説明

アルデヒド系消毒剤の有効濃度判定用固形剤型インディケータ

【課題】 従来のアルデヒド系消毒剤の有効濃度判定用インディケータは、試験紙型においては反応原理の如何に関係なく色調が不明瞭で、且つ、色調の維持時間が極端に短いことであり、またアミノ酸を用いた固形剤型においても色調の維持時間が極端に短く、しかも使い方によっては色調に差異が生じることであり、更に、pH指示薬を用いた固形剤型においては安定性や使用時の簡便性に問題を有していたことである。
【解決手段】 亜硫酸塩化合物、有機酸、及びpH指示薬を必須成分として含有すると共に、亜硫酸塩化合物の湿気による酸化・固結の防止剤としてケイ酸塩化合物を含有し、粉末状、或いは固形状(粒状、及び錠剤)としたことを基本とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療機関などにおいて、医療器具の化学的滅菌消毒剤として広く使用されているアルデヒド系消毒剤(グルタラール、またはフタラール)の有効濃度を、簡単、且つ正確に判定することを目的とする固形剤型インディケータに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、医療器具の化学的滅菌消毒剤として医療機関などにおいて広く使用されているアルデヒド系消毒剤(グルタラール、またはフタラール)は、医療器具に付着した汚れなどによる失活や、医療器具の水洗工程後に残存する洗浄水による希釈によって、適正なアルデヒド濃度の維持が困難となり、アルデヒド濃度の低下、即ち、アルデヒド系消毒剤の有効性の低下が知られている。
このため、アルデヒド系消毒剤を現実に使用している医療現場においては、化学的滅菌消毒剤としてのアルデヒド系消毒剤の有効性を常に維持し、医療の安全性を保証するための指標として、アルデヒド濃度を簡単、且つ、正確に判定できることが従来から強く要望されていたのである。
【0003】
そこで従来では、例えば、アルデヒド化合物とアミノ酸との呈色反応(黄色を呈す)の速度を、アルデヒド化合物と亜硫酸塩化合物との反応(アルデヒド化合物のアルコールへの還元反応)により時間的に制御し、予め厳密に設定した判定時間において、アルデヒド系消毒剤が有効濃度未満であれば呈色せず、有効濃度の範囲であれば呈色するようにした技術(例えば特許文献1参照)が広く知られており、この技術を応用してアルデヒド系消毒剤の色調の変化を試験紙に表示させる方式の試験紙型インディケータが、医療現場などで多く使用されている。
【0004】
しかしながら、従来の色調変化を試験紙に表示させる方式の試験紙型インディケータは、医療現場などでアルデヒド濃度を判定する際の簡便性については優れているといえるが、アルデヒド系消毒剤のアルデヒド濃度が有効濃度の範囲にある場合の色調と、有効濃度未満の場合の色調との差が、黄色の濃淡差という不明瞭な表示であるため、アルデヒド系消毒剤の有効性についての正確な判定ができなかったのである。
【0005】
そこで、従来の試験紙型インディケータの不都合を解消するために、本発明者らは先に、アルデヒド化合物とアミノ酸との呈色反応技術を改良した固形剤型[粉末状、或いは固形状(粒状、及び錠剤)]のインディケータ(例えば特許文献2参照)を提案し、呈色反応に直接関与しない青色色素をアルデヒド化合物、及びアミノ酸と共存させ、従来の試験紙型インディケータにおける黄色の濃淡差という不明瞭な表示の方式を、青色から緑色へ変化する色調差の表示方式に変更することで、試験紙型インディケータに比べてより鮮明に色調変化を表示するようにしたのである。
【0006】
ところで、本発明者らが先に提案した固形剤型インディケータにおいては、アルデヒド濃度を判定するに当って一定量のアルデヒド系消毒剤液を栓付試験管に採取し、そこに固形剤型インディケータを入れて閉栓し、固形剤型インディケータを十分に溶解させることを要するのであるが、その際、栓付試験管の振り混ぜ方の強弱や、振り混ぜ時間の長短によっては呈色反応時間が変化することがあり、所定の判定時間における色調に差異を生じる欠点を有していた。
【0007】
更に、アルデヒド化合物とアミノ酸との呈色反応技術を応用した従来の試験紙型インディケータ、固形剤型インディケータの双方に共通する欠点としては、アルデヒド系消毒剤のアルデヒド濃度に反応して呈色した色調を、その色調のまま維持できる時間が極めて短時間なことである。これはアルデヒド化合物とアミノ酸との呈色反応の速度を、時間的に制御するために添加している亜硫酸塩化合物の効果の持続時間が極端に短いことから、アルデヒド濃度が低い場合でも時間経過とともに呈色するためである。
【0008】
従って、アルデヒド濃度を判定するに当っては、各インディケータについて予め厳密に定められた所定の判定時間を厳守しなければならず、判定時間を超えた場合には呈色した色調が余分に進行して変化し、判定結果を誤らせるおそれがあった。また、判定時間を厳守しなければならないことは、多忙な医療現場などに時間的制約を課すことになり、アルデヒド系消毒剤を使用するに当っての至便性を改善させる余地を有していた。
【0009】
また、その他の反応原理としては、例えば、アルデヒド化合物と亜硫酸塩化合物との反応により、アルデヒド化合物の濃度に応じてpHが変化することを応用し、反応後のアルデヒド系消毒剤が有効濃度未満の場合と、有効濃度の範囲にある場合とのpHの差をpH指示薬により視認化する技術(例えば特許文献3参照)が広く知られている。
【特許文献1】 米国特許第4521376号明細書
【特許文献2】 特開2002−48780号公報
【特許文献3】 英国特許第2085583号明細書
【0010】
しかしながら、特許文献3の英国特許明細書には、液剤型(溶液状)、及び固形剤型[粉末状、或いは固形状(錠剤のみ)]インディケータが例示されているが、夫々の剤型には生産性や安定性などを向上させるために解決しなければならない重要な課題を有しているのであり、医療機関などに高品質で安定性が良好なインディケータを供給するためには、これらの課題を解決することが必須条件となっているにも拘らず、これらの課題解決の方法は勿論のこと、問題点の存在すら示されていないのである。
【0011】
一般に、亜硫酸塩化合物は空気中などに存在する水分により徐々に酸化を受ける性質を有しており、水溶液中で長期間にわたって安定した状態で存在させることは極めて困難であることから、アルデヒド系消毒剤用インディケータとしては、液剤型(溶液状)のものは現存し得ないとするのが通常である。なお、現実に医療機関などに提供されている試験紙型のインディケータとしては、防湿が重要な要件であり、このためにアルミ袋に乾燥剤とともに密封することが不可欠となっている。
即ち、pH指示薬により視認化する技術の一つである特許文献3の英国特許明細書に記載ある発明の第一の課題は、亜硫酸塩化合物の酸化を防止することである。
【0012】
次に、pH指示薬により視認化する技術の一つである特許文献3の英国特許明細書に記載ある発明においては、アルデヒド系消毒剤用の有効濃度と有効濃度未満との境界濃度付近では、反応して生じるpHの差は約0.5〜1.0とごく僅かであり、このごく僅かなpHの差を精度よく捉えるためにはアルデヒド系消毒剤液の採取量と、インディケータ中の亜硫酸塩化合物の含量を厳密に制御しなければならないのである。
【0013】
仮に、インディケータ中の亜硫酸塩化合物の含量が不均一であれば、同じ濃度のアルデヒド系消毒剤液を試験した場合において、反応後のpH変化が一定しないため、pH指示薬による色調にばらつきを生じる要因となり、濃度判定を誤るおそれがある。従って、試験紙型、固形剤型[粉末状、或いは固形状(粒状、及び錠剤)]のいずれの剤型においても、亜硫酸塩化合物の含有量のばらつきを如何に最小限に抑えるかが重要なポイントとなっているのである。特に試験紙型インディケータの場合は、試験紙に含有させることができる亜硫酸塩化合物の絶対量が、固形剤型[粉末状、或いは固形状(粒状、及び錠剤)]のインディケータに比べて極めて少ないために、含有量のばらつきが色調に与える影響も大きくなるのである。
即ち、pH指示薬により視認化する技術の一つである特許文献3の英国特許明細書に記載ある発明の第二の課題は、アルデヒド系消毒剤用インディケータ中の亜硫酸塩化合物の含量均一性を高めることである。
【0014】
一方、固形剤型[粉末状、或いは固形状(粒状、及び錠剤)]のインディケータにおいては、反応に関与しない賦形剤などで全体量を増やし、充填時の重量偏差を減少させることが通常行われるのであるが、特許文献3の英国特許明細書に記載ある発明においては、粉末状のインディケータの処方中には賦形剤などは全く含まれておらず、充填時の重量偏差の影響に対する方策を何ら講じていないのである。
【0015】
更に、特許文献3の英国特許明細書に記載ある発明においては、錠剤のインディケータの処方中には賦形剤のみならず崩壊剤や滑沢剤といった錠剤化に必要不可欠な添加剤も全く含まれておらず、現実に記載されている処方・製法で調製した錠剤は打錠障害が発生し、使用時にはアルデヒド系消毒剤液中で錠剤が完全に崩壊するまでには10分以上の時間を要するなど、生産性や使用時の簡便性に大きな問題点を有していた。しかも、亜硫酸塩化合物は、空気中などの水分により徐々に酸化されると共に固結する性質があることから、錠剤の崩壊性を長時間維持するためには防湿効果のある添加剤の選択や含量などの検討が必要不可欠であるにも拘らず、これらについても何らの方策も講じられていないのである。
【0016】
また、pH指示薬による色調変化は、温度や空気酸化の影響を受けやすく、時間経過と共に変化することから色調を維持することが困難である。現実に医療機関で使用されている特許文献3の英国特許明細書に記載ある発明を利用した試験紙型インディケータにおいては、パッド部分(消毒剤液を浸す部分)が直接空気に触れることになり、更には試験紙に含有されている反応試薬量も極微量であるため、反応後において温度や空気酸化の影響を受けやすく、そのため変化した色調を維持する時間が極めて短く、判定は定められた判定時間を厳守しなければならなかったのである。しかも、試験紙型インディケータの欠点としては、アルデヒド系消毒剤の濃度が有効濃度の範囲にある場合の色調と、有効濃度未満の場合の色調との差が不明瞭であり、アルデヒド系消毒剤の有効性について正確な判定ができなかったことである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
解決しようとする問題点は、アルデヒド化合物とアミノ酸との呈色反応技術を応用した従来の試験紙型インディケータにおいては、アルデヒド系消毒剤が有効濃度の範囲にあるか否かを示す色調の変化が明確ではなく、しかも、判定した濃度を示す色調を維持する時間が極端に短いためにアルデヒド濃度の正確な判定が困難であったことである。
また、同技術を改良した固形剤型[粉末状、或いは固形状(粒状、及び錠剤)]インディケータにおいては、試験紙型インディケータに比べてより鮮明に色調変化を表示させることが可能となった反面、使用に当っては溶解のための栓付試験管の振り混ぜ方によって呈色する色調に差異が生じることであり、且つ、試験紙型インディケータと同様に判定した濃度を示す色調の維持時間が極端に短いことである。
【0018】
更に、アルデヒド化合物と亜硫酸塩化合物との反応により生じるpHの変化を、pH指示薬により視認化して把握する技術を応用した従来の試験紙型インディケータにおいては、アミノ酸との反応を応用した場合と同様に、アルデヒド系消毒剤が有効濃度の範囲にあるか否かを示す色調の変化が明確ではなく、しかも、パッド部分(消毒剤液を浸す部分)が温度や空気酸化の影響を受けやすく、pHによる色調変化の維持時間が極端に短いことである。
【0019】
また、アルデヒド化合物と亜硫酸塩化合物との反応により生じるpHの変化を、pH指示薬により視認化して把握する技術を応用した固形剤型「粉末状、或いは固形状(粒状、及び錠剤)]インディケータにおいては、試験紙型インディケータに比べて反応試薬量が多く、栓付試験管を利用して反応させることができることから、温度や空気酸化によるpH変化の影響を受けにくく、色調変化の維持時間を大幅に延長できる利点を有している。しかしながら、医療機関などに高品質で安定性の良好なインディケータを供給するために不可欠な空気中などの水分による亜硫酸塩化合物の酸化・固結の防止策や具体的な解決策は勿論のこと、これらの問題点の存在すら示していないのである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、亜硫酸塩化合物、有機酸、及びpH指示薬を必須成分として含有すると共に、亜硫酸塩化合物の湿気による酸化・固結の防止剤としてケイ酸塩化合物を含有し、粉末状、或いは固形状(粒状、及び錠剤)としたことを基本とする。
【0021】
亜硫酸塩化合物が、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、及びピロ亜硫酸カリウムの中から選ばれる1種、または2種以上であることが好ましく、より好ましくは、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、もしくはこれらの混合物であることである。
【0022】
また、有機酸が、酒石酸、クエン酸、及びリンゴ酸の中から選ばれる1種、または2種以上であることが好ましく、より好ましくは、酒石酸、クエン酸、もしくはこれらの混合物であることである。
【0023】
更に、pH指示薬が、変色するpHの幅が2以内であり、酸性色と塩基性色とが明確に異なる色調を示す1種であることが好ましく、より好ましくは、フェノールフタレイン、またはチモールブルーであることである。
【0024】
また、亜硫酸塩化合物の湿気による酸化・固結の防止剤としてのケイ酸塩化合物が、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸、及び合成ケイ酸アルミニウムの中から選ばれる1種、または2種以上であることが好ましい。
【0025】
更に、亜硫酸塩化合物と、有機酸との含量比(亜硫酸塩化合物/有機酸)が、1/1〜10/1の範囲であることが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、アルデヒド濃度に応じて変化するpHを、pH指示薬で視認化してアルデヒド系消毒剤の有効濃度を判定するインディケータを、固形剤型[粉末状、或いは固形状(粒状、及び錠剤)]としたのであって、従来のアルデヒド系消毒剤に直接浸漬する方式の試験紙型インディケータに比して、反応に関与するアルデヒド系消毒剤の試薬量をスポイトなどにより厳密に制御でき、しかも、有効濃度の範囲にある場合の色調と、有効濃度未満の場合の色調との差が明確に表示され、アルデヒド濃度の判定が簡単、且つ正確に行えるのである。
【0027】
また、反応が速やかに進行して終結する中和反応を利用したことにより、アミノ酸との呈色反応を利用した従来の固形剤型インディケータの欠点であった栓付試験管の振り混ぜ方の強弱や、振り混ぜ時間の長短による色調の差異の発生を解消できるのである。
【0028】
そして、亜硫酸塩化合物と有機酸との含量比(亜硫酸塩化合物/有機酸)が、1/1〜10/1の範囲としたことにより、アルデヒド濃度判定後の有効濃度の範囲内にあるpHと、有効濃度未満のpHとが、いずれもpH指示薬の変色域に入ることから、正確な判定が行えるのである。また、亜硫酸塩化合物/有機酸が1/1〜10/1の範囲であれば、各種アルデヒド系消毒剤(例えば、2%グルタラール、3%グルタラール、及び0.05%フタラール)の有効濃度に対応したインディケータを製することができるのである。
【0029】
更に本発明によると、アルデヒド濃度の判定時には、栓付試験管内で1mL以上の液状となっているために、パッド部分(消毒剤液を浸す部分)が直接空気に触れ、しかも含有試薬量が極微量であるなどの不都合を有する試験紙型インディケータに比して、反応後の温度や空気酸化の影響を受けにくく、pH変化による色調を少なくとも24時間は維持されることから、従来のように予め定められた判定時間を厳守しなければならないといった時間的制約から解放されることになり、多忙な医療現場などにおいては24時間以内であれば任意の時間にアルデヒド濃度を判定することができ、アルデヒド系消毒剤の濃度管理を簡単、且つ確実に行えるのであり、これにより医療器具などを確実に滅菌して院内感染の防止や、アルデヒド系消毒剤を最大限有効利用できることになり、経費削減を図れるのである。
【0030】
また、亜硫酸塩化合物の湿気による酸化・固結の防止剤としてのケイ酸塩化合物を配合したことから、安定性の良い高品質なインディケータを医療機関などに供給できるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明の固形剤型インディケータは、粉末状の場合は亜硫酸塩化合物、有機酸、pH指示薬、及びケイ酸塩化合物、そして必要に応じてその他の賦形剤などと均一に混合することにより得られ、固形状(粒状、及び錠剤)は亜硫酸塩化合物、有機酸、pH指示薬、及びケイ酸塩化合物、そして必要に応じてその他の賦形剤、崩壊剤、滑沢剤などと混合して得られた混合末を、例えば乾燥造粒機を用いて粒状とし、或いは打錠機を用いて錠剤化することによって得られる。
【0032】
詳述すれば、本発明における亜硫酸塩化合物とは、アルデヒド系消毒剤の有効成分であるアルデヒド化合物(グルタラール、またはフタラール)と反応して水酸化化合物を生じ、アルデヒド化合物の濃度に応じてpHを変化させる性質を有するものであり、有機酸とは、アルデヒド化合物と、亜硫酸塩化合物との反応により生じた水酸化化合物の一部と中和反応してpHを調整する有機酸性化合物であり、pH指示薬とは、アルデヒド化合物と亜硫酸塩化合物との反応により生じるpHの変化を、色調変化として視認化できる試薬のことをいうのである。
【0033】
更に、亜硫酸塩化合物の湿気による酸化・固結を防止する防止剤としてのケイ酸塩化合物とは、吸湿能力に優れた防湿剤であると共に有効成分を含有した粉粒体(粉末状、及び粒状)の包装容器への充填時の流動性を改善し、充填量の偏差を減少させるものであり、また、インディケータの錠剤化においては、有効成分を含有した粉粒体の臼中への充填均一性や圧縮成形性を高め、錠剤の重量偏差を減少させると共に運搬時に生じる錠剤の欠けや割れを防止するための硬度上昇と、インディケータ使用時における速崩壊性を付与する効果を併せ持った添加剤のことをいうのである。
【0034】
この際、固形剤型インディケータのpH指示薬の含量は、色調変化の誤差の発生を防止するため必要最小限に抑えることが望ましく、また、ケイ酸塩化合物は、固結防止、流動促進、崩壊助剤、硬度上昇などの用途に応じて、全体量の0.5〜5%の範囲で添加することが望ましい。
【0035】
また、アルデヒド濃度の判定に当っては、例えば栓付試験管に、現実に滅菌消毒剤として使用されているアルデヒド系消毒剤(実用液)を一定量採取し、そこへ固形剤型インディケータを入れて閉栓し、約10秒間十分に振り混ぜ、その後、10秒以上経過した後に栓付試験管内の実用液の色調変化を観察してアルデヒド系消毒剤の有効性を判定するのである。
【0036】
以下に種々の実施例、ならびに比較例を挙げて詳述するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限り、変化させて考えることができるのである。
【実施例1】
【0037】
{グルタラール3.5%製剤用粉末状、或いは粒状インディケータの場合}
基本処方として、亜硫酸カリウム80mg、クエン酸30mg、pH指示薬としてチモールブルー0.1mg、及び軽質無水ケイ酸4mgを秤量し、これに賦形剤(例えば乳糖)などを加えて全量を200mgとし、これらを充分に混合して200mgの粉末状インディケータ1包を得る。或いは、得られた混合末に崩壊剤(例えば結晶セルロース)等を加えて、乾燥造粒機を用いて粒状に製することができる。
【0038】
アルデヒド濃度の判定は、現実に使用されているアルデヒド系消毒剤(以下、実用液と称す)1mLをスポイトで栓付試験管に採取し、そこへ200mgの粉末状、或いは粒状インディケータ1包を入れて閉栓し、約10秒間十分に振り混ぜ、その後、10秒以上経過した後の24時間以内に栓付試験管内の実用液の色調変化を観察する。
実用液のアルデヒド濃度が有効濃度の範囲にある場合には、実用液は青色を呈し、有効濃度未満の場合は、青色とは明白に異なる黄色を呈する。
【実施例2】
【0039】
{グルタラール3.5%製剤用固形状(錠剤)インディケータの場合}
基本処方として、亜硫酸ナトリウム7mg、酒石酸3mg、pH指示薬としてチモールブルー0.1mg、及び合成ケイ酸アルミニウム3mgを秤量し、これに賦形剤(例えば乳糖)、崩壊剤(例えば結晶セルロース)、滑沢剤(例えばステアリン酸マグネシウム)などを加えて全量を100mgとし、これらを充分に混合した混合末を、打錠機により錠剤に製し、100mgの固形状(錠剤)インディケータ1錠を得る。
【0040】
アルデヒド濃度の判定は、実用液1mLをスポイトで栓付試験管に採取し、そこへ100mgの固形状(錠剤)インディケータ1錠を入れて閉栓し、約10秒間十分に振り混ぜ、その後10秒以上経過した後の24時間以内に、栓付試験管内の実用液の色調変化を観察する。
実用液のアルデヒド濃度が有効濃度の範囲にある場合には、実用液は青色を呈し、有効濃度未満の場合は、青色とは明白に異なる黄色を呈する。
【実施例3】
【0041】
{グルタラール2%製剤用固形状(錠剤)インディケータの場合}
基本処方として、亜硫酸カリウム20mg、酒石酸9mg、pH指示薬としてチモールブルー0.1mg、及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウム4mgを秤量し、これに賦形剤(例えば乳糖)、崩壊剤(例えば結晶セルロース)、滑沢剤(例えばステアリン酸マグネシウム)などを加えて全量を200mgとし、これらを充分に混合した混合末を、打錠機により錠剤に製し、200mgの固形状(錠剤)インディケータ1錠を得る。
【0042】
アルデヒド濃度の判定は、実用液2mLをスポイトで栓付試験管に採取し、そこへ200mgの固形状(錠剤)インディケータ1錠を入れて閉栓し、約10秒間十分に振り混ぜ、その後10秒以上経過した後の24時間以内に、栓付試験管内の実用液の色調変化を観察する。
実用液のアルデヒド濃度が有効濃度の範囲にある場合には、実用液は青色を呈し、有効濃度未満の場合は、青色とは明白に異なる黄色を呈する。
【実施例4】
【0043】
{フタラール0.55%製剤用固形状(錠剤)インディケータの場合}
基本処方として、亜硫酸ナトリウム20mg、酒石酸3mg、pH指示薬としてフェノールフタレイン0.5mg、及び軽質無水ケイ酸4mgを秤量し、これに賦形剤(例えば乳糖)、崩壊剤(例えば結晶セルロース)、滑沢剤(例えばステアリン酸マグネシウム)などを加えて全量を200mgとし、これらを充分に混合した混合末を、打錠機により錠剤に製し、200mgの固形状(錠剤)インディケータ1錠を得る。
【0044】
アルデヒド濃度の判定は、実用液2mLをスポイトで栓付試験管に採取し、そこへ200mgの固形状(錠剤)インディケータ1錠を入れて閉栓し、約10秒間十分に振り混ぜ、その後10秒以上経過した後の24時間以内に、栓付試験管内の実用液の色調変化を観察する。
実用液のアルデヒド濃度が有効濃度の範囲にある場合には、実用液は赤色を呈し、有効濃度未満の場合は、実用液の色は変化しない(ほとんど無色)。
【0045】
以下、現実に医療機関で使用されている従来の試験紙型インディケータ、及び固形剤型インディケータのアルデヒド濃度の判定例を比較例として示す。
〔比較例1〕
{グルタラール3.5%製剤用試験紙型インディケータの場合}
試験紙のパッド部分を、現実に使用されているアルデヒド系消毒剤(以下、実用液と称す。)に、揺れ動かすことなく約1秒間浸漬して引き上げる。
次に、ペーパータオルの上に試験紙を立てかけ、パッド部分に付着した過剰な実用液を吸い取らせる。
【0046】
アルデヒド濃度の判定は、パッド部分を実用液に浸漬してから90秒後にパッド部分の色調変化を観察する。この際、浸漬してから90秒を超えて観察してはならないとの強い時間的制約がある。
実用液のアルデヒド濃度が有効濃度の範囲にある場合には、パッド部分の全体が赤色を呈し、有効濃度未満の場合は、パッド部分の呈色に赤色の色むら、または赤色の斑点が生じる。
【0047】
〔比較例2〕
{グルタラール2%製剤用固形状(錠剤)インディケータの場合}
実用液5mLをスポイトで栓付試験管に採取し、そこへ固形状(錠剤)インディケータ1錠を入れて閉栓し、約20秒間激しく振り混ぜて静置する。
【0048】
アルデヒド濃度の判定は、栓付試験管を静置してから30秒後に、実用液が混濁した状態で色調の変化を観察する。この際、静置後1分を超えて観察してはならないとの強い時間的制約がある。
実用液のアルデヒド濃度が有効濃度の範囲にある場合には、実用液は緑色を呈し、有効濃度未満の場合は、青色を呈する。
【0049】
〔比較例3〕
{フタラール0.55%製剤用試験紙型インディケータの場合}
試験紙のパッド部分を、現実に使用されている実用液に、揺れ動かすことなく約1秒間浸漬して引き上げる。
次に、ペーパータオルの上に試験紙を立てかけ、パッド部分に付着した過剰な実用液を吸い取らせる。
【0050】
アルデヒド濃度の判定は、パッド部分を実用液に浸漬してから90秒後にパッド部分の色調変化を観察する。この際、浸漬してから90秒を超えて観察してはならないとの強い時間的制約がある。
実用液のアルデヒド濃度が有効濃度の範囲にある場合には、パッド部分の全体が紫色を呈し、有効濃度未満の場合は、パッド部分の呈色に紫色の色むら、または紫色の斑点が生じる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜硫酸塩化合物、有機酸、及びpH指示薬を有効成分として含有すると共に、亜硫酸塩化合物の湿気による酸化・固結の防止剤としてケイ酸塩化合物を含有し、粉末状、或いは固形状(粒状、及び錠剤)としたアルデヒド系消毒剤の有効濃度判定用固形剤型インディケータ。
【請求項2】
亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、及びピロ亜硫酸カリウムの中から選ばれる1種、または2種以上の亜硫酸塩化合物と、酒石酸、クエン酸、及びリンゴ酸の中から選ばれる1種、または2種以上の有機酸と、変色するpHの幅が2以内であり、酸性色と、塩基性色とが明確に異なる色調を示す1種のpH指示薬とを有効成分として含有すると共に、亜硫酸塩化合物の湿気による酸化・固結の防止剤としてケイ酸塩化合物を含有し、粉末状、或いは固形状(粒状、及び錠剤)としたアルデヒド系消毒剤の有効濃度判定用固形剤型インディケータ。
【請求項3】
亜硫酸ナトリウム、または亜硫酸カリウム、もしくはこれらの混合物である亜硫酸塩化合物と、酒石酸、またはクエン酸、もしくはこれらの混合物である有機酸と、pH指示薬とを有効成分として含有すると共に、亜硫酸塩化合物の湿気による酸化・固結の防止剤としてケイ酸塩化合物を含有し、粉末状、或いは固形状(粒状、及び錠剤)としたアルデヒド系消毒剤の有効濃度判定用固形剤型インディケータ。
【請求項4】
pH指示薬が、フェノールフタレイン、またはチモールブルーである請求項1、2または3のアルデヒド系消毒剤の有効濃度判定用固形剤型インディケータ。
【請求項5】
亜硫酸塩化合物の湿気による酸化・固結の防止剤としてのケイ酸塩化合物が、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸、及び合成ケイ酸アルミニウムの中から選ばれる1種、または2種以上である請求項1、2または3のアルデヒド系消毒剤の有効濃度判定用固形剤型インディケータ。
【請求項6】
亜硫酸塩化合物と、有機酸との含量比(亜硫酸塩化合物/有機酸)が、1/1〜10/1の範囲である請求項1、2または3のアルデヒド系消毒剤の有効濃度判定用固形剤型インディケータ。

【公開番号】特開2008−281539(P2008−281539A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−153336(P2007−153336)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【出願人】(592097255)東洋製薬化成株式会社 (2)
【Fターム(参考)】