説明

アルミニウムの表面処理方法

【課題】アルミニウム表面に、より緻密な酸化不動態膜を形成することのできる表面処理方法を提供する。
【解決手段】バリア型アノード酸化処理を施したアルミニウムからなる母材をオゾンガスに曝すことにより、さらにオゾンによる酸化処理を施すようにしたことを特徴とするアルミニウムの表面処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム又はアルミニウム合金の表面処理方法に関し、特に、防食処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アルミニウムやアルミニウム合金(以下、単にアルミニウムという)の表面に施す防食処理としては、アルマイト処理が広く利用されている。しかし、アルマイト処理した表面の酸化膜には微小な欠陥を有していることが知られている。この欠点を減少させるために、アノード酸化処理などの表面処理技術が応用されているものもある(特許文献1)。また、アルミニウム表面にオゾンガスを作用させてオゾンパッシベーションを施すものも提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−322040号公報
【特許文献2】特開2005−113182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自然酸化膜を形成したアルミニウムの表面に、アノード酸化などの表面処理を行っても、表面酸化膜はポーラスであって、その膜中に微細な孔があり、表面酸化膜を形成した器具類を真空状態や減圧状態に曝すと、金属内部からのガス離脱が見られる等の問題がある。また、この微細な孔が腐食反応などの起点となる等の問題もあった。
【0005】
また、アルミニウム表面にオゾンガスを作用させてオゾンパッシベーションを施すものにあっては、オゾンガスの供給方法などにより、十分な効果を得ることが出来ないこともあった。
【0006】
本発明は、このような点に着目してなされたもので、アルミニウム表面により緻密な酸化不動態膜を形成することのできる表面処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために本発明は、バリア型アノード酸化処理を施したアルミニウムからなる母材(以下、アルミニウム母材という)をオゾンガスに曝すことにより、さらにオゾンによる酸化処理を施すようにしたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、バリア型アノード酸化処理を施したアルミニウム母材をオゾンガスに曝すことにより、アルミニウム表面により緻密な酸化不動態膜を形成する。これにより、アルミニウム表面での微細な孔を減少させたり金属内部からのガス離脱を抑制したり、アルミニウム表面で生じるガス分解を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】酸化膜形成処理を施した容器内に充填したオゾンガスでのオゾン分解率の経時変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に使用することができるアルミニウム母材としては特に制限するものではない。例えば、純アルミ系の1000系合金、Al−Cu系、Al−Cu−Mg系の2000系合金、Al−Mn系の3000系合金、Al−Si系の4000系合金、Al−Mg系の5000系合金、Al−Mg−Si系の6000系合金、Al−Zn−Mg−Cu系、Al−Zn−Mg系の2000系合金、の7000系合金、7N01合金等を使用することができるが、特に、純アルミ系、2000系、3000系、5000系、6000系のアルミニウム合金が望ましい。
【0011】
アルミニウム母材に対するバリア型アノード型酸化皮膜の形成方法については特に限定されるものではないが、従来知られた方法である、リン酸および硝酸に母材を浸漬した後に純水洗浄し、その後アジピン酸アンモニウム溶液中で一定時間所定の電圧をかけることで形成する。
【0012】
アルミニウム母材に晒すオゾンガスは、酸化不動態膜の形成の観点からは濃度が高いほど好ましいものの、一般的なオゾナイザーのオゾン発生能力で供給できる5〜30vol%の濃度範囲が処理条件として設定できる。また、オゾンは爆発性を有することから、爆発限界以下である5〜10vol%の濃度範囲が安全の面でさらに好ましい処理条件として設定できる。
【0013】
このバリア型アノード酸化皮膜を形成したアルミニウム母材を110℃未満の温度に維持した状態で5vol%オゾンガスを大気圧下で24時間から48時間流通暴露させて、アルミニウム母材表面にオゾンパッシベーション処理を施し、酸化不動態膜を形成する。
【0014】
アルミニウム母材で形成した試験用容器の内面に対して、上述の処理を施した場合、前処理としてのバリア型アノード酸化皮膜形成処理だけを施した場合、従来のオゾン酸化膜形成処理だけを施した場合、何の処理も施さなかった場合とで、それぞれ500ppbオゾン(残り酸素)をゲージ圧0.99MPaで充填した状態での経過時間(日)と充填オゾン分解率との関係を表1及び図1に示す。
【0015】
【表1】

【0016】
上記対比結果から、前処理としてバリア型アノード酸化皮膜形成処理を施しただけのものに比べても、本発明処理を施すことで8日経過後のオゾンの分解率は1/3.5程度に減少している。これにより、本発明処理によりアルミニウム表面に、より緻密な酸化不動態膜を形成できることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明は、特に、高純度や濃度の安定性を必要とするガス容器、半導体や液晶製造で使用するCVD装置、ドライエッチング装置、PVD装置、イオン注入装置、スパッタリング装置などの内面処理に最適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バリア型アノード酸化処理を施したアルミニウム又はアルミニウム合金からなる母材にオゾンガスを曝し、さらに酸化処理を施すようにしたことを特徴とするアルミニウムの表面処理方法。

【図1】
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