説明

アンカーフレーム及びそれを用いた基礎構造体の構築工法

【課題】施工手間の省略化、簡素化及び施工工期の短縮を図ることのできるアンカーフレーム及びそれを用いた基礎構造体の構築工法を提案する。
【解決手段】アンカーフレーム1は、コンクリートSと基礎配筋5との間に配置されるとともに固定具2によってコンクリートSに固定され、アンカーボルト3を直接立設、支持する矩形枠状のフレーム本体7と、フレーム本体7の各角部にそれぞれ配置され、その回動によりフレーム本体の下面に対して下端が進退するアジャスタボルト9と、フレーム本体7の、隣り合うアジャスタボルト9間に形成され、固定具2を挿通させる貫通孔11と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鉄骨構造物の基礎にアンカーボルトを設置する際に使用されるアンカーフレーム及びそれを用いた基礎構造体の構築工法に関し、とくには、施工手間の省略化、簡素化及び施工工期の短縮を図ろうとするものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のアンカーフレームとしては、図7に示すような形状のものが知られている。このアンカーフレームは、捨てコンクリートの上に固着される枠状のベース103と、このベース103にその下端側において固定され互いに所定間隔をおいて立設される複数本の縦地105と、縦地105の上端に水平に固着された天板107とを備え、この天板107に複数本のアンカーボルト109を固定する手段を有するものである。あるいは、特許文献1に開示されるように、天板の代わりに竪杆の上部に固定部材を設け、この固定部材を介してアンカーボルトの高さを調整可能に構成したものも知られている。
【0003】
施工手順としては、捨てコンクリートを打設した後、この捨てコンクリート上に基準となる墨を出し、この墨に合わせてアンカーフレームを固定具(オールアンカー)110により固着し、アンカーボルトをアンカーフレームの天板に固定する。その後、アンカーフレームを囲むように、基礎鉄筋、基礎梁鉄筋の配筋を行い、コンクリートを塞き止める型枠を基礎鉄筋の外側に設置する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−68132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のアンカーフレームでは、アンカーフレームの傾き調整が、捨てコンクリート表面の水平精度によって左右され、傾き調整が困難であるとともにアンカーボルト自体の施工精度にも影響を与えるという問題がある。また、アンカーフレームが基礎配筋の内側となるため、アンカーフレーム、アンカーボルトの設置を配筋施工前に行わなければならず、さらに配筋がアンカーフレームに干渉し、施工手間が掛かり、しかも、配筋作業時にアンカーボルトの位置がずれるという問題もある。
【0006】
それゆえ、この発明は、上記問題を解決し、施工手間の省略化、簡素化及び施工工期の短縮を図ることのできるアンカーフレーム及びそれを用いた基礎構造体の構築工法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、この発明のアンカーフレームは、コンクリートに対して複数本のアンカーボルトを立設、支持するアンカーフレームであって、コンクリートと基礎配筋との間に配置されるとともに固定具によってコンクリートに固定され、前記アンカーボルトを直接立設、支持する矩形枠状のフレーム本体と、前記フレーム本体の各角部にそれぞれ配置され、その回動によりフレーム本体の下面に対して下端が進退するアジャスタボルトと、前記フレーム本体の、隣り合う前記アジャスタボルト間に形成され、前記固定具を挿通させる貫通孔と、を備えることを特徴とするものである。
【0008】
上記アンカーフレームを用いて基礎構造体の構築する工法は以下のとおりであり、すなわち、コンクリート上の所定位置に固定具を植設し、フレーム本体の挿通孔に固定具を通して該フレーム本体の仮位置決めを行い、フレーム本体が仮位置決めされた状態にて、アジャスタボルトをフレーム本体の下面に対して進退させることによりフレーム本体の水平レベルを調整し、フレーム本体が水平となった時点で、固定具によりフレーム本体をコンクリートに固定し、コンクリート上に固定されたフレーム本体の上方にあらかじめ組み付けた基礎配筋の組立体を配置し、基礎配筋を構成する鉄筋の間を通してアンカーボルトを挿入して該アンカーボルトの下端を前記フレーム本体に連結、固定し、フレーム本体に固定したアンカーボルトに、これらのアンカーボルトを相互に固定するテンプレートを固定し、基礎配筋の周りに型枠を設置し、所定の位置まで基礎コンクリートを打設することで基礎構造体を構築することができる。
【0009】
したがって、この発明のアンカーフレーム及びそれを用いた基礎構造体の構築工法によれば、アンカーフレームの傾きを調整する手段をフレーム本体に設けるとともに、該手段をアジャスタボルトで構成したことから、容易な操作で確実にアンカーフレームの傾きを調整することができる。また、フレーム本体を扁平に形成し、コンクリートと基礎配筋との間の隙間に配置可能としたことから、工場等で別に組み立てた基礎配筋の組立体をそのまま配置することができ、施工手間、期間の大幅な低減が可能であるとともに、基礎配筋とアンカーフレームが干渉することもなく、アンカーボルトの設置精度を向上させることができる。さらに、扁平のフレーム本体に直接的にアンカーボルトを固定する構造であるから、従来のように基礎の高さに合わせてアンカーフレームの高さを調整する必要がなく、すなわち、アンカーボルトの長さを適宜変更するだけで、異なる高さの基礎を形成するに際してもアンカーフレームの形状の同一化が可能であり、施工手間及びコストの更なる低減を図ることができる。このように、この発明によれば、施工手間の省略化、簡素化及び施工工期の短縮を図ることができ、しかも、基礎配筋をあらかじめ工場等で組み立てるようにすることで、現場では基礎配筋の組立体をフレーム本体の上方に配置するだけでよいので、熟練した配筋工でなくても基礎配筋を精度高くかつ容易に施工することが可能となる。
【0010】
なお、この発明のアンカーフレームにあっては、前記フレーム本体をアングル材によって形成することが好ましく、これによれば、フレーム本体の強度を向上させることができる。
【0011】
また、この発明のアンカーフレームにあっては、前記フレーム本体に、前記アンカーボルトを連結、支持するアンカーボルト固定部材を設けることが好ましく、これによれば、アンカーボルトをフレーム本体に確実に固定することができる。
【発明の効果】
【0012】
かくして、この発明によれば、施工手間の省略化、簡素化及び施工工期の短縮を図ることのできるアンカーフレーム及びそれを用いた基礎構造体の構築工法を提案することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明にしたがう一実施形態のアンカーフレームを、捨てコンクリートに固定した状態で示す斜視図である。
【図2】図1のアンカーフレームの平面図である。
【図3】(a)は、図2中のA−A矢視図、(b)は、図2中のB−B矢視図である。
【図4】図2のアンカーフレームを水平レベルを調整した後に捨てコンクリートに固定した状態を示す平面図である。
【図5】(a)は、図4中のC−C矢視図、(b)は、図4中のD−D矢視図である。
【図6】この発明にしたがう基礎構造体の構築工法を説明する斜視図である。
【図7】従来技術のアンカーフレームを示す図であり、(a)は組立て前の状態を、(b)は組立て後の状態をそれぞれ示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。なお、ここでは、基礎構造体として布基礎を構築する場合を例にとり説明するが、この発明のアンカーフレーム及びそれを用いた基礎構造体の構築工法は、ベタ基礎、杭基礎等、他の基礎にも適用できるものである。
【0015】
この実施形態のアンカーフレーム1は、図1に示すように、コンクリート(ここでは捨てコンクリートS)にオールアンカー等の固定具2によって固定され得るとともに捨てコンクリートSに対して建物の鉄骨柱の基部に設けられた柱脚金物(図示省略)を固定するための複数本のアンカーボルト3を立設、支持するものである。
【0016】
図2及び3にアンカーフレーム1の詳細を示すように、このアンカーフレーム1は、捨てコンクリートSと該捨てコンクリートSの上方に据え付けられる基礎配筋の組立体5との間の隙間に介挿可能なように扁平に形成された矩形枠状のフレーム本体7と、フレーム本体7の各角部(四隅)にそれぞれ配置され、その回動によりフレーム本体7の下面に対して下端が進退するアジャスタボルト9と、フレーム本体7の、隣り合うアジャスタボルト9間に形成され、上記固定具2を挿通させる4つの貫通孔11と、を備える。
【0017】
フレーム本体3は、4本の等辺アングル材13、14、15、16を矩形の枠状に連結、固定して形成したものであり、隣り合うアングル材13、14、15、16同士は、フレーム本体7の内側四隅にそれぞれ設けられ、アンカーボルト3を固定、支持するアンカーボルト固定部材(高ナット)18を介して互いに溶接により接合されている。フレーム本体7の高さhは、45mm〜70mmとすることができ、ここでは50mmとしている。これに合わせて、アンカーボルト固定部材18の高さも50mmとしている。なお、等辺アングルに代えて不等辺アングル材やチャンネル材を用いてフレーム本体7を形成してもよい。また、4本のアングル材を用いてフレーム本体7を構成するのに代えて、金属板を絞り加工して角筒状のフレーム部材を一体成形してもよい。
【0018】
フレーム本体7の各角部にはそれぞれ、アジャスタボルト9を貫通させる貫通孔20が穿設されるとともに、該貫通孔20を開口するフレーム本体7の上面(フランジ面)にはアジャスタボルト9と螺合する係合部材(固定ナット)22が溶接により固着されている。これにより、アジャスタボルト9を係合部材22に対してねじ込むとアジャスタボルト9の下端はフレーム本体7の下面から進出し、反対にアジャスタボルト9をねじ戻すとアジャスタボルト9の下端はフレーム本体7の下面に対して後退する。
【0019】
アジャスタボルト9は、ここでは一般的な六角ボルトで構成しているが、六角穴付ボルト、ボルト頭部がリング状に形成されたアイボルト、あるいは工具を使用せずに締付け、取外しが可能な蝶ボルトで構成してもよい。また、アジャスタボルト9による調整範囲(調整高さ)は、最大で25mmとすることができ、ここでは10mmとしている。
【0020】
固定具2を挿通させる挿通孔11の形成位置は、各アングル材13、14、15、16において、隣り合うアジャスタボルト9間であれば特に限定はないが、アジャスタボルト9によるフレーム本体7の水平レベルの調整をより簡単かつ精度の高いものとする観点からは、隣り合うアジャスタボルト9の中央(各アングル部材13、14、15、16の中央)に配置することが好ましい。
【0021】
次に、このようになるアンカーフレーム1を用いて基礎構造体を構築する工法について説明する。
【0022】
先ず、図4に示すように、捨てコンクリートS上に縦横に位置決め用の基準線L1、L2を墨打ちし、この基準線L1、L2に合わせて捨てコンクリートSに固定具としてのオールアンカー2を4本打ち込む。なお、オールアンカー2に代えて、自穿式のアンカーやケミカルアンカー、コンクリート釘等の他の固定具2を用いてもよい。
【0023】
次いで、フレーム本体7の挿通孔11にこれらのオールアンカー2を通し、フレーム本体7の仮位置決めを行う。
【0024】
この状態で、フレーム本体7に水準器を載せて、図4に示すように、各アジャスタボルト5を回して前後左右方向における水平レベルを調整し、フレーム本体7が水平となった時点で、オールアンカー2に螺合させたナット24を締め込んでフレーム本体7を捨てコンクリートSに固定する。
【0025】
フレーム本体7の据え付けの後、図6に示すように、例えば工場であらかじめ組み付けた基礎配筋の組立体5をフレーム本体7の上方に配置し、基礎配筋の主筋同士を溶接にて連結する。
【0026】
続いて、基礎配筋の各鉄筋の間を通して上方から4本のアンカーボルト3を挿入し、該アンカーボルト3をフレーム本体7のアンカーボルト固定部材18にねじ込んで固定する。
【0027】
次いで、フレーム本体7に固定したアンカーボルト3に、アンカーボルト3の上端を相互に固定するテンプレート26を上方からセットし、該テンプレート26の四隅のボルト挿通孔26aにアンカーボルト3の各雄ねじ部を挿通させて一対のナット28で上下から挟むことでテンプレート26をアンカーボルト3に固定する。
【0028】
そして、捨てコンクリートS上に出した墨に合わせて基礎配筋の周り(両側)に型枠としてのラス型枠(メッシュ型枠)30、31を設置し、アンカーボルト3の上端近傍の所定レベルまで基礎コンクリート(図示省略)を打設する。基礎コンクリートが固化することで、基礎構造体の構築作業が終了し、建物の鉄骨柱の基部に形成された柱脚金物(図示省略)を各アンカーボルト3に締め付けて固定することが可能となる。
【0029】
したがって、このアンカーフレーム1及びそれを用いた基礎構造体の構築工法によれば、アンカーフレーム1の傾き(鉛直性)を調整する手段をフレーム本体7に設けるとともに、該手段をアジャスタボルト9で構成したことから、容易な操作で確実にアンカーフレーム1の傾きを調整することができる。また、フレーム本体7を扁平に形成し、捨てコンクリートSと基礎配筋5との間の隙間に配置可能としたことから、工場等で別に組み立てた基礎配筋の組立体5をそのまま配置することができ、施工手間、期間の大幅な低減が可能であるとともに、基礎配筋5とアンカーフレーム1とが干渉することもなく、アンカーボルト3の設置精度を向上させることができる。さらに、扁平のフレーム本体7に直接的にアンカーボルト3を固定する構造であるから、従来のように基礎の高さに合わせてアンカーフレームの高さを調整する必要がなく、すなわち、アンカーボルト3の長さを適宜変更するだけで、異なる高さの基礎を形成するに際してもアンカーフレーム1の形状の同一化が可能であり、施工手間及びコストの更なる低減を図ることができる。このように、この発明によれば、施工手間の省略化、簡素化及び施工工期の短縮を図ることができ、しかも、基礎配筋をあらかじめ工場等で組み立てるようにすることで、現場では基礎配筋の組立体5をフレーム本体7の上方に配置するだけでよいので熟練した配筋工でなくても基礎配筋を精度高くかつ容易に施工することが可能となる。
【0030】
また、この実施形態のアンカーフレーム1によれば、フレーム本体7をアングル材13、14、15、16によって形成したことから、フレーム本体7の強度を向上させることができる。
【0031】
さらに、この実施形態のアンカーフレーム1によれば、フレーム本体7に、アンカーボルト3を連結、支持するアンカーボルト固定部材18を設けたことから、アンカーボルト3をフレーム本体7に確実に固定することができ、しかも、アンカーボルト固定部材18の高さをフレーム本体7の高さhと同等としたことから、十分な固定強度を確保することができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
かくして、この発明により、施工手間の省略化、簡素化及び施工工期の短縮を図ることのできるアンカーフレーム及びそれを用いた基礎構造体の構築工法を提案することが可能となった。
【符号の説明】
【0033】
1 アンカーフレーム
2 固定具
3 アンカーボルト
5 基礎配筋の組立体
7 フレーム本体
9 アジャスタボルト
11 挿通孔
13、14、15、16 アングル材
18 アンカーボルト固定部材
20 貫通孔
22 係合部材
24 ナット
26 テンプレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートに対して複数本のアンカーボルトを立設、支持するアンカーフレームであって、
コンクリートと基礎配筋との間に配置されるとともに固定具によってコンクリートに固定され、前記アンカーボルトを直接立設、支持する矩形枠状のフレーム本体と、
前記フレーム本体の各角部にそれぞれ配置され、その回動によりフレーム本体の下面に対して下端が進退するアジャスタボルトと、
前記フレーム本体の、隣り合う前記アジャスタボルト間に形成され、前記固定具を挿通させる貫通孔と、を備えることを特徴とするアンカーフレーム。
【請求項2】
前記フレーム本体をアングル材によって形成してなる、請求項1に記載のアンカーフレーム。
【請求項3】
前記フレーム本体に、前記アンカーボルトを連結、支持するアンカーボルト固定部材を設けてなる、請求項1または2に記載のアンカーフレーム。
【請求項4】
固定具によってコンクリートに固定され、アンカーボルトを直接立設可能な矩形枠状のフレーム本体と、前記フレーム本体の各角部にそれぞれ配置され、その回動によりフレーム本体の下面に対して下端が進退するアジャスタボルトと、前記フレーム本体の、隣り合う前記アジャスタボルト間に形成され、前記固定具を挿通させる貫通孔と、を備えるアンカーフレームを用い、
前記コンクリート上の所定位置に前記固定具を植設し、
前記フレーム本体の前記挿通孔に前記固定具を通して該フレーム本体の仮位置決めを行い、
前記フレーム本体が仮位置決めされた状態にて、前記アジャスタボルトをフレーム本体の下面に対して進退させることによりフレーム本体の水平レベルを調整し、フレーム本体が水平となった時点で、前記固定具によりフレーム本体をコンクリートに固定し、
前記コンクリート上に固定されたフレーム本体の上方にあらかじめ組み付けた基礎配筋の組立体を配置し、
前記基礎配筋を構成する鉄筋の間を通して前記アンカーボルトを挿入して該アンカーボルトの下端を前記フレーム本体に連結、固定し、
前記フレーム本体に固定した前記アンカーボルトに、これらのアンカーボルトを相互に固定するテンプレートを固定し、
前記基礎配筋の周りに型枠を設置し、所定の位置まで基礎コンクリートを打設することを特徴とする基礎構造体の構築工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−162882(P2012−162882A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22729(P2011−22729)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(591210600)川田工業株式会社 (57)
【Fターム(参考)】