説明

アレイ型発光素子の検査装置及び検査方法

【課題】簡易で迅速なアレイ型発光素子の検査装置及び検査方法を提供する。
【解決手段】電気信号を光信号に変換する発光素子が一次元又は二次元のアレイ状に複数形成されているアレイ型発光素子の検査を行うためのアレイ型発光素子の検査装置であって、相互に異なる複数の周波数の信号を発生させる信号発生器と、前記相互に異なる複数の周波数の信号に対応して、前記アレイ型発光素子における発光素子を各々発光させるための駆動ドライバと、前記アレイ型発光素子より発光した光を受光し電気信号に変換する受光素子と、前記受光素子における信号を前記周波数ごとに出力解析するスペクトル分析装置と、を有することを特徴とするアレイ型発光素子の検査装置を提供することにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレイ型発光素子の検査装置及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、発光素子や受光素子の製造プロセスにおいては、これらの発光素子や受光素子の電気光学的特性を検査によって確認等を行う工程が組み入れられている。具体的には、発光素子が複数配列されたアレイ型発光素子においては、各々の発光素子が均一に発光しているか否か、発光しない等の不良の発光素子が存在していないか等の検査を行うものであり、実際にアレイ型発光素子を発光させて検査を行う。
【0003】
このような検査を行う際には、発光素子が複数存在しているため、隣接する発光素子からの光を受光することなく、各々の発光素子からの光のみを個別に受光し電気光学的特性の検査を行う必要があるが、光学素子が高密度に集積されているアレイ型発光素子の場合では、発光素子を同時に発光させると、隣接する発光素子からの光を受光してしまい、各々の発光素子の個別の電気光学的特性を正確に検査することは困難であった。
【0004】
このため、アレイ型発光素子の電気光学的特性を測定する場合において、お互いに隣接配置された発光素子間に隔壁等を設け、光を遮光した状態で各々の発光素子の発光を受光する方法が考えられる。しかしながら、この方法では、隔壁における壁面反射等の影響により、隣接する発光素子の光が入射する場合があり、各々の発光素子の正確な電気光学的特性を測定することが困難である。また、各々の発光素子に対応する受光素子について各々正確に位置合わせを行うことは、光学素子の集積度が高まったものについては、特に困難なものとなり、正確な電気光学的特性を測定することが、より一層困難なものとなる。
【0005】
一方、アレイ型発光素子の各々の発光素子を一個ごとに発光させて電気光学的特性の検査を行う方法が考えられるが、この場合、アレイ型発光素子を構成する発光素子を一個ごとに発光させて検査を行うため長時間を要し、コストアップの原因となる。
【0006】
よって、特許文献1に開示されているように複数の発光素子を同時に検査する方法が開示されている。
【特許文献1】特開平10−65188号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されている方法では、検査するための複数の受光素子が必要となり、また、隣接する発光素子からの光干渉を受けない一定の間隔ごとに配列する必要があることから、装置が大型化、複雑化してしまい、逆にコスト上昇を招くおそれがあった。
【0008】
本発明は上記点に鑑みてなされたものであり、アレイ型発光素子において各々発光素子の電気光学的特性の検査を短時間で容易に行うことが可能なアレイ型発光素子の検査装置及び検査方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、電気信号を光信号に変換する発光素子が一次元又は二次元のアレイ状に複数形成されているアレイ型発光素子の検査を行うためのアレイ型発光素子の検査装置であって、相互に異なる複数の周波数の信号を発生させる信号発生器と、前記相互に異なる複数の周波数の信号に対応して、前記アレイ型発光素子における発光素子を各々発光させるための駆動ドライバと、前記アレイ型発光素子より発光した光を受光し電気信号に変換する受光素子と、前記受光素子における信号を前記周波数ごとに出力解析するスペクトル分析装置と、を有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、前記アレイ型発光素子は、面発光レーザーをアレイ状に形成したものであることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、前記受光素子は単一であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、電気信号を光信号に変換する発光素子が一次元又は二次元のアレイ状に複数形成されているアレイ型発光素子の検査を行うためのアレイ型発光素子の検査方法であって、信号発生器により相互に異なる複数の周波数の信号を発生させる工程と、前記アレイ型発光素子における複数の発光素子を前記相互に異なる複数の周波数の信号に対応して発光させる工程と、前記アレイ型発光素子における複数の発光素子の発光を受光素子により受光する工程と、前記受光素子において受光した光を電気信号に変換した後、前記電気信号を周波数ごとに出力解析するスペクトル分析装置に入力し、周波数ごとの出力を得る工程と、を含むことを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、前記アレイ型発光素子は、面発光レーザーをアレイ状に形成したものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、アレイ型発光素子において各々発光素子の電気光学的特性の検査を短時間で容易に行うことが可能なアレイ型発光素子の検査装置及び検査方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明を実施するための最良の実施の形態について、以下に説明する。
【0016】
図1は、本実施の形態におけるアレイ型発光素子の検査を行うための検査装置の全体の構成図であり、図2は、この検査装置の全体の斜視図である。また、図3は、この検査装置の一部を拡大した拡大図である。
【0017】
図3に示すように、測定対象となるアレイ型発光素子13は、複数の発光素子131、132、133、134により構成されており、各々の発光素子は独立に発光が制御されるように、各々の発光素子に対応した入力端子が設けられている。
【0018】
本実施の形態におけるアレイ型発光素子の検査装置は、信号発生器11、発光側検査装置21、受光側検査装置24、スペクトラムアナライザー16により構成されている。
【0019】
信号発生器11は、複数の異なる周波数の信号を発生させることが可能な装置である。
【0020】
発光側検査装置21には、ステージ22が設けられており、ステージ22上のプリント基板23には、ドライバIC12及び、検査の対象となるアレイ型発光素子13が設置されている。
【0021】
ドライバIC12は、複数の入力端子が設けられており信号発生器11により発生した複数の周波数の信号を各々入力することにより、アレイ型発光素子13を構成する各々の発光素子131、132、133、134を発光させるための駆動電流を各々出力する。
【0022】
また、受光側検査装置24には、受光素子14及び変換IC15が設けられている。
【0023】
受光素子14では、アレイ型発光素子13を構成する各々の発光素子131、132、133、134が発光した光を受光し電気信号へと変換する。このようにして得られた電気信号は受光した光の強度に応じたものである。受光素子14より出力された電気信号は変換IC15を介し、受光側検査装置24から出力される。
【0024】
この出力された電気信号は、スペクトラムアナライザー16に入力され、周波数ごとに出力が表示される。尚、周波数ごとに出力を得ることのできる装置であれば、スペクトラムアナライザー16に限らず、バンドパスフィルタを介した装置等であってもよい。
【0025】
図3、図4に基づき、より具体的に、信号発生器11、ドライバIC12、受光素子14について説明する。
【0026】
信号発生器11は、複数の周波数信号を発生させることが可能なものであり、アレイ型発光素子13を構成する各々の発光素子131、132、133、134に対応した異なる周波数の信号を発生させる(例えば、図面においては4つの異なる周波数を発生させている)。この信号発生器11により発生される複数の異なる周波数信号は、各々スペクトラムアナライザー16により分解可能であることが必要であり、所定の周波数の間隔を有した信号であることを要する。また、信号発生器11には、複数の異なる周波数の信号に対応した出力端子(不図示)が設けられており、この出力端子より出力される。
【0027】
信号発生器11の出力端子から出力された信号は、信号発生器11とドライバIC12との間に接続された電気配線211、212、213、214を介し、ドライバIC12に入力する。
【0028】
ドライバIC12には、各々の個別ドライバ121、122、123、124が設けられている。電気配線211、212、213、214は、信号発生器11において発生した異なる周波数の電気信号を各々個別に、ドライバIC12における個別ドライバ121、122、123、124に入力させるためのものである。
【0029】
個別ドライバ121、122、123、124では、電気配線211、212、213、214より入力した周波数の信号に基づいて、アレイ型発光素子13における各々の発光素子131、132、133、134を発光させるための駆動電流を発生させ出力する。
【0030】
各々の駆動電流は、電気配線221、222、223、224を介し、アレイ型発光素子13に入力される。アレイ型発光素子13では、各々の駆動電流を各々の発光素子131、132、133、134に流すことにより発光させる。これにより、電気信号が光の信号に変換される。
【0031】
この発光した光は、これらの光をすべて受光することが可能な一つの受光素子14により受光され、光の信号が電気信号へと変換する。
【0032】
このことをより具体的に説明する。例えば、信号発生器11において、1kHz、1.5kHz、2kHz、2.5kHzといった、4つの異なる周波数の信号を発生させた場合、この周波数に応じてドライバIC12より、4つの異なる周波数の信号に応じた同じパワーの駆動信号が出力され、アレイ型発光素子13における4つの発光素子131、132、133、134において、対応する周波数、例えば、発光素子131は1kHz、発光素子132は1.5kHz、発光素子133は2kHz、発光素子134は2.5kHzの周波数で点滅させる。
【0033】
受光素子14では、これら4つの発光素子131、132、133、134が、1kHz、1.5kHz、2kHz、2.5kHzの周波数で点滅する光をすべて受光し電気信号へと変換する。変換された電気信号には、1kHz、1.5kHz、2kHz、2.5kHzの周波数の信号がすべて含まれているが、変換IC15を介し、スペクトラムアナライザー16において、周波数ごとの出力を表示することにより、周波数ごとの強度を得ることができる。即ち、スペクトラムアナライザー16において、表示される1kHz、1.5kHz、2kHz、2.5kHzの周波数に対応した出力の値が、各々のアレイ型発光素子13における発光素子131、132、133、134の出力値となるのである。また、ドライバIC12において、同じパワーの駆動電流が出力されている場合、スペクトラムアナライザー16の出力から、アレイ型発光素子13における各々の発光素子131、132、133、134の電気的特性を直接比較することができる。
【0034】
これにより、迅速に、かつ、容易にアレイ型発光素子13における各々の発光素子131、132、133、134の電気的特性を得ることができる。
【0035】
なお、本実施の形態では、スペクトル分析装置として、スペクトラムアナライザー16を用いた検査装置について説明したが、バンドパスフィルタ等を用いて周波数ごとの出力を測定することができる装置であれば、同様に適用することが可能である。
【0036】
また、本実施の形態では、ドライバIC12に個別ドライバ121、122、123、124を設けた構成について説明したが、入力した複数の異なる周波数の信号に対応した駆動電流を生成することができる構成であれば、いかなる構成であっても良い。
【0037】
更に、アレイ型発光素子13における各々の発光素子131、132、133、134を各々の周波数ごとに点滅させる場合について説明したが、FM変調等の変調をかけた発光を行っても同様の効果を得ることができる。
【0038】
上述の検査装置における検査方法について、図5に基づき説明する。
【0039】
最初に、ステップ102(S102)において、信号発生器11により複数の異なる周波数の信号を発生させる。
【0040】
次に、ステップ104(S104)において、発光素子であるアレイ型発光素子13を発光させる。具体的には、信号発生器11により発生された周波数の信号をドライバIC12における各々の周波数の信号に対応した個別ドライバ121、122、123、124に入力し、駆動電流を発生させる。この駆動電流をアレイ型発光素子13における各々の発光素子131、132、133、134に流すことにより、各々の周波数信号に応じた発光をさせる。
【0041】
次に、ステップ106(S106)において、受光素子14により、アレイ状発光素子13において発光した光をすべて受光し電気信号に変換する。
【0042】
次に、ステップ108(S108)において、受光素子14により変換された電気信号は、変換IC15を介した後、スペクトラムアナライザー16に入力することにより、周波数ごとの出力を得る。
【0043】
スペクトラムアナライザー16では、周波数に応じた出力が表示されるため、アレイ型発光素子13における各々の発光素子131、132、133、134の発光特性を同時に、かつ、個別に得ることができる。
【0044】
これにより、各々の周波数に対応する発光素子131、132、133、134の良否や、所定の基準内に入っているか否か等の判別を容易に行うことができる。
【0045】
次に、本実施の形態における検査装置及び検査方法により検査の行われたアレイ型発光素子13を用いたコネクタについて説明する。
【0046】
このコネクタは、図6に示すように、電気信号はコネクタ端子51を介し、ドライバIC52に入力される。ドライバIC52では、アレイ型発光素子である複数の面発光レーザーから構成されるVCSEL53を制御するための駆動信号が出力され、各々の面発光レーザーを発光させる。即ち、VCSEL53における各々の面発光レーザーにおいて、電気信号が光の信号として出力される。
【0047】
この後、VCSEL53における各々の面発光レーザーにおいて発光した光は、レンズアレイ54を介し、光コネクタ55より、光ファイバー56における光信号として出力される。
【0048】
一方、光ファイバー56を介し入力する光信号については、入力した光信号は光コネクタ55より、レンズアレイ54を介し、フォトディテクタ(PD)57に入力し、光信号が電気信号へと変換される。この変換された電気信号は、ドライバIC58を介し、コネクタ端子51より電気信号として出力される。
【0049】
また、ドライバIC52とドライバIC58とは、マイコン59を介し制御されるとともに、ドライバIC52とドライバIC58との間においても情報通信が行われる。
【0050】
尚、本実施の形態では、アレイ型発光素子の検査について説明したが、多心導波路、多心ファイバアレイ、光配線基板、液晶フラットパネルディスプレイ、プラズマディスプレイ、照明や信号機、自動車のヘッドライト又はテールランプ等に用いられる集合型LED等の検査を行う場合にも本発明を適用することが可能である。尚、多心導波路、多心ファイバアレイ、光配線基板の検査を行う場合には、本実施の形態における検査装置においてドライバICに接続される光源を設ける必要がある。
【0051】
また、本実施の形態では、単一の受光素子14を用いた場合について説明したが、発光面積が広い場合等においては、受光素子14を複数用いた構成であってもよい。
【0052】
以上、本発明の実施に係る形態について説明したが、上記内容は、発明の内容を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本実施の形態におけるアレイ型発光素子の検査装置の全体の構成図
【図2】本実施の形態におけるアレイ型発光素子の検査装置の全体の斜視図
【図3】本実施の形態におけるアレイ型発光素子の検査装置の要部の斜視図
【図4】本実施の形態におけるアレイ型発光素子の検査装置の要部の構成図
【図5】本実施の形態におけるアレイ型発光素子の検査方法のフローチャート
【図6】本実施の形態における検査が行われたアレイ型発光素子を用いたコネクタの構成図
【符号の説明】
【0054】
11 信号発生器
12 ドライバIC
13 アレイ型発光素子(VCSEL)
14 受光素子
15 変換IC
16 スペクトラムアナライザー
21 発光側検査装置
22 ステージ
23 プリント基板
24 受光側検査装置
121、122、123、124 個別ドライバ
131、132、133、134 発光素子(単体のVCSEL)
211、212、213、214、221、222、223、224 電気配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気信号を光信号に変換する発光素子が一次元又は二次元のアレイ状に複数形成されているアレイ型発光素子の検査を行うためのアレイ型発光素子の検査装置であって、
相互に異なる複数の周波数の信号を発生させる信号発生器と、
前記相互に異なる複数の周波数の信号に対応して、前記アレイ型発光素子における発光素子を各々発光させるための駆動ドライバと、
前記アレイ型発光素子より発光した光を受光し電気信号に変換する受光素子と、
前記受光素子における信号を前記周波数ごとに出力解析するスペクトル分析装置と、
を有することを特徴とするアレイ型発光素子の検査装置。
【請求項2】
前記アレイ型発光素子は、面発光レーザーをアレイ状に形成したものであることを特徴とする請求項1に記載のアレイ型発光素子の検査装置。
【請求項3】
前記受光素子は単一であることを特徴とする請求項1又は2に記載のアレイ型発光素子の検査装置。
【請求項4】
電気信号を光信号に変換する発光素子が一次元又は二次元のアレイ状に複数形成されているアレイ型発光素子の検査を行うためのアレイ型発光素子の検査方法であって、
信号発生器により相互に異なる複数の周波数の信号を発生させる工程と、
前記アレイ型発光素子における複数の発光素子を前記相互に異なる複数の周波数の信号に対応して発光させる工程と、
前記アレイ型発光素子における複数の発光素子の発光を受光素子により受光する工程と、
前記受光素子において受光した光を電気信号に変換した後、前記電気信号を周波数ごとに出力解析するスペクトル分析装置に入力し、周波数ごとの出力を得る工程と、
を含むことを特徴とするアレイ型発光素子の検査方法。
【請求項5】
前記アレイ型発光素子は、面発光レーザーをアレイ状に形成したものであることを特徴とする請求項4に記載のアレイ型発光素子の検査方法。
【請求項6】
前記受光素子は単一であることを特徴とする請求項4又は5に記載のアレイ型発光素子の検査装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−16110(P2010−16110A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−173617(P2008−173617)
【出願日】平成20年7月2日(2008.7.2)
【出願人】(501398606)富士通コンポーネント株式会社 (848)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】