説明

アルミニウムろう付け用ペースト組成物

【課題】 保存安定性、塗布性(具体的には、ディスペンサーによる吐出性や加圧安定性等)、及びろう付け性をバランス良く向上させたアルミニウムろう付け用ペースト組成物を提供する。
【解決手段】 アルミニウムろう付け用ペースト組成物は、(a)ろう付け用金属粉末40〜65重量%、 (b)フッ化物系フラックス5〜35重量%、 (c)メタクリル酸エステル系重合体1〜10重量%、および(d)有機溶剤10〜40重量%を含有し、前記成分(d)が芳香環及び水酸基を有さない炭化水素系有機溶剤であり、23℃における粘度が6,000〜200,000mPa・sのペースト状である。アルミニウムろう付け方法は、アルミニウム製の部材をろう付けする方法であって、前記アルミニウムろう付け用ペースト組成物を前記部材に塗布し、該部材を所定の構造に組み立てた状態で加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保存安定性、塗布性及びろう付け性に優れたアルミニウムろう付け用ペースト組成物と、これを用いたアルミニウムろう付け方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両に搭載されるエバポレータ、コンデンサ等によって代表される自動車用アルミニウム熱交換器には、アルミニウム又はアルミニウム合金製の部材が用いられる。これら部材をろう付けする際には、ろう付け用のフラックス又はフラックスとろう材との混合物に対して、さらに接合部に均一に付着させるためのバインダーを混合してなる組成物を、ろう付け部に塗布した後、組み付け加工し、加熱することにより、ろう付け作業が行われている。
【0003】
このようなアルミニウムろう付け用組成物の従来技術としては、下記(1)〜(6)が挙げられる。
(1) 特許文献1
ろう付け用金属粉末と、分子量1,000〜100,000のアクリル系樹脂(バインダー)と、水或は有機溶剤とを含有し、溶液粘度が10〜5,000cpsであるアルミニウム又はアルミニウム合金用ろう材組成物が開示されている(特許請求の範囲、第1項〜第3項)。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の発明においては、溶媒として水を使用可能としており、水を使用すると、アルミニウム合金と水とが経時的に反応して水素を発生するため、保存安定性及び安全性に問題があった。また、溶液粘度が10〜5,000cps(mPa・s)であると、ろう付け用金属粉末が経時的に沈降し、やはり保存安定性に問題があるうえ、母材に塗布した際に、粘度が低いためタレが生じ、安定したろう付けができないという問題もあった。また、ろう付けするためにはフラックスを追加供給する必要があり、操作も煩雑であった(第4欄第22行〜第24行)。
さらに、上記特許文献1記載の発明では、アクリル系樹脂をバインダーとして使用しているので、ろう付け性が低下するという問題があった(後述の比較例4参照)。
【0005】
(2) 特許文献2
上記特許文献1と概ね同じようなアルミニウム又はアルミニウム合金用ろう材組成物を用いた、熱交換器の製造方法が開示されている(特許請求の範囲、第1項〜第3項)。
しかしながら、上記特許文献2にも、上記特許文献1と同様の問題があった。
【0006】
(3) 特許文献3
ろう付け用金属粉末とバインダ樹脂とC1〜C8の脂肪族アルコールとを含有するろう付け用組成物が開示されている(請求項1と4)。
上記バインダ樹脂には、分子量1,000〜100,000のアクリル系又はメタクリル系の樹脂が挙げられ、実施例1〜9ではアクリル酸ブチルが例示されている(段落9、段落23〜32)。
【0007】
しかしながら、上記特許文献3によれば、ろう付け用組成物に溶剤としてC1〜C8の脂肪族アルコール(メタノール、エタノール、プロパノールなど;請求項3)を使用すると、他の溶剤と比較してろう付け性が良好であるとの試験結果(表−1参照)が記載されているが、実際には、ろう付け性が低下するという問題があった(後述の比較例4参照)。
【0008】
(4) 特許文献4
ろう付け用金属粉末30〜70重量%と、フラックス2〜30重量%と、ブチルゴム及び/又は石油樹脂(C5系、C9系などの石油樹脂;段落11)1〜15重量%(バインダー)と、残部が有機溶剤(0.1〜67重量%;段落12)とからなるアルミニウムろう付け用ペースト組成物が開示されている(請求項1)。ここで用いられる有機溶剤は、ブチルゴムが可溶なものであり、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサンなどが例示されている(段落12)。
しかしながら、上記特許文献4記載の発明では、ブチルゴムをバインダーとして使用するため、臭気があり、タレ性が悪化するという問題があった(後述の比較例5参照)。
【0009】
(5) 特許文献5
ろう付け用金属粉末10〜70重量%と、フラックス2〜50重量%と、バインダー1〜15重量%と、残部(0.1〜87重量%:段落17)が有機溶剤とからなるアルミニウムろう付用ペースト組成物が開示されている(請求項1)。ここで用いられるバインダーとしては、アクリル樹脂とブチルゴム、アクリル樹脂と石油樹脂(C5系、C9系などの石油樹脂)からなる混合物などが列挙されている(請求項1、段落16)。また、ここで用いられる有機溶剤としては、バインダーが可溶なものであり、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサンなどが例示されている(段落17)。尚、上記ろう付け用組成物には、増粘剤、可塑剤などの各種添加剤を添加しても差し支えないことが記載されている(段落23)。
【0010】
しかしながら、上記特許文献5記載の発明では、アクリル系樹脂を単独でバインダーとして使用すると、ろう付け性が低下する(表2の比較例2)ため、アクリル系樹脂とともにブチルゴムや石油樹脂を併用する必要がある。それに伴い、樹脂の相溶性が悪くなるため、樹脂がゲル化し塗布性が悪化するという問題があった。
【0011】
(6) 特許文献6
ろう付け用金属粉末100重量部と、フラックス0.5〜15重量部と、平均分子量100,000〜5,000,000のポリアルキレンオキシド系樹脂からなるバインダー0.5〜50重量部と、有機溶剤30〜150重量部とからなるアルミニウム部材のろう付用ペーストが開示されている(請求項1、段落31)。また、このろう付け用ペーストには、粘度調整剤として、ワックス、硬化油、硬化ヒマシ油、脂肪酸アミド、ポリアミドなどが使用でき、当該ペーストの粘度は、通常は5,000〜500,000cps/23℃であることが記載されている(段落29)。
【0012】
しかしながら、上記特許文献6記載の発明では、ポリアルキレンオキシド系樹脂をバインダーとしているため、本質的に熱分解性能に劣る。そのため、ろう付け時の雰囲気(酸素濃度)が比較的高い場合には、黒色残渣物が発生するという問題があった。
【0013】
【特許文献1】特許第2681380号公報
【特許文献2】特許第2873695号公報
【特許文献3】特許第3247150号公報
【特許文献4】特許第3705939号公報
【特許文献5】特開2001−225185号公報
【特許文献6】特開平7−155987号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の課題は、保存安定性、塗布性(具体的には、ディスペンサーによる吐出性や加圧安定性等)、及びろう付け性をバランス良く向上させたアルミニウムろう付け用ペースト組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、アルミニウムろう付け用ペースト組成物にあっては、上述の通り、水を溶剤として使用すると保存安定性が損なわれること、アクリル系樹脂をバインダとして使用したり、アルコールを溶剤として使用したりすると、ろう付け性が低下すること、さらに、簡便かつ迅速に塗布するためには、ろう付け用金属粉末、フラックス、バインダー及び有機溶剤のすべてをろう付け用組成物に含有させ、一度にすべての材料を供給することが望ましいこと、などに鑑み、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた。その結果、ろう付け用金属粉末、フラックス、バインダー及び有機溶剤の各含有量、組成物全体の粘度、バインダー及び有機溶剤の種類を特定化することにより、保存安定性、塗布性、及びろう付け性をバランス良く向上できることを見出し、本発明を完成した。
【0016】
すなわち、本発明のアルミニウムろう付け用ペースト組成物は、(a)ろう付け用金属粉末40〜65重量%、(b)フッ化物系フラックス5〜35重量%、(c)メタクリル酸エステル系重合体1〜10重量%、および(d)有機溶剤10〜40重量%を含有し、前記成分(d)が芳香環及び水酸基を有さない炭化水素系有機溶剤であり、23℃における粘度が6,000〜200,000mPa・sのペースト状である、ことを特徴とする。
【0017】
本発明のアルミニウムろう付け方法は、アルミニウム製の部材をろう付けする方法であって、前記本発明のアルミニウムろう付け用ペースト組成物を前記部材に塗布し、該部材を所定の構造に組み立てた状態で加熱する、ことを特徴とする。
なお、本発明において、アルミニウムとは、純アルミニウムとアルミニウム合金の両方を包含する概念である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、長期の保存安定性と、塗布性、特にディスペンサーによる吐出性及び加圧安定性と、ろう付け性のいずれにも優れたアルミニウムろう付け用ペースト組成物を提供できる。また、この本発明のアルミニウムろう付け用ペースト組成物は、ろう付け用金属粉末(ろう材)とフラックスとを含んでおり、ろう付けに際して一度にすべての材料を供給できるので、迅速かつ簡便に塗布作業を行うことができる、という効果もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明のアルミニウムろう付け用ペースト組成物(以下、「ペースト組成物」と称することもある)は、 (a)ろう付け用金属粉末と、 (b)フッ化物系フラックスと、(c)メタクリル酸エステル系重合体と、(d)有機溶剤とを含有するものである。
【0020】
本発明のペースト組成物を構成する(a)ろう付け用金属粉末(これを成分(a)とする)は、ろう材粉末として含有させるものである。前記成分(a)は、特に制限されるものではなく、従来からアルミニウムのろう付けに用いられているものを任意に使用できる。具体的には、前記成分(a)は、例えば、金属ケイ素、ケイ素−アルミニウム合金、ケイ素−亜鉛合金、ケイ素−アルミニウム−亜鉛合金、ケイ素−マグネシウム合金、ケイ素−アルミニウム−マグネシウム合金、ケイ素−銅合金、ケイ素−アルミニウム−銅合金、アルミニウム−亜鉛合金からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。なお、成分(a)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0021】
本発明のペースト組成物を構成する (b)フッ化物系フラックス(これを成分(b)とする)は、アルミニウム表面の酸化被膜を除去する役割を果たす。例えば、塩化物系フラックスにも酸化被膜を除去する機能はあるが、塩化物系フラックスを用いると、ろう付け後に得られる成形品(熱交換器等)の腐食が懸念される。これに対して、フッ化物系フラックスは非腐食性であるため、ろう付け後の腐食のリスクを回避できる。前記成分(b)は、特に制限されるものではなく、通常アルミニウムのろう付けに用いられるものを任意に使用できる。具体的には、前記成分(b)は、例えば、フルオロアルミン酸カリウム、フッ化カリウム、フッ化アルミニウム、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フルオロアルミニウム酸カリウム−セシウム錯体(非反応性セシウム系フラックス)、フルオロアルミン酸セシウム(非反応性セシウム系フラックス)、フルオロ亜鉛酸カリウム(反応性亜鉛置換フラックス)、フルオロ亜鉛酸セシウム(反応性亜鉛置換フラックス)からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。なお、成分(b)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0022】
前記成分(b)として用いることのできる市販のフラックスとしては、例えば、Solvay社製の「Nocolok Flux(フルオロアルミン酸カリウム)」、「Nocolok Cs Flux(セシウム系フラックス) 」などがある。また、前記成分 (a)と前記成分(b)との混合物として市販されている、Solvay社製の「Nocolok Sil Flux(フルオロアルミン酸カリウムと金属ケイ素粉末との混合物)」を用いることもできる。
【0023】
本発明のペースト組成物を構成する(c)メタクリル酸エステル系重合体(これを成分(c)とする)は、本発明のペースト組成物をアルミニウム部材に塗布する際のバインダーの役割を果す。(c)メタクリル酸エステル系重合体としては、各種メタクリル酸エステルのホモポリマー、各種メタクリル酸エステルの共重合体、各種メタクリル酸エステルと疎水性モノマーや親水性モノマーとの共重合体などが挙げられる。なお、成分(c)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0024】
前記各種メタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル等のC1〜C18アルキルエステル;メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ポリプロピレングリコールエステル、メタクリル酸ポリエチレングリコールエステルのほか、エステル部分にアルキレンオキシドが付加したメタクリル酸エステル(例えば、CH2=C(CH3)COO(C24O)nH(nは、例えば2〜12の整数)など)等の水酸基含有メタクリル酸エステル;などが好ましく挙げられる。
【0025】
前記疎水性モノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−クロルスチレンなどのスチレン類が挙げられる。
前記親水性モノマーとしては、例えば、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、(無水)シトラコン酸、あるいはこれらの塩のような不飽和カルボン酸類;スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、イソプレンスルホン酸、あるいはこれらの塩のような不飽和スルホン酸類;などが挙げられ、これらの中でも特に、メタクリル酸が好ましい。
【0026】
ところで、アルミニウム合金等のろう付け用金属の粉末は一般に表面が親水性であるので、分散性や親和性の点からは、前記成分(c)を構成するモノマーとしては親水性を有するモノマーを選択することが望ましい。ただし、親水性モノマーとして上述したカルボキシル基含有モノマーやスルホン酸基含有モノマーは、酸成分であるため、場合によっては、ろう材粉末と反応することが懸念され、また、熱分解性の点でろう付け性に問題を生じるおそれもある。したがって、ろう付け用金属粉末との分散性や親和性を考慮して、親水性を有するモノマーを選択する場合には、水酸基含有モノマーを用いることが好ましい。このとき、前記成分(c)を構成する全モノマーに占める水酸基含有モノマーの含有率は、(d)有機溶剤とする炭化水素系有機溶剤に対する溶解性を考慮すると、10重量%以下であることが好ましい。
【0027】
以上のことに鑑みると、本発明においては、前記(c)メタクリル酸エステル系重合体が、メタクリル酸のC1〜C18アルキルエステルのホモポリマー、及びメタクリル酸のC1〜C18アルキルエステルと水酸基含有メタクリル酸エステルとの共重合体からなる群より選ばれる重合体であることが好ましく、特に、メタクリル酸のC1〜C18アルキルエステルと水酸基含有メタクリル酸エステルとの共重合体であることがより好ましい。
【0028】
前記(c)メタクリル酸エステル系重合体は、塊状重合、溶液重合、懸濁重合などの公知の重合法により、所定のモノマーをラジカル重合させることにより得られる。
なお、本発明のペースト組成物においては、前記成分(c)の含有量が後述する範囲である限り、前記成分(c)以外のものをバインダーとして用いることもできるが、その場合、前記成分(c)以外のバインダーを構成するモノマーとして、アクリル酸エステルやアクリル酸などのアクリル系モノマーが含まれていると、ろう付け性が低下する。また、前記成分(c)を構成する親水性モノマーとして、アクリル系モノマーが含まれていても、ろう付け性は低下する。したがって、本発明のペースト組成物においては、全ての構成成分から、アクリル系モノマーを排除することが好ましい。
【0029】
前記(c)メタクリル酸エステル系重合体は、重量平均分子量(以下、「Mw」と略記することがある)が500,000〜2,000,000であることが好ましく、より好ましくは600,000〜1,200,000である。重量平均分子量が前記範囲よりも小さいと、ディスペンサーの加圧安定性が悪化するおそれがあり、一方、前記範囲よりも大きいと、ディスペンサーの吐出制御が困難になるおそれがある。
【0030】
本発明のペースト組成物を構成する(d)有機溶剤(これを成分(d)とする)は、芳香環及び水酸基を有さない炭化水素系有機溶剤である。芳香環を有する溶剤(即ち、芳香族系溶剤)は、労働衛生、安全性、環境保全、臭気の見地から排除される。水酸基を有する溶剤(即ち、アルコール系溶剤)は、保存安定性の見地から排除される。特に、水酸基を有する溶剤は、水が共存する場合には、ろう材粉末と経時的に反応し易く、保存安定性や安全性を損なう原因となる。なお、成分(d)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0031】
前記成分 (d)とする炭化水素系有機溶剤としては、芳香環及び水酸基を有さないものであれば特に制限はなく、任意のものが使用できる。例えば、ナフテン系のような脂環式炭化水素類などが好ましく挙げられる。臭気抑制による作業の円滑性の見地からは、前記炭化水素系有機溶剤の沸点は、150℃以上であることが好ましく、より好ましくは180℃以上である。前記成分(d)として用いることのできる市販の炭化水素系有機溶剤としては、例えば、エクソン・モービル社製の「エクソールD80」などがある。
【0032】
本発明のペースト組成物において、前記成分(a)〜成分(d)の各含有量は、それぞれ、組成物中、下記の通りである。
(a)ろう付け用金属粉末:40〜65重量%、好ましくは45〜55重量%
(b)フッ化物系フラックス:5〜35重量%、好ましくは10〜25重量%
(c)メタクリル酸エステル系重合体:1〜10重量%、好ましくは3〜5重量%
(d)有機溶剤:10〜40重量%、好ましくは20〜35重量%
前記成分(a)および前記成分(b)の含有量が、それぞれ、前記範囲より少ないと、ろう付け用組成物としての機能を果たせなくなり、一方、前記範囲よりも多いと、相対的に他の成分の割合が少なくなるので、塗布性の悪化などの不都合が生じる。前記成分(c)の含有量が、前記範囲よりも少ないと、ろう付け性が低下し、一方、前記範囲よりも多くても、やはり、ろう付け性が低下する。前記成分(d)の含有量が、前記範囲よりも少ないと、流動性が低下し、塗布が困難になり、一方、前記範囲よりも多いと、粘度が低下し、ろう付け用金属粉末が経時的に沈降して保存安定性が悪くなり、ひいては、塗布した際の製品の品質自体の低下あるいは当該品質の安定性の低下を招くことになる。
【0033】
本発明のペースト組成物には、必要に応じて、酸化防止剤(例えば、BHT等)、腐食防止剤(例えば、ベンゾトリアゾール等)、消泡剤(例えば、シリコンオイル、グリセリン等)、増粘剤(例えば、ワックス、硬化油、脂肪酸アミド、ポリアミド等)、着色剤などの各種添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲で、含有させることができる。特に、増粘剤を添加すると、得られるペースト組成物の保存安定性、タレ防止性、ろう付け性などをさらに改善することができるので好ましい。
【0034】
前記増粘剤としては、特に制限はされないが、脂肪酸アミド系増粘剤および硬化ひまし油系増粘剤から選ばれる1種以上であることが好ましい。増粘剤の含有量は、組成物に対して、通常0.1〜5重量%であり、好ましくは0.3〜1重量%である。増粘剤の含有量が前記範囲よりも少ないと、保存安定性やタレ防止性の改善効果が不充分となる場合があり、一方、前記範囲よりも多いと、ろう付け性が却って低下するおそれがある。
【0035】
脂肪酸アミド系増粘剤の市販品としては、例えば、日本精化(株)製の「ニュートロン」、「ニュートロン−P」、「ニュートロン−2」、「ニュートロン−S」、「ニュートロン−D」、伊藤製油(株)製の「ITOHWAX J−50」、「ITOHWAX J−400」、「ITOHWAX J−420」、「ITOHWAX J−500」、「ITOHWAX J−510」、「ITOHWAX J−520」、「ITOHWAX J−530」、「ITOHWAX J−550S」、「ITOHWAX J−610」、「ITOHWAX J−630」、「ITOHWAX J−700」、「ASA−T」、「ASA−D」、日本化成(株)製の「AP−1」、「D−O−200」、「NA−SO」、「スリパックスE」、「スリパックスO」、「スリパックスPXS」、「スリパックスH」、ハリマ化成(株)製の「ニューマイド825」、「ニューマイド830」、「ニューマイド840」、「ニューマイド850」、「ニューマイド945」などがあり、中でも、日本化成(株)製の「スリパックスH」が特に適している。硬化ひまし油系増粘剤の市販品としては、例えば、伊藤製油(株)製の「リックサイザー GR−301」、「リックサイザー GR−501」、「ヒマシ硬化油」等が挙げられる。
【0036】
本発明のペースト組成物は、23℃における粘度が、6,000〜200,000mPa・sのペースト状であることが必要である。好ましくは、23℃における粘度は6,000〜100,000mPa・sであるのがよい。当該ペースト組成物の粘度が、前記範囲の上限を超えると、流動性が低下して、ディスペンサーから吐出できず、塗布が困難になり、一方、前記範囲の下限より小さいと、ろう材粉末が経時的に沈降して保存安定性に問題が発生する。なお、本発明おける組成物の粘度は、スパイラルポンプ式粘度計を用い、攪拌速度10rpmで測定される。
【0037】
なお、本発明のペースト組成物のうち、23℃における粘度が比較的低いものは、ディスペンサーからの吐出が円滑であるので線状塗布に適し、他方、粘度が比較的高いものは、ディスペンサーからの吐出ダレが生じにくいので、点状塗布に適する。
【0038】
本発明のアルミニウムろう付け方法は、前記本発明のペースト組成物をアルミニウム製の部材に塗布し、該部材を所定の構造に組み立てた状態で加熱することにより、アルミニウム製部材をろう付けする方法である。
【0039】
ペースト組成物をアルミニウム製部材に塗布する際の方法は、特に制限されるものではなく、例えば、はけ塗り、スプレー塗装、ロールコーター、バーコーター、ドクターブレードなど、公知の方法を採用することができる。また、ペースト組成物の塗布量についても、特に制限はなく、ろう付けしようとする部材の構造などを考慮し、ろう付け後に充分な接合強度が得られるよう適宜設定すればよい。なお、ペースト組成物の塗布後、部材を所定の構造に組み立てる前もしくは組み立てた後に、必要に応じて、ペースト組成物を乾燥させておくこともできる。
【0040】
ペースト組成物を塗布した後、前記部材を所定の構造に組み立てた状態で加熱する際には、公知のろう付け方法に準じ、例えば、炉中でろう付する方法などを採用することができる。加熱温度(ろう付け温度)は、ペースト組成物の組成にもよるが、通常450℃〜630℃程度である。加熱の際の雰囲気は、特に制限されないが、真空、Ar、窒素等の雰囲気が好ましい。
【実施例】
【0041】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、下記の実施例および比較例において、「部」、「%」は、特記しない限り重量基準である。
【0042】
下記の実施例1〜6のうち、実施例6は増粘剤を使用しない例、他の実施例はすべて増粘剤を含有させた例である。
実施例1〜3は、成分(a)であるろう付け用金属粉末(ろう材粉末)の種類を変化させ、それ以外の成分と組成を共通化した例である。実施例4は、実施例1を基本として、成分(c)であるメタクリル酸エステル系重合体の種類を変えた例である。実施例5は、実施例1〜4とは全体の組成を変えた例である。ちなみに、前記成分(c)(バインダー)として、実施例1〜3及び5ではメタクリル酸2−エチルヘキシルのホモポリマー(メタクリル酸エステル系重合体(A))を使用し、実施例4及び6ではメタクリル酸2−エチルヘキシルとメタクリル酸2−ヒドロキシエチルとの共重合体(メタクリル酸エステル系重合体(C))を使用した。
【0043】
一方、下記の比較例1〜8のうち、比較例1は、ペースト組成物の粘度が本発明の適正範囲の上限を超えた例である。比較例2は、ペースト組成物の粘度が本発明の適正範囲の下限より小さく、成分(c)であるメタクリル酸エステル系重合体の重量平均分子量が90,000の例である。比較例3は、フラックスを含まず、成分(a)であるろう付け用金属粉末の含有量が本発明の適正範囲の上限を超えた例である。比較例4は、冒述の特許文献1(特許第2681380号公報)に準拠してバインダーとしてアクリル系樹脂(アクリル酸エステル系重合体(E))を使用し、溶剤としてエタノールを使用するとともに、ペースト組成物の粘度が本発明の適正範囲の下限より小さい例である。比較例5は、冒述の特許文献4(特許第3705939号公報)に準拠してバインダーとしてブチルゴムを使用し、溶剤としてトルエンを使用した例である。比較例6は、成分(c)であるメタクリル酸エステル系重合体の含有量が本発明の適正範囲の上限を超えた例である。比較例7は、バインダーを用いず、増粘剤(脂肪酸アミド)を1.2重量部に増量した例である。比較例8は、バインダー樹脂として、メタクリル酸エステル系重合体ではなく、アクリル酸エステル系重合体(F)を用いたこと以外は、本発明の要件を満たす例である。
【0044】
(実施例1〜6及び比較例1〜8)
表1および表2に示す組成に基づき各配合成分を混合して、表1および表2に示す粘度(23℃)を有するアルミニウムろう付け用ペースト組成物を製造した。そして、得られた各ペースト組成物について、23℃における粘度をスパイラルポンプ式粘度計(マルコム社製「PCU−205」)を用い10rpmの攪拌速度で測定するとともに、下記(i)〜(vi)の各種評価試験を行った。結果を表1および表2に併せて示す。
なお、表1および表2に示す各配合成分の詳細は下記の通りである。
【0045】
<ろう付け用金属粉末(ろう材粉末)>
・Al−12Si合金:平均粒子径=52μm
・Al−10Si合金:平均粒子径=55μm
・Al−10Si−1Zn合金:平均粒子径=49μm
<フラックス>
フッ化物系フラックス(フルオロアルミン酸カリウム):Solvay社製「ノコロックフラックス100」
【0046】
<バインダー>
・メタクリル酸エステル系重合体(A):
メタクリル酸2−エチルヘキシルホモポリマー(Mw=752,000)
・メタクリル酸エステル系重合体(B):
メタクリル酸2−エチルヘキシル:メタクリル酸2−ヒドロキシエチル=96:4(重量%)コポリマー(Mw=1,520,000)
・メタクリル酸エステル系重合体(C):
メタクリル酸2−エチルヘキシル:メタクリル酸2−ヒドロキシエチル=97:3(重量%)コポリマー(Mw=1,050,000)
・メタクリル酸エステル系重合体(D):
メタクリル酸2−エチルヘキシル:メタクリル酸2−ヒドロキシエチル=97:3(重量%)コポリマー(Mw=90,000)
・アクリル酸エステル系重合体(E):
アクリル酸エチル:アクリル酸2−ヒドロキシエチル=97:3(重量%)コポリマー(Mw=76,000)
・アクリル酸エステル系重合体(F):
アクリル酸n−ブチル:アクリル酸エチル:アクリル酸2−ヒドロキシエチル=30:67:3(重量%)コポリマー(Mw=650,000)
・ブチルゴム:エクソン・モービル社製「ビスタネックス100」
【0047】
<溶剤>
・炭化水素系有機溶剤:エクソン・モービル社製「エクソールD80」(沸点200−250℃)
・トルエン
・エタノール
<増粘剤>
・脂肪酸ビスアミド系増粘剤:日本化成(株)製「スリパックスH」
【0048】
[評価試験]
(i)臭気
次の基準で評価した。
○:臭気はほとんどなかった。
×:臭気あり。
【0049】
(ii)保存安定性
200ccのガラス瓶にペースト組成物を200g入れて、23℃で2ヶ月間保存したときの保存安定性の優劣を次の基準で評価した。
○:初期状態と比較してほとんど変化なし。
△:初期状態と比較すると若干の相分離が発生していたが、かき混ぜると初期状態に戻った。
×:初期状態と比較すると分離が激しく、かき混ぜても初期状態に戻らなかった。
【0050】
(iii)塗布安定性(ディスペンサー吐出性)
クリアシリンジ(武蔵エンジニアリング(株)製「PSY−10E型」)にペースト組成物を10g入れて、内径2.5mmの吐出口を装着し、ディスペンサー(OKインターナショナル社製「DX−350型」)を用いて、吐出圧0.5MPaでの0.01秒間の吐出と1秒間の未吐出を繰り返したときの吐出量の安定性を次の基準で評価した。
○:50回の繰り返しで、吐出量の差が±3%未満であった。
△:50回の繰り返しで、吐出量の差が±3〜10%の範囲であった。
×:50回の繰り返しで、吐出量の差が±10%を超えた。
【0051】
(iv)塗布安定性(ディスペンサー加圧安定性)
クリアシリンジ(武蔵エンジニアリング(株)製「PSY−10E型」)にペースト組成物を10g入れて、内径2.5mmの吐出口を装着し、ディスペンサー(OKインターナショナル社製「DX−350型」)を用いて、吐出圧0.5MPaで0.01秒間吐出した後、加圧したまま吐出口を封じて1日間放置し、その後、再度0.01秒間吐出したときの放置前後の吐出量の差異を次の基準で評価した。
○:吐出量の差が±3%未満であった。
△:吐出量の差が±3〜10%の範囲であった。
×:吐出量の差が±10%を超えるか、又は吐出できなかった。
【0052】
(v)タレ性
アルミニウム板(JIS−A3003合金)上に0.1±0.01gのペースト組成物を直径10mmの範囲に円形に塗布した後、上記アルミニウム板を垂直に保持し、23℃で30分間放置したときのペースト組成物のタレ状況を目視観察して、次の基準で評価した。
○:5mm未満のタレであった。
△:5mm以上10mm未満のタレが確認された。
×:10mm以上のタレが確認された。
【0053】
(vi)ろう付け性
25mm×60mmのアルミニウム板(JIS−A3003合金)の長手方向に平行して中央部に、幅約5mm、高さ約2mmでペースト組成物を塗布した。他方、25mm×60mmのアルミニウム板(JIS−A3003合金)を別に1枚用意し、これを塗布したペースト組成物と接触するように垂直(逆T字型)に立て、ステンレスワイヤーで固定して、ろう付け性評価用試験片を作成した。
次いで、上記試験片を箱形ろう付け炉((株)ノリタケTCF製「A−BC−M型」)に挿入し、窒素雰囲気下(酸素濃度100ppm以下)にて、30℃から610℃まで約10分かけて昇温して、ろう付けを実施した。そして、ろう付け後のフィレットの形成状態を目視観察し、ろう付け性の優劣を下記の基準で評価した。
○:完全なフィレットが形成され、充分な接合強度が得られた。
△:フィレットの形成が不充分で、接合強度が弱かった。
×:ろう付けが不完全で接合されていなかった。
【0054】
【表1】

【0055】
【表2】

【0056】
表1および表2から、次のことが明らかになった。
すなわち、ろう付け用ペースト組成物の粘度が本発明の適正範囲より高い比較例1では、ディスペンサーの吐出安定性が悪く、逆に、上記適正範囲より低い比較例2では、ディスペンサーの加圧安定性が悪く、いずれの場合も塗布安定性が損なわれていた。また、比較例2では、組成物の粘度が低すぎるため、ろう材粉末が経時的に沈降して保存安定性も損なわれた。
これに対して、ペースト組成物の粘度が本発明の適正範囲にある実施例1〜6では、塗布安定性(吐出性および加圧安定性)に優れ、保存安定性やろう付け性などの他の評価にも優れていた。
従って、ペースト組成物の粘度を本発明の適正範囲に保持することの重要性が確認できた。
【0057】
ちなみに、実施例1〜6で用いたメタクリル酸エステル系重合体(A)及びメタクリル酸エステル系重合体(C)の重量平均分子量は600,000〜1,200,000の範囲内にあり、上記粘度の適正化に関連して、バインダーとするメタクリル酸エステル系重合体の重量平均分子量を特に好ましい範囲(600,000〜1,200,000)に適正化することで、組成物の性能評価をより良く向上させることができることもわかった。
【0058】
ペースト組成物の粘度が本発明の適正範囲にあっても、バインダーとするメタクリル酸エステル系重合体の含有量が本発明の適正量より多い比較例6では、ろう付け性が悪くなり、また、バインダーを使用せず、増粘剤の増量で粘度を適正化した比較例7では、増量した増粘剤の悪影響により、やはりろう付け性が悪化した。一方、フラックスを含まず、ろう材の含有量が本発明の適正量より過大な比較例3では、ろう付け性が悪かった。
これに対して、メタクリル酸エステル系重合体、ろう材およびフラックスを本発明の適正量含有した実施例1〜6では、ろう付け性に優れ、その他の性能評価にも優れていた。
従って、ペースト組成物を構成成分として、(a)ろう付け用金属粉末、(b)フッ化物系フラックス、(c)メタクリル酸エステル系重合体、および(d)有機溶剤を、それぞれ適正量含有させることの重要性が確認できた。
【0059】
成分(a)〜(d)の含有量や組成物の粘度などは本発明の要件を満たすが、バインダーがメタクリル酸エステル系重合体ではなくアクリル系重合体である比較例8では、ろう付け性が悪く、ディスペンサーの吐出安定性も劣った。また、バインダーとしてアクリル系重合体を使用し、組成物の粘度や溶剤の種類が本発明の要件から外れる比較例4では、ろう付け性、塗布安定性、保存安定性などのあらゆる評価が悪化した。さらに、バインダーとしてブチルゴムを使用し、溶剤の種類が本発明の要件から外れる比較例5では、タレ性が悪く、ディスペンサーの吐出安定性も劣った。加えて、上記比較例4および比較例5では、臭気の面でも問題があった。
これに対して、バインダーとしてメタクリル酸エステル系重合体を選択し、溶剤として芳香環及び水酸基を有さない炭化水素系有機溶剤を選択した実施例1〜6では、ろう付け性を初め、その他すべての性能評価にも優れていた。
従って、塗布安定性、保存安定性、タレ性及びろう付け性などをバランス良く向上し、かつ臭気の問題を回避するためには、バインダーにメタクリル酸エステル系重合体を選択し、溶剤として芳香環及び水酸基を有さない炭化水素系有機溶剤を選択することの重要性が確認できた。
【0060】
次いで、実施例1〜6を相対的に評価すると、増粘剤(脂肪酸アミド)を含有する実施例1〜5は、増粘剤を含有しない実施例6に比べ、保存安定性やディスペンサーの加圧安定性の点で優位であることが分かった。ただし、実施例6の保存安定性やディスペンサーの加圧安定性は、実施例1〜5に比べると、若干劣るものの、実用上に支障のないレベルであった。
なお、実施例1では、他の実施例に比べ、タレ性がやや後退したが、実用上に支障のないレベルであった。これは、実施例1の組成物の粘度が他の実施例より小さいことに主に起因するものと推定できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ろう付け用金属粉末40〜65重量%、
(b)フッ化物系フラックス5〜35重量%、
(c)メタクリル酸エステル系重合体1〜10重量%、および
(d)有機溶剤10〜40重量%を含有し、
前記成分(d)が芳香環及び水酸基を有さない炭化水素系有機溶剤であり、23℃における粘度が6,000〜200,000mPa・sのペースト状である、ことを特徴とするアルミニウムろう付け用ペースト組成物。
【請求項2】
前記(c)メタクリル酸エステル系重合体の重量平均分子量が500,000〜2,000,000である、請求項1記載のアルミニウムろう付け用ペースト組成物。
【請求項3】
前記(c)メタクリル酸エステル系重合体が、メタクリル酸のC1〜C18アルキルエステルのホモポリマー、及びメタクリル酸のC1〜C18アルキルエステルと水酸基含有メタクリル酸エステルとの共重合体からなる群より選ばれる重合体である、請求項1または2記載のアルミニウムろう付け用ペースト組成物。
【請求項4】
増粘剤をも含有する、請求項1〜3のいずれかに記載のアルミニウムろう付け用ペースト組成物。
【請求項5】
前記増粘剤が脂肪酸アミド系増粘剤および硬化ひまし油系増粘剤から選ばれる1種以上である、請求項4記載のアルミニウムろう付け用ペースト組成物。
【請求項6】
前記増粘剤の含有量が、組成物中0.1〜5重量%である、請求項4または5記載のアルミニウムろう付け用ペースト組成物。
【請求項7】
前記(a)ろう付け用金属粉末は、金属ケイ素、ケイ素−アルミニウム合金、ケイ素−亜鉛合金、ケイ素−アルミニウム−亜鉛合金、ケイ素−マグネシウム合金、ケイ素−アルミニウム−マグネシウム合金、ケイ素−銅合金、ケイ素−アルミニウム−銅合金、アルミニウム−亜鉛合金からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜6のいずれかに記載のアルミニウムろう付け用ペースト組成物。
【請求項8】
前記(b)フッ化物系フラックスは、フルオロアルミン酸カリウム、フッ化カリウム、フッ化アルミニウム、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フルオロアルミニウム酸カリウム−セシウム錯体、フルオロアルミン酸セシウム、フルオロ亜鉛酸カリウム、フルオロ亜鉛酸セシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜7のいずれかに記載のアルミニウムろう付け用ペースト組成物。
【請求項9】
前記芳香環及び水酸基を有さない炭化水素系有機溶剤は、沸点が150℃以上である、請求項1〜8のいずれかに記載のアルミニウムろう付け用ペースト組成物。
【請求項10】
アルミニウム製の部材をろう付けする方法であって、請求項1〜9のいずれかに記載のアルミニウムろう付け用ペースト組成物を前記部材に塗布し、該部材を所定の構造に組み立てた状態で加熱する、ことを特徴とするアルミニウムろう付け方法。

【公開番号】特開2009−166122(P2009−166122A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−319762(P2008−319762)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(000233860)ハリマ化成株式会社 (167)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)