説明

アルデヒド消臭性組成物

【課題】アルデヒドに対し高性能な消臭性を示し、また、安全性が高いアルデヒド消臭性組成物を提供する。
【解決手段】アンモニウム塩及び尿素を含むアルデヒド消臭性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車、建材等に用いられるアルデヒド消臭性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維、壁紙、接着剤、ウレタンフォーム、塗料又は合板等の自動車・建築材料の各分野では、シックハウス症候群の原因物質を消臭することが要求されている。例えば、特許文献1−3には、シックハウス症候群の原因物質の1つであるホルムアルデヒド用消臭剤が開示されている。
【0003】
ところで、シックハウス症候群の原因物質としては、他にアセトアルデヒド等もあり、アセトアルデヒドの消臭ニーズも高い。しかしながら、上記文献の消臭剤では、安全性に懸念があったり、アセトアルデヒドに対する消臭性が充分でない等の問題があった。
【特許文献1】特開平11−46965号公報
【特許文献2】特開平11−59744号公報
【特許文献3】特開平11−128329号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ホルムアルデヒド及び従来安全性の高い消臭剤では、極めて困難とされたアセトアルデヒドについても高性能な消臭性を示す消臭性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、以下のアルデヒド消臭性組成物が提供される。
1.アンモニウム塩及び尿素を含むアルデヒド消臭性組成物。
2.組成物全体を100質量部としたときに、前記アンモニウム塩の配合量が1〜43質量部であり、前記尿素の配合量が1〜33質量部である1記載のアルデヒド消臭性組成物。
3.前記アンモニウム塩が、りん酸1アンモニウム、りん酸2アンモニウム及び硫酸アンモニウムから選ばれる少なくとも1つである1又は2記載のアルデヒド消臭性組成物。
4.組成物全体を100質量部としたときに、水を45〜97質量部、及びバインダー樹脂を0〜15質量部含む1〜3のいずれかに記載のアルデヒド消臭性組成物。
5.4記載のアルデヒド消臭性組成物を乾燥して得られるアルデヒド消臭性硬化物。
6.1〜3のいずれかに記載のアルデヒド消臭性組成物を配合してなる石膏ボード。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ホルムアルデヒドに対してはもちろんのことアセトアルデヒドに対しても高い消臭性を示し、また、安全性の高いアルデヒド消臭性組成物を提供できる。
また、本発明のアルデヒド消臭性組成物の成分であるアンモニウム塩と尿素は、共に良水溶性であり安全性が高いため、本発明のアルデヒド消臭性組成物は取り扱いが極めて容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のアルデヒド消臭性組成物は、アンモニウム塩及び尿素を含むことを特徴とする。
アンモニウム塩としては、無機酸又は有機酸のアンモニウム塩が使用可能である。
無機酸のアンモニウム塩としては、りん酸1アンモニウム、りん酸2アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム、塩化アンモニウム、亜硫酸アンモニウム、重亜硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、フッ化アンモニウム、硫化アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム等が挙げられる。
【0008】
有機酸のアンモニウム塩としては、酢酸アンモニウム、蟻酸アンモニウム、プロピオン酸アンモニウム、シュウ酸アンモニウム、アクリル酸アンモニウム、ステアリン酸アンモニウム、アジピン酸アンモニウム、安息香酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム等が使用できる。
【0009】
本発明においては、無機酸のアンモニウム塩が、価格、水溶解性等から好適に使用される。そのなかでも、硫酸アンモニウム、りん酸1アンモニウム又はりん酸2アンモニウムが、水への溶解性や乾燥時の熱安定性から特に望ましく使用できる。
【0010】
尿素については、市販されている尿素が使用可能であるが、使用の際、水に溶解する場合は、顆粒又は粉末が好ましい。
【0011】
本発明のアルデヒド消臭性組成物は、組成物全体を100質量部としたときに、アンモニウム塩の配合量が1〜43質量部であり、尿素の配合量が1〜33質量部であることが好ましい。1質量部以下では、消臭性付与充分でないおそれがあり、またアンモニウム塩42質量部、尿素28質量部以上では、水に対し溶解性が低下し、塗工性が悪くなるおそれがある。
アンモニウム塩及び尿素の配合量は、特に、アンモニウム塩が3〜30質量部、尿素が3〜25質量部であることが好ましい。
【0012】
尚、本発明の組成物を構成する他の材料としては、例えば、水、バインダー樹脂、界面活性剤、増粘剤、発泡剤、消泡剤、分散剤等、用途に合わせて適宜使用することができる。
また、本発明の組成物には、他の吸着成分や消臭成分、例えば、多孔質シリカ、活性炭、ゼオライト、活性白土、シリカゲル、アルミナ、モンモリオナイト、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄等の無機物質、及び有機珪素アミン、芳香族アミン、ヒドラジン誘導体等のアミン化合物を添加することができる。
【0013】
以下、本発明の組成物を表面処理剤として使用する例について説明する。
表面処理剤用途では、上述したアンモニウム塩及び尿素に加え、水及びバインダー樹脂を配合する。バインダー樹脂は、例えば、水エマルジョンの形で使用される。
バインダー樹脂としては、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂又はこれらの共重合体等が使用できる。特に、メチロール基を有するアクリル樹脂又はその共重合体が好適に使用される。
【0014】
表面処理剤において、各成分の配合は組成物全体を100質量部としたときに、アンモニウム塩が1〜43質量部、尿素が1〜33質量部、バインダー樹脂が0〜15質量部及び水45〜97が質量部であることが好ましい。
特に好ましくは、アンモニウム塩が3〜30質量部、尿素が3〜25質量部、バインダー樹脂が0〜15質量部及び水が55〜92質量部である。
尚、バインダー樹脂が1質量部未満では、被塗布物への固着性が充分でないおそれがある。一方、バインダー樹脂が15質量部より多いと、材料硬度が高くなったり、外観が低下するおそれがある。
【0015】
表面処理剤は、被塗布物に各種コーティング法により塗布できる。コーティング方法は、ディッピング法、グラビアコーティング法、ナイフコーティング法、エアーフロスト法、スプレー加工等、公知の加工法が採用できる。
尚、要求される表面処理剤の粘度は加工法により異なるが、アクリル系又はセルロース系増粘剤を使用して適宜調整することが可能である。
表面処理剤を塗布後、乾燥させることにより、被塗布物の表面に本発明の組成物からなる消臭性膜(硬化物)を形成し、消臭性製品とすることができる。
【0016】
この表面処理剤の使用量は、被塗布物の要求特性にもよるが、好ましくは、被塗布物に対し乾燥質量で1〜20g/m、特に好ましくは、2〜15g/mとすることが望ましい。
表面処理剤(水エマルジョン)は、例えば、繊維、不織布、壁紙、接着剤、ウレタンフォーム、塗料製品、合板製品及びボード製品等の表面に塗布することにより、被塗布物にアルデヒドの消臭性を付与し消臭性製品とすることができる。これにより、外部環境の空気を消臭できる。特に、繊維、不織布、壁紙又はウレタンフォームの表面処理剤として好適に使用できる。
また、アルデヒドの発生源に本発明の組成物を塗布することでアルデヒドの発生量を低減できる。
【0017】
尚、本発明の組成物は、石膏ボード、壁紙、接着剤、ウレタンフォーム、又は塗料等を構成する材料に混合することにより、これらからのアルデヒドの発生を抑制すると共に消臭性を付与できる。即ち、消臭性製品を作製できる。この場合、各製品の乾燥質量100質量部に対し、アンモニウム塩の配合量を。0.5〜20質量部、尿素の配合量を0.5〜20質量部とすることが好ましい。これらの配合量が0.5質量%未満では、消臭効果が充分でないおそれがあり、一方、20質量%を越えると、基材としての物性が低下するおそれがある。
特に、硫酸アンモニウム及び尿素を含む組成物を配合した石膏ボードがホルムアルデヒド消臭性、硬化速度に優れ好ましい。
【0018】
また、本発明の消臭剤は、接着剤配合用ホルムアルデヒド消臭性組成物として特に有用である。例えば、パーティクルボード用の接着剤に使用できる。接着剤の具体例としては、メラミン系樹脂接着剤、尿素系樹脂接着剤等が挙げられる。
【実施例】
【0019】
実施例1
(1)消臭性組成物の調製
リン酸2アンモニウム(関東化学製、鹿1級)10質量%、尿素(関東化学製、鹿1級)10質量%、アクリル酸アルキル共重合体水性エマルジョン(ガンツ化成製、50wt%水エマルジョン)10質量%、及び水70質量%を混合して消臭性組成物を作製した。
【0020】
(2)消臭性組成物のコーティング
ポリエステル製の不織布(50g/m目付け)に、上記で調製した消臭性組成物を簡易スプレーにて塗工した。その後、120℃で4分間乾燥して、消臭ポリエステル不織布を得た。
この消臭不織布には、消臭性組成物が乾燥質量で7.5g/mコーティングされていた。
【0021】
(3)消臭性組成物の評価
上記の消臭不織布について、ホルムアルデヒド及びアセトアルデヒドの消臭能力を評価した。
具体的に、2.5Lの三角フラスコにホルムアルデヒド又はアセトアルデヒドの水溶液(5%濃度)を5μL充填し、1時間放置して三角フラスコ内のガス濃度を調整した。フラスコ内の初期濃度は、ホルムアルデヒドが32ppm、アセトアルデヒドが24ppmであった。
このフラスコに、10cm角に切断した上記の消臭不織布を密封し2時間放置した。2時間後にフラスコ内のホルムアルデヒド又はアセトアルデヒドのガス濃度をガステック社製の検知管にて測定した。結果を表1に示す。
【0022】
【表1】

【0023】
実施例2〜7 比較例1〜5
消臭性組成物の配合を表1の割合とした他は、実施例1と同様にして消臭不織布を作製し、評価した。尚、比較例5では、消臭性組成物をコーティングしていない不織布の消臭性を評価した。結果を表1に示す。
【0024】
実施例8
石膏ボード試験製造装置にて、石膏100質量部に対して、硫酸アンモニウム20質量%、尿素20質量%及び水60質量%からなる組成物を2.5質量部を配合し、厚さ12.5mm、比重0.7の石膏ボードを製造した。石膏硬化時間は20分であった。この石膏ボードを10cm角に切断した。
5Lの密閉容器中に5%ホルムアルデヒド水溶液を5μL導入し、1時間後、ホルムアルデヒド初期濃度をガステック社製検知管で測定したところ、15ppmであった。その後切断した石膏ボードを密閉容器にいれ2時間後のホルムアルデヒド濃度を測定したところ2ppmであった。
【0025】
実施例9
石膏ボード試験製造装置にて、石膏100質量部に対して、硫酸アンモニウム20質量%、尿素20質量%及び水60質量%からなる組成物を1質量部を配合して石膏ボードを製造した他は、実施例8と同様に消臭性試験を実施した。石膏硬化時間は24分、石膏ボードを密閉容器にいれた後2時間後のホルムアルデヒド濃度は4ppmであった。
【0026】
比較例6
石膏ボード試験製造装置にて石膏に対して消臭性組成物を配合せずに石膏ボードを製造した他は、実施例8と同様に消臭性試験を実施した。石膏硬化時間は38分、石膏ボードを密閉容器にいれた後2時間後のホルムアルデヒド濃度は10ppmであった。
【0027】
実施例10
石膏ボード試験製造装置にて、石膏100質量部に対して、りん酸2アンモニウム20質量%、尿素20質量%及び水60質量%からなる組成物を2.5質量部配合した他は、実施例8と同様に消臭性試験を実施した。石膏硬化時間は80分、石膏ボードを密閉容器にいれた後2時間後のホルムアルデヒド濃度は3ppmであった。
【0028】
【表2】

【0029】
表2に示すように、硫酸アンモニウム/尿素組成物が石膏硬化速度、ホルムアルデヒド消臭性の2点から特に優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明のアルデヒド消臭性組成物は、繊維、不織布、壁紙、石膏ボード、接着剤、ウレタンフォーム、塗料製品等の消臭剤として使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニウム塩及び尿素を含むアルデヒド消臭性組成物。
【請求項2】
組成物全体を100質量部としたときに、前記アンモニウム塩の配合量が1〜43質量部であり、前記尿素の配合量が1〜33質量部である請求項1記載のアルデヒド消臭性組成物。
【請求項3】
前記アンモニウム塩が、りん酸1アンモニウム、りん酸2アンモニウム及び硫酸アンモニウムから選ばれる少なくとも1つである請求項1又は2記載のアルデヒド消臭性組成物。
【請求項4】
組成物全体を100質量部としたときに、水を45〜97質量部、及びバインダー樹脂を0〜15質量部含む請求項1〜3のいずれかに記載のアルデヒド消臭性組成物。
【請求項5】
請求項4記載のアルデヒド消臭性組成物を乾燥して得られるアルデヒド消臭性硬化物。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれかに記載のアルデヒド消臭性組成物を配合してなる石膏ボード。

【公開番号】特開2007−313300(P2007−313300A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−108288(P2007−108288)
【出願日】平成19年4月17日(2007.4.17)
【出願人】(500242384)出光テクノファイン株式会社 (55)
【Fターム(参考)】