説明

アルミニウム複合シート材料

本発明は、コア材料の少なくとも片側にクラッドシートが取り付けてあり、該コア材料が、AA2xxx、AA5xxxおよびAA7xxx-シリーズ合金からなる群から選択されたアルミニウム合金からなり、該クラッドシートが、Cu0.2重量%未満を含むAA6xxx-シリーズまたはMg3.6重量%未満を含むAA5xxx-シリーズ合金からなる、アルミニウム複合シート材料の形態にある自動車用車体シートに関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、コア材料の少なくとも片側にクラッドシートが取り付けられているアルミニウム複合シート材料の形態にある、自動車用車体シートに関する。
【発明の背景】
【0002】
広い意味における複合材料は、現状技術水準から、例えば国際特許出願第WO-01/02165号から公知である。そのような複合材料では、コア材料(複合材料の最も大きな部分を構成する)が、複合材料のバルク機械的特性、例えばその複合材料の強度、を主として決定する。しかし、クラッドシート(複合材料の小さな部分しか構成せず、従って、複合材料の機械的特性にとってはあまり重要ではない)は、複合材料を取り巻く環境と接触し、従って、化学的活性、例えば複合材料の腐食性能、を大きく左右する。
【0003】
現状技術水準によるアルミニウム複合材料の例としては、第一に、典型的にはAA3xxx-シリーズから選択されるアルミニウム合金(例えばAA3003)をコア材料として、およびその片側または両側に、AA4xxx-シリーズから選択されるアルミニウム合金(例えばAA4045またはAA4343)をクラッドシートとして有するろう付けシート、ならびに航空用途向けのシート(AA2xxx-シリーズから選択されるアルミニウム合金を含んでなるコア材料および典型的にはAA1000-シリーズから選択されるアルミニウム合金を含んでなるクラッドシート)、例えばAlclad 2024-1230、を挙げることができる。そのような公知の複合材料は、特殊な用途および特殊な必要条件を満たすために開発されるのが一般的である。
【0004】
国際特許出願第WO-00/26020号は、波形アルミニウム補強材シートの峰部と谷部に固定された2枚の平行なシートまたはプレートの複合材料アルミニウムパネルを開示している。この波形アルミニウム補強材シートは、AlMgMn合金から製造され、Zn0.4〜5.0%を含む。この波形アルミニウムシートは、耐食性が非常に良いとされている。しかし、特定の極度に腐食性の環境では、合金製品の耐食性をさらに強化するクラッドを備えるのが有用であろう。そのようなクラッドは、AA1000-型合金、1%を超える合金化添加剤を含むAA6000-型合金、および0.8%を超えるZnを含むAA7000-型合金、例えばAA7072、でよい。
【0005】
国際特許出願第WO-98/24571号は、コンパウンドストランド鋳造により得られる多層金属複合材料製品を開示している。この製品は、コア、好ましくはアルミニウム合金、そのコアの少なくとも片側で、コアに結合した中間層、およびその中間層に結合したクラッド材を含んでなる。製品の用途に応じて、複合材料製品の外側表面を形成するクラッド材は、ろう付けシートに使用するアルミニウムろう付け合金、鏡のような表面仕上げを得るためのAA1xxx-シリーズ合金、あるいは耐食性を改良するための亜鉛含有アルミニウム合金または亜鉛もしくは亜鉛合金でよい。
【0006】
下記の内容から明らかなように、他に指示が無い限り、合金の名称はすべて、2006年にアルミニウム協会から出版されたAluminum Standards and Data and Registration Recordsにおけるアルミニウム協会名称による。
【0007】
本発明に関して、「シート製品」は、せん断された、細長く切った、または鋸引きした縁部を有する厚さ0.15 mm〜2.5 mmの圧延された製品を意味する。
【0008】
本発明に関して、用語「自動車車体シート」または「ABS」は、自動車車体用途、特に外装パネル、内装パネルおよび構造部品、向けのアルミニウム合金シートを意味する。
【0009】
合金組成または好ましい合金組成の全ての説明に関して、他に指示が無い限り、百分率は重量で表示する。
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的は、上記の種類の、自動車用車体シートとして使用するように設計された、改良されたアルミニウム複合材料を提供することである。
【0011】
このおよび他の目的およびさらなる利点は、コア材料の少なくとも片側にクラッドシートが取り付けてあり、該コア材料が、AA2xxx、AA5xxxおよびAA7xxx-シリーズ合金からなる群から選択されたアルミニウム合金からなり、該クラッドシートが、Cu0.2重量%未満を含むAA6xxx-シリーズまたはMg3.6重量%未満を含むAA5xxx-シリーズ合金からなる、アルミニウム複合シート材料の形態にある自動車用車体シートに関する本発明により、十二分に達成される。
【好ましい実施態様の詳細な説明】
【0012】
本発明によれば、コア材料の少なくとも片側にクラッドシートが取り付けてあり、該コア材料が、AA2xxx、AA5xxxおよびAA7xxx-シリーズ合金からなる群から選択されたアルミニウム合金からなり、該クラッドシートが、Cu0.2重量%未満を含むAA6xxx-シリーズまたはMg3.6重量%未満を含むAA5xxx-シリーズ合金からなる、アルミニウム複合シート材料の形態にある自動車用車体シートが提供される。
【0013】
現在、車両に使用するパネル(自動車用車体シートまたはABSとも呼ばれる)は、単一のアルミニウム合金だけを使用している(従って、非クラッドまたは非複合材料系と呼ばれる)。一般的に、AA5xxx-シリーズのアルミニウム合金は、内側パネル用途に使用されるのに対し、AA6xxx-シリーズのアルミニウム合金は外側パネルおよび構造用途に使用される。合金の化学組成を変えることにより、広範囲な機械的特性を達成することはできるが、あらゆる可能性が実際にある訳ではない。車両用途では、特に腐食性能により課せられる制限のために、これらの可能性は限られている。例えば、AA5xxx-シリーズアルミニウム合金でMgレベルを増加することにより、事実、成形性ならびに強度は強化されるが、同時に、腐食性能(特にいわゆる粒界腐食)は悪くなる。同様に、AA2xxx-およびAA7xxx-シリーズアルミニウム合金では、Cuレベルおよび/またはZnレベルを増加する(これは強度-性能には好ましい)ことにより、塗装した表面に対する腐食(特にいわゆる糸状腐食)を起こし易くなり、このためにこれらの組成物の自動車用車体シート用途(内側パネル、外側パネルおよび構造陽と)における使用が制限されている。
【0014】
従って、当業者は、アルミニウムシートにおけるMg、Cuおよび/またはZnレベルを増加して機械的特性を強化したいであろうが、それに続く化学的特性、特に耐食性の低下が、これを許さない。
【0015】
本発明により、コアシート材料の特性は、複合材料の表面に課せられる要求から分離されている。従って、コア材料は、できるだけ良好な機械的要求に適合するように選択する(上記のコア合金に関してはMg、CuおよびZnレベルの増加を意味する)ことができるのに対し、クラッドシートは、環境との相互作用に対する要求に適合するように選択することができる。AA2xxx-、AA5xxx-またはAA7xxx-シリーズから選択されたアルミニウム合金を含んでなるコア材料を、Mg3.6重量%未満を含むAA5xxx-シリーズ、およびCu0.2重量%未満のAA6xxx-シリーズからなる群から選択されたアルミニウム合金を含んでなるクラッドシートと組み合わせることにより、そのような要求に応えることができる。
【0016】
さらに、車両では、特殊な必要条件(航空機分野における程厳格ではないが)により制御される自動車用車体シートの接着剤結合を行う。非複合材料系は、その表面の十分な前処理を必要としているが、本発明の複合シート材料は、クラッド層の選択により十分な耐久性がすでに得られているので、そのような前処理は必要ないと考えられる。
【0017】
一実施態様では、コアのAA5xxx-シリーズアルミニウム合金は、重量%で、下記の化学組成、即ち
Mg 3.6〜6.0、好ましくは4.0〜4.7
Mn 0.05〜1.2、好ましくは0.07〜0.8、より好ましくは0.2〜0.55
Zn <0.9、好ましくは<0.45、より好ましくは<0.3
Fe <0.55、好ましくは<0.25
Si <0.45、好ましくは<0.2
Cr <0.3、好ましくは0.05〜0.25、例えば0.08〜0.2
Zr <0.3、好ましくは0.05〜0.25、例えば0.07〜0.15
Cu <0.5、例えば<0.15または0.2〜0.5
Ti <0.2、例えば0.01〜0.04
他の元素および不可避な不純物 各元素<0.05、合計<0.2
残部アルミニウム
を有する。
【0018】
この組成範囲は、特にAA5022、AA5023、AA5082、AA5182、AA5186、AA5059、AA5083、AA5058およびAA5088の群から選択されたアルミニウム合金を含む。
【0019】
好適なAA2xxx-シリーズコア合金は、Cu含有量が6.8重量%まで、好ましくは5.0重量%までの合金であり、特にAA2219、AA2024、AA2324、AA2008、AA2010およびAA2036-シリーズ合金が、本発明によりクラッド加工した時に、自動車用車体シートに好適である。
【0020】
好適なAA7xxx-シリーズコア合金は、Zn含有量が9.7重量%まで、好ましくは6.5重量%まで、Cu含有量が2.6重量%まで、好ましくは2.0重量%までの合金であり、特にAA7020、AA7021、AA7029、AA7050、AA7075、AA7003およびAA7004-シリーズ合金が、本発明によりクラッド加工した時に、自動車用車体シートに好適である。
【0021】
これらの合金は、それ自体、当業者には良く知られている特性のために、自動車分野に意図する用途に極めて好適である。
【0022】
AA5xxx-シリーズコア材料には、5xxx-シリーズ合金の良好な成形性を、ここに規定するAA6xxx-シリーズ型クラッド合金の非常に良好な押込耐性および糸状および粒界腐食耐性と組み合わせることができる、という利点がある。
【0023】
AA2xxxおよびAA7xxxコア材料には、全体的により高い強度が得られるように、高Cuまたは高Zn合金、例えばAA2219およびAA7050、を自動車用車体シート用のコア材料として選択できる、という利点がある。縁形成性能および耐食性に関して、これらの型の合金は、一般的にAA6016-シリーズ合金の特性よりも劣っていることが知られている。高Cuおよび/またはZn含有コア材料材料を、0.2%未満のCu含有量が低いAA6xxx-シリーズクラッド材料でクラッド加工することにより、全体的に高い強度を、良好な縁形成および糸状および粒界腐食に対する良好な耐性と組み合わせ、独特な特性の組合せを得ることができる。また、縁形成性能の改良により、本発明の自動車用車体シートの衝突性能が改良されることも分かっている。特に、AA6016-シリーズクラッド合金は、縁形成性能、耐食性が非常に良く、押込耐性が高いので、好ましい。
【0024】
別の実施態様では、コア材料を、AA5xxx-シリーズから選択された、Mg含有量が3.6重量%未満のアルミニウム合金でクラッド加工し、特に良好な粒界腐食耐性を得ており、特に好適な合金は、AA5754、AA5051AまたはAA5018-シリーズ合金から選択される。
【0025】
本発明の複合シート製品は、コア材料の片側にのみ取り付けた、ただ1個のクラッドシートを含んでなることができる。別の実施態様では、クラッドシートをコア材料の両側に取り付ける。その結果、この複合材料は、優れた、釣り合いのとれた特性、即ち強度および成形性と腐食性能、押込耐性および縁形成性能、を示す。
【0026】
アルミニウム複合材料の寸法は、(大部分、特殊な用途および競合する要求に応じて)様々に変えることができるが、自動車用車体シートとして使用するには、コア材料の厚さは約0.5〜2 mm、好ましくは約0.7〜1.3 mm、最も好ましくは約1 mmである。クラッド層は、通常、コアシートよりも遙かに薄く、各クラッド層は、複合材料シートの総厚の約1〜25%を構成する。クラッド層またはクラッドシートは、典型的には複合材料シートの総厚の約1〜12%を構成する。
【0027】
本発明の別の態様では、本発明は、本発明の複合シート材料の形態にある自動車用車体シートから製造された自動車用車体パネルおよび自動車用構造部品に関する。
【0028】
別の態様で、本発明は、コア材料の少なくとも片側にクラッドシートを取り付ける、アルミニウム複合材料の製造方法に関する。本発明により、コア材料は、規定されたAA2xxx-、AA5xxx-またはAA7xxx-シリーズから選択されたアルミニウム合金を含んでなり、該コア材料に規定されたクラッドシートを、ロールボンディングにより取り付け、コアシートとクラッドとの間の必要な冶金学的結合を達成する。
【0029】
そのようなロールボンディング製法は、非常に経済的であり、所望の特性を発揮する非常に効果的な複合材料シートを製造する。
【0030】
無論、ロールボンディング製法は、幾つかの追加処理工程、例えば複合シート材料の形態にある自動車用車体シートの最終的な特性を決定するための焼きなまし、を伴うことができる。
【0031】
そのようなロールボンディング製法を行って本発明のシート材料を製造する場合、ロールボンディングの際に、コア材料およびクラッドシートの両方の厚さが低下するのが好ましい。
【0032】
例えば、コア材料は、両側に初期厚さ約24 mmのクラッドシートを備えた、初期厚さ約400 mmのブロックでよい。ロールボンディングの後、コア材料の最終的な幅は約1 mmであり、クラッド層の最終的な厚さは、例えば約60μmである。
【0033】
複合材料シート製品の初期寸法および最終寸法は、ロールボンディング製法の特性、ならびに最終的なシート製品に必要な特性の両方によって決定されることに注意する。
【0034】
ロールボンディング製法は、様々な様式で実行することができる。例えば、ロールボンディング製法は、熱間圧延および冷間圧延の両方を含むことが可能である。
【0035】
さらに、ロールボンディング製法は、一工程製法でも、連続する圧延工程の際に材料のゲージが下がる多工程製法でもよい。その場合、個々の圧延工程は、他の処理工程、例えば焼きなまし工程、加熱工程、冷却工程、等により分離されていてもよい。
【0036】
本発明の別の実施態様では、規定されたクラッドシートをコア材料に、例えばここに参考として含める欧州特許第1638715号に開示されている鋳造技術により、取り付ける。
【0037】
上記の、および請求項に記載するように、本発明のアルミニウム複合材料は、自動車用車体シートとして使用する。機械的特性はコアシートにより決定されるので、コア材料をAA2xxx-、AA5xxx-またはAA7xxx-シリーズから選択することにより、この用途に使用される標準的な工業用シート合金に匹敵する優れた機械的特性が得られる。本発明のアルミニウム複合シート材料の試料に対して行った試験は、クラッドシート厚さと機械的特性との間には重大な相関関係が無いことを示しており、従って、クラッドシートに対して課せられる要求からコア材料のバルク特性を分離することに関して、上記のことが確認された。
【0038】
さらに、クラッドシートとして特にAA6016-シリーズアルミニウム合金を選択することにより、複合材料の、環境に関して優れた性能を得ることができる。例えば、合金の粒界腐食に対する感度を妥当な限度内に制限し、さらに糸状腐食に対する感度を、特に塗装した表面との組合せで、下げることができる。
【実施例】
【0039】
本発明を、本発明の非限定的な実施態様を参照しながら説明する。
【0040】
例1
工業的規模で、3種類のシート製品を製造し、O焼戻しで1 mmのシート製品に加工した。これらの3種類の合金は、裸のAA5182合金および両側にAA6016合金またはAA5051合金でクラッド加工したAA5182合金であった。AA5182は、自動車用車体シート用途に使用されることが多い。クラッドシート製品のコアは、裸シート製品と同じ熱履歴を有し、例えば両者とも、500℃で10時間の均質化にかけている。クラッドシート製品は、クラッド製品を中間ゲージ7.5 mmに、ホット-ミル出口温度約300℃で熱間圧延し、次いで、最終ゲージ1 mmに冷間圧延する共通のロールボンディングを使用して製造した。クラッドシートは、総厚が1 mmであり、各クラッド層の厚さが80μmであった。
【0041】
正確な合金組成を表1に示す。製品は全て、550℃で溶体化熱処理し、次いで急冷し、次いで室温で2週間後、いわゆるO-焼戻しで、その強度、総伸長および縁形成性能に関して試験した。強度、粒界腐食耐性および耐押込性を、模擬サイクルで測定したが、その際、O-焼戻しにおける製品をさらに2%冷間伸長し、続いて185℃で20分間熱処理した。
【0042】
裸シート製品およびクラッドシート製品の両方を、O-焼戻しで、それらの縁形成性能に関して、平縁形成試験(ASTM規格E290-97Aに含まれるように、試料を曲げ半径0.0 mmで180°折り曲げ)により試験し、続いて目視で評価した。採点は、下記の等級付け、即ち等級「5」は目に見える欠点無し、「4」は中程度の表面粗さ、「3」は深刻な表面粗さ、「2」は小さな表面亀裂、「1」は連続的な表面亀裂、で行い、その際、さらに例えば3 1/4、3 1/2、および3 3/4の等級付けをさらに行った。
【0043】
裸シート製品およびクラッドシート製品の両方を、引張試験に関するASTM規格EN10002により、それらの機械的特性に関して評価した。引張特性は、基準O-焼戻しおよび模擬サイクルの後にも測定した。模擬サイクル後の粒界耐食性(「IGC」)は、ヨーロッパ規格ASTM G167-86により測定し、結果を重量損失mg/cmで表示する。さらに、模擬サイクル後の静止押込耐性を測定したが、その際、製品を固定し、続いて半径63.5 mmの鋼製押込装置で、速度2 mm/分で負荷をかけ、力-変位曲線から静止押込耐性F0.1mmを、深さ0.1 mmの凹みを付けるのに必要な力(N)として測定した。試験結果を表2に示す。
【0044】
表1 AA6016およびAA6005Aの合金組成重量%、残部アルミニウムおよび不可避な不純物

合金 Si Fe Cu Mn Mg Cr Ti
AA6016 1.0 0.23 0.15 0.07 0.60 0.03 0.02
AA5051A 0.1 0.2 0.02 0.05 1.85 0.15 0.02
AA5182 0.1 0.16 0.12 0.24 4.9 0.03 0.01
【0045】
表2 裸合金シートおよびAA6016および5051Aでクラッド加工した合金シートの試験結果

特性および条件 裸AA5182 AA5182、 AA5182、
AA6016で 5051Aで
クラッド加工 クラッド加工
O-焼戻しでの 117 121 113
降伏強度(MPa)
O-焼戻しでの 28.5 27.7 27.9
総伸長(%)
O-焼戻しでの縁形成 3 1/2 3.0 3 1/2
2%+185℃/20分後の 154 171 144
降伏強度
2%+185℃/20分後の 21 2 3
IGC(mg/cm)
2%+185℃/20分後の 165 181 161
耐押込性F0.1mm (N)
【0046】
表2の結果から、AA6016クラッド加工したクラッドシート製品は、強力なクラッドにより強度が増加しているのに対し、伸長で表した成形性は、あまり変化していないことが分かる。強度と共に、押込耐性も好ましく増加している。AA6xxx-シリーズクラッドの使用にも関わらず、クラッドシート製品の縁形成性能は、悪影響を受けず、腐食性能は大きく改良されている。表2には示していないが、クラッド製品のローピングに対する感度は、裸シート製品と比較して、変化していないことも分かった。
【0047】
表2の結果から、AA5051Aクラッド加工したクラッドシート製品は、クラッド加工していないシート製品と比較して、強度および押込耐性が僅かに低下しているのに対し、伸長で表した成形性は、あまり変化していないことも分かる。しかし、この僅かな強度低下のために、非常に有利な腐食性能改良が得られる。さらに、縁形成性能はクラッドシートにより影響を受けないことも分かる。表2には示していないが、クラッド製品のローピングに対する感度は、裸シート製品と比較して、変化していないことも分かった。
【0048】
この例では、コア合金を、その製造上の実際的な理由から両側でクラッド加工しているが、当業者には直ちに明らかなように、単一のクラッド層のみを使用しても、同じ有益性を得ることができる。
【0049】
この例は、自動車用車体シートに好適なAA5000-シリーズ合金の腐食性能が、それに好適なクラッド層を備えることにより、改良され、コアシートの好ましい特性、例えばその強度、成形性、縁形成性能および耐押込性、も得られるという、本発明の原理を例示している。
【0050】
本発明は、上記の実施態様に限定されるものではなく、請求項により規定される本発明の範囲内で広範囲に変形することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア材料の少なくとも片側にクラッドシートが取り付けてあるアルミニウム複合シート材料の形態にある自動車用車体シートであって、前記コア材料が、AA2xxx、AA5xxxおよびAA7xxx-シリーズ合金からなる群から選択されたアルミニウム合金からなり、前記クラッドシートが、Cu0.2重量%未満を含むAA6xxx-シリーズまたはMg3.6重量%未満を含むAA5xxx-シリーズ合金からなる、シート材料。
【請求項2】
前記コア材料が、下記の化学組成、即ち重量%で、
Mg 3.6〜6.0、好ましくは4.0〜4.7
Mn 0.05〜1.2、好ましくは0.2〜0.55
Zn <0.9
Fe <0.55
Si <0.45
Cr <0.3
Zr <0.3
Cu <0.5
Ti <0.2
各々<0.05、合計<0.2の不可避な不純物、残部アルミニウム
を有するAA5xxx-シリーズ合金である、請求項1に記載のシート材料。
【請求項3】
前記コア材料のZn含有量が<0.45%、好ましくは<0.3%である、請求項2に記載のシート材料。
【請求項4】
前記コア材料のMg含有量が4.0〜4.7%である、請求項2に記載のシート材料。
【請求項5】
前記コア材料のFe含有量が<0.25%である、請求項2に記載のシート材料。
【請求項6】
前記コア材料のMn含有量が0.07〜0.8%、好ましくは0.2〜0.55%である、請求項2に記載のシート材料。
【請求項7】
前記コア材料が、AA5022、AA5023、AA5082、AA5182、AA5186、AA5059、AA5083、AA5058およびAA5088-シリーズ合金からなる群から選択されたアルミニウム合金を含んでなる、請求項1に記載のシート材料。
【請求項8】
前記コア材料が、6.8重量%以下、好ましくは5.0%以下のCuを含んでなるAA2xxx-シリーズ合金である、請求項1に記載のシート材料。
【請求項9】
前記コア材料が、9.7重量%以下、好ましくは6.5重量%以下のZnおよび/または2.6重量%まで、好ましくは2.0重量%までのCuを含んでなるAA7xxx-シリーズ合金である、請求項1に記載のシート材料。
【請求項10】
前記コア材料が、AA2008、AA2010、AA2036、AA2219、AA2024、AA2324、AA7020、AA7021、AA7029、AA7050、AA7075、AA7003、およびAA7004-シリーズ合金からなる群から選択されたアルミニウム合金を含んでなる、請求項1に記載のシート材料。
【請求項11】
前記クラッドシートがアルミニウム合金AA6016を含んでなる、請求項1〜10のいずれか一項に記載のシート材料。
【請求項12】
前記クラッドシートが、AA5754、AA5051A、およびAA5018からなる群から選択されたアルミニウム合金を含んでなる、請求項1〜10のいずれか一項に記載のシート材料。
【請求項13】
前記コア材料が、AA5022、AA5023、AA5082、AA5182、AA5186、AA5059、AA5083、AA5058およびAA5088-シリーズ合金からなる群から選択されたアルミニウム合金を含んでなり、前記クラッドシートが、AA5754、AA5051A、およびAA5018からなる群から選択されたアルミニウム合金を含んでなる、請求項1に記載のシート材料。
【請求項14】
前記コア材料が、AA5022、AA5023、AA5082、AA5182、AA5186、AA5059、AA5083、AA5058およびAA5088-シリーズ合金からなる群から選択されたアルミニウム合金を含んでなり、前記クラッドシートが、Cu含有量が0.2重量%未満であるAA6xxx-シリーズ、好ましくはAA6016からなる、請求項1に記載のシート材料。
【請求項15】
前記コア材料の厚さが0.5〜2 mm、好ましくは0.7〜1.3 mmである、請求項1〜14のいずれか一項に記載のシート材料。
【請求項16】
前記複合シート材料が、片側にのみクラッドシートを有するコア材料からなる、請求項1〜15のいずれか一項に記載のシート材料。
【請求項17】
前記複合シート材料が、両方のシート表面上にクラッドシートを有するコア材料からなる、請求項1〜15のいずれか一項に記載のシート材料。
【請求項18】
前記一方または両方のクラッドシートが、前記複合シート材料の総厚の1〜25%の厚さを有する、請求項1〜17のいずれか一項に記載のシート材料。
【請求項19】
前記一方または両方のクラッドシートが、前記複合シート材料の総厚の2〜12%の厚さを有する、請求項1〜17のいずれか一項に記載のシート材料。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれか一項に記載の自動車用車体シートから製造された、自動車用車体パネル。

【公表番号】特表2009−535508(P2009−535508A)
【公表日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−508162(P2009−508162)
【出願日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際出願番号】PCT/EP2007/003447
【国際公開番号】WO2007/128389
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(508319532)アレリス、アルミナム、デュッフェル、ベスローテン、フェンノートシャップ、メット、ベペルクテ、アーンスプラケレイクヘイト (3)
【氏名又は名称原語表記】ALERIS ALMINUM DUFFEL BVBA