説明

アルミナ−フォージャサイト共顆粒上への吸着によるオレフィンフラクションの精製

本発明は、吸着剤を調製する方法であって、連続する、フォージャサイト型ゼオライト粉体Aをアルミナ粉体Bと一緒に共造粒することをベースに成形する工程であって、粉体混合物は、10〜70重量%の粉体Aを含む、工程、水蒸気処理工程、および乾燥工程を包含する、方法に関する。本発明はまた、少なくとも1種のヘテロ原子を含み、少なくとも50容積%の炭化水素を含むオレフィン仕込原料中に存在する有機汚染物質の吸着方法であって、オレフィン仕込原料が上記調製方法を用いて得られた吸着剤と接触させられる工程を包含する、方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着剤の調製方法であって、連続する
− ゼオライト粉体Aをアルミナからなる粉体Bと共造粒する段階であって、粉体AおよびBの混合物中のAの質量単位当たりの比は、10〜70%である、段階、
− 水蒸気下、40〜200℃の温度で1〜24時間の継続期間にわたって処理する段階、
− 100〜300℃の温度で0.5〜12時間の継続期間にわたって乾燥させる段階、および
− 場合による、200〜700℃の温度で吸着剤を焼成する段階D
を包含する、方法
に関する。
【0002】
本発明はまた、少なくとも1種のヘテロ原子を含有する有機汚染物質の吸着方法に関する。これらの汚染物質は、一般的に、少なくとも50容積%の炭化水素を含むオレフィン原料中に存在する。本方法は、一般的に、前記オレフィン原料を、本発明による調製方法によって得られる吸着剤と接触させる段階を包含する。
【背景技術】
【0003】
従来技術は、フォージャサイト(faujasite)−アルミナ共顆粒(co-granule)の調製方法を記載する。
【0004】
Aタイプおよびフォージャサイトタイプのゼオライトについての凝集物を伴う調製方法であって、ケイ酸ナトリウム水溶液をアルミン酸ナトリウム水溶液と混合することによる反応材料の調製およびこの場合ゾルの形成をベースとし、次いで、ゾルは自発的にゲルに凝固し、このゲルが結晶化に付される、方法が既にある。この場合、微細に分散した結晶ゼオライトが形成され、この結晶ゼオライトは、結晶化の後に、母液から分離され、水により洗浄され、凝集物の付与により顆粒形態に成形させられ、最後に、乾燥させられ焼成されることになる(特許文献1〜2)。
【0005】
顆粒形態の合成ゼオライト凝集物なしの調製方法もある。このような方法は、顆粒に変換されるアルミノケイ酸アルカリペースト等の反応材料を調製することにある。それらは、次いで、結晶化に付される。結晶化の後、顆粒は、水により洗浄され、それらは、乾燥させられる(例えば、特許文献3を参照)。
【0006】
しかしながら、本発明による吸着剤の調製方法は、従来技術において得られたものより明らかに優れた吸着により精製の性能レベルにつながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第2882243号明細書
【特許文献2】米国特許第3234147号明細書
【特許文献3】米国特許第3094383号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明は、吸着剤の調製方法であって、連続する、
A)アルミナからなる粉体Bとの共造粒によってフォージャサイト型ゼオライト粉体Aを形状化する段階Aであって、粉体AおよびBの混合物中の粉体Aの質量単位当たりの比は10〜70%、好ましくは15〜60%、非常に好ましくは20〜60%、より好ましくは21〜57%、さらにより好ましくは35〜57%、さらにより好ましくは40〜57%、一層さらにより好ましくは45〜55%である、段階、
B)水蒸気下、段階Aの終了時に得られた吸着剤を、40〜200℃、好ましくは50〜160℃、非常に好ましくは60〜120℃の温度で、30分〜24時間、好ましくは1〜12時間、非常に好ましくは2〜11時間、非常に好ましくは3〜7時間の継続期間にわたって、処理する段階B、
C)段階Bの終了時に得られた吸着剤を、100〜300℃、好ましくは150〜250℃、非常に好ましくは190〜210℃の温度で、0.5〜12時間、好ましくは1〜10時間、非常に好ましくは1〜4時間、非常に好ましくは1〜3時間、より好ましくは1.5〜2.5時間の継続期間にわたって乾燥させる段階C
を包含する、方法に関する。
【0009】
本発明の範囲内で、吸着剤または共顆粒は、同一の固体を参照するために言及されることになる。
【0010】
一般的に2種の粉体AおよびBの混合物が作られた後に、構成単位(unit)が形状化される。それは、好ましくは、当業者によって知られている回転技術、例えば、ボウル造粒機またはドラム中の造粒によって行われる。
【0011】
場合によっては、乾燥段階Cの後に、200〜700℃、好ましくは250〜600℃、さらにより好ましくは250〜500℃の温度で吸着剤を焼成する段階Dが行われる。焼成段階Dの継続期間は、一般的に1〜7時間、好ましくは1〜5時間である。
【0012】
一般的に、フォージャサイト型ゼオライトはNaXゼオライトである。
【0013】
好ましい変形によると、粉体Bは、水酸化アルミニウム、好ましくはハイドラルジライト(hydrargillite)の急速な脱水のための当業者によって知られている方法によって得られる。
【0014】
一般的に、吸着剤は、
−アルカリ酸化物
−アルカリ土類酸化物
−希土類酸化物
からなる群から選択される1種以上の元素によってドープされる。
【0015】
ドープ元素の酸化物の吸着剤の質量による含有量は、粉体Aによって提供された酸化ナトリウムの質量含有量が除かれたドープ元素の酸化物の全質量含有量に本質的に対応し、それは、一般的に20%未満、好ましくは10%未満、有利には500ppm〜5%である。
【0016】
ドーパントは、一般的には、形状化段階Aの前の粉体Aまたは粉体Bまたは粉体Aおよび粉体Bの乾式含浸または段階Aの間または段階Aの終了時の吸着剤の乾式含浸によって加えられる。
【0017】
好ましい方法によると、ドーパントは、形状化段階Aを開始する前に、用いられる2種の粉体の少なくとも一方に加えられる。
【0018】
本発明はまた、本発明による調製方法の段階A、BおよびCまたはA、B、CおよびDによって得られる吸着剤に関する。前記吸着剤の比表面積は、一般的には300〜900m/g、好ましくは300〜600m/g、好ましくは320〜580m/g、さらには350〜550m/gである。吸着剤は、一般的には、当業者によって知られている通常の形態の全て、例えば、粉体、ボール、押出物、粉砕された形態、およびモノリスとして供給される。好ましくは、吸着剤は、段階Aの間にボールの形態に形状化される。ボールのサイズは、一般的には0.5〜10mm、好ましくは0.7〜8mm、さらに好ましくは0.8〜5mmである(各値において包括的(inclusive))。
【0019】
本発明はまた、少なくとも1種のヘテロ原子を含有し、かつ、少なくとも50容積%、好ましくは60容積%、さらには70容積%、さらには80容積%の炭化水素を含むオレフィン原料中に存在する有機汚染物質の吸着方法に関する。この方法は、前記オレフィン原料を、本発明による調製方法の1つによって得られた吸着剤と接触させる段階を包含し、この接触は、好ましくは、動力学的条件下に行われ、吸着剤は、一般的には、固定床に配置される。オレフィン原料は、一般的には2〜12個、より特定的には3〜10個、より特別には3〜7個の炭素原子を含む炭化水素を含む。オレフィン原料は、一般的には、水蒸気分解装置または流動接触分解が起源であり、原料中のオレフィンの全体的な容積測定の含有量は、一般的にはオレフィン20〜100%、好ましくは40〜80%、より好ましくは40〜60%である。
【0020】
有機汚染物質は、一般的には、窒素、硫黄および酸素からなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む少なくとも1種の化合物を含む。有機汚染物質は、一般的に、ニトリル、ピロール、ジメチルホルムアミド、アニリン、メチルチオール、エチルチオール、プロピルチオール、硫黄化合物、チオフェン、ケトン、アルデヒド、エーテルおよびアルコールからなる群から選択される少なくとも1種の化合物、好ましくは、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、アセトン、アニリン、メチルチオールおよびメタノールからなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む。
【0021】
一般的に、ニトリルは、アセトニトリルおよびプロピオニトリルに対応する。一般的に、軽質チオールは、メチルチオール、エチルチオール、さらにはプロピルチオールに対応する。一般的に、硫黄化合物は、HS、COS、CS、ジメチルジスルフィド(dimethyl disulfide:DMDS)またはジエチルジスルフィド(diethyl disulfide:DEDS)に対応する。一般的に、ケトンはアセトンに対応する。一般的に、アルデヒドは、アセトアルデヒドに対応する。一般的に、エーテルは、MTBEおよびETBEに対応する。一般的に、アルコールは、メタノールまたはエタノールに対応する。有機汚染物質は、一般的に、これらの分子のいずれかまたはこれらの分子の複数の混合物を含む。
【0022】
一般的に、調製された共顆粒は、連続的または断続的な工業方法(例えばバッチ方法)において、場合によっては、再生段階を伴って用いられ得る。TSA(英語の専門用語に従ってTemperature Swing Adsorption)温度変調吸着方法が一般的に用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(実施例)
(実施例1)
【0024】
【表1】

【0025】
ドープ元素酸化物の吸着剤質量による含有量(ここでは、NaOの質量による含有量)は、粉体Aによって提供された酸化ナトリウムの質量による含有量が除かれた、ドープ元素酸化物の質量による全含有量に対応する。
【0026】
固体D〜Gは、ボウル造粒機における、表1に示された種々の比率での、NaXゼオライト粉体(粉体A)とハイドラルジライトの脱水に由来する粉体Bの共造粒によって調製される。
【0027】
形状化の後、水蒸気下での処理が、100℃で6時間にわたって行われ、その後、200℃で2時間にわたって行われる乾燥および400℃で2時間にわたる焼成がなされる。
【0028】
固体Cは、粉体Bの簡単な造粒によって得られる;D〜Gの場合において記載されたのと同一のその後の熱処理が続けられる。
【0029】
固体Hは、先に得られたボールEについて行われる、いわゆるソーダの乾式含浸に由来する。次いで、乾燥が2時間にわたって200℃で行われ、次いで、400℃での2時間にわたる焼成が行われる。
【0030】
(実施例2)
液体媒体中で吸着実験が行われた。研究は、吸着剤1グラムについて行われた。この吸着剤は、窒素の流れ下に300℃で2時間にわたって予め再生され、次いで、所定の濃度の選択された不純物を有する1−ドデセン300mLを含むガラス製エルレンマイヤーフラスコ中に置かれた。
【0031】
エルレンマイヤーフラスコは、あらゆる寄生的蒸発(parasitic evaporation)を防ぐために重ね合わされたガラス製栓によって密閉され、それは、水浴によって所望の温度に維持される。
【0032】
有機溶液の不純物濃度の低下は、UV−可視または気相クロマトグラフィーによって追跡され、考慮される不純物の吸着剤の質量取込を測定することが可能にされる。
【0033】
得られた結果は、表IIおよびIIIに示される。それらは、従来技術による吸着剤C、DおよびGに対する、本発明による吸着剤E、FおよびGを用いることの利点を例証する。
【0034】
実際に、本発明による吸着剤は、より良好に有機汚染物質を捕捉する。
【0035】
【表2】

【0036】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着剤の調製方法であって、連続する
A)フォージャサイト型ゼオライト粉体Aを、アルミナからなる粉体Bとの共造粒によって形状化する段階Aであって、粉体AおよびBの混合物中の粉体Aの質量単位当たりの比が10〜70%である、段階、
B)水蒸気下に、段階Aの終了時に得られた吸着剤を、40〜200℃の温度で30分〜24時間の継続期間にわたって処理するための段階B、および
C)段階Bの終了時に得られた吸着剤を、100〜300℃の温度で0.5〜12時間の継続期間にわたって乾燥させる段階C
を包含する、方法。
【請求項2】
乾燥段階Cの後に、200〜700℃の温度で吸着剤を焼成する段階Dが行われる、請求項1に記載の調製方法。
【請求項3】
フォージャサイト型ゼオライトは、NaXゼオライトである、請求項1または2に記載の調製方法。
【請求項4】
段階Bは、50〜160℃の温度で2〜11時間の継続期間にわたって行われ、段階Cは、150〜250℃の温度で1〜10時間の継続期間にわたって行われる、請求項1〜3のいずれか1つに記載の調製方法。
【請求項5】
吸着剤は、アルカリ酸化物、アルカリ土類酸化物および希土類酸化物からなる群から選択される1種以上の元素によってドープされる、請求項1〜4のいずれか1つに記載の調製方法。
【請求項6】
ドープ元素酸化物の吸着剤質量含有量は、20%未満である、請求項5に記載の調製方法。
【請求項7】
ドーパントは、形状化段階Aの前の粉体Aまたは粉体B、または粉体Aおよび粉体Bの乾式含浸によって、または、段階Aの間または段階A後の吸着剤の乾式含浸によって加えられる、請求項5または6に記載の調製方法。
【請求項8】
吸着剤は、段階Aの間にボールの形態に形状化される、請求項1〜7のいずれか1つに記載の調製方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1つに記載の調製方法によって得られた吸着剤の存在下に、窒素、硫黄および酸素からなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む有機汚染物質を吸着する方法であって、これらの有機汚染物質は、少なくとも50容積%の炭化水素を含むオレフィン原料中に存在しており、前記吸着方法は、前記オレフィン原料を前記吸着剤と接触させる段階を包含する、方法。
【請求項10】
前記オレフィン原料は、2〜12個の炭素原子を含む炭化水素を含む、請求項9に記載の吸着方法。
【請求項11】
前記オレフィン原料は、水蒸気分解装置または流動接触分解が起源であり、前記原料中のオレフィンの全体的な容積測定含有量は、20〜100%である、請求項9または10に記載の吸着方法。
【請求項12】
前記有機汚染物質は、ニトリル、ピロール、ジメチルホルムアミド、アニリン、メチルチオール、エチルチオール、プロピルチオール、硫黄化合物、チオフェン、ケトン、アルデヒド、エーテルおよびアルコールからなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む、請求項9〜11のいずれか1つに記載の吸着方法。

【公表番号】特表2010−532263(P2010−532263A)
【公表日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−515546(P2010−515546)
【出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【国際出願番号】PCT/FR2008/000852
【国際公開番号】WO2009/010666
【国際公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(591007826)イエフペ (261)
【Fターム(参考)】