説明

アルミナ複合材

【課題】アルミナ複合材を提供すること。
【解決手段】アルミナの表面水酸基の水素原子が、ケイ素原子に置換され、該ケイ素原子を介してポリマー鎖が表面水酸基の酸素原子に結合したアルミナ複合材であって、該ポリマー鎖が、リビングラジカル重合開始基に由来する構造とラジカル重合性不飽和結合を有するモノマーに由来する構造単位とを含むことを特徴とするアルミナ複合材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミナ複合材に関する。
【背景技術】
【0002】
有機材料と無機材料とから成る有機-無機複合材は、樹脂と混合して成形体等を得たとき、樹脂単独から得られた成形体に比べて、機械的強度、耐熱性、難燃性、熱伝導性、ガスバリア性などの特性を著しく改善できることが期待される。このような特性改善のためには、該有機-無機複合材における無機材料表面の構造や無機材料−有機材料間の界面構造が大きな影響を及ぼすと考えられる。
ところで、無機材料の中でもアルミナは、汎用性、粒子径の種類の多さから、最もよく使用されている無機フィラーの一つであり、従来から、アルミナと樹脂とを混錬することにより、成形体を調製することが検討されている。しかしながら、アルミナは成形体中に均一に分散させることが困難であり、結果として機械的強度や耐熱性といった特性に優れた成形体を得ることが困難となる。その改良として、該アルミナの表面を改質処理して、樹脂に対する親和性を向上させて、成形体中におけるアルミナの分散性を向上するという試みがなされている。このアルミナ表面の改質方法の一つに、アルミナにシランカップリング剤を反応させることにより、アルミナ表面をコーティングする方法がある。例えば、非特許文献1には、アルミナとメタクリル酸3−(トリメトキシシリル)プロピルとを反応させて得られる、アルミナの表面水酸基の水素原子が、3−(メタクリルオキシ)プロピルシリル基に置換されたアルミナ複合材が開示されている。
また、非特許文献2には、アルミナと2−ブロモプロピオン酸とを反応させ、次いで、メタクリル酸メチルとアクリル酸ブチルとを反応させることにより得られるアルミナ複合材が開示されている。しかしながら、非特許文献1及び非特許文献2の方法で得られたポリマ−が化学結合したアルミナが、樹脂中に均一分散できるという開示はなく、また樹脂単独よりも、耐熱性の向上、機械的強度の向上につながっていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】J.Mater.Chem.,1997,7(8),1572
【非特許文献2】Macromolecules 2002,35,8913
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非特許文献1や非特許文献2には、アルミナ複合材を樹脂と混練して成形体を得たとき、該成形体中に該アルミナ複合材が均一分散できるという開示はない。また、本発明者等の検討によれば、非特許文献1や非特許文献2のアルミナ複合材では、成形体の耐熱性や機械的強度を向上することは困難であることが判明した。
このような状況下、本発明の目的は耐熱性や機械的強度に優れる成形体の製造を可能とするアルミナ複合材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意検討した結果、本発明に至った。
すなわち、本発明は、
<1> アルミナの表面水酸基の水素原子が、ケイ素原子に置換され、該ケイ素原子を介してポリマー鎖が表面水酸基の酸素原子に結合したアルミナ複合材であって、
該ポリマー鎖が、リビングラジカル重合開始基に由来する構造と、
ラジカル重合性不飽和結合を有するモノマーに由来する構造単位と、
を含むことを特徴とするアルミナ複合材;
<2> リビングラジカル重合開始基が、原子移動ラジカル重合開始基である<1>に記載のアルミナ複合材;
<3> 原子移動ラジカル重合開始基が、α−ハロアシルオキシ基、α−ハロアシル基、ハロスルホニル基またはα−ハロベンジル基を含む<2>に記載のアルミナ複合材;
<4> 原子移動ラジカル重合開始基が、式(2)

(式中、RおよびRは独立して、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基またはフェニル基を表わし、Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を表わす。)
で示される基である<2>に記載のアルミナ複合材;
<5> リビングラジカル重合開始基に由来する構造が、ケイ素原子に直接または炭素数1〜20のアルキレン基を介して結合している<1>〜<4>のいずれかに記載のアルミナ複合材;
<6> ラジカル重合性不飽和結合を有するモノマーが、スチレン系モノマー、アクリレート系モノマー、メタクリレート系モノマー、アクリルアミド系モノマー、メタクリルアミド系モノマー、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、4−ビニルピリジンおよび酢酸ビニルからなる群から選ばれる少なくとも一つである<1>〜<5>のいずれかに記載のアルミナ複合材;
<7> アルミナの平均粒子径(D50)が60nm〜50μm、または、一次粒子径が1〜1000nmである<1>〜<6>のいずれかに記載のアルミナ複合材;
<8> アルミナを、リビングラジカル重合開始基を含むシランカップリング剤で表面処理し、次いで、表面処理したアルミナと、ラジカル重合性不飽和結合を有するモノマーと、を反応させて得られるアルミナ複合材;
<9> ラジカル重合性不飽和結合を有する少なくとも1つのモノマーを重合させて得られる樹脂と、<1>〜<8>のいずれかに記載のアルミナ複合材と、を含むことを特徴とする樹脂組成物;
<10> 樹脂が、ポリアクリル酸エステルまたはポリメタクリル酸エステルである<9>に記載の樹脂組成物;
<11> 樹脂が、ポリメタクリル酸メチルである<9>に記載の樹脂組成物;
<12> アルミナと、<1>〜<8>のいずれかに記載のアルミナ複合材と、を含むことを特徴とするアルミナ組成物;
<13> アルミナと、リビングラジカル重合開始基を含むシランカップリング剤と、を反応させることにより、該リビングラジカル重合開始基を有するアルミナを得る工程;
該リビングラジカル重合開始基を有するアルミナと、ラジカル重合性不飽和結合を有するモノマーと、を該リビングラジカル重合開始基と該ラジカル重合性不飽和結合との反応によりリビングラジカル重合させる工程;
を有するアルミナ複合材の製造方法;
<14> アルミナの表面水酸基の水素原子が、ケイ素原子に置換され、該ケイ素原子に、直接または連結基を介してリビングラジカル重合開始基が結合したリビングラジカル重合開始基含有アルミナ;
を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の新規なアルミナ複合材を樹脂に配合することにより、成形体の耐熱性および機械的強度を向上することができるため、例えば、これらの特性に優れた樹脂シートを作製することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明のアルミナ複合材は、アルミナの表面水酸基の水素原子が、ケイ素原子に置換され、該ケイ素原子を介してポリマー鎖が表面水酸基の酸素原子に結合したアルミナ複合材であって、該ポリマー鎖が、リビングラジカル重合開始基に由来する構造とラジカル重合性不飽和結合を有するモノマーに由来する構造単位とを含む。
アルミナは限定されず、α−アルミナ、γ−アルミナ、θ−アルミナ、δ−アルミナ等が挙げられる。アルミナの形状も限定されず、例えば、粒子状のアルミナであってもよいし、繊維状のアルミナであってもよい。粒子状アルミナの場合、その平均粒子径(D50)または一次粒子径は限定されないが、D50が通常60nm以上、好ましくは60nm以上50μm以下のアルミナ、または、一次粒子径が通常1〜1000nm、好ましくは10〜500nmのアルミナが用いられる。かかるアルミナは、市販されているものを用いてもよいし、例えば、特開2007−055888号公報等に記載された公知の方法に従い製造したものを用いてもよい。
【0008】
本発明のアルミナ複合材において、アルミナの表面にある水酸基(表面水酸基)の水素原子はケイ素原子に置換されており、酸素−ケイ素結合が形成されている。該ケイ素原子には、1〜3個のポリマー鎖が結合しており、好ましくは1個のポリマー鎖が結合している。また、該ケイ素原子には、通常、ポリマー鎖の数(n)に応じて、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、水酸基および炭素数1〜4のアルコキシ基などの置換基が、(3−n)個結合していることがある。また場合により、アルミナの表面水酸基の2つまたは3つの水素原子が1つのケイ素原子に置換され、1個のケイ素原子に対して酸素−ケイ素結合が形成されていることがある。また、本発明のアルミナ複合材においては、アルミナの表面にある全ての表面水酸基の水素原子がケイ素原子に置換されていることは必ずしも必要ではなく、一部の表面水酸基の水素原子がケイ素原子に置換されていればよい。
アルミナ複合材の製造が容易であるという点で、置換基としては、塩素原子、水酸基および炭素数1〜4のアルコキシ基からなる群から選ばれる置換基が好ましい。炭素数1〜4のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基などが挙げられる。
【0009】
ポリマー鎖は、リビングラジカル重合開始基に由来する構造と、ラジカル重合性不飽和結合を有するモノマーに由来する構造単位と、を含み、さらにケイ素原子と結合する連結基を含んでいてもよい。
該連結基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、デカメチレン基、ドデカメチレン基などの炭素数1〜20のアルキレン基が挙げられ、炭素数2〜10のアルキレン基が好ましい。
リビングラジカル重合開始基は、光、熱またはその他の電磁波の照射によってラジカルを発生し得る官能基または触媒等と反応してラジカルを発生し得る官能基であり、リビングラジカル重合の開始点となり得る官能基であれば限定されず、アゾアルキル基などのアゾ基(−N=N)を有する基、パーオキシアルキル基などのパーオキシド基を有する基、Chem.Rev. 2006,106,3936−3962に記載のヨウ化アルキル基などのヨウ素原子を有する基、Chem.Rev. 2001,101,3661−3688に記載のニトロキシアルキル基等のニトロキシドを介するリビングラジカル重合開始基、Aust.J.Chem.,2005,58,379−410に記載のフェニルチオカルボニルチオメチルフェニル基等のチオカルボニルチオ基を有する可逆的付加・脱離連鎖移動重合反応の開始基、Chem.Rev. 2001,101,2921−2990およびChem.Rev. 2001,101,3689−3745に記載のα−ハロアシルオキシ基、α−ハロアシル基、ハロスルホニル基、α−ハロベンジル基などの原子移動ラジカル重合開始基が挙げられる。なかでも、アルミナ複合材の製造におけるポリマー鎖の一次構造や鎖長を制御する点から、ヨウ素原子、ニトロキシドを介するリビングラジカル重合開始基、可逆的付加・脱離連鎖移動重合反応の開始基および原子移動ラジカル重合開始基が好ましく、原子移動ラジカル重合開始基がより好ましく、α−ハロアシルオキシ基が特に好ましい。このようなリビングラジカル重合開始基は、後述するラジカル重合性不飽和結合を有するモノマーを用いた反応において、重合の起点として機能する。
α−ハロアシルオキシ基、α−ハロアシル基、ハロスルホニル基およびα−ハロベンジル基のハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、塩素原子および臭素原子が好ましい。
【0010】
α−ハロアシルオキシ基およびα−ハロアシル基のα−ハロアシル基としては、クロロアセチル基、2−ブロモプロピオニル基が挙げられる。ハロスルホニル基としては、クロロスルホニル基、ブロモスルホニル基が挙げられ、α−ハロベンジル基としては、クロロメチルフェニル基、ブロモメチルフェニル基が挙げられる。
【0011】
リビングラジカル重合開始基に由来する構造としては、下記に示す構造が挙げられる。

(式中、RおよびRは独立して、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基またはフェニル基を表わす)。
なお、RおよびRに係るアルキル基の例示は後述する。
【0012】
本発明に用いるラジカル重合性不飽和結合を有するモノマーは、有機ラジカルの存在下にリビングラジカル重合反応が進行し得る不飽和結合を有するモノマーであればよく、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリレート系モノマー、アクリレート系モノマー、スチレン系モノマー、α−オレフィン系モノマー、ビニルエステル系モノマー、ビニルケトン系モノマー、ビニル置換複素芳香族系モノマー、アクリルアミド系モノマー、メタクリルアミド系モノマー、ハロゲン化ビニル系モノマー、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、マレイン酸、無水マレイン酸、ジエン系モノマー、ジアリル系モノマーなどが挙げられる。
【0013】
メタクリレート系モノマーとしては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−ノニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、2−n−ブトキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、グリシジルメタクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレートなどが挙げられる。
【0014】
アクリレート系モノマーとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−ノニルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、2−n−ブトキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、グリシジルアクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチルアクリレートなどが挙げられる。
【0015】
スチレン系モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メトキシスチレン、m−メトキシスチレン、p−メトキシスチレン、o−tert−ブチルスチレン、m−tert−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、o−スチレンスルホン酸、m−スチレンスルホン酸、p−スチレンスルホン酸などが挙げられる。
α−オレフィン系モノマーとしては、エチレン、プロピレン、イソブテン、1−へキセン、シクロヘキセンなどが挙げられる。
【0016】
ビニルエステル系モノマーとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニルなどが挙げられ、ビニルケトン系モノマーとしては、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンなどが挙げられる。
ビニル置換複素芳香族系モノマーとしては、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドールなどのN−ビニル複素芳香族系モノマー、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジンなどのビニルピリジン系モノマーが挙げられる。
【0017】
アクリルアミド系モノマーとしては、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド等が挙げられ、メタクリルアミド系モノマーとしては、N−イソプロピルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミドなどが挙げられる。
【0018】
ハロゲン化ビニル系モノマーとしては、塩化ビニル、塩化ビニリデン、テトラクロロエチレン、ヘキサクロロプロピレン、フッ化ビニルなどが挙げられる。
ジエン系モノマーとしては、ブタジエン、イソプレンなどが挙げられ、ジアリル系モノマーとしては、ジアリルフタレートなどのアリル基を2つ有するモノマーが挙げられる。
【0019】
本発明のアルミナ複合材は、上述のジエン系モノマーのような二以上のラジカル重合性不飽和結合を有するモノマーに由来する構造単位を有していてもよい。
ポリマー鎖の数平均分子量(M)は、通常100〜400,000である。本発明において、”ポリマー鎖の数平均分子量”は、本発明のアルミナ複合材から、例えば加水分解などの所定の方法により、ポリマー鎖をアルミナ複合材から分離して得られるポリマーの数平均分子量を意味する。
【0020】
本発明のアルミナ複合材は、例えば、アルミナとリビングラジカル重合開始基を有するシランカップリング剤とを反応させ、次いで、ラジカル重合性不飽和結合を有するモノマーを反応させることにより、アルミナに結合したリビングラジカル重合開始基と、該モノマーのラジカル重合性不飽和結合と、をリビングラジカル重合により重合させることにより製造することができる。一次構造の制御されたポリマー鎖を有するアルミナ複合材が得られやすいという点で、リビングラジカル重合開始基として、原子移動ラジカル重合開始基を有するシランカップリング剤が好ましい。
【0021】
原子移動ラジカル重合開始基を有するシランカップリング剤としては、式(2)

(式中、X、RおよびRは前記と同じ意味である。mは0〜20の整数を表わす。Y、YおよびYは独立して、炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を表わす。)
で示されるシランカップリング剤が挙げられる。
【0022】
炭素数1〜3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基が挙げられ、炭素数1〜4のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基等が挙げられる。
【0023】
式(2)で示されるシランカップリング剤は、例えば、J.Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry 2001,39,4294に記載に方法により製造することができる。
式(2)で示されるシランカップリング剤としては、2−クロロ−2−メチルプロピオン酸{6−(トリメトキシシリル)−n−ヘキシル}、2−クロロ−2−メチルプロピオン酸{6−(トリエトキシシリル)−n−ヘキシル}、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸{6−(トリメトキシシリル)−n−ヘキシル}、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸{6−(トリエトキシシリル)−n−ヘキシル}、2−ヨード−2−メチルプロピオン酸{6−(トリメトキシシリル)−n−ヘキシル}、2−ヨード−2−メチルプロピオン酸{6−(トリエトキシシリル)−n−ヘキシル}、
2−クロロ−2−メチルプロピオン酸{4−(トリメトキシシリル)−n−ブチル}、2−クロロ−2−メチルプロピオン酸{4−(トリエトキシシリル)−n−ブチル}、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸{4−(トリメトキシシリル)−n−ブチル}、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸{4−(トリエトキシシリル)−n−ブチル}、2−ヨード−2−メチルプロピオン酸{4−(トリメトキシシリル)−n−ブチル}、2−ヨード−2−メチルプロピオン酸{4−(トリエトキシシリル)−n−ブチル}、
2−クロロ−2−メチルプロピオン酸{2−(トリメトキシシリル)エチル}、2−クロロ−2−メチルプロピオン酸{2−(トリエトキシシリル)エチル}、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸{2−(トリメトキシシリル)エチル}、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸{2−(トリエトキシシリル)エチル}、2−ヨード−2−メチルプロピオン酸{2−(トリメトキシシリル)エチル}、2−ヨード−2−メチルプロピオン酸{2−(トリエトキシシリル)エチル}、
2−クロロ−2−メチルプロピオン酸トリメトキシシリル、2−クロロ−2−メチルプロピオン酸トリエトキシシリル、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸トリメトキシシリル、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸トリエトキシシリル、2−ヨード−2−メチルプロピオン酸トリメトキシシリル、2−ヨード−2−メチルプロピオン酸トリエトキシシリル、
2−クロロプロピオン酸{6−(トリメトキシシリル)−n−ヘキシル}、2−クロロプロピオン酸{6−(トリエトキシシリル)−n−ヘキシル}、2−ブロモプロピオン酸{6−(トリメトキシシリル)−n−ヘキシル}、2−ブロモプロピオン酸{6−(トリエトキシシリル)−n−ヘキシル}、2ヨードプロピオン酸{6−(トリメトキシシリル)−n−ヘキシル}、2−ヨードプロピオン酸{6−(トリエトキシシリル)−n−ヘキシル}、
2−クロロプロピオン酸{4−(トリメトキシシリル)−n−ブチル}、2−クロロプロピオン酸{4−(トリエトキシシリル)−n−ブチル}、2−ブロモプロピオン酸{4−(トリメトキシシリル)−n−ブチル}、2−ブロモプロピオン酸{4−(トリエトキシシリル)−n−ブチル}、2−ヨードプロピオン酸{4−(トリメトキシシリル)−n−ブチル}、2−ヨードプロピオン酸{4−(トリエトキシシリル)−n−ブチル}、
2−クロロプロピオン酸{2−(トリメトキシシリル)エチル}、2−クロロプロピオン酸{2−(トリエトキシシリル)エチル}、2−ブロモプロピオン酸{2−(トリメトキシシリル)エチル}、2−ブロモプロピオン酸{2−(トリエトキシシリル)エチル}、2−ヨードプロピオン酸{2−(トリメトキシシリル)エチル}、2−ヨードプロピオン酸{2−(トリエトキシシリル)エチル}、
2−クロロプロピオン酸トリメトキシシリル、2−クロロプロピオン酸トリエトキシシリル、2−ブロモプロピオン酸トリメトキシシリル、2−ブロモプロピオン酸トリエトキシシリル、2−ヨードプロピオン酸トリメトキシシリル、2−ヨードプロピオン酸トリエトキシシリル、
2−クロロ−2−メチルプロピオン酸{6−(トリヒドロキシシリル)−n−ヘキシル}、2−クロロ−2−メチルプロピオン酸{6−(トリヒドロキシシリル)−n−ヘキシル}、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸{6−(トリヒドロキシシリル)−n−ヘキシル}、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸{6−(トリヒドロキシシリル)−n−ヘキシル}、2−ヨード−2−メチルプロピオン酸{6−(トリヒドロキシシリル)−n−ヘキシル}、2−ヨード−2−メチルプロピオン酸{6−(トリヒドロキシシリル)−n−ヘキシル}、
2−クロロ−2−メチルプロピオン酸{4−(トリヒドロキシシリル)−n−ブチル}、2−クロロ−2−メチルプロピオン酸{4−(トリヒドロキシシリル)−n−ブチル}、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸{4−(トリヒドロキシシリル)−n−ブチル}、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸{4−(トリヒドロキシリル)−n−ブチル}、2−ヨード−2−メチルプロピオン酸{4−(トリヒドロキシリル)−n−ブチル}、2−ヨード−2−メチルプロピオン酸{4−(トリヒドロキシリル)−n−ブチル}、
2−クロロ−2−メチルプロピオン酸{2−(トリヒドロキシシリル)エチル}、2−クロロ−2−メチルプロピオン酸{2−(トリヒドロキシシリル)エチル}、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸{2−(トリヒドロキシシリル)エチル}、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸{2−(トリヒドロキシシリル)エチル}、2−ヨード−2−メチルプロピオン酸{2−(トリヒドロキシシリル)エチル}、2−ヨード−2−メチルプロピオン酸{2−(トリヒドロキシシリル)エチル}、
2−クロロ−2−メチルプロピオン酸トリヒドロキシシリル、2−クロロ−2−メチルプロピオン酸トリヒドロキシシリル、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸トリヒドロキシシリル、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸トリヒドロキシシリル、2−ヨード−2−メチルプロピオン酸トリヒドロキシシリル、2−ヨード−2−メチルプロピオン酸トリヒドロキシシリル、
2−クロロプロピオン酸{6−(トリヒドロキシシリル)−n−ヘキシル}、2−ブロモプロピオン酸{6−(トリヒドロキシシリル)−n−ヘキシル}、2−ヨードプロピオン酸{6−(トリヒドロキシシリル)−n−ヘキシル}、2−クロロプロピオン酸{4−(トリヒドロキシシリル)−n−ブチル}、2−ブロモプロピオン酸{4−(トリヒドロキシシリル)−n−ブチル}、2−ヨードプロピオン酸{4−(トリヒドロキシシリル)−n−ブチル}、
2−クロロプロピオン酸{2−(トリヒドロキシシリル)エチル}、2−ブロモプロピオン酸{2−(トリクロロシリル)エチル}、2−ヨードプロピオン酸{2−(トリヒドロキシシリル)エチル}、2−クロロプロピオン酸トリヒドロキシシリル、2−ブロモプロピオン酸トリヒドロキシシリル、2−ヨードプロピオン酸トリヒドロキシシリル、
2−クロロ−2−メチルプロピオン酸{6−(トリクロロシリル)−n−ヘキシル}、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸{6−(トリクロロシリル)−n−ヘキシル}、2−ヨード−2−メチルプロピオン酸{6−(トリクロロシリル)−n−ヘキシル}、2−クロロ−2−メチルプロピオン酸{4−(トリクロロシリル)−n−ブチル}、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸{4−(トリクロロシリル)−n−ブチル}、2−ヨード−2−メチルプロピオン酸{4−(トリクロロシリル)−n−ブチル}、
2−クロロ−2−メチルプロピオン酸{2−(トリクロロシリル)エチル}、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸{2−(トリクロロシリル)エチル}、2−ヨード−2−メチルプロピオン酸{2−(トリエトキシシリル)エチル}、2−クロロ−2−メチルプロピオン酸トリクロロシリル、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸トリクロロシリル、2−ヨード−2−メチルプロピオン酸トリエトキシシリル、2−クロロプロピオン酸{6−(トリクロロシリル)−n−ヘキシル}、2−ブロモプロピオン酸{6−(トリクロロシリル)−n−ヘキシル}、2−ヨードプロピオン酸{6−(トリクロロシリル)−n−ヘキシル}、
2−クロロプロピオン酸{4−(トリクロロシリル)−n−ブチル}、2−ブロモプロピオン酸{4−(トリクロロシリル)−n−ブチル}、2−ヨードプロピオン酸{4−(トリクロロシリル)−n−ブチル}、2−クロロプロピオン酸{2−(トリクロロシリル)エチル}、2−ブロモプロピオン酸{2−(トリクロロシリル)エチル}、2−ヨードプロピオン酸{2−(トリクロロシリル)エチル}、
2−クロロプロピオン酸トリクロロシリル、2−ブロモプロピオン酸トリクロロシリル、2−ヨードプロピオン酸トリクロロシリルなどが挙げられる。
【0024】
リビングラジカル重合開始基を有するシランカップリング剤の使用量は、アルミナ1モルに対して、0.001〜10モルであると好ましい。
アルミナとリビングラジカル重合開始基を有するシランカップリング剤との反応は、無溶媒で実施してもよいが、好ましくは溶媒中で実施される。用いる溶媒としては、水、有機溶媒および水と有機溶媒の混合溶媒が挙げられる。有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶媒、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、tert―ブチルメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド溶媒、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド溶媒が挙げられる。かかる溶媒の使用量は制限されない。
【0025】
アルミナとリビングラジカル重合開始基を有するシランカップリング剤との反応をスムーズに進行させるため、アンモニアなどの塩基または酢酸などの酸を触媒として用いてもよく、その使用量は、アルミナ1モルに対して、0.001〜100モルである。
反応温度は、−78℃〜200℃の範囲から選択される。反応時間は、用いるシランカップリング剤の種類やアルミナに対する使用量、溶媒の種類およびその使用量、あるいは反応温度により適宜調節することができる。
【0026】
反応終了後、例えば、反応混合物を濃縮、濾過または遠心分離することにより、アルミナの表面水酸基の水素原子がケイ素原子に置換され、該ケイ素原子に、リビングラジカル重合開始基が直接または連結基を介して結合したアルミナ(リビングラジカル重合開始基含有アルミナ)を取り出すことができる。取り出したリビングラジカル重合開始基含有アルミナは、水、有機溶媒、水と有機溶媒の混合溶媒で洗浄してもよい。
【0027】
例えば、式(2)で示されるシランカップリング剤を用いた場合には、アルミナの表面水酸基の水素原子がケイ素原子に置換され、該ケイ素原子に、下記式

(式中、X、R、Rおよびmは前記と同じ意味である。)
で示される基が結合したアルミナが得られる。
【0028】
得られたリビングラジカル重合開始基含有アルミナと、ラジカル重合性不飽和結合を有するモノマーとを反応させることにより、リビングラジカル重合開始基を起点として、リビングラジカル重合反応が進行し、本発明のアルミナ複合材が得られる。ラジカル重合性不飽和結合を有するモノマーとしては、前記したものと同様のものが挙げられる。二種類以上のラジカル重合性不飽和結合を有するモノマーを用いてもよい。
ラジカル重合性不飽和結合を有するモノマーの使用量は、前記アルミナ中のリビングラジカル重合開始基1モルに対して、10〜10000モルである。
重合反応は、リビングラジカル重合開始基の種類に応じて、適宜調節すればよい。例えば、リビングラジカル重合開始基が原子移動ラジカル重合開始基である場合は、原子移動ラジカル重合法に準じて、重合反応を実施すればよい。
原子移動ラジカル重合は触媒の存在下に実施されることが好ましく、ここで触媒としては、0価、1価または2価の銅錯体、2価のルテニウム錯体、2価の鉄錯体、2価のニッケル錯体等が挙げられ、0価、1価または2価の銅錯体が好ましく、1価の銅錯体がより好ましい。二種以上の触媒を用いてもよい。
【0029】
銅錯体は、通常、塩化第一銅、臭化第一銅、塩化第二銅、臭化第二銅、銅粉等の銅化合物と配位子になり得る化合物(配位子化合物)とを接触させることにより調製することができる。配位子化合物としては、2,2−ビピリジルなどのビピリジル化合物、N,N,N’,N’−テトラメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N’,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、トリス(ジメチルアミノエチル)アミンなどが挙げられる。配位子化合物の使用量は、銅化合物1モルに対して、通常0.5〜5モルである。
【0030】
触媒の使用量は、前記アルミナ中のリビングラジカル重合開始基1モルに対して、金属換算で、0.0001〜100モル、好ましくは0.001〜50モルである。
【0031】
重合反応は、無溶媒で実施してもよいし、溶媒中で実施してもよい。用いる溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶媒、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、tert―ブチルメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、アニソール、ジフェニルエーテルなどのエーテル溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド溶媒、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド溶媒、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル溶媒、酢酸エチル等のエステル溶媒などが挙げられる。二種以上の溶媒を混合して用いてもよい。
【0032】
重合温度は、通常−20〜200℃、好ましくは0〜150℃である。
リビングラジカル重合開始基が、原子移動ラジカル重合開始基である場合、原子移動ラジカル重合開始剤を併用して重合反応を実施してよく、原子移動ラジカル重合開始剤を併用することにより、分散度の小さいポリマー鎖を有するアルミナ複合材が得られる。原子移動ラジカル重合開始基と同一の原子移動ラジカル重合開始基を有する原子移動ラジカル重合開始剤を用いることが好ましい。原子移動ラジカル重合開始剤を併用する場合のその使用量は、シランカップリング剤との反応で得られたアルミナ中の原子移動ラジカル重合開始基1モルに対して、通常0.1〜20モルである。
【0033】
重合反応終了後、例えば、得られた反応混合物を濾過や遠心分離することにより、本発明のアルミナ複合材を取り出すことができる。取り出したアルミナ複合材は有機溶媒で洗浄してもよく、必要に応じ乾燥処理を行ってもよい。
【0034】
続いて、本発明のアルミナ複合材と樹脂とを含む樹脂組成物について説明する。
樹脂としては、有機ラジカルの存在下にラジカル重合反応が進行し得る不飽和結合を有するモノマーから得られる樹脂であればよい。かかるモノマーとしては、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリレート系モノマー、アクリレート系モノマー、スチレン系モノマー、α−オレフィン系モノマー、ビニルエステル系モノマー、ビニルケトン系モノマー、ビニル置換複素芳香族系モノマー、アクリルアミド系モノマー、メタクリルアミド系モノマー、ハロゲン化ビニル系モノマー、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、マレイン酸、無水マレイン酸、ジエン系モノマー、ジアリル系モノマーなどが挙げられる。これらモノマーとしては、前記したものと同様のものが例示される。本発明の樹脂組成物において、アルミナ複合材中のラジカル重合性不飽和結合を有するモノマーに由来する構造単位と樹脂中のモノマー由来の構造単位とが同一であってもよいし、異なっていてもよい。
樹脂組成物中のアルミナ複合材と樹脂の重量比(アルミナ複合材:樹脂)は、通常、0.1:99.9〜99.9:0.1であり、好ましくは1:99〜20:80である。
【0035】
本発明の樹脂組成物は、アルミナ複合材と樹脂とを混合すればよく、例えば、両者を直接混合する方法、両者を混練する方法、両者を溶媒中で混合した後、溶媒を除去する方法などが挙げられる。
本発明の樹脂組成物は、射出成形、ブロー成形、押出成形、インフレーション成形、シート加工といった方法により成形加工することにより成形体を得ることができる。またシート加工においては加工後に真空成形や圧縮成形等の方法を用いてさらに成形加工することもできる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
アルミナ複合材中のポリマー含量は、熱重量示差熱分析装置(装置:エスアイアイ ナノテクノロジー製TG/DTA6200R、測定温度:25〜600℃、昇温速度:10℃/分)により算出した。
【0037】
参考例1
冷却管、滴下ロートおよび撹拌装置を備えた反応容器に、アルゴン雰囲気下、室温で、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸5−ヘキセニル70gおよび白金酸クロライド6水和物を含むベンゾニトリル溶液(0.05mol/L)3.38mLを加え、得られた混合物を80℃で30分撹拌した。該混合物に、トリエトキシシラン41.5gを滴下した後、得られた混合物を80℃で27.5時間攪拌し、反応させた。反応終了後、80℃、減圧下で、得られた反応混合物から溶媒を除去した後、得られた濃縮物から、不溶物を濾過により除去し、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸{6−(トリエトキシシリル)ヘキシル}82gを得た。
【0038】
参考例2
冷却装置を備えた反応容器に、室温で、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸5−ヘキセニル56.5gおよびトルエン700mLを加えた。得られた溶液に、トリエトキシシラン206.9mLを滴下した。得られた混合物に、白金(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のキシレン溶液(Aldrich製、0.10M)850μLを加え、室温で一晩攪拌した。得られた反応混合物を、32℃で濃縮し、さらに55℃で3時間減圧乾燥して、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸{6−(トリエトキシシリル)へキシル}89.7gを得た。ガスクロマトグラフィー分析により得られた面積百分率値は、93%であった。
【0039】
実施例1
(1)滴下ロートおよび撹拌装置を備えた反応容器に、アルゴン雰囲気下、室温で、α−アルミナ粉末(住友化学株式会社製スミコランダム(AA−04グレード);D50=0.51μm)15g、エタノール55mLおよび28重量%アンモニア水溶液30mLを仕込んだ。得られた混合物を40℃で2時間撹拌した。得られた混合物に、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸{6−(トリエトキシシリル)ヘキシル}3.34gおよびエタノール5mLを滴下した。得られた混合物を、40℃で18時間攪拌し、反応させた。反応終了後、反応混合物から、不溶分を遠心分離により取り出した。取り出した不溶分を、エタノール、テトラヒドロフラン、さらにクロロホルムで洗浄した。得られた不溶分を、室温で減圧乾燥し、アルミナの表面水酸基の水素原子がケイ素原子に置換し、該ケイ素原子に、6−(2−ブロモ−2−メチルプロピオニルオキシ)ヘキシル基が結合したアルミナ14.9gを得た。
元素分析 C:0.4%,Br:2000ppm
(2)撹拌装置を備えた反応容器に、アルゴン雰囲気下で、上記(1)で得たアルミナ7g、臭化銅(I)5.02mg、銅粉4.59mg、アニソール4.92mL、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミンのアニソール溶液(0.40mol/L)0.53mLおよびメチルメタクリレート11.23mLを加えた。得られた混合物を、室温で1分間攪拌した後、90℃で24時間攪拌し、重合反応を実施した。反応終了後、反応混合物から、不溶分を遠心分離により取り出した。取り出した不溶分を、エタノール、テトラヒドロフラン、さらにクロロホルムで洗浄した。不溶分を60℃で減圧乾燥し、アルミナの表面水酸基の水素原子がケイ素原子に置換し、該ケイ素原子に、下記式(10)

で示される構造および下記式(11)

で示される構造単位を有するポリマー鎖が結合したアルミナ複合材11.2g得た。
元素分析 C:20.9%,Br:320ppm
アルミナ複合材中のポリマー含量は、33.2%であった。
【0040】
実施例2
(1)冷却装置を備えた反応容器に、室温で、α−アルミナ粉末(住友化学株式会社製スミコランダム(AA−04グレード);D50=0.51μm)80.0g、エタノール222.2mLおよび28重量%アンモニア水133.3mLを加えた。得られた混合物を40℃で2時間攪拌した後、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸{6−(トリエトキシシリル)へキシル}17.8gをエタノール44.4mLに溶解させて得られた溶液を滴下した。得られた混合物を40℃で18時間攪拌した。得られた反応混合物から、不溶分を遠心分離により取り出した。取り出した不溶分を、エタノール、テトラヒドロフラン、さらにクロロホルムで洗浄した。得られた不溶分を、室温で10時間減圧乾燥し、アルミナの表面水酸基の水素原子がケイ素原子に置換し、該ケイ素原子に、6−(2−ブロモ−2−メチルプロピオニルオキシ)ヘキシル基が結合したアルミナ79.4gを得た。
元素分析 C:0.3%、Br:1700ppm
(2)冷却装置を備えた反応容器に、室温で、上記(1)で得たアルミナ35.0g、臭化銅(I)21.39mg、銅粉19.54mg、アニソール20.36mL、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミンのアニソール溶液(0.40mol/L)2.24mLおよびメチルメタクリレート47.85mLを加えた。得られた混合物を、室温で1分間攪拌した後、90℃で2.5時間攪拌し、重合反応を実施した。反応終了後、反応混合物から、不溶分を遠心分離により取り出した。取り出した不溶分を、エタノール、テトラヒドロフラン、さらにクロロホルムで洗浄した。不溶分を60℃で10時間減圧乾燥し、アルミナの表面水酸基の水素原子がケイ素原子に置換し、該ケイ素原子に、上記式(10)で示される構造および上記式(11)で示される構造単位を有するポリマー鎖が結合したアルミナ複合材54.0gを得た。
元素分析 C:21.4%、Br:450ppm
アルミナ複合材中のポリマー含量は、35.9%であった。
【0041】
実施例3
(1)冷却装置を備えた反応容器に、室温で、α−アルミナ粉末(住友化学株式会社製スミコランダム(AA−04グレード);D50=0.51μm)100.0g、エタノール277.7mLおよび28重量%アンモニア水166.6mLを加えた。得られた混合物を40℃で2時間攪拌した後、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸{6−(トリエトキシシリル)へキシル}26.4gをエタノール55.5mLに溶解させて得られた溶液を滴下した。得られた混合物を40℃で18時間攪拌した。得られた反応混合物から、不溶分を遠心分離により取り出した。取り出した不溶分を、エタノール、テトラヒドロフラン、さらにクロロホルムで洗浄した。得られた不溶分を、室温で10時間減圧乾燥し、アルミナの表面水酸基の水素原子がケイ素原子に置換し、該ケイ素原子に、6−(2−ブロモ−2−メチルプロピオニルオキシ)ヘキシル基が結合したアルミナ96.4gを得た。
元素分析 C:0.2%、Br:1400ppm
(2)冷却装置を備えた反応容器に、室温で、上記(1)で得たアルミナ85.0g、臭化銅(I)85.35mg、銅粉350.84mg、アニソール16.75mL、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミンのアニソール溶液(0.40mol/L)29.74mL、2−ブロモイソ酪酸エチルのアニソール溶液(0.50mol/L)2.98mLおよびスチレン102.26mLを加えた。得られた混合物を、室温で1分間攪拌した後、90℃で6時間攪拌し、重合反応を実施した。反応終了後、反応混合物から、不溶分を遠心分離により取り出した。取り出した不溶分を、エタノール、テトラヒドロフラン、さらにクロロホルムで洗浄した。不溶分を60℃で10時間減圧乾燥し、アルミナの表面水酸基の水素原子がケイ素原子に置換し、該ケイ素原子に、上記式(10)で示される構造および下記式(12)

で示される構造単位を有するポリマー鎖が結合したアルミナ複合材115.46gを得た。
元素分析 C:27.4%、Br:300ppm
アルミナ複合材中のポリマー含量は、29.5%であった。

(3)反応容器に、室温で、上記で得たアルミナ複合材1.5g、テトラヒドロフラン15mL、メタノール7.5mLおよび50重量%水酸化ナトリウム水溶液2.1mLを加えた。得られた混合物を40℃で8時間攪拌した。得られた混合物を濃縮し、濃縮残渣に、1N塩酸を加えた。得られた混合物を遠心分離して、不溶分を取り出した。取り出した不溶分を水で洗浄した後、減圧乾燥した。不溶分の一部を採取し、テトラヒドロフランと混合し、アルミナ複合材から分離されたポリマーが溶解した溶液を得た。該溶液をゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析(GPC分析条件は下記のとおり)したところ、該ポリマーの数平均分子量(M)は、10.9×10(M/M=1.55)であった。
<GPC分析条件>
装置:株式会社島津製作所製LC−10AT
カラム:ポリマーラボラトリーズ製PLgelMixed−C 5μm(7.5mmφ×30mm)
流量:1mL/分
移動相:テトラヒドロフラン
検出器:RI
温度:40℃
標準物質:Aldrich製標準ポリスチレン
【0042】
実施例4
(1)冷却装置を備えた反応容器に、室温で、一次粒子径が70nmのα−アルミナ粉末30.0g、エタノール100.0mLおよび28重量%アンモニア水40.0mLを加えた。得られた混合物を40℃で2時間攪拌した後、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸{6−(トリエトキシシリル)へキシル}27.5gをエタノール10mLに溶解させて得られた溶液を滴下した。得られた混合物を40℃で18時間攪拌した。得られた反応混合物から、不溶分を遠心分離により取り出した。取り出した不溶分をエタノール、テトラヒドロフラン、さらにクロロホルムで洗浄した。不溶分を、室温で10時間減圧乾燥し、アルミナの表面水酸基の水素原子がケイ素原子に置換し、該ケイ素原子に、6−(2−ブロモ−2−メチルプロピオニルオキシ)ヘキシル基が結合したアルミナ30.2gを得た。
元素分析 C:1.0%、Br:5500ppm
(2)冷却装置を備えた反応容器に、室温で、上記(1)で得たアルミナ22.0g、臭化銅(I)43.43mg、銅粉39.67mg、アニソール45.57mL、N,N,N',N'',N''−ペンタメチルジエチレントリアミンのアニソール溶液(0.40mol/L)4.54mLおよびメチルメタクリレート97.14mLを加えた。得られた混合物を、室温で1分間攪拌した後、90℃で1.5時間攪拌し、重合反応を実施した。反応終了後、反応混合物から、不溶分を遠心分離により取り出した。取り出した不溶分をエタノール、テトラヒドロフラン、さらにクロロホルムで洗浄した。不溶分を60℃で10時間減圧乾燥し、アルミナの表面水酸基の水素原子がケイ素原子に置換し、該ケイ素原子に、上記式(10)で示される構造および上記式(11)で示される構造単位を有するポリマー鎖が結合したアルミナ複合材61.1gを得た。
元素分析 C:38.4%、Br:690ppm
アルミナ複合材中のポリマー含量は、53.1%であった。
【0043】
実施例5
(1)冷却装置を備えた反応容器に、室温で、一次粒子径が70nmのα−アルミナ粉末80.0g、エタノール222.2mLおよび28重量%アンモニア水133.3mLを加えた。得られた混合物を40℃で2時間攪拌した後、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸{6−(トリエトキシシリル)へキシル}84.7gをエタノール44.4mLに溶解させて得られた溶液を滴下した。得られた混合物を40℃で18時間攪拌した。得られた反応混合物から不溶分を遠心分離により取り出した。取り出した不溶分をエタノール、テトラヒドロフラン、さらにクロロホルムで洗浄した。不溶分を室温で10時間減圧乾燥し、アルミナの表面水酸基の水素原子がケイ素原子に置換し、該ケイ素原子に、6−(2−ブロモ−2−メチルプロピオニルオキシ)ヘキシル基が結合したアルミナ75.5gを得た。
元素分析 C:1.0%、Br:6100ppm

得られたアルミナの29Si−CPMASスペクトルを測定したところ、−49.5ppm、−56.4ppmおよび−65.4ppmに、ピークが存在することを確認した。この結果から、アルミナの表面水酸基の水素原子がケイ素原子に置換していることが分かった。

(2)冷却装置を備えた反応容器に、室温で、上記(1)で得たアルミナ70.0g、臭化銅(I)306.47mg、銅粉1259.71mg、アニソール30.10mL、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミンのアニソール溶液(0.40mol/L)106.77mL、2−ブロモイソ酪酸エチルのアニソール溶液(0.50mol/L)10.68mLおよびスチレン183.60mLを加えた。得られた混合物を室温で1分間攪拌した後、90℃で2.5時間攪拌し、重合反応を実施した。反応混合物から不溶分を遠心分離により取り出した。取り出した不溶分をエタノール、テトラヒドロフラン、さらにクロロホルムで洗浄した。不溶分を60℃で10時間減圧乾燥し、アルミナの表面水酸基の水素原子がケイ素原子に置換し、該ケイ素原子に、上記式(10)で示される構造および上記式(12)で示される構造単位を有するポリマー鎖が結合したアルミナ複合材130.20gを得た。
元素分析 C:44.6%、臭素含量:1400ppm
アルミナ複合材中のポリマー含量は、49.1%であった。

反応容器に、室温で、上記で得たアルミナ複合材1.5g、テトラヒドロフラン15mL、メタノール7.5mLおよび50重量%水酸化ナトリウム水溶液9.2mLを加えた。得られた混合物を40℃で8時間攪拌した。得られた混合物を濃縮し、濃縮残渣に、1N塩酸を加えた。得られた混合物を遠心分離して、不溶分を取り出した。取り出した不溶分を水で洗浄した後、減圧乾燥した。不溶分の一部を採取し、テトラヒドロフランと混合し、アルミナ複合材から分離されたポリマーが溶解した溶液を得た。該溶液を、前記実施例3(3)に記載の分析条件でGPC分析したところ、該ポリマーの数平均分子量(M)は、6.40×10(M/M=1.51)であった。
【0044】
実施例6
(1)冷却装置を備えた反応容器に、室温で、α−アルミナ粉末(住友化学株式会社製スミコランダム(AA−18グレード);D50=17.4μm)75.0g、エタノール104.2mLおよび28重量%アンモニア水62.5mLを加えた。得られた混合物を40℃で2時間攪拌した後、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸{6−(トリエトキシシリル)へキシル}88.3gをエタノール20.8mLに溶解させて得られた溶液を滴下した。得られた混合物を40℃で18時間攪拌した。反応混合物から、不溶分を遠心分離により取り出した。取り出した不溶分をエタノール、テトラヒドロフラン、さらにクロロホルムで洗浄した。不溶分を室温で10時間減圧乾燥し、アルミナの表面水酸基の水素原子がケイ素原子に置換し、該ケイ素原子に、6−(2−ブロモ−2−メチルプロピオニルオキシ)ヘキシル基が結合したアルミナ73.1gを得た。
元素分析 C:0.2%、Br:1500ppm
(2)冷却装置を備えた反応容器に、室温で、上記(1)で得たアルミナ70.0g、臭化銅(I)75.51mg、銅粉310.39mg、アニソール56.00mL、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミンのアニソール溶液(0.40mol/L)26.31mL、2−ブロモイソ酪酸エチルのアニソール溶液(0.50mol/L)2.63mLおよびスチレン180.90mLを加えた。得られた混合物を室温で1分間攪拌した後、90℃で5時間攪拌し、重合反応を実施した。得られた反応混合物から、不溶分を遠心分離により取り出した。取り出した不溶分を、エタノール、テトラヒドロフラン、さらにクロロホルムで洗浄した。不溶分を60℃で10時間減圧乾燥し、アルミナの表面水酸基の水素原子がケイ素原子に置換し、該ケイ素原子に、上記式(10)で示される構造および上記式(12)で示される構造単位を有するポリマー鎖が結合したアルミナ複合材106.5gを得た。
元素分析 C:33.4%、Br:360ppm
アルミナ複合材中のポリマー含量は、36.2%であった。

得られたアルミナ複合材を電子顕微鏡(SEMおよびSTEM)により観察したところ、アルミナ粒子が略均一なポリマー層で覆われていることが確認された。
【0045】
比較例1
(1)冷却装置を備えた反応容器に、室温で、α−アルミナ粉末(住友化学株式会社製スミコランダム(AA−04グレード);D50=0.51μm)30g、エタノール100.0mLおよび28重量%アンモニア水40.0mLを加えた。得られた混合物を40℃で2時間攪拌した後、(3−メタクリロイルオキシプロピル)トリエトキシシラン16.5gをエタノール10mLに溶解させて得られた溶液を滴下した。得られた混合物を40℃で18時間攪拌した。反応混合物から、不溶分を遠心分離により取り出した。取り出した不溶分をエタノール、テトラヒドロフラン、さらにクロロホルで洗浄した。不溶分を室温で10時間減圧乾燥し、アルミナの表面水酸基の水素原子がケイ素原子に置換し、該ケイ素原子に、3−メタクリロイルオキシプロピル基が結合したアルミナ79.4gを得た。
元素分析 C:0.18%、H:<0.01%
(2)冷却装置を備えた反応容器に、室温で、上記(1)で得たアルミナ22.0g、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)77.30mg、トルエン18.50mLおよびメチルメタクリレート5.04mLを加えた。得られた混合物を室温で1分間攪拌した後、90℃で10時間攪拌し、重合反応を実施した。反応混合物から、不溶分を遠心分離により取り出した。取り出した不溶分をテトラヒドロフラン、さらにクロロホルムで洗浄した。不溶分を60℃で10時間減圧乾燥し、アルミナの表面水酸基の水素原子が、該ケイ素原子に置換し、該ケイ素原子に、トリメチレン基および上記式(11)で示される構造単位を有するポリマー鎖が結合したアルミナ複合材21.75gを得た。
元素分析 C:0.8%、H:0.1%
アルミナ複合材中のポリマー含量は、1.1%であった。
【0046】
比較例2
(1)冷却装置を備えた反応容器に、室温で、一次粒子径が70nmのα−アルミナ粉末50.0g、エタノール138.9mLおよび28重量%アンモニア水83.3mLを加えた。得られた混合物を40℃で2時間攪拌した後、(3−メタクリロイルオキシプロピル)トリエトキシシラン6.69gをエタノール27.8mLに溶解させて得られた溶液を滴下した。得られた混合物を40℃で18時間攪拌した。得られた反応混合物から、不溶分を遠心分離により取り出した。取り出した不溶分をエタノール、テトラヒドロフラン、さらにクロロホルムで洗浄した。不溶分を室温で10時間減圧乾燥し、アルミナの表面水酸基の水素原子がケイ素原子に置換し、該ケイ素原子に、3−メタクリロイルオキシプロピル基が結合したアルミナ48.7gを得た。
元素分析 C:1.1%、H:0.29%
(2)冷却装置を備えた反応容器に、室温で、上記(1)で得たアルミナ13.0g、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)279.4mg、トルエン66.88mLおよびメチルメタクリレート18.2mLを加えた。得られた混合物を室温で1分間攪拌した後、90℃で10時間攪拌し、重合反応を実施した。得られた反応混合物から、不溶分を遠心分離により取り出した。取り出した不溶分をテトラヒドロフラン、さらにクロロホルムで洗浄した。不溶分を60℃で10時間減圧乾燥し、アルミナの表面水酸基の水素原子が、該ケイ素原子に置換し、該ケイ素原子に、トリメチレン基および上記式(11)で示される構造単位を有するポリマー鎖が結合したアルミナ複合材13.06gを得た。
元素分析 C:4.0%、H:0.6%
アルミナ複合材中のポリマー含量は、6.6%であった。
【0047】
比較例3
(1)冷却装置を備えた反応容器に、室温で、前記比較例1(1)で得たアルミナ22.0g、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)77.30mg、トルエン18.06mLおよびスチレン5.48mLを加えた。得られた混合物を室温で1分間攪拌した後、90℃で10時間攪拌し、重合反応を実施した。得られた反応混合物から、不溶分を遠心分離により取り出した。取り出した不溶分をテトラヒドロフラン、さらにクロロホルムで洗浄した。不溶分を60℃で10時間減圧乾燥し、アルミナの表面水酸基の水素原子が、該ケイ素原子に置換し、該ケイ素原子に、トリメチレン基および上記式(12)で示される構造単位を有するポリマー鎖が結合したアルミナ複合材21.35gを得た。
元素分析 C:0.6%、H:0.1%
アルミナ複合材中のポリマー含量は、0.4%であった。
【0048】
比較例4
冷却装置を備えた反応容器に、室温で、前記比較例2(1)で得たアルミナ13.0g、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)279.4mg、トルエン65.26mLおよびスチレン19.82mLを加えた。得られた混合物を室温で1分間攪拌した後、90℃で10時間攪拌し、重合反応を実施した。得られた反応混合物から、不溶分を遠心分離により取り出した。取り出した不溶分をテトラヒドロフラン、さらにクロロホルムで洗浄した。不溶分を60℃で10時間減圧乾燥し、アルミナの表面水酸基の水素原子が、該ケイ素原子に置換し、該ケイ素原子に、トリメチレン基および上記式(12)で示される構造単位を有するポリマー鎖が結合したアルミナ複合材12.86gを得た。
元素分析 C:3.2%、H:0.4%
アルミナ複合材中のポリマー含量は、4.1%であった。
【0049】
[ガラス転移温度の測定]
実施例1〜6で得られたアルミナ複合材、比較例1〜4で得られたアルミナ複合材、ポリメチルメタクルレート(Aldrich社製 重量平均分子量(Mw)=96,700、数平均分子量(Mn)=44,700)およびポリスチレン(Aldrich社製 Mw=230,000、Mn=140,000)のガラス転移温度を、示差走査熱量計(TAインスツルメンツ製DSC Q2000またはエスアイアイ・ナノテクノロジー製DSC6200R)を用いて測定した(昇温速度20℃/分)。結果を表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
実施例7
実施例1で得たアルミナ複合材3.9gおよびポリメチルメタクリレート(Aldrich社製 重量平均分子量(Mw)=96,700、数平均分子量(Mn)=44,700)2.6gを、小型混練機ミニラボ(ThermoHaake社製)に加え、200℃で10分間溶融混練し(回転数50rpm)、次いで、押し出し機により造粒し、樹脂組成物を得た。プレス成形機(神藤金属工業所製;圧縮成形機 NF−37)を用いて、得られた樹脂組成物を、200℃(予熱3分、15MPaへ昇圧後1分)でプレスした後、30℃で5分冷却し、厚さ約20μmの100mm×100mmのシートを得た。得られたシートの引張試験を実施した。結果を表2に示す。
【0052】
実施例8
実施例2で得たアルミナ複合材4.06gおよびメタクリル樹脂(住友化学株式会社製スミペックスMHF)2.44gを、小型混練機ミニラボ(ThermoHaake社製)に加え、200℃で20分間溶融混練し(回転数50rpm)、次いで、押し出し機により造粒し、樹脂組成物を得た。プレス成形機(神藤金属工業所製;圧縮成形機 NF−37)を用いて、得られた樹脂組成物を、温度200℃(予熱5分、15MPaへ昇圧後3分)でプレスした後、30℃で5分冷却し、厚さ約100μmの150mm×150mmのシートを得た。得られたシートの引張試験を実施した。結果を表2に示す。
【0053】
実施例9
実施例2で得たアルミナ複合材5.07gおよびメタクリル樹脂(住友化学株式会社製スミペックスMHF)1.43gを、小型混練機ミニラボ(ThermoHaake社製)に加え、200℃で20分間溶融混練し(回転数50rpm)、次いで、押し出し機により造粒し、樹脂組成物を得た。プレス成形機(神藤金属工業所製;圧縮成形機 NF−37)を用いて、得られた樹脂組成物を、温度200℃(予熱5分、15MPaへ昇圧後3分)でプレスした後、30℃で5分冷却し、厚さ約100μmの150mm×150mmのシートを得た。得られたシートの引張試験を実施した。結果を表2に示す。
【0054】
実施例10
実施例2で得たアルミナ複合材6.08gおよびメタクリル樹脂(住友化学株式会社製スミペックスMHF)0.42gを、小型混練機ミニラボ(ThermoHaake社製)に加え、200℃で20分間溶融混練し(回転数50rpm)、次いで、押し出し機により造粒し、樹脂組成物を得た。プレス成形機(神藤金属工業所製;圧縮成形機 NF−37)を用いて、得られた樹脂組成物を、温度200℃(予熱5分、15MPaへ昇圧後3分)でプレスした後、30℃で5分冷却し、厚さ約100μmの150mm×150mmのシートを得た。得られたシートの引張試験を実施した。結果を表2に示す。
【0055】
実施例11
実施例4で得たアルミナ複合材5.54gおよびメタクリル樹脂(住友化学株式会社製スミペックスMHF)0.96gを、小型混練機ミニラボ(ThermoHaake社製)に加え、200℃で20分間溶融混練し(回転数50rpm)、次いで、押し出し機により造粒し、樹脂組成物を得た。プレス成形機(神藤金属工業所製;圧縮成形機 NF−37)を用いて、得られた樹脂組成物を、温度200℃(予熱5分、15MPaへ昇圧後3分)でプレスした後、30℃で5分冷却し、厚さ約100μmの150mm×150mmのシートを得た。得られたシートの引張試験を実施した。結果を表2に示す。
【0056】
実施例12
実施例3で得たアルミナ複合材3.69gおよびポリスチレン(Aldrich社製 Mw=230,000、Mn=140,000)2.81gを、小型混練機ミニラボ(ThermoHaake社製)に加え、200℃で20分間溶融混練し(回転数50rpm)、次いで、押し出し機により造粒し、樹脂組成物を得た。プレス成形機(神藤金属工業所製;圧縮成形機 NF−37)を用いて、得られた樹脂組成物を、温度200℃(予熱5分、15MPaへ昇圧後3分)でプレスした後、30℃で5分冷却し、厚さ約100μmの150mm×150mmのシートを得た。得られたシートの引張試験を実施した。結果を表2に示す。
【0057】
実施例13
実施例5で得たアルミナ複合材5.11gおよびポリスチレン(Aldrich社製 Mw=230,000、Mn=140,000)1.39gを、小型混練機ミニラボ(ThermoHaake社製)に加え、200℃で20分間溶融混練し(回転数50rpm)、次いで、押し出し機により造粒し、樹脂組成物を得た。プレス成形機(神藤金属工業所製;圧縮成形機 NF−37)を用いて、得られた樹脂組成物を、温度200℃(予熱5分、15MPaへ昇圧後3分)でプレスした後、30℃で5分冷却し、厚さ約100μmの150mm×150mmのシートを得た。得られたシートの引張試験を実施した。結果を表2に示す。
【0058】
実施例14
実施例6で得たアルミナ複合材4.88gおよびポリスチレン(Aldrich社製 Mw=230,000、Mn=140,000)1.62gを、小型混練機ミニラボ(ThermoHaake社製)に加え、200℃で20分間溶融混練し(回転数50rpm)、次いで、押し出し機により造粒し、樹脂組成物を得た。プレス成形機(神藤金属工業所製;圧縮成形機 NF−37)を用いて、得られた樹脂組成物を、温度200℃(予熱5分、15MPaへ昇圧後3分)でプレスした後、30℃で5分冷却し、厚さ約100μmの150mm×150mmのシートを得た。得られたシートの引張試験を実施した。結果を表2に示す。
【0059】
実施例15
実施例6で得たアルミナ複合材4.08gおよびメタクリル樹脂(住友化学株式会社製スミペックスMHF)2.42gを、小型混練機ミニラボ(ThermoHaake社製)に加え、200℃で20分間溶融混練し(回転数50rpm)、次いで、押し出し機により造粒し、樹脂組成物を得た。プレス成形機(神藤金属工業所製;圧縮成形機 NF−37)を用いて、得られた樹脂組成物を、温度200℃(予熱5分、15MPaへ昇圧後3分)でプレスした後、30℃で5分冷却し、厚さ約100μmの150mm×150mmのシートを得た。得られたシートの引張試験を実施した。結果を表2に示す。
【0060】
実施例16
実施例6で得たアルミナ複合材5.09gおよびメタクリル樹脂(住友化学株式会社製スミペックスMHF)1.41gを、小型混練機ミニラボ(ThermoHaake社製)に加え、200℃で20分間溶融混練し(回転数50rpm)、次いで、押し出し機により造粒し、樹脂組成物を得た。プレス成形機(神藤金属工業所製;圧縮成形機 NF−37)を用いて、得られた樹脂組成物を、温度200℃(予熱5分、15MPaへ昇圧後3分)でプレスした後、30℃で5分冷却し、厚さ約100μmの150mm×150mmのシートを得た。得られたシートの引張試験を実施した。結果を表2に示す。

比較例5
実施例7において、実施例1で得たアルミナ複合材3.9gに代えて、α−アルミナ粉末(住友化学株式会社製スミコランダム(AA−04グレード);D50=0.51μm)2.6gを用い、ポリメチルメタクリレートの使用量を3.9gとした以外は、実施例7と同様に実施し、シートを得た。得られたシートの引張試験を実施した。結果を表2に示す。
【0061】
比較例6
実施例8において、実施例2で得たアルミナ複合材4.06gに代えて、α−アルミナ粉末(住友化学株式会社製スミコランダム(AA−04グレード);D50=0.51μm)2.6gを用い、メタクリル樹脂の使用量を3.9gとした以外は、実施例8と同様に実施し、シートを得た。得られたシートの引張試験を実施した。結果を表2に示す。
【0062】
比較例7
実施例8において、実施例2で得たアルミナ複合材4.06gに代えて、α−アルミナ粉末(住友化学株式会社製スミコランダム(AA−04グレード);D50=0.51μm)3.25gを用い、メタクリル樹脂の使用量を3.25gとした以外は、実施例8と同様に実施し、シートを得た。得られたシートの引張試験を実施した。結果を表2に示す。
【0063】
比較例8
実施例8において、実施例2で得たアルミナ複合材4.06gに代えて、一次粒子径が70nmのα−アルミナ粉末2.60gを用い、メタクリル樹脂の使用量を3.90gとした以外は、実施例8と同様に実施し、シートを得た。得られたシートの引張試験を実施した。結果を表2に示す。
【0064】
比較例9
実施例12において、実施例3で得たアルミナ複合材3.69gに代えて、α−アルミナ粉末(住友化学株式会社製スミコランダム(AA−18グレード);D50=17.4μm)3.25gを用い、ポリスチレンの使用量を3.25gとした以外は、実施例12と同様に実施し、シートを得た。得られたシートの引張試験を実施した。結果を表2に示す。
【0065】
比較例10
実施例8において、実施例2で得たアルミナ複合材4.06gに代えて、比較例1で得たアルミナ複合材2.63gを用い、メタクリル樹脂の使用量を3.87gとした以外は、実施例8と同様に実施し、シートを得た。得られたシートの引張試験を実施した。結果を表2に示す。
【0066】
比較例11
実施例8において、実施例2で得たアルミナ複合材4.06gに代えて、比較例1で得たアルミナ複合材3.29gを用い、メタクリル樹脂の使用量を3.21gとした以外は、実施例8と同様に実施し、シートを得た。得られたシートの引張試験を実施した。結果を表2に示す。
【0067】
比較例12
実施例8において、実施例2で得たアルミナ複合材4.06gに代えて、比較例2で得たアルミナ複合材2.78gを用い、メタクリル樹脂の使用量を3.72gとした以外は、実施例8と同様に実施し、シートを得た。得られたシートの引張試験を実施した。結果を表2に示す。
【0068】
比較例13
実施例12において、実施例3で得たアルミナ複合材3.69gに代えて、比較例3で得たアルミナ複合材2.61gを用い、ポリスチレンの使用量を3.89gとした以外は、実施例12と同様に実施し、シートを得た。得られたシートの引張試験を実施した。結果を表2に示す。
【0069】
比較例14
実施例13において、実施例5で得たアルミナ複合材5.11gに代えて、比較例4で得たアルミナ複合材2.71gを用い、ポリスチレンの使用量を3.79gとした以外は、実施例13と同様に実施し、シートを得た。得られたシートの引張試験を実施した。結果を表2に示す。
【0070】
比較例15
実施例7において、実施例1で得たアルミナ複合材を用いず、ポリメチルメタクリレートの使用量を6.5gとした以外は、実施例7と同様に実施し、シートを得た。得られたシートの引張試験を実施した。結果を表2に示す。
【0071】
比較例16
実施例8において、実施例2で得たアルミナ複合材を用いず、メタクリル樹脂の使用量を6.5gとした以外は、実施例8と同様に実施し、シートを得た。得られたシートの引張試験を実施した。結果を表2に示す。
【0072】
比較例17
実施例12において、実施例3で得たアルミナ複合材を用いず、ポリスチレンの使用量を6.5gとした以外は、実施例12と同様に実施し、シートを得た。得られたシートの引張試験を実施した。結果を表2に示す。
【0073】
[引張試験]
オリエンテック社製UNIVERSAL TESTING MACHINE STA−1225を用い、下記条件で引張試験を実施した。
<条件>荷重フルスケール:20Kgf、試験速度:5.0mm/min、初期試料長:40mm、環境温度:23℃、環境湿度:50%RH
【0074】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナの表面水酸基の水素原子が、ケイ素原子に置換され、該ケイ素原子を介してポリマー鎖が表面水酸基の酸素原子に結合したアルミナ複合材であって、
該ポリマー鎖が、リビングラジカル重合開始基に由来する構造と、
ラジカル重合性不飽和結合を有するモノマーに由来する構造単位と、
を含むことを特徴とするアルミナ複合材。
【請求項2】
リビングラジカル重合開始基が、原子移動ラジカル重合開始基である請求項1に記載のアルミナ複合材。
【請求項3】
原子移動ラジカル重合開始基が、α−ハロアシルオキシ基、α−ハロアシル基、ハロスルホニル基またはα−ハロベンジル基を含む請求項2に記載のアルミナ複合材。
【請求項4】
原子移動ラジカル重合開始基が、式(2)

(式中、RおよびRは独立して、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基またはフェニル基を表わし、Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を表わす。)
で示される基である請求項2に記載のアルミナ複合材。
【請求項5】
リビングラジカル重合開始基に由来する構造が、ケイ素原子に直接または炭素数1〜20のアルキレン基を介して結合している構造である請求項1〜4のいずれかに記載のアルミナ複合材。
【請求項6】
ラジカル重合性不飽和結合を有するモノマーが、スチレン系モノマー、アクリレート系モノマー、メタクリレート系モノマー、アクリルアミド系モノマー、メタクリルアミド系モノマー、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、4−ビニルピリジンおよび酢酸ビニルからなる群から選ばれる少なくとも一つである請求項1〜5のいずれかに記載のアルミナ複合材。
【請求項7】
アルミナの平均粒子径(D50)が60nm〜50μm、または、一次粒子径が1〜1000nmである請求項1〜6のいずれかに記載のアルミナ複合材。
【請求項8】
アルミナを、リビングラジカル重合開始基を含むシランカップリング剤で表面処理し、
次いで、表面処理したアルミナと、ラジカル重合性不飽和結合を有するモノマーと、を反応させて得られるアルミナ複合材。
【請求項9】
ラジカル重合性不飽和結合を有する少なくとも1つのモノマーを重合させて得られる樹脂と、請求項1〜8のいずれかに記載のアルミナ複合材と、
を含むことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項10】
樹脂が、ポリアクリル酸エステルまたはポリメタクリル酸エステルである請求項9に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
樹脂が、ポリメタクリル酸メチルである請求項9に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
アルミナと、
請求項1〜8のいずれかに記載のアルミナ複合材と、
を含むことを特徴とするアルミナ組成物。
【請求項13】
アルミナと、リビングラジカル重合開始基を含むシランカップリング剤と、を反応させることにより、該リビングラジカル重合開始基を有するアルミナを得る工程;
該リビングラジカル重合開始基を有するアルミナと、ラジカル重合性不飽和結合を有するモノマーと、を該リビングラジカル重合開始基と該ラジカル重合性不飽和結合との反応によりリビングラジカル重合させる工程;
を有するアルミナ複合材の製造方法。
【請求項14】
アルミナの表面水酸基の水素原子が、ケイ素原子に置換され、該ケイ素原子に、直接または連結基を介してリビングラジカル重合開始基が結合したリビングラジカル重合開始基含有アルミナ。

【公開番号】特開2009−299044(P2009−299044A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115309(P2009−115309)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】