説明

アルミニウム管継手

【課題】量産性に優れ信頼性の高いアルミニウム管継手を提供する。
【解決手段】端部に向かうにしたがって径が拡大するテーパ部4を介して端部に拡径部5が形成された第一のアルミニウム管1と、外径が拡径部5の内径より小さく且つテーパ部4の最小内径より大きい第二のアルミニウム管2とからなり、第二のアルミニウム管2の端部が第一のアルミニウム管1の拡径部5内に挿入された状態で、第二のアルミニウム管2と第一のアルミニウム管1とがアルミろう3でろう付けされ、拡径部5の内周面に、第二のアルミニウム管2の先端位置における拡径部5の断面を見た場合の拡径部5の中心が第二のアルミニウム管2の先端の管の中心と略一致するように、第二のアルミニウム管2の先端の一部と当接して第二のアルミニウム管2の先端がテーパ部4に接触するのを防止する凸部6aを周方向に複数設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、家庭用あるいは業務用冷蔵庫、さらにはショーケース等の冷凍冷蔵機器分野における、冷却器(蒸発器)の一部のアルミニウム製冷媒管同士を接合した管継手にして用いられるアルミニウム管継手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム管同士の接合は、TIG溶接(タングステン−不活性ガス溶接)やアルミニウム合金ろうと非腐食性フラックスを用いたアルミニウムろう付、所謂ノコロックフラックスろう付などが一般的に使われる。
【0003】
冷凍冷蔵機器分野の冷却器におけるアルミニウム製冷媒管同士の接合には、現在もなお、TIG溶接が使われることが多い。この分野の冷却器は、水分が凍結と融解を繰り返す使用状況であるため、アルミニウム管の接合部にボイドが発生する可能性が高いアルミニウムろう付を積極的に使用していないのが現状である。
【0004】
冷凍冷蔵用冷却器に適用すると、ボイドを介して水分が浸入した場合、凍結パンクと呼ばれる現象を引き起こし継手の気密性が低下する。またボイドは、ろう回りが悪いときや、使用するフラックスがろうに巻き込まれるとき、発生するガスがろうに巻き込まれるとき等に発生し易く、その原因は温度バランスや継手の形状に影響されることが多い。
【0005】
しかしながら、TIG溶接に比べ、アルミニウムろう付は、気密性に優れた継手を製作することができるので、極力ボイドの発生を減らした継手を製作することが、この分野におけるアルミニウムろう付を適用するポイントとなる。
【0006】
従来の継手形状の一例として、端部に拡径部が形成されたアルミニウム管に、同径のアルミニウム管を挿入した状態でろう付されたアルミニウム管継手がある(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
図8乃至図12は、上記特許文献1に記載された従来のアルミニウム管継手を示すものである。図8は、従来のアルミニウム管継手を管軸を含む平面で切断した場合の縦断面図、図9は、図8のA−A断面図、図10は、ろう付前状態の従来のアルミニウム管継手を部分的に管軸を含む平面で切り欠いた場合の一部切欠き縦断面図である。
【0008】
また、図11は、ろうが外側に垂れた外タレ不良が発生している状態の従来のアルミニウム管継手を管軸を含む平面で切断した場合の縦断面図、図12は、ろうが内側に垂れた内タレ不良が発生している状態の従来のアルミニウム管継手を管軸を含む平面で切断した場合の縦断面図である。
【0009】
上記従来のアルミニウム管継手は、端部に向かうにしたがって径が拡大するテーパ部4を介して端部に拡径部5が形成された第一のアルミニウム管1と、外径が拡径部5の内径より小さく且つテーパ部4の最小内径より大きい第二のアルミニウム管2とからなり、第二のアルミニウム管2の端部が第一のアルミニウム管1の拡径部5内に挿入された状態で、第二のアルミニウム管2と第一のアルミニウム管1とがアルミろう3で接合されている。
【0010】
アルミろう3は、ろう付前はリング状のリングろう7が拡径部5内の第二のアルミニウム管2の端部の外周面と拡径部の内周面との接合部界面の上部にセットされている。リン
グろう7は、拡径部5の外径より小さく第二のアルミニウム管2の外径以上の内径を有するリング状で、ろう材7aとフラックス7bで構成されている。
【0011】
以上のように構成された従来のアルミニウム管継手について、以下その製造方法を説明する。
【0012】
図10に示すように、まず、第一のアルミニウム管1は拡径部5が形成された端部を鉛直方向の上向きにし、第二のアルミニウム管2の端部が第一のアルミニウム管1の拡径部5内に挿入されると共に、リングろう7が第二のアルミニウム管2を囲み第一のアルミニウム管1の拡径部5が形成された端部の上に載る状態にセットされる。
【0013】
次に、加熱手段(図示せず)によりリングろう7付近を加熱することで、全体が昇温されていき、最も融点の低いフラックス7bが溶融し、ろう材7a及び第一のアルミニウム管1と第二のアルミニウム管2の接合部界面に存在するアルミニウムの酸化皮膜を除去していく。
【0014】
次に、融点の低いろう材7aが溶融し、拡径部5内の第二のアルミニウム管2の端部の外周面と拡径部の内周面との接合部界面に充填・拡散されることで、第一のアルミニウム管1と第二のアルミニウム管2がろう付される。第一のアルミニウム管1と第二のアルミニウム管2が理想的にろう付された場合は、図8に示す状態になる。
【0015】
しかしながら、加熱手段による昇温プロセスは、第一のアルミニウム管1と第二のアルミニウム管2のわずかな肉厚のバラツキや、第一のアルミニウム管1の拡径部5に挿入される第二のアルミニウム管2のわずかな挿入寸法の差によって変わってしまう。
【0016】
図11は、拡径部5の外側にアルミろう3が垂れて、ろう外タレ3aが発生したアルミろう3の外タレ不良状態を示している。ろう外タレ3aは、第二のアルミニウム管2の端部が第一のアルミニウム管1のテーパ部4の内周面に接触している場合に多く発生し、第一のアルミニウム管1と第二のアルミニウム管2の接合界面にアルミろう3があまり充填されない状態となり、接合強度が低下している。
【0017】
図12は、拡径部5からテーパ部4の内周面にまでアルミろう3が垂れて、ろう内タレ3bが発生したアルミろう3の内タレ不良を示している。この内タレ不良は、加熱手段による第二のアルミニウム管2の規定時間における昇温が速すぎた場合に起こり、それに起因して第二のアルミニウム管2にオーバーベイクによる貫通孔8が発生した場合は、気密性が低下する。
【0018】
そこで、従来では、第二のアルミニウム管2の端部が第一のアルミニウム管1の拡径部5を通過してテーパ部4の内周面に接触しない程度に、第二のアルミニウム管2の端部を第一のアルミニウム管1の拡径部5内に挿入した状態でろう付を行い、第二のアルミニウム管2の端部が、第一のアルミニウム管1の拡径部5よりも若干速く昇温するように加熱手段による昇温を行うことにより、ろう外タレ3aやろう内タレ3b及びオーバーベイクによる貫通孔8の発生を抑制して、接合強度や気密性を確保するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開平9−174233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、従来の構成で、第二のアルミニウム管2の端部が第一のアルミニウム管1のテーパ部4の内周面に接触しない程度に、第二のアルミニウム管2の端部を第一のアルミニウム管1の拡径部5内に挿入した状態にするには、第一のアルミニウム管1と第二のアルミニウム管2を所定の挿入寸法で固定する必要がある。
【0021】
ところで、一般的に、アルミニウム管の長さ寸法にはバラツキがあり、第一のアルミニウム管1と第二のアルミニウム管2を固定しても、挿入寸法が所定の位置に決るとは限らないので、挿入寸法が所定寸法よりも短くなってしまった場合には、オーバーベイクが発生し易く、挿入寸法が所定寸法よりも長くなってしまった場合には、ろう外タレが発生し易くなる可能性があった。よって、量産時において、接合強度や気密性に問題がある不良品が発生する可能性があるという課題を有していた。
【0022】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、量産時において、接合強度や気密性に問題がある不良品が発生しにくいアルミニウム管継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記目的を達成するために、本発明は、第一のアルミニウム管の拡径部の内周面に、第二のアルミニウム管の先端位置における前記拡径部の断面を見た場合の前記拡径部の中心が前記第二のアルミニウム管の先端の管の中心と略一致するように、前記第二のアルミニウム管の先端の一部と当接して前記第二のアルミニウム管の先端が前記テーパ部に接触するのを防止する凸部を周方向に複数設けたのである。
【0024】
これにより、第一のアルミニウム管と第二のアルミニウム管の位置関係を固定する手段を講じなくとも、第一のアルミニウム管の拡径部の内周面の複数の凸部に第二のアルミニウム管の先端が当接するまで、第二のアルミニウム管の先端を第一のアルミニウム管の拡径部内に挿入するだけで、第二のアルミニウム管の先端が第一のアルミニウム管1のテーパ部4の内周面から離れた所定位置で、第二のアルミニウム管の先端の管の中心を拡径部の中心と略一致させることができる。
【0025】
さらに、第二のアルミニウム管の先端と複数の凸部との接触部分の合計の接触面積が広くなりすぎないように凸部の形状と凸部の個数を適切に設定すれば、理想的な昇温プロセスを実現することが可能となる。
【0026】
したがって、量産時において、接合強度や気密性が確実に確保されるアルミニウム管継手を提供することできるので、信頼性の高いアルミニウム管継手及びそれを使った冷却器、冷凍冷蔵機器を提供することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明のアルミニウム管継手は、第一のアルミニウム管の拡径部の内周面の複数の凸部に第二のアルミニウム管の先端が当接するまで、第二のアルミニウム管の先端を第一のアルミニウム管の拡径部内に挿入するだけで、第二のアルミニウム管の先端を所定位置に位置させて、理想的な昇温プロセスを実現することが可能となり、量産されたアルミニウム管継手の接合強度や気密性が確実に確保され、信頼性の高いアルミニウム管継手及びそれを使った冷却器、冷凍冷蔵機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態1におけるアルミニウム管継手を管軸を含む平面で切断した場合の縦断面図
【図2】図1のB−B断面図
【図3】図1のC−C断面図
【図4】本発明の実施の形態2におけるアルミニウム管継手を管軸を含む平面で切断した場合の縦断面図
【図5】図4のD−D断面図
【図6】本発明の実施の形態3におけるアルミニウム管継手を管軸を含む平面で切断した場合の縦断面図
【図7】図6のE−E断面図
【図8】従来のアルミニウム管継手を管軸を含む平面で切断した場合の縦断面図
【図9】図8のA−A断面図
【図10】ろう付前状態の従来のアルミニウム管継手を部分的に管軸を含む平面で切り欠いた場合の一部切欠き縦断面図
【図11】ろうが外側に垂れた外タレ不良が発生している状態の従来のアルミニウム管継手を管軸を含む平面で切断した場合の縦断面図
【図12】ろうが内側に垂れた内タレ不良が発生している状態の従来のアルミニウム管継手を管軸を含む平面で切断した場合の縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0029】
第1の発明は、端部に向かうにしたがって径が拡大するテーパ部を介して前記端部に拡径部が形成された第一のアルミニウム管と、外径が前記拡径部の内径より小さく且つ前記テーパ部の最小内径より大きい第二のアルミニウム管とからなり、前記第二のアルミニウム管の端部が前記第一のアルミニウム管の前記拡径部内に挿入された状態で、前記第二のアルミニウム管と前記第一のアルミニウム管とがろう付けされたアルミニウム管継手であって、前記拡径部の内周面に、前記第二のアルミニウム管の先端位置における前記拡径部の断面を見た場合の前記拡径部の中心が前記第二のアルミニウム管の先端の管の中心と略一致するように、前記第二のアルミニウム管の先端の一部と当接して前記第二のアルミニウム管の先端が前記テーパ部に接触するのを防止する凸部を周方向に複数設けたことを特徴とするアルミニウム管継手である。
【0030】
上記構成により、第一のアルミニウム管と第二のアルミニウム管の位置関係を固定する手段を講じなくとも、第一のアルミニウム管の拡径部の内周面の複数の凸部に第二のアルミニウム管の先端が当接するまで、第二のアルミニウム管の先端を第一のアルミニウム管の拡径部内に挿入するだけで、第二のアルミニウム管の先端が第一のアルミニウム管のテーパ部の内周面から離れた所定位置で、第二のアルミニウム管の先端の管の中心を拡径部の中心と略一致させることができる。
【0031】
さらに、第二のアルミニウム管の先端と複数の凸部との接触部分の合計の接触面積が広くなりすぎないように凸部の形状と凸部の個数を適切に設定すれば、理想的な昇温プロセスを実現することが可能となる。
【0032】
したがって、量産時において、接合強度や気密性が確実に確保されるアルミニウム管継手を提供することできるので、信頼性の高いアルミニウム管継手及びそれを使った冷却器、冷凍冷蔵機器を提供することができる。
【0033】
第2の発明は、特に第1の発明において、前記第一のアルミニウム管の前記拡径部の外周面にディンプル加工により略円弧状の凹部を設けることにより前記拡径部の内周面に前記凸部を設けたものであり、第一のアルミニウム管の拡径部の外周面の所定部分をディンプル加工ピンで内側に押圧することにより、第一のアルミニウム管の拡径部の内周面に複数の凸部を容易に設けることができる。
【0034】
第3の発明は、特に第1の発明において、前記第一のアルミニウム管の端部の拡径部形成時に非拡径部を設けることにより前記拡径部の内周面に前記凸部を設けたものであり、
拡径部を加工する工程で、同時に凸部を加工することができ、生産性を向上できる。
【0035】
第4の発明は、特に第1の発明において、内面に管長方向の溝が複数加工された管を、前記第一のアルミニウム管として用い、前記第一のアルミニウム管の端部を拡径するに際し、第二のアルミニウム管の先端位置が挿入される位置まで、前記溝を無くすように拡径加工されたことで、前記凸部が必然的に形成されるものである。
【0036】
上記構成により、第一のアルミニウム管の端部を拡径させる工程で、同時に、第一のアルミニウム管の拡径部の内周面に複数の凸部を設けることができるのみならず、接合界面に接するアルミニウム管の肉厚が略同じになることと、略同じ量のアルミろうで接合界面を充填することが可能となるので、溝なし管と略同じ加熱条件で接合することができる。
【0037】
よって、溝有無による接合条件の変更が不要となり工程での切換ロスやアルミろうの変更も不要になる。
【0038】
以下、本発明のアルミニウム管継手の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。なお、従来と同一構成については、同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0039】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるアルミニウム管継手を管軸を含む平面で切断した場合の縦断面図、図2は、図1のB−B断面図、図3は、図1のC−C断面図である。
【0040】
図1、図2、図3に示すように、本実施の形態におけるアルミニウム管継手は、端部に向かうにしたがって径が拡大するテーパ部4を介して端部に拡径部5が形成された第一のアルミニウム管1と、外径が拡径部5の内径より小さく且つテーパ部4の最小内径より大きい第二のアルミニウム管2とからなり、第二のアルミニウム管2の端部が第一のアルミニウム管1の拡径部5内に挿入された状態で、第二のアルミニウム管2と第一のアルミニウム管1とがアルミろう3でろう付けされている。
【0041】
また、本実施の形態におけるアルミニウム管継手は、第一のアルミニウム管1の拡径部5の外周面の複数の所定位置に押圧加工(ディンプル加工)により略円弧状の凹部を設けることにより、拡径部5の内周面に、第二のアルミニウム管2の先端位置における拡径部5の断面を見た場合の拡径部5の中心が第二のアルミニウム管2の先端の管の中心と略一致するように、第二のアルミニウム管2の先端の一部と当接して第二のアルミニウム管2の先端がテーパ部4に接触するのを防止する凸部6aを周方向に複数設けている。
【0042】
以上のように構成された本実施の形態のアルミニウム管継手ついて、以下その製法、作用を説明する。
【0043】
まず、第二のアルミニウム管2の先端の近傍にリングろう7を付け、第一のアルミニウム管1の拡径部5の内周面に形成された複数の凸部6aに第二のアルミニウム管2の先端が当接するまで、第二のアルミニウム管2の先端を第一のアルミニウム管1の拡径部5内に挿入する。
【0044】
このとき、第一のアルミニウム管1と第二のアルミニウム管2の位置関係を固定する手段を講じなくとも、第一のアルミニウム管1の拡径部5の内周面の複数の凸部6aに第二のアルミニウム管2の先端が当接するまで、第二のアルミニウム管2の先端を第一のアルミニウム管1の拡径部5内に挿入するだけで、第二のアルミニウム管2の先端が第一のアルミニウム管1のテーパ部4の内周面から離れた所定位置で、第二のアルミニウム管2の
先端の管の中心を拡径部5の中心と略一致させることができる。
【0045】
なお、凸部6aの形状と凸部6aの個数は、第二のアルミニウム管2の先端と複数の凸部6aとの接触部分の合計の接触面積が広くなりすぎないように設定する。また、凸部6aと拡径部5の中心軸との距離は、第二のアルミニウム管2の先端の外径(直径)の半分の寸法より短くする。
【0046】
第一のアルミニウム管1は拡径部5が形成された端部を鉛直方向の上向きにし、リングろう7が第二のアルミニウム管2を囲み第一のアルミニウム管1の拡径部5が形成された端部の上に載る状態にセットする。第一のアルミニウム管1と第二のアルミニウム管2とリングろう7の位置関係の維持には、重力を利用できる。
【0047】
次に、加熱手段(図示せず)を用い、リングろう7近辺を狙い加熱すると、第二のアルミニウム管2のリングろう7より上部が始めに昇温していき、順に下部も昇温していく過程で、第一のアルミニウム管1の拡径部5も昇温していく。
【0048】
次に、フラックス7bが融点に達し液状化するが、重力の影響で下側に流れ、且つ、最も昇温している第一のアルミニウム管1側に流れていき、拡径部5内に流動して、フラックスの作用で酸化皮膜を除去していく。
【0049】
次に、ろう材7aが融点に達し液状化し、拡径部5内に流動し、ろう材7aに含まれるケイ素Si成分がアルミニウム内に拡散していき、加熱を終了することで、液状化したろう材7aとフラックス7bが固形化してアルミろう3が接合界面に充填される。
【0050】
このとき、凸部6aと第二のアルミニウム管2の先端との接触部分の合計の接触面積は小さく、最初に昇温される第二のアルミニウム管2の熱が第一のアルミニウム管1側に逃げる割合は非常に少ないので、第一のアルミニウム管1の拡径部5が外側から加熱され昇温するスピードよりも、第二のアルミニウム管2が昇温するスピードの方が速いので、アルミろう3が外垂れを起こす可能性は非常に少なくなる。
【0051】
もちろん、加熱の狙い位置も拡径部5の先端付近を狙っていることで、オーバーベイクの可能性も極力少ないものとなっている。
【0052】
以上のように本実施の形態のアルミニウム管継手は、第一のアルミニウム管1の拡径部5の外周面の複数の所定位置に押圧加工(ディンプル加工)により略円弧状の凹部を設けることにより、拡径部5の内周面に、第二のアルミニウム管2の先端位置における拡径部5の断面を見た場合の拡径部5の中心が第二のアルミニウム管2の先端の管の中心と略一致するように、第二のアルミニウム管2の先端の一部と当接して第二のアルミニウム管2の先端がテーパ部4に接触するのを防止する凸部6aを周方向に複数設けたことを特徴とする。
【0053】
上記構成により、第一のアルミニウム管1と第二のアルミニウム管2の位置関係を固定する手段を講じなくとも、第一のアルミニウム管1の拡径部5の内周面の複数の凸部6aに第二のアルミニウム管2の先端が当接するまで、第二のアルミニウム管2の先端を第一のアルミニウム管1の拡径部5内に挿入するだけで、第二のアルミニウム管2の先端が第一のアルミニウム管1のテーパ部4の内周面から離れた所定位置で、第二のアルミニウム管2の先端の管の中心を拡径部5の中心と略一致させることができる。
【0054】
さらに、第二のアルミニウム管2の先端と複数の凸部6aとの接触部分の合計の接触面積が広くなりすぎないように凸部6aの形状と凸部6aの個数を適切に設定すれば、理想
的な昇温プロセスを実現することが可能となる。
【0055】
したがって、量産時において、接合強度や気密性が確実に確保されるアルミニウム管継手を提供することできるので、信頼性の高いアルミニウム管継手及びそれを使った冷却器、冷凍冷蔵機器を提供することができる。
【0056】
また、第一のアルミニウム管1の拡径部5の外周面の複数の所定位置に押圧加工(ディンプル加工ピンで内側に押圧すること)により略円弧状の凹部を設けることにより、第一のアルミニウム管1の拡径部5の内周面に複数の凸部6aを容易に設けることができる。
【0057】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2におけるアルミニウム管継手を管軸を含む平面で切断した場合の縦断面図、図5は、図4のD−D断面図である。
【0058】
図4、図5に示すように、本実施の形態におけるアルミニウム管継手は、実施の形態1におけるアルミニウム管継手と同様に、端部に向かうにしたがって径が拡大するテーパ部4を介して端部に拡径部5が形成された第一のアルミニウム管1と、外径が拡径部5の内径より小さく且つテーパ部4の最小内径より大きい第二のアルミニウム管2とからなり、第二のアルミニウム管2の端部が第一のアルミニウム管1の拡径部5内に挿入された状態で、第二のアルミニウム管2と第一のアルミニウム管1とがアルミろう3でろう付けされている。
【0059】
また、本実施の形態におけるアルミニウム管継手は、第一のアルミニウム管1の端部の拡径部5形成時に非拡径部を設けることにより、拡径部5の内周面に、第二のアルミニウム管2の先端位置における拡径部5の断面を見た場合の拡径部5の中心が第二のアルミニウム管2の先端の管の中心と略一致するように、第二のアルミニウム管2の先端の一部と当接して第二のアルミニウム管2の先端がテーパ部4に接触するのを防止する凸部6bを周方向に複数設けている。
【0060】
以上のように構成された本実施の形態のアルミニウム管継手ついて、以下その製法、作用を説明する。
【0061】
図4に示すように、第一のアルミニウム管1を拡径させる工程では、第二のアルミニウム管2の外径よりも若干大きい外径の拡管ピン(図示せず)を第一のアルミニウム管1の端部の内部に挿入するが、この拡管ピンの先端からある一定区間の断面形状を、図5に示すような凸凹形状にすることで、拡径部5と非拡径部を同一円周上に形成することができる。
【0062】
つまり、実施の形態1の作用効果に加えて、第一のアルミニウム管1の端部を拡径させる工程のみで、同時に、第一のアルミニウム管1の拡径部5の内周面に複数の凸部6bを設けることができ、生産性を向上できる。なお、凸部6bと拡径部5の中心軸との距離が、第二のアルミニウム管2の先端の外径(直径)の半分の寸法より短くなるように、拡管ピンで第一のアルミニウム管1の端部に拡径部5と非拡径部を形成する。
【0063】
(実施の形態3)
図6は、本発明の実施の形態3におけるアルミニウム管継手を管軸を含む平面で切断した場合の縦断面図、図7は、図6のE−E断面図である。
【0064】
図6、図7に示すように、本実施の形態におけるアルミニウム管継手は、実施の形態1と実施の形態2におけるアルミニウム管継手と同様に、端部に向かうにしたがって径が拡
大するテーパ部4を介して端部に拡径部5が形成された第一のアルミニウム管1と、外径が拡径部5の内径より小さく且つテーパ部4の最小内径より大きい第二のアルミニウム管2とからなり、第二のアルミニウム管2の端部が第一のアルミニウム管1の拡径部5内に挿入された状態で、第二のアルミニウム管2と第一のアルミニウム管1とがアルミろう3でろう付けされている。
【0065】
また、本実施の形態におけるアルミニウム管継手は、内面に管長方向の溝が複数加工された管を、第一のアルミニウム管1として用い、第一のアルミニウム管1の端部を拡径するに際し、第二のアルミニウム管2の先端位置が挿入される位置まで、溝が無くなるように拡径加工することにより、拡径部5の内周面に、第二のアルミニウム管2の先端位置における拡径部5の断面を見た場合の拡径部5の中心が第二のアルミニウム管2の先端の管の中心と略一致するように、第二のアルミニウム管2の先端の一部と当接して第二のアルミニウム管2の先端がテーパ部4に接触するのを防止する凸部6cを周方向に複数設けている。
【0066】
以上のように構成された本実施の形態のアルミニウム管継手ついて、以下その製法、作用を説明する。
【0067】
図6、図7に示すように、第一のアルミニウム管1は内面溝付管であるが、拡径工程において、拡管ピンと外径クランプ型とのクリアランスを調整することで、拡径部5の先端から、第一のアルミニウム管1の拡径部5に第二のアルミニウム管2の先端位置が挿入される位置まで、内面の溝が無くなるように加工することができる。なお、凸部6cと拡径部5の中心軸との距離が、第二のアルミニウム管2の先端の外径(直径)の半分の寸法より短くなるように、第一のアルミニウム管1の内面に溝を形成しておく。
【0068】
したがって、第一のアルミニウム管1の端部を拡径させる工程で、同時に、第一のアルミニウム管1の拡径部5の内周面に複数の凸部6cを設けることができるのみならず、接合界面に接するアルミニウム管の肉厚が略同じになることと、略同じ量のアルミろう3で接合界面を充填することが可能となるので、溝なし管と略同じ加熱条件で接合することができる。
【0069】
よって、溝有無による接合条件の変更が不要となり工程での切換ロスやアルミろう3の変更も不要になる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明のアルミニウム管継手は、量産されたアルミニウム管継手の接合強度や気密性が確実に確保され、信頼性の高いアルミニウム管継手であるので、家庭用あるいは業務用冷蔵庫、さらにはショーケース等の冷凍冷蔵機器に用いられる冷却器などに広く利用することができるものである。
【符号の説明】
【0071】
1 第一のアルミニウム管
2 第二のアルミニウム管
3 アルミろう
4 テーパ部
5 拡径部
6a,6b,6c 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部に向かうにしたがって径が拡大するテーパ部を介して前記端部に拡径部が形成された第一のアルミニウム管と、外径が前記拡径部の内径より小さく且つ前記テーパ部の最小内径より大きい第二のアルミニウム管とからなり、前記第二のアルミニウム管の端部が前記第一のアルミニウム管の前記拡径部内に挿入された状態で、前記第二のアルミニウム管と前記第一のアルミニウム管とがろう付けされたアルミニウム管継手であって、前記拡径部の内周面に、前記第二のアルミニウム管の先端位置における前記拡径部の断面を見た場合の前記拡径部の中心が前記第二のアルミニウム管の先端の管の中心と略一致するように、前記第二のアルミニウム管の先端の一部と当接して前記第二のアルミニウム管の先端が前記テーパ部に接触するのを防止する凸部を周方向に複数設けたことを特徴とするアルミニウム管継手。
【請求項2】
前記第一のアルミニウム管の前記拡径部の外周面にディンプル加工により略円弧状の凹部を設けることにより前記拡径部の内周面に前記凸部を設けたことを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム管継手。
【請求項3】
前記第一のアルミニウム管端部の拡径部形成時に非拡径部を設けることにより前記拡径部の内周面に前記凸部を設けたことを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム管継手。
【請求項4】
内面に管長方向の溝が複数加工された管を、前記第一のアルミニウム管として用い、前記第一のアルミニウム管の端部を拡径するに際し、第二のアルミニウム管の先端位置が挿入される位置まで、前記溝を無くすように拡径加工されたことで、前記凸部が必然的に形成されることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム管継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−145177(P2012−145177A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4686(P2011−4686)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】