説明

アレルギー性疾患の発症の診断および/または予測の方法

本発明はアレルギー性疾患の診断、動物におけるアレルギー性疾患の発症の予測、アレルギー性疾患を標的とした治療の進行のモニター、1つまたは複数の臨床的/免疫学的表現型へのアレルギー性疾患の分類、および/またはアレルギー性疾患に罹患するもしくはリスクのある個々の動物の、特定の治療形態に対する潜在的反応性の決定のための方法に関する。特に、本発明は、動物由来の生体試料を分析し、1つまたは複数のアレルギー関連遺伝子の活性化レベルを決定する段階であって、活性化のレベルは動物においてアレルギー性疾患を診断する、またはアレルギー性疾患の発症の相対的リスクを予測する段階を含む、動物におけるアレルギー性疾患の発症の診断および/または予測のための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明はアレルギー性疾患の診断、動物におけるアレルギー性疾患の発症の予測、アレルギー性疾患を標的とした治療の進行のモニター、1つもしくは複数の臨床的/免疫学的表現型へのアレルギー性疾患の分類、および/またはアレルギー性疾患に罹患するもしくはリスクのある個々の動物の、特定の治療形態に対する潜在的反応性の決定のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
本明細書に引用される、任意の特許または特許出願を含む全ての参考文献は参照により本明細書に組み入れられる。参考文献が先行技術であるとは認めない。参考文献の議論は、その著者らが主張することを述べるものであり、出願者らは引用された文献の正確性および適切性に異議を申し立てる権利を有する。本明細書にはいくつかの先行技術文献が参照されているが、その参照は、これらの文献のいずれもがオーストラリアまたは他の国で当技術分野における共通の一般的知識の一部を形成することを認めるものではないことは明らかだろう。
【0003】
喘息、アトピー性皮膚炎、高IgE症候群、およびアレルギー性鼻炎は、ヒトにおいて最も一般的で最も解析されたいくつかの免疫疾患を代表する。実際、アレルギー性疾患は米国では人口の約20%に見られる。
【0004】
しかし、アレルギーの評価のための臨床検査手順はいくつかあるにもかかわらず(一般的に、American College of Physicians, “Allergy Testing,” Ann. Intern. Med.(1989)110:317-320(非特許文献1);Bousquet(1988)“In Vivo Methods for Study of Allergy:Skin Tests, Techniques, and Interpretation,” Allergy, Principles and Practice, 3rd Ed., Middleton et al., Eds., CV Mosby Co., St. Louis, Mo., pp 419-436(非特許文献2);およびVan Arsdel et al.(1989)Ann. Intern. Med. 110:304-312(非特許文献3)を参照されたい)、アレルギーの初期診断、個体がアレルギーを発症するかどうかの予測、または個々の患者がどのサブタイプのアレルギーに罹患するかの決定のために使用できる方法は、不正確であり、患者間の変動が大きい。
【0005】
この変動の理由は、アレルギー性疾患は元来多因子性であり、個々の患者の中で、多数の異なる遺伝子の産物によって促進される、異なる炎症機構の組み合わせの作用が関与していることである。しかし、現在利用できる検査は、限られた範囲の遺伝子の産物を測定するのみである。言い換えると、現在利用できるアレルギーの免疫学的検査または臨床検査はすべて、個体の現在の免疫学的状態に関する表面的な情報しか与えず、アレルギーのどのようなタイプまたはサブタイプが個々の患者に影響しているかを信頼性を持って決定できる方法はない。
【0006】
したがって、アレルギー性疾患の発症を診断および/または予測するための、ならびに発現しているアレルギーのタイプまたはサブタイプを決定するための、より厳密な非侵襲的方法が必要とされている。
【0007】
【非特許文献1】American College of Physicians, “Allergy Testing,” Ann. Intern. Med.(1989)110:317-320
【非特許文献2】Bousquet(1988)“In Vivo Methods for Study of Allergy:Skin Tests, Techniques, and Interpretation,” Allergy, Principles and Practice, 3rd Ed., Middleton et al., Eds., CV Mosby Co., St. Louis, Mo., pp 419-436
【非特許文献3】Van Arsdel et al.(1989)Ann. Intern. Med. 110:304-312
【発明の開示】
【0008】
発明の概要
第1の局面において本発明は、動物由来の生体試料を分析し、1つまたは複数のアレルギー関連遺伝子の活性化レベルを決定する段階であって、活性化のレベルは動物においてアレルギー性疾患を診断する、またはアレルギー性疾患の発症の相対的リスクを予測する段階を含む、動物におけるアレルギー性疾患の発症の診断および/または予測のための方法を提供する。大部分の場合、関心対象の遺伝子は発現のアップレギュレーションを示す;遺伝子がダウンレギュレートされている場合もある。
【0009】
第2の局面において本発明は、
(a)動物由来の1つまたは複数の生体試料を分析して、1つまたは複数のアレルギー関連遺伝子の活性のレベルを決定する段階、および
(b)活性化のレベルが治療中に変化するかどうかを決定する段階
を含み、治療中の活性化レベルの変化が治療の進行を示す、治療を受ける動物においてアレルギー性疾患の治療の進行をモニターする方法を提供する。
【0010】
第3の局面において本発明は、動物由来の生体試料を分析して1つまたは複数のアレルギー関連遺伝子の活性化レベルを決定する段階であって、活性化レベルがその治療に対する動物の潜在的反応性を予測する段階を含む、アレルギー性疾患に罹患する個々の動物の、アレルギー性疾患の治療に対する潜在的反応性を決定する方法を提供する。
【0011】
第4の局面において本発明は、動物から生体試料を得る段階、および試料中の1つまたは複数のアレルギー関連遺伝子由来のmRNA転写物のレベルを決定する段階であって、mRNAの存在が重症および/または持続性アレルギーへの進行リスクの上昇と関連する段階を含む、アレルギー性疾患に罹患する動物において重症および/または持続性のアレルギーへの進行リスクを予測する方法を提供する。
【0012】
第5の局面において本発明は、動物から生体試料を得る段階、および試料中のアレルギー関連遺伝子由来の1つまたは複数のmRNA転写物のレベルを決定する段階であって、mRNAの存在が特定のアレルギー表現型に関連するまたはそれに寄与する段階を含む、動物におけるアレルギー性疾患の免疫学的表現型を決定する方法を提供する。
【0013】
第6の局面において本発明は、動物から生体試料を得る段階、および試料中のアレルギー関連遺伝子の活性化レベルを決定する段階であって、活性化レベルが動物の免疫療法に反応する能力を予測する段階を含む、特定の免疫療法に反応する能力のある動物を同定する方法を提供する。
【0014】
第7の局面において本発明は、以下の段階を含む、免疫療法に対するアレルギー性動物の反応をモニターする方法を提供する:
(a)アレルギー性の動物由来の1つまたは複数の生体試料を分析して、1つまたは複数のアレルギー関連遺伝子の活性化レベルを決定する段階;
(b)動物を免疫療法に供する段階;
(c)動物由来の1つまたは複数のさらなる生体試料を分析して、免疫療法中に活性化レベルが変化するかどうかを決定する段階;
ここで免疫療法中の活性化レベルの変化は、動物が免疫療法に反応することを示す。
【0015】
第8の局面において本発明は、以下の段階を含む、アレルギー性疾患の重症度を低下させる処置の有効性をモニターする方法を提供する:
(a)動物由来の1つまたは複数の生体試料を分析して、遺伝子によってコードされる1つまたは複数の遺伝子の活性化レベルを決定する段階;
(b)動物を治療に供する段階;および
(c)動物由来の1つまたは複数のさらなる生体試料を分析して、処置中に活性化レベルが変化するかどうかを決定する段階;
ここで処置中の活性化レベルの変化は、動物が処置に反応することを示す。
【0016】
本発明の全ての局面において、遺伝子はアレルギー性疾患に関連する任意の遺伝子でよい。好ましくは、遺伝子は、cig5、IFIT4、LAMP3、DACT1、IL17RB、KRT1、LNPEP、MAL、NCOA3、OAZ、PECAM1、PLXDC1、RASGRP3、SLC39A8、XBP1、NDFIP2、RAB27B、GNG8、GJB2およびCISHからなる群より選択される1つもしくは複数の遺伝子、もしくはそれぞれ、プローブ243610_atによりヒト染色体9q21.13の遺伝子座138255に、1556097_atによりヒト染色体15q25.2に、および242743_atによりヒト染色体16p12.1に同定された配列からなる群より選択される配列を含む遺伝子、またはこれらの遺伝子の2つもしくはそれ以上の組み合わせである。
【0017】
本発明の全ての局面において、遺伝子の活性化レベルを決定する段階は、当技術分野で公知の任意の方法で実施され得る。好ましくは、これは逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)によるmRNAの存在の検出、またはマイクロチップ技術を利用した特異的核酸アレイの使用によって実行される。
【0018】
いくつかの態様では、mRNAは、cig5、IFIT4、LAMP3、DACT1、IL17RB、KRT1、LNPEP、MAL、NCOA3、OAZ、PECAM1、PLXDC1、RASGRP3、SLC39A8、XBP1、NDFIP2、RAB27B、GNG8、GJB2およびCISHからなる群より選択される1つまたは複数の遺伝子、またはそれぞれ、プローブ243610_atによりヒト染色体9q21.13の遺伝子座138255に、1556097_atによりヒト染色体15q25.2に、および242743_atによりヒト染色体16p12.1に同定された配列からなる群より選択される配列を含む領域に特異的なプライマーを用いて検出される。
【0019】
プライマーは、以下のプライマー対のセットからなる群より選択され得る。



【0020】
または、活性化レベルは、例えばELISA、プロテオミックアレイ、またはフローサイトメトリーによって検出される細胞内染色を用いて、mRNAによってコードされるタンパク質を検出しても決定できる。これらの方法は全て当技術分野で周知である。
【0021】
遺伝子は不活性、すなわちそれほど転写または翻訳されない場合もあるが、遺伝子の発現が変調される、すなわちアップレギュレーションまたはダウンレギュレートされる場合もあることが理解されるだろう。
【0022】
本発明の全ての局面において、1つの態様ではアレルギー関連遺伝子はアトピー性の個体由来のアレルゲン抗原投与PBMCにおいてアップレギュレートされているが、そのアレルゲンにアレルギー性ではない個体由来のPBMCにおいては、アップレギュレートされているとしてもわずかである。好ましくは、この態様では遺伝子は、DACT1、IL17RB、KRT1、LNPEP、MAL、NCOA3、OAZ、PECAM1、PLXDC1、RASGRP3、SLC39A8、XBP1、NDFIP2、RAB27B、GNG8、GJB2およびCISHからなる群より選択される1つまたは複数の遺伝子、およびそれぞれプローブ243610_atによりヒト染色体9q21.13の遺伝子座138255に、1556097_atによりヒト染色体15q25.2に、および242743_atによりヒト染色体16p12.1に同定された配列からなる群より選択される配列を含む遺伝子である。より好ましくは、遺伝子はアトピー性の個体ではアップレギュレートされており、非アトピー性の個体ではダウンレギュレートされている。さらに好ましくは遺伝子はKRT1、PECAM1、PLXDC1、DACT1、またはMALである。
【0023】
代替の態様では、アレルギー関連遺伝子は、非アトピー性個体のアレルゲン抗原投与PBMCにおいてダウンレギュレートされているが、アトピー性の個体のPBMCにおいてはダウンレギュレートされていない。好ましくは本態様では遺伝子はcig5、IFIT4およびLAMP3からなる群より選択される。
【0024】
生体試料は、血液、骨髄、血漿、血清、リンパ液、脳脊髄液、またはその細胞もしくは液体成分;皮膚、呼吸器、小腸、および尿生殖器官の外部部分;涙液、唾液、または乳汁のような他の分泌物;組織または臓器生検試料;または培養細胞または細胞培養上清を含む、アトピー性または非アトピー性哺乳動物から単離された任意の生体材料であり得る。好ましくは生体試料は血液もしくはリンパ液、またはその細胞もしくは液体成分である。より好ましくは、生体試料はその哺乳動物がアレルギーである1つまたは複数のアレルゲンに、インビトロで曝露することによって刺激した末梢血の骨髄由来単核細胞(PBMC)である。当業者は、特定の場合にインビトロでのアレルゲンに対する事前の曝露が有利であるかどうかを容易に決定できるだろう。これは生体試料の性質に依存する可能性がある。
【0025】
哺乳動物はヒト、または家畜、愛玩動物、もしくは動物園の動物でよい。本発明の化合物はヒトの医学的処置に適していると特に考えられるが、イヌおよびネコのような愛玩動物、およびウマ、ウシ、およびヒツジのような家畜、または非ヒト霊長類、ネコ科の動物、イヌ科の動物、ウシ科の動物、および有蹄類のような動物園の動物の処置を含む、獣医学的処置にも応用できる。
【0026】
薬学的または診断的組成物の調製のための方法および薬学的キャリアは、Remington's Pharmaceutical Sciences, 20th Edition, 米国Williams & Wilkins, Pennsylvania, USAに記載のように当技術分野で周知である。
【0027】
発明の詳細な説明
本発明を詳細に説明する前に、本発明は特に例示された診断方法に限定されず、当然、変化する可能性があることを理解する必要がある。また、本明細書で使用される用語は本発明の特定の態様を説明するためのみのものであり、限定する意図はないことを理解する必要がある。
【0028】
本明細書に引用されるすべての刊行物、特許、および特許出願は、その全体が参照として本明細書に組み入れられる。しかし、本明細書に記載される刊行物は、刊行物中に報告されるプロトコールおよび試薬であって本明細書に関連して使用される可能性のある記述および開示を目的として引用される。本明細書中のいかなる記述も、先行技術のために本発明がそのような開示に先行する権利がないと認めるものと解釈することはできない。
【0029】
さらに、本発明の実施には、特に他に記載がない限り、当技術分野における通常の免疫学的技術、化学および薬理学を使用する。そのような技術は当業者に周知であり、文献に十分説明されている。例えば、Colignan, Dunn, Ploegh, Speicher and Wingfield “Current protocols in Protein Science”(1999)Volume I and II(John Wiley & Sons Inc.);およびBailey, J.E. and Ollis、D.F., Biochemical Engineering Fundamentals, McGraw-Hill Book Company, NY, 1986を参照されたい。
【0030】
本明細書中で使用される略語は以下の通りである。
ELISA:酵素結合免疫吸着検定法
HDM:イエダニ
IL-4:インターロイキン4
PCR:ポリメラーゼ連鎖反応
RT-PCR:逆転写ポリメラーゼ連鎖反応
【0031】
本出願の特許請求の範囲および本発明の説明においては、明確な言語または必要な含意のために文脈上他の解釈が必要な場合を除き、「含む」と言う用語および「含んでいる」というような活用形は、包含的な意味で使用され、すなわち、述べられた特徴の存在を指示するが、本発明の様々な態様において別の特徴が存在または追加されることを除外するものではない。
【0032】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される単数形の「1つの」「1」および「その」は、文脈上明らかにそうでない場合を除き、複数形も含むことに留意されたい。したがって、例えば「1つの遺伝子」への言及は、複数のそのような遺伝子を含み、「1つのアレルギー」への言及は、1つまたは複数のアレルギーを意味する等である。他に規定されない限り、本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明の属する分野の当業者が一般的に理解するのと同じ意味を持つ。本発明の実施または試験には、本明細書に説明されるものと類似または同等の任意の材料および方法が使用できるが、好ましい材料および方法が説明される。
【0033】
値の範囲が表示される場合には、この範囲は、範囲の上限および下限、ならびにそれらの間の全ての値を含むことは明らかに理解されるだろう。
【0034】
最も広い意味で、本発明はアレルギー性疾患の発症を診断および/または予測するための方法に関する。本明細書で使用される「診断」または「診断する」という用語は、1つのアレルギー性疾患を別のアレルギー性疾患から区別する、または「正常」または「非アレルギー性」(非アトピー性)の状態に対して、動物にアレルギー性疾患が存在する(アトピー性)かどうかを決定する、および/またはアレルギー性疾患の特質を決定する方法を指す。
【0035】
本明細書で使用される「アトピー性」または「アレルギー性」という用語は、アレルギー反応を有する動物を指す。逆に「非アトピー性」動物は、アレルギー性反応を有さないものである。アレルギーは通常、皮膚プリック、皮内または皮膚パッチ試験のような皮膚試験、放射性アレルギー吸着試験(RAST)による血清IgE抗体の決定、またはELISAもしくは関連法によって診断される。
【0036】
アレルギーはアレルゲンによって引き起こされるが、アレルゲンは花粉もしくは他の植物成分、埃、カビまたは真菌、食物、動物もしくは鳥の鱗屑、昆虫毒、または化学物質を含むがこれらに限定されない様々な発生源に存在する可能性がある。
【0037】
本明細書で使用される「アレルギー性疾患」または「アレルギー状態」という用語は、様々な刺激に対する気管および気管支の反応性の増大、またはアレルゲン曝露に対するこれらまたは他の部位の炎症を含む疾患によって特徴付けられる、異常な生物学的機能を指す。これらのアレルギー性疾患に関連する症状には、風邪、風邪のようなおよび/または「インフルエンザ様」の症状、咳、皮膚刺激、呼吸困難、流涙、鼻漏、くしゃみおよび喘鳴、ならびに皮膚の症状発現が含まれるが、これらに限定されない。アレルギー性疾患は、IL-4、IL-4R、IL-5、IL-9およびIL-13のようなTh2サイトカインの上昇もしばしば伴う。アレルギー性疾患の例には、喘息、アトピー性皮膚炎、気管支収縮、慢性気道炎症、アレルギー性接触性皮膚炎、湿疹、食物アレルギー、枯草熱、高IgE症候群、鼻炎、およびアレルギー性蕁麻疹が含まれるが、これらに限定されない。
【0038】
上述のように、本発明はアレルギー性疾患の発症を予測する方法にも関する。アレルギー性疾患に関して本明細書で使用される「発症を予測する」という用語は、動物が現在アレルギー性疾患を有さない、またはアレルギー性疾患の臨床症状を有さないが、アレルギー性疾患を発症する性向があることを意味する。「アレルギー性疾患を発症する性向がある」、「素因」または「感受性」または任意の類似の言い回しは、アレルギーを発症する可能性のある動物が、「活性化」される特定の「アレルギー関連遺伝子」を有するため、動物が特定の疾患(例えば喘息)を発症するリスクが予測されることを意味する。健康な個々の動物と比較して、アレルギー性疾患の素因を有する動物においてこれらの「アレルギー関連遺伝子」が活性化すると、発症前の動物においてさえ、アレルギー性疾患の発症が予測される。
【0039】
1つの態様では、「発症を予測する」という用語はアレルギー性疾患を有する動物も含み、本明細書に開示される方法は疾患の重症度の評価もしくはその進行をさらに正確に予測するために使用される。
【0040】
特定の理論または仮説に縛られることは望まないが、発明者らは以前にはアレルギー性疾患に関連すると考えられていなかったものを含むいくつかの遺伝子が、アレルギー性疾患を有する動物のアレルゲン刺激末梢血単核細胞(PMBC)で活性化されることを実証した。しかし、これらの遺伝子は、アレルギー性疾患を有さない動物では、より低い程度活性化される。例えば、DACT1、IL17RB、KRT1、LNPEP、MAL、NCOA3、OAZ、PECAM1、PLXDC1、RASGRP3、SLC39A8、XBP1、NDFIP2、RAB27B、GNG8、GJB2およびCISHのような遺伝子、またはそれらの遺伝子の2つまたはそれ以上の組み合わせは、イエダニにアレルギー性のヒト由来のイエダニ(HDM)刺激PMBCにおいて強く活性化されるが、これらの遺伝子はイエダニにアレルギー性ではないヒト由来のPMBCにおいては弱く活性化されるのみか全く活性化されないことを発明者らは注目した。反対に、cig5、IFIT4およびLAMP3のような他の遺伝子は、非アトピー性の個体(正常個体)由来のHDM刺激PBMCでは活発にダウンレギュレートされるが、これらの遺伝子はアトピー性の(「アレルギー性の」)個体由来の対応するPBMC試料中ではわずかに弱くダウンレギュレートされるか、または全くダウンレギュレートされない。これらの遺伝子は、やはり非アトピー性の表現型を示すと考えられ、かつこれらはまた、「保護性」遺伝子を代表する、すなわち、これらの遺伝子の産物はアレルギー発症に対する何らかの保護を与えるとも考えられる。
【0041】
したがって、一つの態様では、本明細書で互換的に使用される「アレルギー関連遺伝子」または「アレルギー特異的遺伝子」と言う用語は、アレルギー性疾患の臨床症状を示す動物は刺激化合物またはアレルゲンの存在下で活性化される遺伝子を有し、ここで活性化レベルは非アレルギー性動物とは異なっているという点で、アレルギー性疾患に通常関連しているか、またはアレルギー性疾患に関連することが示される遺伝子のいずれかを指す。
【0042】
本明細書で使用される「活性化された」という用語は、遺伝子が動物において盛んに転写されている、すなわち、対応するmRNAまたはそのmRNAにコードされるタンパク質が検出されることを意味する。
【0043】
本明細書で使用される「哺乳動物」という用語は、非限定的に、チンパンジーならびに他の類人猿およびサル種のような非ヒト霊長類を含むヒトおよび他の霊長類;ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、およびウマのような家畜;イヌおよびネコのような愛玩動物;マウス、ラット、およびモルモットのような齧歯類を含む実験動物を含む。本用語は特定の年齢を示さず、したがって成体および未熟な個体の両方がカバーされる。全ての哺乳動物の免疫系は同様に働くので、本明細書に記述される方法は、上述の哺乳動物種のいずれにも使うことが意図されている。
【0044】
したがって本発明は、ヒト、ならびにネコ、イヌ、およびより大きなネコ科の動物およびイヌ科の動物のような肉食動物、子ブタ、ブタ、およびイノシシのようなブタ、ウシ、雄牛、ヒツジ、キリン、シカ、ヤギ、バイソン、およびラクダのような反すう動物、ウマ、および類人猿およびサルのような非ヒト霊長類を含む、ヒトにとって経済的および/または社会的に重要な哺乳動物を含む任意の哺乳動物における、アレルギー性疾患の診断またはアレルギー性疾患の発症の予測を含む。したがって、本発明は、家畜のブタ、反すう動物、ウマ等を含むがこれらに限定されない家畜、ならびに動物園または絶滅の危機に瀕した動物のアレルギー性疾患の診断を含む。
【0045】
本段階は本明細書に記述される方法の刺激段階に当たる。環境アレルゲンへの曝露後、アレルギー性疾患に関連する1つもしくは複数の遺伝子の活性化が決定または測定される。この段階の根拠は、非アトピー性個体と比較して、アトピー性個体では特定の遺伝子が活性化するという発明者らの所見に基づく。アレルギー関連遺伝子が活性化するかどうかの分析段階は、当技術分野で公知の任意の標準的な技術を用いて実行できる。例えば、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)またはDNAアレイ解析、ELISA、プロテオミックアレイ、またはフローサイトメトリーで検出する細胞内染色を用いることができる。
【0046】
生体試料は、単離後、直接に本明細書に記述される技術を用いて試験してもよいが、生成するデータの質を上げるためにさらに処理してもよい。この点に関して、発明者らは文献から、増殖を誘導するためにアレルゲンを用いた最初の刺激によるアレルゲン特異的細胞を選択的な増殖が、関連細胞の頻度が動物から直接単離された生体試料中の同じ細胞のそれよりも1桁高い「細胞株」を生成することに注目している。必要ならば、特定の細胞をクローニングすることにより、さらに濃縮および精製できる。
【0047】
したがって、1つの態様では、アレルギー性疾患の発症の疑われる、または感受性のある動物から、末梢血のような生体試料を得る。その後、生体試料は、血液から実質的に白血球を単離するために処理する、すなわち他の混入細胞から白血球を分離する(またはそうでなければ、実質的に取り除く)。その後、生体試料を環境のアレルゲンに曝露する。本明細書で使用される「環境のアレルゲン」と言う用語は、アレルギー性疾患の発症と特異的に関連したアレルゲンを指す。例えば、アレルゲンには、アレルゲンder p1(Scobie et al.(1994)Biochem. Soc. Trans. 22:448S;Yssel et al.(1992)J. Immunol. 148:738-745), der p2(Chua et al.(1996)Clin. Exp. Allergy 26:829-837), der p3(Smith and Thomas(1996)Clin. Exp. Allergy 26:571-579), der p5, der p V(Lin et al.(1994)J. Allergy Clin. Immunol. 94:989-996), der p6(Bennett & Thomas(1996)Clin. Exp. Allergy 26:1150-1154), der p 7(Shen et al.(1995)Clin. Exp. Allergy 25:416-422), der f2(Yuuki et al.(1997)Int. Arch. Allergy Immunol. 112:44-48), der f3(Nishiyama et al.(1995)FEBS Lett. 377:62-66), der f7(Shen et al.(1995)Clin. Exp. Allergy 25:1000-1006);Mag 3(Fujikawa et al.(1996)Mol. Immunol. 33:311-319)のような, イエダニ(例えばヤケヒョウダニ(Dermatophagoides pteronyssinus)、コナヒョウダニ(Dermatophagoides farinae)、ネッタイタマニクダニ(Blomia tropicalis))を含む動物のアレルゲンが含まれ得る。アレルゲンとしてやはり興味深いのは、イエダニのアレルゲンTyr p2(Eriksson et al.(1998)Eur. J. Biohem. 251:443-447)、Lep d1(Schmidt et al.(1995)FEBS Lett. 370:11-14)、およびグルタチオンSトランスフェラーゼ(O'Neill et al.(1995)Immunol Lett. 48:103-107);グルタチオンSトランスフェラーゼと相同性を有する25,589 KDaの219アミノ酸のポリペプチド(O'Neill et al.(1994)Biochim. Biophys. Acta. 1219:521-528);Blo t 5(Arruda et al.(1995)Int. Arch. Allergy Immunol. 107:456-457);ハチ毒ホスホリパーゼA2(Carballido et al.(1994)J. Allergy Clin. Immunol. 93:758-767;Jutel et al.(1995)J. Immunol. 154:4187-4194);ウシ皮膚/鱗屑抗原BDA 11(Rautiainen et al.(1995)J. Invest. Dermatol. 105:660-663)およびBDA20(Mantyjarvi et al.(1996)J. Allergy Clin. Immunol. 97:1297-1303);ウマ主要アレルゲンEqu c1(Gregoire et al.(1996)J. Biol. Chem. 271:32951-32959);キバハリアリM. pilosulaアレルゲンMyr p Iおよびその相同アレルゲン性ポリペプチドMyr p2(Donovan et al.(1996)Biochem. Mol. Biol. Int. 39:877-885);ダニBlomia tropicalisの1〜13、14、16 kDaアレルゲン(Caraballo et al.(1996)J. Allergy Clin. Immunol. 98:573-579);ゴキブリアレルゲンBla g Bd90K(Helm et al.(1996)J. Allergy Clin. Immunol. 98:172-80)およびBla g 2(Arruda et al.(1995)J. Biol. Chem. 270:19563-19568);ゴキブリCr-PIアレルゲン(Wu et al.(1996)J. Biol. Chem. 271:17937-17943);カミアリ毒アレルゲンSol i 2(Schmidt et al.(1996)J. Allergy Clin. Immunol. 98:82-88);コンチュウChironomus thummi主要アレルゲンChi t 1-9(Kipp et al.(1996)Int. Arch. Allergy Immunol. 110:348-353);イヌアレルゲンCan f 1、またはネコアレルゲンFel d 1(Ingram et al.(1995)J. Allergy Clin. Immunol. 96:449-456);例えばウマ、イヌ、またはネコ由来のアルブミン(Goubran Botros et al.(1996)Immunology 88:340-347);分子量22 kDa、25 kDaまたは60 kDaのシカアレルゲン(Spitzauer et al.(1997)Clin. Exp. Allergy 27:196-200);およびウシの20 kDa主要アレルゲン(Ylonen et al.(1994)J. Allergy Clin. Immunol. 93:851-858)である。
【0048】
花粉および草のアレルゲンには、例えばHor v9(Astwood and Hill(1996)Gene 182:53-62), Lig v1(Batanero et al.(1996)Clin. Exp. Allergy 26:1401-1410);Lol p 1(Muller et al.(1996)Int. Arch. Allergy Immunol. 109:352-355)、Lol p II(Tamborini et al.(1995)Mol. Immunol. 32:505-513)、Lol pVA、Lol pVB(Ong et al.(1995)Mol. Immunol. 32:295-302)、Lol p 9(Blaher et al.(1996)J. Allergy Clin. Immunol. 98:124-132);Par J I(Costa et al.(1994)FEBS Lett. 341:182-186;Sallusto et al.(1996)J. Allergy Clin. Immunol. 97:627-637)、Par j 2.0101(Duro et al.(1996)FEBS Lett. 399:295-298);Bet v1(Faber et al.(1996)J. Biol. Chem. 271:19243-19250)、Bet v2(Rihs et al.(1994)Int. Arch. Allergy Immunol. 105:190-194);Dac g3(Guerin-Marchand et al.(1996)Mol. Immunol. 33:797-806);Phl p 1(Petersen et al.(1995)J Allergy Clin. Immunol. 95:987-994)、Phl p 5(Muller et al.(1996)Int. Arch. Allergy Immunol. 109:352-355)、Phl p 6(Petersen et al.(1995)Int. Arch. Allergy Immunol. 108:55-59);Cry j I(Sone et al.(1994)Biochem. Biophys. Res. Commun. 199:619-625)、Cry j II(Namba et al.(1994)FEBS Lett. 353:124-128);Cor a 1(Schenk et al.(1994)Eur. J. Biochem. 224:717-722);cyn d1(Smith et al.(1996)J. Allergy Clin. Immunol. 98:331-343)、cyn d7(Suphioglu et al.(1997)FEBS Lett. 402:167-172);Pha a 1およびPha a 5のアイソフォーム(Suphioglu and Singh(1995)Clin. Exp. Allergy 25:853-865);Cha o 1(Suzuki et al.(1996)Mol. Immunol. 33:451-460);プロフィリン由来、例えばオオアワガエリまたはカバノキの花粉(Valenta et al.(1994)Biochem. Biophys. Res. Commun. 199:106-118);P0149(Wu et al.(1996)Plant Mol. Biol. 32:1037-1042);Ory s1(Xu et al.(1995)Gene 164:255-259);ならびにAmb a VおよびAmb t 5(Kim et al.(1996)Mol. Immunol. 33:873-880;Zhu et al.(1995)J. Immunol. 155:5064-5073)が含まれる。
【0049】
真菌のアレルゲンには、Cladosporium herbarumのアレルゲン、Cla h III(Zhang et al.(1995)J. Immunol. 154:710-717);担子菌のPsilocybe cubensisから得られる真菌のサイクロフィリンであるアレルゲンPsi c 2(Homer et al.(1995)Int. Arch. Allergy Immunol. 107:298-300);Cladosporium herbarumのcDNAライブラリーからクローニングされたhsp 70(Zhang et al.(1996)Clin Exp Allergy 26:88-95);アオカビ(Penicillium notatum)の68 kDaアレルゲン(Shen et al.(1995)Clin. Exp. Allergy 26:350-356);アルデヒドデヒドロゲナーゼ(ALDH)(Achatz et al.(1995)Mol. Immunol. 32:213-227);エノラーゼ(Achatz et al.(1995)Mol. Immunol. 32:213-227);YCP4(同上);酸性リボソームタンパク質P2(同上)が含まれるがこれらに限定されない。
【0050】
適切な食物アレルゲンには、例えばプロフィリン(Rihs et al.(1994)Int. Arch. Allergy Immunol. 105:190-194);αアミラーゼ/トリプシン阻害剤遺伝子ファミリーに属するコメアレルゲン性cDNA(Alvarez et al.(1995)Biochim Biophys Acta 1251:201-204);オリーブの主要アレルゲンOle e I(Lombardero et al.(1994)Clin Exp Allergy 24:765-770);カラシ由来の主要アレルゲンSin a 1(Gonzalez De La Pena et al.(1996)Eur J Biochem. 237:827-832);サケの主要アレルゲンであるパルブアルブミン(Lindstrom et al.(1996)Scand. J. Immunol. 44:335-344);主要アレルゲンMal d 1のようなリンゴのアレルゲン(Vanek-Krebitz et al.(1995)Biochem. Biophys. Res. Commun. 214:538-551);Ara h Iのようなラッカセイのアレルゲン(Burks et al.(1995)J Clin. Invest. 96:1715-1721)が含まれる。
【0051】
本段階は記述される方法の刺激段階に当たる。環境アレルゲンへの曝露後、アレルゲン関連遺伝子に対する活性化レベルが決定または測定される。
【0052】
遺伝子発現を検出するための多くの技術が利用され得る。薬理ゲノミクス測定のための技術システムが最近論評されている(Koch、2004:Nature Reviews Drug Discovery 3 749-761)。遺伝子発現は、例えば、アレルギー関連遺伝子の既知の配列に基づいて適切に標識したオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションプローブを用いて、DNAの定量のための従来のサザンブロット、またはmRNA定量のためのノーザンブロットによって、生体試料で直接測定することができる。様々なmRNAの混合物におけるアレルギー関連遺伝子由来mRNAの同定は通常、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応および検出可能な成分で標識したオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションプローブを用いて、実施されている。様々な標識、最も一般的には放射性同位元素、特に32Pを使用できる。しかし、ポリヌクレオチドへの導入のためのビオチン修飾ヌクレオチドの使用のような、他の技術も利用できる。その後ビオチンは、放射性同位元素、蛍光体、発色団等のような広範囲の標識で標識できるアビジンまたは抗体の結合部位となる。Keller et al., DNA Probes, pp.149-213(Stockton Press, 1989)。
【0053】
または二重鎖DNA、二重鎖RNA、およびDNA・RNAハイブリッド二重鎖またはDNA・タンパク質二重鎖を含む特定の二重鎖を認識できる抗体も利用できる。次に抗体を標識し、二重鎖を表面に結合させ、表面に二重鎖が形成されると二重鎖に結合した抗体の存在が検出されるような測定を行なうことができる。
【0054】
1つの好ましい方法では、生体試料中のmRNAを逆転写してcDNA鎖を生成する。ポリメラーゼ連鎖反応のような通常の技術によってcDNAを増幅し、分析に十分な量を提供することができる。
【0055】
増幅を用いて、所望の配列に特異的に結合するプライマーを使用して、特定の配列が存在するかどうかを決定することもできるが、この場合、増幅産物が存在すれば、特定の結合複合体が形成されたことを示す。または、mRNA試料を、例えばキャピラリーまたはゲル電気泳動のような電気泳動によって分画し、例えばニトロセルロースのような適当な支持体に移し、転写因子配列の断片でプローブする。オリゴヌクレオチド連結アッセイ、固体状態のアレイへの結合等を含む他の技術も使用できる。対象配列を有するmRNAが検出されれば、試料中に転写因子の遺伝子発現があることを示す。
【0056】
本明細書で使用される「ポリメラーゼ連鎖反応」または「PCR」は一般的に、米国特許第4,683,195号に記述されるような、インビトロにおける所望のヌクレオチド配列の増幅のための方法を指す。一般に、PCRでは鋳型核酸に選択的にハイブリダイズする能力のある2つのオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、プライマー延長合成のサイクルを繰り返す。通常は、PCR法で使用されるプライマーは、増幅するヌクレオチド配列の両端または隣接する鋳型内のヌクレオチド配列に相補的であるが、増幅するヌクレオチド配列に相補的なプライマーも使用できる。Wang et al., 1990, PCR Protocols, pp. 70-75(Academic Press);Ochman、et al.,1990, PCR Protocols, pp. 219-227;Triglia, et al.,1988, Nucl. Acids Res. 16:8186を参照されたい。
【0057】
「オリゴヌクレオチド」とは、Engels et al.,1989, Agnew. Chem. Int. Ed. Engl. 28:716-734に記述されるような、公知の方法(例えば、トリエステル、ホスホラミダイト、またはホスホン酸化学を含む)で化学的に合成される短い、一本鎖または二本鎖のポリデオキシヌクレオチドである。その後、例えばポリアクリルアミドゲル電気泳動によってこれを精製する。
【0058】
本明細書で使用される「PCR試薬」とは、標的核酸配列以外に、PCR過程を実行するために必要な化学物質を指す。これらの化学物質は、一般的に5つのクラスの成分からなる:(i)水性緩衝液、(ii)水溶性マグネシウム塩、(iii)少なくとも4つのデオキシリボヌクレオチド3リン酸(dNTP)、(iv)オリゴヌクレオチドプライマー(通常は各標的配列につき2つのプライマーであり、二本鎖の標的配列の2本の相補鎖の5'末端を規定する配列である)、および(v)ポリヌクレオチドポリメラーゼ、好ましくはDNAポリメラーゼ、より好ましくは熱安定性DNAポリメラーゼ、すなわち90℃〜100℃の温度でその活性の約半分以上を失うことなく、少なくとも合計10分耐えられるDNAポリメラーゼ。
【0059】
通常の4つのdNTPはチミジン3リン酸(dTTP)、デオキシアデノシン3リン酸(dATP)、デオキシシチジン3リン酸(dCTP)、およびデオキシグアノシン3リン酸(dGTP)である。これらの通常の3リン酸は、通常の4つの塩基のようにワトソン・クリックの塩基対を形成する塩基アナログを含むdNTP、例えばデオキシウリジン3リン酸(dUTP)で、補完または置換することができる。
【0060】
検出可能な標識を増幅反応液に入れることができる。適切な標識には、蛍光色素、例えばフルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ローダミン、テキサスレッド、フィコエリトリン、アロフィコシアニン、6-カルボキシフルオレセイン(6-FAM)、2',7'-ジメトキシ-4',5'-ジクロロ-6-カルボキシフルオレセイン(JOE)、6-カルボキシ-X-ローダミン(ROX)、6-カルボキシ-2',4',7',4,7-ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)、5-カルボキシフルオレセイン(5-FAM)またはN,N,N',N'-テトラメチル-6-カルボキシローダミン(TAMRA)、放射性標識、例えば32P、35S、3H;ならびに他の標識が含まれる。標識は、増幅されたDNAにビオチン、ハプテン、または結合パートナーに高親和性を有する同様な物質、例えばアビジン、特異的抗体等、を結合させ、結合パートナーに検出可能な標識を結合させる2段階システムでもよい。標識は片方または両方のプライマーに結合させることができる。または、増幅に使用されるヌクレオチドのプールを標識し、標識が増幅産物に取り込まれるようにする。
【0061】
したがって、1つの好ましい態様では、アレルギー関連遺伝子のmRNAがPCRによって逆転写および増幅され、それはオリゴヌクレオチドプローブを含めた様々な手段によって検出される。本発明のオリゴヌクレオチドプローブは、アレルギー関連遺伝子核酸内の隣接した核酸残基の領域に対して、好ましくはストリンジェントな条件下で、ハイブリダイズするために十分な相補性を有するDNA分子である。プローブの例には、少なくとも15核酸残基の長さで、本発明のDNAの任意の15またはそれ以上の隣接する残基から選択されるオリゴマーが含まれる。好ましくは本発明の実施において使用されるオリゴマープローブは、少なくとも約20核酸残基の長さを有する。本発明は150核酸残基またはそれ以上の長さのオリゴマープローブも考慮する。当業者は、特定の長さのプローブが本発明のポリヌクレオチドにハイブリダイズするための核酸ハイブリダイゼーション条件は、容易に決定できることを理解している。様々な長さのプローブの最適なハイブリダイゼーション条件を達成するための操作は、当技術分野で周知である。例えば、参照として本明細書に組み入れられるSambrook et al., Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Second Edition、Cold Spring Harbor(1989)を参照されたい。
【0062】
好ましくは、本発明のオリゴマープローブは、その検出が容易になるように標識される。検出可能な標識は、視覚的または装置を用いて検出できる任意の種または成分でよい。一般的に使用される検出可能な標識は、例えば、32P、14C、125I、3H、および35Sのような放射性標識である。蛍光剤・消光剤のペアの例は、フルオレセインを含むキサンチン染料、およびローダミン染料から選択できる。フェニル成分が置換され、結合部位として、またはオリゴヌクレオチドへの連結のための結合官能基として使用できるようになった、これらの化合物の多くの適当な形が広く市販されている。蛍光化合物の別のグループは、αまたはβの位置にアミノ基を有するナフチルアミンである。そのようなナフチルアミノ化合物には、1-ジメチルアミノナフチル-5-スルホネート、1-アニリノ-8-ナフタレンスルホネートおよび2-p-トイジニル-6-ナフタレンスルホネートが含まれる。他の染料には、3-フェニル-7-イソシアナトクマリン、9-イソチオシアナトアクリジンのようなアクリジン、アクリジンオレンジ;N-(p-(2-ベンゾキサゾリル)フェニル)マレイミド;ベンゾキサジアゾール、スチルベン、ピレン等が含まれる。最も好ましくは、蛍光化合物は、VIC、カルボキシフルオレセイン(FAM)、Lightcycler(登録商標)640およびCy5からなる群より選択される。
【0063】
ビオチン標識ヌクレオチドは、ニックトランスレーション、化学的および酵素的手段等のような技術によって、DNAまたはRNAに取り込むことができる。ビオチン化プローブは、アビジン/ストレプトアビジン、蛍光標識剤、酵素、金コロイド結合体等のような表示手段を用いて、ハイブリダイゼーション後に検出される。核酸は、他の蛍光化合物、免疫検出可能な蛍光誘導体、ビオチンアナログ等でも標識できる。核酸はタンパク質への連結を用いて標識することもできる。放射性または蛍光のヒストン一本鎖結合タンパク質に架橋された核酸も使用できる。当業者は、本発明の実施に使用できるオリゴマープローブを検出するために他の適切な方法があり、他の適切な検出可能標識があることを認識するだろう。さらに、化学合成の間に、蛍光残基をオリゴヌクレオチドに取り込ませることもできる。
【0064】
2つのDNA配列は、少なくとも約85%、好ましくは少なくとも約90%、および最も好ましくは少なくとも約95%のヌクレオチドが、DNA配列の規定された長さにおいて一致する場合に、「実質的に類似している」という。実質的に類似した配列は、例えば、特定の系で規定されたストリンジェントな条件下で実施するサザンハイブリダイゼーションによって同定できる。適当なハイブリダイゼーション条件を規定することは、当技術分野の範囲内である。例えば、Maniatis et al., DNA Cloning、vols. I and II. Nucleic Acid Hybridisationを参照されたい。簡単に述べると、核酸分子のハイブリダイゼーションまたはアニーリングの「ストリンジェントな条件」とは、(1)洗浄のために低イオン強度および高温を使用する、例えば、50℃で0.015M NaCl/0.0015Mクエン酸ナトリウム/0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、または(2)ハイブリダイゼーションの間にホルムアミドのような変性剤を使用する、例えば、42℃で、50%(vol/vol)ホルムアミド、0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%Ficoll/0.1%ポリビニルピロリドン/50mM リン酸ナトリウム緩衝液、pH 6.5、750 mM NaCl、75 mM クエン酸ナトリウムである。
【0065】
別の例では、42℃で50%ホルムアミド、5×SSC(0.75M NaCl、0.075M クエン酸ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH 6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5×デンハルト溶液、音波処理したサケ精子DNA(50μg/mL)、0.1% SDS、および10%硫酸デキストランを使用し、42℃で0.2×SSCおよび0.1% SDS中で洗浄する。
【0066】
特に好ましい態様では、本発明は、参照としてその全体が本明細書に組み入れられる米国特許(第6,140,054号;6,174,670号)に開示されるFRETプローブの利用のような、閉鎖試験管または均一アッセイ系を利用するために、PCRおよびハイブリダイゼーションプローブ統合システムを利用する。最も簡単な構成の1つでは、FRETまたは「蛍光共鳴エネルギー移動」の手法は、増幅する核酸の同じ鎖の隣接する部位に結合する2つのオリゴヌクレオチドを利用する。1つのオリゴヌクレオチドは、第1の波長で光を吸収し、それに応答して光を発するドナー蛍光体で標識され、第2のオリゴヌクレオチドは、第1のドナーの発する光に応答して蛍光を発する能力がある(しかし、第1のドナーを励起する光源では実質的に蛍光発光せず、その発光が第1の蛍光体の発光から区別できる)アクセプター蛍光体で標識される。この構成では、第2すなわちアクセプター蛍光体は、例えばPCRのアニーリング段階のように、2つのオリゴヌクレオチドが増幅する核酸の隣接部位にハイブリダイズした時に近接して存在し蛍光発生複合体を形成するような、第1すなわちドナー蛍光体に近接して存在する場合に、蛍光強度が大幅に上昇する。増幅される核酸が蓄積するにつれ、アクセプタープローブからの蛍光強度が上昇し、これを測定することができる。したがって、本方法では産物が形成される間に、その量を検出することができる。別の単純な態様では、およびPCRに基づくアッセイにおけるFRETプローブの利用に適用するように、標識オリゴヌクレオチドの1つはPCRに使用されるPCRプライマーでもある場合がある。全体が参照として包含されるNeoh et al(J Clin Path 1999;52:766-769)、von Ahsen et al(Clin Chem 2000;46:156-161)に記述されるように、この構成では、標識PCRプライマーは第2の標識オリゴヌクレオチドがハイブリダイズするDNA鎖の一部である。
【0067】
当業者は、例えば、まずPCR増幅を行い、その後、増幅された核酸の量を測定するためのそのような条件下でハイブリダイゼーションプローブを添加するように、増幅およびハイブリダイゼーションプローブを用いた増幅の検出は、2つの別々の段階で実施できることを理解するだろう。しかし、本発明の好ましい態様では、閉鎖試験管または均一アッセイ系を最大限に利用するために、PCRおよびハイブリダイゼーションプローブ統合システムを利用し、これをRoche Lightcycler(商標)または他の同様に指定されたまたは適切に構成された装置を用いて行なう。
【0068】
そのようなシステムは、本明細書に説明される検出法に適合する。当業者は、欠失および挿入に加えて点変異を検出するために適切に設計されていれば、そのようなプローブを用いて対立遺伝子の区別ができることを理解するだろう。あるいは、または加えて、当業者に周知の方法によって、対立遺伝子の区別のための非標識PCRプライマーを設計することができる(Ausubel 1989-1999)。
【0069】
均一および/または閉鎖試験管における増幅の検出は、例えば、PCR反応においてTaqMan(商標)ハイブリダイゼーションプローブの利用、および十分な増幅が行われた後の標的核酸に特異的な蛍光の測定のような、当技術分野の様々な手段を用いて行われ得ることも、当業者に理解されるだろう。
【0070】
しかし、当業者は、TaqMan手法に基づく方法(米国特許第5,538,848号および5,691,146号)、蛍光偏向測定(例えばGibson et al., 1997, Clin Chem., 43:1336-1341)、およびInvader測定(例えばAgarwal et al., Diagn Mol Pathol 2000 Sep;9(3):158-164;Ryan D et al、Mol Diagn 1999 Jun;4(2):135-144)のような、他の同様な定量的「リアルタイム」および均一核酸増幅/検出システムが存在することを認識しているだろう。そのようなシステムも、記載される本発明を使用するために適合でき、核酸増幅のリアルタイムのモニタリングが可能になる。
【0071】
本発明の1つの態様において、最初の手順では、オリゴヌクレオチドマトリックスまたはマイクロチップの製造を行なう。マイクロチップは一連の固定された合成オリゴマーを含んでおり、該オリゴマーは転写因子DNAの所望の部分に相補的な配列を含むように合成されている。その後、オリゴマーに、クローニングしたまたはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅した転写因子核酸を、以下に示すようなストリンジェントな条件下でハイブリダイズさせる。高度にストリンジェントな条件では、ハイブリダイゼーションの際に、マイクロチップに埋め込まれた配列と、標的配列の間で完璧またはほぼ完璧な一致のみが起こることを保証する。
【0072】
各最初のハイブリダイゼーション後、チップを洗浄して大部分のミスマッチした断片を除去する。その後、反応液を変性させ、結合したDNA断片を取り出し、その後これらを蛍光マーカーで標識する。
【0073】
次に、異なる固定オリゴヌクレオチドセットを含むシークエンスマイクロチップ上で、標識DNA断片による第2回ラウンドのハイブリダイゼーションを行なう。最初にこれらの断片を、より短い長さに切断してもよい。異なる固定オリゴヌクレオチドセットは、全体の配列決定、部分的配列決定、配列比較、または配列同定のために必要なオリゴヌクレオチドを含む可能性がある。最終的に、この第2のハイブリダイゼーション段階の蛍光を、CCDカメラに連結したエピ蛍光顕微鏡により検出できる。(参照として本明細書に組み入れられる米国特許第5,851,772号を参照されたい。)
【0074】
または、遺伝子発現は、遺伝子産物、サイトカイン転写因子の発現を直接定量するために、組織切片の免疫組織化学染色のような免疫学的方法、および細胞培養または体液のアッセイによっても測定できる。免疫組織化学染色の技術では、通常は乾燥および固定によって細胞試料を調製し、遺伝子産物に特異的な標識抗体と反応させるが、標識は通常酵素標識、蛍光標識、発光標識等のように目視で検出できる。本発明に使用するのに適した特に感度の高い染色技術は、Hsu et al., 1980, Am. J. Clin. Path.、75:734-738に記述されている。免疫組織化学染色および/または試料液の測定に有用な抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルのいずれでもよい。簡便には、抗体は、cig5、IFIT4、LAMP3、DACT1、IL17RB、KRT1、LNPEP、MAL、NCOA3、OAZ、PECAM1、PLXDC1、RASGRP3、SLC39A8、XBP1、NDFIP2、RAB27B、GNG8、GJB2もしくはCISHのような、本明細書でアレルギー関連であることが示された遺伝子、またはそれぞれプローブ243610_atによりヒト染色体9q21.13の遺伝子座138255に、1556097_atによりヒト染色体15q25.2に、および242743_atによりヒト染色体16p12.1に同定された配列からなる群より選択される配列を含む遺伝子の、既知のDNA配列に基づいた合成ペプチドに対して調製できる。
【0075】
例えば、アレルギー関連遺伝子ペプチドは免疫原として用いて、抗サイトカイン転写因子抗体を作製できる。そのような抗体は、アレルギー関連遺伝子の産物に特異的に結合するが、ラジオイムノアッセイ、酵素結合免疫測定法、または競合型受容体結合測定または放射受容体測定のような測定、ならびにアフィニティ精製技術における標準として有用である。
【0076】
本発明は、以下の非制限的実施例にのみ言及することによりさらに詳述する。しかし、以下の実施例は説明のためのみであり、上述の発明の一般性を制限するものと理解してはならない。特に、本発明はHDMに曝露されたPMBCから得られるcig5、IFIT4、LAMP3、DACT1、IL17RB、KRT1、LNPEP、MAL、NCOA3、OAZ、PECAM1、PLXDC1、RASGRP3、SLC39A8、XBP1、NDFIP2、RAB27B、GNG8、GJB2およびCISHのmRNAの検出に関して詳述され、それぞれプローブ243610_atによりヒト染色体9q21.13の遺伝子座138255に、1556097_atによりヒト染色体15q25.2に、および242743_atによりヒト染色体16p12.1に同定された配列からなる群より選択される配列を含むが、本明細書の所見はこれらの特定のアレルゲンまたは方法に限定されないことは明確に理解されるだろう。
【0077】
実施例1
アレルギー性および非アレルギー性被験体における、アレルゲンに応答したmRNAの特異的発現を決定するためのマイクロアレイの利用
イエダニ(HDM)に応答した血漿IgE陽性に基づいて選択された10人のアレルギー性個体から血液試料を、血清中のHDM特異的IgEの存在を検定して全て陰性であった10人の非アレルギー性対照被験体からの試料と共に、入手した。10人のアレルギー性被験体は、すべてアレルゲンによる皮膚プリック試験で5〜14 mmのサイズの膨疹を示したが、非アレルギー性被験体はすべて陰性反応を示した。HDMに対するIgEの存在は、RAST(CAP)(Pharmacia、Australia)を用いた放射性アレルギー吸着イムノアッセイキャプチャー試験系によって検出され、この試験のアレルギー性志願者はRAST(CAP)スコアが≧2だった。
【0078】
新しく単離した末梢血単核細胞(PBMC)は1×106細胞/mlで再懸濁し、細胞懸濁液0.5 mlを、30μg/mlのHDM(Dermatophagoides pteronyssinus、CSL Limited、Parkville、オーストラリア)総抽出物を添加してまたは添加しないで、4×10-5 2-メルカプトエタノールを添加した無血清培地AIM-V4(Life Technologies、Mulgrave、オーストラリア)中で、丸底プレートにおいて、5%CO2、37℃で、16、24、または48時間培養した。
【0079】
各時点で、等しいサイズの細胞の一定分量を遠心し、細胞沈殿物を直ちに総RNA抽出に用いた。または、総RNA抽出の前に、CD8+ T細胞の正の選択後、CD4+ T細胞の正の選択をするためにDynabeads(商標)を用いた。RNAの抽出は、標準的な技術で行なった。総RNAはTRIZOL(Invitrogen)を用いた後、RNAeasyミニキット(QUIAGEN)を用いて抽出した。またはTotally RNA抽出キット(Ambion、Austin、Texas、米国)を用いることができる。必要ならば、MessageMaker(商標)キット(Invitrogen、オランダ)を用いて総RNAの2 mgからメッセンジャーRNAを精製することもできる。
【0080】
各グループ(アレルギー性および非アレルギー性)の10人の個体から抽出されたRNAをプールして、標準的なAffymetrix(商標)プロトコールを用いて、標識し、Affymetrix(商標)Genechip(登録商標)U133AまたはU133plus2アレイにハイブリダイズさせた。アレイおよびプロトコールの完全な詳細は、Affymetrixのウェブサイト(http://www.affymetrix.com/index.affx)で得られる。U133Aアレイは39,000以上のヒトゲノムに対応するプローブセットを提供するが、U133plus2アレイはU133Aアレイの全てを含む、47,000以上の転写物に対応するプローブセットを提供する。対応する核酸配列はすべて、一般に公開されたデータベースで得られる。プール中の個々のRNAのサンプルは、後のTaqman(商標)PCR検証試験のために別に保管した(以下の実施例6を参照されたい)。
【0081】
マイクロアレイ実験のデータおよび以下の実施例2〜3のデータは、log2目盛りで何倍という表示(刺激した培養 対 未刺激の培養)で図1に示されている。データは統計パッケージR(Irizarry R.A. et al. 2003、Biostatistics 4(2):249-64)を用いてrmaアルゴリズムにより解析した。遺伝子は、何倍という変化量が、各々の実験に示されているカットオフ値(バックグラウンドノイズ)よりも大きい場合に、刺激された培養と未刺激の培養において発現が異なると考えられた。カットオフ値は、実験毎にノイズの標準偏差を元にして決定された。その後、アレルギー性および非アレルギー性個体の間で一貫して異なるレベルで発現される遺伝子、すなわち、アレルギー性個体と非アレルギー性個体の間で、何倍という表現で大きな値の変化がある遺伝子が同定された。合計で23の遺伝子が異なる発現を示した;そのうち16はU133aアレイ、さらに7つがU133plus2アレイを用いて同定された。選択された遺伝子の例示的な発現パターンは図2から40に示されている。これらの図のデータは、均等目盛上で絶対発現量として示されている。
【0082】
図2から40にまとめられているマイクロアレイデータは、cig5、IFIT4およびLAMP3が非アレルギー性個体でアップレギュレートされている、すなわち、これらの遺伝子は、少なくとも16および24時間の培養では、アレルギー性個体よりも、非アレルギー性個体においてより高い程度まで、非刺激培養と比較してHDMで刺激した培養において、アップレギュレートされていることを示す。残りの20の遺伝子は、アレルギー性個体でアップレギュレートされており、実際にKRT1、PECAM1およびPLXDC1は非アレルギー性個体においてはダウンレギュレートされている。
【0083】
これらのデータは次のように解釈される:遺伝子が「保護的」すなわち遺伝子の発現がアレルギーの欠如と関連しているならば、アレルギー性個体は非アレルギー性個体よりも低いレベルの発現を示すはずである。例えば、刺激の48時間後のPBMC速度実験では、cig5は、アレルギー性個体では1.8306という数字で、非アレルギー性個体の2.2612という対応する数字よりも低い。同様に、IFIT4はアレルギー性個体で1.2859という数字を示すが、これは非アレルギー性個体の1.6380という対応する値よりも低い。したがってこれらの遺伝子の発現は、「保護的」である。
【0084】
アレルギー性疾患を示す遺伝子は、アレルギー性個体での発現レベルが非アレルギー性個体よりも高い遺伝子である。例えば、刺激の48時間後のPBMC速度実験では、DACT1は、アレルギー性個体では1.2822という数字で、非アレルギー性個体の0.3281という対応する数字よりも高い。同様に、IL17RBはアレルギー性個体で1.2878という数字を示すが、これは非アレルギー性個体の0.5429という対応する値よりも高い。したがってこれらの遺伝子の発現は、「アレルギーの素因を予測する」と考えられる。
【0085】
実施例2
アレルギー性および非アレルギー性被験体のCD69+細胞から単離されたmRNAの特異的発現を決定するためのマイクロアレイの利用
イエダニ(HDM)に応答した血漿IgE陽性に基づいて選択された4人のアレルギー性個体、および血清中のHDM特異的IgEの存在を検定して全て陰性であった4人の非アレルギー性対照被験体から、血液試料を入手した。HDMに対するIgEの存在は、RAST(CAP)(Pharmacia、Australia)によって検出され、この試験のアレルギー性志願者はRAST(CAP)スコアが≧2だった。
【0086】
全ての個体から得られたPBMCは、実施例1に記述されるようにHDM(10μg/ml)の存在下または非存在下で14時間培養した。14時間の刺激後、製造元の説明書に従ってCD14およびCD19でコートされたDynabeads(商標)を用いて、高レベルでCD69を発現する単球およびB細胞を除去した。その後、抗CD69モノクローナル抗体をコートしたDynabeads(商標)を用いて、残りの細胞集団から活性化したCD69+ T細胞の正の選択をした。RNAを抽出し、標識し、実施例1に記述されるようにして、標準的なAffymetrix(商標)プロトコールを用いて、Affymetrix(商標)U133aアレイにハイブリダイズさせた。
【0087】
これらの実験の結果は、図1カラム1に示されており、データの解析は実施例1に記述されるようにして行われた。やはり「保護的」であると考えられる遺伝子では、アレルギー性個体の発現レベルは非アレルギー性個体と比較して低く、アレルギーを発症する素因を予測すると考えられる遺伝子では、アレルギー性個体のほうが非アレルギー性個体よりも高いレベルで発現されていることが分かる。数字がゼロに近いほど、バックグラウンドの干渉レベルが大きく、試験の正確性が低下することは指摘に値する。
【0088】
実施例3
アレルギー性被験体および非アレルギー性被験体の、新しく分裂した細胞から単離されたmRNAの特異的発現を決定するためのマイクロアレイの使用
4人のアレルギー性および4人の非アレルギー性個体のPBMCを、標準的な手法によって、5μmカルボキシフルオレセインジアセテート、スクシンイミジルエステル(CFSE)により標識し、その後実施例1に記述されるようにHDM(10μg/ml)で6日間刺激した。CFSE蛍光染色は、細胞分裂をモニターするために使用された。新しい細胞分裂事象の子孫である細胞は、染色の程度が低く(CFSElow);非分裂細胞は強く染色される。生きた子孫細胞(CFSElow)をフローサイトメトリーでソートし、一晩静置し、その後PMAおよびイオノマイシンで6時間刺激した。RNAを抽出し、標識し、上記のように、標準的なAffymetrix(商標)プロトコールを用いて、Affymetrix(商標)U133aアレイにハイブリダイズさせた。
【0089】
これらの実験の結果は、図1カラム2に示されており、データの解析は実施例1に記述されるようにして行われた。これらの実験では、非アレルギー性被験体のHDM特異的細胞の増殖が非常に悪かったため、アレルギー性被験体のみから解析に十分なRNAが得られた。しかし、この実験では、最初に「細胞株」を作製して、その後、当技術分野で公知の物質、例えばPMA/イオノマイシンを用いて再刺激して「最適な」刺激を提供することにより、特定のT細胞を濃縮することが可能であることを示す。これは総PBMCを用いた未分画T細胞の場合の低濃度の特異的アレルゲンによるわずかな刺激と対照をなす。
【0090】
実施例4
実施例1の結果の検証
IL-4はすべてのTh2細胞に必須の増殖因子である。したがって、各PBMC試料の「Th2状態」を確認するため、実施例1に記述された速度実験のためのプールを作製するために使用した個々の試料の、48時間細胞の沈殿物から抽出したRNAにおける、指標遺伝子IL-4の発現レベルを測定するために、ABI Prism 7900HT Sequence Detection Systemを用いて、リアルタイムの定量的PCRを実行した。
【0091】
QuantiTect SYBRGreen PCR Master Mix(QIAGEN)を用いて、2.5 mM MgCl2(最終濃度)を含む標準的なPCRプレミックスが調製された。SYBRGreenは全ての二本鎖DNAに結合するので、プローブは不要である。プライマーは最終濃度0.3μMで使用された。HotStar Taqポリメラーゼ活性化のために10分ではなく15分が使用された以外は、標準的な条件が用いられた。さらに、単一産物の増幅を確認するために、解離段階を行い、融解曲線分析が行なわれた。増幅産物は、関心対象の標的の特異的な増幅を確認するために、配列決定が行なわれたか、行われる予定である。PCRに使用されたプライマーは:



である。
【0092】
データはハウスキーピング遺伝子EEF1A1に対して標準化し、結果は図41から45に示されている。図41から、最初に培養実験に選択されたアレルギー性と推定される個体由来の試料のうちの7つは活発なIL-4遺伝子転写物を示したが、矢印で示す3つの試料では、反応が弱いまたは検出されないことが理解できる。これは、皮膚プリック試験が陽性であるにも関わらず、試料採取時にこれらの個体において循環血中に存在したHDM特異的T細胞は、インビトロの免疫応答の検出には低過ぎることを示す。これらの3人の被験体は、皮膚プリック試験で最も低い応答を示し(5〜6 mm)、またDACT1およびPLXDC1の発現も低レベルだったが、LAMP3の発現は高レベルだった。
【0093】
検証実験のために、PMBCのマイクロアレイ解析、または16および48時間のCD4速度実験に使用されたプールを作製するために利用された個々の試料のRNAを、cDNAに変換し、その後、定量的PCRを行なって一連の代表的遺伝子を検出した。結果は図42から63にまとめられている。いくつかの場合では、48時間のインキュベーション後にのみ有意な変化が見られた。
【0094】
以下のプライマーセットを用いて、残りの遺伝子に関しても同様に検証が行われた。

【0095】
本発明は、明確さと理解のためにいくらか詳細に説明されたが、本明細書に開示される発明概念の範囲を超えることなく、本明細書に記述される態様および方法に対して様々な改変および変更が可能であることが、当業者には明らかだろう。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】HGU133Aアレイ上で行なったCD69、CFSE、CD4およびCD8速度実験、ならびにHGU133plus2アレイ上で行なったPMBC速度実験の結果を示す。t16、t24およびt48は16、24および48時間の培養を表す。
【図2】HDMにアレルギー性の個体および非アレルギーの個体から得られたCD4細胞中のcig5遺伝子の発現レベルの比較を示す。
【図3】HDMにアレルギー性の個体および非アレルギーの個体から得られたCD4細胞中のIFIT4遺伝子の発現レベルの比較を示す。
【図4】HDMにアレルギー性の個体および非アレルギーの個体から得られたCD4細胞中のLAMP3遺伝子の発現レベルの比較を示す。
【図5】HDMにアレルギー性の個体および非アレルギーの個体から得られたCD4細胞中のDACT1遺伝子の発現レベルの比較を示す。
【図6】HDMにアレルギー性の個体および非アレルギーの個体から得られたCD4細胞中のIL17RB遺伝子の発現レベルの比較を示す。
【図7】HDMにアレルギー性の個体および非アレルギーの個体から得られたCD4細胞中のKRT1遺伝子の発現レベルの比較を示す。
【図8】HDMにアレルギー性の個体および非アレルギーの個体から得られたCD4細胞中のLNPEP遺伝子の発現レベルの比較を示す。
【図9】HDMにアレルギー性の個体および非アレルギーの個体から得られたCD4細胞中のMAL遺伝子の発現レベルの比較を示す。
【図10】HDMにアレルギー性の個体および非アレルギーの個体から得られたCD4細胞中のNCOA3遺伝子の発現レベルの比較を示す。
【図11】HDMにアレルギー性の個体および非アレルギーの個体から得られたCD4細胞中のOAZ遺伝子の発現レベルの比較を示す。
【図12】HDMにアレルギー性の個体および非アレルギーの個体から得られたCD4細胞中のPECAM1遺伝子の発現レベルの比較を示す。
【図13】HDMにアレルギー性の個体および非アレルギーの個体から得られたCD4細胞中のPLXDC1遺伝子の発現レベルの比較を示す。
【図14】HDMにアレルギー性の個体および非アレルギーの個体から得られたCD4細胞中のRASGRP3遺伝子の発現レベルの比較を示す。
【図15】HDMにアレルギー性の個体および非アレルギーの個体から得られたCD4細胞中のSLC39A8遺伝子の発現レベルの比較を示す。
【図16】HDMにアレルギー性の個体および非アレルギーの個体から得られたCD4細胞中のXBP1遺伝子の発現レベルの比較を示す。
【図17】HDMにアレルギー性の個体および非アレルギーの個体から得られたCD4細胞中のCISH遺伝子の発現レベルの比較を示す。
【図18】HDMにアレルギー性の個体および非アレルギーの個体から得られたPBMC中のcig5遺伝子の発現レベルの比較を示す。
【図19】HDMにアレルギー性の個体および非アレルギーの個体から得られたPBMC中のIFIT4遺伝子の発現レベルの比較を示す。
【図20】HDMにアレルギー性の個体および非アレルギーの個体から得られたPBMC中のLAMP3遺伝子の発現レベルの比較を示す。
【図21】HDMにアレルギー性の個体および非アレルギーの個体から得られたPBMC中のDACT1遺伝子の発現レベルの比較を示す。
【図22】HDMにアレルギー性の個体および非アレルギーの個体から得られたPBMC中のIL17RB遺伝子の発現レベルの比較を示す。
【図23】HDMにアレルギー性の個体および非アレルギーの個体から得られたPBMC中のKRT1遺伝子の発現レベルの比較を示す。
【図24】HDMにアレルギー性の個体および非アレルギーの個体から得られたPBMC中のLNPEP遺伝子の発現レベルの比較を示す。
【図25】HDMにアレルギー性の個体および非アレルギーの個体から得られたPBMC中のMAL遺伝子の発現レベルの比較を示す。
【図26】HDMにアレルギー性の個体および非アレルギーの個体から得られたPBMC中のNCOA3遺伝子の発現レベルの比較を示す。
【図27】HDMにアレルギー性の個体および非アレルギーの個体から得られたPBMC中のOAZ遺伝子の発現レベルの比較を示す。
【図28】HDMにアレルギー性の個体および非アレルギーの個体から得られたPBMC中のPECAM1遺伝子の発現レベルの比較を示す。
【図29】HDMにアレルギー性の個体および非アレルギーの個体から得られたPBMC中のPLXDC1遺伝子の発現レベルの比較を示す。
【図30】HDMにアレルギー性の個体および非アレルギーの個体から得られたPBMC中のRASGRP3遺伝子の発現レベルの比較を示す。
【図31】HDMにアレルギー性の個体および非アレルギーの個体から得られたPBMC中のSLC39A8遺伝子の発現レベルの比較を示す。
【図32】HDMにアレルギー性の個体および非アレルギーの個体から得られたPBMC中のXBP1遺伝子の発現レベルの比較を示す。
【図33】HDMにアレルギー性の個体および非アレルギーの個体から得られたPBMC中のNDFIP2遺伝子の発現レベルの比較を示す。
【図34】HDMにアレルギー性の個体および非アレルギーの個体から得られたPBMC中のRAB27B遺伝子の発現レベルの比較を示す。
【図35】HDMにアレルギー性の個体および非アレルギーの個体から得られたPBMC中の242743_AT遺伝子の発現レベルの比較を示す。
【図36】HDMにアレルギー性の個体および非アレルギーの個体から得られたPBMC中のGNG8遺伝子の発現レベルの比較を示す。
【図37】HDMにアレルギー性の個体および非アレルギーの個体から得られたPBMC中のGJB2遺伝子の発現レベルの比較を示す。
【図38】HDMにアレルギー性の個体および非アレルギーの個体から得られたPBMC中の1556097遺伝子の発現レベルの比較を示す。
【図39】HDMにアレルギー性の個体および非アレルギーの個体から得られたPBMC中の243610_AT遺伝子の発現レベルの比較を示す。
【図40】HDMにアレルギー性の個体および非アレルギーの個体から得られたPBMC中のCISH遺伝子の発現レベルの比較を示す。
【図41】HDMにアレルギー性の個体および非アレルギーの個体から得られたCD4+細胞の刺激16時間後のIL4 mRNAの、定量的リアルタイムPCRで評価した発現レベルの比較を示す。
【図42】HDMにアレルギー性の個体および非アレルギーの個体から得られたCD4+細胞の刺激16時間後のDACT1 mRNAの、定量的リアルタイムPCRで評価した発現レベルの比較を示す。
【図43】HDMにアレルギー性の個体および非アレルギーの個体から得られたCD4+細胞の刺激16時間後のLAMP3 mRNAの、定量的リアルタイムPCRで評価した発現レベルの比較を示す。
【図44】HDMにアレルギー性の個体および非アレルギーの個体から得られたCD4+細胞の刺激16時間後のPLXDC1 mRNAの、定量的リアルタイムPCRで評価した発現レベルの比較を示す。
【図45】HDMにアレルギー性の個体および非アレルギーの個体から得られたCD4+細胞の刺激48時間後のPLXDC1 mRNAの、定量的リアルタイムPCRで評価した発現レベルの比較を示す。
【図46】HDMにアレルギー性の個体および非アレルギーの個体から得られたCD4+細胞の刺激16時間後のcig5 mRNAの、定量的リアルタイムPCRで評価した発現レベルの比較を示す。
【図47】HDMにアレルギー性の個体および非アレルギーの個体から得られたCD4+細胞の刺激16時間後のIFIT4 mRNAの、定量的リアルタイムPCRで評価した発現レベルの比較を示す。
【図48】HDMにアレルギー性の個体および非アレルギーの個体から得られたCD4+細胞の刺激16時間後のMAL mRNAの、定量的リアルタイムPCRで評価した発現レベルの比較を示す。
【図49】HDMにアレルギー性の個体および非アレルギーの個体から得られたCD4+細胞の刺激16時間後のPECAM1 mRNAの、定量的リアルタイムPCRで評価した発現レベルの比較を示す。
【図50】HDMにアレルギー性の個体および非アレルギーの個体から得られたCD4+細胞の刺激16時間後のSLC39A8 mRNAの、定量的リアルタイムPCRで評価した発現レベルの比較を示す。
【図51】HDMにアレルギー性の個体および非アレルギーの個体から得られたCD4+細胞の刺激16時間後のXBP1 mRNAの、定量的リアルタイムPCRで評価した発現レベルの比較を示す。
【図52】HDMにアレルギー性の個体および非アレルギーの個体から得られたCD4+細胞の刺激16時間後のNDFIP2 mRNAの、定量的リアルタイムPCRで評価した発現レベルの比較を示す。
【図53】HDMにアレルギー性の個体および非アレルギーの個体から得られたCD4+細胞の刺激16時間後の243610_at CISH mRNAの、定量的リアルタイムPCRで評価した発現レベルの比較を示す。
【図54】HDMにアレルギー性の個体および非アレルギーの個体から得られたCD4+細胞の刺激16時間後のCISH mRNAの、定量的リアルタイムPCRで評価した発現レベルの比較を示す。
【図55】HDMにアレルギー性の個体および非アレルギーの個体から得られたCD4+細胞の刺激48時間後のNCOA3 mRNAの、定量的リアルタイムPCRで評価した発現レベルの比較を示す。
【図56】HDMにアレルギー性の個体および非アレルギーの個体から得られたPBMC細胞の刺激16時間後のNDFIP2 mRNAの、定量的リアルタイムPCRで評価した発現レベルの比較を示す。
【図57】HDMにアレルギー性の個体および非アレルギーの個体から得られたPBMC細胞の刺激16時間後のRAB27B mRNAの、定量的リアルタイムPCRで評価した発現レベルの比較を示す。
【図58】HDMにアレルギー性の個体および非アレルギーの個体から得られたPBMC細胞の刺激16時間後の243610_at mRNAの、定量的リアルタイムPCRで評価した発現レベルの比較を示す。
【図59】HDMにアレルギー性の個体および非アレルギーの個体から得られたPBMC細胞の刺激16時間後のGNG8 mRNAの、定量的リアルタイムPCRで評価した発現レベルの比較を示す。
【図60】HDMにアレルギー性の個体および非アレルギーの個体から得られたPBMC細胞の刺激16時間後のGJB2 mRNAの、定量的リアルタイムPCRで評価した発現レベルの比較を示す。
【図61】HDMにアレルギー性の個体および非アレルギーの個体から得られたPBMC細胞の刺激16時間後の1556097_at mRNAの、定量的リアルタイムPCRで評価した発現レベルの比較を示す。
【図62】HDMにアレルギー性の個体および非アレルギーの個体から得られたCD4+細胞の刺激16時間後の242743_at mRNAの、定量的リアルタイムPCRで評価した発現レベルの比較を示す。
【図63】HDMにアレルギー性の個体および非アレルギーの個体から得られたPBMC細胞の刺激16時間後の242743_at mRNAの、定量的リアルタイムPCRで評価した発現レベルの比較を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物由来の生体試料を分析し、1つまたは複数のアレルギー関連遺伝子の活性化レベルを決定する段階であって、活性化のレベルは動物においてアレルギー性疾患を診断する、またはアレルギー性疾患の発症の相対的リスクを予測する段階を含む、動物におけるアレルギー性疾患の発症の診断および/または予測のための方法。
【請求項2】
(a)動物由来の1つまたは複数の生体試料を分析して、1つまたは複数のアレルギー関連遺伝子の活性のレベルを決定する段階、および
(b)活性化のレベルが治療中に変化するかどうかを決定する段階、
を含み、治療中の活性化レベルの変化が治療の進行を示す、治療を受ける動物においてアレルギー性疾患の治療の進行をモニターする方法。
【請求項3】
動物由来の生体試料を分析して1つまたは複数のアレルギー関連遺伝子の活性化レベルを決定する段階であって、活性化レベルがその治療に対する動物の潜在的反応性を予測する段階を含む、アレルギー性疾患に罹患する個々の動物の、アレルギー性疾患の治療に対する潜在的反応性を決定する方法。
【請求項4】
動物から生体試料を得る段階、および試料中の1つまたは複数のアレルギー関連遺伝子由来のmRNA転写物のレベルを決定する段階であって、mRNAの存在が重症および/または持続性アレルギーへの進行リスクの上昇と関連している段階を含む、アレルギー性疾患に罹患する動物において重症および/または持続性のアレルギーへの進行リスクを予測する方法。
【請求項5】
動物から生体試料を得る段階、および試料中のアレルギー関連遺伝子由来の1つまたは複数のmRNA転写物のレベルを決定する段階であって、mRNAの存在が特定のアレルギー表現型に関連するまたはそれに寄与する段階を含む、動物におけるアレルギー状態の免疫学的表現型を決定する方法。
【請求項6】
動物から生体試料を得る段階、および試料中のアレルギー関連遺伝子の活性化レベルを決定する段階であって、活性化レベルが動物が免疫療法に反応する能力を予測する段階を含む、特定の免疫療法に反応する能力のある動物を同定する方法。
【請求項7】
(a)動物由来の1つまたは複数の生体試料を分析して、遺伝子によってコードされる1つまたは複数の遺伝子の活性化レベルを決定する段階;
(b)動物を免疫療法に供する段階;
(c)動物由来の1つまたは複数のさらなる生体試料を分析して、免疫療法中に活性化レベルが変化するかどうかを決定する段階;
を含み、免疫療法中の活性化レベルの変化が、動物が免疫療法に反応することを示す、免疫療法に対するアレルギー性動物の反応をモニターする方法。
【請求項8】
(a)アレルギー性の動物由来の1つまたは複数の生体試料を分析して、1つまたは複数のアレルギー関連遺伝子の活性化レベルを決定する段階;
(b)動物を治療に供する段階;および
(c)動物由来の1つまたは複数のさらなる生体試料を分析して、治療中に活性化レベルが変化するかどうかを決定する段階;
を含み、処置中の活性化レベルの変化が、動物が処置に反応することを示す、アレルギー性疾患の重症度を低下させる処置の有効性をモニターする方法。
【請求項9】
遺伝子が、cig5、IFIT4、LAMP3、DACT1、IL17RB、KRT1、LNPEP、MAL、NCOA3、OAZ、PECAM1、PLXDC1、RASGRP3、SLC39A8、XBP1、NDFIP2、RAB27B、GNG8、GJB2およびCISHからなる群より選択される1つもしくは複数の遺伝子、もしくはそれぞれ、プローブ243610_atによりヒト染色体9q21.13の遺伝子座138255に、1556097_atによりヒト染色体15q25.2に、および242743_atによりヒト染色体16p12.1に同定された配列からなる群より選択される配列を含む遺伝子、またはこれらの遺伝子の2つまたはそれ以上の組み合わせである、請求項1〜8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
アレルギー関連遺伝子が、アトピー性個体由来のアレルゲン抗原投与PBMCにおいてアップレギュレートされているが、そのアレルゲンにアレルギー性ではない個体由来のPBMCにおいてはアップレギュレートされるとしてもわずかである、請求項1〜8のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
遺伝子が、DACT1、IL17RB、KRT1、LNPEP、MAL、NCOA3、OAZ、PECAM1、PLXDC1、RASGRP3、SLC39A8、XBP1、NDFIP2、RAB27B、GNG8、GJB2およびCISHからなる群より選択される、ならびにそれぞれ、プローブ243610_atによりヒト染色体9q21.13の遺伝子座138255に、1556097_atによりヒト染色体15q25.2に、および242743_atによりヒト染色体16p12.1に同定された配列からなる群より選択される配列を含む遺伝子のうちの1つまたは複数である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
遺伝子が、アトピー性個体においてアップレギュレートされており、かつ非アトピー性個体においてダウンレギュレートされている、請求項10記載の方法。
【請求項13】
遺伝子が、KRT1、PECAM1、PLXDC1、DACTまたはMALである、請求項12記載の方法。
【請求項14】
アレルギー関連遺伝子が、非アトピー性個体由来のアレルゲン抗原投与PBMCにおいてダウンレギュレートされているが、アトピー性個体由来のPBMCにおいてはダウンレギュレートされていない、請求項1〜8のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
遺伝子が、cig5、IFIT4およびLAMP3からなる群より選択される、請求項14記載の方法。
【請求項16】
遺伝子の活性化レベルを決定する段階が、mRNAの存在を検出することによって実行される、請求項1〜16のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
cig5、IFIT4、LAMP3、DACT1、IL17RB、KRT1、LNPEP、MAL、NCOA3、OAZ、PECAM1、PLXDC1、RASGRP3、SLC39A8、XBP1、NDFIP2、RAB27B、GNG8、GJB2およびCISHからなる群より選択される、またはそれぞれ、プローブ243610_atによりヒト染色体9q21.13の遺伝子座138255に、1556097_atによりヒト染色体15q25.2に、および242743_atによりヒト染色体16p12.1に同定された配列からなる群より選択される配列を含む、1つまたは複数の遺伝子の1領域に特異的なプライマーを用いて、mRNAが検出される、請求項16記載の方法。
【請求項18】
プライマーが以下のプライマー対のセットからなる群より選択される、請求項17記載の方法:


【請求項19】
mRNAによってコードされるタンパク質が検出される、請求項16記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【図61】
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【図62】
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【図63】
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【公表番号】特表2008−512100(P2008−512100A)
【公表日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−530540(P2007−530540)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【国際出願番号】PCT/AU2005/001326
【国際公開番号】WO2006/026808
【国際公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(507074122)テレソン インスティテュート フォー チャイルド ヘルス リサーチ (4)
【Fターム(参考)】