説明

アンダーカバー

【課題】整流効果をより一層高める。
【解決手段】車両前部の下面にアンダーカバー5を設ける。アンダーカバー5には、左右の前輪1,3より車両前方の領域7に下方に向けて突出する1個の突起9を設ける。突起9は、下向きに凸の曲面形状を呈しており、平面視で車幅方向に長い楕円形状としている。また、この突起9は、側面視で前方側の曲率半径が小さく、後方側の曲率半径が大きくなっている。車両走行時に、前方から流れる空気流によって、突起9の車両後方側に負圧が発生し、車幅方向端部において外向きに流れようとする気流を、この負圧により車両中心側に引き戻し、前輪1,3やフロントサスペンションへの気流の干渉を抑える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両前部の下部を覆うアンダーカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、少なくとも前側が円形の輪郭をなす下向きの突起を複数備えて、表面を流れる空気の整流効果をもたらすアンダーカバーが知られている(下記特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−18851号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した従来のアンダーカバーでは、微小な突起を複数設ける構成なので、整流効果が充分ではなく、特に車幅方向端部においては、車両前方から流れた後外向きに流れようとする気流を、車両中心に向かわせることができず、前輪タイヤやフロントサスペンションに気流が干渉して空気抵抗の増加を招いている。
【0004】
そこで、本発明は、整流効果をより一層高めることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のアンダーカバーは、前輪よりも車両前方に位置して車幅方向中央から前輪の車幅方向内側に向けて延設される下向きに凸で、かつ少なくとも車両前部側から下方と側方に向けてなめらかな曲面形状を有する1個の突起を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、車両走行時に車両前方から流れてくる空気が突起に沿って後方に向けて流れることで、突起の車両後方側に負圧が発生し、車幅方向端部において外向きに流れようとする気流が、この負圧により車両中心に引き戻されて車両中心側を流れることになる。これにより、特に車幅方向端部を流れる気流の前輪タイヤやフロントサスペンションへの干渉を抑制して空気抵抗の増加を抑えることができ、整流効果をより一層高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0008】
図1は、本発明の第1の実施形態に係わる車両前部を下方から見た底面図である。なお、図中のFrで示す方向が車両前方である。この車両前部の左右の前輪1,3相互間を含む領域の車両前部の底面には、アンダーカバー5を取り付けている。このアンダーカバー5は、左右の前輪1,3よりも車両前方(図1中で左側)で、かつ左右の前輪1,3相互間の領域7に、下方(図1中で紙面表側)に向けて突出する1個の突起9を設けている。
【0009】
なお、上記領域7は、左右の前輪1,3と車両前端部との間のオーバハング部Lと、左右の前輪1,3相互の間隔Wとに囲まれた領域(L×Wの面積に相当)に含まれている。
【0010】
図2(a)は、上記したアンダーカバー5の車両上方から見た斜視図である。このアンダーカバー5に設けた突起9は、図2(a)のA−A断面図である図2(b)及び、図2(a)のB−B断面図である図2(c)に示すように、車幅方向中央から車幅方向外側の車輪1,3より内側に向けて延設される下向きに凸のなめらかな曲面形状を備えている。
【0011】
アンダーカバー5は、図2(b)に示すように、平面状の一般面(突起9を除いた部分)が、全体的に車両前方側より車両後方側が下方となるよう水平面に対して傾斜しており、特に車両前方側の前方傾斜面5aがそれより後方側の後方傾斜面5bよりも、水平面に対する傾斜角度が大きくなっている。
【0012】
このような前記一般面に相当する前方傾斜面5a及び後方傾斜面5bに跨って前記した突起9を設けているが、この突起9は、側面視での形状が、図2(b)に示すように主として前方傾斜面5aに対応する車両前方側の極率半径R1を、主として後方傾斜面5bに対応する車両後方側の極率半径R2よりも小さくしている。
【0013】
この際、図2(b)の側面視では突起9の最下部9aの中心Pは、突起9の前端部9bと後端部9cとの間の車両前後方向中心Yよりも車両前方に位置している。
【0014】
なお、図2(b)での側面視での極率半径R1は、最低でも300mmとしている。すなわち、極率半径R1は、R1≧300mmである。
【0015】
また、突起9のうち車両後方側の極率半径R2に対応する部位の後端部9cにおける接線Cと水平線Hとのなす角度(後端角)θは30°以下、つまりθ≦30°としている。
【0016】
一方、突起9の正面視での形状については、図2(c)に示すように、車幅方向中心Xを境として車幅方向両側を互いに対称形状としており、かつこの車幅方向中心Xの位置を車両の車幅方向中心の位置と一致させている。この際、突起9の最下部9aの車幅方向の中心Pが車両の車幅方向中心に位置している
なお、上記正面視での突起9の極率半径R3は、最低でも600mmとしている。つまり、R3≧600mmである。
【0017】
よって、本発明のなめらかな曲面形状は、上記のR1≧300mmとR3≧600mmの双方の関係を満たす形状である。
【0018】
また、突起9の車幅方向の長さMを、左右の前輪1,3相互間の寸法(間隔)Wの1/2以上としている。さらに、突起9の平面視での面積(ほぼ楕円形状)を、前記図1に示したL×Wの領域に相当する面積の10%以上としている。
【0019】
次に、上記した突起9を備えたアンダーカバー5の下部における空気の流れについて、図3(a)を用いて説明する。車両走行中に前方から車体下部に流入する空気が、突起9の下面に沿って矢印11で示すように流れることで、突起9の後方位置13に負圧が発生する。
【0020】
そして、上記車両前方から流れてくる空気のうち、図3(a)に示してある特に突起9における車幅方向外側付近の空気の流れである外側気流15は、上記後方位置13に発生している負圧により引き寄せられて、車幅方向内側の車両中心部に向けて屈曲するようにして流れ、外側に向かうことが抑えられてそのまま車両後方に向けて流れることになる。
【0021】
これにより、車両下部において特に車幅方向端部を流れる外側気流15の前輪1,3や、前輪1,3近傍の図示しないフロントサスペンションへの干渉を抑制して空気抵抗の増加を抑えることができ、整流効果をより一層高めることができる。
【0022】
図3(b)は、本実施形態の突起9を設けていない場合の空気の流れを示している。この場合には、車両下部における車幅方向外側の空気の流れ17は車幅方向に外側に向けてそのまま流れて左右の前輪1,3に干渉していることがわかる。
【0023】
図4(a)は、図2(b)に示す後端角θに対する空気抵抗の変化を示しており、θ=約25°で最大のCD(空気抵抗)効果を得ている。したがって、本実施形態では、θ≦30°とすることで、突起9を設けた部位の空気抵抗を充分低く抑えることができる。
【0024】
図4(b)は、突起9の高さ寸法Nに対する空気抵抗の変化を示しており、N=約40mmで最大のCD効果を得ている。したがって、本実施形態では、N=30mm〜50mm程度とすることで、突起9を設けた部位の空気抵抗を充分低く抑えることができる。
【0025】
なお、上記した突起9の高さ寸法Nは、図2(b)に示すように、突起9の最下部9aにおけるアンダーカバー5の一般面(前方傾斜面5a)からの上下(鉛直)方向距離に相当するものとしている。
【0026】
また、本実施形態の突起9は、図2(c)に示すように、車幅方向中心位置Xが車両の車幅方向中心位置と一致し、かつ車幅方向中心位置Xを境として車幅方向両側が互いに対称形状としており、この際突起9の最下部9aの車幅方向の中心Pは、車両の車幅方向位置に関して左右の前輪1,3相互間の中心に位置している。このため、突起9によって車幅方向両側で均等な整流効果を得ることができる。
【0027】
また、本実施形態の突起9は、その全体を下向きに凸の曲面形状とし、この凸の曲面形状における車両前方側の曲率半径R1を、同後方側の曲率半径R2よりも小さくしており、この際突起9の最下部9aは、該突起9の車両前後方向前方に位置している。
【0028】
このため、突起9の下面に沿って流れる空気は、小さい曲率半径R1の車両前方側から大きい曲率半径R2に向けてスムーズに流れることになり、車両後方側における空気の流れの剥離を抑えることができ、より効率的な整流効果を得ることができる。
【0029】
また、本実施形態の突起9は、車幅方向の長さMを、左右の前輪1,3相互間の寸法Wの1/2以上としてある。ここで、車両下部を流れる空気が外側に向かおうとする流れ(偏向流)となる領域は、車幅方向中心から車幅方向外側のW/4より外側となっている。このため、突起9の車幅方向長さMを上記したようにW/2以上とすることで、上記した偏向流が、突起9の後方位置13に発生する負圧によって確実に内側に引き寄せられることになる。
【0030】
この際、本実施形態の突起9は、平面視での面積を、前輪1,3と車両前端部との間でかつ左右の前輪1,3相互間の領域に相当する面積(L×W)の10%以上としてある。これにより、車体前部における突起9の占める割合が充分大きくなり、整流効果をより一層確実に高めることができる。
【0031】
図5(a)は、本発明の第2の実施形態を示す、前記図2(a)に相当するアンダーカバー5Aの斜視図である。このアンダーカバー5Aにおいても、第1の実施形態と同様に、車幅方向中央から車輪1,3より内側に向けて延設される下向きに凸の曲面形状を備える突起9Aを、図1と同様の領域7内に設けている。そして、この突起9Aは、図5(a)のD−D断面図である図5(b)に示すように、凸の曲面形状が全体として円弧形状を呈し、この円弧形状部分9A1が、図5(a)のE−E断面図である図5(c)に示すように、車幅方向に沿って形成され、その両端部には球面形状部分9A2を備えている。
【0032】
したがって、この突起9Aの最下部9Aaは、円弧形状部分9A1を有する車幅方向に沿った所定の長さ部分に形成されていることになり、この最下部9Aaの車幅方向中心Pは、車両の車幅方向中心と一致している突起9Aの車幅方向中心Xに位置していることになる。すなわち、この実施形態の突起9Aにおいても、車幅方向中心位置Xが車両の車幅方向中心位置と一致し、かつ車幅方向中心位置Xを境として車幅方向両側が互いに対称形状である。
【0033】
図6(a)は、本発明の第3の実施形態を示す、前記図2(a)に相当するアンダーカバー5Bの斜視図である。このアンダーカバー5Bにおいても、第1の実施形態と同様に、車幅方向中央から車輪1,3より内側に向けて延設される下向きに凸の曲面形状を備える突起9Bを、図1と同様の領域7内に設けている。そして、この突起9Bは、図6(a)のF−F断面図である図6(b)に示すように、最下部9Baを車幅方向に長い長方形状の平面部とし、最下部9Baの周囲を凸の曲面形状としてある。
【0034】
したがって、この突起9Bの平面形状の最下部9Baは、車幅方向に沿った所定の長さ部分に形成されていることになり、この最下部9Baの車幅方向中心Pは、車両の車幅方向中心と一致している突起9Bの車幅方向中心Xに位置していることになる。すなわち、この実施形態の突起9Bにおいても、車幅方向中心位置Xが車両の車幅方向中心位置と一致し、かつ車幅方向中心位置Xを境として車幅方向両側が互いに対称形状である。
【0035】
上記図5及び図6に示したアンダーカバー5A及び5Bにあっても、車両走行中に前方から車両下部に流入する空気が、突起9A及び9Bの下面に沿って流れることで、突起9A及び9Bの後方位置13A及び13Bに負圧が発生する。このため、車幅方向外側付近の空気の流れが、この負圧により引き寄せられ、車幅方向内側に向けて屈曲するようにして流れ、外側に向かうことが抑えられてそのまま車両後方に向けて流れることになる。
【0036】
これにより、車両下部において特に車幅方向端部を流れる外側気流の前輪1,3や、前輪1,3近傍の図示しないフロントサスペンションへの干渉を抑制して空気抵抗の増加を抑えることができ、整流効果をより一層高めることができる。また、各突起9A,9Bは車幅方向両側が互いに対称形状であるため、車幅方向両側で均等な整流効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1の実施形態に係わる車両前部を下方から見た底面図である。
【図2】(a)はアンダーカバーの車両上方から見た斜視図、(b)は(a)のA−A断面図、(c)は(a)のB−B断面図である。
【図3】(a)は図1のアンダーカバーの下部における空気の流れを示す動作説明図、(b)は比較例における空気の流れを示す動作説明図である。
【図4】(a)は突起の後端角に対する空気抵抗の変化を示す空気抵抗特性図、(b)は突起の高さ寸法に対する空気抵抗の変化を示す空気抵抗特性図である。
【図5】(a)は本発明の第2の実施形態を示すアンダーカバーの車両上方から見た斜視図、(b)は(a)のD−D断面図、(c)は(a)のE−E断面図である。
【図6】(a)は本発明の第3の実施形態を示すアンダーカバーの車両上方から見た斜視図、(b)は(a)のF−F断面図、(c)は(a)のG−G断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1,3 前輪
5,5A,5B アンダーカバー
7 左右の前輪相互間の領域
9,9A,9B 突起
9a,9Aa,9Ba 突起の最下部
M 突起の車幅方向の長さ
P 突起の最下部の車幅方向中心
R1 突起の車両前方側の極率半径
R2 突起の車両後方側の極率半径
X 突起の車幅方向中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前部の下部を覆うアンダーカバーであって、前輪よりも車両前方に位置して車幅方向中央から前輪の車幅方向内側に向けて延設される下向きに凸で、かつ少なくとも車両前部側から下方と側方に向けてなめらかな曲面形状を有する1個の突起を備えることを特徴とするアンダーカバー。
【請求項2】
前記突起は、車幅方向中心位置が車両の車幅方向中心位置と一致し、かつ前記車幅方向中心位置を境として車幅方向両側が互いに対称形状であることを特徴とする請求項1に記載のアンダーカバー。
【請求項3】
前記突起の最下部の車幅方向中心が車両の車幅方向中心に位置していることを特徴とする請求項2に記載のアンダーカバー。
【請求項4】
前記突起は、その全体を下向きに凸の曲面形状とし、この凸の曲面形状における車両前方側の曲率半径を、同後方側の曲率半径よりも小さくしたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のアンダーカバー。
【請求項5】
前記突起の最下部は、該突起の車両前後方向前方に位置していることを特徴とする請求項4に記載のアンダーカバー。
【請求項6】
前記突起の車幅方向の長さは、左右の前記前輪相互間の寸法の1/2以上であることを特徴とする請求項2ないし5のいずれか1項に記載のアンダーカバー。
【請求項7】
前記突起の平面視での面積は、前記前輪と車両前端部との間でかつ左右の前記前輪相互間の領域に対応する面積の10%以上であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のアンダーカバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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