説明

アレルゲン低減空間

【課題】室内の部位別(天井、壁、床、押入等)に、大きさや形態の異なる原因物質に応じてアレルゲン不活性化建材を配置することで、効率的に室内のアレルゲンを不活性化して、アレルギー疾患の発生を抑制する室内空間の提供を目的とする。
【解決手段】ペットに起因するアレルゲンを不活性化する処理層を少なくとも天井表面に配置すると共に、ダニや花粉に起因するアレルゲンを不活性化する処理層を少なくとも床表面に配置することを特徴とするアレルゲン低減空間。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、日常の生活環境において、ダニ、花粉、ペット等が原因となるアレルゲンを不活性化する建材で構成されたアレルゲン低減空間に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、アレルギー性疾患の患者が増加傾向にある。これは、ダニの糞や死骸、花粉、犬や猫等のペットの毛や皮脂(ふけ)等が有するアレルゲンに起因している。アレルギー対策として、これらの原因物質を電気掃除機で強制的に吸引除去したり、空気清浄機によって空気中に浮遊するアレルゲンの除去等が行われる。
【0003】
また、特開2006−183235に見られるように、室内を構成する建材として、アレルゲンを不活性化し、アレルギー疾患の発生を抑制する天井材、壁材等が開発されている。これは、アレルゲンを不活性化する薬剤が建材に添加されたもので、電気掃除機や空気清浄機器具を用いた除去作業を行うことなく、部屋自体でアレルギー疾患の発生を抑制する点において効果が期待される。
【特許文献1】特開2006−183235公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、アレルゲンの原因物質にはいろいろな大きさや形態のものがあって、空気中を浮遊し易いものや水平面上に堆積するもの等いろいろな種類があるが、特に部位別にアレルゲンを不活性化する薬剤の種類を変えた建材で構成された空間が作られることは従来なかった。
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑みなされたものであり、室内の部位別(天井、壁、床、押入等)に、アレルゲンの大きさや形態の異なる原因物質に応じて、アレルゲンを不活性化する建材を配置することで、効果的に室内のアレルゲンを不活性化して、アレルギー疾患の発生を抑制する室内空間の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を解決するために、請求項1に係る発明のアレルゲン低減空間は、ペットに起因するアレルゲンを不活性化する処理層を少なくとも天井表面に配置すると共に、ダニや花粉に起因するアレルゲンを不活性化する処理層を少なくとも床表面に配置することを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明のアレルゲン低減空間は、請求項1に記載のアレルゲンを不活性化する処理層として、表面にアレルゲン不活性化剤を塗布含浸した多孔質微粒子と合成樹脂とからなることを特徴とする
【0008】
請求項3に係る発明のアレルゲン低減空間は、請求項2に記載のアレルゲン不活性化剤が、イオン性官能基を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明のアレルゲン低減空間によれば、ペットに起因するアレルゲンを不活性化する処理層を少なくとも天井表面に配置すると共に、ダニや花粉に起因するアレルゲンを不活性化する処理層を少なくとも床表面に配置しているので、粒径が小さく軽量で空中に浮遊し易いペットに起因するアレルゲンを天井部分で捉えて、粒径が大きく重量があって落下蓄積し易いダニや花粉に起因するアレルゲンを床面で捉えることで、効果的にアレルゲンを不活性化するアレルゲン低減空間を提供することができる。
【0010】
請求項2に係る発明のアレルゲン低減空間によれば、請求項1に記載のアレルゲンを不活性化する処理層として、表面にアレルゲン不活性化剤を塗布含浸した多孔質微粒子と合成樹脂とからなるので、アレルゲン不活性化剤を粒子表面近傍に含浸させた多孔質微粒子を、合成樹脂と混合するだけでアレルゲンを不活性化するコーティング材として室内空間の所望の部分に簡単に塗布することができる。
【0011】
請求項3に係る発明のアレルゲン低減空間によれば、請求項2に記載のアレルゲン不活性化剤が、イオン性官能基を有するので、アレルゲンタンパクにおいて部分的にプラスの電荷を有するアミノ基が、マイナスの電荷のイオン性官能基を有するアレルゲン不活性化剤に引かれ、タンパク質が変性され不活性化する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための実施形態を図面に基づき説明する。もちろん本発明は本実施形態の記載内容に限られるものではない。
【0013】
図1は本発明のアレルゲン低減空間をイメージ的に示すものであり、天井1、床2、壁3、押入の棚板4、アレルゲンを不活性化する処理層a(天井、床、壁、棚板に対してそれぞれa1,a2,a3,a4で示す)の配置を表している。
【0014】
アレルゲンにもいろいろな種類があるが、室内空間においては特に、ダニ、花粉、ペットに起因する物質が問題となっている。それぞれの物質は異なる寸法を有しており、ダニ虫体(生虫、死骸)は数百μm、粉砕された死骸、糞は数十μm、花粉は数十μmで、これらは重く直ぐに落下して水平面に蓄積し易い。一方、犬や猫等のペットの毛や皮脂(ふけ)等は数μmと小さく軽いため空中を漂い易く、なかなか落下し難い。
【0015】
したがってそれぞれのアレルゲンの特徴に合わせて、室内の異なる部位に最適なアレルゲンを不活性化する処理層を配置することが効率的である。少なくとも天井表面には空中を漂い易く、なかなか落下し難い犬や猫等のペットの毛や皮脂(ふけ)等に起因するアレルゲンを不活性化する処理層を配置し、少なくとも床表面には重くて落下し易いダニや花粉に起因するアレルゲンを不活性化する処理層を配置する。もちろん、天井表面にダニや花粉、床表面にペットに起因するアレルゲン不活性化剤を用いても良い。
【0016】
垂直面である壁も主として天井と同じ処理層を配置する。押入の場合は塵埃が室内のように空気で移動することが少なく水平面に溜まり易いので、特に棚板や床に処理層を設ける方が効率的である。またアレルゲンを不活性化する処理層は室内各部位の表面に化粧材として用いるので不活性化反応によって変色しないものが必要である。
【0017】
図2はアレルゲンを不活性化する処理層のイメージ図で、本例では床2の表面に(天井1、壁3、押入の棚板4でも良い)アレルゲンを不活性化する処理層aを設けたものである。処理層aは多孔質微粒子bの表面にアレルゲン不活性化剤dを塗布含浸し、塗膜形成成分としての合成樹脂eと混合したコーティング材からなる。
【0018】
アレルゲン不活性化剤dはマイナスに帯電したイオン性官能基を有しており、部分的にプラスに帯電したアミノ基を有するアレルゲンタンパクが床2の表面に落下し処理層aに接触すると、アレルゲン不活性化剤dのマイナス電荷がアレルゲンタンパクのアミノ基が有するプラス電荷を引き付けて、アレルゲンタンパク変性し不活性化させる。
【0019】
多孔質微粒子bはシリカゲル、珪藻土、活性白土、ゼオライト、ベントナイト、モンモリロナイト、セピオライト等が用いられ、粒径は塗布した際の建材としての化粧性を考えると1mm以下が好ましい。特に床2や棚板4の表面にコーティングする場合は粒径が大きいと歩行や物を引き摺る際の摩擦によって塗膜から剥がれる虞があるので、マイクロメーターからナノメーターオーダーの粒子のように極めて小さいものを使用するとさらに好ましい。
【0020】
一方、天井1、壁3については、特に摩擦によって多孔質微粒子bが剥がれることは少ないので大きな粒子でも良い。また、天井1、壁3は床2の様にアレルゲンが蓄積する部分ではないので、平滑面とするよりは表面に凹凸や微細穴等の化粧を施すことによって、アレルゲンを処理層aとアレルゲンcが接触する機会が増えるので好ましい。
【0021】
多孔質微粒子bに塗布含浸するアレルゲン不活性化剤dとしては、ポリフェノール、タンニン、プロテアーゼ等が用いられる。これらにはイオン性官能基として、アニオン性官能基のカルボキシル基が付加されている。その他のアニオン性官能基としてヒドロキシル基、スルホン酸基、スルホニル基等が用いられる。
【0022】
合成樹脂eとしてはアクリルエマルジョン、酢酸ビニルエマルジョン、エチレン酢酸ビニルエマルジョン、アクリルスチレンエマルジョン等が用いられる。アレルゲン不活性化剤dを塗布含浸した多孔質微粒子bを、合成樹脂eとを混合してコーティング材を得、建材表面にコーティングし処理層aを得る。
【0023】
これらの添加量として、合成樹脂e100重量部対して多孔質微粒子b10〜30重量部が好ましい。10重量部未満ではアレルゲン不活性化剤として十分な効果が得られず、30重量部を超えるとエマルジョンの水分が粒子の孔部に吸収されてコーティング材としての塗膜形成機能を損なう。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明のアレルゲン低減空間は、室内の部位別に、大きさや形態の異なる原因物質に応じてアレルゲン不活性化建材を配置することで、室内に浮遊あるいは蓄積するアレルゲンを不活性化して、アレルギー疾患の発生を抑制する室内空間の提供することができるので、極めて有用で産業上の利用可能性が高い。

【図面の簡単な説明】
【0025】

【図1】本発明のアレルゲン低減空間の概要を示すイメージ図。
【図2】アレルゲン不活性化のメカニズムを示すイメージ図。
【符号の説明】
【0026】
a アレルゲンを不活性化する処理層
b 多孔質微粒子
c アレルゲン物質
d アレルゲン不活性化剤
e 合成樹脂
1 天井
2 床
3 壁
4 棚板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペットに起因するアレルゲンを不活性化する処理層を少なくとも天井表面に配置すると共に、ダニや花粉に起因するアレルゲンを不活性化する処理層を少なくとも床表面に配置することを特徴とするアレルゲン低減空間。
【請求項2】
アレルゲンを不活性化する処理層は、表面にアレルゲン不活性化剤を塗布含浸した多孔質微粒子と合成樹脂とからなることを特徴とする請求項1に記載のアレルゲン低減空間。
【請求項3】
アレルゲン不活性化剤はイオン性官能基を有することを特徴とする請求項2に記載のアレルゲン低減空間。

【図1】
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【図2】
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