説明

アレルゲン低減剤およびそれを用いた加工製品

【課題】ダニや花粉などのアレルゲン低減機能を有し、着色を抑えることが可能なアレルゲン低減剤を提供する。
【解決手段】テルペノイド類の重合体または共重合体を有効成分とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレルゲン低減剤およびそれを用いた加工製品に関する。
【背景技術】
【0002】
我が国では3人に1人がアトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎などのアレルギー疾患を患っていると言われている。アレルギー疾患の原因としては、ダニ、花粉、カビ、ペットの毛などが挙げられる。特に室内から検出されるダニの70%以上を占めるチリダニのアレルゲン(以下「ダニアレルゲン」という)が問題となっている。このチリダニは、虫体、死骸、抜け殻、フンなどすべてがアレルゲンになると言われている。なかでもフン由来のアレルゲンはアレルゲン活性が高く、しかも非常に小さく舞い上がりやすく人体へ接触することが多いことから、最も問題とされている。
【0003】
アレルゲンは蛋白質であるので、熱や化学的処理(酸化剤、還元剤、強酸、強アルカリ)などで変性させることで、アレルゲン性を失活させることができる。しかしながら、家庭で安全に使用できる程度の熱や、酸化剤、還元剤、強酸、強アルカリなどでは容易にアレルゲンが変性されないという問題があった。
【0004】
そこで、近年、アレルゲンの分子表面を比較的温和な条件で化学的に変性する方法が提案されている。例えば、タンニン酸(特許文献1)、茶抽出物(特許文献2)、ヒドロキシ安息香酸系化合物またはその塩(特許文献3)などを用いて変性する方法が提案され、アレルゲン抑制効果が確認されている。また、線状高分子の側鎖に芳香族ヒドロキシ化合物を有する化合物を有効成分とするアレルゲン低減剤(特許文献4)も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61−44821号公報
【特許文献2】特開平6−279273号公報
【特許文献3】特開平11−292714号公報
【特許文献4】特開2003−81727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1〜3に記載の方法で用いられる化合物のほとんどはポリフェノールの一種であることから褐色に着色しており、衣服や寝具、建材などの表面に固定化させると意匠性を損ねるという問題があった。また、水溶性であるため固定化させた場合、アレルゲン低減効果の耐久性と持続性に問題があった。
【0007】
一方、特許文献4に記載のアレルゲン低減剤は、有効成分となる化合物の線状高分子として非水溶性ポリマーを用いるため、加工性と持続性の観点で非常に優れており、衣服や寝具、建材などの表面への固定化も容易である。しかしながら、このアレルゲン低減剤は、出発原料として、少なくとも1つのビニル基を有するフェノール性化合物を用いる必要があり、この化合物は高価でしかも着色が非常に大きい。そのため、衣服や寝具および建材など意匠性が高く要求される部材へ適用する場合には、加工製品の風合いを損ねるという着色の問題があった。
【0008】
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、ダニや花粉などのアレルゲン低減機能を有し、着色を抑えることが可能なアレルゲン低減剤およびそれを用いた加工製品を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明のアレルゲン低減剤は、テルペノイド類の重合体または共重合体を有効成分とすることを特徴とする。
【0010】
このアレルゲン低減剤において、前記テルペノイド類の共重合体が、前記テルペノイド類と芳香族モノマーとの共重合体であることが好ましい。
【0011】
また、このアレルゲン低減剤において、前記テルペノイド類が、モノテルペンであることが好ましい。
【0012】
そして、このアレルゲン低減剤において、前記モノテルペンが、リモネンまたはピネンであることが好ましい。
【0013】
本発明の加工製品は、上記したアレルゲン低減剤が表面に固定化されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明のアレルゲン低減剤は、テルペノイド類の重合体または共重合体を有効成分として含んでいるので、アレルゲン低減機能を有する。また、着色を抑えることも可能である。このアレルゲン低減剤を固定化させた加工製品も、アレルゲン低減機能を有しており、また、着色を抑えることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明のアレルゲン低減剤は、テルペノイド類の重合体または共重合体を有効成分として含んでいる。ここで、テルペノイド類の重合体は、テルペノイド類一種を単独で重合させて得られるものであり、テルペノイド類の共重合体は、テルペノイド類一種と他の一種以上の単量体とを共重合させて得られるものである。他の一種以上の単量体は、テルペノイド類以外の単量体もしくは共重合させようとするテルペノイド類とは異なるテルペノイド類であり、テルペノイド類以外の単量体としては、芳香族モノマーが好ましく用いられる。テルペノイド類の重合体または共重合体の重量平均分子量は、例えば200〜10000程度の範囲とすることができる。
【0017】
本発明において、テルペノイド類とは、(Cの分子式で表されるイソプレン則に基づく一連の化合物である。例えば、テルペン炭化水素、テルペンアルコール、テルペンアルデヒド、テルペンケトンなどが挙げられる。また、一般に炭素数により、モノテルペン(n=2)とセスキテルペン(n=3)があり、植物精油成分の大半がここに含まれるが、より高分子量のテルペンとしてジテルペン(n=4)、セスタテルペン(n=5)、トリテルペン(n=6)がある。広義においては精油や精製された化合物だけでなく、ロジンや天然ゴムも含まれる。テルペノイド類の炭素骨格は、鎖状のものや、単環、双環などの環状のものがある。なお、n=2またはn=3が好ましく、特にn=2が好ましい。
【0018】
本発明において有効成分の原料となるテルペノイド類は、鎖状のテルペン化合物であってもよいし、単環のテルペン化合物であってもよいし、双環のテルペン化合物であってもよい。その具体的な例として、次のものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0019】
例えば、鎖状のテルペン化合物の具体例としては、シトロネロール、ネロール、ゲラニオール、シトロネラール、ペリラケトンなどが挙げられる。単環のテルペン化合物の具体例としては、ジペンテン、リモネン、α−フェランドレン、β−フェランドレン、α−テルピネン、β−テルピネン、γ−テルピネン、テルピノーレン、α−ターピネオール、β−ターピネオール、γ−ターピネオール、4−ターピネオール、サビネン、パラメンテン−1、パラメンテン−2、パラメンテン−3、パラメンテン−8、パラメンタジエン類などが挙げられる。双環のテルペン化合物の具体例としては、α−ピネン、β−ピネン、1,8−シネオール、1,4−シネオール、カンフェン、トリシクレン、Δ2−カレン、Δ3−カレンなどが挙げられる。これらテルペン化合物の中でも、モノテルペンであるα−ピネン、β−ピネン、リモネンが好ましく用いられる。また、これらのテルペン化合物は単独で使用することもできるし、2種以上を混合して使用してもかまわない。
【0020】
本発明において有効成分の原料となる芳香族モノマーは、例えば、次式(1)
【0021】
【化1】

【0022】
で表される芳香族ビニル系モノマーが挙げられる。式(1)中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、または炭素原子を含む置換基を示し、芳香環上に複数個(最大で5個)有していてもよい。複数個有する場合、Rは各々同一または異なっていてもよい。
【0023】
炭素原子を含む置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシル基などが挙げられる。式(1)の芳香環と縮合環を構成する芳香族炭化水素基であってもよい。アルキル基やアルコキシル基は、炭素数1〜4が好ましい。
【0024】
このような芳香族モノマーの具体例として、具体的には、スチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、o−メチルスチレン,2,4−ジメチルスチレン,2,5−ジメチルスチレン,3,4−ジメチルスチレン,3,5−ジメチルスチレン,p−エチルスチレン,m−エチルスチレン,p−ターシャリーブチルスチレンなどのアルキルスチレン、p−クロロスチレン、m−クロロスチレン、o−クロロスチレン、p−ブロモスチレン、m−ブロモスチレン、o−ブロモスチレン、p−フルオロスチレン、m−フルオロスチレン、o−フルオロスチレン、o−メチル−p−フルオロスチレンなどのハロゲン化スチレン、メトキシスチレン、エトキシスチレン、t−ブトキシスチレンなどのアルコキシスチレンなどが挙げられる。また、ビニルビフェニル類、ビニルフェニルナフタレン類、ビニルフェニルアントラセン類、ハロゲン化ビニルビフェニル類、トリアルキルシリルビニルビフェニル類、ハロゲン置換アルキルスチレン、アルキルシリルスチレン類、フェニル基含有シリルスチレン類、ハロゲン含有シリルスチレン類、シリル基含有シリルスチレン類、あるいはこれらの二種以上を混合したものが挙げられる。さらには、ビニルナフタレン類やビニルアントラセン類、あるいはこれらの置換体なども用いることができる。
【0025】
テルペノイド類の重合体または共重合体は、従来公知の方法によって得られる。例えば、触媒の存在下で、テルペノイド類一種、または、テルペノイド類一種と他の一種以上の単量体とを加熱して重合させて得られる。
【0026】
テルペノイド類一種と他の一種以上の単量体からなる単量体群中のテルペノイド類の割合は、例えば、50重量%以上が好ましく、特に70重量%以上が好ましい。
【0027】
このようなテルペノイド類の重合体または共重合体の具体例としては、例えば、次式(2)や次式(3)で表される構造を骨格中に有する重合体または共重合体が挙げられる。
【0028】
【化2】

【0029】
式(2)中のm、式(3)中のmおよびnは、それぞれ正の整数である。式(3)中のRは、上記式(1)中のRと同じ置換基を示し、芳香環上に複数個(最大で5個)有していてもよい。複数個有する場合、Rは各々同一または異なっていてもよい。
【0030】
このようして得られるテルペノイド類の重合体または共重合体は、室内塵中に多く存在するヒョウヒダニのアレルゲン(Der1、Der2)、主に春季に多量に空気中に浮遊するスギ花粉アレルゲン(Cryj1、CrIyj2)、ペット由来アレルゲンのイヌフケ(Canf1)、ネコフケ(Feld1)などのアレルゲンに対して、優れた低減効果を発現することができる。さらに、着色を抑えることもできる。このため、衣服、寝具、建材など意匠性が高く要求される部材へ適用した場合、加工製品の風合いをできるだけ損ねないようにすることが可能であり、アレルゲン低減性能と意匠性(低着色)を達成することができる。テルペノイド類として、α−ピネン、β−ピネンまたはリモネンを用いることで着色をより小さくすることができる。
【0031】
テルペノイド類の重合体または共重合体が、アレルゲン低減性能を有する理由は明確ではないが、テルペノイドの構造の部分にアレルゲンの吸着機能があると推定され、アレルゲンを吸着して固定化するため、アレルゲン低減性能が生じると推定される。
【0032】
また、本発明においては、テルペノイド類の重合体または共重合体を触媒の存在下で水素と反応させ、テルペノイド類由来の二重結合に水素添加させることが好ましい。
【0033】
水素添加に使用される触媒としては、例えば、パラジウム、ルテニウム、ロジウムなどの貴金属またはそれらを活性炭素、活性アルミナ、珪藻土などの担体上に担持したものが挙げられる。
【0034】
このようにテルペノイド類の重合体または共重合体を水素添加することで、アレルゲン低減性能を損なわずに、着色がより小さく、耐熱性(耐熱変色性)、耐薬品性、耐光性を向上させることができる。このような水素添加された具体例としては、例えば、次式(4)で表される構造を骨格中に有する化合物が挙げられる。
【0035】
【化3】

【0036】
式中、Rは、上記式(1)中のRと同じ置換基を示し、芳香環上に複数個(最大で5個)有していてもよい。複数個有する場合、Rは各々同一または異なっていてもよい。式中のmおよびnは、それぞれ正の整数である。
【0037】
本発明のアレルゲン低減剤は、テルペノイド類の重合体または共重合体単独でもよいが、目的を害さない程度に必要に応じて他の公知のアレルゲン抑制剤や親水性高分子が含まれていてもよい。親水性高分子としては、テルペノイド類の重合体または共重合体に対して相互作用を起こし得る反応場を形成し得るものであるものが好ましい。アレルゲン低減剤に親水性高分子を含有することによって、通常の湿度条件下、例えば、絶対湿度50g/m以下の雰囲気下において、アレルゲンをさらに効果的に低減できる。
【0038】
本発明のアレルゲン低減剤は、樹脂への練り込み加工性やその他の物性を改善するために、必要に応じて種々の添加剤を混合することもできる。
【0039】
添加剤の具体例としては、酸化亜鉛や酸化チタンなどの顔料、リン酸ジルコニウムやゼオライトなどの無機イオン交換体、染料、酸化防止剤、耐光安定剤、難燃剤、帯電防止剤、発泡剤、耐衝撃強化剤、ガラス繊維、金属石鹸などの滑剤、防湿剤および増量剤、カップリング剤、核剤、流動性改良剤、消臭剤、木粉、防黴剤、防汚剤、防錆剤、金属粉、紫外線吸収剤、紫外線遮蔽剤などが挙げられる。
【0040】
アレルゲン低減剤を塗料や樹脂と配合することによりアレルゲン低減機能を有する樹脂組成物を容易に得ることができる。塗料や樹脂の種類は特に制限はなく、天然樹脂、合成樹脂、半合成樹脂のいずれであってもよく、また熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれであってもよい。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレンを共重合させた樹脂)、AS樹脂(アクリロニトリル、スチレンを共重合させた樹脂)、MBS(メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン)樹脂、ナイロン樹脂、ポリエステル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアセタ−ル、ポリカ−ボネイト、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタンエラストマ−、ポリエステルエラストマ−、メラミン樹脂、ユリア樹脂、四フッ化エチレン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、レ−ヨン、アセテ−ト、ポリビニルアルコ−ル、キュプラ、トリアセテ−ト、ビニリデンなどの成形用または繊維用樹脂、天然ゴム、シリコ−ンゴム、スチレンブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、フッ素ゴム、ニトリルゴム、クロルスルホン化ポリエチレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、ウレタンゴム、アクリルゴムなどのゴム状樹脂がある。また、アレルゲン低減剤を天然繊維の繊維と複合化させて、アレルゲン低減機能を有する繊維を作製することもできる。
【0041】
アレルゲン低減剤を含む樹脂組成物におけるアレルゲン低減剤の配合割合は、アレルゲン低減剤を含有する樹脂組成物100重量部中、2〜30重量部であることが好ましく、3〜10重量部がより好ましい。2重量部未満であるとアレルゲン低減機能が不十分な場合があり、一方、30重量部より多く配合してもアレルゲン低減効果の向上がほとんどなく非経済的な上、樹脂物性の低下が著しくなる場合がある。
【0042】
アレルゲン低減剤を含む樹脂組成物は、樹脂成形品に加工することもできる。その加工方法は、各種樹脂の特性に合わせて公知の加工技術と機械が使用可能である。それらの具体的操作は常法により行えば良く、塊状、スポンジ状、フィルム状、シート状、糸状あるいはパイプ状またはこれらの複合体など、種々の形態に成形加工できる。樹脂組成物は、適当な温度または圧力で、例えば加熱および加圧または減圧しながら混合、混入または混練りの方法によって容易に調製することができる。
【0043】
また、アレルゲン低減剤の使用形態には特に制限はなく、樹脂成形品や高分子化合物に配合することに限定されることはない。例えば、粉末、粉末含有分散液、粉末含有粒子、粉末含有塗料、粉末含有繊維、粉末含有紙、粉末含有プラスチック、粉末含有フィルムなどの種々の形態で用いることができる。スプレー型、エアゾール型、燻煙型、加熱蒸散型などの汎用の使用方法を用いることもできる。具体的には、例えば、アレルゲン低減剤を溶媒に溶解あるいは分散させて溶液とし、この溶液に水溶剤、油剤、乳剤、懸濁剤などを配合することによって、アレルゲン低減剤をスプレー型とすることができる。なお、溶媒としては、例えば、水(好ましくは、イオン交換水)、アルコール類(メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールなど)、炭化水素類(トルエン、キシレン、メチルナフタレン、ケロセン、シクロヘキサンなど)、エーテル類(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなど)、エステル類(酢酸ブチル、酢酸エチルなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)、アミド類(N,N−ジメチルホルムアミドなど)が挙げられる。
【0044】
アレルゲン低減剤を含有する樹脂組成物を建材などの材料の表面に固定化することで、耐久性を有するアレルゲン低減機能を有する加工製品を得ることができる。
【0045】
アレルゲンが存在する対象物、すなわち、アレルゲンを抑制したい対象物表面に、アレルゲン低減剤を使用形態に応じて、噴霧、分散、塗布、練り込み、印刷、転写などにより対象物表面に固定化させることによって効率よくアレルゲンを低減することができる。
【0046】
なお、「アレルゲンを低減する」とは、動物性アレルゲンや花粉などの植物性アレルゲンを低減することである。特に効果のある動物性アレルゲンとしては、ダニ類のアレルゲン(ダニ類、節足動物一蛛形綱−ダニ目の生物で、主に7つの亜目に分かれている。アシナガダニに代表される背気門、カタダニに代表される四気門、ヤマトマダニ、ツバメヒメダニに代表される後気門、イエダニ、スズメサシダニに代表される中気門、クワガタツメダニ、ナミホコリダニに代表される前気門、コナヒョウヒダニなどのヒョウヒダニ類、ケナガコナダニに代表される無気門、イエササラダニ、カザリヒワダニに代表される隠気門など)のいずれの種類でも対象となり得る。なかでも、室内塵中、特に寝具類に多く、アレルギー疾患の原因となるヒョウヒダニ類に特に効果がある。
【0047】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0048】
(実施例1)
テルペン樹脂YSレジン1250(ヤスハラケミカル株式会社製、式(2)で表される構造を骨格中に有する化合物)30重量部をシンナー(キシレン:トルエン=1:1)60重量部に溶解させて、アレルゲン低減剤溶液を作製した。
(実施例2)
テルペン樹脂YSレジン1250の代わりに、芳香族変性テルペン樹脂YSレジンTO125(ヤスハラケミカル株式会社製、式(3)で表される構造を骨格中に有する化合物でありRは水素原子である)を用いた以外は、実施例1と同様にして、アレルゲン低減剤溶液を作製した。
(比較例1)
テルペン樹脂YSレジン1250の代わりに、ポリビニルフェノール樹脂マルカリンカM(丸善石油化学株式会社製、下記式(5)
【0049】
【化4】

【0050】
で表される構造を骨格中に有する化合物(nは正の整数))を用いた以外は、実施例1と同様にして、アレルゲン低減剤溶液を作製した。
【0051】
実施例1、2および比較例1で得られたアレルゲン低減剤溶液について、色相とアレルゲン低減性能を測定した。結果を表1に示す。
<色相の測定>
アレルゲン低減剤溶液の色相は、ガードナー法により測定した。なお、評価は0〜18で行った。(0は無色透明、数値が大きいほど褐色になる)
<アレルゲン低減性能の測定>
1)アレルゲン溶液の調製
アレルゲンの冷結乾燥粉末(精製ダニ抗原;Der2、アサヒビール社製)をアレルゲンタンパク量100ng/mlになるようにリン酸バッファー(pH7.6)に溶解させてアレルゲン溶液を作製した。
2)サンプルの調製
アレルゲン低減剤溶液をバーコーター#20でPETフィルムに塗布し、80℃で30分間乾燥した。
3)反応の実施
操作1)で調製したアレルゲン溶液を、操作2)で作製した各々のフィルムと未加工のPETフィルムに対し400μlづつ滴下し、反応6時間後のアレルゲンタンパク量をELISAキット(Indoor社)を用いて測定した。なお、アレルゲン低減化率は、下記のとおり算出して求めた。
【0052】
アレルゲン低減率(%)=100×(1−A/B)
A:操作2)で得られたフィルムの6時間後のアレルゲンタンパク量(ng/ml)
B:未加工のPETフィルムの6時間後のアレルゲンタンパク量(ng/ml)
【0053】
【表1】

【0054】
表1の結果から、テルペノイド類の重合体または共重合体を含む実施例1,2は、従来のアレルゲン低減剤を用いた比較例1の場合と同様に優れたアレルゲン低減性能を有しているにも関わらず、着色が少ないことが確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テルペノイド類の重合体または共重合体を有効成分とすることを特徴とするアレルゲン低減剤。
【請求項2】
前記テルペノイド類の共重合体が、前記テルペノイド類と芳香族モノマーとの共重合体であることを特徴とする請求項1に記載のアレルゲン低減剤。
【請求項3】
前記テルペノイド類が、モノテルペンであることを特徴とする請求項1または2に記載のアレルゲン低減剤。
【請求項4】
前記モノテルペンが、リモネンまたはピネンであることを特徴とする請求項3に記載のアレルゲン低減剤。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかのアレルゲン低減剤が表面に固定化されていることを特徴とする加工製品。

【公開番号】特開2012−25709(P2012−25709A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−168104(P2010−168104)
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】