酸チップによる検知結果の一例を示す図。
【図10】電流検知型核酸チップによる検知結果の一例を示す図。
【図11】電流検知型核酸チップによる検知結果の一例を示す図。
【図12】電流検知型核酸チップによる検知結果の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.プライマー
本発明の1態様に従うと、アルテリウイルス由来の核酸を特異的に増幅するためのLAMP増幅用核酸プライマーセットが提供される。
【0011】
ここにおける「LAMP法」は、それ自身公知の何れのLAMP法をも含むが、好ましくはRT−LAMP法である。RT−LAMP法は、等温遺伝子増幅法であるLAMP法の1種で、逆転写反応とLAMP反応を同時に行うことによりRNAを鋳型にLAMP増幅できる方法である。「LAMP増幅」および「RT−LAMP増幅」とは、LAMP法またはRT−LAMP法により行われる増幅または増幅工程を指す。
【0012】
一般的にLAMP法は2種若しくは4領域または4種若しくは6領域のプライマーを用いる点がPCR法とは異なる。LAMP法は、PCRを用いた方法に比べ増幅効率が優れていると共に、サンプル中の不純物の影響も受けにくい。そのため、簡便なサンプルの前処理で微量なアルテリウイルス属に分類される微生物を検知することが可能である。
【0013】
LAMP法におけるプライマー設計および得られる増幅産物について、図1および図2を参照して説明する。
【0014】
図1は、検知されるべき二本鎖DNAと、合計4種類のプライマー配列、即ち、FIPプライマー、F3プライマー、BIPプライマー、B3プライマーを示す。FIPプライマーおよびBIPプライマーは、各々二つの領域を含む。即ち、FIPはF1cとF2を含み、BIPはB2とB1cを含む。F3プライマーはF3領域を含んでいる。B3プライマーはB3領域を含む。
【0015】
ここで、F3、F2、F1、B1c、B2c、B3c領域は、前記二本鎖DNAのうちの一本鎖DNAの5'→3'方向にかけてこの順で設定された領域である。またB3、B2、B1、F1c、F2c、F3c領域は、その相補鎖の一本鎖DNAの5'→3'方向にかけてこの順で設定された領域である。このときB3とB3c、B2とB2c、B1とB1c、F1cとF1、F2cとF2、F3cとF3は相補鎖である。
【0016】
このようなFIPプライマー、F3プライマー、BIPプライマーおよびB3プライマーを用いてLAMP増幅を行なうと、図1の二本鎖DNAの夫々の鎖から、図2に示すようなダンベル型のステム・アンド・ループ構造の増幅産物が得られる。その増幅機構については、例えば特開2002−186781号公報を参照することが可能である。また、この4種のプライマーのほかにループプライマーを併せて用いてもよい。
【0017】
RT−LAMP法が使用される場合、前記LAMP法反応液に逆転写活性を持つ酵素を添加して、逆転写反応を行いながらLAMP増幅法を行えばよい。LAMP法であっても、RT−LAMP法であっても、同じ配列のプライマーを等しく使用することが可能である。
【0018】
検出しようとする配列であるターゲット配列は、一本鎖のループ部分またはステム部分の何れに対しても設定することが可能である。好ましくはループ部分に設定される。ターゲット配列とは、所望の増幅が行われた後に得られる増幅産物を検出する際に使用される配列である。ターゲット配列の有無の検出は、例えば、ターゲット配列に相補的なプローブとのハイブリダイゼーションの有無を検出することにより行えばよい。
【0019】
次に、一本鎖ループ部分にターゲット配列が位置するようにプライマーを設計する場合について説明する。図3を参照されたい。ターゲット配列(図3では、FPc、FP、BPおよびBPcの何れかとして理解されたい)が、領域F1とF2との間(この領域はF2領域を含んでもよい)、領域F2cとF1cとの間(この領域はF2c領域を含んでもよい)、領域B1とB2との間(この領域はB2領域を含んでもよい)、および/または領域B2cとB1cとの間(この領域はB2c領域を含んでもよい)の何れかに対応する位置するように、6つのプライマー領域を設定する。ターゲット配列は、上記それぞれの領域間に形成される一本鎖のループ部分の何れの部位に位置するように設計されてよい。ここで、プライマー領域F1とF2との間のループ部分には、F2領域自体も含まれてよい。こうして設定された6つのプライマー領域に基づいて4種類のプライマーを作製し、これらプライマーを用いてLAMP増幅を行なう。それにより、図4に示すようなLAMP増幅産物の一部が得られる。このLAMP増幅産物中においては、ターゲット配列FPc、FP、BP、BPcが増幅産物のダンベル構造における一本鎖ループの中に位置する。
【0020】
一方、プライマー領域F1cとF1、およびB1cとB1は、もともと相補的な配列を有しているので、相互に自己ハイブリダイゼーションを生じて二本鎖を形成する。
【0021】
このように増幅産物中に含まれるターゲット配列は、図4に示すような一本鎖の状態のものが存在する。その部分を利用すれば、変性操作を行なうことなく、各ターゲット配列に対して相補的なプローブ核酸(即ち、FP、FPc、BP、BPc)との特異的ハイブリダイゼーションが行える。これを利用することにより、ハイブリダイゼーションの有無により増幅の鋳型となる検出対象の有無を判定することが可能である。
【0022】
特異的ハイブリダイゼーションとは、一塩基多型(Single Nucleotide PolymorpHisms:SNPs)または変異が存在する場合、その僅かの違いも検知することが可能であることを意味している。
【0023】
上述したとおり、本発明に従う好ましいプライマーセットの例において、当該LAMP増幅用核酸プライマーセットは、F1、F2、F3、B1c、B2cおよびB3c領域を元に設計される。
【0024】
それぞれの領域の例を表1に示す。
【表1−1】
【0025】
以下で詳しく述べるが、表1−2には、表1−1の領域がプライマーにおいてどのように具体的に利用されているか、その例を示した。各プライマーには、F1、F2、F3、B1c、B2cおよびB3c領域として選択された表1−1に示した配列の相同配列および/または相補配列が含まれている。
【表1−2】
【0026】
表1の領域が、アルテリウイルスのゲノムにおいてどのような位置に対応する配列であるのかを表2−1および表2−2に複数の株についてのアライメントを示した。
【表2−1】
【0027】
【表2−2】
【0028】
表2−1および表2−2は、複数のアルテリウイルス株のゲノムについてのアラインメントである。最下段には塩基について全ての種が共通する塩基を有する位置には「*」を示し、種により変異のある位置には「.」を記した。更に表2−1および表2−2には、アルテリウイルスプライマーとして選択した領域を示す。この領域は、アルテリウイルス属において高度に保存された領域である。また、当該プライマーにより増幅される領域は、アルテリウイルスを特定するために特徴的な領域である。
【0029】
好ましいプライマーセットにおいて、当該F1領域は配列番号86またはその相補配列により示されるポリヌクレオチドからなっても、当該ポリヌクレオチドを含んでいてもよい。また、当該F1領域は、配列番号86またはその相補配列で示されるポリヌクレオチドの何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが置換、欠失および/または挿入を有していてもよい。そのようなポリヌクレオチドの例は、表2−1および表2−2に示されたアラインメント上の同領域の他の配列を参照されたい。このような配列は何れもその何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが、混合ヌクレオチドとして調製されてもよく、また、その何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが、ユニバーサルなヌクレオチドであってもよい。
【0030】
ここで、ユニバーサルなヌクレオチドの例は、これらに限定するものではないが、デオキシイノシン(deoxyinosine;dI)や、Gren Research社の3−ニトロピロール(Nitropyrrole)、5-ニトロインドール(Nitroindole)、デオキシリボルラノシル(deoxyribofuranosyl ;dP)、デオキシ-5'-ジメトキシトリチル-D-リボフラノシル(deoxy-5'-dimethoxytrityl-D-ribofuranosyl ;dK)が含まれる。
【0031】
またここで、プライマーの各配列間またはその末端側には、1〜100ヌクレオチド、好ましくは2〜30ヌクレオチド程度の配列(例えば、スペーサーとして使用される配列)が含まれていてもよい。当該プライマーの長さは30〜200ヌクレオチド程度であってよく、好ましくは35〜100ヌクレオチド、更に好ましくは43〜60ヌクレオチドであってよい。
【0032】
好ましいプライマーセットにおいて、当該F2領域は、配列番号87および配列番号88並びにそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなる群より少なくとも1選択されるポリヌクレオチドからなっても、当該ポリヌクレオチドを含んでもよい。このようなF2領域に好ましい各配列は、その何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが置換、欠失および/または挿入を有していてもよい。表2−1および表2−2に示されたアラインメント上の同領域の他の配列を参照されたい。また、このような配列は何れも何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが混合ヌクレオチドまたはユニバーサルなヌクレオチドであってもよい。
【0033】
好ましいプライマーセットにおいて、当該F3領域は配列番号89またはその相補配列により示されるポリヌクレオチドからなっても、当該ポリヌクレオチドを含んでもよい。このようなF3領域に好ましい各配列は、その何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが置換、欠失および/または挿入を有していてもよい。そのようなポリヌクレオチドの例は、表2−1および表2−2に示されたアラインメント上の同領域の他の配列を参照されたい。また、これらの何れの配列もその何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが混合ヌクレオチドまたはユニバーサルなヌクレオチドであってもよい。
【0034】
好ましいプライマーセットにおいて、当該B1c領域は配列番号90および91並びにその相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなっても、当該ポリヌクレオチドを含んでもよい。このようなB1c領域に好ましい各配列はその何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが置換、欠失および/または挿入を有していてもよい。そのようなポリヌクレオチドの例は、表2−1および表2−2に示されたアラインメント上の同領域の他の配列を参照されたい。また、このような配列の何れもその何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが混合ヌクレオチドまたはユニバーサルなヌクレオチドであってもよい。
【0035】
好ましいプライマーセットにおいて、当該B2c領域は配列番号92およびその相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなっても、当該ポリヌクレオチドを含んでもよい。このようなB2c領域に好ましい各配列はその何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが置換、欠失および/または挿入を有していてもよい。そのようなポリヌクレオチドの例は、表2−1および表2−2に示されたアラインメント上の同領域の他の配列を参照されたい。また、このような配列の何れもその何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが混合ヌクレオチドまたはユニバーサルなヌクレオチドであってもよい。
【0036】
好ましいプライマーセットにおいて、当該B3c領域は配列番号93およびその相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなっても、当該ポリヌクレオチドを含んでもよい。このようなB3c領域に好ましい各配列はその何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが置換、欠失および/または挿入を有していてもよい。そのようなポリヌクレオチドの例は、表2−1および表2−2に示されたアラインメント上の同領域の他の配列を参照されたい。また、このような配列の何れもその何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが混合ヌクレオチドまたはユニバーサルなヌクレオチドであってもよい。
【0037】
上記のような領域を使用したプライマーを用いて、アルテリウイルス属に分類される微生物あるいはその遺伝子を含有する検体試料に対してLAMP法による増幅を行うと、図4で説明したようにステム・アンド・ループ構造が形成され、一本鎖のループ構造内に含まれるアルテリウイルス属に分類される微生物由来のターゲット配列が得られる。
【0038】
これらを基にアルテリウイルスを検出するための好ましいプライマーを表3に示す。
【表3−1】
【0039】
【表3−2】
【0040】
また、プライマーセットは、FIPプライマーとF3プライマーとBIPプライマーとB3プライマーを含んでよく、そのようなプライマーセットの例は、以下の通りである:
当該FIPプライマーが、配列番号1、配列番号7、配列番号11、配列番号17、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号29、配列番号33、配列番号35、配列番号39、配列番号109、配列番号120、配列番号127、配列番号134および配列番号141並びにその相補配列によりそれぞれに示されるポリヌクレオチドからなる群より少なくとも1選択されるポリヌクレオチドまたはアルテリウイルス由来の核酸を特異的に増幅可能な範囲で変異を含む前記ポリヌクレオチドを含む少なくとも1種類のFIPプライマーであり、
当該BIPプライマーが、配列番号2、配列番号5、配列番号8、配列番号12、配列番号15、配列番号18、配列番号27、配列番号30、配列番号36、配列番号110、配列番号121、配列番号128、配列番号135および配列番号142並びにそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなる群より少なくとも1選択されるポリヌクレオチドまたはアルテリウイルス由来の核酸を特異的に増幅可能な範囲で変異を含む前記ポリヌクレオチドを含む少なくとも1種類のBIPプライマーであり、
当該F3プライマーが、配列番号3、配列番号9、配列番号13、配列番号19、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号31、配列番号34、配列番号37、配列番号40、配列番号111、配列番号119、配列番号126、配列番号133および配列番号140並びにそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなる群より少なくとも1選択されるポリヌクレオチドまたはアルテリウイルス由来の核酸を特異的に増幅可能な範囲で変異を含む前記ポリヌクレオチドを含む少なくとも1種類のF3プライマーであり、および
当該B3プライマーが、配列番号4、配列番号6、配列番号10、配列番号14、配列番号16、配列番号20、配列番号28、配列番号32、配列番号38、配列番号112、配列番号122、配列番号129、配列番号136および配列番号143並びにそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなる群より少なくとも1選択されるポリヌクレオチドまたはアルテリウイルス由来の核酸を特異的に増幅可能な範囲で変異を含む前記ポリヌクレオチドを含む少なくとも1種類のB3プライマーである。
【0041】
これらのプライマーのいずれか、または全ての配列について、その何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが置換、欠失および/または挿入を有していてもよい。また、FIP、BIP、F3およびB3のの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含んでもよい。
【0042】
プライマーセットにおいて使用されるFIPプライマー、BIPプライマー、F3プライマーおよびB3プライマーの組み合わせの例は、以下の(1)〜(20)よりなる群から少なくとも1選択された組み合わせであってよい。これらの組み合わせは、(1)〜(20)に示される他のプライマーやそれ自身公知の何れのプライマーと同時に使用されてもよい。1つの組み合わせに含まれる配列の並びは、FIPプライマー、BIPプライマー、F3プライマーおよびB3プライマーの順である:
(1)それぞれ配列番号1、配列番号2、配列番号3および配列番号4で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(2)それぞれ配列番号1、配列番号5、配列番号3および配列番号6で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(3)それぞれ配列番号7、配列番号8、配列番号9および配列番号10で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(4)それぞれ配列番号11、配列番号12、配列番号13および配列番号14で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(5)それぞれ配列番号1、配列番号15、配列番号3および配列番号16で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(6)それぞれ配列番号17、配列番号18、配列番号19および配列番号20で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(7)それぞれ配列番号21、配列番号5、配列番号22および配列番号6で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(8)それぞれ配列番号21、配列番号18、配列番号22および配列番号20で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(9)それぞれ配列番号23、配列番号15、配列番号24および配列番号16で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(10)それぞれ配列番号25、配列番号8、配列番号26および配列番号10で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(11)それぞれ配列番号25、配列番号27、配列番号26および配列番号28で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(12)それぞれ配列番号29、配列番号30、配列番号31および配列番号32で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(13)それぞれ配列番号33、配列番号30、配列番号34および配列番号32で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(14)それぞれ配列番号35、配列番号36、配列番号37および配列番号38で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(15)それぞれ配列番号39、配列番号27、配列番号40および配列番号28で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(16)それぞれ配列番号109、配列番号110、配列番号111および配列番号112で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(17)それぞれ配列番号120、配列番号121、配列番号119および配列番号122で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(18)それぞれ配列番号127、配列番号128、配列番号126および配列番号129で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(19)それぞれ配列番号134、配列番号135、配列番号133および配列番号136で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(20)それぞれ配列番号141、配列番号142、配列番号140および配列番号143で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット。
【0043】
ここで、(1)〜(20)にそれぞれ記載の組み合わせは、ユニバーサルにウイルスを増幅することも、種特異的に増幅することもが可能なプライマーセットであり、目的に応じて選択してよく、それのプライマーセットを更に組み合わせて使用してもよい。
【0044】
より確実に包括的にウイルスを増幅するためには、少なくとも変異部位に関してユニバーサルヌクレオチドまたはミックス塩基となるようにプライマーを設計および使用することが好ましい。そのような組み合わせは、例えば、(16)〜(20)の組み合わせのプライマーセットであってもよく、それらのプライマーセットを更に組み合わせたものであってもよく、それらのプライマーの1以上の何れかの塩基をミックス塩基として含むものであってもよい。また、そのような組み合わせは、例えば、(1)〜(20)の組み合わせのプライマーセットの少なくとも2以上を選択して含む組み合わせであってもよく、それらのプライマーセットを更に組み合わせたものであってもよく、それらのプライマーの1以上の何れかの塩基をミックス塩基として含むものであってもよい。上記のプライマーにおいて、配列中に複数の塩基を示す1塩基表示による記号を含むものもある。それらの記号の示す塩基の意味は通常当該技術分野において一般的に使用される意味である。即ち、「r」はグアニンまたはアデニン、「y」はチミンまたはシトシン、「m」はアデニンまたはシトシン、「k」はグアニンまたはチミン、「s」はグアニンまたはシトシン、「w」はアデニンまたはチミン、「b」はグアニンまたはシトシンまたはチミン、「d」はアデニンまたはグアニンまたはチミン、「h」はアデニンまたはシトシンまたはチミン、「v」はアデニンまたはグアニンまたはシトシン、「n」はアデニンまたはグアニンまたはシトシンまたはチミンである。本明細書においてもこの通りに意味する。(8)の組み合わせのプライマーセットをミックス塩基で使用することは、ユニバーサルにウイルスを増幅するためにより効果的である。また、そこにおいて、少なくとも1つのプライマーの一部にアルテリウイルス由来の核酸を特異的に増幅可能な範囲で変異を含んでもよい。特異的に増幅可能な範囲とは、分類学的にアルテリウイルスと同定されるために必ずしも必要ではない範囲内で変異が存在する範囲である。
【0045】
種特異的または特定の遺伝子型について増幅を行う場合には、目的とする種や遺伝子型に特異的なヌクレオチドを含むように設計すればよい。
【0046】
プライマーセットは、上述のプライマーの組み合わせに加えて、更にループプライマーを使用してもよい。ループプライマーを使用することにより更に効率よく増幅を行なうことが可能である。例えば、LPfは、配列番号70、配列番号72、配列番号73、配列番号74、配列番号94、配列番号113、配列番号123、配列番号130、配列番号137、配列番号144およびその相補配列並びにアルテリウイルス由来の核酸を特異的に増幅可能な範囲で変異を含む前記ポリヌクレオチドからなる群より少なくとも1選択されるポリヌクレオチドを含むプライマーであればよい。例えば、LPbは、配列番号19、配列番号71、配列番号73、配列番号75および配列番号76並びにその相補配列並びにその相補配列により示されるポリヌクレオチドまたはアルテリウイルス由来の核酸を特異的に増幅可能な範囲で変異を含む前記ポリヌクレオチドからなる群より少なくとも1選択されるポリヌクレオチドを含むプライマーであればよい。プライマーセットにおいて使用される場合、LPfとLPbが同時に使用されてもよく、何れか一方が使用されてもよく、複数の種類のLPfおよび/またはLPbが同時に使用されてもよい。
【0047】
上記のようなプライマーセットをアルテリウイルス属に分類される微生物に対して適用すれば、アルテリウイルス属に特徴的な遺伝子型を反映する核酸が増幅される。得られる増幅産物の存在を検知することにより、アルテリウイルスを検知することが可能である。従って、試料におけるアルテリウイルスの検知は、検出対象である試料について、当該プライマーセットを用いて増幅反応を行えばよい。
【0048】
増幅反応の条件は、それ自身公知の何れかの条件を利用すればよい。また、当該増幅反応を行った結果を基に当該試料はアルテリウイルスが含まれている、または含まれていないと判定すればよい。そのような判定により試料中のアルテリウイルスを検知することが可能である。
【0049】
例えば、上記増幅反応は、例えば、1チューブ当たり1プライマーセットで行ってもよく、あるいは1チューブに各種遺伝子型に対応した複数のプライマーセットを用いて行ってもよい。複数の遺伝子型を特定する必要がある場合は、後者の方法で行う方が効率的である。ここではチューブを例に挙げたが、増幅反応はそれ自身公知の何れの容器または反応場で行うことが可能である。
【0050】
また、上記増幅反応は、これに限定するものではないが、例えば、以下に示すような組成のバッファー中で行ってよい:
RT−LAMP法の反応液組成
20mM Tris−HCL(pH8.8)
10mM KCL
8mM MgSO4
10mM (NH4)2SO4
0.1% Tween20
0.8M Betaine
1.4mM dNTPs
16 U Bst DNA polymerase
0.625U AMV Reverse transcriptase。
【0051】
このような組成の反応液で、総量25μLで反応を行う際には、下記の濃度でそれぞれのプライマーを持ち込んでもよい;
プライマー添加量
FIPプライマー 40pmoL
BIPプライマー 40pmoL
F3プライマー 5pmoL
B3プライマー 5pmoL。
【0052】
ここで「試料」は「検体」または「検体試料」とも称してよく、例えば、ヒト、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、フェレット、オナガザル、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、アザラシ、ネズミイルカなどの哺乳類、鳥類などの体液、組織、細胞、並びに水、湖水、川水、海水および土壌などの環境に存在する何れかの物質であってもよい。例えば、血液、血清、白血球、尿、精液、唾液、組織、バイオプシー、口腔内粘膜、培養細胞、喀痰等であってもよい。また、当該試料は、コロナウイルス属に分類される微生物あるいはその遺伝子が含まれている可能性の疑われる物質であってよい。そのような物質をそれ自身公知の手段により、核酸の増幅に適した状態に前処理したものであってもよく、何れの前処理もなされなくてもよい。例えば、そのような前処理の例は、変性、濾過、核酸抽出、不純物除去などを含む。
【0053】
以上のようなプライマーセットを用いて核酸の増幅を行うことにより、簡便、安価、高速に、特異的にアルテリウイルスを増幅することが可能である。これを利用して、試料に含まれる核酸を当該プライマーまたはプライマーセットを用いるLAMP増幅反応に供し、増幅反応の結果生じた増幅産物の有無を判定することにより、当該試料にアルテリウイルスを特異的に検出することが可能である。
【0054】
従来の方法では、特異性を配列検出の際の特異性は、一般的にPCR法で増幅した目的遺伝子産物をDNAチップにより検出している。この場合、PCRにより生成される産物は2本鎖であるため、プローブとハイブリダイゼーション反応させると、相補鎖がプローブに対するコンペティターとなりハイブリ効率が低く検出感度が悪い。そのような方法において、また従来では、ターゲットを1本鎖にするために、相補鎖を分解する、または分離するといった方法も取られている。これらの場合、酵素の使用、磁気ビーズの使用などによる高価な価格となったり、操作が煩雑性になったりする。また、アルテリウイルス属に分類される微生物は、培養が難しく、適切な培養条件を整えたとしても、時間がかかる。このような問題も本発明を用いることにより解決される。
【0055】
これまで、迅速診断法としては特異的な抗体を使って抗原−抗体反応を介して検出する方法や、DNA配列中の特徴的な配列を含む領域をポリメラーゼチェインリアクション(PCR)で増幅し、電気泳動法により検出する方法などが知られていた。しかしながら、前者の方法では近縁株等との区別が難しいことや、感染初期には抗体が検出できないことが知られている。また、後者のPCRを利用する方法は、サーマルサイクラーのような複雑な温度制御装置が必要なことや簡便性に課題があるなどの不利点がある。またPCR法では、万が一誤って相補鎖合成が行われてしまった場合にはその生成物が鋳型となり増幅してしまい、誤った判定をしてしまう可能性がある。実際に、プライマーの末端の1塩基相違のみでは特異的な増幅を制御することは困難である。このような問題も本発明を用いることにより解決される。
【0056】
ここで、本明細書に記載される核酸に関する情報を表4−1〜表4−8に纏めて示す。
【表4−1】
【0057】
【表4−2】
【0058】
【表4−3】
【0059】
【表4−4】
【0060】
【表4−5】
【0061】
【表4−6】
【0062】
【表4−7】
【0063】
【表4−8】
【0064】
2.プローブ
本発明は更に、上述のプライマーセットにより増幅されたアルテリウイルスに由来する核酸を検知および/または分類するためのプローブおよびプローブセットを提供する。
【0065】
プローブは、所望の種または特定の遺伝子型を特異的に検出するためのプローブであってもよく、また、幾つかの種または遺伝子型を特異的に検出するためのプローブであってもよい。このようなプローブは、例えば、上述のプライマーにより増幅されたステム・アンド・ループ構造を有するポリヌクレオチドの一本鎖のループ部分の領域に対して結合するように設定してもよく、ステム部分に対して結合するように設定してもよいが、好ましくはループ部分に設定される。また、当該プローブは好ましくは、約10〜60塩基長、約12〜40塩基長などであればよい。
【0066】
当該増幅産物を検出するためのプローブは、検出する細ウイルス株の保持する遺伝的多型や変異などに応じて変化させてもよい。上述したプローブは、何れも各表に示した配列の任意の位置の塩基が1つまたは数個置換あるいは欠失あるいは塩基を挿入された配列からなってもよい。また、核酸プローブの構造も特に限定されるものではなく、DNA、RNA、PNA、LNA、メチルホスホネート骨格の核酸、その他の人工核酸鎖を用いることが可能である。また、これらのキメラ核酸でもよい。また、プローブに含まれる1つまたは数個置換あるいは欠失あるいは塩基を挿入された配列は、アルテリウイルス由来の核酸を特異的に検出可能な範囲な範囲であればよい。
【0067】
例えば、好ましいプローブは、図3に示すようなステム・アンド・ループ構造のプライマー領域F1とF2との間(この領域はF2領域を含んでもよい)、プライマー領域F2cとF1cとの間(この領域はF2c領域を含んでもよい)、プライマー領域B1とB2との間(この領域はB2領域を含んでもよい)、および/またはプライマー領域B2cとB1cとの間(この領域はB2c領域を含んでもよい)の何れかの位置に対応するように選択されてよい。この選択は検出しようとするウイルス種に特異的な配列が適宜選択されるように行えばよい。或いは複数種を同時且つ特異的に、または広い範囲のウイルス種に亘り包括的、即ち、ユニバーサルに検出を行ってもよい。
【0068】
本発明に従うプローブの例は、それぞれ配列番号81、配列番号82、配列番号83、配列番号84、配列番号85、配列番号95、配列番号96、配列番号97、配列番号98、配列番号99、配列番号114、配列番号115、配列番号116、配列番号117、配列番号118、配列番号124、配列番号125、配列番号131、配列番号132、配列番号138、配列番号139、配列番号145および配列番号146並びにその相補配列で示されるポリヌクレオチドを含むプローブからなる群より少なくとも1選択されればよい。これらのプローブは、アルテリウイルス由来の核酸を特異的に検出可能な範囲で変異を含む前記ポリヌクレオチドによりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプローブ群から選択される少なくとも1であってもよい。
【0069】
これらのプローブは2以上選択されて組み合わされて使用されてもよく、および/またはその塩基にミックス塩基および/またはユニバーサルヌクレオチドが含まれてもよい。ミックス塩基やユニバーサルヌクレオチドを含む場合、ユニバーサルプローブとして使用されてもよい。それらのミックス塩基を含むプローブを、他のミックス塩基を含むまたは含まないプローブと組み合わせて使用してもよく、単独でミックス塩基のみが異なる配列からなるプローブセットとして使用してもよい。ミックス塩基および/またはユニバーサル塩基を使用することは、包括的にアルテリウイルスを検出するために有利である。
【0070】
このようなユニバーサルプローブの非限定的な例を表5に示した。
【表5−1】
【0071】
【表5−2】
【0072】
表5に示すように、アルテリウイルス属をユニバーサルに検出可能なプローブの例は、配列番号114、配列番号115、配列番号116、配列番号117、配列番号118、配列番号145および配列番号146並びにそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプローブ群より少なくとも1選択されてもよい。或いは、これらのプローブから選択された2種以上のプローブが組み合わされて選択されてもよく、それぞれの配列からなる全てのプローブが一緒に使用されてもよい。また、これらの配列を構成する何れか1以上の塩基として、ミックス塩基またはユニバーサルヌクレオチドが使用されてもよい。ここで、「ミックス塩基」とは、ミックス塩基としたい所望の箇所の塩基を「アデニン」、「チミン」、「シトシン」および「グアニン」からなる群より少なくとも2選択して設計したプローブを2以上または全て混合して使用するプローブセットをいう。また、複数種類の塩基に対して対合可能な修飾塩基で置換するように設計されてもよい。
【0073】
また、当該プライマーは好ましくは、約10〜約60塩基長、約12〜約40塩基長などであってよい。
【0074】
例えば、Equine arteritis virus、Lactate dehydrogenase-elevating virus、Porcine reproductive and respiratory syndrome virusおよびSimian hemorrhagic fever virusを、それぞれ種特異的に検出するためのプローブの例を表6−1〜表6−3に示す。
【表6−1】
【0075】
【表6−2】
【0076】
【表6−3】
【0077】
また、何れのプローブも、同一種内での配列変異が明らかになっているなどの場合には、同一種内の配列変異に対応するために異なる配列からなるプローブを複数使用してよい。
【0078】
また、検知したいウイルス種のためのプローブを所望に応じて表6から選択し、それらを組み合わせて、プローブセットとして使用してもよい。
【0079】
上述した何れのプローブも、2種以上で選択され組み合わされて使用されてもよく、それぞれの配列からなる全てのプローブが一緒に使用されてもよい。および/または、これらの配列を構成する何れかの1以上の塩基がミックス塩基に設計されてもよい。また、複数種類の塩基に対して対合可能な修飾塩基で置換するように設計されてもよい。
【0080】
当該プローブは、所望の種を特異的に検出するためのプローブであってもよく、また、幾つかの種を特異的に検出するためのプローブであってもよい。このようなプローブは、例えば、上述のプライマーにより増幅されたステム・アンド・ループ構造を有するポリヌクレオチドの一本鎖のループ部分の領域に対して結合するように設定されればよい。また、当該プライマーは好ましくは、約10〜60塩基長、約12〜40塩基長などであればよい。
【0081】
何れのプローブおよびプローブセットも、上述した増幅産物を所望に応じて検出するために使用されてよい。当該プローブは、固相基体表面に固定化されたものであってもよく、典型的にはDNAチップとして構成されたものが用いられてよく、また他のマイクロアレイを構成するプローブとして用いられてもよい。当該増幅産物を検出するためのプローブは、検知する細ウイルス株の保持する遺伝的多型や変異などに応じて変化させてもよい。
【0082】
上述したプローブは、何れも各表に示した配列の任意の位置の塩基が1つまたは数個置換あるいは欠失あるいは塩基を挿入された配列からなってもよい。
【0083】
また、核酸プローブの構造も特に限定されるものではなく、DNA、RNA、PNA、LNA、メチルホスホネート骨格の核酸、その他の人工核酸鎖を用いることが可能である。また、これらのキメラ核酸でもよい。
【0084】
核酸プローブを固相に固定化する場合は、末端にアミノ基、チオール基、ビオチン、などの官能基を導入してもよく、更に、官能基とヌクレオチドの間にスペーサーを導入してもよい。ここで用いられるスペーサーの種類は特に限定されないが、例えばアルカン骨格、エチレングリコール骨格などを用いてよい。また、一部の塩基がユニバーサルなヌクレオチドに置換されてもよい。本発明使用可能なユニバーサルなヌクレオチドの例は、deoxyinosine(dI)や、Gren Research社の3-Nitropyrrole、5-Nitroindole、deoxyribofuranosyl (dP)、deoxy-5'-dimethoxytrityl-D-ribofuranosyl (dK)などを含む。
【0085】
本発明で使用する検出法は、これらに特に限定されるものではないが、濁度、可視光、蛍光、化学発光、電気化学発光、化学蛍光、蛍光エネルギー転移法、ESRなどの光学的な手法や、電流、電圧、周波数、伝導度、抵抗などの電気的な性質を利用することも可能である。
【0086】
基体に核酸プローブが固相されたDNAチップの例を以下に説明する。図5のDNAチップは、非限定的な1例である微生物遺伝子型判定用核酸チップである。DNAチップ1は、基体2に固定化領域3を具備する。核酸プローブ4は該固定化領域3に固定化される。このようなDNAチップ1は、当該分野で周知の方法によって製造することができる。基体2に配置される固定化領域3の数及びその配置は、当業者が必要に応じて適宜設計変更することが可能である。このようなDNAチップは、蛍光を用いた検出方法のために好適に用いられてよい。1つの固定化領域には、独立した1つの信号として得ることが必要な情報を得るために必要な1種類または1種類以上の核酸プローブまたはプローブセットが固定化される。
【0087】
図6のDNAチップは、非限定的な1例である微生物遺伝子型判定用核酸チップである。図6のDNAチップ11は、基体12に電極13を具備する。核酸プローブ14は電極13に固定化される。電極13は、パット15に接続される。電極13からの電気的情報はパット15を介して取得される。このようなDNAチップ11は、当該分野で周知の方法によって製造することができる。基体12に配置される電極13の数及びその配置は、当業者が必要に応じて適宜設計変更することが可能である。さらに、本例のDNAチップは、必要に応じて、参照電極及び対極を具備してもよい。1つの固定化領域には、独立した1つの信号として得ることが必要な情報を得るために必要な1種類または1種類以上の核酸プローブまたはプローブセットが固定化される。
【0088】
本発明で用いるプローブを固定化するための表面は、特に限定されるものではないが、樹脂ビーズ、磁気ビーズ、金属微粒子、マイクロタイタープート、ガラス基板、シリコン基板、樹脂製基板、電極基板などを用いることができる。
【0089】
本発明で使用する基体の材料は、特に限定されるものではない。例えば、ガラス、石英ガラス、アルミナ、サファイア、フォルステライト、炭化珪素、酸化珪素、窒化珪素、等の無機絶縁材料を使用できる。また、ポリエチレン、エチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、不飽和ポリエステル、含フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、アセタール樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、フェノール樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、スチレン・アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、シリコーン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリスルホン等の有機材料を用いることができる。
【0090】
例えば、電気的な性質を利用する場合、電極を基体に配置することが好ましい。電極は特に限定されるものではないが、例えば、金、金の合金、銀、プラチナ、水銀、ニッケル、パラジウム、シリコン、ゲルマニウム、ガリウム、タングステン等の金属単体及びそれらの合金、あるいはグラファイト、グラシーカーボン等の炭素等、またはこれらの酸化物、化合物であってよい。更に、酸化珪素等の半導体化合物や、CCD、FET、CMOSなど各種半導体デバイスを用いてもよい。
【0091】
抽出方法は特に限定される物ではなく、フェノール−クロロホルム法等の液−液抽出法や担体を用いる固液抽出法を用いることができる。また、市販の核酸抽出方法QIAamp(QIAGEN社製)、(社製)等を利用することも可能である。次に、抽出した核酸成分を鋳型にRT-LAMP増幅を行った後、遺伝子検出用電極とでハイブリダイゼーション反応を行う。反応溶液は、イオン強度0.01〜5の範囲で、pH5〜10の範囲の緩衝液中で行う。この溶液中にはハイブリダイゼーション促進剤である硫酸デキストランや、サケ精子DNA、牛胸腺DNA、EDTA、界面活性剤などを添加することが可能である。ここに抽出・増幅した核酸成分を添加の上、核酸プローブとのハイブリダイゼーション反応に供与する。反応中は、撹拌、あるいは振とうなどの操作で反応速度を高めることもできる。反応温度は10℃〜90℃の範囲で、また反応時間は1分以上1晩程度行う。ハイブリダイゼーション反応後の洗浄には、イオン強度0.01〜5の範囲で、pH5〜10の範囲の緩衝液を用いる。
【0092】
抽出・増幅したサンプル核酸は、あらかじめFITCやCy3、Cy5、ローダミンなどの蛍光色素やビオチン、ハプテン、オキシダーゼやポスファターゼ等の酵素や、フェロセンやキノン類等の電気化学的に活性な物質で標識するか、あるいは前述した物質で標識したセカンドプローブを用いることで検出が可能になる。
【0093】
電気化学的に活性な核酸結合物質を用いた検出を行う場合は、以下のような手順で検出を行う。基体を洗浄後、電極表面に形成した二本鎖部分に選択的に結合する核酸結合物質を作用させ、電気化学的な測定を行ってよい。ここで用いられる核酸結合物質は特に限定される物ではないが、例えば、ヘキスト33258、アクリジンオレンジ、キナクリン、ドウノマイシン、メタロインターカレーター、ビスアクリジン等のビスインターカレーター、トリスインターカレーター、ポリインターカレーター等を用いることが可能である。更に、これらのインターカレーターを電気化学的に活性な金属錯体、例えば、フェロセン、ビオロゲン等で修飾しておくことも可能である。核酸結合物質の濃度は、その種類によって異なるが、一般的には1ng/ml〜1mg/mlの範囲で使用する。この際、イオン強度0.001〜5の範囲で、pH5〜10の範囲の緩衝液を用いる。電極を核酸結合物質と反応させた後、電気化学的な測定を行う。電気化学的な測定は、3電極タイプ、すなわち参照電極、対極、作用極、あるいは2電極タイプ、すなわち対極、作用極で行う。測定では、核酸結合物質が電気化学的に反応する電位以上の電位を印加し、核酸結合物質に由来する反応電流値を測定する。この際、電位は定速で掃引するか、あるいはパルスで印加するか、あるいは、定電位を印加することができる。測定には、ポテンショスタット、デジタルマルチメーター、ファンクションジェネレーター等の装置を用いて電流、電圧を制御する。得られた電流値を基に、検量線から標的遺伝子の濃度を算出する。遺伝子検出用電極を用いた遺伝子検出装置は、遺伝子抽出部、遺伝子反応部、核酸結合物質反応部、電気化学測定部、洗浄部等から構成される。
【0094】
3.アッセイキット
本発明に従うと、アルテリウイルスの検出および/または分類するためのアッセイキットが提供されてもよい。そのようなアッセイキットは、上述のプライマーまたはプライマーセットとプローブまたはプローブセットとを含めばよい。当該アッセイキットは、当該プライマーまたはプライマーセットおよびプローブまたはプローブセットに加えて、LAMP増幅に必要なバッファーを含んでもよく、ハイブリダイゼーションに必要なバッファー、並びにそこにおいて当該増幅および/またはハイブリダイゼーションを行うための容器を具備してもよい。また、アッセイキットに含まれるプローブは基体に固定化されていてもよい。その場合の基体は上述した何れかの基体であればよい。
【0095】
4.アルテリウイルス属の分類方法
本発明に従うと、更に、アルテリウイルスを検知する方法が提供される。当該検知方法は、上記したプライマー、プローブおよび増幅方法を利用することによって、更に、アルテリウイルス属に分類される微生物の検知および属レベルまたは種レベルで遺伝子型分類を行う方法である。
【0096】
そのような方法は、試料に含まれる核酸を上述の何れかのプライマーセットを用いてRT-LAMP増幅する工程と、前記LAMP増幅により生じた増幅産物と上述の何れかのプローブとを反応することと、前記反応の結果から試料に存在するアルテリウイルスを検知および/または分類することを具備すればよい。
【0097】
また、上述の何れかのプライマーセットを用いて、試料についてRT-LAMP増幅反応を行うことと、当該増幅反応により生じた増幅産物と、上述の何れかのプローブとを反応し、それにより生じるハイブリダイズの有無を検出することにより試料におけるアルテリウイルスの存在の有無を判定する、および/または試料におけるアルテリウイルスを分類することを具備する方法であってもよい。
【0098】
また、例えば、そのようなアルテリウイルス属に分類される微生物の感染や存在を検知する方法は、
本発明に従うプライマーから任意に選択される少なくとも1つのプライマーを含む複数のプライマーを使用して、LAMP反応により試料について核酸鎖増幅反応を行う工程と、
前記増幅反応後に増幅産物の有無を検知する工程と、
を具備すればよい。当該試料は、予め核酸を抽出する工程に供されてもよい。
【0099】
ここにおける「RT-LAMP増幅」とは、逆転写を行いながらLAMP反応により増幅対象の核酸を増幅することをいう。当該RT-LAMP増幅は、上述の何れかのプライマーを用いて増幅対象の核酸を増幅可能なそれ自身公知の何れの条件で行ってよい。
【0100】
当該増幅産物と当該プローブとの反応は、上述の何れかのプローブを用いてハイブリダイズが可能なそれ自身公知の何れかの条件で行ってよい。
【0101】
LAMP産物に特徴的な複雑な高次構造が、ハイブリダイゼーション反応時においてプローブが結合した基体と物理的な障害を起こす要因となり、その結果ハイブリダイゼーション効率に悪影響を及ぼすことが見出されている(たとえば、特開2005-95043を参照されたい)。そのような悪影響を受けないようにするために、本発明に従うプローブは、従来のターゲット配列の位置とは異なり、一本鎖のループ部分にアルテリウイルス属に分類される微生物由来のターゲット配列が位置するようにプライマーを設計している。
【0102】
本発明によれば、簡便、安価、高速にアルテリウイルス属に分類される微生物の検知および属レベルまたは種レベルで遺伝子型を分類する方法が提供される。
【0103】
また、上述したとおり、これまで、迅速診断法としてはウイルスRNAから逆転写酵素によりDNAを作成した上、前記DNA配列中の特徴的な配列を含む領域をポリメラーゼチェインリアクション(PCR)で増幅し、電気泳動法により検知する方法(RT-PCR法)などが知られている。しかしながら、PCRを利用する方法は、サーマルサイクラーのような複雑な温度制御装置が必要なことや簡便性に課題があるなどの不利点がある。またPCR法では、万が一誤って相補鎖合成が行われてしまった場合にはその生成物が鋳型となり増幅してしまい、誤った判定をしてしまう可能性がある。実際に、プライマーの末端の1塩基相違のみでは特異的な増幅を制御することは困難である。特異性を配列検知の際の特異性を挙げる方法としては、一般的にPCR法で増幅した目的遺伝子産物をDNAチップにより検知する手法が挙げられるが、PCRにて生成される産物が2本鎖であるため、プローブとハイブリダイゼーション反応させる場合に、相補鎖がプローブに対するコンペティターとなりハイブリ効率が低く検知感度が悪いのが問題である。本発明に従うと、このようなPCR法による問題も解決することが可能である。
【0104】
また、ターゲットを1本鎖にするために、相補鎖を分解する、または分離するといった従来の方法もあるが、これらの方法は、いずれも、酵素の使用、磁気ビーズの使用などによる高価格化、操作における煩雑性が問題である。このような問題も本発明により解決することが可能である。
【0105】
[例]
以下に、本発明による核酸検知方法について例を用いて具体的に説明する。
【0106】
今回検知方法の対象としたアルテリウイルスを構成するウイルス種では、ウイルスゲノム解析の結果non-glycosylated envelope protein、(membrane protein M、non-glycosylated envelope protein、unglycosylated membrane protein M)をコードする遺伝子配列」と「nucleocapsid protein、(nucleocapsid protein N、capsid protein)をコードする遺伝子配列」に跨る遺伝子配列の一部領域が、ウイルス種毎にユニークな配列を保持しながら高度に保存されていることを見出した。そこで、先ず、アルテリウイルスの代表列としてLDVを用い、前記遺伝子領域において検知に最適なプライマーおよび/またはプローブ設計遺伝子配列を検討(例1−例6)。選定されてきたPrimer/Probeを用いて様々な検体を検出した結果、望ましい検出特性(検出信号量および、検出特異性)が得られることを確認した。その後、他のアルテリウイルス(Equine arteritis virus、Porcine reproductive and respiratory syndrome virus、Simian hemorrhagic fever virus)についても、前記で「LDVを代表として選定した最適なPrimer/Probe設計」に対応する遺伝子配列領域にPrimer/Probeを設計。それぞれの核酸検知特性を確認し、望ましい検出特性が得られることを確認した。詳細を以下に記す。
【0107】
例1
<プライマーセットの選択>
LDV(Lactate dehydrogenase-elevating virus、アクセション番号 NC_001639, AB001875, AF092282, AF092283, U15146, L13298, L06811, M55296)配列からアライメントを作成し、変異のない、または変異頻度の少ない領域を選んでプライマーを設計した。LDVの一部をクローニングしたプラスミド(103copies/reaction)をテンプレートにして、以下の組成にて63℃90分Realoop−30(モリテックス社製)を用いてLAMP増幅を行った。プライマーの組み合わせと増幅結果(濁度立上がり時間)を合わせて表1に示す。濁度立上がり時間50分未満が3種得られた。50−90分で立ち上がるものも12種得られた。結果を表7に示す。
【表7】
【0108】
LAMP反応液組成(1×)
FIP 40 pmol
BIP 40 pmol
F3 5 pmol
B3 5 pmol
(Lfc/Lb 20 pmol)
2×Reaction Mixture 12.5 μl
8 U/μl Bst DNA polymerase 1μl
Template 1μl
Distilled Water Up to 25μl。
【0109】
Reaction Mixture(反応時濃度)
Tris-HCl (pH8.8) 20 mM
KCL 10 mM
MgSO4 8 mM
(NH4)SO4 10 mM
Tween-20 0.1 %
Betaine 0.8 M
dNTPs 1.4 mM each
<ループプライマーの選択>
50分以内で濁度が立上がった3種のプライマーセットに対し、定法に従ってループプライマーを設計して合成した。上述の反応組成に20pmolのループプライマーを追加して同様にLAMP増幅を行った。テンプレートは添加前に95℃5分処理したものを使用した。プライマーの組合せと増幅結果を合わせて表8に示す。この実験から各プライマーセットに対する良好なループプライマーを選択することができた。Fループ、Bループいずれかにループプライマーを用いれば、濁度立上がり時間20分程度の速い増幅系となることが示された。
【表8】
【0110】
例2
<変異株用プライマーの設計>
プライマーセット5-1について、プライマー領域にある変異箇所を調べたところ、F2領域およびB1領域に頻度の高い変異があることがわかった。そこで、これら変異株も良好に増幅できるよう、表6のプライマーを新たに追加して増幅を行った。対応するプライマーの混合量は等量とした。その結果、この混合プライマーは変異のない基準株、変異株のいずれも配列でも濁度立上がり時間30分未満で増幅可能であることが示された。
【0111】
例3
<RT-LAMP>
プライマーセット5-1および変異対応追加プライマーを混合したLAMP増幅液(例1記載の組成)に、0.625UのAMV transcriptase を添加し、実際のLDVウイルス(譲渡された基準株)のRT-LAMP(63℃60分)を行った。その結果、抽出検体の段階希釈液において良好な増幅であった。
【表A】
【0112】
例4
<プローブ配列設計>
前記プライマーセットにて増幅されたLAMP産物検出用プローブを選定するため、LAMP産物の1本鎖核酸領域にハイブリダイゼーションが可能な設計にて複数の候補配列を選定した。3’末端チオール修飾を持つ合成核酸として以下のような候補プローブを準備した。
【0113】
プローブ名 配列
候補Probe1 AGGAGCGGTTAACCTTTTGAAATATGTCTCAAAAT
候補Probe2 GCGGTTAACCTTTTGAAATATGTCTCAAAATAAGAAGAA
候補Probe3 TATGTCTCAAAATAAGAAGAAGGGCGGCCAGA
候補Probe4 TGCCCGTTCACAAGGGTACTACCTGGCTTCC
候補Probe5 TGCCCGTTTACAAGGGTACTACCTGGCTTCC。
【0114】
例5
<プローブ選定>
図6に示すような核酸プローブ固定化電極を作製した。基板12に配置された金電極13に対して、プローブ候補となる配列の合成核酸(3’末端がチオール修飾されている)をスポットすることにより配列毎に固定化した。また、同様にネガティブコントロールプローブもスポットした。その後、超純水で洗浄し、風乾し、電流検知型の核酸チップを作製した。作製した核酸チップを2×SSCの塩を添加したLAMP産物に浸漬し、35℃で60分間静置することによってハイブリダイゼーション反応を行った。LAMP産物は、標準株配列を持つプラスミドをテンプレートに増幅したものを用いた。更に、この電極を挿入剤であるヘキスト33258溶液を50μM含むリン酸緩衝液中に15分間浸漬した後、ヘキスト33258分子の酸化電流応答を測定した。電流測定の結果を表9に示す。電極に固定化したプローブは、領域中に存在する変異をあらかじめ考慮したものを複数用意した。30nA以上の増加量を示す最適なプローブ、20−30nAの増加量を示す良好なプローブが得られ、LDV検出用核酸チップに搭載するプローブ配列を選択することができた。
【表9】
【0115】
例6
検出対象である、LDVはRNAウイルスであることから、ゲノム配列には多様な変異(バリエーション)が存在する。そこで、公表されている全てのLDVゲノム配列情報を元に、例1−例5にて選定されてきた最適なプライマーおよびプローブ領域の変異発生状況を確認した。それぞれの変異に対応する鋳型配列を合成遺伝子により作成したと伴に、全パターンについて変異対応プライマーおよびプローブを準備した(表6−1、表6−2)。配列変異を含むウイルス配列検知を試みた。その結果、何れの組み合わせにおいてもプライマーおよびプローブ配列と検体がフルマッチであれば、30nA以上の電流増加量にて検出が可能であることを確認した(表6−3)。なお、近縁ウイルスであるEquine arteritis virus、Porcine reproductive and respiratory syndrome virus、Simian hemorrhagic fever virus等の配列を持つ鋳型核酸を検体として適用した場合では、何れのプライマー/プローブの組み合わせにおいても、優位な電流値増加(20nA以上)は認められなかった。
【0116】
以上の事から、LDVにおいては、例1−例5にて選定されたプライマーおよびプローオブ領域を用いることで、望ましい検出特性(即ち、検出信号量および、検出特異性)が得られること、必要に応じてプライマーおよび/またはプローブの配列を一部改変することにより、ウイルス配列変異に対して検出特性を損なうことなく対応可能であることが確認できた(表6−1〜表6−3を参照されたい)。
【0117】
図7にLDVのLAMP増幅産物を電気泳動した。レーン2〜5は、LDVのLAMP増幅産物である。レーン1および6はマーカー100bpラダーである(図7)。
【0118】
図8および9に電流検地型核酸チップによる検出例を示した。陰性の検体を使用した結果を図8に、LDV陽性検体を使用した結果を図9に示した(図8および9)
例7
他のアルテリウイルス(Equine arteritis virus DQ846750、Porcine reproductive and respiratory syndrome virus AY150312、Simian hemorrhagic fever virus NC_003092)についても、例1−例6で示された「LDVを代表として選定した最適なプライマーおよびプローブ設計」に対応する遺伝子領域を特定した。それぞれのウイルス種に対応したプライマーおよびプローブを構築した(表10)。LDVを含めたアルテリウイルスに対する検出特性を確認した。
【表10】
【0119】
その結果、構築したプローブおよびプライマーにて、アルテリウイルスに分類されるウイルス種を特異的かつ十分な信号量にて検知できることが確認できた(表11)。
【表11】
【0120】
例9
検出対象である、アルテリウイルスはRNAウイルスである事から、ゲノム配列には多様な変異(バリエーション)が存在する。そこで、例6同様、公表されている全てのEquine arteritis virus DQ846750、Porcine reproductive and respiratory syndrome virus のゲノム配列情報を基に、前記実施例にて選定されてきた最適プライマーおよびプローブ領域の変異発生状況を確認。それぞれの変異に対応する鋳型配列を合成遺伝子により作成したと伴に、全パターンについて変異対応プライマーおよびプローブを準備した(表12)。
【表12−1】
【0121】
【表12−2】
【0122】
配列変異を含むウイルス配列検知を試みた。その結果、何れの組み合わせにおいてもプライマーおよびプローブ配列と検体がフルマッチであれば、30nA以上の電流増加量にて検出が可能であることを確認した。代表的な検出結果例を図10〜12に示す。図10は陰性検体を用いた場合の結果であり、図11はEquine arteritis virus陽性検体を当てた場合の結果である(図10および図11)。また、図12は、Porcine reproductive and respiratory syndrome virus陽性検体を当てた場合の結果である(図12)。
【0123】
なお、変異対応を行なったプライマーおよびプローブを使用した場合であっても、表11に示したのと同様、近縁ウイルス間での交差反応による20nA以上の優位な電流値増加は全く認められなかった。この事は、配列の更に異なる他のウイルス属・ウイルス種や、他の微生物との交差反応を生じないことを示唆する。
【0124】
以上の事から、本発明にて選定されたプライマーおよびプローブ領域を用いることで、アルテリウイルスの検知ならびに種判別およびタイピングを望ましい検出特性(検出信号量および、検出特異性)にて行な得ることが示された。また必要に応じてプライマーおよびプローブの配列を一部改変する事で、アルテリウイルスを構成するウイルス種及びウイルス配列変異に対して、検出特性を損なうことなく対応可能である事が確認できた。
【符号の説明】
【0125】
1・・・プローブ、2・・・プローブ、3・・・プローブ、4・・・プローブ、5・・・プローブ、6・・・スライドガラス、10・・・基板、11・・・金電極、12・・・接続部、13・・・プローブ、14・・・プローブ、15・・・プローブ、16・・・プローブ、17・・・プローブ、18・・・核酸プローブ固定化電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルテリウイルス由来の核酸を特異的に増幅するためのLAMP増幅用核酸プライマーセットであって、前記LAMP増幅用核酸プライマーセットは、FIPプライマー、BIPプライマー、F3プライマー、B3プライマーを含み、
当該FIPプライマーが配列番号1、配列番号7、配列番号11、配列番号17、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号29、配列番号33、配列番号35、配列番号39、配列番号109、配列番号120、配列番号127、配列番号134および配列番号141並びにその相補配列によりそれぞれに示されるポリヌクレオチドからなる群より少なくとも1選択されるポリヌクレオチドまたはアルテリウイルス由来の核酸を特異的に増幅可能な範囲で変異を含む前記ポリヌクレオチドを含む、少なくとも1種類のFIPプライマーであり、
当該BIPプライマーが配列番号2、配列番号5、配列番号8、配列番号12、配列番号15、配列番号18、配列番号27、配列番号30、配列番号36、配列番号110、配列番号121、配列番号128、配列番号135および配列番号142並びにそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなる群より少なくとも1選択されるポリヌクレオチドまたはアルテリウイルス由来の核酸を特異的に増幅可能な範囲で変異を含む前記ポリヌクレオチドを含む、少なくとも1種類のBIPプライマーであり、
当該F3プライマーが配列番号3、配列番号9、配列番号13、配列番号19、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号31、配列番号34、配列番号37、配列番号40、配列番号111、配列番号119、配列番号126、配列番号133および配列番号140並びにそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなる群より少なくとも1選択されるポリヌクレオチドまたはアルテリウイルス由来の核酸を特異的に増幅可能な範囲で変異を含む前記ポリヌクレオチドを含む、少なくとも1種類のF3プライマーであり、および
当該B3プライマーが配列番号4、配列番号6、配列番号10、配列番号14、配列番号16、配列番号20、配列番号28、配列番号32、配列番号38、配列番号112、配列番号122、配列番号129、配列番号136および配列番号143並びにそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなる群より少なくとも1選択されるポリヌクレオチドまたはアルテリウイルス由来の核酸を特異的に増幅可能な範囲で変異を含む前記ポリヌクレオチドを含む、少なくとも1種類のB3プライマーである
プライマーセット。
【請求項2】
請求項1に記載のプライマーセットであって、
(1)それぞれ配列番号1、配列番号2、配列番号3および配列番号4で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(2)それぞれ配列番号1、配列番号5、配列番号3および配列番号6で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(3)それぞれ配列番号7、配列番号8、配列番号9および配列番号10で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(4)それぞれ配列番号11、配列番号12、配列番号13および配列番号14で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(5)それぞれ配列番号1、配列番号15、配列番号3および配列番号16で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(6)それぞれ配列番号17、配列番号18、配列番号19および配列番号20で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(7)それぞれ配列番号21、配列番号5、配列番号22および配列番号6で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(8)それぞれ配列番号21、配列番号18、配列番号22および配列番号20で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(9)それぞれ配列番号23、配列番号15、配列番号24および配列番号16で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(10)それぞれ配列番号25、配列番号8、配列番号26および配列番号10で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(11)それぞれ配列番号25、配列番号27、配列番号26および配列番号28で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(12)それぞれ配列番号29、配列番号30、配列番号31および配列番号32で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(13)それぞれ配列番号33、配列番号30、配列番号34および配列番号32で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(14)それぞれ配列番号35、配列番号36、配列番号37および配列番号38で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(15)それぞれ配列番号39、配列番号27、配列番号40および配列番号28で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(16)それぞれ配列番号109、配列番号110、配列番号111および配列番号112で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(17)それぞれ配列番号120、配列番号121、配列番号119および配列番号122で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(18)それぞれ配列番号127、配列番号128、配列番号126および配列番号129で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(19)それぞれ配列番号134、配列番号135、配列番号133および配列番号136で示されるポリヌクレオチドを含むプライマー、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマー;
(20)それぞれ配列番号141、配列番号142、配列番号140および配列番号143で示されるポリヌクレオチドを含むプライマー、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマー。
【請求項3】
請求項1または2に記載のプライマーセットであって、更に、ループプライマーがLPfおよび/またはLPbを含み、前記LPfが、配列番号70、配列番号72、配列番号73、配列番号74、配列番号94、配列番号113、配列番号123、配列番号130、配列番号137、配列番号144およびその相補配列並びにアルテリウイルス由来の核酸を特異的に増幅可能な範囲で変異を含む前記ポリヌクレオチドからなる群より少なくとも1選択されるポリヌクレオチドを含むプライマーであり、前記LPbが、LPbは、配列番号19、配列番号71、配列番号73、配列番号75および配列番号76並びにその相補配列並びにその相補配列により示されるポリヌクレオチドまたはアルテリウイルス由来の核酸を特異的に増幅可能な範囲で変異を含む前記ポリヌクレオチドからなる群より少なくとも1選択されるポリヌクレオチドを含むプライマーであるプライマーセット。
【請求項4】
アルテリウイルスの検出するためのアッセイキットであって、
請求項1〜3の何れか1項に記載のプライマーセットと、
前記プライマーセットを用いて得られた増幅産物からアルテリウイルスを特異的に検出するためのプローブであり、それぞれ配列番号81、配列番号82、配列番号83、配列番号84、配列番号85、配列番号95、配列番号96、配列番号97、配列番号98、配列番号99、配列番号114、配列番号115、配列番号116、配列番号117、配列番号118、配列番号124、配列番号125、配列番号131、配列番号132、配列番号138、配列番号139、配列番号145および配列番号146並びにその相補配列で示されるポリヌクレオチドを含むプローブからなる群より少なくとも1選択されたプローブと、
を含むことを特徴とするアッセイキット。
【請求項5】
アルテリウイルスに由来する核酸を特異的に増幅する方法であって、試料に含まれる核酸を請求項1〜3の何れか1項に記載のプライマーセットを用いて試料をLAMP増幅することを具備する方法。
【請求項6】
試料に含まれる核酸を請求項1〜3の何れか1項に記載のプライマーセットを用いてLAMP増幅すること、および
前記LAMP増幅により生じた増幅産物の有無に基づいて、前記試料中のアルテリウイルスの存在の有無を判定すること
を具備するアルテリウイルスを検出する方法。
【請求項7】
前記試料中のアルテリウイルスの存在の有無の判定が、前記LAMP増幅により生じた反応産物と、それぞれ配列番号81、配列番号82、配列番号83、配列番号84、配列番号85、配列番号95、配列番号96、配列番号97、配列番号98、配列番号99、配列番号114、配列番号115、配列番号116、配列番号117、配列番号118、配列番号124、配列番号125、配列番号131、配列番号132、配列番号138、配列番号139、配列番号145および配列番号146並びにその相補配列で示されるポリヌクレオチドを含むプローブからなる群より少なくとも1選択されたプローブとを反応し、前記反応の結果を基に判定される請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記プローブ群が基体に固定されている請求項7の方法。
【請求項1】
アルテリウイルス由来の核酸を特異的に増幅するためのLAMP増幅用核酸プライマーセットであって、前記LAMP増幅用核酸プライマーセットは、FIPプライマー、BIPプライマー、F3プライマー、B3プライマーを含み、
当該FIPプライマーが配列番号1、配列番号7、配列番号11、配列番号17、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号29、配列番号33、配列番号35、配列番号39、配列番号109、配列番号120、配列番号127、配列番号134および配列番号141並びにその相補配列によりそれぞれに示されるポリヌクレオチドからなる群より少なくとも1選択されるポリヌクレオチドまたはアルテリウイルス由来の核酸を特異的に増幅可能な範囲で変異を含む前記ポリヌクレオチドを含む、少なくとも1種類のFIPプライマーであり、
当該BIPプライマーが配列番号2、配列番号5、配列番号8、配列番号12、配列番号15、配列番号18、配列番号27、配列番号30、配列番号36、配列番号110、配列番号121、配列番号128、配列番号135および配列番号142並びにそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなる群より少なくとも1選択されるポリヌクレオチドまたはアルテリウイルス由来の核酸を特異的に増幅可能な範囲で変異を含む前記ポリヌクレオチドを含む、少なくとも1種類のBIPプライマーであり、
当該F3プライマーが配列番号3、配列番号9、配列番号13、配列番号19、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号31、配列番号34、配列番号37、配列番号40、配列番号111、配列番号119、配列番号126、配列番号133および配列番号140並びにそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなる群より少なくとも1選択されるポリヌクレオチドまたはアルテリウイルス由来の核酸を特異的に増幅可能な範囲で変異を含む前記ポリヌクレオチドを含む、少なくとも1種類のF3プライマーであり、および
当該B3プライマーが配列番号4、配列番号6、配列番号10、配列番号14、配列番号16、配列番号20、配列番号28、配列番号32、配列番号38、配列番号112、配列番号122、配列番号129、配列番号136および配列番号143並びにそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなる群より少なくとも1選択されるポリヌクレオチドまたはアルテリウイルス由来の核酸を特異的に増幅可能な範囲で変異を含む前記ポリヌクレオチドを含む、少なくとも1種類のB3プライマーである
プライマーセット。
【請求項2】
請求項1に記載のプライマーセットであって、
(1)それぞれ配列番号1、配列番号2、配列番号3および配列番号4で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(2)それぞれ配列番号1、配列番号5、配列番号3および配列番号6で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(3)それぞれ配列番号7、配列番号8、配列番号9および配列番号10で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(4)それぞれ配列番号11、配列番号12、配列番号13および配列番号14で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(5)それぞれ配列番号1、配列番号15、配列番号3および配列番号16で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(6)それぞれ配列番号17、配列番号18、配列番号19および配列番号20で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(7)それぞれ配列番号21、配列番号5、配列番号22および配列番号6で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(8)それぞれ配列番号21、配列番号18、配列番号22および配列番号20で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(9)それぞれ配列番号23、配列番号15、配列番号24および配列番号16で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(10)それぞれ配列番号25、配列番号8、配列番号26および配列番号10で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(11)それぞれ配列番号25、配列番号27、配列番号26および配列番号28で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(12)それぞれ配列番号29、配列番号30、配列番号31および配列番号32で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(13)それぞれ配列番号33、配列番号30、配列番号34および配列番号32で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(14)それぞれ配列番号35、配列番号36、配列番号37および配列番号38で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(15)それぞれ配列番号39、配列番号27、配列番号40および配列番号28で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(16)それぞれ配列番号109、配列番号110、配列番号111および配列番号112で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(17)それぞれ配列番号120、配列番号121、配列番号119および配列番号122で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(18)それぞれ配列番号127、配列番号128、配列番号126および配列番号129で示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマーセット;
(19)それぞれ配列番号134、配列番号135、配列番号133および配列番号136で示されるポリヌクレオチドを含むプライマー、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマー;
(20)それぞれ配列番号141、配列番号142、配列番号140および配列番号143で示されるポリヌクレオチドを含むプライマー、またはそれらの少なくとも1の配列がその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含むプライマー。
【請求項3】
請求項1または2に記載のプライマーセットであって、更に、ループプライマーがLPfおよび/またはLPbを含み、前記LPfが、配列番号70、配列番号72、配列番号73、配列番号74、配列番号94、配列番号113、配列番号123、配列番号130、配列番号137、配列番号144およびその相補配列並びにアルテリウイルス由来の核酸を特異的に増幅可能な範囲で変異を含む前記ポリヌクレオチドからなる群より少なくとも1選択されるポリヌクレオチドを含むプライマーであり、前記LPbが、LPbは、配列番号19、配列番号71、配列番号73、配列番号75および配列番号76並びにその相補配列並びにその相補配列により示されるポリヌクレオチドまたはアルテリウイルス由来の核酸を特異的に増幅可能な範囲で変異を含む前記ポリヌクレオチドからなる群より少なくとも1選択されるポリヌクレオチドを含むプライマーであるプライマーセット。
【請求項4】
アルテリウイルスの検出するためのアッセイキットであって、
請求項1〜3の何れか1項に記載のプライマーセットと、
前記プライマーセットを用いて得られた増幅産物からアルテリウイルスを特異的に検出するためのプローブであり、それぞれ配列番号81、配列番号82、配列番号83、配列番号84、配列番号85、配列番号95、配列番号96、配列番号97、配列番号98、配列番号99、配列番号114、配列番号115、配列番号116、配列番号117、配列番号118、配列番号124、配列番号125、配列番号131、配列番号132、配列番号138、配列番号139、配列番号145および配列番号146並びにその相補配列で示されるポリヌクレオチドを含むプローブからなる群より少なくとも1選択されたプローブと、
を含むことを特徴とするアッセイキット。
【請求項5】
アルテリウイルスに由来する核酸を特異的に増幅する方法であって、試料に含まれる核酸を請求項1〜3の何れか1項に記載のプライマーセットを用いて試料をLAMP増幅することを具備する方法。
【請求項6】
試料に含まれる核酸を請求項1〜3の何れか1項に記載のプライマーセットを用いてLAMP増幅すること、および
前記LAMP増幅により生じた増幅産物の有無に基づいて、前記試料中のアルテリウイルスの存在の有無を判定すること
を具備するアルテリウイルスを検出する方法。
【請求項7】
前記試料中のアルテリウイルスの存在の有無の判定が、前記LAMP増幅により生じた反応産物と、それぞれ配列番号81、配列番号82、配列番号83、配列番号84、配列番号85、配列番号95、配列番号96、配列番号97、配列番号98、配列番号99、配列番号114、配列番号115、配列番号116、配列番号117、配列番号118、配列番号124、配列番号125、配列番号131、配列番号132、配列番号138、配列番号139、配列番号145および配列番号146並びにその相補配列で示されるポリヌクレオチドを含むプローブからなる群より少なくとも1選択されたプローブとを反応し、前記反応の結果を基に判定される請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記プローブ群が基体に固定されている請求項7の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−24040(P2012−24040A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−167492(P2010−167492)
【出願日】平成22年7月26日(2010.7.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(390016470)公益財団法人実験動物中央研究所 (12)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月26日(2010.7.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(390016470)公益財団法人実験動物中央研究所 (12)
【Fターム(参考)】
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