説明

アロマキャンドル、およびその製法

【課題】キャンドルに点火してから一定時間の経過後に、芳香成分が発散し、人の心を和ませることができ、すなわち、アロマテラピー効果を奏することができ、しかも、長期間放置しておいた場合でも、点火後の芳香成分の発散量が低下することがない、芳香成分の耐久性がよいアロマキャンドル、およびそのアロマキャンドルの製造を可能とした製法を提供する。
【解決手段】常温で固体である蝋2内に、芯材3を、その一部が外部に突出するようにして埋設してなるアロマキャンドル1において、蝋2内に、内部に香料4、5が揮発しないように密封され、かつ蝋2の溶融温度で溶融するようにしたカプセル6、7を埋設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香性を有する蝋燭、すなわちアロマキャンドル、およびその製法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のアロマキャンドルは、蝋自体に香料を添加したり、混練したり、含浸させたりし(それらを総称して、配合するという)、それ自体が芳香を発するとともに、キャンドルの灯火中に、蝋とともに香料が蒸発し、芳香成分が灯火の上昇気流により拡散されるようにしたものがほとんどである(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−48591号公報
【特許文献2】特開平9−188893号公報
【特許文献3】特開2000−239694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1〜3に記載されているアロマキャンドルは、蝋に配合されている香料の芳香成分が、時間の経過とともに放散し、長期間放置しておくと、芳香性が失われ、キャンドルに点火しても、芳香成分が発散しなくなることがある。
【0005】
本発明は、従来の技術が有する上記のような問題点に鑑み、キャンドルに点火してから一定時間の経過後、もしくは一定時間毎に芳香成分が発散し、人の心を和ませ、アロマテラピー効果を奏するとともに、一定時間の経過を告知させることができ、しかも、長期間放置しておいても、点火後の芳香成分の発散量が極力低下することがないようにした、芳香成分の持続性がよいアロマキャンドル、およびこのアロマキャンドルの効果的な製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
(1) 常温で固体である蝋内に、芯材を、その一部が外部に突出するようにして埋設してなるアロマキャンドルにおいて、前記蝋内に、内部に香料が揮発しないように密封され、かつ点火後一定時間経過後に、蝋の溶融温度で溶融するようにしたカプセルを埋設する。
【0007】
このような構成とすると、キャンドルに点火してから一定時間が経過すると、カプセルが蝋とともに溶融し、その内部に密封されていた香料がカプセルから漏出して蒸発し、その芳香成分が発散し、その一部が灯火の上昇気流により拡散され、人の心を和ませ、アロマテラピー効果を奏することができ、かつ点火後一定時間が経過したことを、周辺の人に知らせることができる。
また、不使用時には、香料は、揮発しないようにカプセル内に密封されており、その芳香成分が大気に放散することがなく、長期間放置しておいた場合でも、点火後の芳香成分の発散量が低下することがなく、芳香成分の耐久性がよい。
【0008】
(2) 上記(1)項において、香料を密封した複数のカプセルを、芯材に沿って、互いに離間させて蝋内に埋設する。
【0009】
このような構成とすると、キャンドルに点火してから一定時間が経過した後、第1段目のカプセルが蝋とともに溶融し、その内部に密封されていた香料がカプセルから漏出して蒸発し、その芳香成分が発散し、その一部が灯火の上昇気流により拡散され、その後さらに一定時間が経過した後、第2段目のカプセルが蝋とともに溶融し、その内部に密封されていた上記の香料とは異なる香料がカプセルから漏出して蒸発し、その芳香成分が発散し、その一部が灯火の上昇気流により拡散されるので、時間の経過を大まかに把握することができる。
【0010】
(3) 上記(2)項において、各カプセルにおける香料を、異なる種類のものとする。
【0011】
このような構成とすると、時間の経過とともに、異なる種類の香りがキャンドルの周囲に拡散するので、複数の香りを楽しむことができ、アロマテラピー効果をさらに高めることができる。
【0012】
(4) 上記(1)〜(3)項のいずれかにおいて、芯材を筒状の伸縮性ネットにより形成し、この筒状の芯材内にカプセルを挿入する。
【0013】
このような構成とすると、カプセルが芯材内に位置するので、キャンドルの灯火中に、カプセルが確実に溶融するとともに、溶融したカプセルから漏出した香料の芳香成分が、確実に灯火の上昇気流に乗り、芳香の拡散性が向上する。
【0014】
(5) 上記(1)〜(3)項のいずれかにおいて、芯材を紐状体からなるものとし、この芯材にカプセルを係止させる。
【0015】
このような構成とすると、カプセルを芯材と一体として扱うことができ、製造が容易になる。
【0016】
(6) アロマキャンドルの製法において、蝋の溶融温度で溶融する材質のカプセル内に、香料を揮発しないように密封しておき、芯材を立設した型枠内に、溶融した蝋を流し込み、前記蝋が固化する前に、有底孔形成用の中子を蝋内に浸漬し、蝋の固化後に前記中子を離型することにより、蝋に有底孔を形成し、前記蝋が固化し、かつ蝋の温度が前記カプセルの溶融温度より低下した後、前記有底孔に、前記カプセルを嵌合し、その後、前記有底孔の開口部に、固化した蝋材を嵌合して、前記開口部を閉塞する。
【0017】
アロマキャンドルの灯火時に蝋が溶融するときの温度は、通常60°C〜80°Cであり、カプセルはこの温度で溶融するようにする必要があり、それに対して、溶融した蝋を型枠内に流し込むときは、蝋を100°C〜120°Cに加熱してあるので、この中にカプセルを入れると、カプセルは即座に溶融し、香料を密封しておくことはできない。
しかし、上記のような製法によると、蝋が固化し、かつ蝋の温度がカプセルの溶融温度より低下した後、固化した蝋に形成された有底孔に、カプセルを嵌合するので、カプセルが製造途中で溶融することはなく、本発明のアロマキャンドルの製造が可能となる。
また、蝋の成形時に有底孔が同時に形成されるので、製造が容易である。
【0018】
(7) アロマキャンドルの製法において、蝋の溶融温度で溶融する材質のカプセル内に、香料を揮発しないように密封しておき、芯材を立設した型枠内に、溶融した蝋を流し込み、前記蝋が固化した後、前記蝋に有底孔を穿孔し、前記蝋の温度が前記カプセルの溶融温度より低下した後、前記有底孔に、前記カプセルを嵌合し、その後、前記有底孔の開口部に、固化した蝋材を嵌合して、前記開口部を閉塞する。
【0019】
このような製法によると、上記(6)項の製法と同様に、蝋が固化し、かつ蝋の温度がカプセルの溶融温度より低下した後、固化した蝋に形成した有底孔に、カプセルを嵌合するので、カプセルが製造途中で溶融することはなく、本発明のアロマキャンドルの製造が可能となる。
また、蝋の成形後に、固化した蝋に、有底孔を、機械加工により簡単に形成することができる。
【0020】
(8) 上記(6)または(7)項において、有底孔の底部にカプセルを嵌合した後、その上方にスペーサ用の固化した蝋材と、別のカプセルとを順次嵌合し、最後に、前記有底孔の開口部に、固化した蝋材を嵌合して、前記開口部を閉塞することにより、有底孔溝内に、複数のカプセルを、互いに離間させて嵌合する。
【0021】
このような製法とすると、複数のカプセルを、互いに離間させて、蝋内に迅速かつ確実に埋設することができる。
【0022】
(9) アロマキャンドルの製法において、蝋の溶融温度で溶融する材質のカプセル内に、香料を揮発しないように密封しておき、筒状の伸縮性ネットにより形成した芯材内に、前記カプセルを配設した状態で、その周囲を、固化した蝋材により、倒立截頭円錐形状に固めることにより、アロマキャンドルの中心部を形成し、この中心部を、蝋を成型して形成したアロマキャンドルの外周部の中央に設けた倒立截頭円錐形の中央孔に嵌合する。
【0023】
このような製法によると、カプセルを、筒状とした芯材内に配設して、芯材と一体として取り扱うことができるとともに、蝋に有底孔を設ける必要がないので、作業を、簡単かつ迅速に行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によると、キャンドルに点火してから一定時間の経過後、もしくは一定時間毎に芳香成分が発散し、人の心を和ませ、アロマテラピー効果を奏するとともに、一定時間の経過を告知させることができ、しかも、長期間放置しておいても、点火後の芳香成分の発散量が極力低下することがないようにした、芳香成分の持続性がよいアロマキャンドル、およびこのアロマキャンドルの効果的な製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のアロマキャンドルの第1の実施形態の中央縦断正面図である。
【図2】図1のアロマキャンドルの製法の第1の行程を示す中央縦断正面図である。
【図3】同じく第2の行程を示す中央縦断正面図である。
【図4】本発明のアロマキャンドルの第2の実施形態の中央縦断正面図である。
【図5】図4のアロマキャンドルの製法の一行程を示す中央縦断正面図である。
【図6】図5に示す行程の一部の変形例を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を、添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明のアロマキャンドルの第1の実施形態の中央縦断正面図である。
このアロマキャンドル1は、常温で固体である円柱状の蝋2の中心に、芯材3を、その上端部が上方に突出するようにして埋設し、かつ蝋2の偏心部に、内部に香料4、5が揮発しないように密封され、かつ蝋2の溶融温度で溶融するようにした2個のカプセル6、7を、互いに上下に離間させて埋設したものよりなっている。
【0027】
蝋2および芯材3の材質は公知のものでよい。例えば、蝋2の材質としては、パラフィン、蜜蝋、その他の公知の蝋燭の材質とすることができる。また、蝋2に、香料を配合しておいてもよい。
【0028】
芯材3としては、織布、編み物、不織布等繊維製品、葦、藁、紙等細長い物なら、燃焼効率を別として、殆どの物を使用することができる。
【0029】
香料4、5としては、特段に限定されないが、互いに異なる香りのものとするのが好ましい。
すなわち、動物起源および植物起源の天然香料、天然香料から香成分を単離した抽出香料および化学合成した合成香料を含む人造香料、およびそれらを調合した調合香料から任意のものを使用することができる。
【0030】
具体的な香料としては、例えば、ラベンダー、ゼラニウム、ユーカリ、ペパーミント、マンダリン、カモミール、ローズマリー、パイン、グレープフルーツ、レモン、オレンジ、白檀、沈香、麝香等を挙げることができるが、これらに限定されるものではなく、使用しうる香料は無数にある。また、これらの香料成分の一または複数を揮発性の溶剤に溶かして配合し、いわゆる調香して、使用するのがよい。
【0031】
香料4、5の性状は、固体、粉体、粒体、ゲル状体、流動体、液体のいずれでもよいが、蝋2の溶融温度により揮発し、また蝋2とともに燃焼し、残滓が残らないようなものとするのが好ましい。
なお、香料4、5には、蝋2とともに燃焼する際に、炎の色が変わる材料を添加しておくことが好ましい。例えば、香料4、5にメチルリチウムを添加しておくことにより、炎を赤色化させることができる。
【0032】
カプセル6、7の材質しては、香料4、5を揮発しないように密封でき、かつ蝋2の溶融温度で溶融するものであればどの様なものでもよいが、固体状態でも、溶融状態でも、燃焼後においても人体に無害であり、かつアロマキャンドル1の灯火により燃焼でき、燃焼時に有毒ガスを発生しないという条件を満たすことが実用上必要である。
このような材料は、薬剤や健康食品に用いられているソフトカプセルまたはハードカプセルのうち、上記の条件を満たすものを選択することで得ることができる。
【0033】
具体的には、カプセル6、7の基剤となるものとしては、ゼラチン、パラフィン、蜜蝋、グリセリン、グリセリン脂肪酸エステル、ポリアミド、アミノプラスト、マルトデキストリン、ショ糖、ポリウレタン、ポリエステル、尿素ホルマリン、ポリスチレン、ポリアクリル、PVA、アラビアガム、エチルセルロース、デンプン、ワックス、ポリ(1,6−ヘキサンアミンジイルセバコイル)、ポリ(1、4−ピペラジンジイルテレフタロイル)、ポリオルトエステル、ポリ酸、ヒドロゲル、ポリペプチド、ポリアミノトリアゾール、アルブニンビーズ等が例示される。
【0034】
基剤によっては、シェルとしての脆さと不溶化を改善するために、所定の添加剤を配合することが好ましい。例えば、ゼラチンを使用する場合には、ゼラチンのシェルとしての脆さと不溶化を改善するために、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を基剤に配合することが好ましい。
【0035】
カプセル6、7のシェルとなる基剤の中で、好ましいのは、1、3−フェニレンジイソシアナート;1−メチルベンゼンー2、4−ジイソシナート;1−メチルベンゼンー2、5−ジイソシナート;1−エトキシベンゼンー2、4−ジイソシナナート;およびジフェニルメタンー4、4'−ジイソシナートから成る群から選択された芳香族ジイソシアナートと1、10−デカンジオールとの付加重合反応によって製造されたポリウレタンである。
【0036】
これらのポリウレタンの融点は、いずれも50°C〜70°Cである。たとえば、1、3−フェニレンジイソシアナートと1、10−デカンジオールとの付加重合反応によって製造されたポリウレタンの融点は62°Cである。1−メチルベンゼンー2、4−ジイソシナートと1、10−デカンジオールとの付加重合反応によって製造されたポリウレタンの融点は50°Cである。1−メチルベンゼンー2、4−ジイソシナートと1、10−デカンジオールとの付加重合反応によって製造されたポリウレタンの融点は約50°Cである。1−エトキシベンゼンー2、4−ジイソシナナートと1、10−デカンジオールとの付加重合反応によって製造されたポリウレタンの融点は約60°Cである。ジフェニルメタンー4、4'−ジイソシナートと1、10−デカンジオールとの付加重合反応によって製造されたポリウレタンの融点は約50°Cである。
【0037】
図1に示すアロマキャンドル1は、芯材3の上端に点火すると、その周辺の蝋2が炎の熱によって徐々に溶融し、芯材3に吸い上げられ、可燃性ガスとなって、空気と混合し、発炎燃焼して、安定した炎を継続させることができる。
【0038】
点火から時間が経つにつれて、蝋2の上端中央部から外側方および下方へと溶融が進み、その蝋2の溶融が、カプセル6の上端部に達し、溶融した蝋2の熱により、カプセル6の一部が溶融し、その内部に密封されていた香料4がカプセル6から漏出して蒸発すると、その芳香成分が発散し、その一部が灯火の上昇気流により拡散され、人の心を和ませることができる、すなわち、アロマテラピー効果を奏することができる。
【0039】
カプセル6が蝋2とともに溶融し、芯材3に吸い上げられて燃焼し、また香料4が揮発したり、蝋2ともに溶融し、芯材3に吸い上げられて燃焼した後、さらに蝋2の溶融が進み、蝋2の溶融が、カプセル7の上端部に達し、溶融した蝋2の熱により、カプセル7の一部が溶融し、その内部に密封されていた香料5がカプセル7から漏出して蒸発すると、その芳香成分が発散し、その一部が灯火の上昇気流により拡散され、先の香料4の香りとは異なる香りが室内に漂い、香りの変化を楽しむことができ、アロマテラピー効果をさらに高めることができる。
【0040】
また、アロマキャンドル1の不使用時には、香料4、5は揮発しないようにカプセル6、7内に密封されており、その芳香成分が大気に放散することがなく、長期間放置しておいた場合でも、アロマキャンドル1の点火後の芳香成分の発散量が低下することがなく、芳香成分の耐久性を高めることができる。
したがって、従来のアロマキャンドルのように、長期間放置しておくことにより、芳香性が失われ、キャンドルに点火しても、芳香成分が発散しなくなるということがない。
【0041】
図1に示すアロマキャンドル1を製造するには、図2に示すように、形成しようとするアロマキャンドル1と補形をなす有底筒状の型枠11における底部11aの中央に設けた小孔12に、芯材3の一端部を挿通させて、その先端部を、底部11aの下面に、粘着テープその他の適宜の止着手段をもって止着する。
【0042】
次いで、型枠11上に、中央に小孔13が、偏心部の下面に、下端が球頭状の下方を向く棒状の有底孔形成用の中子14が、また別の偏心部に、大寸の注入口15が設けられた蓋体16を被嵌し、その小孔13に、上記芯材3の他端部を下方より挿通させて、その上端部を、蓋体16の上面に、粘着テープその他の適宜の止着手段をもって止着する。
【0043】
この状態で、溶融用容器17内において、100°C〜120°Cに加熱して溶融させた蝋材2’を、蓋体1溶融容器6の注入口15より型枠11内に、図2に2点鎖線で示す高さに液位が達するまで流し込む。
なお、蝋材2’を型枠11内に流し込んだ後に、中子14を、型枠11内の蝋材2’中に浸漬してもよい。また、中子14を、上下反転させて、型枠11の底部11aの上面に上向きに突設しておき、アロマキャンドル1を上下反転させた形で成形することもある。
【0044】
その後、蝋材2’が固化した後、蓋体16と中子14とを、型枠11から真上に外すとともに、固化した蝋2と芯材3とを、型枠11から離型すると、図3に示すように、上面の偏心部に、中子14を抜き出した後の有底孔18が形成されたアロマキャンドルの半製品1’が形成される。
【0045】
以上の作業と並行して、蝋2の溶融温度である60°C〜80°Cで溶融する上記のような材質としたカプセル6、7内に、香料4、5を揮発しないように密封しておく。
【0046】
図3に示す半製品1’における蝋2の温度が、上記カプセル6、7の溶融温度より低下した後、有底孔18に、カプセル7をその底部まで嵌合し、ついで、その上方より、スペーサ用の固化した蝋材2a、およびカプセル6を順次嵌合し、最後に、有底孔18の開口部閉塞用の固化した蝋材2bを嵌合し、有底孔18の上端開口部を閉塞することにより、有底孔18内に、複数のカプセル7、6を、互いに離間するようにして埋設し、図1に示すアロマキャンドル1を完成することができる。
【0047】
この製法によると、カプセル6、7をアロマキャンドル1内に埋設する際に、カプセル6、7が、溶融状態の蝋2に曝されて、溶融するということがなく、カプセル6、7を安定した状態で、簡単かつ迅速に、アロマキャンドル1内に埋設することができる。
【0048】
1個のカプセル6のみを、アロマキャンドル1内に埋設する場合は、有底孔18を浅く形成しておき、その中に、カプセル6と蝋材2bとを嵌合すればよい。
また、3個以上のカプセルを上下方向に離間させて埋設させたい場合は、蝋材2aおよびカプセル6を複数セット用意しておき、それらを有底孔18内に順次繰り返して嵌合し、最後に、蝋材2bを嵌合して、有底孔18の上端開口部を閉塞すればよい。
【0049】
さらに、上記のように、中子14により有底孔18を形成する代わりに、芯材3を立設した型枠11内に、溶融した蝋材2’を流し込んで固化させただのものか、またはすでに完成して固化した既存のアロマキャンドルにおける蝋2の上面の偏心部に、ドリル(図示略)等の機械加工により、有底孔18を穿設し、そこに、カプセル7、蝋材2a、カプセル6、および蝋材2bを順次嵌合して、アロマキャンドル1を完成させることもできる。
【0050】
図4は、本発明のアロマキャンドルの第2の実施形態の中央縦断正面図である。
このアロマキャンドル21は、常温で固体である倒立截頭円錐形の蝋22の中心に、筒状の伸縮性ネットにより形成した芯材23内に、上記と同様の、香料4、5が揮発しないように密封され、かつ蝋2の溶融温度で溶融するようにした2個のカプセル6、7を、互いに上下に離間させて配設したものを埋設したものよりなっている。
【0051】
このような構成とすると、カプセル6、7が芯材23内に位置するので、アロマキャンドル21の灯火中に、カプセル6、7が確実に溶融するとともに、溶融したカプセル6、7から漏出した香料4、5の芳香成分が、確実に灯火の上昇気流に乗り、芳香の拡散性が向上する。
【0052】
このアロマキャンドル21を製造するには、図5に示すように、倒立截頭円錐形の型枠31の底部31aの中央に設けた小孔32に、内部に2個のカプセル6、7を、互いに上下に離間させ配設した上記芯材23の一端部を挿通させて、その先端部を、底部31aの下面に、粘着テープその他の適宜の止着手段をもって止着し、かつ芯材23の他端部に刺し通した水平の吊杆33の両端部を型枠31上に架設して、芯材23を垂直に保持する。
【0053】
次いで、型枠31内に、粒状、ブロック状またはその他の形状とした固化した常温の蝋材34を、芯材23が中央に位置するように下方のものより順次押し固めつつ充填し、倒立截頭円錐形のアロマキャンドル21の中心部35を形成する。
【0054】
この中心部35を、型枠31から離型して、蝋2と同様の材料を成型して形成した倒立截頭円錐形のアロマキャンドル21の外周部36の中央に設けた倒立截頭円錐形の中央孔37に嵌合して、アロマキャンドル21を完成させることができる。
【0055】
このような製法によると、カプセル6、7を、筒状とした芯材23内に配設して、芯材23と一体として取り扱うことができるとともに、蝋に有底孔を設ける必要がないので、作業を、簡単かつ迅速に行うことができる。
【0056】
図6は、図5に示すアロマキャンドル21の中心部35の製法の変形例を示す分解斜視図である。
この製法は、蝋材34を押し固めて形成した図5に示す蝋37の部分を縦に2分割したものと同一形状をなす、図6に示すような1対の半割部材38、39をそれぞれ成型して形成しておき、それらの対向面の中央に設けられた、芯材23嵌合用の溝38a、39a内に、内部に2個のカプセル6、7を上下に離間させて配設した芯材23を嵌合させて、両半割部材38、39を合体させることにより、アロマキャンドル21の中心部35を形成するものである。
【0057】
この製法によると、両半割部材38、39を、芯材23およびカプセル6、7を間に挟んで、合体させて、図5に示すアロマキャンドル21の外周部36の中央孔37に嵌合するだけでよいので、アロマキャンドル21を簡単かつ迅速に製造することができる。
【0058】
なお、図5に示す型枠31を、化粧用容器とし、アロマキャンドル21の中心部35を、型枠31から離型することなく、型枠31に収容したままの状態で、容器入りのアロマキャンドルとすることもできる。
また、図6に示す両半割部材38、39を、芯材23およびカプセル6、7を間に挟んで、合体させて、倒立截頭円錐形の容器に嵌合することにより、容器入りのアロマキャンドルとすることもできる。
【0059】
本発明は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱することなく、幾多の異なる形態での実施が可能である。
例えば、芯材を、筒状の伸縮性ネットではなく、単なる紐状体からなるものとし、この芯材にカプセルを係止させるだけとしてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 アロマキャンドル
1’アロマキャンドルの半製品
2 蝋
2’、2a、2b 蝋材
3 芯材
4、5 香料
6、7 カプセル
11 型枠
11a底部
12、13 小孔
14 中子
15 注入口
16 蓋体
17 溶融用容器
18 有底孔
21 アロマキャンドル
22 蝋
23 芯材
31 型枠
31a底部
32 小孔
33 吊杆
34 蝋材
35 中心部
36 外周部
37 蝋
38、39 半割部材
38a、39a 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温で固体である蝋内に、芯材を、その一部が外部に突出するようにして埋設してなるアロマキャンドルにおいて、前記蝋内に、内部に香料が揮発しないように密封され、かつ点火後一定時間経過後に、蝋の溶融温度で溶融するようにしたカプセルを埋設したことを特徴とするアロマキャンドル。
【請求項2】
香料を密封した複数のカプセルを、芯材に沿って、互いに離間させて蝋内に埋設した請求項1記載のアロマキャンドル。
【請求項3】
各カプセルにおける香料を、異なる種類のものとした請求項2記載のアロマキャンドル。
【請求項4】
芯材を筒状の伸縮性ネットにより形成し、この筒状の芯材内にカプセルを挿入した請求項1〜3のいずれかに記載のアロマキャンドル。
【請求項5】
芯材を紐状体からなるものとし、この芯材にカプセルを係止させた請求項1〜3のいずれかに記載のアロマキャンドル。
【請求項6】
蝋の溶融温度で溶融する材質のカプセル内に、香料を揮発しないように密封しておき、芯材を立設した型枠内に、溶融した蝋を流し込み、前記蝋が固化する前に、有底孔形成用の中子を蝋内に浸漬し、蝋の固化後に前記中子を離型することにより、蝋に有底孔を形成し、前記蝋が固化し、かつ蝋の温度が前記カプセルの溶融温度より低下した後、前記有底孔に、前記カプセルを嵌合し、その後、前記有底孔の開口部に、固化した蝋材を嵌合して、前記開口部を閉塞することを特徴とするアロマキャンドルの製法。
【請求項7】
蝋の溶融温度で溶融する材質のカプセル内に、香料を揮発しないように密封しておき、芯材を立設した型枠内に、溶融した蝋を流し込み、前記蝋が固化した後、前記蝋に有底孔を穿孔し、前記蝋の温度が前記カプセルの溶融温度より低下した後、前記有底孔に、前記カプセルを嵌合し、その後、前記有底孔の開口部に、固化した蝋材を嵌合して、前記開口部を閉塞することを特徴とするアロマキャンドルの製法。
【請求項8】
有底孔の底部にカプセルを嵌合した後、その上方にスペーサ用の固化した蝋材と、別のカプセルとを順次嵌合し、最後に、前記有底孔の開口部に、固化した蝋材を嵌合して、前記開口部を閉塞することにより、有底孔溝内に、複数のカプセルを、互いに離間させて嵌合することを特徴とする請求項6または7記載のアロマキャンドルの製法。
【請求項9】
蝋の溶融温度で溶融する材質のカプセル内に、香料を揮発しないように密封しておき、筒状の伸縮性ネットにより形成した芯材内に、前記カプセルを配設した状態で、その周囲を、固化した蝋材により、倒立截頭円錐形状に固めることにより、アロマキャンドルの中心部を形成し、この中心部を、蝋を成型して形成したアロマキャンドルの外周部の中央に設けた倒立截頭円錐形の中央孔に嵌合することを特徴とするアロマキャンドルの製法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−285533(P2010−285533A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−139947(P2009−139947)
【出願日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(595120909)株式会社鳥居ローソク本舗 (2)
【Fターム(参考)】