説明

アルデヒドピリジン類水溶液の安定化方法

【課題】アルデヒドピリジン類水溶液中のアルデヒドピリジン類の分解を抑制し、アルデヒドピリジン類水溶液を安定化する方法を提供すること。
【解決手段】アルデヒドピリジン類を水に溶解させて得られるアルデヒドピリジン類水溶液に酸を添加するか又はアルデヒドピリジン類を酸水溶液に溶解させて、通常pH3以下、好ましくはpH2以下にアルデヒドピリジン類水溶液を調整することを特徴とするアルデヒドピリジン類水溶液の安定化方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルデヒドピリジン類水溶液の安定化方法に関する。アルデヒドピリジン類は、医薬や農薬の中間体などとして有用な化合物である。
【背景技術】
【0002】
従来、アルデヒドピリジン類水溶液としては、例えばアルキル置換ピリジン類と分子状酸素とを気相接触反応せしめ、得られるアルデヒドピリジン類を主成分とする反応ガスを、水に溶解させて捕集して得られるものが挙げられる(例えば、特許文献1参照)。得られたアルデヒドピリジン類水溶液は、アルデヒドピリジン類が比較的短時間で分解するため、安定化する方法が要望されている。
【特許文献1】特開平11−35561号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、アルデヒドピリジン類の分解を抑制し、アルデヒドピリジン類水溶液を安定化する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を行ったところ、アルデヒドピリジン類水溶液を酸性とすることで、水溶液中のアルデヒドピリジン類の分解が抑制されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0005】
即ち、本発明は、アルデヒドピリジン類水溶液のpHを3以下に調整することを特徴とするアルデヒドピリジン類水溶液の安定化方法に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、アルデヒドピリジン類の分解を抑制し、アルデヒドピリジン類水溶液を安定化することが出来るため、本発明方法は工業的価値大なるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明におけるアルデヒドピリジン類としては、例えば、2−アルデヒドピリジン又は4−アルデヒドピリジン等のモノアルデヒドピリジン類、2,6−ジアルデヒドピリジン又は2,4−ジアルデヒドピリジン等のジアルデヒドピリジン類或いは2,4,6−トリアルデヒドピリジン等のトリアルデヒドピリジン類等が挙げられるが、特にこれらに限定されない。
【0008】
かかるアルデヒドピリジン類の製造法は特に限定されないが、例えば、特許文献1に記載の方法等で得られる。具体的には、バナジウム、リン及びアルミニウムを含有する酸化物を触媒として、アルキル置換ピリジン類と分子状酸素とを気相接触反応せしめてアルデヒドピリジン類を製造する方法である。
【0009】
アルキル置換ピリジン類としては、少なくとも一つのアルキル基を置換基として有するピリジンであり、アルキル基としてはメチル基、エチル基又はプロピル基等が挙げられる。アルキル置換ピリジン類の具体例としては、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、2−エチルピリジン、3−エチルピリジン、4−エチルピリジン、2,3−ジメチルピリジン、2,4−ジメチルピリジン、2,5−ジメチルピリジン、2,6−ジメチルピリジン、3,4−ジメチルピリジン、3,5−ジメチルピリジン、2−メチル−5−エチルピリジン、2,3,5−トリメチルピリジン又は2,4,6−トリメチルピリジン等が挙げられる。
【0010】
分子状酸素としては通常空気が用いられるが、純酸素又は純酸素と空気の混合物を用いてもよい。
【0011】
本発明のアルデヒドピリジン類水溶液は、例えば反応混合物等の未精製のアルデヒドピリジン類の水溶液でもよいし、精製されたアルデヒドピリジン類の水溶液でもよい。アルデヒドピリジン類水溶液のアルデヒドピリジン類濃度は、通常1重量%〜40重量%、好ましくは1.5重量%〜25重量%である。
【0012】
本発明の安定化方法は、アルデヒドピリジン類を水に溶解させて得られるアルデヒドピリジン類水溶液に酸を添加するか又はアルデヒドピリジン類を酸水溶液に溶解させて、通常pH3以下、好ましくはpH2以下にアルデヒドピリジン類水溶液を調整することで実施される。かかる調整時の温度は、通常0〜70℃、好ましくは0〜40℃である。このようにすれば、アルデヒドピリジン類の分解が抑制され、アルデヒドピリジン水溶液を安定に保存できる。
【0013】
用いる酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸又は過塩素酸等の無機酸或いは酢酸、プロピオン酸又はメチルスルホン酸等の有機酸が挙げられ、好ましくは無機酸であり、特に好ましくは塩酸又は硫酸である。かかる酸は通常水溶液で用いられ、単独で用いてもよいし、二種類以上を混合して用いてもよい。
【実施例】
【0014】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれによりなんら限定されるものではない。尚、アルデヒドピリジン類の含有量は液体クロマトグラフィーで測定し、収率および残存率を以下の定義に従って計算した。また、安定性試験は得られたアルデヒドピリジン類水溶液を、窒素雰囲気下、40℃で1時間攪拌して実施した。
【0015】
収率(%)=
反応により生成したアルデヒドピリジン類(モル)×100
供給したアルキル置換ピリジン類(モル)
【0016】
残存率(%)=
安定性試験後に残存しているアルデヒドピリジン類(モル)×100
反応により生成したアルデヒドピリジン類(モル)
【0017】
製造例1
縦型石英製反応管(内径26mm、長さ500mm)にバナジウム、リン及びアルミニウムを含有する酸化物300mlを充填した。環状電気炉により反応管の外部から触媒充填部が370〜410℃に保持されるように調節した。反応管頂部から4−メチルピリジン、水と空気及び窒素からなる混合ガス[4−メチルピリジン/水/空気/窒素(モル比)=1/20/4/15]を供給して、これらの混合ガスを前記触媒上に導いて、4−アルデヒドピリジンを主成分とする反応混合物を得た。なお4−メチルピリジンの液空間速度(LHSV)を0.14/時間となるように調整した。
【0018】
実施例1
製造例1で得られた反応混合物を40℃、30分かけて4.7%硫酸水溶液220gに溶解させ、pH1.9の4−アルデヒドピリジン水溶液を得た(収率41%)。得られた4−アルデヒドピリジン水溶液の安定性試験の結果、水溶液中の4−アルデヒドピリジンの残存率は99.1%であった。
【0019】
比較例1
実施例1の4.7%硫酸水溶液の代わりにイオン交換水を用いた以外は実施例1と同様にして行い、pH6.6の4−アルデヒドピリジン水溶液を得た(収率23%)。得られた4−アルデヒドピリジン水溶液の安定性試験の結果、水溶液中の4−アルデヒドピリジンの残存率は0%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルデヒドピリジン類水溶液のpHを3以下に調整することを特徴とするアルデヒドピリジン類水溶液の安定化方法。
【請求項2】
pHが2以下であることを特徴とする請求項1に記載の安定化方法。
【請求項3】
アルデヒドピリジン類水溶液が、アルキル置換ピリジン類を分子状酸素と気相接触反応せしめ、次いでその反応ガスを酸水溶液に溶解してなるものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の安定化方法。

【公開番号】特開2006−151863(P2006−151863A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−343812(P2004−343812)
【出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【出願人】(000167646)広栄化学工業株式会社 (114)
【Fターム(参考)】